特許訂正審判
2015-390144
多接点端子を有する電気コネクタ
- 審判番号
- 2015-390144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2008-201583
- 登録番号
- 特許第5197216号(P5197216)
- 請求日
- 2015年12月15日
- 審決日
- 2017年08月02日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】ヒロセ電機 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】高石 秀樹
- 【請求人代理人】豊島 匠二
- 【請求人代理人】松野 仁彦
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 達之
- 審判官 滝谷 亮一
- 審判官 中川 隆司
- 分類
- P141 .121-Y (H01R) / P141 .841-Y (H01R) / P141 .851-Y (H01R) / P141 .853-Y (H01R) / P141 .854-Y (H01R) / P141 .855-Y (H01R) / P141 .856-Y (H01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5197216号に関する訂正審判事件についてされた平成28年5月23日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10150号、平成29年5月31日判決言渡)があったので更に審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5197216号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許第5197216号(以下「本件特許」という。)は、平成20年8月5日の出願であって、平成25年2月15日に設定登録され、以後の主な手続は以下のとおりである。
平成27年 9月10日 訂正2015-390099の請求
同年10月 6日 上申書
同年10月30日 訂正拒絶理由通知(起案日)
同年12月 7日 請求取下
同年12月15日 本件訂正審判の請求
平成28年 2月25日 訂正拒絶理由通知(起案日)
同年 3月30日 意見書
同年 5月23日 審決
平成29年 5月31日 知的高等裁判所において審決取消しの判決
(平成28年(行ケ)第10150号)
第2 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該複数の弾性腕にそれぞれ形成された突状の接触部」とあるのを、「該複数の弾性腕の弾性部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部」に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「突状の接触部が相手端子に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、」とあるのを、「突状の接触部が斜縁の直線部分との接触を通じて相手端子に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、」に訂正する。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「上位の弾性腕が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し、」とあるのを、「上位の弾性腕が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成されており、」に訂正する。
4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「上位に位置する弾性腕の接触部に対して下位となる接触部を有する弾性腕の上端が上記上位の弾性腕の接触部に近接しており、」とあるのを、「上位に位置する弾性腕の接触部に対して下位となる接触部を有する弾性腕の上端が上記上位の弾性腕の接触部に近接して位置付けられることにより有効嵌合長が長く確保されており、」に訂正する。
5 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっていること」とあるのを、「コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており、上位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅が、下位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅より大きいこと」に訂正する。
6 訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0009】を「本発明に係る発明の多接点端子を有する電気コネクタは、端子が複数の弾性腕を有し、相手コネクタとの嵌合時に、該複数の弾性腕の弾性部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部が斜縁の直線部分との接触を通じて相手端子に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、端子は金属板の板面を維持したまま作られていて、該端子の板厚方向に間隔をもってハウジングに配列されている。」と訂正する。
