特許拒絶査定不服審判
2016-000876
介護者が被介護者の体にブラジャーを着脱する方法
- 審判番号
- 2016-000876
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-119916外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月20日
- 審決日
- 2017年08月15日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A41C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第162条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-119916「介護者が被介護者の体にブラジャーを着脱する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 2443〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月15日(優先権主張平成27年6月8日)の出願であって、平成27年10月2日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成27年10月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月5日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成28年1月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正書が提出され、特許法第162条の規定による前置審査において平成28年4月19日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会が与えられたが、請求人からは何らの応答もなかった。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年1月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
介護者が被介護者の体にブラジャーを着脱する方法であって、
左右一対のカップ部と、
左右方向に伸びる背中側ベルト部と、
前記左右一対のカップ部のそれぞれの上端側と前記背中側ベルト部の上端側とに架け渡される左右一対の肩紐部と、
前記左右一対のカップ部のそれぞれからそれぞれ横方向に伸びる左右一対のサイドベルト片とを備えていて、
前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前部係合手段と、
前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている後部係合手段とが、
互いに、係脱自在になっている
ブラジャーを用い、
前記介護者が前記ブラジャーを、前記左右一対のカップ部が前記被介護者の胸の側、前記背中側ベルト部が前記被介護者の背中側になるようにして、前記被介護者の体の上側から下側に向けて下ろして前記左右一対の肩紐部をそれぞれ前記被介護者の右肩及び左肩に掛け、
前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前記前部係合手段と、前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている前記後部係合手段との間の係合を、前記被介護者の左右両方の脇の下の位置に対応する位置でそれぞれ行うことにより、
肌着を着ている前記被介護者に対して、前記肌着を前記被介護者から脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体に前記ブラジャーを装着し、
前記被介護者の前記脇の下の位置に対応する位置で係合している前記前部係合手段と前記後部係合手段との間の係合をそれぞれ解除し、
前記ブラジャーを前記被介護者の体の上側に向けて持ち上げることにより、
前記肌着を着ている前記被介護者から前記肌着を脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体から前記ブラジャーを取り外す
ブラジャーの着脱方法。」
第3 引用文献の記載事項
平成28年4月19日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献1(特開2000-144502号公報。以下、「引用文献1」という。)には、図1とともに、次の事項が記載されている。
「【発明の属する技術分野】本発明はシャツの上からでも着脱自在なブラジャーに関する。
【発明が解決しようとする課題】従来、ブラジャヤーのつなぎ目は前または後ろにあり、それを着脱する時には、シャツや下着類をすべて脱がなくてはならなかったため、特に冬場では、着脱に寒い思いをしなくてはならず、また体温で暖まった暖気が逃げてしまいその寒さは再び体温で暖まるまでのしばらく続く。本発明は、着脱時に寒い思いをすることなく、シャツの上からでも着脱できるブラジャーに関するものである。
【課題を解決するための手段】本発明は、両脇付近につなぎ目のあるシャツの上からで着脱自在なブラジャーである。両脇付近とは、胸カップ部の端から後ろストラップの縫着部までの間を意味する。このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐことで簡単にでき、一方、脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとることで簡単にできる。また、ブラジャーの材質やつなぎ目の構造は公知のもの全て採用でき、つなぎ目にはフック、マジックテープ、ボタン、ジッパー等も好適に利用できる。ただし、脇付近の皮膚は敏感であるため、肌に優しい材質、構造にする公知の手段を採用することが好ましい。」
また、図面より以下が看取される。
「左右一対の胸カップ部と、
左右方向に伸びる後ろストラップと、
前記左右一対の胸カップ部のそれぞれの上端側と前記後ろストラップの上端側とに架け渡される左右一対の肩紐部と、
