特許無効審判
2014-800105
労働安全衛生マネージメントシステム、その方法及びプログラム
- 審判番号
- 2014-800105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2005-205682
- 登録番号
- 特許第4827120号(P4827120)
- 請求日
- 2014年06月19日
- 審決日
- 2017年07月25日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】吉備システム 株式会社
- 【請求人代理人】森 寿夫
- 【請求人代理人】森 廣三郎
- 【請求人代理人】木村 厚
- 【被請求人】株式会社 コンピュータシステム研究所
- 【被請求人代理人】岩永 利彦
- 【被請求人代理人】藤原 英治
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 相崎 裕恒
- 審判官 石川 正二
- 分類
- P1113.121-YAA(G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法123条1項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4827120号「労働安全衛生マネージメントシステム、その方法及びプログラム」の特許無効審判事件についてされた平成27年 4月 7日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1、12、16、18に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10093号、平成27年11月30日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4827120号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1-11〕〔12-15〕〔16-17〕〔18-19〕について、訂正することを認める。
請求項1、12,16及び18についてした審判請求は成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯等
1 手続の経緯
本件の特許第4827120号(以下、「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
(以下では、平成27年4月7日付け審決を「一次審決」といい、一次審決に対する訴え(平成27年(行ケ)第10093号)に対して知的財産高等裁判所第3部において平成27年11月30日に言渡しがなされた判決を単に「判決」という。)
出願(特願2005-205682号) 平成17年 7月14日
設定登録 平成23年 9月22日
本件無効審判請求 平成26年 6月19日
審判事件答弁書提出 平成26年 9月 4日
口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 平成26年12月19日
口頭審理陳述要領書提出(請求人) 平成26年12月26日
口頭審理 平成27年 1月19日
一次審決の送達 平成26年 4月16日
一次審決に対する訴えの提起 平成27年 5月14日
判決の言渡し 平成27年11月30日
上告受理申立不受理決定(判決の確定) 平成28年10月25日
訂正請求申立て 平成28年11月 1日
訂正請求のための期間指定 平成29年 1月12日
訂正請求 平成29年 1月30日
弁駁書 平成29年 3月24日
2 判決の確定による一次審決の部分確定と再開後の審判の審理事項について
(1) 一次審決は、要するに、次の(A)及び(B)を理由として、「本件審判の請求は、成り立たない。」としたものである。
(A)本件特許の請求項1、12、16、及び請求項18のそれぞれに係る発明は、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1ないし8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、同法29条2項に該当しないから、原告主張の無効理由1(特許法29条2項)は、理由がない。
(B)本件出願の願書に添付した明細書(以下、図面を含めて「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許に係る請求項1ないし19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、同法36条4項1号に規定する要件(以下、「実施可能要件」という。)に適合し、同様に、請求項1ないし19の記載は、同条6項1号に規定する要件(以下、「サポート要件」という。)及び同項2号に規定する要件(以下、「明確性要件」という。)に適合するから、原告主張の無効理由2ないし4(同法36条4項1号、同条6項1号、同項2号)は、いずれも理由がない。
(2) 判決は、(1)で上述した一次審決の理由のうち(A)について主張された取消事由は理由があり、(B)について主張された取消事由は理由がないとして、一次審決のうち、(A)による無効審判が請求された請求項である本件特許の請求項1、12、16及び18に係る部分を取消すとともに審判請求人である原告からのその余の請求を棄却し、併せて、訴訟費用について、19分の15を原告負担、その余を被告負担としたものである。
この判決に対し、原告より上告受理申立てがなされ、被告より付帯上告受理申立てがなされたものの、上記のとおり上告受理申立不受理決定がなされ、付帯上告受理申立ても、この決定によりその効力を失った。
(3) このような経緯と判決の判示内容を踏まえれば、一次審決により終了した、取り消されていない部分(本件特許の請求項のうち、請求項1、12、16及び18以外のもの)についての無効審判は、審決取消訴訟の審理を経た後の判決の確定によって再開しないものとして確定している。
よって、再開後の審判の審理事項は、(1)で上述した一次審決の理由のうち(A)(審判請求における無効理由1。以下、「本件無効理由」という。)に係る事項に限定される。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の概要
訂正請求は、上述のとおり、再開後の審判においてなされたものであって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1-11〕〔12-15〕〔16-17〕〔18-19〕について、訂正することを求めるものであり、その訂正事項は、次のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、」と記載されているのを、「複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定され、該危険有害要因には、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記演算手段を使用して、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と,」と記載されているのを、「前記演算手段を使用して、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含む、危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と,」に訂正にする。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」と記載されているのを、「請求項1~4のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」と記載されているのを、「請求項1~4、6のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」に訂正する。
力 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」と記載されているのを、「請求項1~4、6~8のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」に訂正する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」と記載されているのを、「請求項1~4、6~10のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、」に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に「複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、」と記載されているのを、「複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定され、該危険有害要因には、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、」に訂正する。
ヶ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に「前記演算手段を使用して、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と、」と記載されているのを、「前記演算手段を使用して、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含む、危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と、」に訂正にする。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項16に「記憶手段が、複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを格納する格納ステップと、」と記載されているのを、「記憶手段が、複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定され、該危険有害要因には、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられている危険源評価マスターテーブルとを格納する格納ステップと、」に訂正する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項16に「前記演算手段が、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価データ生成ステップと、」と記載されているのを、「前記演算手段が、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大比の数値情報をさらに含む、危険源評価データを生成する危険源評価データ生成ステップと、」に訂正にする。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項18に「記憶手段に、複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを格納させる格納ステップと、」と記載されているのを、「記憶手段に、複数の工事名称、および、前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと、前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定され、該危険有害要因には、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられている危険源評価マスターテーブルとを格納させる格納ステップと、」に訂正する。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項18に「前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成させる危険源評価データ生成ステップと、」と記載されているのを、「前記危険源評価マスターテーブルを参照して、前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき、当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し、該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含む、危険源評価データを生成させる危険源評価データ生成ステップと、」に訂正にする。
2 訂正請求の可否について
(1)目的要件等について
ア 請求項〔1-11〕に係る訂正について
請求項1についての訂正(訂正事項1及び訂正事項2)は、「第1 2」において上述した本件無効理由の対象請求項とされていない訂正前の請求項5(以下、「訂正前請求項5」という。)に記載した内容をもって請求項1の個々の発明特定事項を減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項2乃至11についての訂正は、請求項1についての上記の訂正に伴って、訂正前の請求項5の削除(訂正事項3)、請求項1を引用する部分について請求項1と同様の発明特定事項の減縮(訂正事項1及び2)、及び訂正前請求項5を引用する部分の除外(訂正事項4、訂正事項5、訂正事項6及び訂正事項7)を行うものであり、全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 請求項〔12-15〕に係る訂正について
