特許拒絶査定不服審判
2015-011524
航空機等用安全安心リチウム電池システム
- 審判番号
- 2015-011524
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-030484外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年06月18日
- 審決日
- 2016年12月27日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ドクター中松創研
- 分類
- P18 .121-WZ (B64D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 30484号「航空機等用安全安心リチウム電池システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-159212号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月19日の出願であって、平成26年12月3日付けで拒絶理由が通知されたが、当該通知において指定した期間内に請求人からは何らの応答もなく、平成27年4月2日付けで、平成26年12月3日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年6月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後当審において、平成28年8月23日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年10月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「リチウム電池が内蔵されたリチウム電池外箱の複数箇所からバネでもってリチウム電池を空中に浮かす状態で保持するか、リチウム電池外箱にウレタン部材を充填し、その中にリチウム電池を封入して、リチウム電池に特に縦方向からの衝撃を与えないことを特徴とする航空機等リチウム電池システム。」
第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した平成28年8月23日付けの拒絶の理由は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
そして、刊行物等として、
引用文献1:特許第3256700号公報
引用文献2:国際公開第2012/73439号
が示されたものである。
第4 当審の判断
1 刊行物等の記載事項
(1)引用文献1の記載事項 (下線は当審で付与。以下同様。)
(1a)「【請求項2】内枠と、外枠と、複合防振機構と、クランプとの組合せからなり、
複合防振機構は、弾性体と、粘弾性体との組合せであり、
内枠は、蓋板と、内箱との組合せであり、内箱は、試料容器を収納し、蓋板は内箱を施蓋するものであり、
外枠は、上部枠と下部枠との組合せであり、
内箱は、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構で支えて下部枠内に設置され、
蓋板は、複合防振機構で吊り下げて上部枠に取付けられ、
下部枠に上部枠を結合することによって、内箱は、蓋板に施蓋されるものであり、
クランプは、蓋板と内箱および上部枠と下部枠とを脱着可能に結合するものであることを特徴とする試料保護装置。」(1頁1欄下から3行~2欄下から3行)
(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は航空機,ロケット,スペースシャトル,人工衛星などの無人宇宙飛翔体,宇宙ステーションなどの飛行体による弾道飛行中の無重力環境あるいは軌道上で行う宇宙実験において、飛行体又は走行体の発射,発振時,離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動,衝撃から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護する方法と、この方法に用いる保護装置に関する。」(1頁2欄末行~2頁3欄7行)
(1c)「〔従来の技術〕
