特許拒絶査定不服審判
2015-014251
ケラチン繊維を処理する方法
- 審判番号
- 2015-014251
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-555217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年07月29日
- 審決日
- 2017年10月13日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .536-WZ (A61K) / P18 .537-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-555217「ケラチン繊維を処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日国際公開、WO2011/155076、平成25年7月8日国内公表、特表2013-528158〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2010年6月9日を国際出願日とする特許出願であって、平成27年3月26日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年7月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月30日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
2 本願発明
本願の請求項1-16に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明16」という。)は、平成29年8月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本願発明1は以下のとおりのものである。
「ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成方法であって、
前記ケラチン繊維上に機械的張力下で1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を適用する工程;
次いで、前記ケラチン繊維を前記組成物中の蒸発性成分の蒸発を制限する閉塞空間中に配置する工程;
次いで、前記ケラチン繊維を加熱する工程
を含み、
前記組成物が、還元剤及び式:
【化1】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)の1種又は数種のイオン源のいずれも含まない、方法。」
3 当審における拒絶理由の概要
当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものを含み、具体的には以下のとおりである。
「本願明細書には、…ケラチン繊維のパーマネント変形方法に関する記載、さらに…、安定なパーマネントウェーブ形成を達成することに関する記載はあるが、実施例においては、…処理後の毛髪束を40℃で5時間、100%相対湿度下でまっすぐに束縛した状態に維持した後のカール効率が観察されるに留まる。そして、この結果は、毛髪に対するウェーブ形成等のヘアスタイリングが行われていると解しうるものの、それが『パーマネント』すなわち(半)永久的なヘアスタイリングとなっているのか、本願明細書の他の記載を参酌しても明らかとはいえない。
このため、本願発明1、及びこれに従属する本願発明2-14に係る『ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成方法』は実施可能であるのか、本願明細書の如何なる記載を参酌しても判然としない。
そして、ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成が、還元剤あるいは【化1】の化合物を使用せず、『1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物』を使用することによってなしうると解される根拠を見いだすことはできず、本願発明の規定の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1-14を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本願発明1-14は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
そして、『ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成用組成物』に係る本願発明15、『ケラチン繊維にパーマネントウェーブを形成するためのキット』に係る本願発明16についても同様である。」
4 当審の判断
(1)本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
ア 「本発明の目的は、良好なカール持続性をもたらす毛髪等のケラチン繊維のための新しい処理方法、特にパーマネント変形方法を提供することである。
本発明の別の目的は、ケラチン繊維のための上記の新しい処理方法によって、自然な毛髪のための強いパーマ効率を提供することである。
本発明の別の目的は、ケラチン繊維のための処理方法による高レベルの毛髪の損傷を防止することである。
本発明のさらなる目的は、ケラチン繊維のための従来の処理方法、特にパーマネント変形方法に必要とされる時間を短縮し、例えば、ケラチン繊維のための迅速なパーマネント成形方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、ケラチン繊維のための従来の処理方法、特にパーマネント変形方法において一般に使用されるチオール化合物に由来する悪臭を防止することである。」(【0007】-【0011】)
イ 「本発明者らは、機械的張力下でのケラチン繊維のためのパーマネント変形処理中の特定の加熱プロセスと関連して、1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を使用することによって、ケラチン繊維の顕著な又は重大な劣化を発生させることなく良好なパーマ性能を達成することが可能であることを発見した。
…
実際本発明によれば、古典的なパーマ方法とは違って、安定なパーマネントウェーブ形成を達成するために酸化的工程は必要とされない。したがって、上記の新しい組成物と上記の新しい加熱プロセスの組み合わせによって、ワンステッププロセスを達成することができる。これにより、ケラチン繊維のためのパーマネント変形方法に必要とされる時間を大幅に短縮することができる。」(【0031】-【0034】)
ウ 「[ケラチン繊維のパーマネント変形(Permanent Deformation)方法]
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維に、パーマネント変形に典型的に使用される機械的張力をかける。
…
ケラチン繊維のパーマネント変形のためのこの方法は、ケラチン繊維を酸化させる工程を用いずに実施することができる。したがって、本発明による方法に要する時間は、酸化工程を必要とする従来の方法に要する時間より短くすることができる。更に、酸化工程によりケラチン繊維に与えられる損傷を回避することができる。」(【0070】-【0075】)
エ 「この組成物は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形において使用される酸化剤、特に過酸化水素と組み合わせて使用する必要はないと考えられる。したがって、ケラチン繊維をパーマネント変形するべきである場合、組成物は1ステップで使用することができ、一方、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形においては、2ステップ(還元工程及び酸化工程)が必要である。」(【0100】)
オ 「(実施例)
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
組成物1~4
以下の組成物を、成分(活性成分重量%)を混合することによって調製した。
組成物1
┌───────────────────┬─────────┐
│成分 │ 量(重量%) │
├───────────────────┼─────────┤
│モノエタノールアミン │ 10 │
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
├───────────────────┼─────────┤
│HCl │ pH10まで適量 │
└───────────────────┴─────────┘
組成物2
┌───────────────────┬─────────┐
│成分 │ 量(重量%) │
├───────────────────┼─────────┤
│アルギニン │ 10 │
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
├───────────────────┼─────────┤
│HCl │ pH10まで適量 │
└───────────────────┴─────────┘
組成物3
┌───────────────────┬─────────┐
│成分 │ 量(重量%) │
├───────────────────┼─────────┤
│尿素 │ 50 │
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