請求項12についての訂正(訂正事項8及び訂正事項9)は、訂正前請求項5に記載した内容をもって請求項12の個々の発明特定事項を減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項13~15についての訂正は、請求項12を引用する部分について請求項12と同様の発明特定事項の減縮(訂正事項8及び訂正事項9)を行うものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 請求項〔16-17〕に係る訂正について
請求項16についての訂正(訂正事項10及び訂正事項11)は、訂正前請求項5に記載した内容をもって請求項12の個々の発明特定事項を減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項17についての訂正は、請求項16を引用する部分について請求項16と同様の発明特定事項の減縮(訂正事項10及び訂正事項11)を行うものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
エ 請求項〔18-19〕に係る訂正について
請求項18についての訂正(訂正事項12及び訂正事項13)は、訂正前請求項5に記載した内容をもって請求項18の個々の発明特定事項を減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項19についての訂正は、請求項18を引用する部分について請求項18と同様の発明特定事項の減縮(訂正事項12及び訂正事項13)を行うものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
オ 以上のとおり、訂正請求は、訂正前請求項5に記載した内容により特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書きが規定する要件(目的要件)に適合するものであり、また、同条第2項及び第3項が規定する要件にも適合するものである。
(2)新規事項追加禁止要件、実質変更拡張禁止要件について
(1)に示したとおり、訂正請求は、訂正前請求項5に記載した内容により特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、これにより各請求項に追加された事項は、訂正前請求項5の記載から自明な事項であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件(新規事項追加禁止要件)に適合するものである。
また、同様の理由により、訂正請求による訂正後の各請求項が規定する範囲は、訂正前の請求項の記載が画する範囲に照らして拡張変更する内容となっていないことが明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件(実質変更拡張禁止要件)にも適合するものである。
(3)独立特許要件について
ア 本件特許の従属項(請求項2-11、13-15、17、19)は、一次審決により終了して判決の確定によって再開しないものとして確定した無効審判のみに係る請求項であり、再開した特許無効審判の請求がされていない請求項である。
そして、(1)ウで述べたとおり、訂正請求による従属項についての訂正も、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、これらの従属項についての訂正については、同条第9項において読み替えて準用される同法第126条第7項に規定する要件に適合するものであることを要する。
イ もっとも、「第6」において後述するとおり、本件特許の独立項(請求項1、12、16及び18)について、本件無効理由は理由がなく、これらの従属項であるアで述べた請求項2-11、13-15、17、19に係る発明が独立して特許を受けることができるものでないとすべき事情はないから、これらの従属項についての訂正は、いずれも特許法第134条の2第9項において読み替えて準用される同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)に適合するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、訂正請求は、訂正要件に適合するものである。よって、主文のとおり、これを認容する。
第3 平成29年3月24日付け弁駁書(以下、「本件弁駁書」という。)における本件無効理由の補正の拒否の決定について
1 本件弁駁書において、審判請求人は、訂正請求後の請求項1、12、16及び18も無効である旨を主張し、その際、訂正請求による訂正事項に対応する内容が甲第3号証に記載されている旨及びこの追加された訂正事項は当業者が容易に想到できたものである旨を主張する。
2 これらの主張は、本件無効理由において、訂正請求による訂正事項、すなわち、本件無効理由の対象請求項とされていなかった訂正前請求項5に記載した内容、に対応する具体的な事実の主張や証拠方法に係る主張を追加しようとするものであるから、無効審判請求の要旨を変更する補正に該当するものである。
すなわち、本件無効理由では、甲第3号証については、(A)「建設業における工事災害防止を図るシステムにおいて、対象工事・作業の評価データを生成すること」が甲2及び甲3(【請求項2】)に記載された公知技術である旨の立証、及び、(B)本件発明2の構成2Bに対応する構成2B’である「端末から、実施する工程の情報を通信回線を介して受信するホストコンピュータ」が、甲3の【0012】【0024】段落に記載されている旨の立証のためにのみ用いられていたところ、弁駁書では、これらに加えて、(C)甲第3号証の【0025】【0026】【表2】【0028】【表3】【0017】【表1】【0030】)によれば、甲第3号証には、訂正請求による訂正事項、すなわち、本件無効理由の対象請求項とされていなかった訂正前請求項5に記載した内容が記載されている旨の主張が追加されているのであり、これは、当初記載していなかった「特許を無効にする根拠となる事実」を追加的に主張立証することによって訂正請求による訂正後の特許が新たな無効理由を有することとなる旨を主張立証するものであるから、無効審判請求の要旨を変更する補正に該当するものである。
そこで、以下、この補正を許可することができるかを検討する。
3 まず、訂正請求は、本件無効理由の対象である請求項1、12、16及び18に本件無効理由の対象でない訂正前の請求項5の内容を追加し、それとともに訂正前の請求項5を削除するものである。つまり、訂正後の請求項1は、訂正前請求項5と同じ内容であるものの、形式上は、訂正前の請求項1を減縮する訂正となっており、また、訂正後の請求項12、16及び18については、訂正前の請求項12、16及び18に訂正前請求項5と同様の内容を追加して減縮する訂正となっている。
このことから、本件における本件無効理由の補正は、請求項1、請求項12、16及び18について減縮する訂正を行う訂正請求により本件無効理由を補正する必要が生じたものと認められる。
(請求項12、16及び18と請求項1とを区別して論ずる実益がないので、いずれも、訂正請求により本件無効理由を補正する必要が生じたものと取り扱うこととする。)
4 しかし、下記(1)(2)に照らせば、2の無効審判請求の要旨の変更により、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであるとはいうことはできない。
(1) 訂正前の請求項5については、本件無効審判での審理を経て無効不成立とした一次審決が判決においても是認され、原告からの上告受理申立てについての不受理決定を経て再開しないものとして確定している。訂正請求は、この判決の確定後になされたものであって、訂正前の請求項5について無効不成立とした一次審決を是認した判決の確定を踏まえてなされたものである。訂正後の請求項1、12、16及び18の内容は、訂正前のこれらの請求項に本件無効審判での審理を経て無効不成立が確定した訂正前の請求項5における限定事項の全てを付加するものであり、そのことに照らせば、訂正後の請求項1、12、16及び18について無効である旨の主張を追加することは、そのこと自体、確定した判決によって解決をみた紛争を、判決の基準時(取消訴訟の弁論終結時)以前の事情の後出しによって、事実上再開させようとするものであるといわざるを得ない。
なお、後述する侵害訴訟についても一次審決を是認した判決に対する上告受理申立の不受理決定がなされたのと同日である平成28年10月25日に上告受理申立ての不受理決定がなされて、既に判決が確定しており、平成29年3月30日に電話により請求人に確認したところ、判決の確定後に別件の紛争が生じた等の事情もない。
(2) 形式の上では訂正請求に起因する請求理由の補正にみえるものの、実質的にみると訂正請求を待たずに適時に提出可能であった主張については、これを訂正請求に対する弁駁書で追加すると、一般に、この主張を弁駁書の提出に至るまで請求人が行わないことによって、適時に主張が提出された場合には開始することができた主張の審理がこの弁駁書の提出に至るまで開始されない分の遅延を引き起こすとともに、このような遅延が生ずるか否かは、もっぱら請求人の選択に委ねられることになる。このことを踏まえれば、一般的な審理への協力義務の観点から、このような主張を訂正請求に対する弁駁書の段階で行おうする請求人においては、訂正請求を待たずに主張を提出することができなかった事情等を十分に説明することが求められるのであり、これが十分に説明されない限り、このような主張は、適時の審理が求められていれば引き起こされることがなかった遅延を不当に引き起こすものでないことが明らかなものとはいえないといわざるを得ない。
この観点から本件弁駁書でなされた主張を検討すると、本件訂正請求の内容は、訂正前の請求項5として、本件訂正請求前から審判請求人に明らかにされていたのであるから、本件訂正請求が形式上は請求項1、12、16及び18のそれぞれを減縮するものであるにしても、無効審判請求人としては、審判請求の段階で訂正前の請求項5を本件無効理由の対象請求項としたり、本件訂正請求を待たずに訂正前の請求項5を本件無効理由の対象とする新たな無効審判請求を行うことによって、本件弁駁書でなされた主張(訂正前の請求項5を本件無効理由の対象請求項とすれば主張することが可能であった事実や証拠の主張)についての審理を本件訂正請求や本件弁駁書と無関係に適時に求め、その審理を開始させることが可能であったものである。
そして、訂正請求を待たずに弁駁書における主張を提出することができなかった事情等が十分に説明されているともいえない。この点、無効審判請求人は、訂正前の請求項5については、同時期に係属していた侵害訴訟(東京地裁平成25年(ワ)第19768号、知財高裁平成26年(ネ)10102号)の対象請求項でなかった旨を主張する。しかし、訂正前の請求項12もこの侵害訴訟の対象請求項でなかったにもかかわらず、本件無効理由の対象請求項とされているし、そもそも、訂正前の請求項5は、本件無効理由以外の無効理由についての対象請求項とされているのであり、一次審決をした審判段階や判決をした審決取消訴訟段階において請求項5について何らの審理もされなかったわけではなく、訂正前の請求項5が侵害訴訟の対象請求項でなかったことは、審判請求段階で訂正前の請求項5を本件無効理由の対象とすることができなかったことを裏付ける事情となり得ない。
してみると、本件弁駁書でなされた主張は、適時の審理が求められていれば引き起こされることがなかった遅延を不当に引き起こすものでないことが明らかなものとはいえない。
5 以上のとおり、本件弁駁書における、本件訂正請求による訂正事項に対応する内容が甲第3号証に記載されている旨及びこの追加された訂正事項は当業者が容易に想到できたものである旨の主張による本件無効理由の補正は、無効審判請求の要旨を変更するものであり、また、これにより審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかであるとはいうことはできないから、これを許可することができない。
なお、本件弁駁書による本件無効理由の補正が許可されないことから、本件無効理由における甲第2号証と甲第3号証は、あくまで、これらに共通して記載された公知技術の立証のために示されたものであるものの、この立証に際して具体的に示された甲第3号証の【請求項2】の記載内容の認定に関連する部分については、本件弁駁書による本件無効理由の補正を許可するか否かにかかわらず、再開後の審判の審理における認定判断の対象とならざるを得ない。
そこで、合議体としては、この点について職権で審理し、さらに、甲第3号証の図6に何が記載されているかについても、関連して判断する必要が生じたことから、職権で審理した。その審理の結果は、後述「第6の1(4)ウ」において審決の理由として示したとおりである。
第4 本件無効理由、両当事者の主張
1 本件無効理由と請求人の主張
(1)本件無効理由と証拠方法
ア 本件無効理由
本件特許の請求項1に係る発明(本件発明1),請求項12に係る発明(本件発明2),請求項16に係る発明(本件発明3),及び請求項18に係る発明(本件発明4)は,甲第1号証(主引例)に記載された発明と,甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明と,甲第4号証ないし甲第8号証に記載された技術常識とに基づいて,出願前に当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
イ 証拠方法(甲第1号証ないし甲第14号証)
甲第1号証: 特開2001-350819号公報
甲第2号証: 特開昭61-49070号公報
甲第3号証: 特開平6-44211号公報
甲第4号証: 「土木工事積算基準マニュアル平成16年度版」
財団法人建設物価調査会 平成16年7月5日
甲第5号証: 「平成14年度版工事歩掛要覧<土木編上>」
財団法人経済調査会 平成14年6月30日
甲第6号証: 「平成14年度版新土木工事積算大系
工事工種歩掛対応表<一般土木編>」
財団法人経済調査会 平成14年8月30日
甲第7号証: 「新土木工事積算大系用語定義集」
財団法人経済調査会 平成9年10月20日
甲第8号証: 特開2001-236415号公報
甲第9号証: 平成22年12月20日付意見書
甲第10号証: 東京地方裁判所平成25年(ワ)第19768号
