特許拒絶査定不服審判
2016-004718
ポリアミド66とポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれるポリアミドとを含む組成物
- 審判番号
- 2016-004718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-531217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月31日
- 審決日
- 2017年02月06日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローディア オペレーションズ
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (C08L) / P18 .575-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-531217「ポリアミド66とポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれるポリアミドとを含む組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/041594、平成26年10月 6日国内公表、特表2014-526597〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月20日(パリ条約による優先権主張:2011年9月21日、フランス共和国(全ての海外地域及び領地を含む)(FR))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年3月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月23日に意見書が提出され、同年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年10月27日に意見書が提出されたが、同年11月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年3月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年5月23日付けで前置報告がされ、同年10月11日に上申書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[結論]
平成28年3月31日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年3月31日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、
「【請求項1】
少なくとも:
(a)末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい、ポリアミド66と;
(b)ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選択されるポリアミドと;
(c)補強材または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」を
「【請求項1】
少なくとも:
(a)末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい、組成物の総重量に対して15重量%~60重量%のポリアミド66と;
(b)ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選択される、組成物の総重量に対して20重量%~70重量%のポリアミドと;
(c)補強剤または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」とする補正(以下「補正事項1」という。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)を含むものである。
2 本件補正の目的
上記補正事項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「成分(a)」及び「成分(b)」について、それぞれ「組成物の総重量に対して15重量%~60重量%」及び「組成物の総重量に対して20重量%~70重量%」との限定を付加する補正であって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから、補正事項1を含む本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成28年3月31日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも:
(a)末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい、組成物の総重量に対して15重量%~60重量%のポリアミド66と;
(b)ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選択される、組成物の総重量に対して20重量%~70重量%のポリアミドと;
(c)補強剤または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」
(2)引用文献に記載された事項
ア 本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開平10-219106号公報(平成27年7月30日付け拒絶理由通知において引用された引用文献1。以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1-ア)
