特許無効審判
2015-800036
臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便座付き便器
- 審判番号
- 2015-800036
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2007-232005
- 登録番号
- 特許第4641313号(P4641313)
- 請求日
- 2015年02月23日
- 審決日
- 2017年02月01日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】吉村 學
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】石川 大輔
- 【請求人代理人】山本 健策
- 【請求人代理人】草深 充彦
- 【請求人代理人】芦北 智晴
- 【請求人代理人】松村 信夫
- 【請求人代理人】坂本 優
- 【被請求人】株式会社 岡田製作所
- 【被請求人代理人】▲高▼山 嘉成
- 【被請求人代理人】冨宅 恵
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 藤田 都志行
- 分類
- P1123.121-YAA(A47K) / P1123.561-YAA(A47K) / P1123.537-YAA(A47K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4641313号「臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便座付き便器」の特許無効審判事件についてされた平成27年11月11日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10245号、平成28年 8月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4641313号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項15-30について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4641313号(以下「本件特許」という。平成19年9月6日出願、平成22年12月10日登録、請求項の数は30である。)の請求項1、2、15、23及び25ないし30に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。
第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 2月23日 審判請求
平成27年 4月15日 審判事件答弁書
平成27年 7月31日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 8月13日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 9月 4日 口頭審理
平成27年11月11日 一次審決(請求不成立)
平成27年12月12日 審決取消訴訟提起(請求人)
平成28年 8月24日 判決言渡(審決取消)
平成28年10月31日 訂正請求書
なお、平成28年10月31日付け訂正請求書を請求人に送付し、期間を指定して弁駁書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答はなかった。
第3 訂正請求について
1 訂正請求の内容
本件無効審判事件の被請求人より平成28年10月31日に提出された訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項15~30について訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするものである。(下線部は訂正個所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項15に「前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする」と記載されているのを、「前記拭き取りアーム駆動部は、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする」に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0040】に記載された「拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする」と記載されているのを、「拭き取りアーム駆動部は、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする」に訂正する。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項15に係る発明の発明特定事項である「便器と便座との間隙」について、「便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる」ものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項について
本件特許明細書の段落【0015】に「本発明は、便座を昇降させる便座昇降装置と一緒に用いられ、……便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して」と記載されていることからみて、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
本件特許無効審判事件において、請求項15、23及び25ないし30は、無効審判の請求の対象とされているので、請求項15に係る訂正、及び請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項23及び25ないし30に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項に掲げる、「特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない」との要件は適用されないものの、請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項16ないし22及び24は、無効審判の請求の対象となっておらず、かつ、当該請求項に係る訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、当該要件を満たす必要がある。
この点について検討すると、下記第7において後述するとおり、請求項15に係る発明は、請求人が主張する無効理由によって無効とすることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項16ないし22及び24に係る発明についても同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
よって、請求項16ないし22及び24に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第4 本件特許発明