特許権侵害差止等請求事件の訴状
平成25年7月26日
甲第11号証: 同事件の被告第1準備書面
平成25年11月8日
甲第12号証: 同事件の原告第1準備書面
平成26年1月15日
甲第13号証: 同事件の被告第2準備書面
平成26年3月13日
甲第14号証: 同事件の原告第2準備書面
平成26年5月19日
(2)請求人の主張
ア 本件発明1について,甲第1号証には下記のとおり,本件発明1の構成要件1A,1B,1C,1D,1E,1Fに対応した構成1A’,1B’,1C’,1D’,1E’,1F’を備えた発明(以下,「甲1発明1」という。)が記載されている。
<甲1発明1>
1A’ 安全管理に関する情報が得られる建設工事の情報管理装置であって,
1B’ 事業区分から細別へと順次ツリー構造として構築されている工事体系データベースと,前記工事体系データベースの要素に関連付けられた安全管理に関する情報が規定されている管理情報データベースとが格納された記憶手段と,
1C’ 評価対象工事の工事名称を入力するキーボード等と,
1D’ 前記記憶手段に格納されている工事体系データベースを参照して,前記入力された評価対象工事の工事名称に基づき,前記工事名称の下位の作業項目を順次検索するキーワード管理部とを備え,
1E’ 前記キーワード管理部は,前記管理情報データベースを参照して,前記順次検索された下位の作業項目に基づき,前記順次検索された下位の作業項目に関連する安全管理に関する情報を検索する
1F’ 情報管理装置。
イ 甲1発明1の「情報管理装置」は,安全管理情報,ミス・ロス・改善情報などの安全管理に関する情報が得られるものであり,建設関連の会社を対象とし,かつ得られる情報は労働安全衛生マネージメントシステムの規格に沿った情報であるから,甲1発明1の1A’は本件発明1の構成要件1Aと一致する。
ウ 甲1発明1の構成1B’の「工事体系データベース」は,本件発明1の構成要件1Bの「歩掛マスターテーブル」と一致し,また,甲1発明1の構成1B’の「管理情報データベース」は,本件発明1の構成要件1Bの「危険源評価マスターテーブル」に一致する。
エ 甲第1号証に記載の情報管理装置では,「上位概念から下位概念へと検索」して管理情報を得ることができ,例えば,種別である「護岸工」が入力された場合,「護岸工」の下位の細別作業である「流用土盛土」及び「コンクリート打設」が検索され,さらにこれらに対応付けられた規格が検索される。ここで,「内訳データ」とは,ツリー構造のデータベースにおいて,任意の階層の任意の項目について,その一つ下位の階層の項目のことであるので,前記の例では,「護岸工」の下位の細別作業である「流用土盛土」及び「コンクリート打設」は「内訳データ」である。そして,前記定義によれば,「内訳データの生成」とは,下位の階層の項目が検索(抽出)されたことであるから,「流用土盛土」及び「コンクリート打設」が検索されたことは,「内訳データの生成」に該当する。
そうすると,構成1D’の「工事名称の下位の作業項目を順次検索する」ことは,構成要件1Dの「内訳データを生成」に該当するから,甲1発明1の構成1D’は本件発明1の構成要件1Dと一致する。
オ よって,甲1発明1と甲第4号証ないし甲第8号証に記載の技術常識とによれば,構成1A’,1B’,1C’,1D’,1F’は,それぞれ本件発明1の構成要件1A,1B,1C,1D,1Fと一致する。
カ そして,甲1発明1の構成1E’は,「評価データ」が生成されない点で本件発明1の構成要件1Eと相違するが,当該相違点は甲第2号証及び甲第3号証に記載された公知技術に基づいて容易に導き出される。
2 本件無効理由に対する被請求人の主張
(1)本件無効理由に対する答弁
ア 被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めている。
イ 証拠方法(乙第1号証ないし乙第5号証)
乙第1号証: 特開2013-228923号公開特許公報
(出願番号:特願2012-101054号)
特許庁 平成25年11月7日
乙第2号証: 情報処理試験第一種図解実践演習
日刊工業新聞社 平成9年10月20日
乙第3号証: カタログ(請求人の製品)
吉備システム株式会社 平成22年5月
乙第4号証: カタログ(請求人の製品)
吉備システム株式会社 平成25年3月2日
乙第5号証: マニュアル(請求人の製品)
吉備システム株式会社 平成25年3月2日
(2)被請求人の主張
ア 請求人は,甲1発明1の構成1A’~1F’を主張するがこれは誤りであり,甲第1号証からは以下のように甲1発明2が把握される。
<甲1発明2>
1AA’ 所望の管理情報を出力する建設工事の情報管理装置であって,
1BB’ 大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報であって,細別区分の各情報に代表作業用キーワードおよび当該代表作業で行う工事の規格が含まれ,さらに,当該情報は,原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報等の各種管理情報等を含むような情報,が格納されているデータ管理部と,
1CC’ 目的物と作業内容から構成されている代表作業用キーワードと,当該代表作業で行う工事の規格と,を入力する入力部と,
1DD’ 前記データ管理部を参照して,前記代表作業用キーワードと規格とを基にして,所望の管理情報を検索する代表作業用キーワード管理部と,
1FF’ からなる建設工事における情報管理装置。
イ 甲1発明1の安全管理情報の内容は「1輪車運転中,障害物によるバランスに注意」というものであり,これは,工事の安全に関する情報の1つではあるが単なるリスクの提示に過ぎず,「危険源の特定」,或いは「事故型分類の特定」もされておらず,「労働安全衛生マネージメントシステム」の管理する情報とは言えない。
よって,建設工事に関する多種多様な情報を出力し,その多様な情報に安全管理に関する情報があるのを考慮したとしても1AA’は,「汎用的な情報管理装置」であり,本件発明1の構成要件1Aの「労働安全衛生マネージメントシステム」とは相違する。
ウ 1BB’の「工事の規格が含まれ,さらに,当該情報は,原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報等の各種管理情報等を含むような情報,が格納されているデータ管理部」は,構成要件1Bの「危険情報が規定されている」という点では,「安全管理情報」と「危険情報」という点においては共通するものであり,この点においては一致するが,本件発明1の構成要件1Bの危険情報は「要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む」が,甲1発明2の1BB’は,危険有害要因や事故型分類というような「労働安全衛生マネージメントシステム」としてのリスクの分類については,一切記載がなくその示唆さえもないという点では大きく相違する。
また,甲1発明2の「データ管理部」が,仮に「歩掛マスターテーブル」に対応するとしても,そもそも,それとは別異に設けられた「危険源評価マスターテーブル」に対応するデータベースが甲1発明2には存在しない。
エ 甲1発明2の1DD’が,「代表作業用キーワード」と「規格」という「2つの検索ファクター」に基づき,「データ管理部」を検索するだけであるのに対し,本件発明1の構成要件1Dは,「工事名称」という「1つの検索ファクター」に基づき「歩掛マスターテーブル」を参照して,「評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データ」を生成する点で相違する。
オ 甲1発明2の1DD’が,「代表作業用キーワード」と「規格」という「2つの検索ファクター」に基づき,「データ管理部」を検索するだけなのに対し,本件発明1の構成要件1Eは,「内訳データ」に含まれる「各要素」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照して「危険有害要因および事故型分類」を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む「危険源評価データ」を生成する点,つまり単なる検索に留まらず,一定のデータを生成する点で大きく相違する。
カ 本件発明1の構成要件1Eは,内訳データの各要素という対象工事に含まれる,その下位概念の各要素といった,まとまった「複数の工程や規格」といった単位で,それら「複数の工程や規格」の危険有害要因および事故型分類を含む「危険源評価データ」を生成するといった構成であるのに対し,請求人が提示した甲1,甲3,または甲2のいずれであっても,「1つの工程や規格」にかかる「漠然としたリスク」を得る構成に過ぎない。このようなまとまりのある「各要素を含む内訳データ」を活用して,まとまった各要素に関連する「危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データ」を管理して労働安全衛生に資するといった構成には,仮に請求人が提示した甲1と,甲2また3を組み合わせることを動機付けることができたとしても,当業者が,本件発明1に想到することは非常に困難である。
第5 甲各号証の記載事項(下線は当審で付与した。)
1 甲第1号証
(1) 特許請求の範囲
「【請求項7】大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報がデータ管理部に格納されている建設工事の情報管理装置において,
キーワード,規格等,および修正データ等を入力する入力部と,
前記入力部において入力されたキーワードおよび規格等を解析するキーワード・規格解析部と,
解析されたキーワードによって事業区分に関する情報を検索する事業区分作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって工事区分に関する情報を検索する工事区分作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって工種に関する情報を検索する工種作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって種別に関する情報を検索する種別作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって代表作業に関する情報を検索する代表作業用キーワード管理部と,
前記各管理部によって検索される情報が格納されているデータ管理部と,
から構成されていることを特徴とする建設工事における情報管理装置。
【請求項9】前記代表作業用キーワード管理部によって検索された原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報は,積算されて出力部から出力されることを特徴とする請求項7または請求項8記載の建設工事における情報管理装置。
【請求項10】前記代表作業用キーワード管理部によって検索された原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報は,所望のものがキーワードに基づいて積算され,予算書,見積書,工程管理表,安全管理表,品質管理表の少なくとも一つが出力部から出力されることを特徴とする請求項7または請求項8記載の建設工事における情報管理装置。」
(2) 発明の詳細な説明
ア 「【発明の属する技術分野】【0001】本発明は,事業区分,工事区分,工種等が異なっても,同じ目的物に対する作業内容で対処できる建設工事における情報管理方法および情報管理装置に関するものである。本発明でいう「建設工事」は,「建築工事」および「土木工事」に関連する一切を含むものである。また,本発明は,さらに,工事の規模である大,中,小,あるいは規格等を適当に分けておくと,どのような事業区分で仕事をしている者であっても,所望の建設工事にかかる情報を簡単および迅速で,かつ蓄積された情報を得ることができる建設工事の情報管理方法および情報管理装置に関するものである。
【0002】本出願人は,異なる事業区分,工事区分,工種等の中であっても,同じ作業が多いことに着目し,作業の対象となる目的物と前記作業をどうするかが判る作業内容とから構成される代表作業用キーワードというものを考えた。すなわち,本出願人は,「何を(目的物)どうする(作業内容)」というキーワードに注目することにより,事業区分,工事区分,工種等が異なっても,前記キーワードにかかる工事の内容が同じであることに気付いた。」
イ 「【従来の技術】【0003】図10は従来行われている建設工事における情報の管理方法を説明するための図である。建設会社には,事業区分毎に,「部」または「事業部」が設けられている。図10において,たとえば,「河川事業部」,「港湾事業部」,「道路事業部」,「トンネル事業部」,「ビルディング事業部」等がある。前記事業部の下部には,たとえば,「築堤・護岸部」,「浚渫部」,「堤部」,「樋門・樋管部」がある。さらに,前記「築堤・護岸部」で扱う工事の種類である工種として「河川土工」があり,前記「河川土工」内に,工事の内容種別として「掘削工」,「護岸工」,…がある。
【0004】前記「掘削工」を細別すると,「土砂掘削」,「軟岩掘削」,「硬岩掘削」がある。また,前記「土砂掘削」には,工事規格として,大規模,中規模,小規模に別れている。さらに,前記「軟岩掘削」には,たとえば,規格が二通りある例が示されている。
【0005】会社の組織は,ツリー構造になっているのが普通であり,組織に基づいて情報が管理されている。…
【0006】建設業界は,談合またはそれに近い方法により入札が行われる場合が多いため,事業区分,工事区分,工種等が異なると,工事内容が略同じであっても,見積価格が異なる場合が多くあった。したがって,図10に示すような事業部制は,情報が他部門に流通しないだけでなく,自分の部門においても改善された情報の蓄積が少ない。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】【0007】しかし,これからは,市場経済であり,競争に勝残るためには,同じ社内の異なる部門の情報であっても,共有することにより,他社より優れた工事,利益を少しでも多くあげることができる工事が必要である。そのためには,社内において,できるだけ同じ情報を共有して,全体の情報を少なくすると共に有効に活用できるように蓄積する必要がある。
