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特許無効審判

2015-800027

携帯用電気切断機

審判番号
2015-800027
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-059182
登録番号
特許第5633940号(P5633940)
請求日
2015年02月13日
審決日
2018年06月15日
公報発行日
2018年10月26日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 マキタ
  • 【請求人代理人】小林 武
  • 【被請求人】日立工機 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人筒井国際特許事務所
  • 【被請求人代理人】村井 隆
  • 【被請求人代理人】村井 弘実
審判長/審判官
  • 審判長 西村 泰英
  • 審判官 栗田 雅弘
  • 審判官 篠原 将之
分類
P1113.537-ZAA(B23D) / P1113.572-ZAA(B23D) / P1113.574-ZAA(B23D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法123条1項4号特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条の2、特許法第123条第1項第4号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5633940号「携帯用電気切断機」の特許無効審判事件についてされた平成28年1月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項3ないし8、10に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10059号、平成29年4月12日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5633940号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-5〕、〔6-8、10〕について訂正することを認める。 特許第5633940号の請求項6に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5633940号の請求項3-5、7、8、10についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第5633940号は、平成24年3月15日に出願され、平成26年10月24日にその発明について特許の設定登録がなされた。 本件無効審判請求に係る主な手続の経緯は、以下のとおり。 平成27年2月13日に、請求人株式会社マキタ(以下「請求人」という)は、本件特許の請求項1ないし10に係る発明についての本件無効審判請求書(以下「請求書」という)を提出した。 平成27年4月30日に、被請求人日立工機株式会社(以下「被請求人」という)は、審判事件答弁書(以下「答弁書」という)を提出した。 平成27年5月29日付けで、当審は審理事項を通知した。 平成27年6月25日に、請求人は口頭審理陳述要領書を提出した。 平成27年6月26日に、被請求人は口頭審理陳述要領書を提出した。 平成27年7月10日に、口頭審理が行われた。 平成27年7月16日に、被請求人は上申書を提出した。 平成27年8月10日に、請求人は上申書を提出した。 平成27年9月25日付けで、当審は審決の予告を行った。 平成27年12月1日に、請求人は上申書(その2)を提出した。 平成28年1月29日付けで、当審は「特許第5633940号の請求項1、2及び9に係る発明についての特許を無効とする。特許第5633940号の請求項3から8まで及び10に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決(以下「一次審決」という)を行った。 請求人は、一次審決を不服として、「審決のうち、『特許第5633940号の請求項3から8まで及び10に係る発明についての審判請求は、成り立たない。』との部分を取り消す。」との判決を求め、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起した。一方、被請求人は、一次審決に対して審決取消訴訟を提起しなかったため、特許第5633940号の請求項1、2及び9に係る発明については、特許の無効が確定した。 平成29年4月12日に、知的財産高等裁判所は、特許庁がした一次審決のうち「請求項3から8まで及び10に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との部分を取り消し、本件無効審判事件を特許庁へ差し戻すとの判決を行い、当該判決は確定した。 平成29年6月1日に、被請求人は訂正請求書を提出して訂正を求めるとともに、上申書を提出した。しかし、訂正請求書に方式上の不備があったため、被請求人は平成29年7月12日に、手続補正書を提出して訂正請求書及び訂正特許請求の範囲を補正するとともに、上申書も再度提出した。 平成29年8月29日に、請求人は弁駁書を提出した。 平成30年1月29日付けで、当審は審決の予告を行った。 平成30年4月2日に、被請求人は訂正請求書を提出して訂正を求める(以下「本件訂正」という)とともに、上申書を提出した。 第2 平成30年4月2日付け訂正請求について 1 一群の請求項3ないし5に係る訂正 (1)訂正事項 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3ないし5を削除する。 イ 訂正事項2 明細書の段落【0011】、【0012】、【0013】を削除する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1は、請求項3ないし5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 また、訂正前の請求項5は訂正前の請求項3又は4を引用する関係にあるから、訂正前の請求項3ないし5は一群の請求項に該当する。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1により請求項3ないし5を削除するのに伴い、請求項3に対応する明細書の段落【0011】の記載、請求項4に対応する明細書の段落【0012】の記載、請求項5に対応する明細書の段落【0013】の記載を、それぞれ削除することで、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2 一群の請求項6ないし8及び10に係る訂正 (1)訂正事項 ア 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6について、請求項1を引用する従属請求項の記載であったものを、請求項1を引用しない独立請求項の記載とする。 