特許訂正審判
2025-390037
回転機械のフランジ変位量推定方法、この方法を実行するためのプログラム、及び、この方法を実行する装置
- 審判番号
- 2025-390037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2024-502837
- 登録番号
- 7588756
- 請求日
- 2025年03月31日
- 審決日
- 2026年02月17日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】三菱重工業 株式会社
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 【請求人代理人】伊藤 英輔
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 前原 義明
- 審判官 遠藤 秀明
- 分類
- P141 .852-Y (F01D) / P141 .853-Y (F01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条、特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第131条の2第1項、特許法第126条第3項、特許法第126条第1項第2号、特許法第126条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7588756号に係る明細書及び(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕、〔16~19〕、〔20~23〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第7588756号(以下「本件特許」という。)は、令和4年11月30日(優先権主張 令和4年2月25日)を国際出願日とする特許出願の請求項1~23に係る発明について、令和6年11月14日に特許権の設定登録がされたものである。
本件訂正審判の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和7年 3月31日提出:審判請求書
令和7年 5月29日付け:手続補正指令書(方式)(同年6月3日発送)
令和7年 6月 9日提出:手続補正書(方式)
令和7年 9月11日付け:訂正拒絶理由通知書(同年9月18日発送)
令和7年10月20日提出:意見書及び手続補正書
第2 令和7年10月20日付けの手続補正の適否について
令和7年10月20日付け手続補正書による補正は、当審が訂正拒絶理由通知書により訂正の要件を満たしていないとした令和7年3月31日付け審判請求書の「請求の理由」における訂正事項3、6、9、18及び19の項目を削除するとともに、該訂正事項の削除に整合するように、訂正特許請求の範囲、及び訂正明細書を補正するものである。
これらの補正は、いずれも、審判請求書に記載された「請求の趣旨」の要旨を変更するものではないから、特許法第131条の2第1項の規定を満たすものである。
なお、本件補正により、令和7年9月11日付け訂正拒絶理由通知において、特許法第126条第1項ただし書き及び特許法第126条第6項の規定に適合しないと指摘した訂正事項3、6、9、18及び19は削除されたから、訂正拒絶理由も解消している。
第3 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件請求の趣旨は、本件特許第7588756号の明細書、特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~23について、訂正することを認める、との審決を求めるものである。
また、訂正の内容は次のとおりである。
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とあるのを、
「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~15についても、同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に
「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とあるのを、
「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項7~12についても、同様に訂正する。)
(3)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16に
「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とあるのを、
「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」に訂正する。
(請求項16の記載を引用する請求項17~19も、同様に訂正する。)
(4)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項18に
「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とあるのを、
「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」に訂正する。
(請求項18の記載を引用する請求項19も、同様に訂正する。)
(5)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項20に
「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とあるのを、
「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」に訂正する。
(請求項20の記載を引用する請求項21~23も同様に訂正する。)
(6)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項22に
「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とあるのを、
「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」に訂正する。
(請求項22の記載を引用する請求項23も、同様に訂正する。)
(7)訂正事項10
明細書の段落【0010】、【0013】、【0015】に
「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。」とあるのを、
「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。」に訂正する。
(8)訂正事項11
明細書の段落【0051】に