7 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0010】を「かかる多接点端子を有する電気コネクタにおいて、本発明では、端子の複数の弾性腕は、相手端子との接触位置を通りコネクタ嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位の弾性腕が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成されており、上記複数の弾性腕の接触部は、下方に向け順に位置しており、上位に位置する弾性腕の接触部に対して下位となる接触部を有する弾性腕の上端が上記上位の弾性腕の接触部に近接して位置付けられることにより有効嵌合長が長く確保されており、コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており、上位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅が、下位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅より大きいことを特徴としている。」と訂正する。
第4 訂正拒絶の理由
一方、平成28年2月25日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された米国特許第3631381号明細書(以下「刊行物1」という。)に記載された発明、米国特許第3414871号明細書(以下「刊行物2」という。)に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件審判の請求は、同法第126条第7項の規定に適合しない。
第5 訂正の適否についての判断
1 訂正の目的
訂正事項1ないし5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、訂正事項6及び7は、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
2 新規事項
訂正事項1ないし7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1ないし7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
3 拡張・変更の存否
訂正事項1ないし5は、請求項1に記載した発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項6及び7は、上記訂正事項1ないし5に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るため、明細書の記載を訂正するものであるから、訂正事項1ないし5と同様、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件
(1)訂正後の請求項1ないし6に係る発明
訂正後の請求項1ないし6に係る発明は、審判請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
端子が複数の弾性腕を有し、相手コネクタとの嵌合時に、該複数の弾性腕の弾性部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部が斜縁の直線部分との接触を通じて相手端子に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、端子は金属板の板面を維持したまま作られていて、該端子の板厚方向に間隔をもってハウジングに配列されている電気コネクタにおいて、端子の複数の弾性腕は、相手端子との接触位置を通りコネクタ嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位の弾性腕が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成されており、上記複数の弾性腕の接触部は、下方に向け順に位置しており、上位に位置する弾性腕の接触部に対して下位となる接触部を有する弾性腕の上端が上記上位の弾性腕の接触部に近接して位置付けられることにより有効嵌合長が長く確保されており、コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており、上位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅が、下位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅より大きいことを特徴とする多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項2】
端子の複数の弾性腕は、ハウジングにより保持される該端子の基部から接触線に沿って平行に延び、各弾性腕の先端側で該接触線に対して直角方向に向けた突出部で各接触部を形成していることとする請求項1に記載の多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項3】
端子の複数の弾性腕に形成された各接触部は、コネクタ嵌合前の状態で、同一間隔で接触線と平行な線上に位置していることとする請求項1又は請求項2に記載の多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項4】
