特許拒絶査定不服審判
2016-003793
超音波プローブ及び超音波画像表示装置
- 審判番号
- 2016-003793
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-215098外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月11日
- 審決日
- 2016年10月31日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 分類
- P18 .121-Z (H04R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-215098「超音波プローブ及び超音波画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年4月25日出願公開、特開2013-77883〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成23年9月29日の出願であって、平成23年11月14日付けで手続補正がなされ、平成26年12月26日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月6日付けで意見書が提出されたが、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成23年11月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
超音波振動子とバッキング層との間に、前記超音波振動子から送波される超音波を反射する反射層を有し、前記バッキング層は、バッキング材の表面に該バッキング材よりも熱伝導率が高い材質からなる熱伝導層が形成されていることを特徴とする超音波プローブ。」
3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-154382号公報(以下、「引用例」という。)には、「超音波プローブ」について、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【0028】
先ず、本発明に係る超音波診断装置の実施の形態の一例の概略構成について図1に基づいて説明する。図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ101とこの超音波プローブ101が接続される超音波診断装置本体102とを備えている。
【0029】
前記超音波プローブ101は、図2に示すように、本例ではセクター(sector)型のプローブであり、被検体に超音波を送信し、またこの超音波の送信に対して得られる超音波エコーを受信する。この超音波プローブ101の詳細な構成については後述する。」
(2)「【0033】
前記超音波プローブ101について詳細に説明する。図2に示すように、前記超音波プローブ101は、先端部に音響レンズ部10を有している。また、前記超音波プローブ101は、プローブ筐体11、前記超音波診断装置本体102と接続するための接続ケーブル12を備えている。
【0034】
前記プローブ筐体11内には、機能素子部13が設けられている。この機能素子部13について、図3及び図4に基づいて詳細に説明する。前記機能素子部13は、音響整合層14、圧電振動子15、接着層16、反射層17、バッキング(backing)材層18、及びフレキシブル(flexible)基板19を備えている。x軸方向に長い直方体の形状を有する前記音響整合層14、前記圧電振動子15及び前記反射層17は、超音波の照射方向に沿った方向であるz軸方向に積み重ねられて積層体20を構成する。そして、この積層体20が、y軸方向に複数配列されている。
(中略)
【0036】
前記反射層17は、前記圧電振動子15における前記音響整合層14とは反対側の面に、エポキシ樹脂接着剤等からなる前記接着層16によって圧着されている。前記反射層17は、前記圧電振動子15の弾性振動によって前記反射層17側へ生じる超音波を被検体の方向へ反射する。前記反射層17は、本発明における反射層の実施の形態の一例である。」
(3)図3
(4)図4
そして、上記(4)の図面の記載からみて、圧電振動子15とバッキング材層18との間に、反射層17が設けられている。
したがって、上記(1)ないし(4)の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「圧電振動子とバッキング材層との間に、前記圧電振動子の弾性振動によって生じる超音波を反射する反射層を有する超音波プローブ。」
4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「圧電振動子」は超音波を発生するものであるから、本願発明における「超音波振動子」に相当し、また、引用発明における「バッキング材層」は、本願発明における「バッキング層」に相当する。
(2)引用発明において、反射層が反射する超音波は圧電振動子から送られてくるものであるから、引用発明においても、反射層は、圧電振動子(超音波振動子)から送波される超音波を反射するものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「超音波振動子とバッキング層との間に、前記超音波振動子から送波される超音波を反射する反射層を有する超音波プローブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
バッキング層は、本願発明においては、バッキング材の表面に該バッキング材よりも熱伝導率が高い材質からなる熱伝導層が形成されているのに対して、引用発明においてはそのような熱伝導層が形成されていない点。
5.判断
(1)相違点について