「座標変更後の下対象位置71Lの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZLと、この下対象位置71Lに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量ZdLとする。さらに、変位量演算部65は、座標変更後の上対象位置71Uの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZUと、この上対象位置71Uに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量ZdUとする。」とあるのを、
「座標変更後の下対象位置71Lの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZLと、この下対象位置71Lに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCとの差を下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量ZdLとする。さらに、変位量演算部65は、座標変更後の上対象位置71Uの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZUと、この上対象位置71Uに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCとの差を上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量ZdUとする。」に訂正する。
(9)訂正事項12
明細書の段落【0057】、【0113】、【0114】、【0137】、【0145】に
「複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、」とあるのを、
「複数の上中点位置75Uxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、」に訂正する。
(10)訂正事項13
明細書の段落【0059】に
「複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向を示す高次関数を用いて、」とあるのを、
「複数の上中点位置75Uxにおける実測三次元座標データの変化傾向を示す高次関数を用いて、」に訂正する。
(11)訂正事項14
明細書の段落【0060】に
「複数の下中点位置75Lxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lに近い複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データを用いて、」とあるのを、
「複数の下中点位置75Lxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lに近い複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データを用いて、」に訂正する。
さらに、明細書の段落【0060】に
「複数の上中点位置75Uxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uに近い複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データを用いて、」とあるのを、
「複数の上中点位置75Uxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uに近い複数の上中点位置75Uxにおける実測三次元座標データを用いて、」に訂正する。
(12)訂正事項15
明細書の段落【0091】に
「第四把握方法における二次処理工程でも、第一把握方法及び第二把握方法における二次処理工程と同様に、」とあるのを、
「第四把握方法における有効座標把握工程S2でも、第一把握方法及び第二把握方法における有効座標把握工程S2と同様に、」に訂正する。
(13)訂正事項16
明細書の段落【0102】、【0134】、【0142】に
「前記下第一位置72Laは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。」とあるのを、
「前記下第一位置72Laは、前記下フランジ面33Lに連なる面中で前記第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。」に訂正する。
(14)訂正事項17
明細書の段落【0117】に
「前記第一被支持部35aの前記表面及び前記第二被支持部35bの前記表面は、前記上フランジ面33Uと前記下フランジ面33Lとのうちで前記一方の半ケーシングが有するフランジ面に連なる面である。」とあるのを、
「前記第一被支持部35aの前記表面及び前記第二被支持部35bの前記表面は、前記上フランジ面33Uと前記下フランジ面33Lとのうちで前記下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uのうちの一方が有するフランジ面に連なる面である。」に訂正する。
第4 当審の判断
1 一群の請求項について
訂正前の請求項1~15について、請求項2~15は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項16~19について、請求項17~19は請求項16を引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項20~23について、請求項21~23は請求項20を引用しているものであって、訂正事項7によって記載が訂正される請求項20に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項〔1~15〕、〔16~19〕、〔20~23〕に対応する訂正後の請求項〔1~15〕、〔16~19〕、〔20~23〕は、それぞれ特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
2 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
(ア) 誤記の訂正の意義
特許法126条1項ただし書2号にいう「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の請求項の記載が当然に訂正後の請求項の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
(イ)訂正内容
訂正事項1は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正前の請求項1」という。)において、「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とあるのを、「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」に訂正するものである。
(ウ)請求項における用語使用の一貫性
訂正前の請求項1においては、「上半ケーシング」、「上フランジ」、「上フランジ面」、「上第一位置」、「上第二位置」、「上対象位置」、「上対象中点位置」といった「上」を冠する用語が一貫して使用されており、これらはいずれも上半ケーシング側の部材、面、又は位置を特定するものである。