「【請求項1】(A)(a)アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂ならびに(b)ナイロン6樹脂および/またはナイロン66樹脂を含有するナイロン樹脂100重量部に対して、(B)平均繊維径5~15μmのガラス繊維10~150重量部および(C)銅化合物0.01~2重量部を含有してなることを特徴とする溶着成形用樹脂組成物。
・・・
【請求項3】(a)成分のナイロン樹脂が、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン126、ナイロン129、ナイロン1210、ナイロン1212、ナイロン11、ナイロン12の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の溶着成形用樹脂組成物。」
(1-イ)
「【0002】
【従来の技術】ナイロン樹脂は、その優れた射出成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐磨耗性などを利して、自動車、機械部品の分野で射出成形品として広範に利用されている。・・・このような難度の高い部品を樹脂化するためには射出成形や押し出し成形、ブロー成形などの単独成形技術だけでは不十分で、切削、接着、溶着などの後加工技術を組み合わせることが必要となる。しかし、従来のナイロン樹脂材料の設計はかかる後加工への適用性まで考慮したものとは言えず、たとえば2つ以上のパーツからなるガラス繊維強化ナイロン樹脂成形品を二色成形法などに代表される射出溶着法によって接着して用いる場合には特に部品が大型の場合、代表的なナイロン樹脂であるナイロン66樹脂では接着部分の強度が不十分であり、またナイロン6樹脂では吸水による寸法変化が大きいなどの問題のために使用が制限されるのが現状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した従来のナイロン樹脂における問題点であった溶着成形時の接着性及び吸水時あるいは自動車不凍液との接触時の溶着部強度の改良を課題とし、更に成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐磨耗性、成形品表面平滑性などナイロン樹脂本来の特性にも均衡して優れた溶着成形法に適したナイロン樹脂組成物を得ることを課題とする。」
(1-ウ)
「【0006】本発明で(a)成分として用いられるナイロン樹脂は、アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂であり、・・・この中でも特に有用な高級ナイロン樹脂の具体的な例としては、ナイロン6・9、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン10・10、ナイロン10・12、ナイロン11・6、ナイロン11・10、ナイロン11・12、ナイロン12・6、ナイロン12・10、ナイロン12・12、ナイロン12T、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T/6I共重合体、ナイロン6T/M-5T共重合体およびこれらの混合物、共重合体などを挙げることができる。」
「【0008】本発明において(b)成分としてナイロン6樹脂またはナイロン66樹脂が使用される。・・・(A)ナイロン樹脂において、(a)の高級ナイロンの配合量は、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上の順に好ましく、また99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下の順に好ましい。また(b)のナイロン6、ナイロン66の配合量はその和が、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上の順に好ましく、また99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下の順に好ましい。」
「【0013】本発明においては上記の特定のガラス繊維以外にも繊維状/非繊維状無機強化材を添加することも可能であり、・・・。また、これら繊維状/非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。」
「【0016】本発明のナイロン樹脂組成物の調製方法は特定の方法に限定されないが、具体的且つ効率的な例として原料のナイロン樹脂、ガラス繊維および銅化合物の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して用いるナイロン樹脂の融点に応じて180~330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。」
「【0017】・・・このようにして得られた本発明のナイロン樹脂組成物は、耐熱性、成形製品表面外観、寸法安定性、溶着成形時の接着性が均衡して優れたものであり、二色成形として通常の2種以上の溶融樹脂を同時に射出または押し出し成形する成形法におけると同様、射出成形や押し出し成形、ブロー成形で得られた成形品を射出成形金型内にインサートし、次いで新たに射出成形を行って両者を接着せしめて用いる場合に特に有用であり、この利点を生かしてたとえば自動車のインテークマニホールドなどの吸気系部品、ウォーターインレット、ウォーターアウトレットなどの冷却系部品、フューエルインジェクション、フューエルデリバリーパイプなどの燃料系部品、オイルタンクなどの容器類といった中空形状部品用などに好適に用いることができる。」
(1-エ)
「【0022】実施例1
ナイロン樹脂、ガラス繊維および銅化合物の溶融混練は日本製鋼所製TEX30型2軸押し出し機を用いて行った。相対粘度2.80のナイロン610樹脂60重量%および相対粘度2.70のナイロン66樹脂40重量%の混合物からなるナイロン樹脂100重量部をシリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmの条件で運転中の押し出し機のフィーダーに供給し、ついで押し出し機先端部のサイドフィーダーから繊維径10μm、ストランド長3mmのガラス繊維50重量部を供給して溶融混練を行い、押し出しガットを冷却後ペレタイザーでペレット化した。