医用の超音波プローブにおいては、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-22077号公報(以下、「周知例1」という。)の段落【0002】、【0011】ないし【0015】や、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-184497号公報(以下、「周知例2」という。)の段落【0004】ないし【0007】に記載されているように、安全性を確保するために表面温度を下げる必要があり、そのために超音波振動子で発生する熱を十分に放熱できるようにすることは周知の課題であり、その解決手段として、例えば、周知例1の段落【0030】ないし【0035】並びに図2や、周知例2の段落【0019】ないし【0036】並びに図1に記載されているように、バッキング材の表面に該バッキング材よりも熱伝導率が高い材質からなる熱伝導層を形成することは周知技術にすぎない。
そして、引用例の段落【0007】中の「肋間からのスキャンを行う際に、被検体の体表との接触が不十分になり撮影上好ましくない。」という記載からみて、引用発明の超音波プローブも医用であることは明らかであるから、引用発明においても超音波振動子で発生する熱を十分に放熱できるようにすることは当業者が容易に着想し得る課題であり、当該課題を解決するために、上記周知技術を採用することは、当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。
また、本願発明の効果も、引用発明における反射層の効果及び周知技術に係る熱伝導層の効果に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。
(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において次のとおり主張している。
「バッキング層は、超音波振動子から被検体とは反対側へ生じた超音波を吸収する機能を有している。このようなバッキング層に、引用文献2、3に記載されている発明のようにバッキング材よりも熱伝導率が高い材質からなる熱伝導層を設けると、熱伝導層の音響インピーダンスがバッキング層のそれとは異なる場合、熱伝導層の厚さによっては、超音波振動子から生じた超音波が熱伝導層において被検体側へ反射する。この場合、バッキング層の機能が発揮されず、音響特性に悪影響が出る。
従って、引用文献2、3に記載された発明では、熱伝導層の厚さを、音響特性への悪影響を抑制することができる厚さに抑制する必要がある。このことは、引用文献3の段落[0028]に、「厚みは特性に影響してくるので、特性に影響を与えない厚み」「に選択することが望ましい」と記載されていることからしても明らかである。熱伝導層の厚さが抑制されると、熱伝導の効率が悪くなる。従って、引用文献2、3に記載された発明では、熱伝導層の厚さを厚くすると音響特性に悪影響を及ぼし、一方で音響特性を考慮して熱伝導層の厚さを薄くすると熱伝導性に悪影響を及ぼすというトレードオフの問題を生じる。
一方、本願請求項1に係る発明では、このようなトレードオフの問題、すなわち良好な熱伝導性を有しつつも音響特性への悪影響を抑制するという課題を解決する発明である。具体的には、本願請求項1に係る発明は、超音波振動子とバッキング層との間に、前記超音波振動子から送波される超音波を反射する反射層を有する構成において、バッキング材の表面に熱伝導層を有する構成になっている。このような構成とした理由は、超音波振動子からバッキング層側へ生じた超音波は、ほとんどが反射層で反射するので、バッキング材の表面の熱伝導層を、引用文献2、3に記載された発明より厚くしても、音響特性への悪影響を抑制することができるからである。従って、本願請求項1に係る発明によれば、音響特性への悪影響を抑制しつつ、引用文献2、3に記載された発明よりも、熱伝導性が良好な熱伝導層を設けることができる。
このような本願請求項1に係る発明の思想、課題は、引用文献2,3では全く意図されていない。従って、引用文献1に、引用文献2,3を組み合わせることは容易になしうるものではなく、本願請求項1に係る発明を当業者が容易に発明できるものではない。
また、引用文献1には、バッキング材層の表面に音響特性に悪影響を及ぼす構成を設けてもよいことについては記載も示唆もなく、また圧電振動子で発生する熱を被検体とは反対側へ逃がすことについては全く意図されていない。従って、このことからも引用文献1に引用文献2,3を組み合わせる動機づけはない。」
そこで上記主張について検討すると、引用例(上記主張における引用文献1)には圧電振動子で発生する熱については記載されていないが、上記(1)で検討したとおり、引用発明においても超音波振動子で発生する熱を十分に放熱できるようにすることは当業者が容易に着想し得る課題であるから、引用発明において上記周知技術を採用する動機付けはあると言える。
また、上記主張におけるトレードオフの問題は、反射層を有していない超音波プローブにおいて、バッキング層に熱伝導層を設けた場合に生じる問題である。これに対して、引用発明は反射層をそもそも有するものであるから、上記周知技術を採用してバッキング層に熱伝導層を設けたとしても、審判請求人が主張するようなトレードオフの問題は生じない。したがって、上記トレードオフの問題は、引用発明において上記周知技術を採用することを阻害するものではない。
そして、本願発明において熱伝導層の厚みは規定されていないから、熱伝導層の厚みに関して何ら特徴を有するものではなく、加えて、熱伝導層の厚みは超音波プローブの特性に影響が出ない範囲で当業者が適宜選択し得るものである(例えば、周知例1の段落【0029】及び周知例2の段落【0028】参照)から、引用発明において上記周知技術を採用した場合においても、その熱伝導層の厚みは超音波プローブの特性に影響が出ない範囲で当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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