航空機あるいはロケットの弾道卯飛行を利用した無重力環境や軌道上での宇宙模擬環境を利用して種々の新しい科学実験が行われるようになってきた。ところで、航空機,ロケット,スペースシャトル,人工衛星などの無人宇宙飛翔体,宇宙ステーションのような高速の飛行体ではその発射時,帰還時に強大な衝撃,振動を生じ、これら強大な衝撃や振動を受ける環境の下では例えば生物試料では正常な生存が阻害されることがある。これは生物試料に限るものではない。装置,機器類にあっては破損,故障を生ずるおそれがある。」(2頁3欄8~18行)
(1d)「〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、このような方法によるときには低い周波数に対応させようとすると、基本振動周波数を極端に低く設定することになるため、防振機構のバネ定数が非常に小さくなり、弾性体による支持が困難となり、また、系の振動が大きくなるため、防振機構の収納空間を大きく確保しなければならないため、試料保護装置の大型化は避けられないといった欠点がある。
本発明の目的は航空機,ロケットあるいはスペースシャトル内のような限られたスペースへの積載を可能ならしめ、しかも、発射時,帰還時に生ずる激しい衝撃,振動から試料を有効に保護しうる方法及びこの方法に使用する装置を提供することにある。」(2頁3欄26~38行)
(1e)「〔実施例〕
以下に本発明の実施例を図によって説明する。
第1図は本発明装置の基本的構成を示す図である。
図において、本発明装置は試料容器1を格納する内枠2と、該内枠2を収納する外枠3と、前記内枠2を外枠3内に3軸方向に個別に保持させる複合防振機構4との組合せからなっているものである。
内枠2は要するに試料5をスポンジ6などを介装して緩衝的に装てんする試料容器1の格納用箱体であり、上蓋開閉式の箱を使用するのが好ましい。
外枠3は前記複合防振機構4を取付けて前記内枠2の上下面及び各側面を個別に支持できる構造のものであれば必ずしも箱型であることを要しない。複合防振機構4は弾性体7と粘弾性体8との組合せからなるものである。
実施例においては、コイルばねによる弾性体7と柱状の粘弾性体8とを交互に配列して内枠2と外枠3との間の各面間に1列又は2列に取付けた例を示している。
具体例を第2図に示す。本実施例では外枠3を上部枠3aと下部枠3bとに2分割し、また内枠2を蓋板2aと内箱2bとに2分割して内箱2bの四周面及び底面をそれぞれ複合防振機構4で支えて下部枠3b内に設置するとともに蓋板2aを複合防振機構4で上部枠3aの下面に吊下げて取付けたものである。なお、上部枠3aには下部枠3bに固定するクランプ9を取次け、蓋板2aには内箱2bに結合するクランプ10をそれぞれ取付けている。
本実施例によれば、内箱2b内に試料容器1を格納し、上部枠3aを下部枠3bに重ねてクランプ10を内箱2bに結合し、クランプ9を下部枠3bに結合すれば、内箱2bは蓋板2aで施蓋され、上部枠3aと下部枠3bとが一体に結合され、試料容器1は3軸方向に配された複合防振機構4によって外枠3内に安定に保持されることになる。試料容器1を脱着する際にはクランプ9及び10を取外し、上部枠3aと下部枠3bとを上下に分離することにより試料容器1を簡単に迅速に取外すことができる。また、生物試料を搭載する場合のように酸素,外気の供給が必要なときには試料容器の外板と内枠の内箱に通気孔を開口すればよい。」(3頁5欄43行~4頁7欄11行、ただし、3頁6欄1~31行を除く)
(1f)「勿論、試料容器内には生物試料を収納する場合に限らず、各種実験器具を収納することもできる。例えば、試料容器内に加速度センサーを格納してこれを本発明装置に搭載し、前記飛行体又は高速走行体の発振から停止に至る加速度の変化を測定,記録すれば、本発明装置を用いた場合に試料に加えられる全工程の加速度の履歴を知ることができ、そのデータの集積により各種試料についての実験の信頼性を高めることができる。」(4頁7欄12~19行)
(1g)「以上実施例において、3軸方向の複合防振機構に用いた弾性体及び粘弾性体の組合せ並びに各々のばね常数やダンピングを各方向について異ならせることにより、3軸方向の各方向毎に異なる振動環境にも対応できる。」(4頁7欄20~23行)
(1h)「〔発明の効果〕
以上のように本発明によるときには弾性体と粘弾性体との組合せによる複合防振機構の特性を有効に利用して過小なばね常数の弾性体を用いることなく、試料容器を安定に支持し、しかも、加振時の系の振幅が過大となることがないため、小型化が可能となり、航空機,ロケット,スペースシャトルなどの限られた空間内に無理なく搭載できる効果を有するものである。」(4頁8欄1~8行)