イ 訂正事項4 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記ハウジングに設けられるハンドルと、」という記載を付加する。 ウ 訂正事項5 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記鋸刃の外周を収納するソーカバーと、」という記載を付加する。 エ 訂正事項6 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記ソーカバーに設けられ、前記ベース底面からの前記鋸刃の突出量を調整するレバーと、」という記載を付加する。 オ 訂正事項7 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記モータにより回転駆動され、回転時に発生するファン風によって前記モータの冷却を行うファンと、」と記載されているのを、「前記モータの固定子よりも前記鋸刃側において前記モータの出力軸に固定され、前記モータにより回転駆動され、回転時に発生するファン風によって前記モータの冷却を行うファンと、」に訂正する。 カ 訂正事項8 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記駆動回路及び制御回路のいずれか一方又は両方を搭載した回路基板とを備え、」と記載されているのを、「少なくとも前記駆動回路を搭載した回路基板とを備え、」に訂正する。 キ 訂正事項9 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記回路基板は、前記モータの側方位置において、前記モータの回転軸と平行に延びるように配置され」と記載されているのを、「前記回路基板は、前記ハウジングの前記ソーカバー配置側とは反対側に配置される前記モータの側方位置において、前記モータの前記出力軸と平行に延びるように配置され、かつ、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間に配置され、」に訂正する。 ク 訂正事項10 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であり、」という記載を付加する。 ケ 訂正事項11 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記レバーは、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間、かつ、前記ハンドルと前記ソーカバーとの間に配置され、」という記載を付加する。 コ 訂正事項12 請求項1を引用しない独立請求項の記載とした特許請求の範囲の請求項6に、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき、前記ファンの径方向外側に配置され、」と記載されているのを、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置に配置され、」に訂正する。 サ 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項7、8及び10を削除する。 シ 訂正事項14 訂正前の明細書の段落【0007】の記載を以下のように訂正する。 「本発明のある態様はモータを備える携帯用電気切断機であって、 前記モータを収容するハウジングと、 前記ハウジングに設けられるハンドルと、 前記モータにより回転駆動される鋸刃と、 前記ハウジングと連結され、被切断材上を摺動可能な底面を持ち、前記鋸刃を前記底面より下方に突出可能な開口部を有するベースと、 前記鋸刃の外周を収納するソーカバーと、 前記ソーカバーに設けられ、前記ベース底面からの前記鋸刃の突出量を調整するレバーと、 前記モータの固定子よりも前記鋸刃側において前記モータの出力軸に固定され、前記モータにより回転駆動され、回転時に発生するファン風によって前記モータの冷却を行うファンと、 前記モータへの供給電力をスイッチングするスイッチング素子を含む駆動回路と、 前記駆動回路を制御する制御回路と、 少なくとも前記駆動回路を搭載した回路基板とを備え、 前記ハウジングの反鋸刃側にモータ冷却用風窓と回路基板冷却用風窓が設けられ、 前記回路基板は、前記ハウジングの前記ソーカバー配置側とは反対側に配置される前記モータの側方位置において、前記モータの前記出力軸と平行に延びるように配置され、かつ、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間に配置され、 前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であり、 前記レバーは、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間、かつ、前記ハンドルと前記ソーカバーとの間に配置され、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置に配置され、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファン風の通路内に配置されており、 前記モータは、ブラシレスモータであり、 前記モータの回転位置に応じて信号を発生する回転状態検出手段とを更に備え、 前記制御回路は前記回転状態検出手段の信号を受信し、前記駆動回路に前記モータの駆動を制御する信号を送信することを特徴とする。」 ス 訂正事項15 訂正前の明細書の段落【0014】の記載を以下のように訂正する。 「前記態様において、前記回転状態検出手段は、前記モータ収容部内に収容され、前記モータにより回転されるセンサマグネットと、該センサマグネットと近接対向するよう配置されるセンサ基板と、該センサ基板上に配置される回転位置検出素子を有する構成であるとよい。 前記態様において、前記回転状態検出手段は、前記ハウジング内のモータ収容部内に収容されたセンサ基板を有し、該センサ基板と前記回路基板とは電気接続されているとよい。」 