端子は二つの弾性腕を有し、コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する弾性腕の接触部における接触圧と、次に接触する弾性腕の接触部における接触圧との比が2対1であることとする請求項1ないし請求項3に記載の多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項5】
端子の複数の弾性腕は、固有振動数がそれぞれ異なることとする請求項1ないし請求項4のうちの一つに記載の多接点端子を有する電気コネクタ。
【請求項6】
端子の複数の弾性腕は、コネクタ嵌合時に、相手端子に対して先行して接触する弾性腕がその弾性変位中に次に接触すべき弾性腕に当接してこれを弾性変位せしめることとする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の多接点端子を有する電気コネクタ。」
(2)刊行物
ア 刊行物1
刊行物1には、「MUTIPLE ELECTRICAL CONNECTOR」(マルチプル電気コネクタ)について、図面と共に、次の事項が記載されている。仮訳は、本件特許に対する訂正2015-390099号の審判手続において請求人が平成27年10月6日で付けで提出した上申書に添付した刊行物1の訳文に基づき、当審が作成した。
(ア)2欄24行~4欄8行(上記訳文2枚目下から6行~4枚目下から2行。なお、下線は当審で付した。)
(仮訳)
最初に図1及び図2を参照すると、本発明の超小形多重電気コネクタは、本発明の上記原理に従って特別に設計されたコネクタ要素を多数受け入れるように構成されたレセプタクルを備える。各コネクタ要素は略C状で示され、レセプタクルは略R状で示されている。
レセプタクルRは、単一の絶縁材成形品から成り、プリント回路基板Bを受け入れるための長手溝10を中央に設けて形成される。前記溝は2つの向かい合った壁12及び14によって形成され、これら壁の少なくとも一方に、好ましくは両方にレセプタクルに収容されるコンタクト要素Cの数に対応した数のポケット16、16が溝に沿って長手方向に互いに距離を置いて形成される。各コンタクト要素は、ポケット16によって位置決めされ、かつ一部が収容される。レセプタクルRは、取付要素を受け入れるための有孔ターミナルラグ部18(図面には1つだけ図示)をさらに設けて形成されてもよい。
各コンタクト要素Cは音叉、即ち二又部材の形態で構成され、基部20とこの基部から上方に延在する一対のばね脚22及び24とを備えるように一枚の導電体シートから形成される。一対のばね脚は同一平面にあり、図面に明確に示されているように長さが互いに異なる。2つのばね脚22、24は、プリント回路基板Bの接触領域30、30に係合するように適合化された側方突出部26及び28をそれぞれ上端に有する。さらに各コンタクト要素は、電気端子を形成するテール部32を1つ以上設けて形成される(図面には1つ示されている)。図示のようにコンタクト要素はシート素材から形成されるので図示のように平らに作製される。したがって、このシート形状のコンタクト要素は、図1及び図2に最も良く示されているようにレセプタクルのポケット16内にプリント回路基板の平面に対して直角な平面に、配置される構造を有する。
上記のようにばね脚22及び24は長さが互いに異なる。コンタクト要素のこの構成及びレセプタクル内のそれぞれの位置及び配置により、ばね脚22、24は互いに独立に機能してプリント回路基板の接触領域30との電気的接続をもたらす。これにより、コネクタを利用する際、コンタクト要素の第2のばね脚によって冗長性がもたらされる。また、各コンタクト要素の基部20は、溝孔34をばね脚間に設けて形成される。この溝孔34は、前記ばね脚のそれぞれに加えられうる異なる接触圧又は荷重特性を決定するように構成される。したがって、各コンタクト要素は、コンタクト要素において、プリント回路基板の接触領域との電気的接触をもたらすために互いに独立に機能するよう特別に構成された部材又は部分(2つのばね脚)である。これら部材は、互いに独立した偏位特性を有し、更に、コネクタを使用している際に生じる異なる振動周波数に対応した、異なる共振周波数をも有する。
上記の構造を採ることにより、荷重特性については、いくつかの選択(すなわち、2つのばね脚にかかる荷重が等しい、短ばね脚にかかる荷重より長ばね脚にかかる荷重が小さい、及び、長ばね脚にかかる荷重より短ばね脚にかかる荷重が小さい)をすることが可能になる。これら選択肢は、ばね脚間の溝孔34の下端の形状を決めることで調整される。
上記のように、これらコンタクト要素は1シートインチの導電材料から形成される。この材料は燐青銅であることが好ましく、金又は銀鍍金されることが好ましい。このようなシート材として、図6に示されているように厚さ0.025インチのシート素材が挙げられる。各ばね脚22、24の幅も、図4に示されているように0.025インチ台である。ばね脚22の上端の幅は、突出部26も含め、図6に示されているように0.122インチにしうる。ばね脚24の上端の幅は、側方突出部も含め、図7に示されているように0.067インチにしうる。使用されるさまざまなプリント回路基板Bの厚さは、0.060乃至0.070インチ台でよい。これらの寸法ならびにポケット16の中心間の間隔0.050はコネクタの超小形特性を示している。