【0008】そこで,本出願人は,事業区分,工事区分,工種,細別等を作業内容や作業目的を分析することによって,事業区分が異なっても,全く同じ作業内容が非常に多いことに気付いた。図11は事業区分に基づく作業の細別を説明するための図である。図11において,たとえば,「河川」,「港湾」,「道路」における工事には,それぞれ「土砂掘削」,「軟岩掘削」,「硬岩掘削」,「流用土盛土」,「コンクリート打設」があり,作業内容が略同じである。作業内容で異なるのは,作業の規模が大きい場合と小さい場合,あるいは,特別な仕様や規格がある場合である。
【0009】本出願人は,前記作業内容と規模等に注目することで,情報を各部門で共有することができるだけでなく,情報の蓄積量を少なく,簡単かつ迅速に所望のデータを得られることに気付いた。また,本出願人は,蓄積情報をツリー状に構築しているにもかかわらず,キーワードの付けかたにより,ツリー状に構築された情報を下方から検索できるようにして,膨大な情報の中から,所望の情報を簡単および迅速で,かつ有効に活用できることに気付いた。また,前記情報は,ツリー状に構築されているため,必要に応じて,従来と同じように上位から順次検索することも可能である。
【0010】本出願人は,作業の対象となる「何を(目的物)どうする(作業内容)」,に注目した結果,「何をどうする」というキーワードで情報を検索することができることが判った。本出願人は,さらに,前記キーワードの「どうする」に対して,規格等(以下,本明細書では,大,中,小,の規模,施行地の形状,地質,含水量,面積的制約,振動,騒音,隣地条件,住民感情,使用材料の諸条件,汚染物質,美観,生態系,・・・を分類して体系化したものを施行条件または規格等と記載する。)を加味するだけで,事業区分,工事区分,工種等が異なっても,同じ作業内容で行えることに気付いた。
【0011】本発明は,従来の課題を解決するためのものであり,どのような事業区分で仕事をしている者であっても,所望の建設工事にかかる情報を簡単および迅速で,かつ有効利用ができる建設工事における情報管理方法および情報管理装置を提供することを目的とする。」
エ 「【発明の実施の形態】【0022】(第1発明)建設工事における情報管理は,たとえば,事業区分-工事区分-工種-種別-代表作業-工事規格のように,大事業区分から代表作業区分へと順次ツリー構造として構築されている。第1発明は,上記のように建設工事における情報がデータ管理部に格納されている建設工事の情報管理方法である。本出願人は,上記情報管理において,「何を(目的物)どうする(作業内容)」というキーワードに注目することにより,事業区分等が異なっても,情報としては同じものが使用できることに気付いた。また,前記キーワードの情報を蓄積することによって,次の建設工事を行う際に有効に利用することができる。
【0023】第1発明は,「何を(目的物)どうする(作業内容)」という代表作業用キーワードの他に,当該代表作業で行う工事の規格等を入力する。前記規格等には,大,中,小,の規模,施行地の形状,地質,含水量,面積的制約,振動,騒音,隣地条件,住民感情,使用材料の諸条件,汚染物質,美観,生態系,…等がある。前記代表作業用キーワードと規格等を基にして,代表作業用キーワード管理部が所望の情報を検索する。前記検索された情報は,データ管理部から出力される。本発明は,河川の工事,港湾の工事,道路の工事,トンネルの工事,あるいはビルディング,…の工事のいずれであっても,コンクリート打設は,同じであり,異なるとすれば,前記規格等によって異なるのみである。
【0024】(第2発明)第2発明の建設工事における情報管理方法において,前記代表作業用キーワードと規格等を基にして検索される情報は,原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報の内の少なくとも一つである。原価管理情報は,機械,人,材料(物)等直接工事にかかる費用に関する情報である。安全管理情報は,工事にかかる安全情報で,事故暦等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる。
【0030】(第7発明)第7発明の建設工事における情報管理装置は,たとえば,事業区分-工事区分-工種-種別-代表作業-工事規格のように,大事業区分から代表作業へと順次ツリー構造として構築されている情報がデータ管理部に格納されている。入力部は,各情報に関するキーワード,たとえば,事業区分作業用キーワード,工事区分作業用キーワード,工種作業用キーワード,種別作業用キーワード,代表作業用キーワード,あるいは原価管理キーワード,工程管理キーワード,安全管理キーワード,品質管理キーワード,ミス・ロス,改善キーワード,技術情報キーワード,規格等(たとえば,大,中,小の規模,施行地の形状,地質,含水量,面積的制約,振動,騒音,隣地条件,住民感情,使用材料の諸条件,汚染物質,美観,生態系等),および修正データ等を入力する。
【0031】キーワード・規格解析部は,前記入力部において入力された前記各キーワードおよび規格等をキーワード記憶部および規格記憶部に多数記憶されているキーワードを参照して,どこの区分に属するものであるかについて解析する。前記キーワード・規格解析部によって解析されたキーワードおよび規格等は,事業区分に関する情報を検索するものである場合,事業区分作業用キーワード管理部に送られる。前記解析されたキーワードおよび規格は,工事区分に関する情報を検索するものである場合,工事区分作業用キーワード管理部に送られる。
【0032】前記解析されたキーワードおよび規格は,工種に関する情報を検索するものである場合,工種作業用キーワード管理部に送られる。前記解析されたキーワードおよび規格は,種別に関する情報を検索するものである場合,種別作業用キーワード管理部に送られる。前記解析されたキーワードおよび規格は,代表作業に関する情報を検索するものである場合,代表作業用キーワード管理部に送られる。データ管理部には,前記各管理部によって検索される情報が格納されている。
【0033】キーワード・規格解析部は,「何を(目的物)どうする(作業内容)」というキーワードからなる代表作業用キーワードと規格を解析して,このキーワードに基づいてデータ管理部の情報を検索する。すなわち,第7発明は,キーワードによって最上位概念の事業区分から順次下位概念の代表作業まで情報を検索する必要がないため,迅速に情報を得ることができる。また,第7発明における情報の検索は,キーワード・規格解析部によって,代表作業以外に,どの工事区分,工種区分であっても,上位概念から検索するのではなく,所望の工事区分の情報を直接検索することができる。
【0036】(第9発明)第9発明の建設工事における情報管理装置は,どの事業区分の部署からもアクセスすることができ,「何を(目的物)どうする(作業内容)」というキーワードと規格等を入力することにより,前記代表作業用キーワード管理部によって検索された原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報を積算して出力部から出力する。第9発明は,前記キーワードと規格を入力することにより,所望の代表作業における各種情報の全てが迅速に得ることができる。
【0037】(第10発明)第10発明の建設工事における情報管理装置は,どの事業区分の部署からもアクセスすることができ,「何を(目的物)どうする(作業内容)」というキーワードと規格等を入力することにより,前記代表作業用キーワード管理部によって検索された原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善情報,その他施工技術情報に基づいた情報が積算され,表計算部,情報積算部,および見積書等作成部によって,予算書,見積書,工程管理表,安全管理表,品質管理表の少なくとも一つが出力部から出力する。予算書,見積書,工程管理表,安全管理表,品質管理表の作成は,従来の市販されているソフトウエアを使用することにより,簡単に得ることができる。」
オ 「【実 施 例】【0038】図1は本発明の一実施例で,コンクリート打設を代表作業用キーワードにした際の情報を説明するための図である。本発明は,図10における細別を代表作業用キーワードとすることにする。そして,図1は代表作業用キーワードの一つであるコンクリート打設について説明する。コンクリート打設には,「コンクリート打設にかかる原価管理情報」,「コンクリート打設にかかる安全管理情報」,「コンクリート打設にかかる品質管理情報」,「コンクリート打設にかかる工程管理情報」,「コンクリート打設にかかるミス・ロス・改善管理情報」,「コンクリート打設にかかるその他の施工技術管理情報」等がある。
【0039】前記各管理情報には,図10と同様に,規格等により分けられている。コンクリート打設の規格は,大規模,中規模,小規模の三つに分けられていると仮定する。たとえば,前記規模において,大規模はコンクリートの容積が30立米以上,中規模はコンクリートの容積が10立米から30立米未満,小規模はコンクリートの容積が10立米未満のものとする。また,規格等の場所には,原価が記載されている。
【0040】前記代表作業用キーワードには,コンクリート打設の他に,土砂掘削,軟岩掘削,硬岩掘削,…があるだけでなく,多くの細別の中にさらに多くの代表作業用キーワードが設けられている。
【0041】図2は本発明の実施例で,代表作業用キーワードと規格(大)で検索された情報の一例を説明するための図である。図3は本発明の実施例で,代表作業用キーワードと規格(小)で検索された情報の一例を説明するための図である。図2および図3は,代表作業用キーワード「コンクリート(何を)打設(どうする)」および規格(大規模)または規格(小規模)を基にして検索された情報の一例を示すものである。図2および図3において,検索された情報は,たとえば,原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善管理情報,およびその他の施工技術情報等からなっている。
【0042】原価管理情報について,図2および図3を比較すると,大規模のコンクリート部材打設に関する原価管理情報は,ポンプ車が1台必要であり,作業員が10人,コンクリートが500立米必要であることが記載されている。これに対して,小規模のコンクリート部材打設に関する原価管理情報は,一輪車が1台必要であり,作業員が5人,コンクリートが3立米必要であることが記載されている。
【0043】ポンプ車1台/1日50000円,人件費を一人20000円,コンクリート1立米10000円とすると,前記大規模のコンクリート打設には,50000円+20000円×10+500×10000円=525万円となる。コンクリート打設における1立米当たりの原価は,10500円となる。これに対して,前記小規模のコンクリート打設は,20000円×5+3×10000円=13万円となる。コンクリート打設おける1立米当たりの原価は,40000円を超えることになる。
【0044】図2および図3は説明のための例示であり,数値が必ずしも正確ではない。また,大規模コンクリート打設には,安全管理情報は,ポンプ車,コンクリートミキサー車,砂利運搬車の出入り等に関する安全を確保するために交通整理を行う管理人が必要になる。品質管理情報は,コンクリートを養生させる際に発生する熱を抑制する等の技術情報および品質管理情報が記載されている。さらに,コンクリートを養生するのに必要な費用も記載されている。
【0045】図2および図3に例示された工程管理情報は,ポンプ車の使用日数,時間等,作業時間等が記載されている。さらに,ミス・ロス・改善情報およびその他の施工技術情報が記載されている。これらの情報は,工事を行う度に少しずつ修正されることによって,代表作業にかかる各種情報が蓄積され,その後の作業に有効利用されることになる。【0046】図2および図3に記載された情報は,金額,物(人件費も含む),および日数(時間)等を考慮して積算することによって見積書あるいは予算書が作成できる。また,前記情報は,物の使用時間,作業時間等を積算することで,工程管理表が作成できる。たとえば,見積書の作成は,見積用のキーワードであることを認識できるようにしておけば,見積用のキーワードに記載されている費用を表計算ソフトによって積算することによって作成できる。
【0048】図4は会社の各部門が情報処理装置とネットワークによって接続されている状態を説明するための図である。各部門は,建設にかかる情報を上位概念から下位概念へと検索する以外に,代表作業用をキーワードとして入力することで,図2および図3に示されているような管理情報が直ちに得ることができる。建設会社の情報処理装置41は,たとえば,河川部門42,港湾部門43,道路部門44,トンネル部門45,およびビルディング部門46にネットワークを介して接続されている。そして,前記代表作業用キーワードは,「何が(目的物)どうする(作業内容)」という覚え易いキーワードから構成されているため,数多くの代表作業用キーワードが存在していても,情報の検索が容易である。
【0049】図5は本発明の一実施例を説明するためのブロック構成図である。図5において,入力部511は,代表作業用キーワード,作業の規格等,またはその他の情報等を入力するためのキーボード等から構成されている。キーワード・規格解析部512は,入力部511によって入力された情報が代表作業用キーワードであるか,あるいは規格等であるかを解析する。キーワード・規格解析部512は,入力された情報がキーワード記憶部513に登録されている事業区分作業用キーワード,工事区分作業用キーワード,工種作業用キーワード,種別作業用キーワード,あるいは代表作業用キーワードの中のいずれであるかを調べる。
