特許拒絶査定不服審判
2016-003095
表示基板
- 審判番号
- 2016-003095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-005902外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月29日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三星ディスプレイ株式會社
- 【請求人代理人】山下 託嗣
- 分類
- P18 .536-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 5902「表示基板」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-146713、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年1月14日(パリ優先権主張 2010年(平成22年)1月15日 韓国)の出願であって、平成25年11月26日付で審査請求がなされ、平成26年7月31日付で拒絶理由が通知され、同年11月4日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、平成27年1月26日付で拒絶理由が通知され、同年4月21日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年10月19日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年2月29日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年7月15日付で上申書が提出され、当審において平成29年3月1日付で最後の拒絶理由が通知され、同年6月7日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年6月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし9に記載される事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
絶縁基板上に形成されたゲート配線と、
前記ゲート配線上に形成され、酸化物半導体を含む酸化物半導体パターン、および
前記酸化物半導体パターン上に前記ゲート配線と交差するように形成されたデータ配線を含み、
前記酸化物半導体パターンは、第1酸化物としてのGaInZnOまたはHfInZnOおよび窒素を含むGaInZnONまたはHfInZnONで形成される第1酸化物半導体パターン、および第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含み、
前記第1酸化物半導体パターンと前記第2酸化物半導体パターンとは、互いに重ね合わされ、平面図にて輪郭が互いに一致し、
前記第1酸化物半導体パターンがゲート電極の側に位置し、前記第2酸化物半導体パターンが、ソース及びドレイン電極の側に位置し、
前記第1酸化物半導体パターンは、400nm近傍の波長を有する光の透過率を、それ以外の他の可視光線波長領域の光の透過率よりも低くする表示基板。
【請求項2】
前記ゲート配線はゲート電極を含み、前記ゲート電極のターンオン電圧は0V以上である、請求項1に記載の表示基板。
【請求項3】
前記酸化物半導体パターン上に形成されたエッチング停止パターンをさらに含む請求項1または2に記載の表示基板。
【請求項4】
前記データ配線は、互いに離隔されて対向するソース電極およびドレーン電極を含み、前記エッチング停止パターンはソース電極およびドレーン電極によって露出される請求項3に記載の表示基板。
【請求項5】
前記第1酸化物半導体パターンは前記ゲート配線上に配置され、前記第2酸化物半導体パターンは前記第1酸化物半導体パターン上に配置されている請求項1~4のいずれかに記載の表示基板。
【請求項6】
前記第1酸化物半導体パターンは、前記第2酸化物半導体パターンへの400nm近傍の波長を有する光の透過率を、それ以外の他の可視光線波長領域の光の透過率よりも低くする、請求項5に記載の表示基板。
【請求項7】
前記第1酸化物半導体パターンは燐(P)、フッ素(F)および塩素(Cl)からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含む請求項1~6のいずれかに記載の表示基板。
【請求項8】
前記第2酸化物は、GaInZnOまたはHfInZnOを含む請求項1~7のいずれかに記載の表示基板。
【請求項9】
前記第1酸化物と前記第2酸化物との組み合わせは、GaInZnON/GaInZnOまたはHfInZnON/GaInZnOである請求項8に記載の表示基板。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成27年 1月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
●理由1(特許法第36条第4項第1号)について
・請求項1-46
請求項1,16には、「窒素」を含む「第1酸化物半導体パターン」と、窒素を含むことが特定されていない「第2酸化物半導体パターン」とについて、
「第1酸化物半導体パターンのバンドギャップ(Band Gap)は前記第2酸化物半導体パターンのバンドギャップより大きい」、
請求項34には、
「前記酸化物半導体パターンは前記窒素の濃度が相対的に高い第1区間と前記窒素の濃度が相対的に高い第2区間を含み、