【0023】ここで得られた樹脂組成物を種々の試験片に射出成形および溶着成形して表面平滑性、材料強度、接着強度などを測定した結果は表1に示すとおりであった。」
「【0025】実施例2
実施例1の組成物に更に0.05重量部のヨウ化第1銅および0.2重量部のヨウ化カリウムを加えた以外は実施例1に記載した方法と全く同様に混練、ペレット化、射出成形、物性測定を行った。その結果は表1に示すとおりであり、ここで得られた組成物は接着強度が実施例1に示す本発明の組成物に比べて更に向上したものであった。」
イ 本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開平10-316849号公報(平成27年7月30日付け拒絶理由通知において引用された引用文献2。以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2-ア)
「【請求項1】 ポリアミド樹脂100重量部と無機充填材10~200重量部とからなる組成物であり、上記ポリアミド樹脂が末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100であり、ポリアミド樹脂と無機充填材との界面にグラフト化ポリアミド樹脂が存在し、該グラフト化ポリアミド樹脂の量が無機充填材100重量部あたり0.05~0.7重量部で、かつ、グラフト化ポリアミド樹脂の無機充填材表面被覆率が60~100%であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】 ポリアミド樹脂が、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)樹脂である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】 ポリアミド樹脂がポリアミド66樹脂と他のポリアミド樹脂とのコポリマーもしくはブレンド物である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
・・・
【請求項6】 無機充填材が、ガラス繊維である請求項1、2、3、4または5記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】 請求項1~6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。」(平成16年4月27日提出の手続補正書によるもの。公報発行日:平成17年4月7日)
(2-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械的性質、熱的性質に優れ、自動車材料や各種の構造材料として好適に用いられるポリアミド樹脂組成物、およびその成形品に関する。さらに詳しくは、耐薬品性および耐熱水性、特に、液冷式内燃機関の冷却水の凍結防止に使用するグリコール類と水とからなる不凍液に対する耐久性に優れるポリアミド樹脂組成物、およびその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】・・・
【0003】しかしながら、従来のガラス繊維強化ポリアミド66樹脂は、高温雰囲気下で不凍液と長時間接触した後に強度が低下してしまう問題点があり、厳しい信頼性の要求される自動車部品には、必ずしも最適な材料とは言えなかった。上記の問題点を改善するために、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂のガラス繊維濃度を高めて、初期の機械物性を向上させることにより、不凍液に対する劣化寿命を延長させようとの試みがなされている。しかし、この技術ではガラス繊維増量に伴う部品重量の増大をきたし自動車部品軽量化の動きに逆行するばかりでなく、樹脂部品の外観も悪くなるため後加工工程が増えるという新たな問題が生じるため、必ずしも満足すべき材料ではなかった。」
(2-ウ)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、無機充填材強化ポリアミド樹脂の優れた特性を損なわずに、高温下での耐薬品性、耐水性を改善したポリアミド樹脂組成物、およびその成形品を提供することを目的とするものである。」
(2-エ)
「【0009】
本発明に用いるポリアミド樹脂は、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100の末端アミノ基過剰のものである。
末端基濃度差{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}が0以下の時、ポリアミド樹脂と無機充填材(例えばガラス繊維)との界面層に存在するポリアミド樹脂の耐久性が低下し、組成物の耐久性が低下してしまい好ましくない。また、末端基濃度差が100を越えるとき、成形時にアミノ由来の分解ガスを発生しやすくなり成形性が低下するため好ましくない。」(平成16年4月27日提出の手続補正書によるもの。公報発行日:平成17年4月7日)
「【0013】・・・本発明に言う、ポリアミド樹脂と無機充填材との界面とは、無機充填材表面に存在するグラフト化ポリアミド樹脂のことをいう。このグラフト化ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂組成物、または、その成形品をポリアミド樹脂の溶媒に浸しポリアミド樹脂を溶出させ無機充填材を析出させた時、溶媒中に溶出せず無機充填材表面に残るポリアミド樹脂のことである。この無機充填材表面に残る溶出しない樹脂の主成分は、赤外吸収スペクトル、熱分解ガスクロマトグラフ分析からポリアミド樹脂であることが確認できる。」