前記左右一対の胸カップ部のそれぞれからそれぞれ横方向に伸びる左右一対のサイドベルト片とを備えているブラジャー」
さらに、図面から、「ブラジャー」は
「前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されているつなぎ目と、前記後ろストラップの左右両端側にそれぞれ配備されているつなぎ目とが、互いに、係脱自在になっている」
ことが看取される。
また、「後ろストラップ」は、装着時に人体の胸側に位置する「胸カップ」に対して後ろ側すなわち背中側に位置するものと解され、また図面からベルト状の部材であることが看取される。
そして、引用文献1には、ブラジャーの着脱方法について、下記のように記載されている。
「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐことで簡単にでき、一方、脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとることで簡単にできる。」(【課題を解決するための手段】参照)
以上のことから、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「左右一対の胸カップ部と、
左右方向に伸びる、着用時に背中側に位置するベルト状の部材である後ろストラップと、
前記左右一対の胸カップ部のそれぞれの上端側と前記後ろストラップの上端側とに架け渡される左右一対の肩紐部と、
前記左右一対の胸カップ部のそれぞれからそれぞれ横方向に伸びる左右一対のサイドベルト片とを備えていて、
前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されているつなぎ目と、
前記後ろストラップの左右両端側にそれぞれ配備されているつなぎ目とが、
互いに、係脱自在になっている
ブラジャーを用い、
このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐことで簡単にでき、
一方、脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとることで簡単にできる
ブラジャーの着脱方法」
第4 対比
本願発明と引用文献1に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。
引用発明における「胸カップ部」は、本願発明における「カップ部」に相当する。
引用発明における「着用時に背中側に位置するベルト状の部材である後ろストラップ」は、本願発明における「背中側ベルト部」に相当する。
引用発明における、左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている「つなぎ目」と、後ろストラップの左右両端側にそれぞれ配備されている「つなぎ目」とは、それぞれ、本願発明における「前部係合手段」と「後部係合手段」とに相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、下記のとおりである。
<一致点>
「左右一対のカップ部と、
左右方向に伸びる背中側ベルト部と、
前記左右一対のカップ部のそれぞれの上端側と前記背中側ベルト部の上端側とに架け渡される左右一対の肩紐部と、
前記左右一対のカップ部のそれぞれからそれぞれ横方向に伸びる左右一対のサイドベルト片とを備えていて、
前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前部係合手段と、
前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている後部係合手段とが、
互いに、係脱自在になっている
ブラジャーを用いる
ブラジャーの着脱方法」
<相違点>
本願発明は「介護者が被介護者の体に」ブラジャーを着脱するものであるのに対して、引用発明はブラジャーを着脱する者、着脱される者が定められておらず、
ブラジャーの装着について、本願発明が
「前記介護者が前記ブラジャーを、前記左右一対のカップ部が前記被介護者の胸の側、前記背中側ベルト部が前記被介護者の背中側になるようにして、前記被介護者の体の上側から下側に向けて下ろして前記左右一対の肩紐部をそれぞれ前記被介護者の右肩及び左肩に掛け、
前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前記前部係合手段と、前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている前記後部係合手段との間の係合を、前記被介護者の左右両方の脇の下の位置に対応する位置でそれぞれ行うことにより、
肌着を着ている前記被介護者に対して、前記肌着を前記被介護者から脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体に前記ブラジャーを装着」
するものであるのに対し、引用発明が
「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐ」
ことを行うものであり、
ブラジャーの取り外しについて、本願発明が
「前記被介護者の前記脇の下の位置に対応する位置で係合している前記前部係合手段と前記後部係合手段との間の係合をそれぞれ解除し、
前記ブラジャーを前記被介護者の体の上側に向けて持ち上げることにより、
前記肌着を着ている前記被介護者から前記肌着を脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体から前記ブラジャーを取り外す」
ものであるのに対し、引用発明が
「脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとる」
ものである点。
第5 判断
以下、相違点について検討する。
介護者が被介護者の下着類の着脱を行うことは一般的に行われていることであるから、引用発明のブラジャーの着脱を、介護者が被介護者に対して行うことは、当然、想定され得ることである。
また、引用発明は「シャツの下」にブラジャーを着けるものであるが、ブラジャーの上に肌着のシャツを着ることは一般的に行われていることである。
