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特許拒絶査定不服審判

2025-000702

低エミッション吸着体およびキャニスターシステム

審判番号
2025-000702
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-558241外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2025年01月17日
審決日
2025年10月23日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (F02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

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特願2022-558241「低エミッション吸着体およびキャニスターシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月30日国際公開、WO2021/195631、令和 5年 5月10日国内公表、特表2023-519340〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2021年(令和3年)3月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2020年3月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

令和 4年10月27日提出:国際出願翻訳文提出書
令和 5年 9月 6日付け:拒絶理由通知書(同年9月11日発送)
令和 6年 2月13日提出:意見書、手続補正書
令和 6年 2月28日付け:拒絶理由通知書(同年3月4日発送)
令和 6年 7月29日提出:意見書、手続補正書
令和 6年 9月 4日付け:拒絶査定(同年9月17日発送)
令和 7年 1月17日提出:審判請求書、手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項31に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年1月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項31に記載された以下のとおりのものと認める。なお、本件補正は、本願の請求項1、16に係る発明を補正するものであり、本願発明は本件補正により補正されていない。

「【請求項31】
蒸発エミッション制御キャニスターシステムであって、
燃料側吸着容積を含む一つまたは複数のキャニスターと、
外面、および前記外面に平行にそこを通って延在する複数の平行な通路またはチャネルを備える一つまたは複数のベント側PPAVであって、前記平行通路またはチャネルは、1.25mm以下の平均チャネル水力直径(tc,Dh)、1.45mm以下の水力直径セルピッチ(CPDh)、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つ、ならびに、
続きを表示(全15行)
(i)1.25mm未満の複数のチャネル幅(tc,平均)、
(ii)1.45mm未満の複数のチャネルのセルピッチ幅(CPtc,平均)、
(iii)285~1000cpsiのセル密度、
(iv)0.5mm未満のセル壁の厚さ、
(v)10g/dL未満のBWC、
(vi)50g/L未満の25℃における5%~50%のn-ブタンの増分吸着容量、
または
(vii)それらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つ、を有するように構成される、一つまたは複数のベント側PPAVと、を備え、
前記燃料側吸着容積および前記PPAVは、蒸気またはガス連通し、蒸気流路を形成して空気および/または燃料蒸気がそこを通って流れるまたは拡散することを可能にし、
前記蒸発エミッション制御キャニスターシステムが、2012 California Bleed Emissions Test Procedure(BETP)によって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される315リットル以下のパージで、または150以下のベッド体積(BV)のパージで、50mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)を有し、
前記PPAVは活性炭ハニカムである、蒸発エミッション制御キャニスターシステム。」