各コンタクト要素の基部20は、当該コンタクト要素をレセプタクルの基部に確実に取り付けるために、レセプタクルのポケット16の壁161及び162との係合用の側方突出部201及び202を設けて形成される。各コンタクト要素を締まり嵌めによってレセプタクル内に保持するために、各コンタクト要素の少なくとも一方の突出部にさらなる突起又は隆起36が形成される。この締まり嵌めによる取り付けにより、音叉状コンタクト要素の2つのフォーク、すなわちばね脚22及び24、の接触調整及び移動が完全に自由になる。ばね脚の上端突出部26、28の接触係合端は、同じ接触円滑さをもたらすために部分38、38が適切にコイニングされることが好ましい。上記コネクタのコンタクト要素は両端単一読み出し装置として説明されているが、これらコンタクト要素を片側用及び二重読み出し用として設けることも可能である。後者の機能は、追加のテール部をコンタクト要素に追加することによって得られる。図示のような端子テール部は巻線用に正方形であるが、半田付け用の形状にすることもできる。
図示のように右側及び左側のコンタクト要素は鏡像のような反転形状を有する。各側のコンタクト要素は、図2に明確に示されているように、さらには図3にテール部32、32の千鳥配列によって最も良く示されているように、互い違いに配置されることが好ましい。これにより端子への巻線作業が容易になる。この千鳥配列によると左側のコンタクト要素を右側に使用することも、この逆に使用することも可能である。
本コネクタの動作、コンタクト要素によって満たされる機能及び用途、及び従来技術の装置に勝る利点は、上記の詳細説明から概ね十分に明らかであろう。本発明のコネクタの構造は、コンタクト要素とプリント回路基板の導電接触領域との間の係合を保証し、コンタクト要素の確実な挿入及び容易な抜去を可能にし、コンタクト要素およびプリント回路基板の導電域の損傷又は過剰摩耗を抑止又は最小化するという通常の機能を動作及び使用中に実現することに加え、以下の目的、機能、及び利点を達成する。
a,互いに異なる長さのフォーク歯、すなわちばね脚、を有する音叉型コネクタ要素が提供される。各ばね脚は互いに独立に機能することによって、各ばね脚がプリント回路基板の接触領域との電気的接続を独立にもたらすという冗長性を提供する。
b,両ばね脚は、互いに異なる(又は等しい)接触圧又は荷重特性を決定するように構成することができる。
c,両ばね脚は、稼働中に遭遇しうるさまざまな振動周波数に一致する互いに異なる共振周波数を有するように設計される。
d,コンタクト要素は、プリント回路基板との接触及び調整係合の自由を可能にするために、コネクタレセプタクル内に基部で支持されるように設計されうる。
e,コンタクト要素は、シート素材から単純に形成されうるので、超小形エッジボードコネクタでの使用に容易に適合可能な装置を妥当な低製造コストでもたらしうる。
(イ)FIG.2からみて、コンタクト要素Cの複数のばね脚22,24が、接触領域30との接触位置を通りプリント回路基板Bの係合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置することが理解できる。
(ウ)FIG.2及びFIG.4には、上記(ア)の「2つのばね脚22、24は、プリント回路基板Bの接触領域30、30に係合するように適合化された側方突出部26及び28をそれぞれ上端に有する」との記載とあわせみると、ばね脚22,24が、それぞれ、弾性部と弾性部の先端側に形成された側方突出部26,28とからなることが示されている。
また、FIG.2及びFIG.4には、複数のばね脚22,24の弾性部の先端側にそれぞれ形成された側方突出部26,28が半円形突状の部分38,38との接触を通じて接触領域30に一つの上記接触線上で順次弾性接触し、上位のばね脚22の上端に上記接触線に向う半円形突状の部分38を有している側方突出部26を形成し且つ該側方突出部26の下縁に凹部が形成されており、上記複数のばね脚22,24の側方突出部26及び28は、下方に向け順に位置しており、上位に位置するばね脚22の側方突出部26に対して下位となる側方突出部28を有するばね脚24の上端が上記上位のばね脚22の側方突出部26に近接して位置付けられることが示されている。
上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「コンタクト要素Cが複数のばね脚22,24を有し、プリント回路基板Bとの係合時に、該複数のばね脚22,24の弾性部の先端側にそれぞれ形成された側方突出部26,28が半円形突状の部分38,38との接触を通じて接触領域30に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、コンタクト要素Cは導電体シートの板面を維持したまま作られていて、該コンタクト要素Cの板厚方向に間隔をもってレセプタクルRに配列されている超小型多重電気コネクタにおいて、コンタクト要素Cの複数のばね脚22,24は、接触領域30との接触位置を通りプリント回路基板Bの係合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位のばね脚22の上端に上記接触線に向う半円形突状の部分38を有している側方突出部26を形成し且つ該側方突出部26の下縁に凹部が形成されており、上記複数のばね脚22,24の側方突出部26,28は、下方に向け順に位置しており、上位に位置するばね脚22の側方突出部26に対して下位となる側方突出部28を有するばね脚24の上端が上記上位のばね脚22の側方突出部26に近接して位置付けられており、上位に位置するばね脚22の弾性部の板面の幅が、下位に位置するばね脚24の弾性部の板面の幅に等しい超小型多重電気コネクタ。」
イ 刊行物2
刊行物2には、図面(特に、FIG.18)と共に、次の事項が記載されている。仮訳は、当審が作成した。
(ア)2欄37行~41行