同様に、「下半ケーシング」、「下フランジ」、「下フランジ面」、「下第一位置」、「下第二位置」、「下対象位置」、「下対象中点位置」といった「下」を冠する用語も一貫して使用されており、これらはいずれも下半ケーシング側の部材、面、又は位置を特定するものである。
このような用語使用の一貫性は、請求項全体を通じて維持されている。
(エ)対称性からの検討
訂正前の請求項1においては、下第一位置及び上第一位置について、以下のとおり定義されている。
「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」
「前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」
ここで明らかなように、訂正前の請求項1では、下第一位置と上第一位置のいずれもが「上フランジ面に連なる面中」に存在するとされている。
しかしながら、下第一位置と上第一位置は、第一被支持部の第一代表位置と水平方向で位置が一致する点として、それぞれ下半ケーシング側と上半ケーシング側に対応して定義されるべき対称的な概念である。
実際、同じ請求項1において、下第二位置及び上第二位置については、以下のとおり定義されている。
「前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」
「前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」
このように、下第二位置は「下フランジ面に連なる面中」、上第二位置は「上フランジ面に連なる面中」と、それぞれ対応する半ケーシング側のフランジ面に連なる面中に存在するものとして、対称的に定義されている。
さらに、下対象位置及び上対象位置についても、以下のとおり定義されている。
「前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置であり、」
「前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置であり、」
加えて、下対象中点位置及び上対象中点位置についても、以下のとおり定義されている。
「前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、」
「前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、」
以上のとおり、請求項1に記載された全ての位置概念について、「下」を冠する位置は下フランジ面又はこれに連なる面中に、「上」を冠する位置は上フランジ面又はこれに連なる面中に存在するという対称的な構造が一貫して採用されている。
そうすると、訂正前の請求項1において、下第一位置のみが「上フランジ面に連なる面中」に存在するとされていることは、請求項全体における用語使用の一貫性及び下第一位置と上第一位置の対称的な定義構造に照らして、明らかに不自然である。
(オ)明細書との整合性
他方、下第一位置の定義に関して、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0045】には、以下のとおり記載されている。
「ここで、下第一位置72Laは、下フランジ面33Lに連なる面中で第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。」
また、当初明細書等の図8においても、下第一位置72Laは下フランジ面33L上の領域に配置されていることが示されている。
これらの記載からすれば、下第一位置は「下フランジ面に連なる面」中に存在することが、当初明細書等において一貫して開示されている。
(カ)技術的整合性
さらに、本件発明の技術的意義に関して、当初明細書等の段落【0011】には、「下半ケーシング及び上半ケーシングの有限要素モデルを用いて、下半ケーシング及び上半ケーシングの変形をシミュレートしなくても、上対象位置及び下対象位置の上下方向の変位量を求めることができる」と記載されており、訂正前の請求項1に記載された座標変更工程では、「前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致」するよう座標データを変更することが特定されている。
この座標変更工程は、下半ケーシング上の支持部位置を基準として、上半ケーシングとの座標系を合わせる技術的意義を有するものであり、下第一位置が「上フランジ面に連なる面中」に存在するとの記載では、この技術的処理の意義が説明できない。
(キ)誤記の明白性
以上のような、当初明細書等の他の記載を踏まえれば、訂正前の請求項1に記載された「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」が誤記であって、本来「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」を意味するものであることは明らかである。
(ク)結論
したがって、訂正前の請求項1における「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」との記載は誤記であり、これを「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とする訂正は、本来その意であることが、当初明細書等の記載から明らかな内容の字句、語句に正すものであり、かつ訂正前の請求項1の記載は当然に訂正後の請求項1の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
(ア)明瞭でない記載の釈明の意義
特許法126条1項ただし書3号にいう「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「登録時明細書等」という。)中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている登録時明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいうと解される。
(イ)記載の不整合
ここで、前記ア(エ)で述べたとおり、訂正前の請求項1においては、下第二位置、下対象位置、下対象中点位置については、それぞれ「下フランジ面に連なる面中」又は「下フランジ面中」に存在するものとして定義され、上第一位置、上第二位置、上対象位置、上対象中点位置については、それぞれ「上フランジ面に連なる面中」又は「上フランジ面中」に存在するものとして定義されており、「下」を冠する位置は下フランジ面又はこれに連なる面中に、「上」を冠する位置は上フランジ面又はこれに連なる面中に存在するという対称的かつ一貫した構造が採用されている。
しかしながら、下第一位置についてのみ「上フランジ面に連なる面中」に存在するとされており、この対称性及び一貫性が損なわれている。
さらに、前記ア(オ)で述べたとおり、段落【0045】には下第一位置が「下フランジ面33Lに連なる面中で第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置」と明記され、図8においても下第一位置72Laは下フランジ面33L上の領域に配置されていることが示されている。
加えて、前記ア(カ)で述べたとおり、下第一位置は、座標変更工程において下半ケーシング上の基準点として機能するものであり、本件発明の技術的意義に照らせば、下第一位置は下フランジ面又はこれに連なる面上に存在すべきものである。