本件訂正は、上記第3のとおり認められたので、本件特許の請求項1、2、15、23及び25ないし30に係る発明(以下各請求項に係る発明を「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明15」などといい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、15、23及び25ないし30に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
便座を昇降させる便座昇降装置と一緒に用いられ、トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記便座昇降部によって前記便座が上昇された際に生じる便器と前記便座との間隙を介して、前記便座の排便用開口から前記拭き取りアームに取り付けられた前記トイレットペーパーが露出するように、前記拭き取りアームを駆動させる拭き取りアーム駆動部とを備える、臀部拭き取り装置。
【請求項2】
トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
便座を昇降させる便座昇降部と、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記便座昇降部によって前記便座が上昇された際に生じる便器と前記便座との間隙を介して、前記便座の排便用開口から前記拭き取りアームに取り付けられた前記トイレットペーパーが露出するように、前記拭き取りアームを駆動させる拭き取りアーム駆動部とを備える、臀部拭き取り装置。
【請求項15】
トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる拭き取りアーム駆動部とを備え、
前記拭き取りアーム駆動部は、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする、臀部拭き取り装置。
【請求項23】
さらに、前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記拭き取りアーム駆動部に、前記トイレットペーパーが取り付けられている前記拭き取りアームを便座の排便用開口まで移動させ、前記臀部を前記拭き取りアームに拭き取らせ、前記拭き取りアームを元の位置まで戻させることを特徴とする、請求項15に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項25】
さらに、前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、ユーザからの指示に応じて、前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御することを特徴とする、請求項15に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項26】
ユーザからの指示に応じて制御された前記拭き取りアーム駆動部の動作を記憶する記憶部とを備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている情報に従って、前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御することを特徴とする、請求項25に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項27】
さらに、前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記拭き取りアーム駆動部を制御して前記拭き取りアームに前記臀部を拭き取らせた後、再度、前記拭き取りアーム駆動部を制御して前記拭き取りアームに前記臀部を拭き取らせることを特徴とする、請求項15に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項28】
前記制御部は、ユーザの指示に応じて、再度、前記拭き取りアーム駆動部を制御して前記拭き取りアームに前記臀部を拭き取らせることを特徴とする、請求項27に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項29】
さらに、
前記拭き取りアーム駆動部の動作を制御する制御部と、
複数の指示スイッチ部とを備え、
前記制御部は、押下された指示スイッチ部に対応する動作を行うように、前記拭き取りアーム駆動部を制御することを特徴とする、請求項15に記載の臀部拭き取り装置。
【請求項30】
請求項1~29のいずれかに記載の臀部拭き取り装置を備える、温水洗浄便座又は温水洗浄便座付き便器。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成27年7月31日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出している。
[無効理由1(新規事項の追加)]
本件特許の請求項15、23、25~30に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
[無効理由2(サポート要件違反)]
本件特許の請求項15、23、25~30の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項15、23、25~30に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
[無効理由3(進歩性欠如)]
(1)本件特許の請求項1、2、15、23、25及び29に係る発明は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。
(2)本件特許の請求項1、請求項2または請求項15に従属する請求項30に係る発明は、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。
2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:本件特許出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面の写し
甲第2号証:本件特許出願に係る平成22年9月3日付け手続補正書の写し
甲第3号証:本件特許出願に係る平成22年11月2日付け手続補正書の写し
甲第4号証:本件特許公報(特許第4641313号公報)
甲第5号証:中国実用新案公告第2682113号公報
甲第6号証:欠番
甲第7号証:特開2000-093481号公報
甲第8号証:特開平11-178745号公報
甲第9号証:特開平8-280581号公報
甲第10号証:特許・実用新案審査基準 第III部第I節第1頁ないし第3頁
甲第11号証:特許・実用新案審査基準 第I部第1章第1頁ないし第5頁
甲第12号証:特許第5709177号公報
3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1(新規事項の追加)について
ア 本件特許の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に係る発明及び同請求項の従属項に係るその他の発明は、便座を昇降させる便座昇降部を備え、「便器と便座との間隙」は、便座昇降部によって便座が上昇された際に生じるものに限られている。また、本件特許の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された「便器と便座との間隙」も便座昇降部又は便座昇降装置(以下まとめて「便座昇降部」ともいう。)によって便座が上昇された際に生じるものに限られている。すなわち、本件特許出願の出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面の何れにも便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる「便器と便座との間隙」以外の「便器と便座との間隙」についての記載はなく、そのことを示唆する記載もない。なお、便座昇降部は、便器の上に設置された便座を上昇させて便器と便座との間隙を形成するという重要な技術上の意義をもつものである。