(仮訳)
図9は、本発明の多接触ソケットタイプコネクタが製作される打ち抜きブランクを示す。
図10は、図9の打ち抜きブランクから製作されたコネクタの側面図である。
(イ)2欄56行~57行
(仮訳)
図17と図18は、図9と図10による2つの入れ子式コネクタを示す。
(ウ)4欄53行~74行
(仮訳)
図9は、板ばねタイプのコネクタを示す。同コネクタは、付加的なリード部分21と付加的な戻り止めフラップ22を備える。コネクタのコンタクトが製作される部分は、多数の平坦で相互に独立した弾性舌部からなる。付加的なリード部分21は、ダブルリードとなることを許す。付加的な戻り止めフラップ22は、同じ目的のためにあり、異なる方法で同じ結果を達成する。図9に示されたブランクから製作された2つの屈折した板ばねは、互いに入れ子にされ、例えば、フラップ22によって、互いに戻り止めされる。2つのこのような入れ子ばねは、すでに複数のリードを有し、絶縁体の開口の中にインサートされ、或いは2番目のばねが1番目がインサートされた後に、インサートされる。
図17と図18は、図9と図10に示されたタイプの、1組の入れ子ばねを示し、すでに絶縁体の中で戻り止めされる。内部コネクタは、そのフラップ22を外部コネクタの部分35に入れて、戻り止めされる。コンタクトは、例えば、両側に電気コンタクトを備えたプリント回路基板23を受け入れるように適合される。
(エ)FIG.18には、プリント回路基板23が上方から下方に入れ子式コネクタに嵌合することが示され、また、複数の弾性舌部が、脚部とその先端側の突状の接触部とからなることが示されている。そして、上記(ウ)の記載内容を踏まえると、プリント回路基板23の嵌合が進行すれば、複数の弾性舌部の脚部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部が斜縁の直線部分との接触を通じてプリント回路基板23の電気コンタクトに一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、複数の弾性舌部は、プリント回路基板23の電気コンタクトとの接触位置を通り嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位の弾性舌部が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁を有しており、上記複数の弾性舌部の接触部は、下方に向け順に位置していることが理解できる。
上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。
「複数の弾性舌部の脚部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部が斜縁の直線部分との接触を通じてプリント回路基板23の電気コンタクトに一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、複数の弾性舌部は、プリント回路基板23の電気コンタクトとの接触位置を通り嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位の弾性舌部が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁を有しており、上記複数の弾性舌部の接触部は、下方に向け順に位置している入れ子式コネクタ。」
(3)対比
本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比すると、後者の「コンタクト要素C」は前者の「端子」に相当し、以下同様に、「プリント回路基板B」は「相手コネクタ」に、「複数のばね脚22,24」は「複数の弾性腕」に、「係合」は「嵌合」に、「プリント回路基板Bの係合方向」は「コネクタ嵌合方向」に、「側方突出部26,28」は「突状の接触部」に、「接触領域30」は「相手端子」に、「導電体シート」は「金属板」に、「レセプタクルR」は「ハウジング」に、「超小型多重電気コネクタ」は「多接点端子を有する電気コネクタ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「端子が複数の弾性腕を有し、相手コネクタとの嵌合時に、該複数の弾性腕の弾性部の先端側にそれぞれ形成された突状の接触部が接触を通じて相手端子に一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、端子は金属板の板面を維持したまま作られていて、該端子の板厚方向に間隔をもってハウジングに配列されている電気コネクタにおいて、端子の複数の弾性腕は、相手端子との接触位置を通りコネクタ嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上記複数の弾性腕の接触部は、下方に向け順に位置している多接点端子を有する電気コネクタ。」
で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本件訂正発明1は、複数の弾性腕にそれぞれ形成された突状の接触部が「斜縁の直線部分」との接触を通じて相手端子に順次弾性接触し、「上位の弾性腕が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成されており、」「上位に位置する弾性腕の接触部に対して下位となる接触部を有する弾性腕の上端が上位の弾性腕の接触部に近接して位置付けられることにより有効嵌合長が長く確保され」ているのに対し、