(1i)「【図面の簡単な説明】
第1図は本発明装置の基本的構成を示す略示図、第2図は本発明装置の一実施例を示す分解斜視図・・・
1……試料容器、2……内枠
2a……蓋板、2b……内箱
3……外枠、3a……上部枠
3b……下部枠、4……複合防振機構
5……試料、7……弾性体
8……粘弾性体、9,10……クランプ」
(1j)引用文献1の第1図及び第2図には、以下の図が示されている。
(2)引用文献2の記載事項
(2a)「[0002] 複数の電池をケースに収容して、所定の電圧及び容量を出力できるようにした電池モジュールは、種々の機器、車両等の電源及び家庭用電源として広く使用されている。中でも、汎用的な二次電池を並列・直列接続して、所定の電圧及び容量を出力できるとともに充電をできるようにモジュール化し、この電池ブロックを種々組み合わせることによって、多種多様な用途に対応可能とする技術が採用され始めている。このモジュール化技術は、電池ブロックに収容する電池を高性能化することによって、電池ブロック自身の小型・軽量化が図られるため、電池モジュールを組み立てる際の作業性が向上するとともに、車両等の限られた空間へ搭載する際の自由度が向上するなど、様々なメリットも有する。
[0003] 一方、電気自動車の電源としてこのような電池ブロックを用いる場合、通常の使用条件の他に緊急事態に対してもあらかじめ対策を取っておくことが必要になる。このような緊急事態の一つとして自動車事故が考えられる。
[0004] 自動車が衝突したときの衝撃力は大きく、この衝撃力から乗員を守るためにエアバッグが搭載されるようになっている。一方、自動車に駆動用電源として電池モジュールを搭載するようになってからは日が浅く、電池モジュールの衝突時の安全対策についてはあまり検討が成されていない。特に、車載用の二次電池として、高電圧でエネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池が注目されているので、リチウムイオン二次電池を用いた電池モジュールの衝突時の安全対策が必要になる。リチウムイオン二次電池は外部からの衝撃によって内部短絡してしまうと、電池内部が高温になって多量のガスが発生してしまうので、内部短絡を防ぐ必要がある。」
2 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1には、「飛行体又は走行体の発射,発振時,離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動,衝撃から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護する・・・保護装置に関する」技術について開示されるところ(摘示(1b))、その特許請求項の範囲の請求項2には、
「内枠と、外枠と、複合防振機構と、クランプとの組合せからなり、
複合防振機構は、弾性体と、粘弾性体との組合せであり、
内枠は、蓋板と、内箱との組合せであり、内箱は、試料容器を収納し、蓋板は内箱を施蓋するものであり、
外枠は、上部枠と下部枠との組合せであり、
内箱は、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構で支えて下部枠内に設置され、
蓋板は、複合防振機構で吊り下げて上部枠に取付けられ、
下部枠に上部枠を結合することによって、内箱は、蓋板に施蓋されるものであり、
クランプは、蓋板と内箱および上部枠と下部枠とを脱着可能に結合するものであることを特徴とする試料保護装置。」と記載されている(摘示(1a))。
(2)また、引用文献1には、上記試料保護装置の実施形態として、試料容器1には、スポンジ6などを介装して試料5が装てんされること、及び弾性体7はコイルばねが使用されること、が記載されている(摘示(1e))。
(3)以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる(なお、引用発明に付した図番は、試料保護装置の実施の形態(摘示(1e)(1i))を参考に当審で付与した。)。
「内枠2と、外枠3と、複合防振機構4と、クランプ9、10との組合せからなり、
複合防振機構4は、弾性体7と、粘弾性体8との組合せであり、
内枠2は、蓋板2aと、内箱2bとの組合せであり、内箱2bは、試料容器1を収納し、蓋板2aは内箱2bを施蓋するものであり、
外枠3は、上部枠3aと下部枠3bとの組合せであり、