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項6が請求項1を引用する従属請求項の記載であったものを、訂正後の請求項6は請求項1を引用しない独立請求項の記載とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項4について 訂正事項4は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6に、「前記ハウジングに設けられるハンドルと、」という構成要件を直列的に付加し、ハンドルがハウジングに設けられていることを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書の段落【0019】に「ハウジング2に一体もしくは別部材として連結して設けられ、モータ1の駆動を制御する図4のスイッチ3aを有したハンドル3」という記載もあるから、訂正事項4は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項5について 訂正事項5は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6に、「前記鋸刃の外周を収納するソーカバーと、」という構成要件を直列的に付加し、鋸刃の外周を収納するソーカバーが携帯用電気切断機に設けられていることを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書の段落【0019】に「ハウジング2に取付けられ、丸鋸刃4外周のほぼ上側半分を覆う形状をし、丸鋸刃4の外周及びモータ1側の側面の一部を収納するソーカバー5」という記載もあるから、訂正事項5は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 訂正事項6について 訂正事項6は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6に、「前記ソーカバーに設けられ、前記ベース底面からの前記鋸刃の突出量を調整するレバーと、」という構成要件を直列的に付加し、鋸刃の突出量を調整するレバーが携帯用電気切断機に設けられていることを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書の段落【0043】に「図12や図16のベース6底面からの丸鋸刃4の突出量を調整するレバー18」という記載もあり、図12及び図16にレバー18が図示されてもいるから、訂正事項6は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 オ 訂正事項7について 訂正事項7は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6における「モータの冷却を行うファン」について、「前記モータの固定子よりも前記鋸刃側において前記モータの出力軸に固定され」という事項を直列的に付加することで、モータ出力軸へ固定されていること及びその具体的な固定の位置について特定しており、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当該ファン7がモータの固定子1Bよりも鋸刃側においてモータの出力軸1aに固定されていることは、図1、図6、図7、図11、図12、図16に明示されているから、訂正事項7は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 カ 訂正事項8について 訂正事項8は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6における「回路を搭載した回路基板」について、搭載する回路が「前記駆動回路及び制御回路のいずれか一方又は両方」であったものを、「少なくとも前記駆動回路を搭載した」という記載とすることで、回路基板に駆動回路を搭載することが必須であることを特定しており、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、回路基板に駆動回路が搭載されることは、明細書の段落【0043】に「第3の実施の形態では、図17の駆動回路20が第1の回路基板60Cに搭載され」という記載もあるから、訂正事項8は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 キ 訂正事項9について 訂正事項9は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6におけるモータの配置について、「前記ハウジングの前記ソーカバー配置側とは反対側」であることを特定するとともに、回路基板の配置について、「前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間」という事項を直列的に付加することで、位置を具体的に特定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項9は、「モータの回転軸」の記載を、「モータの出力軸」とされた明細書の記載に整合させているから、明瞭でない記載の釈明をも目的とするものである。そして、モータ1がハウジング2のソーカバー5配置側とは反対側に配置されていることは、明細書の段落【0019】に「モータ1及びファン7は、ハウジング2のソーカバー5配置側とは反対側に向けて突出した部分の内側であるモータ収容部2aに配置され、」と記載され、ブラシレスモータ1の側方において該ブラシレスモータ1の出力軸1aと平行に延びるように配置されている回路基板60Cが、図12、図13に示されており、当該回路基板60Cは、図12ないし図15の記載からみて、ハンドル3とベース6との間の高さ位置にあって、ブラシレスモータ1とハンドル3の切断方向後方側端部との間に配置されていることは明らかであるから、訂正事項9は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ク 訂正事項10について 訂正事項10は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6に、「前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であり、」という構成要件を直列的に付加し、回路基板の配置をベース上面との関係で具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書の段落【0014】に「前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であるとよい。」という記載もあるから、訂正事項10は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ケ 訂正事項11について 訂正事項11は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6に、「前記レバーは、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間、かつ、前記ハンドルと前記ソーカバーとの間に配置され、」という構成要件を直列的に付加し、レバーの配置を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、ハンドル3とベース6との間の高さ位置であって、かつ、ハンドル3とソーカバー5との間に配置されたレバー18が、図15に示されており、明細書の段落【0020】の「セーフティーカバー17の切断方向前方側端部(図3の右側)」という記載からみて、図12、図13及び図16に図示されるレバー18が、モータ1とハンドル3の切断方向後方側端部との間に配置されていることは明らかであることから、訂正事項11は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 コ 訂正事項12について 