特許無効審判
2015-800159
差込み式管継手
- 審判番号
- 2015-800159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2003-020452外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年08月06日
- 審決日
- 2017年02月01日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ケーブイケー
- 【請求人代理人】小林 徳夫
- 【請求人代理人】鈴木 あかね
- 【請求人代理人】押見 幸雄
- 【被請求人】JFE継手 株式会社
- 【被請求人代理人】岩坪 哲
- 【被請求人代理人】速見 禎祥
- 【被請求人代理人】鈴江 正二
- 【被請求人代理人】木村 俊之
- 【被請求人代理人】吉村 哲郎
- 分類
- P1123.121-YAA(F16L) / P1123.561-YAA(F16L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4268811号発明「差込み式管継手」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4268811号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第4268811号に係る出願(以下、「本件特許出願」という。)は、平成15年1月29日に出願したものであって、平成21年2月27日にその発明について特許権の設定登録(請求項の数3)がなされたものである。 その後、平成26年4月9日に訂正審判請求(訂正2014-390054号)がなされ、平成26年6月27日付け(発送日:同年7月4日)で、審決をもって訂正が認められたものである。
以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1.平成27年 8月 6日 本件無効審判の請求
2.平成27年11月 6日 審判事件答弁書 提出
3.平成27年12月 7日付け審理事項通知書
4.平成28年 2月12日 口頭審理陳述要領書(1)(2)[請求人 ]提出
5.平成28年 2月12日 口頭審理陳述要領書[被請求人] 提出
6.平成28年 2月26日 口頭審理
7.平成28年 3月 4日 上申書[請求人] 提出
8.平成28年 3月18日 上申書[被請求人]提出
9.平成28年 4月 1日 上申書[請求人] 提出
10.平成28年 4月12日 上申書[被請求人]提出
11.平成28年 5月18日付け 審決の予告
12.平成28年 7月25日 訂正請求書 提出
13.平成28年 7月25日 上申書[被請求人]提出
14.平成28年 9月26日 審判事件弁駁書 提出
15.平成28年10月28日 上申書[請求人] 提出
16.平成28年12月15日 上申書[請求人] 提出
17.平成28年12月28日付け 補正許否の決定
18.平成29年 1月 5日付け 審理終結通知書
第2.訂正請求について
1.平成28年7月25日付けの訂正の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、下記訂正事項1ないし3のとおり訂正することを求めるものである。(下線部は訂正個所)
(1)訂正事項1
請求項1を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、
前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、
前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれていることを特徴とする、差込み式管継手。」
【訂正後】
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、
前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、
前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれており、
前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、
前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、
前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されており、
前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられていることを特徴とする、差込み式管継手。」
(2)訂正事項2
請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0005】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれている。前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている。前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれているものである。」
【訂正後】
「前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれている。前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている。前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれているものである。前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されている。前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されている。前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されている。前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている。」
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0019】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「この切断された管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3の食込み歯11をテーパ12の方向へ押し開きながら挿入される。この挿入に伴い管Pの一端部でテーパ付リング4が管差込み間隙15の内奥方向へ押し込まれ、テーパ付リング4のテーパ17が内筒体5のシールリング溝16から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝16内に押し込みながら通過する。」
【訂正後】
「この切断された管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3の食込み歯11をテーパ12の方向へ押し開きながら挿入される。食込み歯11の軸方向外方側に設けられている管受入部21がこの管Pを外から受け入れる。この挿入に伴い管Pの一端部でテーパ付リング4が管差込み間隙15の内奥方向へ押し込まれ、テーパ付リング4のテーパ17が内筒体5のシールリング溝16から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝16内に押し込みながら通過する。」
(5)訂正事項5
願書に添付した図面の【図4】に符号「21」を追加する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0023】、【図面の簡単な説明】【図5】にそれぞれ「第2実施例」とあるのをそれぞれ「参考例」と訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1
(1-1)訂正の目的の適否
ア.「管」に関し、「樹脂製の管」と限定し、
イ.「食込み歯」に関し、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており」との限定を加え、
ウ.「食込み歯逃がし用のテーパ」に関し、「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており」との限定を加え、
エ.「管差込み間隙」に関し、「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されており」との限定を加えるものである。
オ.さらに、「前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている」との限定を加えるものであり、
以上ア.~オ.の限定は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから目的要件に適合する。
(1-2)新規事項の有無及び実質拡張変更要件
上記ア.の限定について
願書に添付した明細書の【0017】の「管差込み間隙15に差し込まれるポリブテン管等よりなる樹脂製の管P」との記載から、樹脂製の管が明示されているといえる。
上記イ.の限定について
願書に添付した明細書の段落【0014】の「抜止めリング3はステンレス製品であって、図2、図3に示すように、皿形断面の内径部に割り溝10を円周方向に等間隔に入れて弾性を有する拡縮径変形自在な食込み歯11を列設している。」との記載、同段落【0019】の「この切断された管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3の食込み歯11をテーパ12の方向へ押し開きながら挿入される。」との記載、及び、願書に添付した図面の【図1】と【図4】の図示内容から導き出せるものである。
上記ウ.の限定について
ウ.の限定のうち、「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し」について検討する。
「外筒体」に関し、訂正前の請求項1の「外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」との記載、願書に添付した明細書の段落【0016】の「外筒体6と内筒体5の外周との間に管差込み間隙15が形成される。」との記載、及び同段落【0019】の「管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入される」との記載から、外筒体は、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するものといえる。他方、願書に添付した図面の【図1】と【図4】を参酌すると、スペーサー13と外筒体6とが一体となって、内筒体5の間で管差込み間隙15を形成していることが理解できるところ、願書に添付した明細書全体をとおしても、スペーサーと内筒体で該管差込み間隙を形成する旨の記載はなく、出願当初から首尾一貫して、外筒体は、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合していることが理解できるから、訂正前の請求項1で特定されている「外筒体」は、実施例における外筒体6とスペーサー13とからなる構成を含んでいるといえる。
そして、願書に添付した明細書の【0015】の「そのインサート成形に際し、スペーサー13を用いることによって食込み歯逃がし用のテーパ12を有する形の外筒体6を簡単な金型構造で容易に射出成形できるが、必ずしもスペーサー13を用いることなく、抜止めリング3を外筒体6にインサート成形することもできる。また、リテーナー14は必ずしも必要ではない。」との記載から、スペーサー13にテーパ12を有することが理解できるから、「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し」との限定は、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ.の限定のうち、「前記食込み歯逃がし用のテーパは、」「前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており」は、願書に添付した明細書の段落【0019】の「この切断された管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3の食込み歯11をテーパ12の方向へ押し開きながら挿入される。」との記載、及び願書に添付した【図1】と【図4】の図示内容から導き出せるものである。
上記エ.の限定について
エ.の限定のうち、「管差込間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて」は、願書に添付した明細書の段落【0007】の「管の一端部を管差込み間隙内に挿入するに伴い、テーパ付リングが管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ押し込まれ」との記載から、「管差込み間隙」はテーパ付リングが配置されている位置から軸方向内側にかけて存在することが理解できる。そして、テーパ付リングは、訂正前の請求項1に記載されているように、「このテーパ付リングが、・・・弾性シールリングより軸方向外方部位と、・・・抜止めリングより軸方向内方部位との間に、・・・嵌め込まれて」いること、訂正前の請求項1の「抜止めリングは、・・・食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され」との記載及び【図1】及び【図4】を参酌すると、食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部はテーパ付リングの位置にあるといえることから、管差込間隙は、食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていることが導き出せる。
エ.の限定のうち、「前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されており」は、願書に添付した明細書の段落【0005】の「このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれているものである。」との記載、同段落【0019】の「この挿入に伴い管Pのー端部でテーパ付リング4が管差込み間隙15の内奥方向へ押し込まれ、テーパ付リング4のテーパ17が内筒体5のシールリング溝16から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝16内に押し込みながら通過する。」との記載、及び願書に最初に添付の【図1】と【図4】の図示内容から導き出せるものである。
上記オ.の限定について
願書に添付した明細書の上記段落【0019】の記載内容、及び願書に最初に添付の【図1】と【図4】の図示内容から導き出せるものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正事項1により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項3を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、上記訂正事項1及び4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載と図面の図示内容の整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項6
訂正事項6は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.むすび
以上のとおりであるから、平成28年7月25日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので、適法な訂正と認める。
第3.本件特許発明
上記のとおり、平成28年7月25日付けの訂正は認められるので、本件特許発明は、訂正審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、第2.1.(1)の【訂正後】に記載されるとおりのものである。
第4.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「特許第4268811号発明の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書、口頭審理陳述要領書(1)及び(2)、口頭審理、平成28年3月4日及び平成28年4月1日付け上申書、弁駁書、平成28年10月28日付け及び平成28年12月15日付け上申書を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。なお、上記弁駁書の第15頁第2行から第41頁下から3行に記載された事項及び平成28年12月15日付け上申書による請求の理由の補正については、補正許否の決定をもって許可しないこととなった。
1.無効理由
(1)無効理由1
本件特許発明は、甲第4号証に記載される発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)、及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせることで、本件特許出願前に当業者が容易に発明できたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件特許発明は、甲第9号証に記載される発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせることで、本件特許出願前に当業者が容易に発明できたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(3)無効理由3