【0050】次に,キーワード・規格解析部512は,入力部511から入力された情報が規格記憶部514に記憶されている規格であるか否かを調べる。キーワード・規格解析部512は,入力された情報が事業区分作業用キーワードであると判断した場合,入力されたキーワードを事業区分作業用キーワード管理部515に送る。前記事業区分作業用キーワード管理部515は,前記キーワードに基づいて事業区分用の情報をデータ管理部520から検索する。データ管理部520は,前記検索された事業区分作業用キーワードに基づいた情報を出力部521から出力させる。
【0051】キーワード・規格解析部512は,同様に,工事区分作業用キーワード,工種作業用キーワード,種別作業用キーワードを解析して,入力されたキーワードを工事区分作業用キーワード管理部516,工種作業用キーワード管理部517,種別作業用キーワード管理部518にそれぞれ送る。各キーワード管理部は,前記キーワードに基づいてそれぞれの情報をデータ管理部520から検索する。データ管理部520は,検索されたそれぞれのキーワードに基づいた情報を出力部521から出力させる。
【0052】さらに,キーワード・規格解析部512は,入力部511から入力された情報が代表作業用キーワードであり,かつ規格記憶部514に登録されている規格が入力されていると判断した場合,前記代表作業用キーワードと規格に関連するキーワードの全てを代表作業用キーワード管理部519に送る。代表作業用キーワード管理部519は,入力された代表作業用キーワードおよび規格に関連する情報をデータ管理部520から検索する。データ管理部520は,前記検索された代表作業用キーワードと規格に基づいた情報を出力部521から出力させる。
【0053】図6は本発明の一実施例で,キーワードと規格を入力することにより所望のデータが出力されるためのフローチャートが示されている。図7は図6のフローチャートに続くものであり,(a)-(a),および(b)-(b)(図示されていない)で接続されている。図6において,図5の入力部511によって,たとえば,代表作業用キーワードおよび必要により規格等が入力される(ステップ61)。キーワード・規格解析部512は,入力されたキーワードが代表作業用キーワードであるか否かをキーワード記憶部513を基にして調べる(ステップ62)。前記キーワード・規格解析部512は,次に,入力されたキーワードに付いている規格「大」があるか否かを規格記憶部514によって調べる(ステップ63)。
【0054】キーワード・規格解析部512は,代表作業用キーワードと規格「大」とを代表作業用キーワード管理部519に送る(ステップ64)。前記代表作業用キーワード管理部519は,データ管理部520に代表作業用キーワードと規格「大」がデータ管理部520にあるか否かを検索する(ステップ65)。データ管理部520は,出力部521に前記検索されたデータを出力するように命じる(ステップ66)。【0055】キーワード・規格解析部512は,ステップ62において,代表作業用キーワードでないと判断した場合,種別作業用キーワードであるか否かをキーワード記憶部513によって調べる(ステップ67)。次のステップ68からステップ70までは,種別作業用である点が異なるだけで同じ処理を行う。また,ステップ67において,種別作業用キーワードでない場合,工種作業用キーワード,工事区分キーワード,あるいは事業区分キーワードであるか否かを順次調べる(以降のステップは図示されていない)。
【0056】ステップ63において,キーワード・規格解析部512は,入力されたキーワードに規格「大」が付いていないと判断した場合,規格が「中」であるか否かを規格記憶部514によって調べる(ステップ71)。キーワード・規格解析部512は,代表作業用キーワードと規格「中」とを代表作業用キーワード管理部519に送る(ステップ72)。前記代表作業用キーワード管理部519は,データ管理部520に代表作業用キーワードと規格「中」がデータ管理部520にあるか否かを検索する(ステップ73)。データ管理部520は,出力部521に前記データを出力するように命じる(ステップ74)。
【0057】キーワード・規格解析部512は,ステップ71において,規格が「中」でないと判断した場合,規格が「小」であるか否かを規格記憶部514によって調べる(ステップ75)。次のステップ76からステップ77までは,規格「中」の処理と同じである。」
カ 「【0068】以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明は,前記実施例に限定されるものではない。そして,本発明は,特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ,種々の設計変更を行うことが可能である。本発明の実施例は,説明を判り易くするために,正確な記載でない所があるだけでなく,一例を挙げたに過ぎない。また,本実施例のブロック構成図は,詳細に内部を説明していないが,公知または周知の技術によって達成されるものである。
【0069】本実施例は,事業区分から種別までがツリー構造になっているものについて,ツリー構造の上位からも検索できると共に,「何を(目的物)どうする(作業内容)」をキーワードとして,直接検索ができるという説明をしたが,必ずしも,ツリー構造に情報を蓄積して置く必要がない。特に,建築工事と土木工事との体系は,異なっており,発注者の積算体系と受注者の積算や予算管理体系が異なっている。したがって,本発明は,「何を(目的物)どうする(作業内容)」をキーワードとする場合と,従来の検索方法を同時に使用できるようにしておくこともできる。
【0070】フローチャートに記載された技術は,当業者であれば,プログラムを組むことができる程度のものである。さらに,本実施例のブロック構成図およびフローチャートは,単なる一例を挙げたに過ぎず,他の方法および手段によっても達成できる。本発明の実施例は,工事の区分を事業区分,工事区分,工種区分,種別作業,代表作業等に分けて説明したが,必ずしも,このような言葉の区分に分ける必要がない。したがって,本発明は,工事区分等の言葉を代えて分けられた作業に対して権利が及ぶものである。」
キ 「【発明の効果】【0073】本発明によれば,「何を(目的物)どうする(作業内容)」から構成される代表作業用キーワードを用いて,実際に使用される作業の原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善管理情報,その他(施工技術情報)等を検索することができる。また,前記何を(目的物)どうする(作業内容)から構成される代表作業用キーワードに係る情報は,事業区分や工事区分が異なっていても共通するため,情報処理装置に蓄積する情報量が少なくて済む。「何を(目的物)どうする(作業内容)」から構成される代表作業用キーワードは,目的物と作業内容が入っているため,数が多くなっても容易に覚えることができる。
【0074】本発明によれば,「何を(目的物)どうする(作業内容)」から構成される代表作業用キーワードを用いることによって,ツリー状のデータの上位から検索する必要がなく,情報の検索を迅速に得ることができる。また,本発明によれば,情報がツリー状に構築されているので,必要に応じて,情報を上位概念のものから順次検索することも可能になっている。」
2 甲第2号証
(1) 「2.特許請求の範囲 (1)作業所の災害発生を予知する工事災害予知情報システムであって,工事の内容により決まる固定値情報を記憶する固定値記憶手段,安全診断を行って得られる工事進行現場の状況等の変動値情報を記憶する変動値記憶手段,災害に関する予知情報を登録する災害予知テーブル,及び前記固定値情報と変動値情報とをもとに災害危険度を計算し,災害危険度が高い場合には前記災害予知テーブルを参照して該当する災害に関する予知情報を出力する災害予知演算処理部を具備したことを特徴とする工事災害予知情報システム。」(特許請求の範囲,請求項1)
(2) 「固定値の特性要因としては,第2図図示の如く,工事区分や構造,延面積,階数(地下,地上),工期その他の要素により評価される工事の難易度,工事責任者やその作業所の過去の災害発生データ等により評価される災害経歴の有無,鉄骨建方工事や足場組払し工事等の危険工事工程の有無があり,また,変動値の特性要因としては,第3図図示の如く,事前計画の実施状況,安全施工サイクルの実施状況,安全管理状況の評価,是正状況の経歴評価がをある。
・・・(中略)・・・
この入力装置1に災害危険度を算出するための要因測定項目の評価値が入力されると,災害予知情報設定部2は,固定値を災害予知情報格納バッファ5の固定値バッファ51に格納し,変動値を災害予知情報格納バッファ5の変動値バッファ52に格納する。そして,災害危険度演算部3は,災害予知情報格納バッファ5の固定値バッファ51と変動値バッファ52に格納された各評価値をもとに過去の経験に基づいて算定された数値を使って危険度の配分計算を行うことによって,墜落,飛来,落下,クレーンその他の災害予知を行う。この結果に従って災害予知出力部4は,メッセージ・テーブル6,状況図テーブル7及び作業員ファイル8を参照し,災害予知のメッセージ,その発生状況図,作業員リストをディスプレイ9やブリンク10などの出力手段へ送出する。」(第7欄第1行目-第8欄第16行目)
3 甲第3号証
(1)本件無効理由において具体的に示された記載
「【請求項2】 過去に発生した複数の労働災害の各々について労働災害が発生した作業と前記労働災害の少なくとも概要及び発生要因とを対応させて記憶する記憶手段と,
建設工事でこれから実施する作業を表すデータを入力する入力手段と,
前記記憶手段に記憶された労働災害のうち入力手段によって入力された作業で発生した労働災害における前記発生要因の頻度を求め求めた頻度に応じて各発生要因に重みを付与する付与手段と,
発生要因と前記重みとに基づいて前記入力された工程または作業で発生した労働災害の少なくとも概要を重要度の高い労働災害から順に出力する出力手段と,
を有する建設工事の安全情報システム。」
(2)(1)の記載の解釈のために参照した記載
「【0017】また,記入欄36Cの側方には災害の発生要因の分類の一覧表36Dが示されている。本実施例では災害の発生要因を,心理的要因としてA1~A11 ,生理的要因としてB1~B10 ,作業動作・行動としてC1~C18 ,物自体としてD1~D13 ,安全施設としてE1~E13 ,作業環境としてF1~F13 ,作業に対する管理としてG1~G13 ,物に対する管理としてH1~H12 ,人に対する管理としてI1~I14 の計117種類に予め分類している。この117種類の発生要因は,さらに次の表1に示す中分類で区分されている。
【0018】【表1】
」
「【0025】以下、ホストコンピュータ12による安全情報一覧表42及び安全情報資料の作成処理について、図8のフローチャートを参照して説明すると、ステップ100では災害事例データベースに蓄積されている多数の災害事例の中から、入力された危険作業で過去に発生した災害事例を検索する。ステップ102では検索した災害事例における発生要因の頻度を求め頻度及び影響度の順位に基づいて発生要因の重みを中分類(表1参照)毎に算出する。」
【0026】以下、発生要因の重み計算の具体例を説明する。例えばある作業で過去に10件の災害(災害No.1~10)が発生しており、各災害の発生要因として次の表2に示すような要因コードが報告されたものとする。
【0027】【表2】
【0028】上記10件の災害事例において各中分類毎の頻度(回数)を求めた結果及び個々の影響度の順位は次の表3の通りである。各中分類毎に、影響度の順位に応じた得点を回数に応じて加算し、中分類毎の合計得点を演算する(表3参照)。
【0029】【表3】
【0030】表3に示す合計得点が発生要因の各中分類毎の重みである。なお、上記では影響度1位及び2位の発生要因に得点1.0 を与え、影響度3位及び4位の発生要因に得点0.8 を与え、影響度5位及び6位の発生要因に得点0.64 を与えて計算している。影響度の順位付けは作業管理者の主観に基づいて行われるため、必ずしも正確であるとは言い切れない。前記のように、1位と2位、3位と4位、5位と6位に同一の得点を与えることにより、作業者の主観が発生要因の重みに与える影響を小さくしている。
【0031】次のステップ104以降では、検索した災害事例を重要度に応じた順位付けを行って並べ換える。すなわち、ステップ104では、検索した複数の災害事例の各々について影響度の順位が1位の発生要因に注目し、影響度の順位1位の発生要因の重み順に災害事例を並べ換える。例えば表2に示した災害事例では、重みが大きい発生要因C1~8 が影響度1位となっている災害No.1,4,7,8のグループが重要度1位とされ、災害No.2,6のグループが重要度2位とされる。
【0032】次のステップ106では各グループに属する災害事例を、労働災害の種別、すなわち重大災害か休業災害かで分類し、重大災害の重要度が高くなるように順位付けする。例えば前述の重要度1位のグループでは災害No.1,4,8の重要度が高く、災害No.7の重要度が低くなるように順位付けする。さらにステップ108では、災害発生年月日の新しい順に順位付けする。このようにして、検索された災害事例は重要度の高い順に並べ換えされる。
【0033】ステップ110では並べ換えを行った災害事例を、例として図6に示すような安全情報一覧表42に編集する。図6に示す安全情報一覧表42では、「足場解体」、「リフト・エレベータ組立・解体」等の危険作業で過去に発生した災害事例が重要度の高い順に並んでおり、個々の災害事例に対し、表示欄42Aに工事の概要が、表示欄42Bに被災者に関する情報が、表示欄42Cに災害の概要が各々表示されている。」
「図6
」
4 甲第4号証
(1)「新土木工事積算大系とは,公共事業執行の各プロセスに密接に関連している契約・積算について,これに係わる制度・体系及び関連する基準図書類,さらには積算システムなどを総合的に整備・体系付けたものをいう。」(第30頁第6行-第8行)
(2) 「3)整備内容
(1)新土木工事積算大系では,工事工種の大系化を柱として,これを基本とした契約及び積算関連図書類の整備を行う。
(2)国土交通省所管の全土木工事を対象として,工種体系化を段階的に整備し,これが完了したものから,関連する図書類などの整備を行う。