(ウ)不合理性の存在
そうすると、訂正前の請求項1に記載された「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で」との記載は、本件特許の明細書、図面及び特許請求の範囲の他の記載との関係において不合理を生じている。
(エ)結論
したがって、訂正前の請求項1に記載された「前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とあるのを、「前記下第一位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、」とする訂正は、明細書、図面又は特許請求の範囲の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(1)で述べたとおり、本訂正事項に係る訂正は、訂正前の請求項1において誤りであることが明らかな記載又は明瞭でない記載を正しい記載にするものであって、前記(1)ア(エ)で述べたとおり、いずれも登録時明細書等において明示された記載(【0045】及び図8)に基づいて訂正するものであるから、登録時明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)で述べたとおり、本訂正事項に係る訂正は、本来その意であることが、明らかな内容の字句、語句に正すものであり、また、本件明細書等中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
そうすると、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、本訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
上記(3)で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条7項に規定される独立特許要件を満たすものである。
3 訂正事項2
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
(ア)訂正内容
訂正事項2は、訂正前の請求項6において、「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とあるのを、
「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」に訂正するものである。
(イ)対称性からの検討
訂正前の請求項6は、請求項1を引用する形式で記載されており、実測座標受付工程及び有効座標把握工程について、以下のとおり特定している。
「前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の下中点位置と、前記上フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の上中点位置と、における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記複数の下中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」
請求項6における下中点位置と上中点位置は、それぞれ下フランジ面と上フランジ面において対応する概念であり、技術的にも同様の処理が適用されるべきものである。
実際、実測座標受付工程では両者とも「実測三次元座標データを受け付け」ると記載されており、この段階では対称性が保たれている。
しかしながら、有効座標把握工程において、下中点位置については「実測三次元座標データの変化傾向から」と記載されているのに対し、上中点位置についてのみ「有効三次元座標データの変化傾向から」と記載されており、この対称的な構造が損なわれている。
(ウ)技術的処理の流れからの検討
当初明細書等の段落【0042】及び【0044】には、本件発明における技術的処理の流れとして、実測座標受付工程(S1)において複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、次に有効座標把握工程(S2)において受け付けた実測三次元座標データを用いて有効三次元座標データを把握することが記載されている。
さらに、段落【0057】には、複数の下中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から下対象中点位置における有効三次元座標データを求めることが記載されている。
この処理の流れからすれば、有効座標把握工程において「変化傾向」を求める対象となるのは、実測座標受付工程で受け付けた実測三次元座標データであることが明らかである。
(エ)当初明細書等の記載における同一の誤記
当初明細書等の段落【0057】には、以下のとおり記載されている。
「有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求める。有効座標把握部62は、さらに、複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。」
この記載を文字どおりに読めば、上中点位置について「有効三次元座標データの変化傾向」を用いると読めるが、以下の理由から、この記載は誤記であって、本来「実測三次元座標データの変化傾向」を意味することが明らかである。
a 対称性からの検討
段落【0057】では、下中点位置について「実測三次元座標データの変化傾向から、下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求める。」と記載されている。第一把握方法は下半ケーシング側で同じ処理ロジックを適用する設計思想であるから、上半ケーシング側も「実測三次元座標データの変化傾向から、…」と記載されるべきであり、「有効三次元座標データの変化傾向から…」とすると、下半ケーシング側と上半ケーシング側で処理の入力データが異なることになり、技術的に不合理である。
b 因果関係からの検討
本件発明の技術的処理の流れにおいて、有効座標把握工程(S2)では、実測座標受付工程(S1)で受け付けた実測三次元座標データを用いて有効三次元座標データを把握する。この工程の性質上、「変化傾向」を求める対象となるのは、工程の入力データである実測三次元座標データであるべきである。仮に「有効三次元座標データの変化傾向」を用いるとすれば、まだ把握していない有効三次元座標データを用いて、その有効三次元座標データ自体を求めることになり、処理の順序として不合理である。
c 小括
以上のa及びbで述べた理由から、段落【0057】における「複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から」との記載は誤記であって、本来「複数の上中点位置75Uxにおける実測三次元座標データの変化傾向から」を意味することが明らかである。
そして、訂正前の請求項6における「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から」との記載も、同様に誤記であることが、当初明細書等の記載から明らかである。
(オ)誤記の明白性