第3 原査定における主な拒絶の理由

原査定(令和6年9月4日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2020-29861号公報

第4 引用文献

1 引用文献1

原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2020-29861号公報(以下「引用文献1」という。)には、「キャニスタ用の吸着材、その製造方法及びキャニスタ」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)「【0216】
5.キャニスタの構成
図8に、実施形態に係るキャニスタ100の断面図を示す。キャニスタ100は、自動車の燃料タンクから発生する蒸発燃料の処理用に設置される。キャニスタ100は、ケース21、カバー22、プレート28、コイルスプリング29、フィルタFを有して構成される。キャニスタ100の内部には吸着材室Rが形成され、上記で製造されたキャニスタ用の第1吸着材が収納される。」
(2)「【0218】
ケース21の上側には、タンクポート23、パージポート24、及び大気ポート25が形成されている。タンクポート23は、自動車の燃料タンク(図示なし)の上部と連通しており、燃料タンクから発生する蒸発燃料がタンクポート23を通ってケース21の内部に流入する。パージポート24は、内燃機関の吸気通路(図示なし)に連通する。吸気通路は、内燃機関の吸気管に連通されているか、エンジンの駆動とは独立して駆動制御される吸引ポンプに接続されている。大気ポート25は、大気に開放されており、大気が大気ポート25を通ってケース21の内部に流入する。
【0219】
ケース21の内部には、隔壁26及び補助隔壁27が形成されている。隔壁26は、ケース21の内部の上端からカバー22の近傍まで延びる隔壁であって、パージポート24と大気ポート25との間に位置する。補助隔壁27は、ケース21の内部の上端からカバー22に向けて延びる短寸の隔壁であって、タンクポート23とパージポート24との間に位置する。
隔壁26によって、ケース21の内部の空間が、左右に分けられている。そして、図中右側の空間(大気ポート25の側の空間)が、フィルタFにより上下に仕切られている。この大気ポート25の側の空間の、下側の空間(カバー22の側の空間)を第2領域32とし、上側の空間(大気ポート25の側の空間)を第3領域33とする。また、隔壁26によって分けられたタンクポート23側の空間を第1領域31とする。本実施形態では、第3領域33に、上記のキャニスタ用の第1吸着材が配設されており、第1領域31及び第2領域32に活性炭が配設されている。」
(3)「【0221】
以上の構成により、キャニスタ100の内部には、タンクポート23(及びパージポート24)と大気ポート25との間に亘るU字状の流路が形成される。タンクポート23から流入する蒸発燃料は、まず第1領域31に流入し、プレート28の下方を通って、第2領域32に流入し、第3領域33に流入することになる。第1領域31、第2領域32及び第3領域33は、タンクポート23から大気ポート25へ流れる蒸発燃料を吸着する領域であり、活性炭及びキャニスタ用の第1吸着材を収容しており、以下、吸着材室Rと総称する場合がある。また第1領域31はタンクポート23に隣接しており、タンク側隣接領域Tと呼ぶ場合がある。第3領域33は大気ポート25に隣接しており、大気側隣接領域Uと呼ぶ場合がある。」
(4)「【0231】
(4)上記実施形態では、図8に示すように、吸着材室Rが第1領域31、第2領域32及び第3領域33の3つに区分けされている。しかし、第2領域32及び第3領域33からなる領域は2つに区分けされるのではなく、3つ以上に区分けされていてもよい。この場合も同様に、大気ポート25に最も隣接している領域が大気側隣接領域Uであり、当該大気側隣接領域Uに上記実施形態の第1吸着材10が配置される。
【0232】
(5)上記実施形態では、図8に示すキャニスタ100のように、大気側隣接領域Uに上記実施形態の第1吸着材10が配置される。しかし、大気ポート25側の吸着材室Rが複数の領域に区分けされ、各領域に第1吸着材10と以下に説明する第2吸着材110と活性炭とが組み合わされて配置されてもよい。」
(5)「【0263】
また、図13の第2吸着材110では、軸心方向視において、外壁110Aの内部空間が複数の四角形状のセル110Cに分かれており、リブ110Bがセル110Cの四角形状の外形を構成している。複数のリブ110Bがマトリクス状に延びていることで、各セル110Cに加わる外圧及び内圧等が分散され、第2吸着材110の硬度を確保しつつ外壁110Aの厚みdα及び複数のリブ110Bの厚みdβを薄くできる。」
(6)「【0265】
(2)第2吸着材の構成材料及び製造方法
第2吸着材110は、少なくとも、細孔(後述の第1細孔)を有する活性炭と、有機バインダと、架橋剤と、無機材料とを含む原材料から形成される。
第2吸着材110の製造方法は、次の通りである。前述の活性炭、有機バインダ、架橋剤及び無機材料を含む原材料は、例えばリボンミキサ等の混合機を用いて、水と混合及び混練される。そして、混練された混練材料は、押出成型又は金型成型等により図11~図13に示すハニカム形状に成型される。その後、成型された材料は、赤外線、熱風、蒸気及びマイクロ波等を用いて約200℃以下、例えば約120℃で約3時間で乾燥され、第2吸着材110が製造される。約200℃以下、例えば約120℃での比較的に低温での乾燥は、例えば、成型時の成型体の水分を飛ばす工程、架橋剤により有機バインダを架橋させる工程、無機材料を固める工程等であり得る。」
(7)「【0308】
(5-3)第2吸着材の実施例2及び比較例2
以下に、実施例2及び比較例2に係る第2吸着材を製造し、表3~表5の結果を得た。
表3の物性評価のうち、「BWC」、「ブタン濃度5容量%-50容量%の間の平衡吸着量の差分」、「パージ効率」、「B.R」、「硬度」、「第2細孔(細孔径100nm以上)の容積/吸着材の質量」については、実施例2-1~2-9の各第2吸着材110についての評価値である。一方、DBLについては、実施例2-1~2-9の各第2吸着材110を図8のキャニスタの第3領域33に配設した場合におけるキャニスタとしての評価値である。」
(8)「【0314】
(実施例2-9)
BWCが15である活性炭53gと、有機バインダとしてCMC6.5gと、無機材料としてベントナイト25gと、金属酸化物としてFe2O3を53gとを含む原材料を、混合機を用いて水と混合及び混練した。混練された混練材料を、各セル110Cが軸心方向視において四角形状となるように押出成型機により成型し、120℃で3時間のあいだ乾燥することにより第2吸着材を得た。
第2吸着材は、外径4mm、外壁の厚み0.3mm、リブの厚み0.25mm、セル数600セル/inch2である。」
(9)「【0319】
上記の実施例2及び比較例2-2において製造された各第2吸着材について、表3及び表4に示す物性値が得られた。
【表3】
[図:0001433841000001.jpg]
」
(10)「【0322】
DBL性能は次のように評価した。
米国ブリードエミッション試験方法(BETP)によって、キャニスタのDBL排出量が20mg未満となるパージ量で判断した。
◎は、40g/hrのブタン添加ステップの後、100BV(キャニスタの容量の100倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg未満である場合である。
〇は、40g/hrのブタン添加ステップの後、157BV(キャニスタの容量の157倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg未満である場合である。
△は、40g/hrのブタン添加ステップの後、210BV(キャニスタの容量の210倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg未満である場合である。
×は、40g/hrのブタン添加ステップの後、210BV(キャニスタの容量の210倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg以上である場合である。」
(11)「【図8】
[図:0001433841000002.jpg]
」
(12)「【図13】
[図:0001433841000003.jpg]
」