よって、本件特許出願に対してなされた補正は、請求項の発明特定事項の一部を削除して、これを概念的に上位の事項に補正するものであって、出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項以外のものが追加されることになる補正であるといえる。
(審判請求書13頁8ないし22行を参照。)
イ 当初明細書等を客観的にみれば、補正により、請求項15には便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる「便器と便座との間隙」以外の「便器と便座との間隙」が追加されている。つまり、便座昇降部(便座を昇降させる手段)以外の手段によって設けられる「便器と便座との間隙」が追加されている。
そして、「便器と便座との間隙」を設けるための便座昇降部以外の手段は、便座を昇降させるために必要な構造、機構、駆動部等を必要としないという点で技術上の意義を持つものである。このことから、請求項15に係る発明は、明らかに、補正により新たな技術的事項が導入されたものとなっているといえる。
(平成27年7月31日付け口頭審理陳述要領書12頁15ないし23行を参照。)
(2)無効理由2(サポート要件違反)について
便座昇降部(4)を使用することなく、便器(1)と便座(3)との間に間隙を形成することについては発明の詳細な説明に記載がない。
また、本件特許の出願時において、便座昇降機以外の手段によって、便座と便器との間にトイレットペーパーを取り付けた「拭き取りアーム」を移動させることができる間隙を確保、形成等する技術は一般的に知られていない。このため、本件明細書及び図面の記載のほか、出願時の技術常識を斟酌しても、便座昇降部によって便座を上昇させることなく、どのようにして便器の後部と便座の後部との間に、トイレットペーパーを取り付けた「拭き取りアーム」を移動させることが可能な間隙を確保できるのか全く不明である。
そして、便器と便座との間にトイレットペーパーを取り付けた「拭き取りアーム」が移動できる間隙を確保できなければ、本件明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄の【0014】に記載されている「便座に座ったままの状態で、水滴や汚れの拭き取り作業を行うこと」はできないのであるから、便座昇降部は、本件明細書及び図面において発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段として欠くことのできないものであるといえる。
(審判請求書15頁7ないし22行、平成27年7月31日付け口頭審理陳述要領書14頁23行ないし15頁6行を参照。)
(3)無効理由3(進歩性欠如)について
ア 甲第7号証又は甲第9号証に記載された便座及び便座を昇降させる便座昇降装置を甲第5号証に記載された便器に適用するともに、同号証に記載された拭き取りアームを、上記便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して移動するように設置すれば、本件特許発明1(及び本件特許発明2、15)をなすことができる。
そして、このように、甲第7号証又は甲第9号証に記載された構成を甲第5号証に記載された構成に適用することは、以下の理由から容易になされるものであるといえる。
……甲第7号証の第5頁【0034】には、便座(12)とは別に設置された水洗便器(9)まで、便座(12)付き便座昇降装置(5)を移動させて、当該便座(12)を水洗便器(9)に重ねることが記載されているが、この水洗便器(9)と甲第5号証に記載された腰掛便器とはその上に便座が直に取り付けられていない便器である点で共通している。このことから、甲第7号証に記載された便座及び便座を昇降させる便座昇降装置を甲第5号証に記載された便器に適用することに特段の困難性は認められないといえる。
……甲第9号証の第5頁【0027】、図1には、便器(1)を跨ぐように取り付けられた便座昇降装置(A)が記載されているが、この便器(1)と甲第5号証に記載された腰掛便器もその上に便座が直に取り付けられていない便器である点で共通している。このことから、甲第9号証に記載された便座及び便座を昇降させる便座昇降装置を甲第5号証に記載された便器に適用することにも特段の困難性は認められないといえる。
甲第7号証及び甲第8号証には、介護者が便器と便座との間隙に介護者のアーム(腕)を差し込み、手に持ったトイレットペーパーで被介護者のお尻を拭くことが記載されているに等しい事項が記載されており、この記載が動機づけとなる……。
(審判請求書25頁10行ないし26頁10行、27頁2行ないし28頁2行、及び28頁17行ないし29頁18行を参照。)
イ 甲第7号証又は甲第9号証に記載された便座及び便座を昇降させる便座昇降装置を甲第5号証に記載された便器に適用するとともに、同号証に記載された拭き取りアームを、上記便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して移動するように設置すれば、自ずと「制御部は、拭き取りアーム駆動部に、トイレットペーパーが取り付けられている拭き取りアームを便器の排便用開口まで移動させ」ることとなる。
(審判請求書30頁9ないし15行を参照。)
ウ 甲第5号証の第7頁第4行~第6行(翻訳文の第5頁第8行~第11行)には、「電磁バルブ(9)の動作は使用ニーズに応じて、通常の接続制御方法で、操作スイッチパネル(14)上に設けられているスイッチおよび腰掛便器(1)内に取付けられているリミッタスイッチにより制御される」と記載されている。 このことは、操作スイッチパネル(14)上の複数の指示スイッチのうち、押下された指示スイッチに対応する動作を行うように、拭き取りアーム駆動部を制御することを示唆しているといえる。
(審判請求書31頁20ないし26行を参照。)
エ 甲第7号証に記載された便座及び便座を昇降させる便座昇降装置を甲第5号証に記載された便器に適用するとともに、同号証に記載された拭き取りアームを、上記便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して移動するように設置することで成される本件特許発明1、2又は15において、甲第5号証に記載された便器(1)に設置されたシャワー洗浄装置(2)を便座に設置することは、当業者であれば、甲第9号証に記載された「温水洗浄便座」または「温水洗浄便座付き便器」を参酌すること等により容易に想到し得る。
(審判請求書32頁18ないし25行を参照。)
オ 穴Wが設けられた便器は、穴Wが設けられていない汎用の便器と比較して、格段に生産コストが高額となる。当業者は、常に、装置の生産コストの低減を念頭において日々の設計開発・創作活動を行っているところ、穴Wが設けられていない汎用の便器の使用を真っ先に検討するはずである。
そして、常に汎用の便器の使用を念頭において設計開発・創作活動を行っていれば、介護者が便器と便座との間隙に腕(アーム)を入れて被介護者の臀部を拭くことが記載された甲第7号証、甲第8号証に接すれば、甲第5号証に記載されている臀部拭き取り装置に昇降可能な便座を適用したものにおいて、拭き取りアームの位置を便器と便座との間隙を通るような位置に設計変更することを容易に想到するはずである。