本件特許発明は、甲第11号証に記載される発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)、及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせることで、本件特許出願前に当業者が容易に発明できたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4
本件特許発明は、甲第12号証に記載される発明に、甲第7号証に記載される公知技術、及び甲第9号証、甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせるか、甲第12号証に記載される発明に、甲第9号証、甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせることで、本件特許出願前に当業者が容易に発明できたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2.証拠方法
・甲第1号証 特許第4268811号公報(本件特許公報)
・甲第2号証 訂正2014-390054(本件訂正審判請求書)
・甲第3号証 訂正2014-390054審決(本件訂正審決)
・甲第4号証 特開平11-132374号公報
・甲第5号証 特開2002-81587号公報
・甲第6号証 特開2002-174383号公報
・甲第7号証 特開2001-295966号公報
・甲第8号証 特開平11-153272号公報
・甲第9号証 特開2001-146991号公報
・甲第10号証 特開平11-336964号公報
・甲第11号証 特開2002-31282号公報
・甲第12号証-1 独国特許出願公開第10065225号明細書
・甲第12号証-2 甲第12号証-1の翻訳文
・甲第13号証 株式会社喜多村合金製作所「インジケーター付ワン タッチジョイント」カタログ(平成12年6月19日 特許庁受け入れ印付き)
・甲第14号証の1 株式会社喜多村合金製作所の「締め付接合形継手」
製品図(製品番号GDA1-13R1) 組付図
・甲第14号証の2 甲第14号証の1の挿入ガイドの部品図
・甲第15号証 特許第4906973号公報
・甲第16号証 特開2008-240928号公報
・甲第17号証 報告書(株式会社ケーブイケー 横山昇)
・甲第18号証 組立仕様書(GDA1-13R1)
・甲第19号証 特開2002-213663号公報
・甲第20号証 特開2001-263567号公報
・甲第21号証 特開平9-236190号公報
・甲第22号証 特開2001-254884号公報
・甲第23号証 特開2001-349488号公報
・甲第24号証 実願昭60-190212号(実開昭62-9738 3号公報)のマイクロフィルム
・甲第25号証 実願昭47-054669号(実開昭49-1451 5号公報)のマイクロフィルム
・甲第26号証 陳述書(インサート成形における金型の問題について )(株式会社KVK 野村幸永)
第5 被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書において「本件無効審判の請求は成り立たない審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理、平成28年3月18日及び平成28年4月12日付け上申書、訂正請求書、平成28年7月25日付け上申書を総合すると、概略次のとおり主張している。
1.無効理由について
(1)無効理由1
(1-1)本件特許発明と甲第4号証に記載されている発明との相違点は、単にテーパ付リングの有無ではなく、本件訂正特許発明は、「テーパ付リングを備え、当該テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部でおされるまま前端部を前記差込間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている」のに対し、甲第4号証に記載されている発明は、テーパ付リングを備えない点である。
(1-2)上記相違点に係る構成は副引例(甲第5号証ないし甲第10号証)に開示がなく、甲第4号証に記載されている発明に各副引例を適用しても、本件特許発明の構成とはならない。
(1-3)甲第5号証ないし甲第7号証、甲第13号証ないし甲第14号証の2、甲第17号証、及び甲第18号証から「テーパ付リング」という構成が周知技術であると認定することはできない。
(1-4)甲第5号証ないし甲第7号証には、テーパ付リング、弾性シールリング及び抜止めリングの三者の位置関係が開示され、これが上記相違点に係る構成と異なるにも拘わらず、「主引例+副引例の技術事項の一部+当該組み合わせた構成をさらに改変」という主引例からの二段階の改変(容易の容易)を想到容易性判断に持ち込んでいる点で妥当ではない。
(1-5)甲第4号証に記載されている発明と甲第5号証ないし甲第7号証の課題は異なっており、甲第4号証に記載されている発明に甲第5号証のテーパ付リング等を適用しても課題が解決せず、甲第4号証に記載されている発明に甲第5号証ないし甲第7号証の記載を適用する動機付けはない。
(1-6)「甲第4号証に記載されている発明+テーパ付きリング+さらにその構成を改変」というそもそも失当な請求人の論理を前提としても、当業者であればテーパ付きリングの位置は保持リング15の軸方向外方とするのが自然であり、本件特許発明のような構成にすることが容易想到であるとはいえない。
(1-7)「テーパ付リングが・・・弾性シールリングより軸方向外方部位」とは、「弾性シールリング」が複数ある場合は、最も軸方向内方に位置する弾性シールリングよりテーパ付リングが軸方向外方に位置することを指す。
(1-8)訂正後の請求項1に係る発明は、外筒体・抜止めリング・食込み歯逃がし用のテーパ・管差込み間隙に関しての有機的な結合によって、外筒体を継手本体に結合するだけで、前記抜止めリング・前記食込み歯逃がし用のテーパ・前記管差込み間隙を設けることができ、しかも、管Pの一端部が前述の同心でない状態で管受入部に入れられた場合であっても、また、斜めの状態で管受入部に入れられた場合であっても、管Pの先端を管差込み間隙15にスムーズに挿入することができる構造になっているものであるが、かかる構造は甲第4号証~甲第18号証のいずれにも開示も示唆もなく、さらに動機付けも存在するものではない。
(2)無効理由2
無効理由1に対する主張に加え(ただし、「甲第4号証に記載されている発明」を「甲第9号証に記載されている発明」に読み替える。)、甲第9号証に記載されている発明に甲第5号証ないし甲第7号証を適用する際には、阻害要因がある。
(3)無効理由3
無効理由1に対する主張に加え(ただし、「甲第4号証に記載されている発明」を「甲第11号証に記載されている発明」に読み替える。)、甲第11号証に記載されている発明に甲第5号証ないし甲第7号証を適用する際には、阻害要因がある。
(4)無効理由4
甲第12号証に「テーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜け止めリングより軸方向内方部位との間に、・・・嵌め込まれている」との本件特許発明の発明特定事項の開示があるとはいえない。また、甲第7号証に本件特許発明のテーパ付リングの開示がない。
2.証拠方法
・乙第1号証 樹脂管ワンタッチ継手 ゴム輪(パッキン)装着部外径比較 報告書(JFE継手株式会社 岡崎義郎)
・乙第2号証 エスロン エスロペックス/エスロン エスロカチット 住 宅用 給水・給湯システム配管(抄)(積水化学工業株式会 社)
・乙第3号証 エスロカチット 施工手順 (積水化学工業株式会社)
・乙第4号証 エスロカチット圧縮リング(締付環帯)による樹脂管の縮径 量調査報告書(JFE継手株式会社 岡崎義郎)
・乙第5号証 特開2008-286260号公報
・乙第6号証 Jワンクイック (社)日本水道協会認証図面
・乙第7号証の1ないし4 各社のワンタッチ継手の取扱要領
第6 当審の判断
1.甲第4号証~甲第12号証-2の記載事項
(1)甲第4号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開平11-132374号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパイプ継手に関するものであり、更に詳しくはパイプ用のワンプッシュ型継手の新たな継手を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、集合住宅はもとより戸建住宅の水廻りに樹脂パイプが広く採用されており、これら水廻りの継手にあっては漏水の発生は全く許されず、しかも接続が簡便であることの要請が高い。このため多くの提案がなされているが、未だ充分満足できる継手は出現していないのが現状である。」
イ.「【0004】・・・ワンプッシュタイプの継手の場合は、パイプを差し込む際に保持リングと止水リングとを通過する時に手に当たる感触(衝撃)が2回あるが、一回の感触によって差し込みが完了したとの錯覚が生じやすい。又、保持リングを絞め付ける継手でも狭い場所での作業で、不完全な差し込み等の場合には漏水の原因となる。従って、パイプの先端の位置がどこにあるかを確認することができればよいが、従来の構造ではソケットにパイプの先端を目視のための確認孔を開けた場合にはこの部位からの漏水が避けられない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような従来のパイプ継手の欠点を改良せんとするものであり、パイプを挿入し易くしたパイプ継手を提供するものであり、更に言えば、ソケットにパイプ先端の挿入位置の目視のための確認孔を形成できる新規なパイプ継手を提供することを課題としている。」
ウ.「【0013】
【実施例】以下、本発明のパイプ継手の好ましい例をもって更に詳細に説明する。図1は本発明のパイプ継手の好ましい例を示す半裁図であり、図2はパイプとの差し込みが完了した際の半裁図である。
【0014】さて、砲金製ソケット10にはパイプ30の差し込み供されるスリ-ブ11が一体に形成され、この外周に止水機構12としてのO-リング嵌合用の周溝120を備えたものである。そして、このスリ-ブ11の内側を流体が通ると共に、外側にはパイプ30が差し込まれるものである。そして、ソケット10の外周には雄ねじ13が刻設されると共にその内側に爪部14を有する保持リング15、ワッシャ-16が配置され、これらを支持してキャップ17が前記雄ねじ13に螺合して組み立てられる。
【0015】このように、パイプ30はソケット10内に一体に形成されたスリ-ブ11に案内されて容易に差し込まれるものであって、パイプ30は保持リング15の内側に形成した爪部14にて外周面が食い込まれて固定されることになる。ワッシャ-16はこの食い込みを保持するためのものである。尚、このワッシャ-16は場合によってはキャップ17と一体とされていてもよい。
【0016】図例にあっては、スリ-ブ11の外周に止水機構12としてO-リング用の周溝120 が二つ(1201、1202)備えられたものであり、これらはいずれも保持リング15の位置より深部側に形成されている。尚、符号18は周溝120 内に嵌め込まれたO-リングである。このO-リング18は一個でも又図例のように複数(181 、182 )備えられていてもよく、複数使用される場合には、それだけ止水性が向上する。この場合にはスリ-ブ11に形成される周溝120 は勿論複数条形成される。」
エ.「【0017】尚、O-リング18が複数用いられる理由は、パイプ(樹脂)30の内周面は外周面程寸法精度はよくないため、そのばらつきによってO-リング18による止水性能は異なるので止水を完全にするためである。このO-リング18には例えば潤滑剤を吹きかけておくのがよいが、好ましくはシリコンコ-ティングされたものがよい。
【0018】このようにO-リング18が複数用いられる場合、最初にパイプ30に当たる側のO-リング181 は深部側のO-リング182 よりもスリ-ブ11からの突出量(D)を小さくしておくべきである。かかる突出量(D)はO-リング18の外周とスリ-ブ11の外周との差であり、これが2mm程度、好ましくは1mm程度のものがよく、これが2mm以上では差し込み力が30kgf以上となり、施工性が悪くなる。」
オ.「【0019】さて、本発明のパイプ継手はソケット10周溝120 より深部側に孔19を形成したものであり、これが外部からソケット10の内部を目視するための確認孔である。即ち、これはパイプ30の先端31の差し込み状況を確認するためのものであって、パイプ30先端31の位置を確認でき、差し込み不足による漏水やパイプ30の抜けを防止することとなったものである。この確認孔19はソケット10の周囲に複数個備えるのがよい。」
(2)甲第5号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-81587号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
カ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給湯・給水配管などに用いられ、管の一端部をシール状にかつ抜止め状に簡易迅速に差し込むことのできる差込み式管継手、及び差込み式管継手への管差込み方法に関する。」
キ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前出のいずれの差込み式管継手においても、シール用ゴムリングまたは弾性シールリングを継手本体の内周に嵌め込まなければならず、この嵌め込みは容易でなかった。
【0004】本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたもので、管の一端部をシール状にかつ抜止め状に簡易迅速に差し込むことができ、しかも弾性シールリングの組込みの容易化を図れる差込み式管継手及び差込み式管継手への管差込み方法を提供することにある。」
ク.「【0014】図1において、図示例の差込み式管継手は、継手本体1、弾性シールリング2、ロックリング3、コレット4、及びテ-パ付リング22を備える。継手本体1は青銅鋳物等で筒状に形成されており、その軸心方向一端部に内外二重筒体5,6を有する構造としてある。そのうち、内筒体5は継手本体1と一体に形成されるが、外筒体6は、継手本体1とは別体に形成されて、その一端部内周に雌ねじ7を、他端部外周に雄ねじ8をそれぞれ切っている。継手本体1の内筒体5の付け根部の外周には外筒体保持ボス9を間隙10をおいて内筒体5と同心に突設し、この外筒体保持ボス9の外周に雄ねじ11を切り、この雄ねじ11に外筒体6の一端部の雌ねじ7をねじ込むことによって、外筒体6が内筒体5の外周との間に管差込み間隙12を形成するよう継手本体1に着脱可能にねじ込み結合される。その際、外筒体保持ボス9の内周と内筒体5の外周との間に形成される前記間隙10は管差込み間隙12の内奥部と連通状態とされる。」
ケ.「【0020】図4、図5に示すように、テ-パ付リング22は樹脂成形品であり、管Pの外径より小さい外径を有し、かつ内筒体5に隙間少なく摺動可能に挿入されるとともに弾性シールリング2の外径よりも小径の中心孔23を有し、この中心孔23の軸方向一端の前端部の内周に外拡がり状のテ-パ24を形成している。テ-パ付リング22の後端部の外周には複数の弾性係止爪25をコレット4の切欠部14の円周方向ピッチに対応する定ピッチで、かつ径方向外方へ切り起す形で列設している。
【0021】図1に示すように、テ-パ付リング22は内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように挿入される。その際、テ-パ付リング22の弾性係止爪25はコレット4の切欠部14内をスライド自在に、かつ該切欠部14内の基端部に係合させて軸方向外方へ不用意に抜け出ることのないようにかつ位置決め状態に組み込まれる。なお、継手本体1の軸方向他端部の外周には雄ねじ21を切っており、この雄ねじ21には、金属製で雌ねじ付きの水栓やエルボなどがねじ込み接続される。
【0022】次に、図1に示す差込み式管継手の使用態様を図6ないし図10を参照にして説明する。現場施工において、先ず、ポリブテン管等よりなる樹脂製の管Pは所要長さに切断される。この切断された管Pの一端部は、図6に示すように、コレット4の中空軸15に差し込む。この差込みに伴い管Pの一端部の端末部P´でテ-パ付リング22が管差込み間隙12の内奥方向へ押し込まれ、テ-パ付リング22のテ-パ24が内筒体5のシールリング溝13から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝13内に押し込みながら通過する。したがって、これに引き続いて移動してくる管Pの端末部P´は、図6中に破線Tで示すごとく面取りされていなくて軸心に対し直角に切断されたまま(実線状態)でも弾性シールリング2に突っ掛かることなくスムーズに差し込まれる。図7のように、管Pが最も深く差し込まれた時点では、テ-パ付リング22は弾性係止爪25が外筒体保持ボス9の内周面に当接することにより畳まれた状態で管差込み間隙12の最奥部に納められる。管Pの端末部P´が最も深く差し込まれているか否かの確認は、管端末部視認用穴20から容易に確認することができる。」
(3)甲第6号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-174383号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
サ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給湯・給水配管などに用いられ、管の一端部をシール状にかつ抜止め状に簡易迅速に差し込むことのできる差込み式管継手、及び差込み式管継手への管差込み方法に関する。」
シ.「【0025】図4、図5に示すように、テ-パ付リング22は樹脂成形品であり、管Pの外径より小さい外径を有し、かつ内筒体5に隙間少なく摺動可能に挿入されるとともに弾性シールリング2の外径よりも小径の中心孔23を有し、この中心孔23の軸方向一端の前端部の内周面に外拡がり状のテ-パ24を形成している。テ-パ付リング22の後端部の外周には複数の弾性係止爪25をコレット4の切欠部14の円周方向ピッチに対応する定ピッチで、かつ径方向外方へ切り起す形で列設している。