(13)図13から、セル110Cは、円形断面の中心に対して点対称に配置されることが看取される。

2 引用発明

以上の記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「自動車の燃料タンクから発生する蒸発燃料の処理用に設置されるキャニスタ100であって、
自動車の燃料タンクの上部と連通するタンクポート23と、内燃機関の吸気通路に連通するパージポート24と、大気に開放される大気ポート25と、
前記タンクポート23側の第1領域31に配設される第1吸着材10を含むキャニスタ100と、
外壁110A、複数のリブ110B、円形断面の中心に対して点対称に配置される複数の四角形状のセル110Cを有する前記大気ポート25に隣接する第3領域33に配設される第2吸着材110であって、外径Dは4mm、前記外壁110Aの厚みdαは0.3mm、前記リブ100Bの厚みdβは0.25mm、前記セル110Cのセル数は600セル/inch2、BWCは6.6g/dLである、前記第2吸着材110と、を備え、
前記タンクポート23から前記大気ポート25へ流れる蒸発燃料を吸着する吸着材室Rを有し、
前記キャニスタ100が、米国ブリードエミッション試験方法(BETP)によって、40g/hrのブタン添加ステップの後、100BV(キャニスタの容量の100倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg未満であり、
前記第2吸着材110は原材料に活性炭を含むハニカム形状である、キャニスタ100。」

第5 対比

本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 引用発明の「キャニスタ100」は、本願発明の「キャニスター」に相当する。同様に、「自動車の燃料タンクから発生する蒸発燃料の処理用に設置されるキャニスタ100」は「蒸発エミッション制御キャニスターシステム」に相当する。

イ 引用発明の「前記タンクポート23側の第1領域31に配設される第1吸着材10」は、タンクポート23は自動車の燃料タンクの上部と連通しており、第1吸着材10は燃料側に設けられているといえるから、本願発明の「燃料側吸着容積」に相当する。

ウ 上記ア、イを踏まえると、引用発明の「前記タンクポート23側の第1領域31に配設される第1吸着材10を含むキャニスタ100」は、本願発明の「燃料側吸着容積を含む一つまたは複数のキャニスター」に相当する。