刊行物1発明は、複数のばね脚22,24にそれぞれ形成された側方突出部26,28が「半円形突状の部分38,38」との接触を通じて接触領域30に順次弾性接触し、「上位のばね脚22の上端に上記接触線に向う半円形突状の部分38を有している側方突出部26を形成し且つ該側方突出部26の下縁に凹部が形成されており、」「上位に位置するばね脚22の側方突出部26に対して下位となる側方突出部28を有するばね脚24の上端が上記上位のばね脚22の側方突出部26に近接して位置付けられて」いる点。
〔相違点2〕
本件訂正発明1は、「コネクタ嵌合時に相手端子と最初に接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており、上位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅が、下位に位置する弾性腕の弾性部の板面の幅より大きい」のに対し、
刊行物1発明は、「上位に位置するばね脚22の弾性部の板面の幅が、下位に位置するばね脚24の弾性部の板面の幅に等しい」点。
(4)判断
そこで、各相違点について検討する。
ア 相違点1について
本件特許に係る出願の出願時に、電気コネクタの技術分野において有効嵌合長を長く確保することは、周知の技術事項(例えば、特開2003-168505号公報に「両接続片11、11間に進入する端子23の有効嵌合長及び端子23のばね長を長くし、接触信頼性を高めることができる」(段落【0040】)との記載参照。)である。
そうすると、刊行物1発明において、上記周知の技術事項を踏まえ、「上位に位置するばね脚22の側方突出部26に対して下位となる側方突出部28を有するばね脚24の上端が上記上位のばね脚22の側方突出部26に近接して位置付けられ」るとの事項により、有効嵌合長を長く確保することに格別の困難性はない。
一方、刊行物2発明のコネクタの複数の弾性舌部の脚部の先端側に形成された突状の接触部は、「斜縁の直線部分との接触を通じてプリント回路基板23の電気コンタクトに一つの接触線上で順次弾性接触するようになっており、複数の弾性舌部は,プリント回路基板23の電気コンタクトとの接触位置を通り嵌合方向に延びる接触線に対して一方の側に位置しており、上位の弾性舌部が上端から下方に延び上記接触線に向う斜縁を有していて該斜縁の下端に接触部を形成し且つ該斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁を有して」いるものの、当該下縁には「凹部」が形成されていないから(図9及び18参照)、刊行物1発明の側方突出部26の構成を、刊行物2発明のコネクタの弾性舌部に係る構成に単に置き換えたとしても、その下縁に「凹部」が形成される構成とならないことは明らかである。
そこで、刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2発明のコネクタの弾性舌部にするためには、刊行物1発明の側方突出部26の構成のうち、「下縁に凹部が形成され」た構成のみを残した上で、それ以外の構成を刊行物2発明のコネクタの弾性舌部に係る構成と置き換えることが必要となる。しかしながら、刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2発明のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用するに際し、上記側方突出部26が備える一体的構成の一部である下縁の「凹部」の構成のみを分離し、これを残すこととすべき合理的な理由は認められない。そもそも、刊行物1発明の側方突出部26の下縁に凹部が形成されている理由については、刊行物1に何ら記載されておらず、技術常識等に照らして明らかなことともいえないから、当該構成の技術的意義との関係でこれを残すべき理由があると認められるものではない。したがって、当業者が,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2発明のコネクタの弾性舌部に係る構成を適用するに当たり、刊行物1発明の側方突出部26における下縁の「凹部」の構成のみをあえて残そうとすることは、考え難いことというほかない。
してみると、刊行物1発明に刊行物2発明のコネクタの弾性舌部に係る構成及び前記周知の技術事項を適用したとしても、相違点1に係る本件訂正発明1の構成のうち、上位の弾性腕の斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、相違点2を検討するまでもなく、刊行物1発明、刊行物2発明及び前記周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本件訂正発明1を直接的及び間接的に引用し、本件訂正発明1を更に限定した本件訂正発明2ないし6も、本件訂正発明1と同様に、刊行物1発明、刊行物2発明及び前記周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
イ まとめ
したがって、本件訂正発明1ないし6は、刊行物1発明、刊行物2発明及び前記周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1ないし6は、刊行物1発明、刊行物2発明及び前記周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正発明1ないし6は、特許出願の際独立して特許を受けることができる。
第6 むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-390144