「【0017】本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と無機充填材(例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、カオリン等)を、適切にデザインされたスクリューを有する単軸または二軸押出機で溶融混練して得られる。ポリアミド樹脂と無機充填材との界面に存在するグラフト化ポリアミド樹脂の量と表面被覆率は、押出条件(温度、スクリューデザイン等)、ポリアミド樹脂(分子量、末端基濃度)、無機充填材の表面処理等で変え得るが、界面のグラフト化ポリアミド樹脂の量とグラフト化ポリアミド樹脂の無機充填材表面被覆率が本発明の範囲内であれば、これらの製造方法は限定されない。
【0018】本発明で言う成形品としては、例えば、自動車材料や各種の構造材料として用いられるもので、自動車アンダーフード部品(ラジエータータンク、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、ウォーターバルブ、ラジエーターパイプ、ヒータータンク等)、机・椅子の脚等の構造材料、温水タンク、自転車ホイール等が挙げられる。」
(2-オ)
「【0027】
【実施例1】400リットルのオートクレーブ中に、40%AH塩(アジピン酸/ヘキサメチレンジアミンの等モル塩)水溶液285リットル、14%ヘキサメチレンジアミン水溶液8リットルを仕込み、1.8MPa加圧下で加熱溶融重合を行い、冷却固化、造粒して末端基濃度が表1の濃度のポリアミド66樹脂のペレットを得た。得られたナイロン66樹脂のペレット70重量部とガラス繊維(繊維径10μm×長さ3mmのチョップドストランドをアミノシランカップリング剤とアクリル系集束剤の混合物で表面処理したガラス繊維)30重量部とを2軸押出機{東芝機械(株)製TEM-35}を用いて、290℃で溶融混練して、冷却して組成物ペレットを得た。得られた組成物ペレットを射出成形機を用いて290℃の温度で物性測定用試験片を作成し、この試験片を上記測定方法(1)~(7)に従って、解析および物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0028】
【実施例2~5】14%ヘキサメチレンジアミン水溶液の量を変えた以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、末端基濃度が表1の濃度のポリアミド66樹脂のペレットを得て、これらのポリアミド66樹脂のペレットを用いて、実施例1と同様にして組成物ペレットを得た。得られた組成物ペレットを、解析および物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0029】
【比較例1,2】14%ヘキサメチレンジアミン水溶液の量を変えた以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、末端基濃度が表1の濃度のポリアミド66樹脂のペレットを得て、これらのポリアミド66樹脂のペレットを用いて、実施例1と同様にして組成物ペレットを得た。得られた組成物ペレットを、解析および物性評価した。その結果を表1に示す。比較例2のサンプルでは成形時にアミン臭がし、成形性も良くなかった。
【0030】
【表1】
」
(2-カ)
「【0036】
【発明の効果】本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、従来のものに較べて、高温下での耐薬品性、耐水性が改善され、特に、耐熱水性、グリコール類に対する耐久性に優れる。したがって、冷却式内燃機関の冷却水の凍結防止に使用するグリコール類と水とからなる不凍液に対する耐久性が要求される自動車材料や各種の構造材料として好適に用いられる。」
ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開昭60-88067号公報(平成27年7月30日付け拒絶理由通知において引用された引用文献3。以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3-ア)
「ポリマー主鎖中のメチレン基数とアミド基数の比(CH2/NHCO)が4~5である脂肪族ポリアミド〔A〕10~90重量部と(CH2/NHCO)が6~11の高級脂肪族ポリアミド〔B〕90~10重量部とからなり、かつ〔A〕と〔B〕の相対粘度比(〔A〕の相対粘度/〔B〕の相対粘度)が、1.16~2.70であるポリアミド樹脂組成物90~40重量%と、ガラス繊維10~60重量%とからなるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」(特許請求の範囲)
(3-イ)
「本発明はガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。さらに詳しくは金属ハロゲン化物による環境応力亀裂が少なく、かつ優れた機械的性質を有するガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミドにガラス繊維を配合したガラス繊維強化ナイロンは、その強靭性、電気特性、耐熱性を生かして、自動車や電気製品の部品として巾広く利用されている。しかし、汎用的に用いられているポリアミド、例えばε-カプロラクタムの開環重合で得られるナイロン6やヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合反応で得られるナイロン66などでは金属ハロゲン化物によって環境応力亀裂が生じるという重大な欠点がある。特に道路凍結防止剤として用いられる塩化カルシウム、金属亜鉛等により、環境応力亀裂を生じ、自動車部品分野での利用が制約されている。
・・・
本発明者らは、更にこの問題を改善すべく鋭意検討した結果、脂肪族ポリアミド〔A〕に高級脂肪族ポリアミド〔B〕を配合するに際し〔A〕と〔B〕の分子量(相対溶液粘度)を特定し、さらにガラス繊維で強化することで、驚くべきことに、この改善に大きな効果を発揮することを見出した。」(第1頁左欄第15行~第2頁左上欄第1行)
(3-ウ)