訂正事項12は、請求項1を引用しない独立請求項の記載とした請求項6における「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき、前記ファンの径方向外側に配置され、」という記載では、回路基板とファンの位置関係について不明瞭であるため、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置に配置され、」という記載にすることで、回路基板の位置をベース上面側の平面視におけるハンドルとの関係において具体的に特定し、回路基板の位置を明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、図13及び図15において、破線で示された回路基板60Cの一部が、ベース6上面側の平面視においてハンドル3と重なる位置に配置されていることが明示されているから、訂正事項12は新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 サ 訂正事項13について 訂正事項13は、特許請求の範囲の請求項7、8及び10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 シ 訂正事項14について 訂正事項14は、訂正事項3ないし12により請求項6の記載を訂正するのに伴い、明細書の段落【0007】の記載を、訂正後の請求項6の記載に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ス 訂正事項15について 訂正事項15は、訂正事項3ないし13に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の段落【0014】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 セ 一群の請求項について 訂正前の請求項7、8、10は、訂正前の請求項6を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項6ないし8及び10は一群の請求項に該当する。 3 小括 したがって、上記訂正請求の訂正事項1及び2は、特許法第134条の2第1項第1又は3号を目的とするものであり、かつ、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔3-5〕について訂正を認める。 また、上記訂正請求の訂正事項3ないし15は、特許法第134条の2第1項第1、3又は4号を目的とするものであり、かつ、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔6-8、10〕について訂正を認める。 第3 本件訂正発明 本件特許の特許請求の範囲は、上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件訂正請求により訂正した明細書及び図面の記載からみて、当該訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 モータを備える携帯用電気切断機であって、 前記モータを収容するハウジングと、 前記モータにより回転駆動される鋸刃と、 前記ハウジングと連結され、被切断材上を摺動可能な底面を持ち、前記鋸刃を前記底面より下方に突出可能な開口部を有するベースと、 前記モータにより回転駆動され、回転時に発生するファン風によって前記モータの冷却を行うファンと、 前記モータへの供給電力をスイッチングするスイッチング素子を含む駆動回路と、 前記駆動回路を制御する制御回路と、 前記駆動回路及び制御回路のいずれか一方又は両方を搭載した回路基板とを備え、 前記ハウジングの反鋸刃側にモータ冷却用風窓と回路基板冷却用風窓が設けられ、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき、前記ファンの径方向外側に配置され、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファン風の通路内に配置されており、 前記モータは、ブラシレスモータであり、 前記モータの回転位置に応じて信号を発生する回転状態検出手段とを更に備え、 前記制御回路は前記回転状態検出手段の信号を受信し、前記駆動回路に前記モータの駆動を制御する信号を送信することを特徴とする携帯用電気切断機。 【請求項2】 前記ファンは、前記モータと共に前記ハウジング内のモータ収容部に収容され、 前記回路基板を収容する前記ハウジング内部と前記モータ収容部とは連通していると共に、 前記ハウジングに設けられた前記回路基板冷却用風窓と前記モータ収容部との間に前記回路基板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の携帯用電気切断機。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】 モータを備える携帯用電気切断機であって、 前記モータを収容するハウジングと、 前記ハウジングに設けられるハンドルと、 前記モータにより回転駆動される鋸刃と、 前記ハウジングと連結され、被切断材上を摺動可能な底面を持ち、前記鋸刃を前記底面より下方に突出可能な開口部を有するベースと、 前記鋸刃の外周を収納するソーカバーと、 前記ソーカバーに設けられ、前記ベース底面からの前記鋸刃の突出量を調整するレバーと、 前記モータの固定子よりも前記鋸刃側において前記モータの出力軸に固定され、前記モータにより回転駆動され、回転時に発生するファン風によって前記モータの冷却を行うファンと、 前記モータへの供給電力をスイッチングするスイッチング素子を含む駆動回路と、 前記駆動回路を制御する制御回路と、 少なくとも前記駆動回路を搭載した回路基板とを備え、 前記ハウジングの反鋸刃側にモータ冷却用風窓と回路基板冷却用風窓が設けられ、 前記回路基板は、前記ハウジングの前記ソーカバー配置側とは反対側に配置される前記モータの側方位置において、前記モータの前記出力軸と平行に延びるように配置され、かつ、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間に配置され、 前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であり、 前記レバーは、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間、かつ、前記ハンドルと前記ソーカバーとの間に配置され、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置に配置され、 前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファン風の通路内に配置されており、 前記モータは、ブラシレスモータであり、 前記モータの回転位置に応じて信号を発生する回転状態検出手段とを更に備え、 前記制御回路は前記回転状態検出手段の信号を受信し、前記駆動回路に前記モータの駆動を制御する信号を送信することを特徴とする携帯用電気切断機。 