【0026】図1に示すように、テ-パ付リング22は内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように挿入される。その際、テ-パ付リング22の弾性係止爪25はコレット4の切欠部14内をスライド自在に、かつ該切欠部14内の基端部に係合させて軸方向外方へ不用意に抜け出ることのないようにかつ位置決め状態に組み込まれる。かかるテ-パ付リング22は、軸方向内外に隣り合う2個の弾性シールリング2,2を跨ぎ得る所定長さに設定されている。すなわち、図6に示すように、軸方向内方側の弾性シールリング2とテ-パ付リング22のテ-パ24との接点cと、該テ-パ付リング22の後端面22bとの間の間隔寸法L2 が、前記接点cと軸方向外方側の弾性シールリング2の中心点Oとの間の間隔寸法L1 と等しいかそれよりも大きく設定される。L1 ≦L2 」
ス.「【0028】次に、図1に示す差込み式管継手の使用態様を図7ないし図11を参照にして説明する。現場施工において、先ず、ポリブテン管等よりなる樹脂製の管Pは所要長さに切断される。この切断された管Pの一端部は、図7に示すように、コレット4の中空軸15に差し込む。この差込みに伴い管Pの一端部の端末部P´でテ-パ付リング22が管差込み間隙12の内奥方向へ押し込まれ、テ-パ付リング22のテ-パ24が内筒体5のシールリング溝13から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝13内に押し込みながら通過する。したがって、これに引き続いて移動してくる管Pの端末部P´は、図7中に破線Tで示すごとく面取りされていなくて軸心に対し直角に切断されたまま(実線状態)でも弾性シールリング2に突っ掛かることなくスムーズに差し込まれる。」
(4)甲第7号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開2001-295966号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
タ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば水道配管等とパイプとの間を接続する継手に関するものである。」
チ.「【0021】次いで、前記ガイド手段17について説明すると、図1に示すように、ガイド手段17はスリーブ31と、カラー32とより構成されている。まず、スリーブ31について説明すると、スリーブ31は金属材料により略円筒状に形成され、その基端部(図1では右端部)の外周縁にはスリーブ31の軸線に対して直交して円環状に外方へ突出する鍔31aが形成されている。図3に示すように、その鍔31aの内周は、スリーブ31の右側へ向かうに従い外方へ傾斜して拡径するテーパ状に形成されている。そして、スリーブ31は前記コア部14に対して外嵌可能に形成されるとともに、パイプ12の端部に対して内嵌可能に形成されている。」
ツ.「【0025】次に、継手11の使用方法を説明する。まず、図1に示すように、本体13aの第1雄ねじ部19を水道配管の管体18に螺合し、本体13aを管体18に締め付け固定する。次いで、図3に示すように、スリーブ31をその先端縁が係合面25と面一となるようにコア部14に外嵌し、そのスリーブ31により一対のシール部材15を被覆する。このとき、スリーブ31の基端側内周縁はテーパ状に形成されているため、一対のシール部材15がスリーブ31により傷付けられるのが防止される。続いて、図4に示すように、カラー32を、コア部14の先端に外嵌し、その基端面をコア部14の係合面25に係合する。すると、スリーブ31の外周面とカラー32の外周面とにより面一な連続面が形成される。」
テ.「【0028】従って、パイプ12をコア部14に外嵌するとき、一対のシール部材15はスリーブ31により被覆されているため、そのスリーブ31によりパイプ12の端面がシール部材15に当たったり、引っかかったりするのが防止される。なお、前記長さDは2~5mmに設定されている。そのため、万一スリーブがコア部14の基端部側へ前記長さD分だけ移動していても、スリーブ31により一対のシール部材15は被覆されている。」
ト.「【0029】そして、パイプ12の端面がスリーブ31の鍔31aの内端面に係合し、その係合状態でパイプ12をパイプ挿入口23奥方へさらに挿入する。すると、スリーブ31はパイプ12の移動に伴い、パイプ挿入口23内奥方へ移動する。その移動により、スリーブ31による一対のシール部材15の被覆が解除され、それら一対のシール部材15はパイプ12の内周面に密接する。最後に、図6に示すように、スリーブ31の鍔31aの外端面が当接面24に当接して、継手本体13にパイプ12が挿入接続される。
【0030】その結果、各シール部材15により、パイプ12の内周面とコア部14の外周面との間がシールされ、流路22及びコア部14内を流通する水道水の継手本体13からの漏れが防止される。さらに、継手本体13内において、スペーサ30により形成された一対のロックリング29間の隙間により規制片29bが弾性変形してパイプ12の外周面に2段に食い込む。そのため、一対のロックリング29によりパイプ12が継手本体13内から抜け出るのが規制される。最後に、確認孔26より継手本体13内を視認して、パイプ12が継手本体13内の所定位置まで挿入されたか否かを視認する。」
(5)甲第8号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開平11-153272号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ナ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパイプ継手に関するものであり、更に詳しくはパイプ用のワンプッシュ型継手の新たな継手を提供するものである。」
ニ.「【0011】さて、パイプの差し込みを許容する砲金製ソケット10には深部側よりパイプが差し込まれる小径段部11と大径段部12とを備え、この大径段部12内に深部側より爪13を備えた保持リング14、バックアップリング15、O-リング16が順次配置された構造であり、これらを支持するようにソケット10に刻設された雄ねじ17にキャップ18が螺合されて組み立てられるものである。」
ヌ.「【0013】そして、先端にスリ-ブ41を嵌め込んだパイプ40がソケット10内に差し込まれると、パイプ40の先端によってコア30がソケット10の深部側に押し込まれ、これに伴い角部31が各リング14、15、16の内側をスライドして差し込みが完了することとなる。勿論、パイプ40がソケット10内に完全に差し込まれた場合には保持リング14の内側に形成した爪13にてパイプ40の外周面が食い込まれて固定し、バックアップリング15はこの食い込みを保持するためのものである。尚、O-リング16はには例えば潤滑剤を吹きかけておくのがよいが、好ましくはシリコンコ-ティングされたものがよい。」
(6)甲第9号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開2001-146991号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ハ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管継手に関する。」
ヒ.「【0006】そこで、本発明は、組付け作業性が良好であり、かつ、部品の管理や調達が容易で、部品紛失のおそれが少なく、長期にわたり安定した止水性能を維持することができる管継手を提供することを目的とする。」
フ.「【0010】 図1は、管継手Cの実施の一形態を示す断面図、図2は分解組付け対応図、図3はパイプを接続した状態の断面図で、これらの図において、符号1は接続対象となる給水、給湯用等のパイプで、例えば、架橋ポリエチレン又はポリブテン等の合成樹脂材から成る。2は、パイプ1の端部に挿入される挿入筒部3を有する銅合金等から成る継手本体、4は、挿入筒部3に外嵌されたパイプ1の端部を弾発的な締め付け力で締め付けるためのスリット13付きのバネ鋼から成る締付環体である(図2参照)。
【0011】5は高剛性な鋼材からなる拡径ワッシャーで、図1に示す初期状態では、該締付環体4に、その弾発力に抗して圧入され、該締付環体4を、パイプ1の挿入が可能な程度に拡径している。6は、挿入筒部3の凹周溝7に装着されたOリングから成るシール部材である。8は、継手本体2の一端側(端部)に配設された抜け止めリングで、SUS材等の弾発力を有する高剛性な板金材から成り、リング本体11の内周部に、パイプ1の挿入方向A(図1参照)に折曲されてパイプ1の外周面に掛止する複数の掛止刃12…を有し、継手本体2の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10によって、着脱自在に締め付け固定されている。」
ヘ.「【0013】このような構成により、図1に示すような初期状態にある管継手Cは、拡径ワッシャー5によって、締付環体4が、パイプ1の挿入が許容される程度に拡径されているため、パイプ1の端部を、矢印A方向に、押し込むことができる。このパイプ1の押し込み動作により、図3に示すように、パイプ1の先端部が、拡径ワッシャー5に当接して、これを締付環体4から離脱させ、その拡径ワッシャー5が逃げ用空間16に収納されると共に、締付環体4が縮径して、パイプ1が締め付けられ、その内面が、シール部材6に密接してシールが施され、かつ、抜け止めリング8の掛止刃12が、パイプ1の外周面に抜け止め状態に掛止する。
【0014】このような接続状態では、抜け止めリング8によって、パイプ1が、継手本体2に対して抜け止め状態に掛止されており、かつ、シール部材6によって、パイプ1の内面にシールが施されるため、パイプ1の径のばらつきや熱変形等による寸法変化があっても、常に、すぐれた止水性能を維持することができ、長期にわたり安定した止水性能を確保することができる。また、その管継手Cを分解して再組立する場合には、袋ナット10を緩めて取り外せば、抜け止めリング8と共に、パイプ1を容易に引き抜くことができる。」
(7)甲第10号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開11-336964号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
マ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、水道配管、温水配管、床暖房、ロードヒーティング等に使用される樹脂製のパイプ用の継手に関するものである。」
ミ.「【0023】図1及び図7に示すように、一対のロックリング34a、34bにおいて、一方のロックリング34aは、そのベースリング35が継手本体12の受け面18上に係合され、規制片36は傾斜面17との間に隙間を有するように位置している。スペーサ42は一方のロックリング34aのベースリング35を介して受け面18上に係合される。そして、他方のロックリング34bは、そのベースリング35が一方のロックリング34aのベースリング35及びスペーサ42を介して受け面18上に係合されている。」
ム.「【0025】そして、押圧体19を継手本体12に螺合したとき、押圧体19の円筒部20の先端部が、一対のベースリング35の間にスペーサ42を介装した状態で、一対のロックリング34a、34bを受け面18上に位置決め固定するようになっている。そのため、一対のロックリング34a、34bが軸方向及び周方向へ移動するのを防止することができるようになっている。また、パイプ11の端部を一対のロックリング34a、34bに挿入したとき、2段に位置する規制片36はそれぞれわずかに外方へ拡がり、その先端部がパイプ11の外周に2段に係合される。その結果、パイプ11が継手本体12に抜け止め規制されるようになっている。」
メ.「【0034】・第1実施形態の継手37によれば、一対のロックリング34a、34bは、それらの間にスペーサ42を介装して受け面18上に係合されている。そして、一方のロックリング34aの規制片36と継手本体12内の傾斜面17との間に隙間が形成され、他方のロックリング34bの規制片36と一方のロックリング34aの規制片36との間にも隙間が形成されている。そのため、一対のロックリング34a、34bにパイプ11を挿入したとき、それぞれの規制片36が外方へ拡がり、パイプ11を容易に挿入することができる。しかも、2段に位置する一対のロックリング34a、34bの規制片36が重なるのを防止してパイプ11の端部の挿入を容易に行うことができる。」
(8)甲第11号証(本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-31282号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ラ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管継手に関する。」
リ.「【0008】そこで、本発明は、組付け作業性が良好であり、かつ、被接続用のパイプに損傷を与えることなく、部品の管理や調達が容易で、部品紛失のおそれが少なく、長期にわたり安定した止水性能を維持することができる管継手を提供することを目的とする。」
ル.「【0013】
図1は、管継手Cの実施の一形態を示す正面断面図、図2はパイプを接続した状態の正面断面図で、これらの図において、符号1は接続対象となる給水、給湯用等のパイプで、例えば、架橋ポリエチレン又はポリブテン等の合成樹脂材から成る。2は継手本体で、その一端側には、パイプ1の端部に挿入される挿入筒部3を有する。
【0014】4はシール部材(Oリング等)で、継手本体2の挿入筒部3の凹周溝7に装着されている。5は締付環体で、バネ鋼等から成り、軸心方向のスリット(切割部)51を有し、挿入筒部3に外嵌されたパイプ1の端部を弾発的な締め付け力で締め付ける。6は拡径片で、高剛性な鋼材から成り、図1に示す初期状態にて、締付環体5の弾発力に抗して、そのスリット51の端部に離脱可能に圧入され、該締付環体5を、パイプ1の挿入が可能な程度に拡径している。
【0015】14は、締付環体5を覆うカバーであり、そのカバー14の基部内周に形成された雌ネジ141 が、継手本体2の挿入筒部3の基部寄りの外周に形成した雄ネジ19に螺合し、かつ、そのカバー14と、挿入筒部3との間に、締付環体5のスリット51から離脱した拡径片6を収納するためのリング状の逃げ用空間16を形成している。また、カバー14は、PA(ポリアミド,ナイロン)又はPES(ポリエーテルサルフォン)又はPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂から成るのが好ましく、拡径片6の離脱を、外から(目視で)容易に確認できる。
【0016】8は、カバー14の一端側(端部)に配設された抜け止めリングで、SUS材(例えば、SUS304-CSP(1/2H))等の弾発力を有する高剛性な板金材から成り、その内周側には、周方向に等間隔に切り込み形成されると共にパイプ1の挿入方向A(図1参照)に折り曲げされてパイプ1の外周面に掛止する複数個の歯部12…を有し、カバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10によって、着脱自在に締め付け固定されている。なお、袋ナット10は、真鍮等の銅合金や、プラスチック複合材料(例えば、変性PPO(GF30))等から成る。」
レ.「【0042】また、パイプ1を押し込むワンタッチ動作により、拡径片6が、締付環体5のスリット51から離脱すると共に、締付環体5が縮径して、パイプ1の端部を締め付け、パイプ1の内面がシール部材4に密接して密封状態となり、接続作業を完了することができる。」
(9)甲第12号証-1(本件出願前に頒布された刊行物である独国特許出願公開第10065225号明細書)には、次の事項が図面と共に記載されている。なお、翻訳文は、請求人が提出した甲第12号証-2を参考にして当審で作成した。また、原文のウムラウトは記載を省略し、エスツェットは「s」で表記した。
あ.4ページ5欄56行~6欄23行の特許請求の範囲
「1.Verbindungsanordnung (10, 50, 50) fur Rohre, insbesondere fur Sanitar- und Heizungsinstallation, mit einer Stutzhulse (12), die ein Anschlag- und ein Aufschiebeende (16, 18) sowie eine umfangliche Dichteinrichtung (22) aufweist, und mit einer Verbindungshulse (14), wobei zwischen der Stutzhulse (12) und der Verbindungshulse (14), die die Stutzhulse im Wesentlichen koaxial umgibt, ein Rohrende zu liegen kommt, dadurch gekennzeichnet, dass auf der Stutzhulse (12) uber der Dichteinrichtung (22) ein Schutzabschnitt (20) vorgesehen ist, der die Dichtflachen der Dichteinrichtung beim Einfuhren eines Rohres zwischen die Stutz- und die Verbindungshulse schutzt, wobei der Schutzabschnitt (20) vom Rohrende mitgenommen wird, um die Dichtflachen in Anlage zur Rohrinnenwand zu bringen.