「脂肪族ポリアミド〔A〕は、(CH2/NHCO)が、4~5であるポリアミドであり、かかるポリアミドとしては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66等またはそれらの混合物、共重合体があげられる。
高級脂肪族ポリアミド〔B〕は、(CH2/NHCO)が6~11であるポリアミドであり、かかるポリアミドとしては、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン613等またはそれらの混合物、共重合体があげられる。」(第2頁右上欄第3~13行)
(3-エ)
「本発明のポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド〔A〕と高級脂肪族ポリアミド〔B〕の粘度比が1.16~2.70となるよう選ばれ、ポリアミド〔A〕10~90、好ましくは30~60重量部とポリアミド〔B〕90~10好ましくは70~40重量部からなるものである。」(第2頁左下欄第10~15行)
(3-オ)
「実施例1
相対粘度ηrが2.85,3.80,4.78,4.68であるナイロン66の60重量部に、相対粘度ηrが2.18,2.76,1.80であるナイロン610の40重量部を、第1表に示す組み合わせにて配合し、さらに市販のガラス短繊維(3mm長チョップドストランドタイプ)50重量部を加え、タンブラ型混合機にてブレンドした。当混合物を50mmφ単軸押出機にて溶融混練し、ポリアミド組成物を得た。得られたガラス繊維強化ポリアミド組成物を射出成形機を用いて物性測定用試験片に成形し、耐環境応力亀裂性を調べた。その結果を第1表に示した。」(第3頁左上欄下から2行~右上欄第10行)
「
」(第3頁左下欄)
(3)引用発明
ア 引用文献1には、摘示(1-ア)~(1-エ)、特に、請求項1及び段落【0008】又は実施例2の記載からみて、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「(A)(a)アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂ならびに(b)ナイロン66樹脂を含有するナイロン樹脂100重量部に対して、(B)平均繊維径5~15μmのガラス繊維10~150重量部および(C)銅化合物0.01~2重量部を含有してなることを特徴とする溶着成形用樹脂組成物であって、前記ナイロン樹脂において(a)高級ナイロン樹脂の配合量は、20重量%以上、80重量%以下が好ましく、(b)ナイロン66の配合量は、20重量%以上、80重量%以下が好ましいものである、溶着成形用樹脂組成物。」(以下「引用発明1A」という。)
「相対粘度2.70のナイロン66樹脂40重量%、相対粘度2.80のナイロン610樹脂60重量%の混合物からなるナイロン樹脂100重量部に対して、繊維径10μmのガラス繊維50重量部、0.05重量部のヨウ化第1銅および0.2重量部のヨウ化カリウムを含有してなる、溶着成形用樹脂組成物。」(以下「引用発明1B」という。)
イ 引用文献3には、上記(3-ア)~(3-オ)の記載、特に実施例1の記載からみて、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「相対粘度ηrが2.85であるナイロン66の60重量部に、相対粘度ηrが2.18であるナイロン610の40重量部を配合し、さらに市販のガラス短繊維(3mm長チョップドストランドタイプ)50重量部を加えブレンドした、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。」(以下「引用発明3」という。)
(4)引用発明1Aに基づく進歩性について
ア 対比
本願補正発明と引用発明1Aとを対比すると、引用発明1Aの「ナイロン66樹脂」及び「平均繊維径5~15μmのガラス繊維」は、それぞれ本願補正発明の「ポリアミド66」及び「補強剤または増量剤」に相当する。
したがって、両発明は、
「少なくとも:
(a)ポリアミド66と;
(b)他のポリアミドと;
(c)補強剤または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」
である点で一致し、次の点において相違する。
(相違点1)ポリアミド66が、本願補正発明においては、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいのに対し、引用発明1Aにおいては、各末端基の量については不明である点。
(相違点2)他のポリアミドが、本願補正発明においては、「ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選択される」ものであるのに対し、引用発明1Aにおいては、「アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂」である点。
(相違点3)本願補正発明は、成分(a)ポリアミド66を、組成物の総重量に対して15重量%~60重量%、成分(b)他のポリアミドを、組成物の総重量に対して20重量%~70重量%含有するのに対し、引用発明1Aは、ナイロン樹脂において、ナイロン66の配合量は20重量%以上、80重量%以下が好ましく、アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂の配合量は20重量%以上、80重量%以下が好ましいものであるが、組成物の総重量に対する含有量は不明である点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