(平成27年7月31日付け口頭審理陳述要領書17頁20行ないし18頁1行を参照。)
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年4月15日付け審判事件答弁書、平成27年8月13日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。
2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証:実開平7-24322号公報写し
乙第2号証:特開平10-174666号公報写し
乙第3号証:特開2005-66001号公報写し
乙第4号証:特開2006-68391号公報写し
乙第5号証:特開2006-122183号公報写し
乙第6号証:特許情報プラットフォーム 特許・実用新案テキスト検索(結果一覧)
乙第7号証:特許第5065467号公報写し
乙第8号証:ロボットがおしりを拭く「ロボットアーム型便座 RB-790」パンフレットの写し
乙第9号証:介護保険情報2007年11月号の表紙、62頁、63頁、裏表紙の写し
乙第10号証:実用新案登録第2546962号公報写し
乙第11号証:登録実用新案第3024055号公報写し
乙第12号証:特開平8-319655号公報写し
乙第13号証:特開2002-219077号公報写し
乙第14号証:登録実用新案第3112872号公報写し
乙第15号証:特開2005-52171号公報写し
乙第16号証:特開昭49-6751号公報写し
乙第17号証:甲第5号証の説明図(拭き取り前)
乙第18号証:甲第5号証の説明図(拭き取り時)
乙第19号証:甲第7号証の説明図(拭き取り時)
乙第20号証:甲第8号証の説明図(拭き取り前)
乙第21号証:甲第8号証の説明図(拭き取り時)
乙第22号証:甲第9号証の説明図(上昇時)
乙第23号証:甲第5号証に、甲第7号証を適用したときの概略図1
乙第24号証:甲第5号証に、甲第7号証を適用したときの概略図2
乙第25号証:甲第5号証及び甲第7号証による構成の不足部分を甲第7及び8号証で補おうとしたときの説明図
乙第26号証:甲第5号証に、甲第9号証を適用したときの概略図1
乙第27号証:甲第5号証に、甲第9号証を適用したときの概略図2
乙第28号証:甲第5号証及び甲第9号証による構成の不足部分を甲第7及び8号証で補おうとしたときの説明図
乙第29号証:技術提携契約書の写し
乙第30号証:トイレの最後の難関はお尻を拭くことです“楽々きれっと”「ロボットアーム型拭き取り装置RB-901」パンフレットの写し
乙第31号証:“楽々きれっと”「ロボットアーム型拭き取り装置RB-1101」パンフレットの写し
乙第32号証:覚書の写し
3 無効理由に対する具体的な反論
(1)無効理由3(進歩性欠如)について
ア 甲第5号証の機械式拭き取り装置5は、腰掛便器1上に穴Wを設けて、穴Wから機械式拭き取り装置5を露出させているため、乙第23号証(乙第26号証)に示すように、お尻までトイレットペーパーは全く届かず、甲第7号証(甲第9号証)に、甲第5号証を適用しても、お尻を拭き取ることは不可能である。このように、お尻を拭き取ることが不可能な装置同士を組み合わせようと考える当業者などいないはずである。当然、甲第5号証に甲第7号証(甲第9号証)と適用したとしても、便器と便座の間隙を介して拭き取りアームが移動していることにはならない。
仮に、善解して、乙第24号証(乙第27号証)のように、甲第7号証(甲第9号証)で、便座12を上昇させなかったとして、拭き取りを行おうとしても、やはり、便座12の厚み分かあるので、機械式拭き取り装置5は、お尻を拭き取ることはできない。この点においても、やはり、お尻を拭き取ることが不可能な装置同士を組み合わせようと考える当業者などいないはずである。当然、この場合も、便器と便座との間隙を介して拭き取りアームが移動していることにはならない。
(平成27年4月15日付け審判事件答弁書17頁33行ないし18頁9行、19頁10ないし22行、21頁末行ないし22頁12行を参照。)
イ 甲第7及び8号証では、容器と座部の間隙に、手を入れて拭き取ることが記載されているが、甲第5号証は、腰掛便器1に設けられた穴Wから拭き取り装置5が出てくるため、そもそも、便座と便器との間隙を設けなくても拭き取ることが可能である。そのような状況であるわけであるから、当業者であれば、そもそも、甲第5号証に甲第7号証(甲第9号証)を適合するということ自体に意味がないと考えるはずである。すなわち、甲第5号証は、臀部の拭き取り装置として、それ単体で機能しているわけであるから、わざわざ、甲第5号証に甲第7号証(甲第9号証)を組み合わせようと考える必要がない。
……仮に、甲第5号証に立ち上がり補助という観点で甲第7号証(甲第9号証)を組み合わせたとしたら、拭き取り装置5がお尻まで届かないので、当業者であれば、拭き取り装置5をもう少し長くして拭き取るようにすればよいと考えるのが自然である。なぜなら、便座が昇降する前の状態で、シャワー洗浄装置2による洗浄後に追加された便座12の厚み分だけ、上方に拭き取り装置5が伸びれば、臀部を拭き取ることができるのは明らかであるからである。それをあえて、甲第5号証の構造を根本から見直し、便座を上昇させた後、便器と便座との間隙を介して臀部を拭き取るというようなより複雑な構成にするようにすればよいと、当業者は考えるはずがない。
(平成27年4月15日付け審判事件答弁書18頁17ないし35行、19頁31行ないし20頁12行、22頁20行ないし23頁2行を参照。)
ウ 甲第5号証の図1に示すように、複数のトイレットペーパー(4)が上下に重ねられた状態で、ペーパーケース(3)に収納されており、ペーパーケース(3)の下面の一部が開口しているのであれば、その開口部分から、収納されているトイレットペーパー(4)がその重力に従って、全て垂れ下がると考えられる。したがって、そもそも、参考図1-2に示すような状態にはならない。すなわち、前提として、1枚だけが都合よく垂れ下がることはあり得ないわけであるから、臀部を拭き取る装置として、該装置(5)は機能していない。
このように、甲第5号証は、臀部拭き取り装置を開示しているものではないから、進歩性を判断するための引用発明としての適格性を欠いており、甲第5号証に基づいて進歩性を判断することは許されない。
(平成27年8月13日付け口頭審理陳述要領書7頁27ないし36行を参照。)
第7 当審の判断
1 無効理由1(新規事項の追加)について
請求人は、無効理由1について、上記「第5 3(1)」のとおり主張するが、本件訂正により、請求項15に係る発明の「便器と便座との隙間」は、請求人が、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面で限定されていると主張する「便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる」ものに限定された。
よって、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる「便器と便座との隙間」以外の「便器と便座との隙間」が追加されたことによる新規事項の追加を主張する無効理由1は、理由がない。
2 無効理由2(サポート要件違反)について