【請求項7】(削除) 【請求項8】(削除) 【請求項9】 前記回転状態検出手段は、前記モータ収容部内に収容され、 前記モータにより回転されるセンサマグネットと、該センサマグネットと近接対向するよう配置されるセンサ基板と、該センサ基板上に配置される回転位置検出素子を有することを特徴とする請求項2記載の携帯用電気切断機。 【請求項10】(削除)」 第4 無効理由、無効理由に対する答弁及び証拠方法 1 請求人主張の無効理由 請求人は、請求書において、特許発明1ないし10に係る特許を無効とする、との審決を求めており、その無効理由は以下のとおりである。 (1)無効理由1(サポート要件、明確性要件及び実施可能要件) ア 無効理由1の1(明確性要件) 特許発明1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 イ 無効理由1の2(サポート要件及び明確性要件) 特許発明6ないし8及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 ウ 無効理由1の3(実施可能要件) 特許発明8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2(拡大先願) 特許発明1、2及び9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (3)無効理由3(進歩性) 特許発明1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 無効理由に対する被請求人の答弁 被請求人は、答弁書において、本件無効審判の請求は成り立たない、との審決を求めている。 3 証拠方法 (1)請求人が提出する証拠方法 請求人は、証拠方法として、請求書において、以下の甲第1ないし12号証を提出し、口頭審理陳述要領書において、以下の甲第13及び14号証を提出した。 甲第1号証:特許第5633940号公報 甲第2号証:特開2013-193133号公報 甲第3号証:本件特許の出願に係る平成25年10月30日付け手続補正書 甲第4号証:本件特許の出願に係る平成26年4月3日付け手続補正書 甲第5号証:本件特許の出願に係る平成26年4月3日付け意見書 甲第6号証:本件特許の出願に係る平成26年7月30日付け意見書 甲第7号証:特開2012-178945号公報 甲第8号証:特開2012-735号公報 甲第9号証:特開平11-129169号公報 甲第10号証:特許第4113538号公報 甲第11号証:特開2003-209960号公報 甲第12号証:長竹和夫編著「モータ実用ポケットブック 家電用モータ・インバータ技術」(2000年4月28日 初版第1刷、日刊工業新聞社発行) 甲第13号証:特開2010-201516号公報 甲第14号証:特開2010-58182号公報 (2)被請求人が提出する証拠方法 被請求人は、証拠方法として、口頭審理陳述要領書で、以下の乙第1ないし4号証を提出した。 乙第1号証:実願平1-126168号(実開平3-64703号)のマイクロフィルム 乙第2号証:特開2001-30201号公報 乙第3号証:特開2012-56192号公報 乙第4号証:特許5148297号公報 第5 当事者の主張 上記無効理由1ないし3のうち、一次審決で確定していない理由についての、請求人及び被請求人の主張は、以下のとおりである。 なお、以下で行数により記載箇所を特定する際には、空白行は含めない。 1 無効理由1の1(明確性要件) [請求人] 請求項6に係る特許請求の範囲の記載、請求項6を引用する請求項7及び請求項8に係る特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものではないから、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。 本件訂正により、請求項6の「回路基板の少なくとも一部」の位置を限定することにはなるが、「ファンの径方向外側」の解釈に影響を及ぼすものではない。 「回路基板がモータの側方に位置している」との記載を根拠に「ファンの径方向外側」の領域を解釈するのは、回路基板のある部分が、モータの側方に位置することを特定したものにすぎず、その部分と「ファン径方向外側」と関連する「回路基板の少なくとも一部」との関係を特定するものではないから、「ファンの径方向外側」の解釈に影響を及ぼさない。 訂正により、「回路基板の少なくとも一部」の位置は、「ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置」に特定されたが、「ファンの径方向外側」については新たな定義付けはないから、「ファンの径方向外側」の意味する領域は依然として特定できない。 請求項7又は請求項8で限定された事項は、「ファンの径方向外側」の解釈に影響を及ぼすものではない。 (平成29年8月29日付け弁駁書8ページ11行-11ページ13行) [被請求人] 第2回訂正後の請求項6では、回路基板が「少なくとも駆動回路を搭載する回路基板」であることを前提とした上で、当該回路基板の配置が、「前記回路基板は、前記モータの側方位置において、前記モータの前記出力軸と平行に延びるように配置され、かつ、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間に配置され、かつ、前記回路基板は、前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であって、」と特定されている。 つまり、第2回訂正後の請求項6では、 (1)回路基板に駆動回路が搭載されることが前提とされ、 (2)「ファンの径方向外側」なる記載は用いられておらず、 (3)回路基板の配置が、モータやベースといった複数の要素との位置関係、並びに高さ方向や切断方向といった複数の方向から特定されており、回路基板の配置は特許を受けようとする発明を特定する上で必要十分な程度に明確に特定されている。 (平成30年4月2日付け上申書2ページ下から7行-3ページ7行) 2 無効理由1の2(サポート要件) [請求人] 訂正によって追加した構成要件のみが本件明細書に記載されているというだけの理由で、訂正後の請求項6に係る発明が本件明細書等によってサポートされているという被請求人の主張は理解できない。 取消判決は、縦置き基板のみを有する構成が、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討し、サポート要件を満たしているとはいえないとし、訂正後の請求項6に係る発明は、縦置き基板のみを有する発明であるから、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているということはできない。 請求項6を直接又は間接に引用する請求項7及び請求項8も縦置き基板のみを有する発明なので、同様に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (平成29年8月29日付け弁駁書12ページ11-27行) [被請求人] 本件明細書中の記載によれば、大型で発熱量も多くなる傾向にあるモータ駆動用回路が搭載された回路基板をハウジング内に配置するに際し、操作性を損なうようなハウジング形状の大幅な変更を回避しつつ回路基板の配置スペースを確保し、かつ、回路基板を良好に冷却することが本件特許発明が解決しようとする課題である。 