a 引用文献2には、自動車材料などに好適に用いられる、耐薬品性および耐熱水性、特に、液冷式内燃機関の冷却水の凍結防止に使用するグリコール類と水とからなる不凍液に対する耐久性に優れるポリアミド樹脂組成物に関する技術分野において(摘示(2-イ))、無機充填材強化ポリアミド樹脂の優れた特性を損なわずに、高温下での耐薬品性、耐水性を改善したポリアミド樹脂組成物を提供するために、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100の末端アミノ基(「末端アミン基」と同義)過剰としたポリアミド樹脂を用い、かつ、ポリアミド樹脂と無機充填材との界面に存在するグラフト化ポリアミド樹脂の量が無機充填材100重量部あたり0.05~0.7重量部及びグラフト化ポリアミド樹脂の無機充填材表面被覆率が60~100%であるポリアミド樹脂組成物とすることが記載され(摘示(2-ア))、実施例においては、ナイロン66(「ポリアミド66」に相当)を末端アミノ基74~125ミリグラム当量/kg、末端カルボキシル基35~69ミリグラム当量/kgとした、末端アミノ基の量が末端カルボキシル基の量よりも多いものを用いている(摘示(2-オ))。
b 引用発明1Aに係る溶着形成用樹脂組成物は、自動車の各種部品用に用いられるものであり(摘示(1-イ)の段落【0002】、摘示(1-ウ)段落【0017】)、自動車不凍液との接触時の溶着部強度の改良を課題とするものであり(摘示(1-イ)の段落【0003】)、他方、引用文献2に記載されたポリミド樹脂組成物は、自動車材料などに好適に用いられるものであり(摘示(2-イ)の段落【0001】)、高温下での、不凍液に対する耐久性などの耐薬品性、耐水性を改善することを課題とするものであり摘示(2-イ)の段落【0001】、摘示(2-ウ))、両者は、技術分野及び課題が同じである。
c したがって、引用発明1Aにおいて、さらに耐不凍液性を向上させるために、引用文献2に記載された技術的事項を適用し、引用発明1Aのナイロン66を、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100として、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいものを使用し、そして、ナイロン66とガラス繊維を混合した組成物に、ナイロン66とガラス繊維の間にグラフト化ポリアミド樹脂を存在させることにより、相違点1に係る本願補正発明の「末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい」という発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到することができたものといえる。
d そして、引用発明1Aにおいて、引用文献2に記載された技術事項を適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を採用したことにより、耐不凍液性などの耐薬品性が向上することは、当業者が予測可能であるから、本願補正発明の「良好な耐化学薬品性を有する」という効果は、格別優れたものということはできない。
(イ)相違点2について
引用文献1には、「アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂」の選択肢として、ナイロン610(「ポリアミド610」に相当)、ナイロン1010(「ポリアミド1010」に相当),ナイロン1012(「ポリアミド1012」に相当)が記載されており(摘示(1-ア)の【請求項3】)、摘示(1-ウ)の段落【0006】)、実施例においては、ナイロン610を用いている(摘示(1-ウ))。
したがって、引用発明1Aにおいて、アミド基1個当たりの炭素原子数が7以上である高級ナイロン樹脂として、ナイロン610、ナイロン1010又はナイロン1012を選択することは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)相違点3について
引用文献1の実施例2には、ナイロン66:40重量部、ナイロン610:60重量部、及び、CuIとKI:合計0.25部を含有する溶着形成用樹脂組成物が記載され、該組成物の総重量に対する含有量は、ナイロン66:約26.6重量%(40÷(100+50+0.25))、ナイロン610:約39.9重量%(60÷(100+50+0.25))であるから、引用発明1Aにおいて、実施例2の数値を参考にして、ナイロン66を約26.6重量%、ナイロン610などの高級ナイロン樹脂を約39.9重量%程度とし、本願補正発明の範囲内とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
ウ 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明1A及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)引用発明1Bに基づく進歩性について
ア 対比
成分(b)としてポリアミド610を用いる本願補正発明と引用発明1Bとを対比すると、引用発明1Bの「相対粘度2.70のナイロン66樹脂」、「相対粘度2.80のナイロン610樹脂」及び「繊維径10μmのガラス繊維」は、それぞれ本願補正発明の「ポリアミド66」、「ポリアミド610」及び「補強剤または増量剤」に相当する。
引用発明1Bにおける「相対粘度2.70のナイロン66樹脂」の組成物の総重量に対する含有量は、換算すると約26.6重量%(40÷(100+50+0.05+0.2))、「相対粘度2.80のナイロン610樹脂」の組成物の総重量に対する含有量は、換算すると約39.9重量%(60÷(100+50+0.05+0.2))であり、本願補正発明における各成分の含有量と重複一致している。
したがって、本願補正発明と引用発明1Bとは、
「少なくとも:
(a)組成物の総重量に対して15重量%~60重量%のポリアミド66と;
(b)ポリアミド610である、組成物の総重量に対して20重量%~70重量%のポリアミドと;
(c)補強剤または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」
である点で一致し、次の点において相違する。