請求人は、無効理由2について、上記「第5 3(2)」のとおり主張するが、本件訂正により、請求項15に係る発明の「便器と便座との隙間」を、請求人が、本件明細書及び図面において発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段として欠くことのできないものと主張する「便座昇降装置」を使用することにより形成されるものに限定された。
よって、「便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる」ことに限定した「便器と便座との隙間」は、発明の詳細な説明に記載されたものとなったので、請求人が主張する無効理由2は理由がない。
3 無効理由3(進歩性欠如)について
(1)証拠について
ア 請求人が無効理由3に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている(翻訳は請求人が提出したものである。下線は審決で付した。以下同じ。)。
(ア)
(4頁2ないし12行)
(翻訳)
「技術分野
本考案は機械式拭き取り腰掛便器に関し、腰掛便器の技術分野に属する。
背景技術
現在、従来技術におけるシャワー洗浄式腰掛便器では、洗浄後に主に人体の水洗浄した部位を温風で乾燥させているが、このような洗浄乾燥の腰掛便器では以下のような欠点がある:消費エネルギーが大きく、乾燥に要する時間が長い上、温風温度が把握しにくく、場合によっては肌にやけどしたような不快感を起こしやすい。よって、従来のシャワー洗浄式腰掛便器の使用効果は理想的とは言えない。
考案の内容
本考案の目的は、省エネで、時間を節約でき、肌をやけどせず、使用しやすい機械式拭き取り腰掛便器を提供することで、従来技術の不足を克服するところにある。」
(イ)
(4頁13行ないし6頁1行)
(翻訳)
「本考案は以下のように構成される:腰掛便器(1)と、腰掛便器(1)に取付けられているシャワー洗浄装置(2)とを備えており、腰掛便器(1)にはペーパーケース(3)が設けられており、しかも腰掛便器(1)内で、ペーパーケース(3)の下方にはペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を掴むことができる機械式拭き取り装置(5)が装着されており、機械式拭き取り装置(5)は可動クリップ(a)と、スプリング(b)と、クリップパッド(c)と、中空シャフト(d)と、回転可能なピストンロッド(e)と、可動プルロッド(f)と、シリンダ(g)と、ピストン(h)と、ブレードモータシリンダ(i)と、ブレード付きシャフト(j)と、ソレノイド吸着装置(k)とからなり、しかも可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)はいずれも腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)を通じて腰掛便器(1)の便器空間内に伸入し、可動プルロッド(f)の一端上には可動クリップ(a)が連結されており、その他端はスプリング(b)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)の貫通穴を貫通した後にソレノイド吸着装置(k)の可動電磁コアに接続されており、ピストン(h)はピストンロッド(e)に固定されるとともにシリンダ(g)内に装着されており、ブレード付きシャフト(j)はブレードモータシリンダ(i)内に装着されるとともにピストンロッド(e)に被せて設けられており、ピストンロッド(e)上にはキースロットが設けられるとともにキースロット内にはブレード付きシャフト(j)に連結されるキー(l)が装着されており、ソレノイド吸着装置(k)はピストンロッド(e)の末端に装着されており、シリンダ(g)とブレードモータシリンダ(i)とが共に固定されるとともに、シリンダ(g)の一端がヒンジ軸(6)を介して腰掛便器(1)内のクレードルに結合されており、シリンダ(g)の他端は制御液圧シリンダ(7)のピストンロッドに連結されており、制御液圧シリンダ(7)のピストンロッド上には更にリターンスプリング(8)が被せて設けられており、シリンダ(g)、ブレードモータシリンダ(i)および制御液圧シリンダ(7)の入口管および回流管には電磁バルブ(9)がそれぞれ接続されており、しかも各入口管はそれぞれ給水管(10)を介して水源接続パイプ(11)に接続されており、……。
……本考案を使用するに際しては、まずその電源プラグをコンセントに差し込んで、用便の後に、操作スイッチパネル(14)のシャワースイッチを押すと、シャワー洗浄装置(2)は加熱した水で人体の対応する部位をシャワー洗浄し、シャワー洗浄の後には、操作スイッチパネル(14)上の拭き取り操作スイッチを押せばよい。このとき可動クリップ(a)が可動プルロッド(f)のソレノイド吸着装置(k)の吸着連動によりペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで、しかもクリップパッド(c)と、中空シャフト(d)とが共に、回転可能なピストンロッド(e)の連動により、腰掛便器(1)に設けられている穴(w)を通じて腰掛便器(1)の腰掛便器空間内に伸入して人体の関連部位を拭き取るものであり、拭き取るときに、回転可能なピストンロッド(e)はトイレットペーパーを掴むクリップパッド(c)を伴ってブレードモータシリンダ(i)中のブレード付きシャフト(j)の連動により180度の角度だけ回転すると同時に、シリンダ(g)が制御液圧シリンダ(7)のピストンロッドおよびリターンスプリング(8)の作用によりトイレットペーパーを掴むクリップパッド(c)を伴って軽く上下スイングして、拭き取りが完了した後、各部材は腰掛便器(1)中に取付けられている対応するリミッタスイッチにぶつかった後に、その対応する電磁バルブ(9)およびソレノイド吸着装置(k)を動作させて、可動クリップ(a)が掴んでいる使用済みのトイレットペーパーを放すとともに、各部材に伴って初期位置に戻り、次回の拭き取りに備える。」
(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「腰掛便器(1)内に装着され、ペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を掴むことができる機械式拭き取り装置(5)であって、
可動クリップ(a)と、スプリング(b)と、クリップパッド(c)と、中空シャフト(d)と、回転可能なピストンロッド(e)と、可動プルロッド(f)と、シリンダ(g)と、ピストン(h)と、ブレードモータシリンダ(i)と、ブレード付きシャフト(j)と、ソレノイド吸着装置(k)とからなり、
可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)はいずれも腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)を通じて腰掛便器(1)の便器空間内に伸入し、
可動クリップ(a)が可動プルロッド(f)のソレノイド吸着装置(k)の吸着連動によりペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで、しかもクリップパッド(c)と、中空シャフト(d)とが共に、回転可能なピストンロッド(e)の連動により、腰掛便器(1)に設けられている穴(w)を通じて腰掛便器(1)の腰掛便器空間内に伸入して人体の関連部位を拭き取るものである、機械式拭き取り装置(5)。」
イ 請求人が無効理由3に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、介護用入浴システムに関し、詳しくは、ベッドに寝たきりの被介護者の入浴の介護作業を介護者一人で容易に行える様にした介護用入浴システムに関する。」
