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特許拒絶査定不服審判

2016-004749

有孔コールシートを使用した複合パーツの樹脂注入

審判番号
2016-004749
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-238929外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年04月01日
審決日
2017年05月30日
公報発行日
2017年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B29C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-238929「有孔コールシートを使用した複合パーツの樹脂注入」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開、特開2012-101536〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年10月31日(パリ条約による優先権主張2010年11月11日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成26年10月15日付けで手続補正がされ、平成27年4月15日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月19日付けで拒絶査定(発送日:同年12月1日)がされ、これに対して、平成28年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項7に係る発明は、平成27年7月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 樹脂を注入している間に、構成要素(24)を通る樹脂の流れを制御するための孔(48)を有するコールシート(26)を備えた、樹脂が注入された複合パーツを製造する装置であって、 該コールシートが孔(48)を有するパターン化された複数の領域(75)と孔(48)を有する他の複数の領域(77)とを備え、 該コールシートの該パターン化された領域(75)が該コールシートの該他の複数の領域(77)より高い孔密度を有するので、孔密度のこの変動が該コールシート(26)の浸透性の変動につながることを特徴とする装置。 ・・・ 【請求項7】 前記構成要素(24)及び前記コールシート(26)の間に剥離層をさらに含む、請求項1に記載の装置。」 第3 刊行物に記載された事項及び発明 拒絶査定の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に外国において頒布された国際公開第2008/114809号(以下、「刊行物」という。)には、「真空RTM成形方法」に関し、次の事項が記載されている。下線は、合議体が付した(以下に同じ)。 1 [0019]ないし[0021] 「以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。 本発明に係る真空RTM成形方法は、例えば図1に示すように行われる。図1に示す方法においては、成形型1上に、強化繊維基材が所定の形状に賦形されたプリフォーム2が配置され、その一面上に全面にわたって、本実施態様では離型用のピールプライ3を介して樹脂拡散媒体4が配置される。樹脂拡散媒体4には、強化繊維基材よりも樹脂流動抵抗の低い材料が選択される。これら全体が、バッグ材としてのバッグフィルム5で覆われ、周囲がシール材6を介してシールされる。バッグフィルム5で覆われた内部が、吸引口7を介しての真空吸引により減圧され、減圧後に、樹脂注入口8を介して樹脂が注入される。注入された樹脂は、先ず、実質的に流動抵抗の低い材料からなる樹脂拡散媒体4の面内方向に拡散され、しかる後に、樹脂拡散媒体4から強化繊維基材のプリフォーム2の厚み方向に含浸されていく。勿論、樹脂拡散媒体4内での拡散中にも、多少の樹脂はプリフォーム2に含浸されていくが、樹脂拡散媒体4内での拡散速度の方がプリフォーム2への含浸速度に比べてはるかに高いため、実質的にこのような樹脂流動形態となる。 このような真空RTM成形において、強化繊維基材のプリフォームに、面内方向において樹脂流動抵抗に変化が存在する場合、前述したような問題が生じる。例えば、図2に示すように、プリフォーム11に樹脂拡散媒体12が配置された面に沿う方向において厚みの変化、したがって目付の変化が存在する場合、例えば、樹脂注入口14側から吸引口13側に向かって樹脂が樹脂拡散媒体12内を矢印A方向に拡散され、拡散されてきた樹脂がプリフォーム11に含浸されるとき、プリフォーム11の各樹脂含浸部に厚み差があるため、各樹脂含浸部における厚みの全体にわたって含浸する時間にばらつきが生じる。つまり、厚みの厚い部位では含浸時間が長くなり、厚みの薄い部位では短くなって早く含浸が完了する。