(相違点1)ポリアミド66が、本願補正発明においては、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいのに対し、引用発明1Bにおいては、各末端基の量については不明である点。
イ 判断
(ア)引用文献2には、自動車材料などに好適に用いられる、耐薬品性および耐熱水性、特に、液冷式内燃機関の冷却水の凍結防止に使用するグリコール類と水とからなる不凍液に対する耐久性に優れるポリアミド樹脂組成物に関する技術分野において(摘示(2-イ))、無機充填材強化ポリアミド樹脂の優れた特性を損なわずに、高温下での耐薬品性、耐水性を改善したポリアミド樹脂組成物を提供するために、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100の末端アミノ基過剰としたポリアミド樹脂を用い、かつ、ポリアミド樹脂と無機充填材との界面に存在するグラフト化ポリアミド樹脂の量が無機充填材100重量部あたり0.05~0.7重量部及びグラフト化ポリアミド樹脂の無機充填材表面被覆率が60~100%であるポリアミド樹脂組成物とすることが記載され(摘示(2-ア))、実施例においては、ナイロン66(「ポリアミド66」に相当)を末端アミノ基74~125ミリグラム当量/kg、末端カルボキシル基35~69ミリグラム当量/kgとした、末端アミノ基の量が末端カルボキシル基の量よりも多いものを用いている(摘示(2-オ))。
(イ)引用発明1Bに係る溶着形成用樹脂組成物は、自動車の各種部品用に用いられるものであって(摘示(1-イ)の段落【0002】、摘示(1-ウ)段落【0017】)、自動車不凍液との接触時の溶着部強度の改良を課題とするものであり(摘示(1-イ)の段落【0003】)、他方、引用文献2に記載されたポリミド樹脂組成物は、自動車材料などに好適に用いられるものであって(摘示(2-イ)の段落【0001】)、高温下での不凍液に対する耐久性などの耐薬品性、耐水性を改善することを課題とするものであり(摘示(2-イ)の段落【0001】、摘示(2-ウ))、両者は、技術分野及び課題が同じである。
(ウ)したがって、引用発明1Bにおいて、さらに耐不凍液性を向上させるために、引用文献2に記載された技術的事項を適用し、引用発明1Bのナイロン66を、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100として、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいものを使用し、そして、ナイロン66とガラス繊維を混合した組成物に、ナイロン66とガラス繊維との間にグラフト化ポリアミド樹脂を存在させることにより、相違点1に係る本願補正発明の「末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい」という発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到することができたものといえる。
(エ)そして、引用発明1Bにおいて、引用文献2に記載された技術事項を適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を採用したことにより、耐不凍液性などの耐薬品性が向上することは、当業者が予測可能であるから、本願補正発明の「良好な耐化学薬品性を有する」という効果は、格別優れたものということはできない。
ウ 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明1B及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)引用発明3に基づく進歩性について
ア 対比
成分(b)としてポリアミド610を用いる本願補正発明と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「相対粘度ηrが2.85であるナイロン66」、「相対粘度ηrが2.18であるナイロン610」及び「市販のガラス繊維(3mm長チョップドストランドタイプ)」は、それぞれ本願補正発明の「ポリアミド66」、「ポリアミド610」及び「補強剤または増量剤」に相当する。
引用発明3における「相対粘度ηrが2.85であるナイロン66」の組成物の総重量に対する含有量は、換算すると40重量%(60÷(60+40+50))、相対粘度ηrが2.18であるナイロン610」の組成物の総重量に対する含有量は、換算すると約26.7重量%(40÷(60+40+50))であり、本願補正発明における各成分の含有量と重複一致している。
したがって、本願補正発明と引用発明3とは、
「少なくとも:
(a)組成物の総重量に対して15重量%~60重量%のポリアミド66と;
(b)ポリアミド610である、組成物の総重量に対して20重量%~70重量%のポリアミドと;
(c)補強剤または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」
である点で一致し、次の点において相違する。
(相違点1)ポリアミド66が、本願補正発明においては、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいのに対し、引用発明3においては、各末端基の量については不明である点。
イ 判断
(ア)引用発明3に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、自動車の部品などの分野で用いられるものであって、道路凍結防止剤として用いられる塩化カルシウムなどによる環境応力亀裂を改善したポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とするものである(摘示(3-イ))。
また、自動車の部品に用いられるポリアミド樹脂組成物として、耐不凍液性を向上させることは、本願優先日当時、当業界において周知の課題であったと認められる(必要ならば、特開昭60-13845号公報:1頁右欄下から3行~2頁右上欄末行、特開2009-215514号公報:段落【0002】など参照)。