(イ)「【0032】本発明の介護用入浴システムにおいては、前記サポートボード(4)に代え、水洗便器(9)にセットされる便座(12)がリフト装置(5)のリフター(5A)に着脱可能に構成されている。すなわち、本発明の介護用入浴システムにおいては、被介護者(M)の用便の介護作業のアタッチメントとして、図11に示す様に、略長方形に枠組みされ、かつ、その下端の支持バー(5N)の中央部に便座(12)が強固に固定された支持部(5P)が用意されている。この支持部(5P)の上端の両端部には、前記リフター(5A)を構成するベース部(5F)の両端部付近に突設された連結突起に対して着脱自在に嵌合固定される連結筒が設けられている。そして、この支持部(5P)は、被介護者(M)の用便の介護作業に際し、前記支持部(5G)に代えてベース部(5F)に固定される。
【0033】前記支持部(5P)が固定された手押し式のリフト装置(5)においては、手押しハンドル(5E)に付設された操作ボタン(図示省略)の操作により、便座(12)がリフター(5A)を介して昇降自在に支持される。
……
【0034】
次に、介護者(S)は、操作ボタン(図示省略)の操作により便座(12)を下降させて重心を安定させ、この状態でリフト装置(5)を水洗便器(9)まで移動する。続いて、介護者(S)は、便座(12)を水洗便器(9)上に位置合わせし、便座(12)を下降させて水洗便器(9)に重ねる。この状態で、図10に示す様に、被介護者(M)に排便させる。そして、用便後には、便座(12)と共に被介護者(M)を所定高さまで上昇させ、この状態で被介護者(M)のお尻を拭く。その後、便座(12)に被介護者(M)を座らせたままリフト装置(5)をベッド(1)まで移動し、便座(12)をベッド(1)の高さまで上昇させて被介護者(M)をベッド(1)上に移す。この作業は、被介護者(M)をベッド(1)上に押し上げる必要がないので、介護者(S)一人で容易に行うことが出来る。
ウ 請求人が無効理由3に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 介護者が、排便後被介護者を中腰の姿勢にさせることなく、被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭けるように、汚物を受ける容器と座部との間に、介護者が手を入れられる隙間を設けたことを特長とするポータブルトイレ。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポータブルトイレに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のポータブルトイレは、第6図に示すように「おまる」から発展しており、被介護者が排便を済ませた後、介護者は、被介護者におしりをもちあげさせ、被介護者を中腰の姿勢にさせて、被介護者の後方あるいは側方から被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭取りをしていた。……上記従来例では、被介護者は中腰の姿勢を強要され、足にふんばりが利かない人や片マヒの人にはかなりつらい姿勢となる。……
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のポータブルトイレでは、介護者が被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭く際に、介護者及び被介護者の双方に負担を強いるものであった。
【0004】本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、介護者が被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭く際に、介護者及び被介護者双方の負担を軽減することのできるポータブルトイレを提供することを目的とする。」
(ウ)「【0026】
【実施例2】図5は第二の実施例を示す図であり、図1乃至図4に示す第一の実施例とは逆に座部3が昇降して、介護者が被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭く動作を行う際に、汚物を受ける容器6と座部3との間に、介護者が手を入れられる隙間を設けることのできるポータブルトイレ1を示している。なお、図5において第一の実施例と同様の構成部分には図1乃至図4と同一の参照番号を付している。21はリンク、22は油圧ジャッキであり、油圧ジャッキ22に図示しない加圧用ペダルによって圧力を加えることにより、油圧ジャッキ22のシリンダーを伸出させ、リンク21を介して座部3を上昇させる。よって、排便後被介護者を中腰の姿勢にさせることなく、介護者が汚物を受ける容器6と座部3との間に、手を入れて、被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭くことができる。なお、油圧ジャッキ22の他に、モーター等を駆動源とすることも可能である。」
エ 請求人が無効理由3に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は便座の昇降傾動装置に関する。さらに詳しくは、身体障害者や高齢者が便器に腰を下ろしたり、そこから立ち上がったりするときに、それらの動きを補助ないし介助するために便座を動力で昇降し、かつ上下動に応じて便座を水平状態と前傾状態との間で傾動させる装置に関する。」
(イ)「【0017】図1において符号1は便器本体であり、2はその便器本体用の便座(または温水洗浄便座)である。便器本体1の左右の側方には、本発明の装置の一実施例である便座昇降装置Aの右側の昇降ユニット(右ユニット)3および左側の昇降ユニット(左ユニット)4がそれぞれ配置されている。」
(ウ)「【0028】この状態で駆動部10のモータMを回転させ、下降用ケーブル33を引き下ろし、上昇用ケーブル31を引く力を緩めれば、キャリアプレート12がガイドレール11に沿って下降していき、それに固定されているスライドプレート13もガイドフレーム14で案内されながら下降していく。そのとき傾動プレート16はそのカム溝18の傾斜部18bがカムローラ19で案内されるので、軸支点ボルト17を中心としてしだいに直立するように後方へ回動する。そしてカムローラ19が傾斜部18bから垂直部18aに入るときに直立状態となり、便座2がほぼ水平になる。そしてそれ以後は、垂直部18aがカムローラ19と係合するので、その水平状態を維持したまま下降を続け、便器本体1の上面に達する。なお便器本体1の上面で停止させるために、前述のリミットスイッチでキャリアプレート12またはスライドプレート13の下降端を検出させる。」
(2)本件特許発明2について
まず、本件特許発明2の進歩性欠如について検討する。
ア 対比
(ア)甲5発明の「機械式拭き取り装置(5)」は、「ペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで」、「人体の関連部位を拭き取るものであ」るから、本件特許発明2の「トイレットペーパーで臀部を拭く」「臀部拭き取り装置」に相当する。
(イ)甲5発明は、「可動クリップ(a)が可動プルロッド(f)のソレノイド吸着装置(k)の吸着連動によりペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで」、「可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)」が「腰掛便器(1)の便器空間内に伸入」するから、甲5発明の「『可動クリップ(a)』、『スプリング(b)』、『クリップパッド(c)』、『中空シャフト(d)』、『ピストンロッド(e)』及び『可動プルロッド(f)』」は、本件特許発明2の「トイレットペーパーを取り付けるための」「拭き取りアーム」に相当する。
