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特許異議申立

2024-700144

水素活用システム

審判番号
2024-700144
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-025599
登録番号
7329892
請求日
2024年02月16日
審決日
2024年06月28日
公報発行日
2024年07月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ハイドロネクスト
  • 【異議申立人】穂坂 光紀
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 小野 久子
分類
P1651.121-Y (F17D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7329892号発明「水素活用システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7329892号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7329892号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年2月21日の出願であって、同年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年2月16日に、請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人 穂坂 光紀(以下、「申立人」という。)により、甲第1~2号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年3月14日に申立人より手続補正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~4に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)。 「【請求項1】 都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、 前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜と、水素分離膜を加熱する加熱手段とを備え、 前記加熱手段は、前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、 前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱し、 前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備えていることを特徴とする水素活用システム。 【請求項2】 前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられた混合装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。 【請求項3】 前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素量測定器を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。 【請求項4】 前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素検知器を備えるとともに、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられたバルブを備え、前記水素検知器によって水素の漏洩が検知されたときは、前記バルブが閉じられて水素供給が自動的に停止されることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2022/176125号 甲第2号証:井関 孝弥,「高効率水素製造のための水素分離型改質器」,膜(MEMBRANE),2012年,Vol.37,No.2,p.60-66 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 甲各号証の記載事項等 (1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には,以下の(ア)~(カ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。又、「・・・」は記載の省略を表す。)。 (ア) 「請求の範囲 [請求項1] ガスパイプラインから供給されるブレンドガスから水素を取り出す水素取出し部と、 前記水素取出し部が取り出した水素を水素利用装置に供給する取出し水素供給部と、 前記水素取出し部が取り出して前記水素利用装置に供給する水素利用量を計測する取出し水素量計測部と、 前記取出し水素量計測部が計測した水素利用量の情報を外部に送信する取出し水素量通信部と、 前記水素取出し部が水素を分離した後のガスを前記ガスパイプラインに戻すガス戻し部と、 を備えることを特徴とする水素利用管理装置。」 (イ) 「[0036] 図3は、水素利用管理装置302のブロック図である。 水素利用管理装置302は、システム制御部310、水素取出し部311、取出し水素供給部312、取出し水素量計測部313、取出し水素量通信部314、ガス戻し部315を備えており、ブレンドガス901の流路と戻しガス903の流路でガスパイプライン1に接続される。 [0037] 本実施形態において、ブレンドガス901は、水素と天然ガスで構成されている。 システム制御部310が水素利用管理装置302全体の情報集約と制御の管理を実行する。システム制御部310のコントロールにおいて、以下の手順で、水素利用装置201が所有する水素利用装置1000へ水素902が供給される。 [0038](手順1) ガスパイプライン1との一方の流路から、ブレンドガス901が水素利用管理装置302に流入する。 [0039](手順2) 水素利用管理装置302内の水素取出し部311は、水素902と戻しガス903とを分離する。水素902は、取出し水素供給部312へ供給される。一方、戻しガス903は、ガス戻し部315へ供給される。 [0040] 水素取出し部311は、ガスパイプライン1から供給されるブレンドガス901から水素902と戻しガス903を分離して、水素902を取り出す。そのために、水素取出し部311は、水素分離膜法、圧力変動吸着分離法(PSA:Pressure Swing Adsorption)、温度変動吸着分離法(TSA:Thermal. Swing Adsorption)などの分離機構を備えている。水素取出し部311は前記分離方法に適した条件(温度、圧力など)に合わせるための加圧・減圧・加熱・冷却などを行う機構を備えていると好適である。水素取出し部311の詳細は、後記する図8にて説明する。 [0041](手順3) 取出し水素供給部312は、水素取出し部311が取り出した水素902を水素利用装置1000に適した条件に調整し、取出し水素量計測部313に供給する。これにより、取出し水素供給部312は、水素取出し部311が取り出した水素902を水素利用装置1000に供給する。水素利用装置1000に適した条件とは、温度や圧力や流量のうち何れか1つ以上である。取出し水素供給部312は、水素ガスの圧力と温度と流量のうち何れか1つ以上を調整する調整器である。 ・・・ [0043](手順4) 取出し水素量計測部313は、水素利用装置1000で使われた水素902の量を計測する。取出し水素量計測部313は、水素取出し部311が取り出して水素利用装置1000に供給する水素利用量を計測する。 水素利用装置1000で使われた水素使用量の情報は、システム制御部310に集約され、システム制御部310からの情報に基づいて、取出し水素量通信部314を通して水素需給管理装置301に送信される。取出し水素量通信部314は、取出し水素量計測部313が計測した水素利用量の情報を外部に送信するものである。 [0044](手順5) 水素取出し部311で分離された戻しガス903は、ガス戻し部315において、ガスパイプライン1に戻しても良い条件(温度、圧力、流速など)に調整される。そしてガス戻し部315は、水素取出し部311が水素を分離した後のガスである戻しガス903をガスパイプライン1との他方の流路により、ガスパイプライン1に戻す。」 (ウ) 「[0065] 図8は、水素利用管理装置302のブロック図である。 図8は、図3に示した水素利用管理装置302において、都市ガス(13A)を用いた場合の水素利用管理装置302とし、水素利用装置10000を家庭向け水素ガス利用固体高分子型燃料電池のPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)ユニット1001、とした例について記載する。 [0066] ガスパイプライン1には天然ガスが主成分に調整された都市ガス(13A)に水素がブレンドされたブレンドガスが流れている。 [0067] ・・・ 水素利用管理装置302は、ガスパイプライン1に接続されており、ガスパイプライン1からブレンドガスを取り出せるようになっている。 [0068] 水素利用管理装置302は、システム制御部310、水素取出し部311、取出し水素供給部312、取出し水素量計測部313、取出し水素量通信部314、ガス戻し部315を備えている。水素取出し部311は、取出しガス流量計3111と、ブレンドガスを昇圧して昇温する昇温昇圧調整器3112と、ブレンドガスから水素を分離する水素分離膜ユニット3113を備えている。 [0069] 取出し水素供給部312は、圧力温度流量調整器3121を備える。取出し水素量計測部313は、水素ガス流量計3131を備える。システム制御部310は、システム制御ユニット3101を備える。取出し水素量通信部314は、通信ユニット3141を備える。ガス戻し部315は、ブレンドガスを減圧して冷却する減圧冷却調整器3151と、戻しガス流量計3152を備える。 ・・・ [0072] そして、昇温昇圧調整器3112は、ガスパイプライン1から取り出したブレンドガスを水素分離膜ユニット3113で水素を分離するために必要な温度と圧力に調整する。例えば、ブレンドガスの導入圧力が0.3MPa、温度が80℃で水素を99.99998%の精度で分離する能力を有する水素分離膜ユニット3113を使用する場合、昇温昇圧調整器3112は、ブレンドガスの圧力を0.1MPaから0.3MPaに昇圧し、ブレンドガス温度を10~17℃から80℃に昇温する。 [0073] 水素分離膜ユニット3113で利用可能な水素分離膜の例として、Pd、Nb、V、Ti、Ni、Cu、Agなどを含んだ金属膜、ポリイミドなどの高分子膜、シリカや窒化ケイ素やSiCやアルミナを用いたセラミック膜、グラフェンなどの炭素膜、さらにこれらの膜の組合せなどがある。 ・・・ [0075] 水素分離膜ユニット3113は、昇温昇圧調整器3112で0.3Mpa、80℃に調整されたブレンドガスからで99.9998%の水素ガスを取り出して、圧力温度流量調整器3121に送る。そして、水素分離膜ユニット3113は、残りの戻しガスをガス戻し部315に戻す。 ・・・ [0078] ブレンドガス(0.3MPa、80℃)から水素が分離された後の都市ガスが主成分の戻しガスは、圧力が0.3MPa未満、温度が80℃程度である。この場合、減圧冷却調整器3151は、ガスパイプライン1に戻せる条件である圧力0.1MPa、温度10~17℃に調整する。調整後の戻しガスは、戻しガス流量計3152を通してガスパイプライン1に戻される。戻しガス流量計3152として、超音波式、コリオリ式、熱線式などが利用できる。」 (エ) 「[0080](本実施形態の効果) 以上説明した本実施形態では、次の(A)~(D)のような効果がある。 (A) 本発明の方法および装置により、クリーンエネルギーとして製造された水素に関して、経済性、安全性、利便性と地球温暖化対策を満たした水素供給が可能となる。 (B) 水素供給装置は、水素利用装置へ低コストかつ安全に水素を供給することができる。 (C) 水素利用装置は、水素供給装置に事前に連絡することなく必要な時に必要な量の水素を利用できる。 (D) 水素利用装置における二酸化炭素排出を防止可能である。」 (オ) 「[図3] [図:0001412308000001.jpg] 」 (カ) 「[図8] [図:0001412308000002.jpg] 」 イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第1号証には、ガスパイプラインから供給されるブレンドガスから水素を取り出す水素取出し部と、前記水素取出し部が取り出した水素を水素利用装置に供給する取出し水素供給部と、前記水素取出し部が取り出して前記水素利用装置に供給する水素利用量を計測する取出し水素量計測部と、前記取出し水素量計測部が計測した水素利用量の情報を外部に送信する取出し水素量通信部と、前記水素取出し部が水素を分離した後のガスを前記ガスパイプラインに戻すガス戻し部と、を備える水素利用管理装置が記載されている。 そして、前記ア(ウ)、(カ)の記載によれば、前記ガスパイプラインには天然ガスが主成分に調整された都市ガス(13A)に水素がブレンドされたブレンドガスが流れており(段落[0066])、前記水素利用管理装置は前記ガスパイプラインに接続されて、前記ガスパイプラインから前記ブレンドガスを取り出せるようになっており、前記水素利用管理装置は、システム制御部、水素取出し部、取出し水素供給部、取出し水素量計測部、取出し水素量通信部、ガス戻し部を備え、前記水素取出し部は、取出しガス流量計と、ブレンドガスを昇圧して昇温する昇温昇圧調整器と、ブレンドガスから水素を分離する水素分離膜ユニットを備えるものである(段落[0067]~[0068])。 また、水素分離膜ユニットで利用可能な水素分離膜の例として、Pd、Nb、V、Ti、Ni、Cu、Agなどを含んだ金属膜があり(段落[0073])、水素分離膜ユニットは、昇温昇圧調整器で0.3Mpa、80℃に調整されたブレンドガスから99.9998%の水素ガスを取り出して、圧力温度流量調整器に送り、残りの戻しガスをガス戻し部に戻すものであり(段落[0075])、ブレンドガス(0.3MPa、80℃)から水素が分離された後の都市ガスが主成分の前記戻しガスは、圧力が0.3MPa未満、温度が80℃程度であり、この場合、減圧冷却調整器は、前記ガスパイプラインに戻せる条件である圧力0.1MPa、温度10~17℃に調整し、調整後の前記戻しガスは、戻しガス流量計を通して前記ガスパイプラインに戻されるものである(段落[0078])。 更に、前記ア(イ)、(オ)の記載によれば、前記水素取出し部は分離方法に適した条件(温度、圧力など)に合わせるための加圧・減圧・加熱・冷却などを行う機構を備えていると好適であり(段落[0040])、前記ア(エ)の記載によれば、前記水素利用管理装置により、クリーンエネルギーとして製造された水素に関して、経済性、安全性、利便性と地球温暖化対策を満たした水素供給が可能となるものである。 ウ 前記イによれば、甲第1号証には,以下の発明が記載されているといえる。 「ガスパイプラインから供給されるブレンドガスから水素を取り出す水素取出し部と、前記水素取出し部が取り出した水素を水素利用装置に供給する取出し水素供給部と、前記水素取出し部が取り出して前記水素利用装置に供給する水素利用量を計測する取出し水素量計測部と、前記取出し水素量計測部が計測した水素利用量の情報を外部に送信する取出し水素量通信部と、前記水素取出し部が水素を分離した後のガスを前記ガスパイプラインに戻すガス戻し部と、を備える水素利用管理装置であって、 前記ガスパイプラインには天然ガスが主成分に調整された都市ガス(13A)に水素がブレンドされたブレンドガスが流れており、 前記水素利用管理装置は、前記ガスパイプラインに接続されて、前記ガスパイプラインから前記ブレンドガスを取り出せるようになっており、 前記水素利用管理装置は、システム制御部、水素取出し部、取出し水素供給部、取出し水素量計測部、取出し水素量通信部、ガス戻し部を備え、 前記水素取出し部は、取出しガス流量計と、ブレンドガスを昇圧して昇温する昇温昇圧調整器と、ブレンドガスから水素を分離する水素分離膜ユニットを備え、 水素分離膜ユニットで利用可能な水素分離膜の例として、Pd、Nb、V、Ti、Ni、Cu、Agなどを含んだ金属膜があり、 前記水素分離膜ユニットは、昇温昇圧調整器で0.3Mpa、80℃に調整されたブレンドガスから99.9998%の水素ガスを取り出して、圧力温度流量調整器に送り、残りの戻しガスを前記ガス戻し部に戻すものであり、 ブレンドガス(0.3MPa、80℃)から水素が分離された後の都市ガスが主成分の前記戻しガスは、圧力が0.3MPa未満、温度が80℃程度であり、この場合、減圧冷却調整器は、ガスパイプラインに戻せる条件である圧力0.1MPa、温度10~17℃に調整し、調整後の戻しガスは、戻しガス流量計を通してガスパイプラインに戻され、 前記水素取出し部は分離方法に適した条件(温度、圧力など)に合わせるための加圧・減圧・加熱・冷却などを行う機構を備えていると好適であり、 前記水素利用管理装置により、クリーンエネルギーとして製造された水素に関して、経済性、安全性、利便性と地球温暖化対策を満たした水素供給が可能となる、水素利用管理装置。」