前記第1区間のバンドギャップ(BandGap)は前記第2区間のバンドギャップより大きい」(ここで、「窒素の濃度が相対的に高い第2区間」は、「前記窒素の濃度が相対的に低い第2区間」の誤記と認められる。)、
と記載されている
さらに、明細書([0034]-[0035])、図面(図3A、図3B)には、唯一の具体例として、「例えば、第1酸化物半導体パターン(42,44)がGaInZnON(以下GIZON)である場合、概ね3.0eV程度のバンドギャップを有し、第2酸化物半導体パターン(52,54)がGaInZnO(以下GIZO)である場合、概ね2.7eV程度のバンドギャップを有する。」と記載されている。
しかし、窒素を含むことにより酸化物半導体のバンドギャップが大きくなることは、当業者に知られていないうえ、In-Ga-Zn-O-N系化合物では、窒素濃度の増加とともにバンドギャップが小さくなるという事実(例えば、特開2012-140706号公報[0033]、特開2010-93070号公報[0016]、特開2012-134469号公報[0014]参照。)に反する。
また、図3A、図3Bのグラフも、波長がゼロのとき、観測される複数の値が観測される点など不自然であるため、これらグラフを根拠とする明細書の記載も当を得ていない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-46に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」
2 拒絶理由通知の概要
平成27年1月26日付拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項1-43
請求項1,16には、第1酸化物半導体パターンが「窒素」を含み、「第1酸化物半導体パターンのバンドギャップ(Band Gap)は前記第2酸化物半導体パターンのバンドギャップより大きい」こと、
また、請求項31には、「前記酸化物半導体パターンは前記窒素の濃度が相対的に高い第1区間と前記窒素の濃度が相対的に高い第2区間を含み、
前記第1区間のバンドギャップ(Band Gap)は前記第2区間のバンドギャップより大きい」ことが記載されている。
そして、明細書【0035】には、唯一の具体例として、「例えば、第1酸化物半導体パターン(42,44)がGaInZnON(以下GIZON)である場合、概ね3.0eV程度のバンドギャップを有し、第2酸化物半導体パターン(52,54)がGaInZnO(以下GIZO)である場合、概ね2.7eV程度のバンドギャップを有する。」と記載されている。
しかし、窒素を含むことにより酸化物半導体のバンドギャップが大きくなることは、当業者に知られていないうえ、In-Ga-Zn-O-N系化合物では、窒素濃度の増加とともにバンドギャップが小さくなるという事実(特開2012-140706号公報【0033】参照。)に反する。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-43に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」
3 原査定の理由についての当審の判断
(1)理由1(特許法第36条第4項第1号)について
あ 請求項1の「窒素」を含む「第1酸化物半導体パターン」と、窒素を含むことが特定されていない「第2酸化物半導体パターン」とについて、「第1酸化物半導体パターンのバンドギャップ(Band Gap)は前記第2酸化物半導体パターンのバンドギャップより大きい」点について(以下、「原査定の理由あ」という。)。
請求項1に記載された発明は、補正により
「絶縁基板上に形成されたゲート配線と、
前記ゲート配線上に形成され、酸化物半導体を含む酸化物半導体パターン、および
前記酸化物半導体パターン上に前記ゲート配線と交差するように形成されたデータ配線を含み、
前記酸化物半導体パターンは、第1酸化物としてのGaInZnOまたはHfInZnOおよび窒素を含むGaInZnONまたはHfInZnONで形成される第1酸化物半導体パターン、および第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含み、
前記第1酸化物半導体パターンと前記第2酸化物半導体パターンとは、互いに重ね合わされ、平面図にて輪郭が互いに一致し、
前記第1酸化物半導体パターンがゲート電極の側に位置し、前記第2酸化物半導体パターンが、ソース及びドレイン電極の側に位置し、
前記第1酸化物半導体パターンは、400nm近傍の波長を有する光の透過率を、それ以外の他の可視光線波長領域の光の透過率よりも低くする表示基板。」
となり、「第1酸化物半導体パターンのバンドギャップ(Band Gap)は前記第2酸化物半導体パターンのバンドギャップより大きい」との記載は削除されたから、原査定の理由あによっては、本願を拒絶することはできない。
い 請求項16の「窒素」を含む「第1酸化物半導体パターン」と、窒素を含むことが特定されていない「第2酸化物半導体パターン」とについて、「第1酸化物半導体パターンのバンドギャップ(Band Gap)は前記第2酸化物半導体パターンのバンドギャップより大きい」点について(以下、「原査定の理由い」という。)。
請求項16および請求項16を引用する請求項17ないし33は、補正により削除されたから、原査定の理由いによっては、本願を拒絶することはできない。
う 請求項34の「前記酸化物半導体パターンは前記窒素の濃度が相対的に高い第1区間と前記窒素の濃度が相対的に高い第2区間を含み、