本件特許発明は、モータ駆動用回路が搭載された回路基板をハウジング内部に配置することを前提とした上で、当該回路基板をハンドルとベースとの間であって、かつ、ファン風の通路に配置することによって上記課題を解決しようとするもので、本件特許発明の本質は、モータ駆動用回路が搭載された回路基板のハウジング内における配置(レイアウト)であって、モータ駆動用回路が搭載されている回路基板に、制御回路等を一緒に搭載するか、別の回路基板に搭載するかは、発明の具現化に際し適宜選択し得る事項である。 本件特許発明を具現化する3つの実施例のうち、実施例3を説明する段落【0047】で、「制御回路30を別基板、…ハウジング2のソーカバー5側へ突出量をさらに少なくできる。」と記載されている効果は、モータの高出力化に伴って大型化するモータ駆動用回路基板を、ハンドルに対してソーカバーとは反対側に配置されたモータの側方に配置したことによるものであり、単に回路を2つの基板に分けた効果ではない。すなわち、モータ駆動用回路基板をハンドルとベースの間に置きつつも、モータ側方位置に配置することでハウジングのソーカバー側への張り出しを抑制し、レバーの操作性が改善される点が明記されている。 従って、制御回路も有し得る「少なくとも前記駆動回路を搭載した回路基板」をモータの側方に配置することは、レバーの操作性の観点から当業者が認識し得るもので、明細書において明確にサポートされている。 (平成30年4月2日付け上申書4ページ下から6行-5ページ26行) 3 無効理由3(進歩性) [請求人] 訂正後の請求項6ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である、特開2012-735号公報(甲第8号証)、特開平11-129169号公報(甲第9号証)、特開平2003-209960号公報(甲第11号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該特許発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(請求書5ページ7-14行) 取消判決は、無効理由3については判断しておらず、請求人は無効理由3を取り下げたわけではない。(平成29年8月29日付け弁駁書15ページ18-20行) [被請求人] 訂正後の請求項6に係る発明においても、甲第8号証および甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。 (平成29年7月12日付け上申書5ページ17-19行) 第6 一次審決についての裁判所の判断 1 無効理由1の1について 無効理由1の1(「ファンの径方向外側」の用語に対する明確性)について、判決では以下のように判断された。 (1)「ファンの径方向外側」の文言解釈 一次審決では、「ファンの径方向外側」の文言解釈として、その記載の示す範囲は(a)領域である「ファンの回転軸」の両端部の間の範囲を意味していると理解するものであるが、このような解釈も成り立たないものではない。 しかし、「径方向」が、「ファンの回転軸に直交する方向」と定義されており、本件明細書における「直交する」の語の意義を検討していくと、用語の意味の整合性の観点からみて、「ファンの径方向外側」とは、その文言解釈として、全空間からファンが内接し回転軸方向に無限に延びる円柱を除いた部分すなわち(b)領域と解することにも十分の合理性があるということができる。 以上の検討結果を併せ考えれば、文言解釈のみによるのでは、「ファンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るものである。 (2)「ファンの径方向外側」の技術的意義に基づく解釈 本件特許発明は、本件実施例において、ハンドルを把持する作業者による作業の妨げとならないように、回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設け、かつ、ファンの回転によりファンガイド内側が負圧になることを利用して回路基板冷却用窓からファンガイド内側に至る冷却風を発生させるために、回路基板収容部をファンの径方向外側に配置しており、このうち前者が小型化の目的を達成するための手段、後者が冷却の目的を達成するための手段として把握される。 しかし、これらの手段のみによって実際に上記各目的が達成されるか否かは、本件明細書等の記載からは必ずしも明らかでなく、本件特許発明の目的を達成するための手段は、本件実施例においてすら合理的に説明されているとはいえない。そうすると、本件実施例を上位概念化したものである本件特許発明においてはなおさら、その目的を達成し得るとは認められない。したがって、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき、前記ファンの径方向外側に配置され」という構成要件C-2が本件特許発明の目的を達成するための構成であるとして、その技術的意義から同構成要件の示す意味内容を把握することはできない。 (3) 以上によれば、構成要件C-2の「ファンの径方向外側」は、特許請求の範囲の文言によれば(a)領域又は(b)領域のいずれとも解釈し得るものであり、また、その技術的意義に鑑みてもいずれの解釈が正しいのか判断し得ないものということができる。 したがって、構成要件C-2は不明確というべきである。 2 無効理由1の2について 無効理由1の2(特許発明6~8及び10に関するサポート要件)について、判決では以下のように判断された。 (1)特許発明6は、「モータの側方位置において、前記モータの回転軸と平行に延びるように配置されている」回路基板のみを有し、当該回路基板は、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき、前記ファンの径方向外側に配置され」るものである。 本件明細書の発明の詳細な説明において、「モータの側方位置」に配置された回路基板(縦置き基板)は、第2の実施の形態の第2の回路基板60B及び第3の実施の形態の第1の回路基板60Cが記載されているが、縦置き基板のみを有する発明は明示的に記載されていない。そこで、縦置き基板のみを有する構成が、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討する。 (2)第2の実施の形態の縦置き基板(第2の回路基板60B)による効果 ア 制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで、駆動回路20及び整流平滑回路40を搭載した第1の回路基板60Aの面積を小さくし、ハウジング2のソーカバー5側への突出量を少なくでき、操作性の面で有利となる。 イ 制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで、駆動回路20や整流平滑回路40の発熱部品の影響を受けないようにできる。 