・・・
5. Verbindungsanordnung nach einem der Anspruche 1 bis 4, dadurch gekennzeichnet, dass mehrere Dichteinrichtungen (22) vorgesehen sind, von denen wenigstens eine, bevorzugt mehrere oder alle durch den Schutzabschnitt, der eine entsprechende Lange in Axialrichtung aufweist, vor dem Aufschieben eines Rohres geschutzt sind.」
(翻訳文)
「1.衛生設備および暖房配管用のパイプ用の接続装置(10,50,50)であって、1つのストッパ端部および1つの押し込み端部(16,18)ならびに周回する1つの密閉装置(22)を有する1つの支持スリーブ(12)と、1つの差し込みスリーブ(14)とを備え、前記支持スリーブ(12)と、当該支持スリーブを実質的に同心に取り囲む差し込みスリーブ(14)との間にパイプ端部が配置される接続装置において、前記支持スリーブ(12)には前記密閉装置(22)の上方に1つの保護部分(20)が設けられており、当該保護部分は、パイプを前記支持スリーブと前記差し込みスリーブとの間に導入する際に、前記密閉装置の密閉面を保護し、前記保護部分(20)は、前記密閉面をパイプ内壁に当接させるために、パイプ端部によって連行されることを特徴とする接続装置。
・・・
5.複数の密閉装置(22)が設けられており、それらのうちの少なくとも1つ、好ましくは複数または全てが、軸方向に相応の長さを有する保護部分によって、パイプの押し込みから保護されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の接続装置。」
い.「[0001] Die Erfindung betrifft eine Verbindungsanordnung fur Rohre, insbesondere fur den Sanitar- und Heizungsbereich, bevorzugt auch fur die Trinkwasserinstallation, mit einer Stutzhulse, die ein Anschlag- und ein Aufschiebeende aufweist, wobei die Stutzhulse daruber hinaus eine umfangliche Dichteinrichtung umfasst. Diese Anordnung gemas dem Oberbegriff des Patentanspruchs 1 ist ferner mit einer Verbindungshulse versehen, wobei zwischen der Stutzhulse und der Verbindungshulse, die die Stutzhulse im wesentlichen koaxial umgibt, ein Rohrende zu liegen kommt.
[0002] Im Stand der Technik sind Verbindungsanordnungen der gattungsgemasen Art hinlanglich bekannt. Weist die Verbindungshulse beispielsweise die Ausgestaltung eines Steckfittings auf, wird in den ringformigen Hohlraum zwischen der Verbindungshulse bzw. der Steckhulse um die Stutzhulse ein Rohrende eingefuhrt. Das Rohrende stost beim Vorgang des Einfuhrens mit seiner Stirnseite gegen die vorhandene Dichteinrichtung, insbesondere ein O-Ring, rutscht uber den O-Ring hinuber und wird weiter in den Ringraum zwischen der Steckhulse und der Stutzhulse eingefuhrt, bis die Stirnseite des Rohres gegen den Anschlag am Ende der Stutzhulse stost.
[0003] Hierbei wird allerdings der O-Ring durch das stirnseitige Ende des Rohres, beispielsweise ein Metallverbundrohr, ein Kunststoffrohr oder -schlauch oder dgl., haufig an seiner Dichtflache verletzt, so dass die Dichteigenschaften zumindest stark beeintrachtigt oder sogar vollkommen zerstort sein konnen. Es kommt sogar ofters vor, dass der O-Ring aus seiner Nut wenigstens teilweise entfernt und dabei vollkommen zerquetscht wird. Selbst wenn das Ende des Rohres sorgfaltig entgratet wird, treten die genannten Probleme nach wie vor haufig auf. Da derartige Undichtigkeiten meist nicht sofort erkennbar sind, sondern erst nach einigen Monaten oder gar Jahren der Betriebszeit und diese Undichtigkeiten in der Regel auch wegen der schwierigen Montagesituation an bestimmten Stellen auftreten, machen derartige Undichtigkeiten ganz enorme Probleme. Zusatzlich stellt das Entgraten einen Arbeitsgang dar.」
(翻訳文)
「[0001] 本発明は、ストッパ端部および押し込み端部を有する支持スリーブを備える。とりわけ衛生設備および暖房領域用のパイプ、好ましくは飲用水配管用のパイプ用の接続装置に関するものであり、前記支持スリーブは周回する密閉装置を含む。
[0002] 従来技術では、上位概念による形式の接続装置が十分に公知である。接続装置が、例えば差し込み適合部の構成を有する場合、接続スリーブないし差し込みスリーブの間のリング状の中空空間には、前記支持スリーブを中心にパイプ端部が導入される。パイプ端部は、導入過程時にその端面をもって、存在する密閉装置、とりわけOリングに衝突し、このOリングの上をスライドし、さらに差し込みスリーブと支持スリーブとの間のリング空間に、パイプの端面が支持スリーブの端部にあるストッパに衝突するまで導入される。
[0003] ここではとりわけOリングが、パイプ、例えば金属接続パイプ、プラスチックパイプまたはプラスチックホース等の端面側の端部によってその密閉面を傷付けられることが往々にして生じ、そのため密閉特性が少なくとも大きく損なわれ、または完全に破壊されてしまうことがある。それどころか、Oリングがそのノッチから少なくとも部分的に除去され、その際に完全に押し潰されることもしばしばである。パイプの端部が念入りにバリ取りされていても、前記の問題は相変わらず頻繁に発生する。」
う.「[0005] Es ist dementsprechend die Aufgabe gemas der vorliegenden Erfindung, den Nachteilen des Standes der Technik Abhilfe zu schaffen. Insbesondere soll eine Verbindungsanordnung geschaffen werden, die die Dichtung wahrend des Verbindungsvorganges, d. h. wahrend des Einschiebens des Rohrendes schont. 」
(翻訳文)
「[0005] したがって本発明による課題は、従来技術の欠点を除去することである。とりわけ接続過程の間、すなわちパイプ端部を差し込む間、パッキンに留意する接続装置を提供することが望ましい。」
え.「[0008] Die gemas der Erfindung erzielbaren Vorteile beruhen darauf, dass auf der Stutzhulse uber der Dichteinrichtung, insbesondere ein O-Ring, ein Schutzabschnitt vorgesehen ist, der die Dichtflachen der Dichteinrichtung beim Einfuhren eines Rohres zwischen die Stutz- und die Verbindungshulse schutzt, wobei der Schutzabschnitt vom Rohrende mitgenommen wird, um die Dichtflachen in Anlage zur Rohrinnenwand zu bringen. Mit anderen Worten, das Rohrende, sei es entgratet oder nicht, rutscht auf den Schutzabschnitt, wobei das Rohrende bzw. das stirnseitige Rohrende uber die Dichtung gefuhrt wird, ohne diese selbst korperlich zu beruhren. Anschliesend nimmt das stirnseitige Rohrende den Schutzabschnitt mit, so dass dieser uber den O-Ring rutscht und schlieslich zusammen mit dem Rohrende gegen den Anschlag der Verbindungsanordnung zu liegen kommt, wobei dann die Rohrinnenwandung, die glatt ist und die O-Ringdichtung bzw. die Dichteinrichtung nicht beeintrachtigt, gegen die Rohrinnenwandung in einer optimalen Lage und mit optimaler Dichtfunktion zu liegen kommt.」
(翻訳文)
「[0008] 本発明により達成可能な利点は、保護スリーブには密閉装置、とりわけOリングの上方に保護部分が設けられており、この保護部分が、パイプを支持スリーブと接続スリーブとの間に導入する際に前記密閉装置の密閉面を保護することに基づくものであり、前記保護部分は、前記密閉面をパイプ内壁に当接させるためにパイプ端部によって連行される。言い替えるとパイプ端部は、バリ取りされていてもされていなくても、前記保護部分の上をスライドし、その際に、パイプ端部ないし端面側のパイプ端部はパッキンの上方へ案内され、パッキン自体が物体的に接触されることはない。引き続き、端面側のパイプ端部は前記保護部分を連行し、これにより保護部分はOリングの上をスライドし、最終的にパイプ端部と共に接続装置のストッパに当接する。そして滑らかであり、Oリングパッキンないし密閉装置を阻害しないパイプ内壁(審決注:保護部分の誤記)がパイプ内壁に対して最適の位置を取り、最適の密閉機能をもってこのパイプ内壁に当接する。」
お.「[0011] Naturlich kann die Dichteinrichtung, die in der Regel in der Form eines O-Ringes vorgesehen wird, auch durch die Dichtwirkung weitere Dichteinrichtungen, d. h. weitere O- Ringe unterstutzt werden. Diese weiteren O-Ringe konnen den jeweiligen O-Ring nuten auf der Stutzhulse angeordnet werden. Fur diesen Fall ist der Schutzabschnitt so auszugestalten, dass wenigstens einer der O-Ringe wahrend des Aufschiebevorganges geschutzt wird. naturlich konnen auch mehrere der O-Ringe geschutzt werden, wobei diese dann vorteilhafterweise doch nahe dem Aufschiebeende der Stutzhulse in ihren Nuten vorgesehen sein mussten, damit der Schutzabschnitt einerseits lange genug sein kann, um samtliche O-Ringe abzudecken und andererseits immer noch kurz genug ist, um beim Zuruckschieben wahrend des Aufschiebevorganges fur das Rohr noch vollends von samtlichen O-Ringen entfernt werden zu konnen.」
(翻訳文)
「[0011] もちろん、通常はOリングの形態で設けられる密閉装置を、さらなる密閉装置、すなわちさらなるOリングの密閉作用によっても支援することができる。このさらなるOリングは、支持スリーブ上にあるそれぞれのOリングノッチ内に配置することができる。この場合については、前記保護部分は、Oリングの少なくとも1つが、押し込み過程の間、保護されるように配置される。もちろん複数のOリングを保護することもできる。しかしその場合、有利には、これらのOリングは、支持スリーブの押し込み端部の近傍でそれらのノッチ内に設けなければならないことになる。これは、保護部分を、一方ではOリング全体を覆うために十分に長くすることができ、他方ではパイプに対する押し込み過程の間の押し戻しの際に、まだ十分にOリング全体から除去できるように十分に短いままであるようにするためである。」
か.「[0027] Ein Hakenelement 28 dient dazu, sich mit der Ausenwand des eingefuhrten Rohrendes zu verhaken um das Rohr fest in der Verbindungsanordnung zu halten. Das hakenartige Element 28 ist in ublicher Weise ausgebildet, d. h., seine in den Ringraum zwischen die Stutzhulse 12 und die Steckhulse 14 hineinragende Erstreckung ist in Aufschubrichtung des Rohrendes so ausgebildet, dass es lediglich einen geringen Widerstand entgegensetzt, wahrend es entgegengesetzt zu der Aufschubrichtung in Eingriff mit dem Mantelmaterial des Rohrendes tritt, mit diesem verhakt und das Rohr fest und sicher in seiner Endposition halt.
[0028] Die Steckhulse 14 wird in einer Rille 34 jenseits des Anschlages 16 der Stutzhulse 12 uber eine radial einwarts ragende Erstreckung 32 gehalten. Diese Art der Vormontage soll die Montage auf der Baustelle erleichtern. Im Bereich des Anschlages ist in der Steckhulse 14 eine Offnung 40 vorgesehen, uber die bei der Montage die Endlage des Rohrendes und eines Schutzabschnittes 20 uberpruft werden kann, der nachfolgend noch im Einzelnen erortert wird.
[0029] In einer Nut 13 in der Stutzhulse 12 ist eine Dichtung 22, hier ein O-Ring, angeordnet. Wird ein Rohrende eines festzulegenden Rohres in den Ringraum zwischen der Stutzhulse 12 und der Steckhulse 14 eingeschoben, kann die Stirnseite den O-Ring verletzen und seine Dichtfunktion uber kurz oder lang beeintrachtigen, so dass ein Flussigkeitsaustritt geschieht.