したがって、本願優先日当時、引用文献3の記載に接した当業者は、引用発明3において、道路凍結防止剤である塩化カルシウムなどによる環境応力亀裂を改善することに加えて、耐不凍液性を向上させる動機付けがあったといえる。
(イ)他方、引用文献2に記載されたポリアミド樹脂組成物は、自動車材料などに好適に用いられるものであって(摘示(2-イ)の段落【0001】)、高温下での不凍液に対する耐久性などの耐薬品性、耐水性を改善することを課題とするものであり(摘示(2-イ)の段落【0001】、摘示(2-ウ))、引用発明3と引用文献2に記載されたポリアミド樹脂組成物は、両者は、自動車に用いられる材料である点で技術分野は一致している。
そうすると、引用発明3において、耐不凍液性を改善するために、前記(5)イ(ア)のとおりの引用文献2に記載された技術事項を適用し、引用発明3のナイロン66を、末端基濃度差0<{[NH2]-[COOH](ミリグラム当量/キログラム)}≦100として、末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きいものを使用し、そして、ナイロン66とガラス繊維を混合した組成物に、ナイロン66とガラス繊維の間にグラフト化ポリアミド樹脂を存在させることにより、相違点1に係る本願補正発明の「末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい」という発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到することができたものといえる。
(ウ)そして、引用発明3において、引用文献2に記載された技術事項を適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を採用したことにより、塩化カルシウムなどの凍結防止剤だけでなく、耐不凍液性などの耐薬品性が向上することは、当業者が予測可能な程度のものであるから、本願補正発明の「良好な耐化学薬品性を有する」という効果は、格別優れたものということはできない。
ウ 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明3及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、平成28年10月11日提出の上申書において、概ね次のような主張をしている。
「以下に、本願請求項に係る発明について、原査定の拒絶理由1に該当しないことを以下の通り説明致します。
・・・
第二に、引用文献2は、以下に示す重要な特徴により特徴付けられております。すなわち、(i)グラフト化ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂(A)と無機充填材(B)との界面に、特定の量(無機充填材100重量部あたり0.05~0.7重量部)存在すること、(ii)グラフト化ポリアミド樹脂の無機充填材表面被覆率が60~100%であることです。・・・
以上より、たとえポリアミド樹脂組成物の不凍液に対する耐久性が、0~100ミリグラム当量/キログラムの末端基濃度差{[NH2]-[COOH]}を有するポリアミド樹脂を用いることにより向上し得ることを、引用文献2が開示しているとしても、・・・。引用文献2に触れた当業者は、引用文献2に記載の発明が、本願請求項に係る発明よりも、むしろ、耐不凍液性を達成する目的で上述の(i)及び(ii)の特定の特徴を有するものであると見なします。」
イ しかしながら、引用文献2の表1において、グラフト化ポリアミド樹脂に関する数値を一定とした場合に、ナイロン66を末端アミノ基過剰とした実施例1~5は、末端カルボキシル基過剰の比較例1よりも、耐不凍液性が向上したことが示されているから、引用文献2に接した当業者は、グラフト化ポリアミド樹脂に関する(i)及び(ii)の特徴、並びに、ナイロン66を末端アミノ基過剰とすることによって、耐不凍液性が向上することを理解することができるといえる。
そして、本願補正発明において、ナイロン66(ポリアミド66)とガラス繊維(補強剤または増量剤)との間にグラフト化ポリアミド樹脂を存在させることが排除されているわけではない以上、上述のとおり、各引用発明と引用文献2に記載された事項に基づいて、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を備えた組成物に想到することは、当業者において容易になし得たことであるといわざるを得ない。
(8)まとめ
本願補正発明は、引用発明1A、1B又は引用発明3、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年3月31日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも:
(a)末端アミン基の量が末端酸基の量よりも大きい、ポリアミド66と;
(b)ポリアミド610、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選択されるポリアミドと;
(c)補強材または増量剤と
をブレンドすることによって得られる組成物。」
2 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開平10-219106号公報(引用文献1)、特開平10-316849号公報(引用文献2)及び特開昭60-88067号公報(引用文献3)の記載事項は、上記第2の3(2)に記載したとおりである。
また、引用発明1A、1B及び引用発明3は、上記第2の3(3)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2の2のとおり、本願補正発明における成分(a)及び成分(b)の組成物の総重量に対する含有量に関する限定をなくしたものである。
そして、本願発明の特定事項を全て含む本願補正発明が、上述のとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-004718