以上のような、対称性からの検討、技術的処理の流れからの検討、及び当初明細書等の記載における同一の誤記の存在から、訂正前の請求項6における「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から」との記載は誤記であって、本来「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から」を意味するものであることは明らかである。
(カ)結論
したがって、本訂正事項に係る訂正は、本来その意であることが、当初明細書等の記載から明らかな内容の字句、語句に正すものであり、かつ訂正前の請求項6の記載は当然に訂正後の請求項6の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
(ア)記載の不整合
前記ア(ウ)で述べたとおり、本件発明の技術的処理の流れにおいて、有効座標把握工程で用いるべきデータは、実測座標受付工程で受け付けた実測三次元座標データである。
さらに、前記ア(オ)で述べたとおり、下中点位置については「実測三次元座標データの変化傾向」と記載されており、技術的に同様の処理が適用されるべき上中点位置について、異なるデータ種別が記載されていることは不合理である。
(イ)不合理性の存在
そうすると、訂正前の請求項6に記載された「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から」との記載は、特許請求の範囲の他の記載との関係において不合理を生じている。
(ウ)結論
したがって、訂正前の請求項6に記載された「前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とあるのを、
「前記複数の上中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、」とする訂正は、明細書又は特許請求の範囲の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(1)及び(2)で述べたとおり、訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項6において誤りであることが明らかな記載又は明瞭でない記載を正しい記載にするものであって、前記(1)ア(エ)で述べたとおり、登録時明細書等の段落【0057】において明示された記載に基づいて訂正するものであるから、登録時明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)及び(2)で述べたとおり、訂正事項2に係る訂正は、本来その意であることが、明らかな内容の字句、語句に正すものであり、また、本件明細書等中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
そうすると、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
上記(3)で述べたとおり、訂正事項2に係る訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由は見いだせない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条7項に規定される独立特許要件を満たすものである。
4 訂正事項4
訂正事項1と同様の理由により、訂正事項4は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
5 訂正事項5
訂正事項2と同様の理由により、訂正事項5は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
6 訂正事項7
訂正事項1と同様の理由により、訂正事項7は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
7 訂正事項8
訂正事項2と同様の理由により、訂正事項8は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
8 訂正事項10
訂正事項1と同様の理由により、訂正事項10は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
9 訂正事項11
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
(ア)訂正内容
訂正事項11は、明細書の段落【0051】において、「座標変更後の下対象位置71Lの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZLと、この下対象位置71Lに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量ZdLとする。さらに、変位量演算部65は、座標変更後の上対象位置71Uの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZUと、この上対象位置71Uに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量ZdUとする。」とあるのを、「座標変更後の下対象位置71Lの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZLと、この下対象位置71Lに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCとの差を下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量ZdLとする。さらに、変位量演算部65は、座標変更後の上対象位置71Uの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZUと、この上対象位置71Uに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCとの差を上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量ZdUとする。」に訂正するものである。
(イ)文法上の誤り
訂正前の段落【0051】における「座標値ZLと…座標値ZCと差を」及び「座標値ZUと…座標値ZCと差を」との記載は、日本語の文法として明らかに誤っている。
「AとBと差を求める」という表現は日本語として成立せず、正しくは「AとBとの差を求める」又は「AとBの差を求める」と記載すべきである。
したがって、訂正前の段落【0051】における「と差を」との記載は誤記であって、本来「との差を」を意味するものであることは明らかである。
(ウ)結論
よって、本訂正事項に係る訂正は、本来その意であることが明らかな内容の字句、語句に正すものであり、かつ訂正前の段落【0051】の記載は当然に訂正後の段落【0051】の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。
したがって、訂正事項11に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