エ 引用発明の「複数の四角形状のセル110C」は、本願発明の「複数の平行な通路またはチャネル」に相当する。

オ 上記エを踏まえると、引用発明の「外壁110A、複数のリブ110B、複数の四角形状のセル110Cを有する前記大気ポート25に隣接する第3領域33に配設される第2吸着材110」は、大気ポート25は大気に開放されており、第2吸着材110はベント側に設けられているといえるから、本願発明の「外面、および前記外面に平行にそこを通って延在する複数の平行な通路またはチャネルを備える一つまたは複数のベント側PPAV」に相当する。

カ 引用発明の「前記セル110Cのセル数は600セル/inch2」は、600cpsiのセル密度を有するから、本願発明の「(iii)285~1000cpsiのセル密度」に相当する。以下同様に、「前記外壁110Aの厚みdαは0.3mm」は、0.3mmのセル壁の厚さを有するから、「(iv)0.5mm未満のセル壁の厚さ」に、「BWCは6.6g/dL」は「(v)10g/dL未満のBWC」に、それぞれ相当する。

キ 上記エ-カを踏まえると、引用発明の「外径Dは4mm、前記外壁110Aの厚みdαは0.3mm、前記リブ100Bの厚みdβは0.25mm、前記セル110Cのセル数は600セル/inch2、BWCは6.6g/dLである、前記第2吸着材110」は、本願発明の「(iii)285~1000cpsiのセル密度」、「(iv)0.5mm未満のセル壁の厚さ」、「(v)10g/dL未満のBWC」をすべて満たすから、本願発明の「前記平行通路またはチャネルは、(iii)285~1000cpsiのセル密度、(iv)0.5mm未満のセル壁の厚さ、(v)10g/dL未満のBWC、または(vii)それらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つ、を有するように構成される、一つまたは複数のベント側PPAV」に相当する。

ク 上記イ、オを踏まえると、引用発明の「前記タンクポート23から前記大気ポート25へ流れる蒸発燃料を吸着する吸着材室Rを有」することは、本願発明の「前記燃料側吸着容積および前記PPAVは、蒸気またはガス連通し、蒸気流路を形成して空気および/または燃料蒸気がそこを通って流れるまたは拡散することを可能に」することに相当する。

ケ 引用発明の「米国ブリードエミッション試験方法(BETP)によって、40g/hrのブタン添加ステップの後、100BV(キャニスタの容量の100倍のパージ量)以下のパージを与えて2日間のDBL排出量が20mg未満であ」ることは、本願発明の「2012 California Bleed Emissions Test Procedure(BETP)によって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される315リットル以下のパージで、または150以下のベッド体積(BV)のパージで、50mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)を有」することに相当する。

コ 上記オを踏まえると、引用発明の「前記第2吸着材110は原材料に活性炭を含むハニカム形状である」ことは、本願発明の「前記PPAVは活性炭ハニカムである」ことに相当する。

本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

(一致点)

「蒸発エミッション制御キャニスターシステムであって、
燃料側吸着容積を含む一つまたは複数のキャニスターと、
外面、および前記外面に平行にそこを通って延在する複数の平行な通路またはチャネルを備える一つまたは複数のベント側PPAVであって、前記平行通路またはチャネルは、
(iii)285~1000cpsiのセル密度、
続きを表示(全11行)
(iv)0.5mm未満のセル壁の厚さ、
(v)10g/dL未満のBWC、
または
(vii)それらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つ、を有するように構成される、一つまたは複数のベント側PPAVと、を備え、
前記燃料側吸着容積および前記PPAVは、蒸気またはガス連通し、蒸気流路を形成して空気および/または燃料蒸気がそこを通って流れるまたは拡散することを可能にし、
前記蒸発エミッション制御キャニスターシステムが、2012 California Bleed Emissions Test Procedure(BETP)によって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される315リットル以下のパージで、または150以下のベッド体積(BV)のパージで、50mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)を有し、
前記PPAVは活性炭ハニカムである、蒸発エミッション制御キャニスターシステム。」

本願発明と引用発明とは、以下の点で一応相違する。

(相違点)