さらに、ブラジャーの装着について検討する。引用発明は、「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れ」るものである。このように下着類を上半身に首から着用する場合、下着類の胸側を体の胸側に、下着類の背中側を体の背中側になるように首から掛け、体の上側から下側に向けて下ろして着用するものである。また、引用発明において、別の着用方法を採用すべき特段の事情も見あたらない。
そして、引用発明は、「前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前部係合手段と、前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている後部係合手段とが、互いに、係脱自在になっている」ものであり、「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐ」ものである。引用発明のブラジャーの着脱を、介護者が被介護者に対して行う際には、「シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐ」、すなわち「前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前記前部係合手段と、前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている前記後部係合手段との間の係合」は、「被介護者の左右両方の脇の下の位置に対応する位置でそれぞれ行う」ことになる。また、引用発明は、「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐ」ものであり、このような動作は、介護者が被介護者に対して行う際には、「肌着を着ている前記被介護者に対して、前記肌着を前記被介護者から脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体に前記ブラジャーを装着」することになる。
また、ブラジャーの取り外しについて検討する。引用発明は、「前記左右一対のサイドベルト片の先端側にそれぞれ配備されている前部係合手段と、前記背中側ベルト部の左右両端側にそれぞれ配備されている後部係合手段とが、互いに、係脱自在になっている」ものであり、「脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとる」ものである。引用発明のブラジャーの着脱を、介護者が被介護者に対して行う際には、「脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはず」すこと、すなわち「係合している前記前部係合手段と前記後部係合手段との間の係合をそれぞれ解除」する動作は、「前記被介護者の前記脇の下の位置に対応する位置」で行うことになる。また、引用発明は、「脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとる」ものであり、このような動作は、介護者が被介護者に対して行う際には、「前記ブラジャーを前記被介護者の体の上側に向けて持ち上げることにより、前記肌着を着ている前記被介護者から前記肌着を脱がすことなく、前記介護者が前記被介護者の体から前記ブラジャーを取り外す」ことになる。
以上のことから、引用発明においてブラジャーを着脱する者、される者を各々介護者、被介護者とし、その装着・取り外しを上記相違点に掲げた本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
審判請求書の第3.(3)段落において請求人は、本願発明の効果について、以下のように主張する。
「本願の請求項1記載の発明によれば、「ブラジャーを付けずに、肌着やブラウスなどを着ている被介護者に対して介護者がブラジャー1の着装を行う場合であっても、肌着やブラウスなどを脱がせる必要はなく、被介護者が、腕や肩、ひじなどをほとんど動かすことなしに、簡単に、ブラジャー1を着装することができる」(0047段落)、「被介護者がブラジャー1を付け、その上に、肌着やブラウスなどを着ている状態であっても、肌着やブラウスなどを脱がせる必要はなく、被介護者が、腕や肩、ひじなどをほとんど動かさずに、簡単にブラジャー1を取り外すことができる」(0054段落)という引用文献1に記載も示唆もされていない優れた効果が発揮されます。」(当審注:当該審判請求書で言う「引用文献1」とは、拒絶査定で引用された実願昭51-071079号(実開昭52-163121号)のマイクロフィルム)
しかし、本審決における引用文献1(特開2000-144502号公報)に記載された引用発明は、「シャツの上からでも着脱できるブラジャー」に関するものであり、「このブラジャーを着ける時にはまずそれをシャツを脱がずに首にかけ、シャツの中に入れた後、シャツの下から手で整え両脇のつなぎ目をつなぐことで簡単にでき、一方、脱ぐ時にはまずシャツの下から両脇のつなぎ目をはずし、首からとることで簡単にできる」、すなわちブラジャーを着脱する時にシャツを脱ぐ必要がないものであるから、引用発明のブラジャーの着脱を介護者が被介護者に対して行う際には、本願発明の装着における「肌着やブラウスなどを脱がせる必要はなく」、取り外しにおける「肌着やブラウスなどを脱がせる必要はなく」という効果と同様の効果を奏するものである。
また、引用発明はこのようにブラジャーを着脱する時にシャツを脱ぐ必要がないものであるから、引用発明のブラジャーの着脱を介護者が被介護者に対して行う際には、本願発明の装着における「被介護者が、腕や肩、ひじなどをほとんど動かすことなしに、簡単に、ブラジャー1を着装することができる」、取り外しにおける「被介護者が、腕や肩、ひじなどをほとんど動かさずに、簡単にブラジャー1を取り外すことができる」という効果と同様の効果を奏するものである。
よって、本願発明には、引用発明と比較して、特段優れた効果を認めることができない。
4 判断についてのむすび
上記1ないし3のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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