ウ 制御回路30を搭載した第2の回路基板60B(縦置き基板)をセンサ基板51の近くに配置することで、回転位置検出素子52と制御回路30との電気接続を短縮して、ノイズ等の影響を受けにくい構造にできる。 前記アの効果は、第2の実施の形態において、縦置き基板を設けることにより小型化の目的を達成できるとは必ずしも認識し得ないし、縦置き基板のみとした場合に、携帯用電気切断機の操作性の面で有利であることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。 前記イの効果は、冷却の目的に関わるものであるが、制御回路30を縦置き基板としたとしても、必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得ず、駆動回路と制御回路の両者を搭載した縦置き基板のみとした場合に、基板の冷却を効果的に実現し得ると認識することもできない。 前記ウの効果は、小型化の目的とも冷却の目的とも独立したもので、本件特許発明の課題解決に寄与しないことは明らかである。 (3)第3の実施の形態の縦置き基板(第1の回路基板60C)による効果 エ 制御回路30を縦置き基板とは別基板(第2の回路基板60D)としたことで第2の回路基板60Dは小面積となり、ハウジング2のソーカバー5側への突出量を更に少なくでき、操作性の面で有利となる。例えば、丸鋸刃の突出量を調整するレバーの操作が容易となる。 オ 第1の回路基板60C(縦置き基板)は、モータ収容部2a内のモータ1の側方に配置することで、充分なファン風を通すことが容易となる。 前記エの効果は、前記アの効果と同様に、縦置き基板を設けることによって小型化の目的を達成できるとは認識できないし、縦置き基板のみとした場合に、携帯用電気切断機の操作性の面で有利であることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。 前記エの効果の、レバーの操作が容易になるという例は、特許発明6~8及び10に常に妥当するとまではいえない。 前記オの効果は、前記イの効果と同様、回路基板を縦置き基板とした場合に、必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得ず、駆動回路と制御回路の両者を搭載した縦置き基板のみとした場合に、基板の冷却が効果的にできると認識することもできない。 (4) そうすると、特許発明6~8及び10は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、特許発明6~8及び10が、その課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているともいえない(なお、この点は、本件特許発明において横置き基板が必須であるか否かとは関わりない。)。 したがって、特許発明6~8及び10は、いわゆるサポート要件を満たしているとはいえない。 第7 当審の判断 1 無効理由1の2(サポート要件)の検討 事案に鑑み、最初に無効理由1の2(サポート要件)を検討する。 (1) 請求人の主張する無効理由1の2は、請求項6に係る発明の「回路基板は、前記モータの側方位置において、モータの回転軸と平行に延びる」という記載は、発明の詳細な説明には文言上記載がされておらず、その技術的意義も記載がされていない(請求書15ページ8-14行)、というものであった。 そして、上記「第6 2」に記載したとおり、判決では、本件明細書の発明の詳細な説明では、「モータの側方位置」に配置された回路基板(縦置き基板)のみを有する発明は明示的に記載されていないため、当該縦置き基板に該当する第2の実施の形態の第2の回路基板60B及び第3の実施の形態の第1の回路基板60Cについて、それらによる効果を検討し、その結果、縦置き基板のみを有する構成が、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえず、サポート要件を満たしていないと判示した。 そこで、被請求人は、上記本件訂正による請求項6に係る訂正を行い、訂正後の請求項6に記載されている回路基板の配置は本件明細書及び図面に記載されており、本件明細書等によって十分にサポートされている旨主張するので、判示内容を参考としながら検討する。 (2) 訂正後の請求項6に係る発明の回路基板は、「前記ハウジングの前記ソーカバー配置側とは反対側に配置される前記モータの側方位置において、前記モータの前記出力軸と平行に延びるように配置され、かつ、前記ハンドルと前記ベースとの間の高さ位置にあって、前記モータと前記ハンドルの切断方向後方側端部との間に配置され」ており、「前記モータが前記ベースに近接する状態において、前記ベース上面と略直交する配置であり」、「前記回路基板の少なくとも一部は、前記ベース上面側の平面視において前記ハンドルと重なる位置に配置され」るものである。 そして、本件明細書の発明の詳細な説明において、上記訂正後の請求項6に係る発明の回路基板に該当するのは、第3の実施の形態の第1の回路基板60Cだけである。そこで、当該第1の回路基板60Cが、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討する。 (3) 第3の実施の形態の第1の回路基板60Cによる効果は、明細書の段落【0043】及び【0047】の記載からみて、以下のア及びイに集約できる。 ア 制御回路30を第1の回路基板60Cとは別基板(第2の回路基板60D)とすることで、第2の回路基板60Dは小面積となり、ハウジング2のソーカバー5側への突出量をさらに少なくすることができ、操作性の面で有利となる。例えば、丸鋸刃4の突出量を調整するレバー18の操作が容易となる。 イ 第1の回路基板60Cは、モータ収容部2a内のモータ1の側方に配置することで、充分なファン風を通すことが容易となる。 (4) 前記アの効果は、ハウジング2に設けられた回路基板収容部65Bのソーカバー5側への突出量を少なくすることができるというものである。しかし、第1の回路基板60Cを収容するためにはモータ収容部2aを大きく作らざるを得ないから、前記アの効果が小型化に寄与するか否かは一概には言えない。 また、前記アの効果として例示されたレバー18の操作の容易性については、第2の回路基板60Dを設けるためにハウジングに設けられた回路基板収容部65Bの突出部と、レバー18とが、本件図面の図12に示される位置にあるために生じる効果にすぎない。そして、第2の回路基板60Dのような制御回路を搭載する基板に関する事項、該基板を収容するための回路基板収容部65Bの突出部に関する事項、レバー18と前記回路基板収容部65Bの突出部との配置関係に関する事項については、訂正後の請求項6に係る発明では何ら特定されていないから、訂正後の請求項6に係る発明に常に生じる効果とまでは認められない。さらに、当該レバー18の操作性が良くなったからといって、携帯用電気切断機全体としての操作性が良くなるとは限らない。 