(ウ)甲5発明は、「可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)」が「回転可能なピストンロッド(e)の連動により」、「腰掛便器(1)の腰掛便器空間内に伸入」するから、甲5発明の「『シリンダ(g)』及び『ピストン(h)』」は、本件特許発明2の「便座の排便用開口から拭き取りアームに取り付けられたトイレットペーパーが露出するように、拭き取りアームを駆動させる拭き取りアーム駆動部」に相当する。
(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記便座の排便用開口から前記拭き取りアームに取り付けられた前記トイレットペーパーが露出するように、前記拭き取りアームを駆動させる拭き取りアーム駆動部とを備える、臀部拭き取り装置。」
(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明2は、便座を昇降させる便座昇降部と、便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームを駆動させる拭き取りアーム駆動部とを備えるのに対し、甲5発明は、便座を昇降させる便座昇降部を備えておらず、そして、拭き取りアーム駆動部が、腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)を通じて、拭き取りアームを駆動させる点。
イ 判断
(ア)相違点1について
a 甲第7号証について
上記3(1)イにおいて摘記した事項によれば、甲第7号証には、ベッドに寝たきりの被介護者の入浴の介護作業を介護者一人で容易に行える様にした介護用入浴システムに用いるリフト装置に関し、以下の事項(以下「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。
「水洗便器(9)にセットされる便座(12)がリフト装置(5)のリフター(5A)に着脱可能に構成され、リフト装置(5)を水洗便器(9)まで移動し、便座(12)を水洗便器(9)上に位置合わせし、便座(12)を下降させて水洗便器(9)に重ね、被介護者(M)に排便させ、用便後には、便座(12)と共に被介護者(M)を所定高さまで上昇させ、この状態で被介護者(M)のお尻を拭くこと。」
b 甲7技術の適用について
甲7技術は、便座(12)を水洗便器(9)上に位置合わせし、便座(12)を下降させて水洗便器(9)に重ね、被介護者(M)に排便させるものであるから、甲7技術を甲5発明に適用した場合、当業者は、便座(12)を下降させて水洗便器(9)に重ねた状態で、便器上に設けられている穴(w)を通じて便器内に伸入した可動クリップ(a)が掴んだトイレットペーパー(4)により被介護者(M)のお尻を拭くよう構成することを着想すると認められる。
そもそも、甲7技術は、甲5発明のような機械式拭き取り装置の設置を前提とするものではないから、用便後に、便座(12)と共に被介護者(M)を所定高さまで上昇させ、被介護者(M)のお尻を拭く必要があると認められるところ、甲7技術を甲5発明に適用した場合には、上記の如く、便座(12)を下降させて水洗便器(9)に重ねた状態で被介護者(M)のお尻を拭くことができ、用便後に、お尻を拭くために便座(12)を上昇させる必要はなくなる。
また、甲7技術のリフト装置(5)に設けられる便座(12)は、水洗便器(9)に常設されるものでもない。
してみると、甲5発明に甲7技術を適用することにより、腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)に代えて、便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するよう構成すること、すなわち上記相違点1に係る本件特許発明2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。
c 甲第8号証について
上記3(1)ウにおいて摘記した事項によれば、甲第8号証には、ポータブルトイレに関し、以下の事項(以下「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。
「介護者が、排便後被介護者を中腰の姿勢にさせることなく、被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭けるように、座部3が昇降して、汚物を受ける容器6と座部3との間に、介護者が手を入れられる隙間を設けることのできるポータブルトイレ1。」
d 甲8技術の適用について
甲8技術は、介護者が、排便後被介護者を中腰の姿勢にさせることなく、被介護者のおしり及び局部を洗浄または拭けるように、座部3が昇降して、汚物を受ける容器6と座部3との間に、介護者が手を入れられる隙間を設けることのできるようにしたものであって、甲5発明のような機械式拭き取り装置の設置を前提とするものではない。
他方、甲5発明の機械式拭き取り装置(5)は、便器上に設けられている穴(w)を通じて便器内に伸入した可動クリップ(a)が掴んだトイレットペーパー(4)により被介護者(M)のお尻を拭くものであるから、排便後被介護者を中腰の姿勢にさせることなく、被介護者のおしり及び局部を拭けるものであるから、甲5発明において、甲8技術の昇降する座部3を適用する動機付けはなく、仮に適用したとしても腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)に代えて、便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するよう構成すること、すなわち上記相違点1に係る本件特許発明2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。
e 甲第9号証について
上記3(1)エにおいて摘記した事項によれば、甲第9号証には、身体障害者や高齢者が便器に腰を下ろしたり、そこから立ち上がったりするときに、それらの動きを補助ないし介助するために便座を動力で昇降し、かつ上下動に応じて便座を水平状態と前傾状態との間で傾動させる装置に関し、以下の事項(以下「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。
「便器本体1の左右の側方に、右側の昇降ユニット3および左側の昇降ユニット4がそれぞれ配置され便座昇降装置A。」
f 甲9技術の適用について
甲9技術の便座昇降装置Aは、便座が便器本体の上面に達した状態で排便するものと認められるから(上記3(1)エ(ウ)を参照。)、甲9技術を甲5発明に適用した場合、当業者は、便座が便器本体の上面に達した状態で、便器上に設けられている穴(w)を通じて便器内に伸入した可動クリップ(a)が掴んだトイレットペーパー(4)により臀部を拭き取るよう構成することを着想すると認められる。
他方、甲9技術の便座昇降装置Aは、身体障害者や高齢者が便器に腰を下ろしたり、そこから立ち上がったりするときに、それらの動きを補助ないし介助するためのものであって、甲第9号証には、便座と便器本体の隙間を介して拭き取りアームを移動させることを示唆する記載はない。また、甲7技術及び甲8技術のように、便座を上昇させ、被介護者のお尻を拭く隙間を設けることが公知であることを踏まえても、上記b及びdにおいて検討したように、甲7技術及び甲8技術は、甲5発明のような機械式拭き取り装置の設置を前提とするものではなく、甲5発明に甲9技術を適用した際に、便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するよう構成することの動機付けとなるものとはいえない。