内箱2bは、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構4で支えて下部枠3b内に設置され、
蓋板2aは、複合防振機構4で吊り下げて上部枠3aに取付けられ、
下部枠3bに上部枠3aを結合することによって、内箱2bは、蓋板2aに施蓋されるものであり、
クランプ9、10は、蓋板2aと内箱2bおよび上部枠3aと下部枠3bとを脱着可能に結合するものであり、
試料容器1には、スポンジ6などを介装して試料5が装てんされ、
弾性体7はコイルばねが使用される、試料保護装置。」
の発明が記載されているといえる。
3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願明細書の「図2は本発明の実施例1の説明図である。・・・リチウムイオン電池の周りをバネで支えるようにして、例えば飛行機の離着陸等に発生する衝撃によりリチウム電池7が直接衝撃を受けないようにしたものである。」(段落【0009】)及び「上述の実施例では、本発明を飛行機について用いた場合を例にとって説明したが、本願発明はこれに限るものではなく、電車や自動車,耐震住宅等で衝撃からリチウムイオンバッテリーを守り、その熱暴走を防止しているので、これら手段についてもあまねく利用することができるものであり、これらも全て、本願発明に含まれる。」(段落【0015】)等の記載によれば、本願発明の「リチウムイオン電池」は、例えば飛行機の離着陸等に発生する衝撃や、あるいは電車や自動車,耐震住宅等で発生する衝撃から直接衝撃を受けないように保護すべきものと理解することができる。
他方、引用発明の「試料5」は、飛行体又は走行体の発射、発振時、離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動、衝撃から保護すべきものであるから(摘示(1b))、本願発明の「リチウムイオン電池」とは、「保護対象物」の限度で共通するものといえる。
イ 引用発明の「外枠3」は、「上部枠3aと下部枠3bとの組合せ」であり、箱状をなすことが明らかであるから、本願発明の「リチウム電池外箱」とは、「外箱」の限度で共通するものといえる。
ウ 引用発明は、「内枠2は、蓋板2aと、内箱2bとの組合せであり、内箱2bは、試料容器1を収納し、蓋板2aは内箱2bを施蓋するものであり、外枠3は、上部枠3aと下部枠3bとの組合せであり、内箱2bは、四周面および底面をそれぞれ複合防振機構4で支えて下部枠3b内に設置され、蓋板2aは、複合防振機構4で吊り下げて上部枠3aに取付けられ、下部枠3bに上部枠3aを結合することによって、内箱2bは、蓋板2aに施蓋されるもの」であるところ、引用文献1には、「試料容器1は3軸方向に配された複合防振機構4によって外枠3内に安定に保持されることになる。」(摘示(1e))と記載されているように、試料5が装てんされた試料容器1は、複合防振機構4によって「3軸方向」に保持されることになるから、かかる試料容器1が空中に浮かす状態に保持されることも明らかである(そのような状態は第1図(摘示(1j))にも示されている。)。
したがって、そのような試料容器1の保持の態様と、本願発明の「リチウム電池が内蔵されたリチウム電池外箱の複数箇所からバネでもってリチウム電池を空中に浮かす状態で保持する」こと、及び「リチウム電池に特に縦方向からの衝撃を与えない」こととは、上記ア及びイをも踏まえると、「保護対象物が内蔵された外箱の複数箇所から保護対象物を空中に浮かす状態で保持する」こと、及び「保護対象物に衝撃を与えない」ことの限度で共通するものといえる。
エ 本願明細書の「本発明者は、リチウムイオン電池を長年研究してきたが、リチウムイオン電池は衝撃を与えると、熱暴走を起こすことを発見した。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、飛行機や自動車等の安心安全なリチウムイオン電池システムを提供することを目的としている。」(段落【0006】)、「図2は本発明の実施例1の説明図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施例1は、ボーイング787のトラブルが離着陸時等の衝撃がリチウムイオン電池の熱暴走を起こすという本発明者の発見に基づき、リチウムイオン電池の周りをバネで支えるようにして、例えば飛行機の離着陸等に発生する衝撃によりリチウム電池7が直接衝撃を受けないようにしたものである。」(段落【0009】)、及び「上述の実施例では、本発明を飛行機について用いた場合を例にとって説明したが、本願発明はこれに限るものではなく、電車や自動車,耐震住宅等で衝撃からリチウムイオンバッテリーを守り、その熱暴走を防止しているので、これら手段についてもあまねく利用することができるものであり、これらも全て、本願発明に含まれる。」(段落【0015】)等の記載によれば、本願発明の「航空機等リチウム電池システム」とは、飛行機、自動車、電車、耐震住宅等に用いられるリチウムイオン電池を衝撃から保護するシステムと理解することができる。