したがって、厚みの厚い部位では未含浸部が生じやすくなる。また、厚みの薄い部位では樹脂が早く含浸するため、含浸した樹脂が吸引口13とプリフォーム11間の吸引経路を絶って、厚みの厚い部位の樹脂の含浸を阻害する可能性がある。 しかし本発明では、この強化繊維基材のプリフォーム11側の厚みの変化に起因する樹脂流動性の変化に対応させて、樹脂拡散媒体12自体の樹脂拡散の際の流動抵抗が、プリフォーム11の面内方向に変化される。つまり、樹脂の含浸時間が長くかかる部分に対しては、流動性が高い樹脂拡散媒体を配置し、樹脂の含浸時間が短い部分には流動性の低い樹脂拡散媒体を配置する。具体的には、例えば、プリフォーム11の厚みの厚い部分に対しては、樹脂拡散媒体の積層枚数を増加して流動性の高い樹脂拡散媒体構成とし、プリフォーム11の厚みの薄い部分に対しては、樹脂拡散媒体の積層枚数を減らして流動性の低い樹脂拡散媒体構成とする。この構成によって、プリフォーム11の厚みの厚い部分と薄い部分とについて樹脂含浸完了時間を揃えることが可能になり、上述の問題を一挙に解消することが可能になる。この場合、樹脂拡散媒体12の流動抵抗の変化は、上記積層枚数の変化に代えて、あるいは上記積層枚数の変化とともに、樹脂拡散媒体12の空隙率を変化させることによっても達成可能である。」 2 [0041] 「本発明は、あらゆる真空RTM成形に適用でき、とくに、複雑な形状の成形品や、幅が変化するような成形品の成形に好適なものである。」 3 [図1] 4 [図2] これら記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されているといえる。 発明 「強化繊維基材が所定の形状に賦形されたプリフォームが配置され、その一面上に全面にわたって、離型用のピールプライを介して樹脂拡散媒体が配置された、プリフォームの厚みの厚い部分に対しては、樹脂拡散媒体の積層枚数を増加して流動性の高い樹脂拡散媒体構成とし、プリフォームの厚みの薄い部分に対しては、樹脂拡散媒体の積層枚数を減らして流動性の低い樹脂拡散媒体構成とし、樹脂拡散媒体の積層枚数の変化によって樹脂拡散媒体の流動抵抗を変化させた複雑な形状の樹脂成形品を成形する装置。」 そして、記載事項1の「樹脂拡散媒体12の流動抵抗の変化は、・・・積層枚数の変化に代えて・・・樹脂拡散媒体12の空隙率を変化させることによっても達成可能である」との記載もあわせると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)も記載されているといえる。 引用発明 「強化繊維基材が所定の形状に賦形されたプリフォームが配置され、その一面上に全面にわたって、離型用のピールプライを介して樹脂拡散媒体が配置された、プリフォームの厚みの厚い部分とプリフォームの厚みの薄い部分で樹脂拡散媒体の空隙率を変化させ、この変化によって樹脂拡散媒体の流動抵抗を変化させた複雑な形状の樹脂成形品を成形する装置。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「強化繊維基材が所定の形状に賦形されたプリフォーム」(以下、便宜上、単に「プリフォーム」という。)は、その機能、性質及び構造からみて、本願発明の「構成要素(24)」に相当し、同様に、「樹脂拡散媒体」は「コールシート(26)」に、「プリフォーム」と「樹脂拡散媒体」の間にある「離型用のピールプライ」は「構成要素(24)」と「コールシート(26)」の間にある「剥離層」に、「空隙率」の「変化」は「浸透性」の「変動」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「樹脂拡散媒体」の「空隙」と本願発明における「コールシート(26)」の「孔(48)」は、樹脂を注入している間に、「プリフォーム」すなわち「構成要素(24)」を通る樹脂の流れを制御するための「通路」の限りで相当する。よって、引用発明における「空隙率」と本願発明における「孔密度」は、「通路密度」の限りで相当する。 さらに、引用発明の「複雑な形状の樹脂成形品を成形する装置」は、「複雑な形状の樹脂成形品」が、[図2]から、「プリフォームの厚みの厚い部分」と「プリフォームの厚みの薄い部分」を複合した成形品であることは明らかだから、本願発明の「樹脂が注入された複合パーツを製造する装置」といえる。 そして、[図2]から、引用発明の「樹脂拡散媒体」において、「プリフォームの厚みの厚い部分とプリフォームの厚みの薄い部分で樹脂拡散媒体の空隙率を変化させ」た領域があることが看てとれるから、これらの領域をパターン化された領域と称するとすれば、「樹脂拡散媒体」がパターン化された領域を有すること及び引用発明の「樹脂拡散媒体」が、(ある「空隙率」の)空隙を有するパターン化された領域と(別の「空隙率」の)空隙を有する他の領域を備えることは明らかである。 