してみると、甲5発明に甲9技術を適用することにより、腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)に代えて、便座昇降部によって便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するよう構成すること、すなわち上記相違点1に係る本件特許発明2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。
(イ)請求人の主張について
請求人は、甲第7号証及び甲第8号証には、介護者が便器と便座との間隙に介護者の腕を差し込み、手に持ったトイレットペーパーで被介護者のお尻を拭くことが記載されており、この記載が、甲5発明に甲9技術を適用した際に、便座と便器本体の隙間を介して拭き取りアームを移動させることの動機づけとなる旨主張するが、上記fにおいて検討したとおりであって、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、穴Wが設けられた便器は、穴Wが設けられていない汎用の便器と比較して、格段に生産コストが高額となるから、当業者は、穴Wが設けられていない汎用の便器の使用を真っ先に検討するはずである旨主張する。
しかし、穴Wの有無で生産コストが大きく異なるかは不明であるが、仮に便器に穴Wが設けられていない方が生産コストが低いとしても、甲5発明は、そのようなことも踏まえた上で、便器に穴Wを設け、その穴Wを通して拭き取りアームを移動させることにより機械式で臀部を拭き取ることができるようにしたものであるから、便器に穴Wを設けないものとすることは、当業者であっても想起し得ないといえる。よって、請求人の主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明1について
本件特許発明1は、実質的に、本件特許発明2の発明特定事項を全て備え、さらに、「便座を昇降させる便座昇降装置と一緒に用いられ」ることを限定したものであるといえる。
してみると、上記(2)のとおり、本件特許発明2は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明1も同様に、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明15について
続いて、本件特許発明15の進歩性欠如について検討する。
ア 対比
本件特許発明15と甲5発明とを対比すると以下のとおりである。
(ア)甲5発明の「機械式拭き取り装置(5)」は、「ペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで」、「人体の関連部位を拭き取るものであ」るから、本件特許発明15の「トイレットペーパーで臀部を拭く」「臀部拭き取り装置」に相当する。
(イ)甲5発明は、「可動クリップ(a)が可動プルロッド(f)のソレノイド吸着装置(k)の吸着連動によりペーパーケース(3)内のトイレットペーパー(4)を一枚掴んで」、「可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)」が「腰掛便器(1)の便器空間内に伸入」するから、甲5発明の「『可動クリップ(a)』、『スプリング(b)』、『クリップパッド(c)』、『中空シャフト(d)』、『ピストンロッド(e)』及び『可動プルロッド(f)』」は、本件特許発明15の「臀部を拭き取る位置まで」「移動させ」られる、「トイレットペーパーを取り付けるための」「拭き取りアーム」に相当する。
(ウ)甲5発明は、「可動クリップ(a)、クリップパッド(c)、中空シャフト(d)、回転可能なピストンロッド(e)」が「回転可能なピストンロッド(e)の連動により」、「腰掛便器(1)の腰掛便器空間内に伸入」するから、甲5発明の「『シリンダ(g)』及び『ピストン(h)』」は、本件特許発明5の「臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる」「拭き取りアーム駆動部」に相当する。
(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる拭き取りアーム駆動部とを備えた、臀部拭き取り装置。」
(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点A>
本件特許発明15は、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するのに対し、甲5発明では、腰掛便器(1)上に設けられている穴(w)を通じて、拭き取りアームが移動する点。
イ 判断
上記相違点Aについて検討すると、相違点Aは、実質的に相違点1と同じであって、上記「(2)イ(ア)」のとおり、甲5発明に甲7技術、甲8技術ないし甲9技術を適用することにより、相違点1に係る構成とすることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえないから、同様に、相違点Aも、甲5発明に甲7技術、甲8技術ないし甲9技術を適用することにより、相違点Aに係る構成とすることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明15は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明23、25及び29について
本件特許発明23、25及び29は、本件特許発明15を引用し、さらに構成を付加したものであって、本件特許発明15の特定事項をすべて含むものである。
してみると、上記(4)のとおり、本件特許発明15は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明23、25及び29は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは明らかである。
(6)本件特許発明30について
本件特許発明30は、本件特許発明1、2または15を引用し、さらに構成を付加したものであって、本件特許発明1、2または15の特定事項をすべて含むものである。
してみると、上記(1)、(2)及び(4)のとおり、本件特許発明1、2及び15は、甲第5号証と甲第7号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第8号証に記載された発明、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明30は、甲第5号証と甲第7号証と甲第9号証に記載された発明、あるいは、甲第5号証と甲第8号証と甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは明らかである。
(5)無効理由3(進歩性欠如)についてのむすび
よって、本件特許発明1、2、15、23、25、29及び30の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとすることはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-800036