他方、引用発明の「試料保護装置」は、飛行体又は走行体の発射、発振時、離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動、衝撃から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護するものであり(摘示(1b))、本願発明の「航空機等リチウム電池システム」とは、保護対象物を衝撃から保護する保護装置としてその機能が共通することが明らかであるから、両者は「保護装置」の限度で共通するものといえる。
ここで、本願発明は「リチウム電池が内蔵されたリチウム電池外箱の複数箇所からバネでもってリチウム電池を空中に浮かす状態で保持する」構成と、「リチウム電池外箱にウレタン部材を充填し、その中にリチウム電池を封入して」なる構成を二者択一的に選択して発明を構成するものであるから、少なくとも前者の構成を選択した発明について検討すれば足りる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「保護対象物が内蔵された外箱の複数箇所から保護対象物を空中に浮かす状態で保持することで、保護対象物に衝撃を与えない、保護装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点〕
本願発明は、保護対象物を「リチウム電池」とし、 保護装置が「航空機等リチウム電池システム」として構成されるものであって、その構造は、「リチウム電池が内蔵されたリチウム電池外箱の複数箇所からバネでもってリチウム電池を空中に浮かす状態で保持する」ことで「リチウム電池に特に縦方向からの衝撃を与えない」というものであるのに対し、引用発明は、保護対象物を「試料5」とし、保護装置が「試料保護装置」として構成されるものであって、その構造は、「試料5が装てんされ」た「試料容器1」を、「内枠2と、外枠3と、複合防振機構4と、クランプ9、10との組合せからな」る構成を用いて保持する点。
(2)判断
相違点について検討する。
ア 引用発明の「試料保護装置」は、飛行体又は走行体の発射、発振時、離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動、衝撃から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護するものであるところ(摘示(1b))、引用文献1には、「ところで、航空機,ロケット,スペースシャトル,人工衛星などの無人宇宙飛翔体,宇宙ステーションのような高速の飛行体ではその発射時,帰還時に強大な衝撃,振動を生じ、これら強大な衝撃や振動を受ける環境の下では例えば生物試料では正常な生存が阻害されることがある。これは生物試料に限るものではない。装置,機器類にあっては破損,故障を生ずるおそれがある。」(摘示(1c))及び「勿論、試料容器内には生物試料を収納する場合に限らず、各種実験器具を収納することもできる。」(摘示(1f))と記載されているから、引用発明における「試料5」は、飛行体や走行体に搭載される、例えば「生物試料」のほか、破損、故障を生ずるおそれがある「装置」、「機器類」及び「各種実験器具」等も想定されるものである。要は、飛行体や走行体に搭載され、衝撃や振動から保護すべきものがこれに該当するものといえる。
そして、引用文献2の摘示(2a)の記載からも明らかなとおり、電池モジュールは、種々の機器、車両等の電源及び家庭用電源として広く使用されており、限られた空間へ搭載する際の自由度が向上するなど様々なメリットを有するものの、通常の使用条件の他に緊急事態に対してもあらかじめ対策を取っておくことが必要であること、及び、特に、車載用の二次電池としてリチウムイオン二次電池を用いた電池モジュールの衝突時の安全対策は必要であり、リチウムイオン二次電池は外部からの衝撃によって内部短絡してしまうと、電池内部が高温になって多量のガスが発生してしまうので、内部短絡を防ぐ必要があることは、当業者が技術常識として認識しているところの事項といえる。