よって、当業者は、第3実施形態を含む訂正後の請求項6に係る発明について、小型化の目的を達成できるとは認識できず、携帯用電気切断機の操作性の面で有利であることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。 (5) 前記イの効果は、回路基板の冷却を良好に行うという発明の課題に対応している。しかし、ブラシレスモータの固定子が熱源となることは技術常識であり、そのモータ側方に、それ自体も発熱部品である第1の回路基板60Cを設置した場合には、モータ固定子の発熱の影響を受けやすくなることが予想されることから、当業者は、必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得ない。 また、明細書の段落【0004】において先行技術文献として提示された特開2010-173042号公報のものは、モータ背後のハウジング内にモータ駆動回路を収納しており、ファンによってハウジング内に吸入された冷却風の全量がモータ駆動回路と熱交換されるのに対して、第3実施形態のものは、モータを冷却するための風窓と、駆動回路を搭載した回路基板を冷却するための別の風窓(図14において、第2の回路基板60Dの左に記載されている風窓)を有することから、ファンによってハウジング内に吸入された冷却風の一部しかモータ駆動回路と熱交換されないことになり、第3実施形態の冷却効果は、先行技術文献の冷却効果よりも優れているとはいい難く、この点からも、当業者は、第3実施形態によって、冷却の目的を達成できるとは認識し得ないし、第3実施形態を含む訂正後の請求項6に係る発明についても、冷却の目的を達成できるとは認識できない。 (6) したがって、訂正後の請求項6に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、訂正後の請求項6に係る発明が、その課題を解決できると当業者が認識し得る程度に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているともいえない。 よって、訂正後の請求項6に係る発明は、サポート要件を満たしているとはいえず、訂正後の請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない出願に対してされたものであるから、無効理由1の2には理由がある。 (7) 被請求人は、平成30年4月2日付け上申書において、「本件特許発明における課題解決手段は、モータ駆動用回路が搭載された回路基板をハウジング内部に配置することを前提とした上で、当該回路基板をハンドルとベースとの間であって、かつ、ファン風の通路に配置することです。言い換えれば、本件特許発明の本質は、モータ駆動用回路が搭載された回路基板のハウジング内における配置(レイアウト)であって、モータ駆動用回路が搭載されている回路基板にその他の回路(例えば、制御回路)を一緒に搭載するか、その他の回路をモータ駆動用回路が搭載されている回路基板とは別の回路基板に搭載するかは、本件特許発明を具現化する際に適宜選択し得る事項に過ぎません。」と主張する。 しかし、訂正後の請求項6に係る発明に対応する実施例3を説明する明細書の段落【0043】には、「駆動回路20及び整流平滑回路40は別基板としたことで、制御回路30を搭載した第2の回路基板60Dは小さくなり、ハウジング2の部分に第2の回路基板60Dを設けるための凸部(ソーカバー5側へ突出)を無くすことができる。このため、操作性の面で有利となる。例えば、図12や図16のベース6底面からの丸鋸刃4の突出量を調整するレバー18を操作することが容易となる。」と、駆動回路20及び制御回路30をそれぞれ別の回路基板に搭載することで、回路基板を小さくできる効果があること、第2の回路基板60Dを設けるためのハウジング2の凸部をなくしてレバー18の操作が容易になる効果があることが明示されている。そして、これらの効果は、明細書の段落【0005】-【0006】に記載された発明が解決しようとする課題に対応しているものであるから、モータ駆動用回路が搭載されている回路基板に制御回路等を一緒に搭載するか、別に搭載するかが、本件特許発明の本質ではないという、被請求人の上記主張は受け入れられない。 (8) また、被請求人は、上記上申書において、「本願では、本件特許発明を具現化する3つの実施例を示しており、それぞれが共通して小型化と冷却の目的を達成しています。そして、実施例3を説明する段落【0047】において、『制御回路30を別基板、…ハウジング2のソーカバー5側へ突出量をさらに少なくできる。』と記載されている効果については、モータの高出力化に伴って大型化するモータ駆動用回路基板を、ハンドルに対してソーカバーとは反対側に配置されたモータの側方に配置したことによるものであり、単に回路を2つの基板に分けた効果ではないことは、【0044】の記載や図面からも明らかです。すなわち、モータ駆動用回路基板をハンドルとベースの間に置きつつも、モータ側方位置に配置することでハウジングのソーカバー側への張り出しを抑制し、レバーの操作性が改善される点が明記されております。 従って、制御回路も有し得るような『少なくとも前記駆動回路を搭載した回路基板』をモータの側方に配置することは、レバーの操作性の観点から当業者が認識し得るものであり、明細書において明確にサポートされています。」とも主張する。 しかし、明細書の段落【0047】では、「制御回路を別基板、つまり第2の回路基板60Dとする」ことにより、「第2の回路基板60Dは小面積となり」、「これを収容する回路基板収容部65Bも小さくでき」、そのため、「ハウジング2のソーカバー5側への突出量をさらに少なくでき」、その結果、「レバー18の操作性が改善する」という論理構成で説明が行われている。そうすると、「モータ駆動用回路基板を、ハンドルに対してソーカバーとは反対側に配置されたモータ側方に配置したこと」は、ハウジング2のソーカバー5側への突出量を少なくできる効果に対して、直接的に働くものではない。よって、被請求人の主張を受け入れることはできない。 第8 むすび 以上のとおり、訂正後の請求項6に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、訂正後の請求項6に係る発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 したがって、他の無効理由を検討するまでもなく、訂正後の請求項6に係る発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当するから、無効とされるべきものである。 また、訂正後の請求項3ないし5、7、8及び10に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項3ないし5、7、8及び10に対して、請求人がした無効の請求については、対象となる請求項が存在しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-800027

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