├───────────────────┼─────────┤
│ │ pH 8 │
└───────────────────┴─────────┘
組成物4
┌───────────────────┬─────────┐
│成分 │ 量(重量%) │
├───────────────────┼─────────┤
│水酸化ナトリウム │ 1.0 │
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
├───────────────────┼─────────┤
│HCl │ pH10まで適量 │
└───────────────────┴─────────┘
実施例1~4及び比較例1~4
(実施例1)
組成物1を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
(比較例1)
組成物1を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り外し、再度すすぎ、乾燥させた。
(実施例2)
組成物2を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
(比較例2)
組成物2を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り外し、再度すすぎ、乾燥させた。
(実施例3)
組成物3を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
(比較例3)
組成物3を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り外し、再度すすぎ、乾燥させた。
(実施例4)
組成物4を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
(比較例4)
組成物4を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り外し、再度すすぎ、乾燥させた。
[試験]
実施例1~4及び比較例1~4の処理された毛髪束について、カール保持試験を実施した。その目的のために、毛髪束を40℃で5時間、100%相対湿度下でまっすぐに束縛した状態に維持した。カール長時間持続性を、このカール保持試験の前及び後の人工的に付与形状を比較することによって評価した。結果を表1に示す。
表1
┌──────┬────────┬───────┬───────┐
│ │ 還元工程 │ カール効率 │ カール保持 │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 実施例1 │ 組成物1 │ ++ │ + │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 比較例1 │ 組成物1 │ -- │ -- │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 実施例2 │ 組成物2 │ ++ │ + │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 比較例2 │ 組成物2 │ -- │ -- │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 実施例3 │ 組成物3 │ + │ + │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 比較例3 │ 組成物3 │ -- │ -- │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 実施例4 │ 組成物4 │ ++ │ + │
├──────┼────────┼───────┼───────┤
│ 比較例4 │ 組成物4 │ -- │ -- │
└──────┴────────┴───────┴───────┘
++:非常に良好なカール効率
+:良好なカール効率
-:低いカール効率
--:非常に弱いカール効率
表1は、本発明が良好なカール効率及びカール保持効果をもたらすことができることを示す。」(【0106】-【0122】)
(2)本願発明1に係る特許法第36条第4項第1号についての検討
本願の発明の詳細な説明には、上記(1)アないし(1)エのように、ケラチン繊維のパーマネント変形方法ないしパーマネントウェーブ形成方法に関する記載、さらに上記(1)イには、安定なパーマネントウェーブ形成を達成することに関する記載はあるが、実施例においては、上記(1)オのように、処理後の毛髪束を40℃で5時間、100%相対湿度下でまっすぐに束縛した状態に維持した後のカール効率が観察されるに留まる。この結果は、毛髪に対するウェーブ形成等のヘアスタイリングが行われていると解しうるものの、それが「パーマネント」すなわち(半)永久的なヘアスタイリングとなっているのか、本願明細書の他の記載を参酌しても明らかとはいえない。
このため、本願発明1に係る「ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成方法」は実施可能であるのか、本願明細書の如何なる記載を参酌しても判然としない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1の実施(特に、「ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成」)をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
請求人は、平成29年8月4日提出の意見書において、本願の発明の詳細な説明の実施例において本願発明に係る組成物として使用されている「組成物1」、「組成物2」、「組成物3」、及び、「組成物4」を用いて、本願の発明の詳細な説明の「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、及び、「実施例4」の処理前後の毛髪の形状の観察結果を示しつつ、「本願明細書の実施例1~4の処理を受けた毛髪はカールしており、その形状は2ヶ月経過後も維持されております。このように、本願発明がケラチン繊維のパーマネント変形を実際にもたらすことは明らかです。してみますと、本願の発明の詳細な説明は所謂実施可能要件を満たすものであります。」と主張する。
しかし、この「その形状は2ヶ月経過後も維持されております。」との結果は、「実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の処理を受けて室温で2ヶ月経過後」のもの、つまり、室温で2ヶ月放置したものであるにすぎず、カール(変形)後の形状が2ヶ月経過後も維持されているとはいえ、これは、毛髪に対する洗髪等の日常のケアや気象条件の変化のような、生活上の一般的なストレスを与えても、その形状が(半)永久的に維持されることを確認したものではない。このため、本願発明1のステップをケラチン繊維に対して行うことによって、変形後の形状の(半)永久的な維持、すなわち、「パーマネントウェーブ形成」を実現できることは、上記意見書の記載を参酌しても、依然として確認されているものとはいえない。
そうすると、本願発明1に係る「ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成」は、どのようにすれば実施しうるのか、本願の発明の詳細な説明の如何なる記載を参酌しても依然として判然としない。
(3)本願発明1に係る特許法第36条第6項第1号についての検討
上記のとおり、本願発明1は、当業者が本願の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づき、これを実施することができないのであるから、本願発明1は、本願の発明の詳細な説明の記載及び技術常識によっては、当業者が課題(「ケラチン繊維のパーマネントウェーブ形成」)を解決できると認識できる範囲のものということはできず、本願の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
(4)本願発明2-16について
上記(2)、(3)での検討事項は、本願発明15のような「組成物」の発明、及び、本願発明16のような「キット」の発明においても同様に妥当するものといえる。そうすると、本願発明1を引用する本願発明2-14、並びに、本願発明15及び本願発明16は、本願発明1と同様、どのようにすれば実施しうるのか、本願の発明の詳細な説明の如何なる記載を参酌しても依然として判然としないし、また、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(5)まとめ
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1-16を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
また、本願発明1-16は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1-16について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとはいえず、また、本願の特許請求の範囲の記載は、本願発明1-16について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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