[0030] Um eine Verletzung der Dichteinrichtung 22 bzw. des O-Ringes 22 vermeiden zu konnen, ist erfindungsgemas der Schutzabschnitt 20 vorgesehen, der die Dichteinrichtung 22 vor dem stirnseitigen Rohrende schutzt. Wird das Rohrende eingefuhrt, geleitet es zunachst mit seiner Stirnseite uber den Schutzabschnitt, bis die glatte Rohrwandung uber der Dichtflache der Dichteinrichtung 22 angelangt ist. Anschliesend kann das stirnseitige Rohrende den Schutzabschnitt 20 uber eine Mitnahmeerstreckung 24 mitnehmen, wobei der Schutzabschnitt uber die Dichteinrichtung 22 gleitet und die Dichteinrichtung letztendlich freigibt, so dass die Innenwandung des Rohres in Anlage zu der Dichteinrichtung 22 kommt.
[0031] Um das Aufschieben des Rohrendes auf den Schutzabschnitt 20 zu erleichtern, kann der Schutzabschnitt 20 mit einem Einfadelungsbereich 26 versehen sein. Auf diese Weise kann das stirnseitige Rohrende nicht zu fruh in einen verhakenden Eingriff mit dem Schutzabschnitt 20 treten, um in unbeabsichtigter Weise den Schutzabschnitt 20 vor sich her zu schieben, so dass letztendlich doch wieder das stirnseitige Ende des scharfkantigen Rohrendes auf die Dichtflachen der Dichteinrichtung 22 trifft, um diese zu verletzen. 」
(翻訳文)
「[0027] フックエレメント28は、導入されたパイプ端部の外壁に食い込み、パイプを接続装置にしっかりと保持するために用いられる。・・・支持スリーブ12と差し込みスリーブ14との間のリング区間に突入するその伸長部が、パイプ端部の押し込み方向では小さな抵抗しか及ぼさず、一方、押し込み方向とは反対の方向では、パイプ端部の外套材料と噛み合い、これに食い込み、パイプをしっかりと確実にその終端位置に保持するよう構成されている。・・・
[0028] 差し込みスリーブ14は、支持スリーブ12のストッパ16の向こう側の溝34内に、半径方向で内側へ突出する伸長部32を介して保持される。・・・
[0029] 支持スリーブ12のノッチ13内にはパッキン22、ここではOリングが配置されている。固定すべきパイプのパイプ端部が、支持スリーブ12と差し込みスリーブ14との間のリング空間に差し込まれると、端面がOリングを傷付け、その密閉性を短期または長期にわたって損なうことがあり、これにより液体漏出が生じる。
[0030] 密閉装置22ないしOリング22の損傷を回避できるようにするため、本発明によれば保護部分20が設けられており、この保護部分は、密閉装置22を端面側のパイプ端部から保護する。パイプ端部が導入されると、この保護部分は先ず、滑らかなパイプ内壁が密閉装置22の密閉面上に達するまで、その端面をもってこの保護部分の上をスライドする。引き続き、端面側のパイプ端部は保護部分20を、連行伸長部24を介して連行することができる。その際に保護部分は、密閉装置22上をスライドし、密閉装置を最終的に解放する。これによりパイプの内壁が密閉装置22と当接する。
[0031]パイプ端部の保護部分20への押し込みを容易にするために、保護部分20に誘導領域26を設けることができる。・・・」
2.無効理由
(1)無効理由1について
(1-1)甲第4号証に記載されている発明
先の第6.1.(1)の甲第4号証の記載事項ア.~オ.及び図示内容から、以下の事項が認められる。
・記載事項ウ.の段落【0014】の記載内容及び【図1】の図示内容から、ソケット10、スリーブ11及びキャップ17を有するパイプ継手本体が開示されているといえ、前記パイプ継手本体は内側に位置するスリーブ11と外側に位置するキャップ17を有し、スリーブ11はソケット10と一体に形成され、キャップ17は、ソケット10とは別体に形成されて、スリーブ11の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記ソケット10の外周に刻設されているは雄ねじ13に螺合して組み立てられていることが理解できる。
・記載事項エ.の段落【0018】の記載内容及び【図1】の図示内容から、パイプ30を挿入する前の図と【図2】のパイプ30を挿入した後の図から、O-リング181,182の外周はスリ-ブ11の外周に対して、突出量(D)で突出し、かつ、挿入されるパイプ30に当たるものであるから、O-リング181,182は、パイプ差込み間隙内に挿入されるパイプ30の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつことが理解できる。
・記載事項ウ.の段落【0014】の記載内容及び【図1】の図示内容から、保持リング15は、キャップ17の内部に配備されているといえ、さらに段落【0015】の記載内容を参酌すると、該保持リング15の内径部から深部側に傾斜されており、パイプ30の外周面に食い込む爪部14を設けており、該爪部14の深部側には、爪部14と対向するソケット10と該ソケット10の外周に刻設される雄ねじ13の内側とで形成される爪部14の逃がし用の空間が存在することが理解できる。
・【図1】を参酌すると、爪部14の軸方向外方側には、パイプ30を外から受け入れる管受入部が設けられており、キャップ17とスリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から爪部14の食い込みを保持するためのワッシャー16の軸方向外方側に存在する空間までの間で形成されていることが理解できる。
先の第6.1.(1)の記載事項ア.~オ.、上記認定事項及び図示内容を総合し、本件特許発明の記載ぶりに則って整理すると、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「パイプ継手本体に、複数のO-リング181,182、保持リング15、を備えており、
前記パイプ継手本体は内側に位置するスリーブ11と外側に位置するキャップ17を有し、スリーブ11はソケット10と一体に形成され、キャップ17は、ソケット10とは別体に形成されて、スリーブ11の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記ソケット10の外周に刻設されているは雄ねじ13に螺合して組み立てられており、
前記スリーブ11の外周には周溝1201,1202を形成し、この周溝1201,1202に、前記パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂パイプ30の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記O-リング181,182が嵌め込まれており、
前記保持リング15は、前記キャップ17の内部に配備され、内径部に前記パイプ30の外周面に食い込む爪部14を設けており、該爪部14の深部側には爪部14の逃がし用の空間が存在し、
前記O-リング181,182用の周溝1201,1202が、二ついずれも前記保持リング15の爪部14の位置より深部側に形成され、
前記爪部14は、前記保持リング15の内径部から深部側に傾斜されており、
前記爪部14の逃がし用の空間は、爪部14と対向する前記ソケット10と該ソケット10の外周に刻設される前記雄ねじ13の内側とで形成されており、
前記爪部14の軸方向外方側には、前記パイプ30を外から受け入れる管受入部が設けられており、
前記キャップ17と前記スリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、前記管受入部から前記爪部14の食い込みを保持するためのワッシャー16の軸方向外方側に存在する空間までの間で形成されているパイプ継手。」
(1-2)対比
本件特許発明と甲4発明とを対比すると、
ア.後者の「パイプ継手本体」は前者の「継手本体」に相当する。後者の「複数のO-リング181,182」は前者の「弾性シールリング」に相当し、後者の「保持リング15」は前者の「抜止めリング」に相当し、後者の「パイプ継手」は前者の「差込み式管継手」に相当する。
イ.後者の「スリーブ11」は前者の「内筒体」に相当し、後者の「キャップ17」と前者の「外筒体」とは、「筒体」の限度で共通する。
後者の「前記パイプ継手本体は内側に位置するスリーブ11と外側に位置するキャップ17を有し」と前者の「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し」とは、「前記継手本体は内側に位置する内筒体と外側に位置する筒体とを有し」の限度で共通する。
後者の「ソケット10」は「パイプ継手本体」の一部であるから、後者の「スリーブ11はソケット10と一体に形成され」は前者の「内筒体は継手本体と一体に形成され」に相当する。
また、後者の「パイプ差込み間隙」は前者の「管差込み間隙」に相当するところ、後者の「キャップ17は、ソケット10とは別体に形成されて、スリーブ11の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記ソケット10の外周に刻設されているは雄ねじ13に螺合して組み立てられており」と前者の「外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」とは、「筒体は、継手本体とは別体に形成されて継手本体に結合されており」という限度で共通する。
ウ.後者の「周溝1201,1202」は前者の「シールリング溝」に相当し、後者の「樹脂パイプ30」及び「パイプ30」は前者の「樹脂製の管」及び「管」に相当する。
エ.後者の「前記パイプ30の外周面に食い込む爪部14」は、その機能及び【図1】に示された爪部14の形状からみて、前者の「前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯」に相当する。また、後者の「前記爪部14は、前記保持リング15の内径部から深部側に傾斜されており」と前者の「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており」とは、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から軸方向内側に傾斜されており」という限度で共通する。
オ.後者の「前記爪部14の軸方向外方側には、前記パイプ30を外から受け入れる管受入部が設けられており」は前者の「前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている」に相当する。
そうすると、本件特許発明と甲4発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリングを備えており、
前記継手本体は内側に位置する内筒体と外側に位置する筒体とを有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、筒体は、継手本体とは別体に形成されて継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、
前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から軸方向内側に傾斜されており、
前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている、差込み式管継手。」
<相違点1>
本件特許発明は、「テーパ付リングを備えており、」「前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている」のに対し、
甲4発明は、かかるテーパ付リングを備えていない点。
<相違点2>
本件特許発明は、「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有」し、「筒体」が「外筒体」であり、「外筒体」は、「内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」、「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙」は「前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対し、
甲4発明は、「前記パイプ継手本体は内側に位置するスリーブ11と外側に位置するキャップ17を有し」、「筒体」が「キャップ17」であり、該「キャップ17」は、「スリーブ11の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記ソケット10の外周に刻設されているは雄ねじ13に螺合して組み立てられており」、「パイプ差込み間隙のうちの一部分は、前記管受入部から前記爪部14の食い込みを保持するためのワッシャー16の軸方向外方側に存在する空間までの間で形成されている」点。
<相違点3>
本件特許発明は、「食込み歯は食込み歯逃し用のテーパと対向され」ており、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、」「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、」「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されて」いるのに対して、
甲4発明は、「該爪部14の深部側には爪部逃がし用の空間が存在し」ており、「前記爪部14は、前記保持リング15の内径部から深部側に傾斜されており、」「前記爪部逃がし用の空間は、爪部14と対向する前記ソケット10と該ソケット10の外周に刻設される雄ねじ13の内側とで形成されて」おり、「キャップ17と前記スリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から」形成されている点。
(1-3)相違点の判断
<相違点1>について
ア.最初に、本件特許発明の「このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間」との発明特定事項の技術的意義について検討する。
(ア)「弾性シールリングより軸方向外方部位」について
本件明細書の段落【0019】の記載内容及び【図1】を参酌すると、本件【図1】に示されたテーパ付リング配置を含むような、管の挿入に伴い、テーパ付リングのテーパが弾性シールリング2の外周部を圧縮し得る部位と解される。
(イ)「抜止めリングより軸方向内方部位」について
「抜止めリングより軸方向内方部位」とは、『「テーパ付リング」のテーパ(押圧部分)の少なくとも一部が「抜止めリングより軸方向内方部位」にある』と解される。なお、この点については、平成28年2月26日付け調書記載のとおり両当事者間に争いはない。
イ.管の差込みに伴い、管の端末部が弾性シールリングに突っ掛かることなくスムーズに差し込まれるために、テーパ付リングを備え得ることは、甲第5号証~甲第7号証、及び請求人が周知技術として追加した甲第13号証~甲第14号証の2に記載されているところ、
先の第6.1.(2)の甲第5号証の記載事項カ.~ケ.及び図示内容から、以下の事項が認められる。
・記載事項ケ.の段落【0021】の「テ-パ付リング22は内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように挿入される。その際、テ-パ付リング22の弾性係止爪25はコレット4の切欠部14内をスライド自在に、かつ該切欠部14内の基端部に係合させて軸方向外方へ不用意に抜け出ることのないようにかつ位置決め状態に組み込まれる。」との記載から、テ-パ付リング22のテ-パ24は、内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように位置決め状態に組み込まれるものであり、さらに、【図1】を参酌すると、上記「位置決め状態に組み込まれている」の具体的位置は、該テ-パ付リング22のテ-パ24の一部が内筒体5の外周に嵌め込まれた複数の弾性シールリング2のうちの外側(図面右側)の弾性シールリング2に覆い被さる位置であることがみてとれる。そうすると、テ-パ付リング22のテ-パ24は、内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように、その一部が、内筒体5の外周に嵌め込まれた複数の弾性シールリング2のうちの外側の弾性シールリング2に覆い被さる位置に位置決め状態に組み込まれているといえる。