(3)また,工種体系化に沿った入力形式とするともに,対話形式とするなどの新たな積算システム(「新土木工事積算システム」)の構築を行う。
【整備項目及び整備状況】
(1)工事工種の体系化
工事内容の細分化方法を工種の分類毎に標準的に設定し(図4・9参照),工事数量総括表及び積算設計書の使用用語,項目毎の表示単位も含めた記述方法の標準化を図る。」(第31頁第27行-第37行)
5 甲第5号証
(1) 「『新土木工事積算大系』
工事工種体系を用いた積算構築方法
1.工事工種体系を用いた積算の流れ
工事工種体系を用いた積算において,請負工事費に関する積算構成の骨格は,『体系ツリー図』の中から必要な工種を選択することにより決定され,また,取引項目(細別)ごとに必要な積算項目を示した「新土木工事積算大系工事工種歩掛対応表」(別冊)から施工歩掛を選択する。そして,選択した施工歩掛に対して「工事歩掛要覧」を用いて単価を算出していくこととなる。」(第前付-4頁第1行-第7行)
6 甲第6号証
(1)「3.工事工種歩掛対応表の解説
1)体系ツリー図
工事工種体系を用いた積算の基本的な流れは,体系ツリー図の中から施工計画に応じて必要な工種を選択することから始まります。
工事工種体系は,この場合工事目的物ごとに積算項目を含めて標準化したものの集合体です。そして工事工種体系のレベル4(細別)に対してそれに該当する歩掛が当て込んであり,その中から必要な歩掛を選択することとなります。これはモジュール内訳書と呼ばれているものですが,要はその中から必要な歩掛を選択して単価を計算します。さらに数量を掛けて順次積み上げ,あとは共通仮設費,現場管理費,一般管理費を算出して,発注者側で言えば予定価格,受注者側で言えば入札価格を算出していくという手順になります。」(第前-4頁第1行-第12行)
(2)「5)歩掛対応表の位置付け
レベル4を選択し,発注者側,受注者側の立場から,どういった費用内容が含まれるかを確認するのために「新土木工事積算大系用語定義集」が使われます。
・・・(中略)・・・
工事工種体系と歩掛をつなぐ役割として,平成14年版「新土木工事積算大系工事工種歩掛対応表」があります。
・・・(中略)・・・
それでは歩掛対応表の例,「土砂掘削」で説明します。この土砂掘削は,体系ツリー図で選択した結果のレベル4の名称を示しています。その土砂掘削の右下のところに,用語定義集掲載頁があります。これが土砂掘削に含まれる費用内容とか,場合によっては図とか,どの体系ツリー図に使われているのかを明確にしているもので,用語定義集の記載頁とあわせて記述してあります。
この土砂掘削が持っている単位を示したものが総括表単位と積算用単位です。体系ツリー図と一致しております。
次にその下の表に,用語の定義があります。ここに先ほどの用語定義集に示される費用内容,計上すべき費用項目を示しております。
・・・(中略)・・・
どれを選択すればいいのかは,適用範囲とか,例えば施工数量に応じて選択する必要があります。
・・・(中略)・・・
それから,頁,表番号の欄の意味は,この歩掛が工事歩掛要覧の何頁の何の表番号の歩掛かをわかりやすく示しております。
それからもう1点,表の中の単位は歩掛の単位です。ただし工事歩掛要覧のところでは例えば土工であればバックホウ掘削積込は100m3と書くべきなのですが,ここでは便宜的に,基本単位のm3で示しております。」(第前-9頁第21行-第前-10頁第32行)
7 甲第7号証
甲第7号証は,「新土木工事積算大系」の用語を定義した用語定義集である。
8 甲第8号証
(1) 「【0002】【従来の技術】土木工事を行う際には,発注者が工事内容を業者へ説明し,入札競争を行い,落札した業者が工事を施工する,という段階を踏む。この段階において,入札を行うには工事費用の算出が不可欠であり,コンピュータ等で構成した積算システムを用いて自動的に工事費用を算出する。ここに,積算システムとは,各種の工事情報を入力することにより自動的に工事費用を計算するシステムをいう。」
(2) 「【0004】ステップS101…入力必須項目(システムで計算に使用する項目。例えば,単価を使用する年月,後述の歩掛を使用する年月)を入力する。
ステップS102…鏡(カガミ・工事の概要の表示部分であり,システムで計算に使用しない項目。例えば,工事目的)を入力する。
注記:ここまでが,積算を行うのに必要な初期設定項目の入力である。
ステップS103…事業区分・工事区分(例えば,道路の新設・改築)を設定する。
ステップS104…工種体系(例えば,道路改良→道路土工→掘削工→土砂掘削)を選択する。ここに,工種体系はツリー状になっているため,上から順に選択すると,前記例示の流れになる。
【0005】ステップS105…次に説明する「歩掛」(ブガカリ)の選定条件を入力する。
ステップS106…歩掛条件を入力する。
注記:ステップS106において,他の歩掛を選択する場合には,ステップS104またはステップS103に戻って作業を繰り返す。ステップS106の条件入力内容が確定すると(入力画面でOKを押下すると),計算が瞬時に行われる。このステップS106が「単価計算」に該当する。この単価計算には,「直接工事費の積み上げ」,間接費(例えば,共通仮設費)の計算を含む。」
(3) 「【0007】(2)歩掛の説明
次に,前述の「歩掛」について説明する。前記単価計算に使用するデータは,「歩掛」という単位で提供する。歩掛は,単価計算を行なう最小限の構成であり一つの歩掛は,図6に示すように,単価表,条件,引継から構成する。単価表とは,歩掛が使用する構成を定義したものである。構成の内訳には,材料費・労務費・機械損料等を用いる。
【0008】条件とは,単価表で使用する数量,単価,文字を決めるための設問と回答を記述したものである。単価計算時の条件入力を行う際には,上記の設問に対する回答を選択することになる。例えば,或る歩掛において,予め,「A工法を選択するとネジを100個使用する」,「B工法を選択するとネジを30個使用する」と決まっていたと仮定する。その歩掛でネジの個数を算出する為に,条件入力においては,ネジの個数を直接数値入力させずに,工法がAかBかを選択させる。条件入力を担当する者の作業量を軽減するためである。」
第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1
「第2」において上述したとおり、訂正請求は認容されたから、本件特許の特許請求の範囲は、訂正請求に係る訂正特許請求の範囲のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、次のとおりのものである。(項番は、当審において付与した。)
A 労働安全衛生マネージメントシステムであって,
B 複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと,前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定され、該危険有害要因には、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と,
C 少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と,
D 演算手段を使用して,前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成する内訳データ生成手段と,
E 前記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含む、危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と,
F を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
(2)甲第1号証に記載された発明等
ア 「第3 1」に示した甲第1号証の記載によれば、甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。 (1次審決のとおり。判決も、1次審決の甲1発明3の認定を誤りとしていない。)
<甲1発明3>
「大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報がデータ管理部に格納されている建設工事の情報管理装置において,
キーワード,規格を入力する入力部と,
前記入力部において入力されたキーワードおよび規格等を解析するキーワード・規格解析部と,
解析されたキーワードによって事業区分に関する情報を検索する事業区分作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって工事区分に関する情報を検索する工事区分作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって工種に関する情報を検索する工種作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって種別に関する情報を検索する種別作業用キーワード管理部と,
解析されたキーワードによって代表作業に関する情報を検索する代表作業用キーワード管理部と,
前記各キーワード管理部によって検索される情報が格納されているデータ管理部と,
前記各キーワード管理部によって検索される情報を出力させる出力部と,から構成され,
入力されたキーワードが代表作業用キーワード(細別)と規格である場合には,前記代表作業用キーワード管理部は,原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善管理情報,およびその他の施工技術情報等からなる管理情報をデータ管理部から検索するものであり,
前記安全管理情報は,工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる情報であり,“ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導する管理人 1”や“1輪車運転中,障害物によるバランスに注意”等の情報である,
建設工事における情報管理装置。」
イ また、甲第1号証には,次のような開示があることが認められる。(判決の説示を参考にした。)
従来,建設会社では,事業区分ごとに「部」又は「事業部」が設けられ,それぞれの組織において工事区分,工種,種別,細別,規格等の情報をツリー状に構築して管理されていたため,同じ作業内容に関する情報であっても事業区分ごとに別々に管理され,情報が共有されていなかったが,建設会社が今後,市場で競争に勝ち残るためには,他社より優れた工事を行い,利益を少しでも多くあげることが必要であり,そのためには,社内において,異なる部門の情報であっても,できるだけ同じ情報を共有して,全体の情報を少なくするとともに有効に活用できるように蓄積する必要がある(段落【0003】ないし【0007】)。
甲第1号証に記載された発明は、どのような事業区分で仕事をしている者であっても,所望の建設工事に係る情報を簡単及び迅速に,かつ有効利用ができる建設工事における情報管理装置を提供することを目的とし(段落【0011】),建設会社の社内において大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報について,代表作業用キーワードを用いて作業の原価管理情報,安全管理情報,品質管理情報,工程管理情報,ミス・ロス・改善管理情報,及びその他の施工技術情報等を検索することができる構成としたものである(段落【0030】,【0036】ないし【0041】,【0053】,【0073】)。
(3)対比(判決の説示を参考にした。)
ア 本件発明1の「工事名称」と「要素」について
(ア) 本件発明1の「複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブル」にいう「工事名称」とは,本件出願の優先日当時,既に存在していた建設工事積算システム(甲第4号証乃至甲第8号証)で使用されていた工事工種体系の「体系ツリー図」における「工事区分」,「工種」,「種別」,「細別」等の具体的な名称のいずれかをいう。
これに対し、甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報」も、甲第1号証の図10において、「事業区分」,「工事区分」,「工種」,「種別」,「細別」及び「工事の規格」の各項目が体系的に分類され,各項目ごとに具体的な名称が例示されていることを前提とするものであるところ、この各項目の分類も、本件出願の優先日当時,既に存在していた建設工事積算システム(甲第4号証乃至甲第8号証)で使用されていた工事工種体系の「体系ツリー図」と同種のものといえるから,図10の上記各項目に例示された具体的な名称は,本件発明1の「工事名称」に該当するものと認められる。
(イ) 本件発明1の「工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素」とは,体系ツリー図上で「工事名称」に紐付けられたものであれば,「関連付けられた」ものといえるから,当該「工事名称」に紐付けられた「工種」,「種別」,「細別」,「規格」等の各項目及びそれらの項目に紐付けられた作業工程,作業内容,標準単価等を含むものであり、「工事名称」からみて体系ツリー図の「一つ下位の項目」のものに限らず,その下位のものや,更にその下位のもの等も含むものと解される。これに対し、甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報」の前提となる甲第1号証の図10においては、「工事区分」に関する情報(例えば,「築堤・護岸」)は,その上位の項目の「事業区分」に関する情報(例えば,「河川」)に紐付けられているから,「事業区分」に関する情報を「工事名称」とみた場合には,「工事区分」に関する情報は当該「工事名称」に関連付けられた「要素」(本件発明1の「要素」)に該当し,同様に,「工種」に関する情報,「種別」に関する情報,「細別」に関する情報及び「規格」に関する情報は,それぞれその上位にある「工事区分」に関する情報,「工種」に関する情報,「種別」に関する情報及び「細別」に関する情報を「工事名称」とみた場合,当該「工事名称」に関連付けられた「要素」(本件発明1の「要素」)に該当するものと認められる。