上記アで述べたとおり、訂正前の段落【0051】における「と差を」との記載は、日本語の文法として誤っており、不明瞭な記載となっている。
これを「との差を」と訂正することにより、文法的に正しい記載となり、記載の不明瞭性が解消される。
よって、訂正事項11に係る訂正は、特許法126条1項ただし書3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
上記(1)及び(2)で述べたとおり、本訂正事項に係る訂正は、訂正前の段落【0051】において文法上明らかに誤りである記載を正しい記載にするものであり、登録時明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項11に係る訂正は、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項11は明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の訂正を伴うものではない。
そうすると、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正事項11に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、本訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
訂正事項11は明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の訂正を伴うものではないから、特許法126条7項の独立特許要件は問題とならない。
10 訂正事項12
訂正事項2と同様の理由により、訂正事項12は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
11 訂正事項13
訂正事項2と同様の理由により、訂正事項13は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
12 訂正事項14
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
(ア)訂正内容
訂正事項14は、明細書の段落【0060】において、「複数の下中点位置75Lxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lに近い複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データを用いて、」とあるのを、「複数の下中点位置75Lxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lに近い複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データを用いて、」に訂正するものである。
また、同じ段落【0060】において、「複数の上中点位置75Uxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uに近い複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データを用いて、」とあるのを、「複数の上中点位置75Uxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uに近い複数の上中点位置75Uxにおける実測三次元座標データを用いて、」に訂正するものである
(イ)技術的処理の流れ
段落【0060】は、段落【0059】で説明された高次関数による近似とは別の方法として、一次関数による近似を説明するものである。段落【0060】の冒頭には「以上では、高次関数Fで下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの面形状を近似する。しかしながら、図13に示すように、一次関数で、下フランジ面33Lの一部の面形状や、上フランジ面33Uの一部の面形状を近似してもよい。」と記載されており、近似に用いる関数の種類が異なるだけで、近似の対象となるデータは同じであるべきことが示されている。
また、段落【0060】の直前の段落【0059】には、「有効座標把握部62は、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向を示す前述の高次関数Fを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを外挿により求める。」と記載されており、近似関数を求める際に用いるべきデータは実測三次元座標データであることが明示されている。
本件発明における技術的処理の流れは、実測座標受付工程S1において複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、有効座標把握工程S2において受け付けた実測三次元座標データを用いて有効三次元座標データを把握する、というものである。この処理の流れ、及び段落【0059】と【0060】の関係からすれば、有効座標把握工程において近似関数を求める際に用いるべきデータは、実測座標受付工程で受け付けた実測三次元座標データである。
(ウ)誤記の明白性
以上の技術的処理の流れから、訂正前の段落【0060】における「有効三次元座標データを用いて」との記載は誤記であって、本来「実測三次元座標データを用いて」を意味するものであることは明らかである。
(エ)結論
したがって、本訂正事項に係る訂正は、本来その意であることが、当初明細書等の記載から明らかな内容の字句、語句に正すものであり、かつ訂正前の段落【0060】の記載は当然に訂正後の段落【0060】の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
上記1で述べたとおり、訂正前の段落【0060】における「有効三次元座標データを用いて」との記載は、技術的処理の流れ及び同一段落内の他の記載との関係で不合理を生じているため、不明瞭な記載となっている。
これを「実測三次元座標データを用いて」と訂正することにより、技術的処理の流れとの整合性が確保され、記載の不明瞭性が解消される。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(1)及び(2)で述べたとおり、本訂正事項に係る訂正は、訂正前の段落【0060】において誤りであることが明らかな記載又は明瞭でない記載を正しい記載にするものであって、登録時明細書等の段落【0059】において明示された記載に基づいて訂正するものであるから、登録時明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項14に係る訂正は、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)及び(2)で述べたとおり、本訂正事項に係る訂正は、本来その意であることが明らかな内容の字句、語句に正すものであり、また、明細書中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