そうすると、先の第6.1.(2)の甲第5号証の記載事項カ.~ケ.、上記認定事項及び図示内容を総合すると、甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「継手本体1に、複数の弾性シールリング2、ロックリング3、及びテーパ付リング22を備え、外筒体6が内筒体5の外周との間に管差込み間隙12を形成する差込み式管継手において、前記テーパ付リング22はその中心孔23の軸方向一端の前端部の内周に外拡がり状のテ-パ24を形成しており、このテ-パ付リング22は、内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位にテ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くように、該テ-パ24の一部が内筒体5の外周に嵌め込まれた複数の弾性シールリング2のうちの軸方向外方の弾性シールリング2に覆い被さる位置に、管Pの一端部の端末部P´で管差込み間隙12の内奥方向へ押し込まれ、該テ-パ24が内筒体5のシールリング溝13から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝13内に押し込みながら通過するように位置決め状態に組み込まれていること。」
(以下、「甲第5号証に記載されている事項」という。)
そして、甲第5号証に記載されている事項の「継手本体1」、「複数の弾性シールリング2」、「ロックリング3」、「内筒体5」は、本件特許発明の「継手本体」、「弾性シールリング」、「抜止めリング」、「内筒体」にそれぞれ相当するところ、甲第5号証に記載されている事項の「テーパ付リング22」及び「外拡がり状のテ-パ24」は、本件特許発明の「テーパ付リング」及び「前方拡がり状のテーパ」に相当する。
ウ.甲第4号証の記載事項エ.の段落【0018】の「このようにO-リング18が複数用いられる場合、最初にパイプ30に当たる側のO-リング181 は深部側のO-リング182 よりもスリ-ブ11からの突出量(D)を小さくしておくべきである。かかる突出量(D)はO-リング18の外周とスリ-ブ11の外周との差であり、これが2mm程度、好ましくは1mm程度のものがよく、これが2mm以上では差し込み力が30kgf以上となり、施工性が悪くなる。」との記載から、甲第4号証には、O-リング181,182 の突出量(D)が大きくなるとパイプ30挿入時の施工性が悪くなること、つまり、パイプ30の挿入時に、該パイプ30がO-リング181,182に突っかかる可能性があることが示唆されている。
そうすると、甲4発明において、このような可能性を軽減し、施工性を良くするために、甲第5号証に記載されている事項を適用する動機付けが存在しているといえる。
エ.そして、甲4発明に甲第5号証に記載されている事項の「外拡がり状のテ-パ24」が形成されている「テーパ付リング22」を適用すれば、甲4発明は、「ソケット10に、テ-パ付リングを備えており、テ-パ付リングは、スリーブ11の外周の保持リング15の位置より深側に形成されている周溝1201,1202に嵌め込まれた複数のO-リング181,182より軸方向外方部位にテ-パが管差込み間隙の内奥へ向くように、その一部がスリーブ11の外周に嵌め込まれた複数のO-リング181,182のうちの外側のO-リング182に覆い被さる位置に、パイプ30の一端部の端末部で管差込み間隙の内奥方向へ押し込まれ、該テ-パがスリーブ11の周溝1201,1202から突出している複数のO-リング181,182の外周部に当接し該複数のO-リング181,182を圧縮させて周溝1201,1202内に押し込みながら通過するように位置決め状態に組み込まれている構造」(以下、「甲4+甲5の構造」という。)となる。
オ.「甲4+甲5の構造」は、上記のとおり、パイプ30の挿入に伴い、テーパ付リングのテーパがO-リング181,182の外周部を圧縮し得る部位に組み込まれている構造であることは明らかであるから、テーパ付リングはO-リング181,182より軸方向外方部位に組み込まれているといえる。
また、「甲4+甲5の構造」は、テ-パ付リングのテ-パがO-リング182に覆い被さる位置に組み込まれているから、該テ-パ付リングはO-リング182の軸方向外方であり、かつ直近に組み込まれているものである。そして、甲4発明に甲第5号証に記載されている事項を適用して「甲4+甲5の構造」とする際の、テーパ付リングの保持リング15に対する組み付け位置は、保持リング15より軸方向の内方部位、若しくは外方部位の二者選択と考えられるところ、本件特許発明において,「テーパ付リング」を「抜止めリングより軸方向内方部位」に配置することの技術的意義及び有利な効果は、本件明細書全体をとおしてみても記載も示唆もされていないから、「テーパ付リング」を「抜止めリングより軸方向内方部位」に配置することは、設計的事項にすぎない。
そうすると,甲4発明に甲第5号証に記載されている事項を適用して「甲4+甲5の構造」とする際に、上記O-リング182の軸方向外方であり、かつ直近に組み込まれているテ-パ付リングのテーパの少なくとも一部が保持リング15より軸方向内方部位に組み込むことは当業者であれば適宜になし得ることである。
以上のことから、甲4発明において、テーパ付リングを、スリーブ11の外周の複数のO-リング181,182より軸方向外方部位と、キャップ17の内周の保持リング15より軸方向内方部位との間に配置することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
カ.なお、本件特許発明の上記「抜止めリングより軸方向内方部位」をテーパ付リングの後端が抜止めリングより軸方向内方部位であると解した場合であっても、O-リング182と保持リング15との間隔をあけることで、テーパ付リングの後端を、保持リング15より軸方向内方部位に配置することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
以上総合すると、甲4発明において、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2>について
甲4発明の「前記パイプ継手本体は内側に位置するスリーブ11と外側に位置するキャップ17を有し」の構造に関し、「キャップ17」が本件特許発明の「外筒体」と同様に筒体であり、かつスリーブ11の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するものであるから、「キャップ17」が軸心方向に延在する範囲の限りにおいては、甲4発明の上記構造は、本件特許発明でいうところの「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有する」といえる。
しかしながら、本件特許発明の「外筒体」は「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙」が「前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対し、甲4発明の「キャップ17」は「前記キャップ17と前記スリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、「前記管受入部から前記爪部14の食い込みを保持するためのワッシャー16の軸方向外方側に存在する空間までの間で形成されている」点で異なるところ、かかる構造について、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第7号証、並びに甲第8号証、甲第9号証、及び甲第10号証には記載も示唆もされていない。
また、甲第4号証の記載事項オ.(段落【0019】)には「ソケット10周溝120 より深部側に孔19を形成したものであり、これが外部からソケット10の内部を目視するための確認孔である。即ち、これはパイプ30の先端31の差し込み状況を確認するためのものであって、パイプ30先端31の位置を確認でき、差し込み不足による漏水やパイプ30の抜けを防止することとなったものである。」と記載されているように、確認用の孔19は、ソケット10に形成され、かつパイプ差込み間隙に開口するものであるから、キャップ17に設計変更を加え、キャップ17を確認用の孔19
を越えて軸方向内側に延設し、キャップ17と前記スリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、テーパ付リング(甲4発明に上記相違点1に係るテーパ付リングを採用した場合)をO-リング181,182の部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成することには阻害要因が存在する。
よって、甲4発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)、及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
<相違点3>について
甲4発明の保持リング15は、内径部にパイプ30の外周面に食い込む爪部14を設けており、該爪部14の深部側には爪部14と対向するソケット10と該ソケット10の外周に刻設される雄ねじ13の内側とで形成された爪部逃がし用の空間が存在しているものであるところ、該爪部逃がし用の空間は、パイプ30が挿入された際に爪部14が逃げることができる空間が確保されればよいものであるから、その空間の形状は適宜設計変更し得るものである。
そして、抜け止めリングが食込み歯を有するものにおいて、該食込み歯が食込み歯逃がし用のテーパと対向されるとともに、該食込み歯が、抜止めリングの内径部から該食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、該食込み歯逃がし用のテーパが、該食込み歯の軸方向内方側に形成されていて該食込み歯の食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向される構造を採用することは従来周知の技術(例えば、甲第8号証の【図1】及び【図2】に示された保持リング14の爪13がソケット10に設けられたテーパと対向する点、甲第9号証の抜け止めリング8の爪部が締付環体4に設けられたテーパと対向する点、及び甲第10号証のロックリング34a,34bの規制片36が継手本体12の傾斜面17に対向する点を参照。)であるから、甲4発明に上記周知技術を適用し、甲4発明の「爪部14の深部側には」「爪部14と対向するソケット10と該ソケット10の外周に刻設される雄ねじ13の内側とで形成され」た「爪部逃がし用の空間が存在し」との構造に代えて、爪部14の深側部には該爪部14の逃がし用のテーパと対向することで空間を形成する構造とすることは当業者であれば想起し得ることである。
しかしながら、甲4発明に上記周知技術を適用すると、甲4発明の爪部14の深側部にあるソケット10に該爪部14の逃がし用のテーパを形成することになるから、本件特許発明の「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有」する構造、つまり爪部14の逃がし用のテーパを外筒体に対応するキャップ17に有する構造に至らない。
さらに、甲4発明に上記周知技術を適用した構造は、外筒体に対応するキャップ10と前記スリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から形成されているから、本件特許発明の「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成され」との構造、つまりキャップ17とスリーブ11の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分が、爪部14の逃がし用のテーパの最小内径部から形成する構造にはならない。
よって、甲4発明に、甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
(1-4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、甲4発明、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)、及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)無効理由2について
(2-1)甲第9号証に記載されている発明
先の第6.1.(6)の甲第9号証の記載事項ハ.~ホ.及び図示内容から、以下の事項が認定できる。
・記載事項フ.の段落【0010】の記載内容及び【図1】の図示内容から、継手本体2、挿入筒部3、及び袋ナット10を有するパイプ継手本体が開示されているといえ、該パイプ継手本体は内側に位置する挿入筒部3と外側に位置する袋ナット10を有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記継手本体2の外周面に形成されている雄ネジ9に螺合して組み立てられいることが理解できる。
・記載事項フ.の段落【0011】の記載内容及び【図1】の図示内容から、凹周溝7に、パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂製のパイプ1の外径よりも小さい外径をもつシール部材6が嵌め込まれていることが理解できる。
・【図1】の管継手の断面図には、抜け止めリング8の掛止刃12と対向する締付環体4の端面に掛止刃逃がし用のテーパが形成されていることが示されている。また、掛止刃12は、抜け止めリング8の内周部から掛止刃逃がし用のテーパ側に傾斜されており、前記掛止刃逃がし用のテーパは、締付環体4に有し、前記掛止刃12の軸方向内方側に形成されていて前記掛止刃12の前記掛止刃逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されていることが示されている。
・【図1】の管継手の断面図には、掛止刃12の軸方向外方側には、パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており、前記袋ナット10と前記挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、管受入部から抜け止めリング8の軸方向外方側までの間で形成されていることが示されている。
先の第6.1.(6)の甲第9号証の記載事項ハ.~ホ.、上記認定事項及び図示内容を総合し、本件特許発明の記載ぶりに則って整理すると、甲第9号証には、以下の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されている。
「パイプ継手本体に、シール部材6、抜け止めリング8、拡径ワッシャー5によってパイプ1の挿入が許容される程度に拡径されている締付環体4を備えており、
前記パイプ継手本体は内側に位置する挿入筒部3と外側に位置する袋ナット10を有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記継手本体2の外周面に形成されている雄ネジ9に螺合して組み立てられており、
前記挿入筒部3の外周には凹周溝7を形成し、この凹周溝7に、前記パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂製のパイプ1の外径よりも小さい外径をもつ前記シール部材6が嵌め込まれており、
前記抜け止めリング8は、前記袋ナット10の内部に配備され、内周部に前記パイプ1の挿入方向Aに折曲されて前記パイプ1の外周面に掛止する掛止刃12を設けており、該掛止刃12は掛止刃逃がし用のテーパと対向され、
前記掛止刃12は、前記抜け止めリング8の内周部から前記掛止刃逃がし用のテーパ側に傾斜されており、
前記掛止刃逃がし用のテーパは、前記締付環体4に有し、前記掛止刃12の軸方向内方側に形成されていて前記掛止刃12の前記掛止刃逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、
前記掛止刃12の軸方向外方側には、前記パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており、
前記袋ナット10と前記挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から抜け止めリング8の軸方向外方側までの間で形成されている管継手。」
(2-2)対比
本件特許発明と甲9発明とを対比すると、
ア.後者の「パイプ継手本体」と前者の「継手本体」に相当する。後者の「シール部材6」は前者の「弾性シールリング」に相当し、後者の「抜け止めリング8」は前者の「抜止めリング」に相当し、後者の「管継手」は前者の「差込み式管継手」に相当する。
イ.後者の「挿入筒部3」は前者の「内筒体」に相当し、後者の「袋ナット10」と前者の「外筒体」とは、「筒体」の限度で共通する。
後者の「前記パイプ継手本体は内側に位置する挿入筒部3と外側に位置する袋ナット10を有し」と前者の「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し」とは「前記継手本体は内側に位置する内筒体と外側に位置する筒体とを有し」の限度で共通する。
後者の「継手本体2」は「パイプ継手本体」の一部であるから、後者の「挿入筒部材3は継手本体2と一体に形成され」は前者の「内筒体は継手本体と一体に形成され」に相当する。
また、後者の「パイプ差込み間隙」は前者の「管差込み間隙」に相当するところ、後者の「袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記継手本体2の外周面に形成されている雄ネジ9に螺合して組み立てられており」と前者の「外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」とは、「筒体は、継手本体とは別体に形成されて継手本体に結合されており」という限度で共通する。
ウ.後者の「凹周溝7」は前者の「シールリング溝」に相当し、後者の「樹脂製のパイプ1」及び「パイプ1」は前者の「樹脂製の管」及び「管」に相当し、後者の「前記パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂製のパイプ1の外径よりも小さい外径をもつ前記シール部材6」と前者の「前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリング」とは「前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さい外径をもつ前記弾性シールリング」という限度で共通する。