イ 本件発明の「歩掛マスターテーブル」について
甲1の記載事項(段落【0039】,【0042】,【0043】,【0046】,図2)によれば,「代表作業用キーワード(細別)」及び各「規格」によって検索された「原価管理情報」に記載されているポンプ車の台数,作業員の数及びコンクリートの量に基づき,具体的な原価の額(段落【0043】)を算出し,それらの金額,物(人件費も含む)及び日数等を考慮して積算することによって見積書あるいは予算書を作成でき(段落【0046】)る。このことから、甲1発明3の「データ管理部」には,上記ポンプ車の台数,作業員の数及びコンクリートの量等に対応する「歩掛」に係る情報が格納されている。
そして、甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報」及び「歩掛」に係る情報は,本件発明1の「複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブル」に相当するから、本件発明1の「歩掛マスターテーブル」は、一致点である。
ウ 本件発明の「危険源評価マスターテーブル」について
(ア) 特許請求の範囲の文言上、「危険源評価マスターテーブル」が規定する「前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報」について、「事故型分類」に係る「分類」の方式や態様は規定されていないものの、本件明細書には,「事故型分類」に関し,「事故型分類データ(これは,各危険有害要因に対応する個別リスクに相当する)」(段落【0007】),「有害要因(通路,岩石など)およびそれに関連付けられた事故型分類(つまずき,切れなど)」(段落【0040】,図9),「「その他:切れ,こすれ」及び「通路:つまずき」という有害要因(起因物)及びその事故型分類」(段落【0041】,図10)との記載があり、「事故型分類」とは,「危険有害要因」に対応して発生し得る事故の内容を意味するものと解される。
これに対して、甲第1号証には、「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」について、これが「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる」情報であり(甲1の段落【0024】),例えば,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」で「規格」が「大」の場合は,「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導する管理人 1」であり,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」で「規格」が「小」の場合は,「1輪車運転中,障害物によるバランスに注意」である(甲1の段落【0041】,【0044】,図2及び3)旨が記載されている。そして、このうち、「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導する管理人 1」とは,「大規模コンクリート打設」には,「ポンプ車,コンクリートミキサー車,砂利運搬車の出入り等に関する安全を確保するために交通整理を行う管理人が必要になる。」(甲1の段落【0044】)というものであり,「ポンプ車等車の出入り」という「危険有害要因」に対応して発生し得る交通事故(「事故型分類」)に対する予防策として交通整理を行う管理人が必要であることを示したものといえ、また、「1輪車運転中,障害物によるバランスに注意」という注意事項は,「障害物」という「危険有害要因」に対応して「1輪車運転中に障害物によってバランスを崩すことによる事故」(「事故型分類」)が発生し得ることを示したものといえるから,「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる」情報である「安全管理情報」として例示されたものは、いずれも、本件発明1の「危険有害要因および事故型分類を含む危険情報」に該当するものであると認められる。
そして,甲1発明3の「データ管理部」は、「原価管理情報」とともにこのような「安全管理情報」を、甲1の図1ないし図3に示すように,いずれも「代表作業用キーワード(細別)」(「コンクリート打設」)及びその各「規格」(「大」,「中」,「小」)ごとに関連付けられて格納されていることが認められ,「安全管理情報」の格納の態様は,「工事名称」(「代表作業用キーワード(細別)」)に関連付けられた「要素」(「規格」)に関連付けられたものといえる。
(イ) もっとも、本件発明1では、「要素」に「危険有害要因」が「関連付け」られ、かつ、その「危険有害要因」に「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」が「関連付け」られているところ、甲第1号証の「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導する管理人 1」、「1輪車運転中,障害物によるバランスに注意」は、あくまで、「コンクリート打設」という「代表作業用キーワード(細別)」に対応する予防策や注意事項を、「簡単及び迅速」(甲第1号証【0003】)に得られる「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる」情報(「安全管理情報」)として「規格」毎に示すものにすぎないから、甲第1号証の「安全管理情報」として例示された予防策や注意事項から、「要素」である「規格」に「関連付け」られた「危険有害要因及び事故型分類を含む危険情報」を認定するにしても、「危険有害要因及び事故型分類を含む危険情報」のうちの「危険有害要因」に「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」を認定することはできない。
さらに、そもそも、判決の論旨を踏まえた(ア)の論旨は、「危険有害要因及び事故型分類を含む危険情報」のうちの「危険有害要因」が本件発明1の「要素」に対応する「規格」に「関連付け」られている趣旨を含んでおらず、甲第1号証において「安全管理情報」として例示された予防策や注意事項に含まれた「危険有害要因」は、「規格」ではなく、本件発明1の「工事名称」に対応する「代表作業用キーワード(細別)」に関連付けられている。
すなわち、甲第1号証では、「コンクリート打設」の「規格」が「大規模、中規模、小規模」の三つに分けられていると仮定し(段落【0039】)、その上で、「規格」が「大」の場合にポンプ車が1台必要であり、「規格」が小である場合に一輪車が1台必要である旨を明示している(段落【0042】、図2、図3)。そして、「規格」が「中」の場合は、明示されていないところ、段落【0039】【0042】に例示された「大規模、中規模、小規模」についての仮定に係る記載によれば、このことは、「規格」が「中」の場合に対応する「中規模」においては、「一輪車」を用いないことではなく、「ポンプ車」1台を要する「大規模」と異なり「ポンプ車」を用いないことを示しているのであり、換言すれば、一台乃至複数台の「一輪車」が用いられ得ることを暗示しているものである。そして、一輪車が用いられ得るのであれば、「規格」が「小」の場合と同様に、その安全管理情報として「コンクリート打設」の作業における「一輪車」運転中の「障害物」という「危険有害要因」に対応した予防策乃至注意事項が示されることを要することになる。このように、甲第1号証の「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」であって「規格」が「小」の場合の「安全管理情報」として例示された注意事項において示された「危険有害要因」(「コンクリート打設」の作業における「一輪車」運転中の「障害物」)は、「規格」(「小」)に対応したものとはなっておらず、「代表作業用キーワード(細別)」(「コンクリート打設」)に対応したものとなっている。同様に、「規格」が「大」の場合よりもさらに大規模な工事を想定した「規格」において「ポンプ車」を用いる場合においても、「ポンプ車等車の出入り」という「危険有害要因」を含む何らかの予防策が必要となることは明らかであるから、甲第1号証で例示された予防策に含まれる「危険有害要因」も、「規格」ではなく「代表作業用キーワード(細別)」に対応したものとなっている。このように、甲第1号証において「安全管理情報」として例示された予防策や注意事項に含まれる「危険有害要因」は、いずれも、「要素」に対応する「規格」ではなく「工事名称」に対応する「代表作業用キーワード(細別)」に関連付けられている。
以上のとおり、甲第1号証は、本件発明1における、「危険有害要因及び事故型分類を含む危険情報」のうちの「危険有害要因」に「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」に対応するものを開示するものでないし、さらには、「工事名称」ではなく「要素」に「関連付け」られた「危険有害要因」にさらに「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」に対応するものを開示するものでもない。
(ウ) してみると、甲1発明3の「データ管理部」は、これに格納された「前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報」のうちの「危険有害要因」に「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、及び重大性の数値情報」を含むものでないものの、その点を除けば、本件発明1の「前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブル」に該当するものが格納されているものと認められる。
エ 本件発明の「内訳データ生成手段」と「危険源評価データ生成手段」について
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の文言によれば,「内訳データ生成手段」によって、「前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブル」を参照して,「前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称」に基づいて「前記評価対象工事に含まれる各要素を含む」データである「内訳データ」を生成し、「危険源評価データ生成手段」によって、「内訳データに含まれる各要素」に基づいて,「当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類」を抽出するものであるが、「内訳データ」の形式や態様は特定されていない。
これに対して、甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「大事業区分から細別区分へと順次ツリー構造として構築されている情報」及び「歩掛」に係る情報は、本件発明1の「複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブル」に相当し、また、甲1発明3の「データ管理部」には,「危険有害要因」が「発生可能性の数値情報、及び重大性の数値情報」に関連付けられたものでないことを除いて、「前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブル」が格納されており、甲1発明3では、入力された評価対象工事の情報に含まれる要素である「規格」に基づき、危険源評価マスターテーブルを参照し、「当該要素に関連する危険有害要因及び事故型分類を抽出」しているものと認められる。もっとも、甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」は、「代表作業用キーワード(細別)」(「工事名称」)に関連付けられた「規格」(「要素」)に関連付けられて格納されているから、「所望のデータ」として具体的な「安全管理情報」を出力するためには、「規格」が特定されなければならないところ、甲第1号証の【0053】の記載によれば、「所望のデータ」が出力されるために「代表作業用キーワード」の入力は必須であるが、「規格」の入力は必須とはされていないと理解できるから、そうすると、甲1において、「代表作業用キーワード」のみを入力して,「安全管理情報」を出力する場合には、「代表作業用キーワード」に基づいて、当該「代表作業用キーワード」に関連付けられた「規格」の情報が読み出され、当該情報に基づいて「安全管理情報」が出力されていることを理解することができる。
以上によれば、「前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称」である「代表作業用キーワード」に基づいて,甲1発明3の「歩掛マスターテーブル」から読み出された,「前記評価対象工事に含まれる要素」である「規格」に係るデータは、本件発明1の「内訳データ」に相当するものであり、甲1発明3には、この情報を読み出す手段としての本件発明1の「内訳データ生成手段」に相当する構成が存在するととともに、「該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含む、危険源評価データ」を生成するものでない点を除けば、本件発明1の「危険源評価データ生成手段」に対応する構成が存在するものと認められる。
オ 以上によれば、本件訂正発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
労働安全衛生マネージメントシステムであって,
複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと,前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と,