前記第1区間のバンドギャップ(BandGap)は前記第2区間のバンドギャップより大きい」(ここで、「窒素の濃度が相対的に高い第2区間」は、「前記窒素の濃度が相対的に低い第2区間」の誤記と認められる。)点について(以下、「原査定の理由う」という。)。
請求項33および請求項33を引用する請求項34ないし46は、補正により削除されたから、原査定の理由うによっては、本願を拒絶することはできない。
え 明細書([0034]-[0035])、図面(図3A、図3B)に係る、「例えば、第1酸化物半導体パターン(42,44)がGaInZnON(以下GIZON)である場合、概ね3.0eV程度のバンドギャップを有し、第2酸化物半導体パターン(52,54)がGaInZnO(以下GIZO)である場合、概ね2.7eV程度のバンドギャップを有する。」との記載について(以下、「原査定の理由え」という。)。
明細書[0034]-[0036]は、補正によって削除されたから、原査定の理由えによっては、本願を拒絶することはできない。
(2)原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審の拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成29年3月1日付けで当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項1ないし14
・備考
補正後の請求項1には、
「絶縁基板上に形成されたゲート配線と、
前記ゲート配線上に形成され、酸化物半導体を含む酸化物半導体パターン、および
前記酸化物半導体パターン上に前記ゲート配線と交差するように形成されたデータ配線を含み、
前記酸化物半導体パターンは第1酸化物および窒素を含む第3元素を含む第1酸化物半導体パターンおよび第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含み、
前記第1酸化物半導体パターンは、400nm近傍の波長を有する光の透過率を、それ以外の他の可視光線波長領域の光の透過率よりも低くする表示基板。」
と記載されているが、上記「第1酸化物および窒素を含む第3元素を含む第1酸化物半導体パターン」との記載は、「第1酸化物半導体パターン」が何を含んでいるのか、日本語として意味不明である。
つまり、上記記載では、「第3元素」が「第1酸化物および窒素を」含み、「第1酸化物半導体パターン」がその「第3元素を含む」ことを意味するのか、「第1酸化物半導体パターン」が「第1酸化物および窒素を含」み、且つ、「第3元素を含む」ことを意味するのかわからない。
したがって、請求項1に記載された発明は、明確であるとは言えない。
また、請求項1に記載された発明を引用する請求項2ないし14に記載された発明も、同様の理由により明確であるとは言えない。」
2 当審拒絶理由についての判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
あ 請求項1の「第3元素」が「第1酸化物および窒素を」含み、「第1酸化物半導体パターン」がその「第3元素を含む」ことを意味するのか、「第1酸化物半導体パターン」が「第1酸化物および窒素を含」み、且つ、「第3元素を含む」ことを意味するのかわからない点について(以下、「当審拒絶理由あ」という。)。
請求項1に記載された発明は、補正により
「絶縁基板上に形成されたゲート配線と、
前記ゲート配線上に形成され、酸化物半導体を含む酸化物半導体パターン、および
前記酸化物半導体パターン上に前記ゲート配線と交差するように形成されたデータ配線を含み、
前記酸化物半導体パターンは、第1酸化物としてのGaInZnOまたはHfInZnOおよび窒素を含むGaInZnONまたはHfInZnONで形成される第1酸化物半導体パターン、および第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含み、
前記第1酸化物半導体パターンと前記第2酸化物半導体パターンとは、互いに重ね合わされ、平面図にて輪郭が互いに一致し、
前記第1酸化物半導体パターンがゲート電極の側に位置し、前記第2酸化物半導体パターンが、ソース及びドレイン電極の側に位置し、
前記第1酸化物半導体パターンは、400nm近傍の波長を有する光の透過率を、それ以外の他の可視光線波長領域の光の透過率よりも低くする表示基板。」
となり、
「前記酸化物半導体パターンは第1酸化物および窒素を含む第3元素を含む第1酸化物半導体パターンおよび第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含」むことは、「前記酸化物半導体パターンは、第1酸化物としてのGaInZnOまたはHfInZnOおよび窒素を含むGaInZnONまたはHfInZnONで形成される第1酸化物半導体パターン、および第2酸化物を含む第2酸化物半導体パターンを含」むこととなったから、請求項1および請求項1を引用する請求項2ないし9に記載された発明は、明確となった。
したがって、当審拒絶理由あによっては、本願を拒絶することはできない。
(2)当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、明確となったから、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第5 結語
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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