エ.後者の「内周部に前記パイプ1の挿入方向Aに折曲されて前記パイプ1の外周面に掛止する掛止刃12」は前者の「内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯」に相当し、後者の「掛止刃逃がし用のテーパ」は前者の「食込み歯逃がし用のテーパ」に相当するところ、
後者の「前記掛止刃逃がし用のテーパは、前記締付環体4に有し、前記掛止刃12の軸方向内方側に形成されていて前記掛止刃12の前記掛止刃逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており」と、
前者の「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており」とは
「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており」の限度で共通する。
オ.後者の「前記掛止刃12の軸方向外方側には、前記パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており」は前者の「前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている」に相当する。
そうすると、本件特許発明と甲9発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリングを備えており、
前記継手本体は内側に位置する内筒体と外側に位置する筒体とを有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、筒体は、継手本体とは別体に形成されて継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、
前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、
前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、
前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている差込み式管継手。」
<相違点1>
本件特許発明は、「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有」し、「筒体」が「外筒体」であり、「外筒体」は、「内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」、「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙」は「前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対し、
甲9発明は、「前記パイプ継手本体は内側に位置する挿入筒部3と外側に位置する袋ナット10を有し」、「筒体」が「袋ナット10」であり、該「袋ナット10」は、「挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するよう前記継手本体2の外周面に形成されている雄ネジ9に螺合して組み立てられており」、「パイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から抜け止めリング8の軸方向外方側までの間で形成されている」点。
<相違点2>
本件特許発明は、弾性シールリングが管差込み間隙内に挿入される管の「内径よりも大きい外径をも」ち、「テーパ付リング」を備えており、「前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている」のに対し、
甲9発明は、シール部材6がパイプ管差込み間隙内に挿入されるパイプ1の内径よりも大きい外径をもつか明らかでなく、かつ、テーパ付リングを備えていない点。
<相違点3>
本件特許発明は、「食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し」、「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成され」ているのに対し、
甲9発明は、「掛止刃逃がし用のテーパは、前記締付環体4に有し」、「前記袋ナット10と前記挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、管受入部から抜け止めリング8の軸方向外方側までの間で形成されている」点。
(2-3)相違点の判断
<相違点1> について
甲9発明の「前記パイプ継手本体は内側に位置する挿入筒部3と外側に位置する袋ナット10を有し」の構造に関し、「袋ナット10」が本件特許発明の「外筒体」と同様に筒体であり、かつ挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙のうちの一部分を形成するものであるから、「袋ナット10」が軸心方向に延在する範囲の限りにおいては、甲9発明の上記構造は、本件特許発明でいうところの「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有する」といえる。
しかしながら、本件特許発明の「外筒体」は「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙」が「前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対し、甲9発明の「袋ナット10」は「前記袋ナット10と前記挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙のうちの一部分は、管受入部から抜け止めリング8の軸方向外方側までの間で形成されている」点で異なるところ、かかる構造について、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第7号証、並びに甲第8号証、甲第9号証、及び甲第10号証には記載も示唆もされていない。
よって、甲9発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)、及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点1に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
<相違点2> について検討する。
甲第9号証の記載事項ヘ.(段落【0013】)に「拡径ワッシャー5によって、締付環体4が、パイプ1の挿入が許容される程度に拡径されているため、パイプ1の端部を、矢印A方向に、押し込むことができる。このパイプ1の押し込み動作により、図3に示すように、パイプ1の先端部が、拡径ワッシャー5に当接して、これを締付環体4から離脱させ、その拡径ワッシャー5が逃げ用空間16に収納されると共に、締付環体4が縮径して、パイプ1が締め付けられ、その内面が、シール部材6に密接してシールが施され」と記載されているように、甲9発明のシール部材6は、パイプ1が締め付けられた後にシールが施されるので、シール部材6の外径は、パイプ1の挿入時にパイプ1とシール部材6との間で問題となるような干渉が生じる程度にパイプ1の内径よりも大きい外径をもつとは解されない。むしろ、甲9発明は、「拡径ワッシャー5によってパイプ1の挿入が許容される程度に拡径されている締付環体4を備えて」いるから、パイプ1とシール部材6との間で干渉が生じない程度に、シール部材6の外径とパイプ1の内径の寸法が設定されていると解するのが自然である。そうすると、甲9発明において、シール部材6を保護するために、甲第5号証、甲第6号証(記載事項ス.のテーパ付リング22)、及び甲第7号証(記載事項ツ.のスリーブ31)に記載されているテーパ付リングを適用する動機付けがあるとはいえない。
加えて、テーパ付リングを配置するとパイプ挿入時に拡径ワッシャー5とテーパ付リングが干渉する恐れがあるため、テーパ付リングの適用には、阻害要因が存在する。
この点に関し、請求人は、口頭審理陳述要領書(1)の5.(2)二.(一).の「甲11発明の認定について」において、甲第15号証及び甲第16号証を提示して反論しているが、甲第9号証に記載されている事項及び甲9発明の認定は、甲第9号証の特許請求の範囲、明細書及び図面に基づいて認定すべきものである。そして、甲第9号証に記載されている事項は、先の第6.1.(6)に記載したとおりであり、甲9発明は、先の第6.1.(2)(2-1)に認定したとおりであるところ、甲第9号証に記載されている事項及び甲9発明の認定は、それぞれ明確であるから、甲第15号証及び甲第16号証の記載内容を考慮する必要はない。
よって、請求人の主張は採用できない。
したがって、甲9発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<相違点3>について検討する。
甲9発明は、記載事項ヒ.に記載されているように「組付け作業性が良好であり、かつ、部品の管理や調達が容易で、部品紛失のおそれが少なく、長期にわたり安定した止水性能を維持することができる管継手を提供することを目的とする」ものであり、その目的を達成するために、「拡径ワッシャー5によってパイプ1の挿入が許容される程度に拡径されている締付環体4を備えて」いるものであり、これにより、記載事項ヘ.(段落【0013】)に記載されているように、「パイプ1の先端部が、拡径ワッシャー5に当接して、これを締付環体4から離脱させ、その拡径ワッシャー5が逃げ用空間16に収納されると共に、締付環体4が縮径して、パイプ1が締め付けられ、その内面が、シール部材6に密接してシールが施され」るものである。
そうすると、甲9発明において、「締付環体4を備えて」いることは、必須の要件であり、締付環体4に代えて袋ナット10(本件特許発明の「外筒体」に相当。)とし、該袋ナット10に掛止刃逃がし用のテーパを形成することには阻害要因が存在しているといえる。
加えて、締付環体4と袋ナット10との間には、外周面に雄ネジ9を形成した継手本体2の一部が延出されているから、袋ナット10を締付環体4の位置まで拡張することには技術的困難性がある。
よって、甲9発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
(2-4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、甲9発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)無効理由3について
(3-1)甲第11号証に記載されている発明
先の第6.1.(8)の甲第11号証の記載事項ラ.~レ.及び【図1】の図示内容から、以下の事項が認定できる。
・継手本体2、挿入筒部3、カバー14及び袋ナット10を有するパイプ継手本体が開示されているといえ、パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する挿入筒部3と外側に位置するカバー14及び袋ナット10を有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、カバー14及び袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙を形成するよう前記継手本体2に螺合して組み立てられていること。
・凹周溝7に、パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂製のパイプ1の外径よりも小さい外径をもつシール部材4が嵌め込まれていること。
・歯部12と締付環体5との間には歯部逃がし用の空間が存在し、歯部12は、抜け止めリング8の内周部から歯部逃がし用の空間側に傾斜されていること。
・歯部12の軸方向外方側には、パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており、カバー14及び袋ナット10と挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、管受入部から形成されていて拡径片6を収納するためのリング状の逃げ用空間16の内奥へ差し込むことができる長さに形成されていること。
先の第6.1.(8)の甲第11号証の記載事項ラ.~レ.、上記認定事項及び図示内容を総合し、本件特許発明の記載ぶりに則って整理すると、甲第11号証には、以下の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されている。
「パイプ継手本体に、シール部材4、抜け止めリング8、拡径片6によってパイプ1の挿入が可能な程度に拡径されている締付環体5を備えており、
前記パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する挿入筒部3と外側に位置するカバー14及び袋ナット10を有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、カバー14及び袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙を形成するよう前記継手本体2に螺合して組み立てられており、
前記挿入筒部3の外周には凹周溝7を形成し、この凹周溝7に、前記パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂材から成るパイプ1の外径よりも小さい外径をもつ前記シール部材4が嵌め込まれており、
前記抜け止めリング8は、前記袋ナット10がカバー14に螺合されることにより固定され、内周側に前記パイプ1の挿入方向Aに折り曲げられて前記パイプ1の外周面に掛止する歯部12を設けており、該歯部12と締付環体5との間には歯部逃がし用の空間が存在し、
前記歯部12は、前記抜け止めリング8の内周部から歯部逃がし用の空間側に傾斜されており、
前記歯部12の軸方向外方側には、前記パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており、
前記カバー14及び袋ナット10と前記挿入筒部3の外周とによって形成されたパイプ差込み間隙は、管受入部から形成されていて前記拡径片6を収納するためのリング状の逃げ用空間16の内奥へ差し込むことができる長さに形成されている管継手。」
(3-2)対比
本件特許発明と甲11発明とを対比すると、
ア.後者の「パイプ継手本体」は前者の「継手本体」に相当し、後者の「シール部材4」は前者の「弾性シールリング」に相当し、後者の「抜け止めリング8」は前者の「抜止めリング」に相当し、後者の「管継手」は前者の「差込み式管継手」に相当する。
イ.後者の「挿入筒部3」は前者の「内筒体」に相当し、後者の「カバー14及び袋ナット10」は前者の「外筒体」に相当し、後者の「パイプ差込み間隙」は前者の「管差込み間隙」に相当するところ、後者の「前記パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する挿入筒部3と外側に位置するカバー14及び袋ナット10を有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、カバー14及び袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ差込み間隙を形成するよう前記継手本体2に螺合して組み立てられ」は前者の「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」に相当する。
ウ.後者の「凹周溝7」は前者の「シールリング溝」に相当し、後者の「樹脂材から成るパイプ1」及び「パイプ1」は前者の「樹脂製の管」及び「管」に相当し、後者の「前記パイプ差込み間隙内に挿入される樹脂材から成るパイプ1の外径よりも小さい外径をもつ前記シール部材4」と前者の「前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリング」とは「前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さい外径をもつ前記弾性シールリング」という限度で共通する。
エ.後者の「前記抜け止めリング8は、前記袋ナット10がカバー14に螺合されることにより固定され」は、【図1】を参酌すると、前者の「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され」に相当し、後者の「内周側に前記パイプ1の挿入方向Aに折り曲げられて前記パイプ1の外周面に掛止する歯部12」は前者の「内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯」に相当する。
後者の「前記歯部12は、前記抜け止めリング8の内周部から歯部逃がし用の空間側に傾斜されており」と前者の「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており」とは、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から軸方向内方側に傾斜されており」との限度で共通する。
オ.後者の「前記歯部12の軸方向外方側には、前記パイプ1を外から受け入れる管受入部が設けられており」は前者の「前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている」に相当する。
そうすると、本件特許発明と甲11発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリングを備えており、
前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、
前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から軸方向内方側に傾斜されており、
前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている差込み式管継手。」
<相違点1>
本件特許発明は、弾性シールリングが管差込み間隙内に挿入される管の「内径よりも大きい外径をも」ち、「テーパ付リング」を備えており、「前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている」のに対し、