「平行通路またはチャネル」について、本願発明は、「1.25mm以下の平均チャネル水力直径(tc,Dh)、1.45mm以下の水力直径セルピッチ(CPDh)、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つ」を有するのに対して、引用発明は、「外径Dは4mm、前記外壁110Aの厚みdαは0.3mm、前記リブ100Bの厚みdβは0.25mm、前記セル110Cのセル数は600セル/inch2」である点。

第6 判断

1 相違点について

(1)セルの数の算出

引用発明のセル数は、単位を換算すると、

600(セル/inch2)=600/25.42(セル/mm2)=0.93(セル/mm2)※1inch=25.4mm

であり、断面全体のセル数は、

(D/2)2×3.14×0.93=(4/2)2×3.14×0.93=11.68(個)※外径D=4mm

となる。

(2)セルの幅の算出

引用発明において、円形断面の中心に対して点対称にセルが配置されることから、前記(1)の11.68個を満たすには、11.68の平方根は約3.42のため、断面の中心を通る線上(断面の最大幅)において、角が欠けていない四角形状のセルは幅方向に3個並ぶと考えられる。

断面の外壁付近には角が欠けているセルも配置され得ることから、四角形状のセルの幅をdcとして、以下の不等式を満たす。

D>2dα+4dβ+3dc

4>2×0.3+4×0.25+3dc ※外壁の厚みdα=0.3mm、リブの厚みdβ=0.25mm

dc<0.8(mm)

つまり、引用発明は、0.8mm未満の四角形状のセルの幅dcを有する。

(3)平均チャネル水力直径との関係

本願明細書には、「図9は、本明細書に記載のハニカムベースのPPAVの断面形態を例示し、本明細書に記載の例示的なハニカム形状のPPAVのセル壁厚(tw)、チャネル幅(tc)、チャネル面積(Ac)、チャネル外周長(Pc)、および外壁厚(ts)を例示する図である。」(段落【0030】)、「4ΣAc/ΣPcで計算されるPPAVの平均チャネル水力直径(tc,Dh)」(段落【0043】)と記載されており、本願発明における平均チャネル水力直径は以下の数式で表される。

平均チャネル水力直径=4ΣAc/ΣPc(Ac:チャネル面積、Pc:チャネル外周長)

セルが一辺の長さをチャネル幅tcとする四角形状の場合、以下のとおり、平均チャネル水力直径はチャネル幅tcと一致する。

平均チャネル水力直径=4ΣAc/ΣPc=4tc2/4tc=tc

ここで、引用発明のセルの幅dcは、本願発明のチャネル幅tcに相当する。

以上のことから、前記(2)で算出した引用発明の0.8mm未満の四角形状のセルの幅dcは、0.8mm未満の平均チャネル水力直径と読み替えられ、本願発明の「1.25mm以下の平均チャネル水力直径(tc,Dh)」に相当する。

(4)水力直径セルピッチとの関係

本願明細書には、「平均チャネル水力直径(tc,Dh)と平均壁厚(tw,平均)の合計で計算されるPPAVの水力直径セルピッチ(CPDh)」(段落【0044】)と記載されており、本願発明における水力直径セルピッチは以下の数式で表される。

水力直径セルピッチ=平均チャネル水力直径+平均壁厚

引用発明のセルにおいて、以下の等式を満たす。

水力直径セルピッチ=四角形状のセルの幅dc+リブの厚みdβ=0.8(mm)未満+0.25(mm)=1.05(mm)未満

以上のことから、引用発明の1.05mm未満の水力直径セルピッチは、本願発明の「1.45mm以下の水力直径セルピッチ(CPDh)」に相当する。

(5)小括

前記(3)、(4)の両方の関係を満たすため、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。

したがって、本願発明は引用発明である。

2 請求人の主張について

請求人は、令和7年1月17日提出の審判請求書において、「請求項31に係る発明は、引用文献1に開示も示唆もされていない機能的要件を有する。」と主張する。

しかしながら、前述したように、本願発明は引用発明であり、両者に「機能的要件」の差異は見いだせない。

したがって、請求人の当該主張を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2025-000702

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