以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「樹脂を注入している間に、構成要素を通る樹脂の流れを制御するための通路を有するコールシートを備えた、樹脂が注入された複合パーツを製造する装置であって、 コールシートが通路を有するパターン化された領域と通路を有する他の領域とを備え、 構成要素及びコールシートの間に剥離層をさらに含む、 コールシートのパターン化された領域がコールシートの他の領域より高い通路密度を有するので、通路密度のこの変動がコールシートの浸透性の変動につながる装置。」 [相違点] 相違点1 通路に関して、本願発明では「孔」であるのに対して、引用発明では「空隙」である点。 相違点2 コールシートが通路を有するパターン化された「領域」と通路を有する他の「領域」を備えていることに関して、本願発明では「領域」が「複数」であるのに対して、引用発明では「複数」と特定していない点。 第5 判断 上記相違点について検討する。 1 相違点1について 引用発明における「樹脂拡散媒体」の「空隙」と本願発明における「コールシート」の「孔」は、共に樹脂を注入している間に、「プリフォーム」すなわち「構成要素」を通る樹脂の流れを制御する点で共通する作用効果を有すること、広辞苑第二版補訂版(昭和54年10月15日)によれば、空隙率は「孔隙率に同じ」であり、孔隙率は「多孔度」の別称であることから、「空隙」及び「孔」の形状・構造に共通するのものが含まれるといえる。 よって、相違点1は、実質的な相違点でないというべきである。 仮に、相違するとしても、上記の説示を踏まえれば、樹脂の流れを制御する観点から、「空隙」を「孔」とすることは、当業者が容易に推考できる。 2 相違点2について 引用発明は、複雑な形状の樹脂成形品を成形する装置であるから、複雑な形状に対応させて「領域」を「複数」とする程度のことは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 3 効果について 出願人が、審判請求書において、本願発明及び引用発明の課題が異なると主張していること及び発明の課題を解決した結果が発明の効果とも言い得ることから、まず、発明の課題を検討する。 本願発明の課題は、「繊維構成要素の領域全体の樹脂の供給の最適化を可能にすることにより、構成要素の特定領域への樹脂の供給量を制御する」ことである(段落【0006】)。かかる課題は、「孔48の密度が高いコールシート26の領域75は、下層の構成要素24の厚い部分(図示せず)を覆う一方で、孔48の密度が低いコールシート26の領域77は、下層の構成要素24の薄い部分(図示せず)を覆っている。孔48の密度が高い領域75には結果的に、下層の構成要素24の対応する部分にさらに樹脂が供給される。この結果、構成要素24の厚い領域と薄い領域に実質的に均一の割合で注入することができ、樹脂流の実質的に均一な波面74により、詰まった領域ができるのを回避することができる。」(段落【0031】)との記載及び「コールシートの浸透性を変化させることによって、必要な領域、例えばしばしば層のパッドアップと呼ばれる(孔あき領域75の下の)構成要素24の厚い領域により多くの樹脂を供給し、同じ構成要素の薄い領域、例えば下層の孔あき領域77に少なく供給することができる。・・・コールシート26の浸透性のばらつきは、望ましい注入パターンを達成するのに役立ち、例えば詰まった領域、孔隙、及び/又は樹脂が欠乏している領域等の望ましくない流れ特性を回避することができる。」(段落【0032】)との記載に照らせば、構成要素の厚い領域に構成要素の薄い領域より多くの樹脂を供給し、特定領域へ樹脂が供給されないことを防止すること、すなわち詰まった領域ができるのを回避することにあると解される。 この点、引用発明の課題は、「強化繊維基材に面内方向に樹脂流動性の変化が存在する場合に、その変化を樹脂拡散媒体側で吸収できるようにし、製品または製品の主要構成部分となる樹脂含浸強化繊維基材について、未含浸部が生じたり、先に含浸した樹脂が後の樹脂含浸を阻害したりする問題の発生を防止し、安定して確実に所望の成形品を得ること」(段落[0006])であって、「プリフォーム11の厚みの変化に対応させて樹脂拡散媒体12自体の樹脂拡散の際の流動抵抗を変化させることにより、このような樹脂含浸阻害のおそれを除去できる」(段落[0023])との記載を踏まえれば、引用発明の課題は、樹脂含浸強化繊維基材に未含浸部が生じたり、先に含浸した樹脂が後の樹脂含浸を阻害することがないように、プリフォームの厚みの変化に対応させて、詰まった領域ができるのを回避することにあると解するのが自然である。 そうすると、本願発明及び引用発明の課題は、大枠において共通しており、これを解決することが効果と言い得るのだから、両者は、効果においても格別顕著な差異はないと解するのが相当である。 よって、本願発明の効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものである。 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-004749

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