甲11発明は、シール部材4がパイプ管差込み間隙内に挿入されるパイプ1の内径よりも大きい外径をもつか明らかでなく、かつ、テーパ付リングを備えていない点。
<相違点2>
本件特許発明は、「食込み歯は食込み歯逃し用のテーパと対向され」ており、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、」「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、」「管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対して、
甲11発明は、「歯部12と締付環体5との間には歯部逃がし用の空間が存在し」ており、「前記歯部12は、前記抜け止めリング8の内周部から歯部逃がし用の空間側に傾斜されており、」「パイプ差込み間隙は、管受入部から形成されていて前記拡径片6を収納するためのリング状の逃げ用空間16の内奥へ差し込むことができる長さに形成されている」点。
(3-3)相違点の判断
<相違点1>について
甲第11号証の記載事項レ.に「パイプ1を押し込むワンタッチ動作により、拡径片6が、締付環体5のスリット51から離脱すると共に、締付環体5が縮径して、パイプ1の端部を締め付け、パイプ1の内面がシール部材4に密接して密封状態となり、接続作業を完了することができる。」と記載されるように、甲11発明のシール部材4は、パイプ1が締め付けられた後にシールが施されるので、シール部材4の外径は、パイプ1の挿入時にパイプ1とシール部材4との間で問題となるような干渉が生じる程度にパイプ1の内径よりも大きい外径をもつとは解されない。むしろ、甲11発明は、「拡径片6によってパイプ1の挿入が可能な程度に拡径されている締付環体5を備えて」いるから、パイプ1とシール部材4との間で干渉が生じない程度に、シール部材4の外径とパイプ1の内径の寸法が設定されていると解するのが自然である。そうすると、甲11発明において、シール部材4を保護するために、甲第5号証~甲第7号証に記載されているテーパ付リングを適用する動機付けがあるとはいえない。
加えて、テーパ付リングを配置するとパイプ挿入時に拡径片6とテーパ付リングが干渉する恐れがあるため、テーパ付リングの適用には、阻害要因が存在する。
この点に関し、請求人は、口頭審理陳述要領書(1)の5.(2)二.(一).の「甲11発明の認定について」において、甲第15号証及び甲第16号証を提示して反論しているが、甲第11号証に記載されている事項及び甲11発明の認定は、甲第11号証の特許請求の範囲、明細書及び図面に基づいて認定すべきものである。そして、甲第11号証に記載されている事項は、先の第5.1.(8)に記載したとおりであり、甲11発明は、先の第5.1.(3)(3-1)に認定したとおりであるところ、甲第11号証に記載されている事項及び甲11発明の認定は、それぞれ明確であるから、甲第15号証及び甲第18号証の記載内容を考慮する必要はない。
よって、請求人の主張は採用できない。
したがって、甲11発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせて、上記相違点1に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<相違点2>について
上述したように、抜け止めリングが、食込み歯を有するものにおいて、該食込み歯が食込み歯逃がし用のテーパと対向されるとともに、該食込み歯が、抜止めリングの内径部から該食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、該食込み歯逃がし用のテーパが、該食込み歯の軸方向内方側に形成されていて該食込み歯の食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向される構造を採用することは従来周知の技術(例えば、甲第8号証~甲第10号証を参照。)ではあるが、甲11発明の「歯部逃がし用の空間」の軸方向内側に歯部逃がし用のテーパを形成するとすれば、「締付環体5」に付けることになるから、本件特許発明の「前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し」との構造、つまり、歯部逃がし用のテーパをカバー14に有しとの構造に至らない。
加えて、甲11発明は、記載事項リ.に記載されているように「組付け作業性が良好であり、かつ、被接続用のパイプに損傷を与えることなく、部品の管理や調達が容易で、部品紛失のおそれが少なく、長期にわたり安定した止水性能を維持することができる管継手を提供することを目的とする」ところ、その目的を達成するために、「拡径片6によってパイプ1の挿入が可能な程度に拡径されている締付環体5を備えて」いるものであり、これにより、記載事項レ.に記載されているように、止水性能を維持するものであるから、甲11発明において、「締付環体5を備えて」いることは必須の要件である。そうすると、カバー14を歯部12の軸方向内側まで延出することが可能であるとしても、「締付環体5」をなくして、該カバー14に歯部逃がし用のテーパを形成することには阻害要因が存在しているといえる。
よって、甲11発明に、甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
(3-4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、甲11発明に、甲第5号証、甲第6号証、又は甲第7号証に記載される公知技術(周知慣用技術)及び甲第8号証、甲第9号証、又は甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.無効理由4について
(4-1)甲第12号証-1に記載されている発明
先の第6.1.(9)の甲第12号証-1の記載事項あ.~か.及び図示内容から、以下の事項が認定できる。
・Figur 1には支持スリーブ12が一体に形成される支持本体が示されているとともに、該支持本体、支持スリーブ12、及び差し込みスリーブ14を有するパイプ継手本体が開示されているといえる。また、記載事項あ.及びか.を参酌すると、前記パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する支持スリーブ12と該支持スリーブ12を同心に取り囲んで外側に位置する差し込みスリーブ14を有し、該支持スリーブ12は支持本体と一体に形成され、差し込みスリーブ14は、支持本体とは別体に形成されて、支持スリーブ12の外周との間にリング区間を形成するよう支持本体に結合されていることが理解できる。
・記載事項い.及びFigur 1を参酌すると、Oリング22の外径はリング区間内に挿入されるパイプの外径よりも小さく、Oリング22のシール性を考慮すると、パイプの内径よりも大きいことが理解できる。
・記載事項か.の記載内容及びFigur 1の図示内容から、フックエレメント28は、差し込みスリーブ14の内部に配備され、内径部にパイプの外周面に食い込む食込み部を設けていることが理解できる。
・前記フックエレメント28は、前記差し込みスリーブ14の内部に配備され、内径部に前記パイプの外周面に食い込む食込み部を設けていることが理解できる。
・Figur 3には、保護部分20の内径部に前方拡がり状のテーパが形成されていることが示されている。
・Figur 1を参酌すると、フックエレメント28の軸方向外方側には、パイプを外から受け入れる管受入部が設けられており、差し込みスリーブ14と支持スリーブ12の外周とによって形成されたリング区間は、前記管受入部から監視開口部40の位置までの間で形成されていることが理解できる。
先の第6.1.(9)の甲第12号証-1の記載事項あ.~か.、上記認定事項及び図示内容を総合し、本件特許発明の記載ぶりに則って整理すると、甲第12号証-1には、以下の発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されている。
「パイプ継手本体に、Oリング22、フックエレメント28、及び軸方向内側の内径部に前方拡がり状のテーパが形成されている保護部分20を備えており、
前記パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する支持スリーブ12と該支持スリーブ12を同心に取り囲んで外側に位置する差し込みスリーブ14を有し、支持スリーブ12は支持本体と一体に形成され、差し込みスリーブ14は、支持本体とは別体に形成されて、支持スリーブ12の外周との間にリング区間を形成するよう支持本体に結合されており、
前記支持スリーブ12の外周にはノッチ13を形成し、このノッチ13に、前記リング区間内に挿入されるプラスチックパイプの外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記Oリング22が嵌め込まれており、
前記フックエレメント28は、前記差し込みスリーブ14の内部に配備され、内径部に前記パイプの外周面に食い込む食込み部を設けており、
前記保護部分20は、パイプを前記支持スリーブ12と前記差し込みスリーブ14との間に導入する際に、前記Oリング22の密閉面を保護するとともに、前記密閉面をパイプ内壁に当接させるために、パイプ端部によって連行されるように前記支持スリーブ12に配置されており、
前記フックエレメント28の軸方向外方側には、前記パイプを外から受け入れる管受入部が設けられており、
前記差し込みスリーブ14と前記支持スリーブ12の外周とによって形成されたリング区間は、前記管受入部から監視開口部40の位置までの間で形成されている接続装置10。」
(4-2)対比
本件特許発明と甲12発明とを対比すると、
ア.後者の「パイプ継手本体」は前者の「継手本体」に相当し、後者の「Oリング22」は前者の「弾性シールリング」に相当し、後者の「フックエレメント28」は前者の「抜止めリング」に相当し、後者の「軸方向内側の内径部に前方拡がり状のテーパが形成されている保護部分20」と前者の「テーパ付リング」とは、弾性シールリングの「保護部材」という限度で共通する。後者の「接続装置10」は前者の「差込み式管継手」に相当する。
イ.後者の「支持スリーブ12」は前者の「内筒体」に相当し、後者の「差し込みスリーブ14」は前者の「外筒体」に相当し、後者の「リング区間」は前者の「管差込み間隙」に相当するところ、後者の「前記パイプ継手本体は軸心方向一端部に内側に位置する支持スリーブ12と該支持スリーブ12を同心に取り囲んで外側に位置する差し込みスリーブ14を有し、支持スリーブ12は支持本体と一体に形成され、差し込みスリーブ14は、支持本体とは別体に形成されて、支持スリーブ12の外周との間にリング区間を形成するよう支持本体に結合されており」は前者の「前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており」に相当する。
ウ.後者の「ノッチ13」は前者の「シールリング溝」に相当し、後者の「プラスチックパイプ」及び「パイプ」は前者の「樹脂製の管」及び「管」に相当する。
エ.後者の「前記フックエレメント28は、前記差し込みスリーブ14の内部に配備され、内径部に前記パイプの外周面に食い込む食込み部を設けており」と前者の「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており」とは、「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む食込み歯を設けており」という限度で共通する。
オ.後者の「前記フックエレメント28の軸方向外方側には、前記パイプを外から受け入れる管受入部が設けられており」は前者の「前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている」に相当する。
そうすると、本件特許発明と甲12発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及び保護部材を備えており、
前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、
前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される樹脂製の管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、
前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む食込み歯を設けており、
前記食込み歯の軸方向外方側には、前記管を外から受け入れる管受入部が設けられている、差込み式管継手。」
<相違点1>
本件特許発明は、「テーパ付リング」を備えており、「前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれて」いるのに対し、
甲12発明は、「保護部分20」を備えており、「前記保護部分20は、パイプを前記支持スリーブ12と前記差し込みスリーブ14との間に導入する際に、前記Oリング22の密閉面を保護するとともに、前記密閉面をパイプ内壁に当接させるために、パイプ端部によって連行されるように前記支持スリーブ12に配置されて」いる点。
<相違点2>
本件特許発明は、「食込み歯」が「拡縮径変形自在」であり、「該食込み歯は食込み歯逃し用のテーパと対向され」ており、「前記食込み歯は、前記抜止めリングの内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜されており、前記食込み歯逃がし用のテーパは、前記外筒体に有し、前記食込み歯の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、」「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成されていて前記テーパ付リングを前記弾性シールリングの部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されて」いるのに対し、
甲12発明は、フックエレメント28の「食込み部」は、拡縮径変形自在であるか明らかでなく、 食込み部の逃し用のテーパを有しておらず、「前記差し込みスリーブ14と前記支持スリーブ12の外周とによって形成されたリング区間は、前記管受入部から監視開口部40の位置までの間で形成されている」点。
(4-3)相違点の判断
<相違点1>について
甲第12号証-1(段落[0030])の「パイプ端部が導入されると、この保護部分は先ず、滑らかなパイプ内壁が密閉装置22の密閉面上に達するまで、その端面をもってこの保護部分の上をスライドする。引き続き、端面側のパイプ端部は保護部分20を、連行伸長部24を介して連行することができる。」との記載を参酌すると、上記保護部分20は、Oリング22(密閉装置22)より軸方向外方部位に設けられていないから、甲12発明の「前方拡がり状のテーパ」は、管の挿入に伴い、弾性シールリングを圧縮する本件特許発明の「テーパ」とは機能が異なるものである。
したがって、甲12発明の「保護部分20」は本件特許発明の「テーパ付リング」に相当するものとはいえない。
また、甲第7号証に記載されているスリーブ31はその内径部に前方拡がり状のテーパを有している(段落【0021】を参照。)ものの、パイプ12が挿入される前に、既にシール部材15を被覆しており、パイプ12の挿入に伴い、スリーブ31のテーパがシール部材15を圧縮するものでないから、甲第7号証に記載されている「スリーブ31」も、本件特許発明の「テーパ付リング」に相当するものとはいえない。
したがって、甲12発明に、甲第7号証に記載されている公知技術を組み合わせても、上記相違点1に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<相違点2>について
差込み式管継手において、抜止めリングの食込み歯を拡縮径変形自在にすることは、従来周知の技術(甲第4号証、甲第8~10号証を参照。)であるから、甲12発明の「食込み部」を拡縮径変形自在にすることは当業者であれば容易に想到し得るものである。
しかしながら、甲12発明の「食込み部」の軸方向内側には該「食込み部」の逃し用の空間が充分確保している構造であるから、食込み歯逃がし用のテーパを形成することが周知の技術(甲第9及び10号証を参照。)であったとしても、甲12発明の「差し込みスリーブ14」に「食込み部」の逃し用のテーパを形成する動機付けは存在しない。
また、甲12発明の「フックエレメント28」が軸方向内側の監視開口部40まで延びているから「食込み部」の逃し用のテーパを形成するには、技術的困難性がある。
加えて、甲12発明に上記周知技術を適用した構造は、差し込みスリーブ14と支持スリーブ12の外周とによって形成されたリング区間は、管受入部から監視開口部40までの間で形成されているから、本件特許発明の「前記外筒体と前記内筒体の外周とによって形成された管差込み間隙は、前記食込み歯逃がし用のテーパの最小内径部から形成され」との構造、つまり差し込みスリーブ14と支持スリーブ12の外周とによって形成されたリング区間が、食込み部の逃がし用のテーパの最小内径部から形成される構造にはならない。
よって、甲12発明に、甲第9号証、甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせても、上記相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
(4-4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、甲12発明に、甲第7号証に記載される公知技術、及び甲第9号証、甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)を組み合わせるか、甲12発明に、甲第9号証、甲第10号証に記載される公知技術(周知慣用技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明の特許を、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-800159