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と,
演算手段を使用して,前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成する内訳データ生成手段と,
前記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と,
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
カ そして、次の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)構成Bの「危険源評価マスターテーブル」について、本件発明1では、「前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報」のうちの「危険有害要因」に関連付けられた「発生可能性の数値情報、及び重大性の数値情報」を含むのに対し、引用発明では、そうではない点
(相違点2)構成Eの危険源評価データ生成手段が生成する危険源評価データについて、本件発明1では、抽出した危険有害要因および事故型分類を含むものであって、前記発生可能性の数値情報、および前記重大性の数値情報をさらに含むものであるのに対し、引用発明では、そうではない点
(4)相違点の判断
相違点1と相違点2は、相互に関連するので、まとめて検討する。
ア 「(3)ウ(イ)」において上述したとおり、本件発明1の「危険有害要因および事故型分類を含む危険情報」に相当する甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」は、「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導する管理人 1」、「1輪車運転中,障害物によるバランスに注意」という、あくまで、「コンクリート打設」という「代表作業用キーワード(細別)」に対応する予防策や注意事項を、「簡単及び迅速」(甲第1号証【0003】)に得られる「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事を次に行う場合に参考になる」情報(「安全管理情報」)として「規格」毎に示すものであって、「簡単及び迅速」に「同じ工事を次に行う場合の参考になる情報」を示すという課題に対する解決手段として完結しているから、これに、さらに、発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を「危険有害要因」と関連付けて「規格」の「安全管理情報」として含むものとすることに合理性はなく、そのようにすべき根拠は見当たらない。
しかも、「(3)ウ(イ)」において上述したとおり、「(3)ウ(ア)」における認定の論旨と甲第1号証の記載内容を前提とすれば、甲第1号証において「安全管理情報」として例示された予防策や注意事項に含まれる「危険有害要因」は、「要素」に対応する「規格」ではなく「工事名称」に対応する「代表作業用キーワード(細別)」に関連付けられているのであって、発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を「危険有害要因」と関連付けて「規格」の「安全管理情報」として示すためには、予防策や注意事項に含まれた「危険有害要因」を「代表作業用キーワード(細別)」に関連付けられたものから敢えて「規格」に関連付けられたものへと変更する必要が生ずることになる。このことからしても、発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を「危険有害要因」と関連付けて「規格」の「安全管理情報」として含むものとすることに合理性はないのであって、そのようにすべき根拠は見当たらない。よって、甲1発明3の「安全管理情報」に含まれる「危険有害要因」を「工事名称」に対応する「代表作業用キーワード(細別)」ではなく「要素」に対応する「規格」に関連付けられたものに変更したり、「危険有害要因」に「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」を含むものへと変更したりすることが動機付けられると認定すべき根拠はない。
以上のとおり、いずれにしろ、発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を「危険有害要因」と関連付けて「規格」の「安全管理情報」として含むものとすることに合理性はなく、そのようにすべき根拠は見当たらない。
イ 仮に、甲1発明3の「安全管理情報」に含まれる「危険有害要因」を「工事名称」に対応する「代表作業用キーワード(細別)」ではなく「要素」に対応する「規格」に関連付けられたものに変更し、さらに、「危険有害要因」に「関連付け」られた「発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報」を含むものへと変更することについて、甲1発明3と甲第3号証記載の技術との組合せが動機付けられるとしても、このような変更が可能であることを示す証拠は見当たらない。
甲第2号証と甲第3号証は、いずれも、「建設業における工事災害防止を図るシステムにおいて、対象工事・作業の評価データを生成すること」が公知技術であることの立証として示されたものにすぎず、また、甲第4号証~甲第8号証も、ここでの相違点の判断と関わらない周知事項等性の立証のためのものにすぎないのであり、いずれも、甲第1号証の「安全管理情報」についてのこのような変更が可能であることを示すものではない。
ウ この点、甲第3号証は、あくまで、数値情報について何ら記載がない甲第2号証とともに数値情報とは無関係の公知技術の立証のために示されたものであるものの、本件無効理由において具体的に示された甲第3号証の「【請求項2】」の記載(「第5 3(1)」)においては、「過去に発生した複数の労働災害の各々について労働災害が発生した作業と前記労働災害の少なくとも概要及び発生要因とを対応させて記憶する記憶手段」を有し、この「記憶手段」に「記憶された労働災害のうち・・入力された作業で発生した労働災害」における「発生要因の頻度を求め求めた頻度に応じて各発生要因に重みを付与」する旨及び「発生要因と重みに基づいて・・・重要度の高い労働災害から順に出力する」旨が示されている。
そこで、このことを踏まえて、関連する記載(「第5 3(2)」)をも考慮して、甲第3号証の記載内容を精査したところ、下記(ア)~(エ)に示すとおり、甲第3号証の記載を根拠として、甲1発明3の「安全管理情報」を「危険有害要因」に関連付けられた発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を示すものへと変形することが容易想到であるということはできない。
(ア) まず、甲第3号証における「頻度」は、「記憶手段」(記憶装置)に蓄積された「災害事例データベース」における災害事例を検索した際に求められるものである(甲第3号証、【0025】)から、本件発明における(「記憶手段」に格納された)「危険源評価マスターテーブル」のようなテーブルにおいて、これを参照するに先立って規定しておくことができない性質の情報である。
よって、「頻度」が本件発明の構成B及び構成Eの「発生可能性の数値情報」に該当するかのようにみえても、これを根拠として、本件発明の構成Bの「発生可能性の数値情報」を導くことはできない。
同様に、頻度に応じて付与される「重み」や「重要度」についても、「重み」となる「合計得点」の算出が「頻度」のみならずこの「影響度の順位」にも基づいて行われる(甲第3号証【0025】~【0030】)としても、「頻度」に基づくものである以上、本件発明における(「記憶手段」に格納された)「危険源評価マスターテーブル」のようなテーブルにおいて、これを参照するに先立って規定しておくことができない性質の情報であるから、これを根拠として、本件発明の構成Bの「発生可能性」と「重大性」のいずれの「数値情報」をも導くことはできない。
(イ) また、甲第3号証は、検索した複数の災害事例につき「重要度に応じた順位付け」を行って並べ換え、その際、「影響度の順位が1位の発生要因」の「重み」順に災害事例を並べ換え、さらに、重大災害の重要度が高くなるように順位付けをした上で、検索された災害事例を重要度の高い順に並べ換え、並べ換えを行った災害事例を安全情報一覧表42に編集するものであり(甲第3号証【0031】~【0033】)、ここでいう、「重み(合計得点)」、「重要度」、「影響度の順位」のいずれかが本件発明の構成B及び構成Eの「重大性の数値情報」に該当するかのようにみえなくもない。
しかし、このうち、「重み」となる「合計得点」から、構成Bの「重大性の数値情報」を導くことができないことは上述してたとおりであるし、「重大度」と「影響度の順位」も、(「安全情報一覧表42」が本件発明の「危険源評価データ」に該当する構成であると仮定しても)、安全情報一覧表42の各災害事例を並べ換えるために用いられるものであって、これを一覧表に含めるものとはされていない。
(ウ) 甲第3号証の「安全情報一覧表42」の表示欄42Bに示された「被災者に関する情報」の一部は、図6の記載によれば、数値情報であり、これは構成Eにおける「重大性の数値情報」に該当するものといえなくもないし、これらの記載から、構成Bにおける「重大性の数値情報」を認定可能といえなくもないかもしれないものの、この「被災者に関する情報」の内容は、「発生可能性の数値情報」に該当する内容を含むものではないし、これ以外に、構成B及び構成Eの双方における「数値情報」に該当するものは見当たらない。
(エ) してみると、甲第1号証と甲第3号証とを組み合わせる動機付けに欠けるところがないと仮定しても、甲第3号証の記載を根拠として、甲1発明3の「安全管理情報」を「危険有害要因」に関連付けられた発生可能性の数値情報および重大性の数値情報を示すものへと変形することが容易想到であるということはできない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明(甲1発明3),甲第2号証の記載事項,甲第3号証の記載事項,及び,技術常識として提示された甲第4号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
2 本件発明2について
本件発明2の「労働安全衛生マネージメントシステム」は,本件発明1の「1C 少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段」を「2B 外部システムから,少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段」に置き換えたものであるから,本件発明1と同様、1(3)カに示した相違点を少なくとも有する。そして、1(4)に示したとおり、これらの相違点について容易想到であるということはできないから、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明3),甲第2号証の記載事項,甲第3号証の記載事項,及び,技術常識として提示された甲第4号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件発明3について
本件発明3の「労働安全衛生マネージメント方法」は,本件発明1の「労働安全衛生マネージメントシステム」で行われる情報処理を処理ステップとして特定し「方法」の発明としたものであり,本件発明1と同様の、1(3)カに示したものに相当する相違点を少なくとも有する。そして、1(4)に示したとおり、これらの相違点について容易想到であるということはできないから、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明3),甲第2号証の記載事項,甲第3号証の記載事項,及び,技術常識として提示された甲第4号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 本件発明4について
本件発明4の「労働安全衛生リスクマネージメントプログラム」は,本件発明1の「労働安全衛生マネージメントシステム」で行われる情報処理を処理ステップとして特定し「プログラム」の発明としたものであり,本件発明1と同様の、1(3)カに示したものに相当する相違点を少なくとも有する。そして、1(4)に示したとおり、これらの相違点について容易想到であるということはできないから、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明3),甲第2号証の記載事項,甲第3号証の記載事項,及び,技術常識として提示された甲第4号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
5 小括
以上、1乃至4に示したとおり、本件発明1,本件発明2,本件発明3及び本件発明4は,甲第1号証に記載された発明(甲1発明3),甲第2号証の記載事項,甲第3号証の記載事項,及び,技術常識として提示された甲第4号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
よって、請求項1,請求項12,請求項16及び請求項18のいずれについても、請求人が主張する無効理由1(本件無効理由)は、理由がない。
第7 むすび
したがって、請求人が主張する無効理由1(本件無効理由)によっては,同法第123条第1項第2号の規定に違反するものとして,請求項1に係る発明の特許,請求項12に係る発明の特許,請求項16に係る発明の特許,及び請求項18に係る発明の特許を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。また、審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
審決本文(J-PlatPat)
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2014-800105