そうすると、本件訂正の前後において発明の要旨に実質的な変更はないから、本訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項14に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
訂正事項14に係る訂正は明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の訂正を伴うものではないから、特許法第126条第7項の独立特許要件は問題とならない。
13 訂正事項15
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
本件発明における回転機械のフランジ変位量推定方法は、実測座標受付工程(S1)、有効座標把握工程(S2)、座標変更工程(S3)、接触位置推定工程(S4)、及び変位量演算工程(S5)から構成される(当初明細書等の請求項1等参照)。
本件発明には「二次処理工程」という工程は存在せず、当初明細書等においても「二次処理工程」という用語は使用されていない。
段落【0091】は、第四把握方法における有効座標把握工程S2について説明するものであり、下第一位置72La等における有効三次元座標データを推定する処理が、第一把握方法及び第二把握方法と同様に行われることを記載している。
第一把握方法において、この処理は段落【0059】及び【0060】に記載されており、第二把握方法においては段落【0070】に記載されており、いずれも有効座標把握工程S2の一部として説明されている。
したがって、段落【0091】における「二次処理工程」との記載は誤記であって、本来「有効座標把握工程S2」を意味することが明らかである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
訂正前の段落【0091】における「二次処理工程」との記載は、本件明細書において定義されていない工程名であり、不明瞭な記載となっている。
これを「有効座標把握工程S2」と訂正することにより、本件明細書及び請求項において一貫して使用されている工程名となり、記載の不明瞭性が解消される。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法126条1項ただし書3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本訂正事項に係る訂正は、本件明細書において定義されていない工程名を、一貫して使用されている正しい工程名に訂正するものであり、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
本訂正事項に係る訂正は、本件明細書において定義されていない工程名を、一貫して使用されている正しい工程名に訂正するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、本訂正事項は明細書の記載を訂正するものであり、発明の要旨に実質的な変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、本訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
本訂正事項は明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の訂正を伴うものではないから、特許法第126条第7項の独立特許要件は問題とならない。
14 訂正事項16
訂正事項1と同様の理由により、訂正事項16は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
15 訂正事項17
(1)訂正の目的について
ア 誤記の訂正
当初明細書等において、ケーシングを構成する半ケーシングは、上半ケーシング30U及び下半ケーシング30Lの二つのみである。
したがって、「前記一方の半ケーシング」とは、上半ケーシング30U及び下半ケーシング30Lのいずれか一方を意味することになる。
当初明細書等においては、これらの半ケーシングを特定する際、一貫して「上半ケーシング30U」及び「下半ケーシング30L」という符号を付した用語が使用されている。例えば、段落【0026】では「下半ケーシング30Lは」、段落【0027】では「上半ケーシング30Uは」というように記載されている。
そうすると、段落【0117】における「前記一方の半ケーシング」も、本件明細書における用語使用の一貫性に鑑みれば、「前記下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uのうちの一方」と記載されるべきである。
したがって、訂正前の段落【0117】における「前記一方の半ケーシング」との記載は誤記であって、本来「前記下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uのうちの一方」を意味することが明らかである。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第1項第2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明
訂正前の段落【0117】における「前記一方の半ケーシング」との記載は、本件明細書において定義されていない用語であり、不明瞭な記載となっている。
これを「前記下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uのうちの一方」と訂正することにより、本件明細書において一貫して使用されている用語となり、記載の不明瞭性が解消される。
よって、本訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第1項第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)登録時明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本訂正事項に係る訂正は、本件明細書において定義されていない用語を、一貫して使用されている正しい用語に訂正するものであり、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項11に係る訂正は、登録時明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
本訂正事項は明細書の記載を訂正するものであり、発明の要旨に実質的な変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
また、本訂正事項は明細書の記載を訂正するものであり、発明の要旨に実質的な変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、本訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
本訂正事項は明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の訂正を伴うものではないから、特許法第126条第7項の独立特許要件は問題とならない。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-390037