してみると、引用発明において、飛行体や走行体の電源としての搭載が想定されものであり、衝撃や振動により破損、故障を生ずるおそれのある「リチウムイオン電池」を保護の対象とする動機付けは十分存在する。
イ また、上記「(1)ウ」で述べたとおり、引用発明において、試料5が装てんされた試料容器1は、複合防振機構4によって「3軸方向」に保持されるものであるところ、そのように「3軸方向」に保持される構造であれば、それが「縦方向」からの衝撃にも対応した構造であることは技術的に明らかである。
さらに、引用発明は、「飛行体又は走行体の発射,発振時,離陸及び帰還時あるいは停止時の激しい振動,衝撃から飛行体又は走行体に搭載した試料を有効に保護する」ものであるから(摘示(1b))、特に、飛行体の発射、離陸、帰還時に生じる「縦方向」の衝撃にも考慮した設計がなされ得ることも明らかであり、それは、引用文献1の「以上実施例において、3軸方向の複合防振機構に用いた弾性体及び粘弾性体の組合せ並びに各々のばね常数やダンピングを各方向について異ならせることにより、3軸方向の各方向毎に異なる振動環境にも対応できる。」(摘示(1g))との記載からも裏付けられるものである。
そして、引用発明の「複合防振機構4」は、「弾性体7と、粘弾性体8との組合せ」で構成され、「弾性体7はコイルばねが使用される」ものであるところ、少なくとも「コイルばね」によっても試料容器1が3軸方向に保持されることが明らかであるから、かかるコイルばねの機能・作用は、本願発明のバネと変わるものではない。
ウ ところで、請求人は、平成28年10月28日付けの意見書(「2.理由2(特許法第29条第2項)について」)で、引用例1記載の発明は衝撃発生時の衝撃を低減するものであり、弾性体と粘弾性体からなる複合防振機構を設けているのに対し、本願発明は、バネでリチウム電池を空間に保持して支え、衝撃はバネで吸収するようになっており、引用例1記載の発明は衝撃を吸収するための構成が本願発明と全く異なる、旨主張する。
しかし、上記イで述べたとおり、引用発明においては、少なくともコイルばねによっても保護対象物を空間に保持する構造のものであるから、かかるコイルばねによる衝撃を吸収する機能・作用は、本願発明のバネと同様であって、異なるものではない。
補足すれば、本願明細書の段落【0010】には、「20~22は複数方向からリチウムイオン電池を保持するバネである。13はバネを支える外箱又は機体である。このように構成すれば、3次元方向からリチウムイオン電池7をバネで保持するので、リチウムイオン電池7が衝撃を受けることがなくなる。」と記載されているところ、引用発明においても、3軸方向から保護対象物をコイルばねで保持する構造になっているのであるから、さらに粘弾性体を具備するものではあっても、その構成は本願発明と同様といわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
エ そして、本願明細書の段落【0009】の記載によれば、本願発明は、リチウムイオン電池の周りをバネで支えるようにして、例えば飛行機の離着陸等に発生する衝撃によりリチウム電池7が直接衝撃を受けないようにする、という効果を奏するものと理解することができる。
他方、引用文献1の記載によれば、引用発明は、航空機内のような限られたスペースへの積載を可能ならしめ、しかも、発射時、帰還時等に生ずる激しい衝撃、振動から試料を有効に保護する、という効果を奏するものであるから(摘示(1d)(1h))、例えば航空機等の離着陸等に発生する衝撃から保護対象物が直接衝撃を受けないようする点で、本願発明と同様な効果を奏するものといえる。
さらに、リチウムイオン電池は、引用文献2にも記載されているとおり、外部からの衝撃によって内部短絡し、電池内部が高温になるという問題が指摘されているところ(摘示(2a))、引用発明の試料保護装置を航空機等リチウム電池システムとすれば、航空機等の離着陸等により発生する振動や衝撃からリチウムイオン電池は保護されるのであるから、リチウムイオン電池の上記問題が解決されることも技術的に明らかである。
したがって、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び引用文献2に記載された技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-011524