(以下、「甲1発明」という。) (2) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下のア~エの記載がある。 ア 「1. はじめに 水素社会を実現するためには,高効率な水素製造技術が必要不可欠である.ここで水素社会とは,究極の低炭素燃料である水素をエネルギー媒体として広く利用する社会であり,低炭素社会の最も有力な形態の一つとして期待されているものである.特に,輸送分野においては,燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)に水素燃料を供給する水素ステーション用に,高純度(≧99.99%)な水素を高効率に製造する装置が求められている. ・・・ 東京ガス(株)では,これらの技術課題を解決するため,都市ガス(天然ガスベース)を原料とする,水素分離型改質器(membrane reformer)の開発を進めてきた1~4).本稿では,水素分離型改質器およびそのキーデバイスであるPd系水素分離膜について解説するとともに,東京ガス(株)における開発事例を紹介する. 2. 水素分離型改質器とは 2.1 構成 水素分離型改質器は,天然ガス(主成分:CH4)と水蒸気から水素を生成する反応(水蒸気改質反応)を促進する触媒と,水素選択透過性を有するPd系水素分離膜を一つの反応器内に配した,膜反応器(membrane reactor)型の水素製造装置である。 Fig.1に水素分離型改質器の原理図を示す.反応器内に配置された触媒は,水蒸気改質反応とCO変性反応の両方に活性を有する触媒(Ni系またはRu系触媒)である.また,実際の水素分離型改質器では,Pd系水素分離膜は,Fig.1に示したような自立膜ではなく,多孔質支持体上に膜が形成された複合膜である.・・・反応器内では,水蒸気とともに導入された天然ガス(CH4)が,与えられた温度・圧力条件での平衡組成となるまで,水素を含む混合ガスへと改質・変成される.この混合ガスからは,Pd系水素分離膜の水素透過機構(後述)により水素だけが引き抜かれ,残ったガス(オフガス)は反応器を熱する燃料として再利用される. 2.2 (特長1)シンプル・コンパクト 水素分離型改質器は,シンプルでコンパクトな水素製造装置である.従来方式の水素製造装置が,水蒸気改質器に加え,CO変成器,水素精製器(PSA),PSAオフガス用バッファタンクを必要とするのに対し,水素分離型改質器では,水素の生成と精製を一つの反応器内で行うことができる.」(60ページ左欄1行~61ページ右欄12行) イ 「4. (開発事例1)40Nm3/h-H2級実証システム 4.1 開発の経緯 東京ガス(株)は,1992年度に三菱重工業(株)と共同で,水素分離型改質器の開発に着手し,2003年度には40Nm3/h-H2級実証システムを製作,これをベースに2007年度には水素製造効率80%HHV以上のシステムとして完成した1~3).・・・ 4.2 システムの構成 Fig.3に40Nm3/h-H2級実証システムの構成を示す.システムの大きさは,幅3.6m×奥行き2.6m×高さ2.3mであり,同等の水素製造能力を有する従来(SMR-PSA)方式の水素製造システムに比べて体積比で約1/3のコンパクトさである.システムの中には,断熱材に覆われた水素分離型改質器本体のほか,ボイラー,空気ブロア,高温循環ブロア,熱交換器などの補機が含まれている.水素分離型改質器は,128本の反応管から構成され,1つの反応管は2つの水素分離膜モジュールを内蔵している.水素分離膜モジュールは,外形寸法が幅40mm×長さ460mm×厚さ10mmの平板型であり,改質触媒とともに,Pd合金からなる水素分離膜(膜厚<20μm)が金属製支持体の両面に配置された構成となっている.」(62ページ右欄28行~63ページ左欄11行) ウ 「 [図:0001412308000003.jpg] 」(61ページ左欄) エ 「 [図:0001412308000004.jpg] 」(63ページ左欄) 2 対比・判断 (1) 対比 ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ガスパイプライン」は「都市ガス(13A)」が流れるものであるから、本件発明1における「都市ガスパイプライン」に相当し、甲1発明において「前記ガスパイプラインに」「天然ガスが主成分に調整された都市ガス(13A)に水素がブレンドされたブレンドガスが流れ」ていることは、本件発明1において「都市ガスパイプラインに対して水素が供給され」ることに相当する。 また、甲1発明における「水素取出し部」は、「取出しガス流量計と、ブレンドガスを昇圧して昇温する昇温昇圧調整器と、ブレンドガスから水素を分離する水素分離膜ユニットを備え」るものであるから、本件発明1における「水素精製装置」に相当し、甲1発明において「水素取り出し部」の「水素分離膜ユニット」により「昇温昇圧調整器で0.3Mpa、80℃に調整されたブレンドガスから99.9998%の水素ガスを取り出」すことは、本件発明1において「メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離され」ることに相当し、甲1発明における「水素利用管理装置」は、「クリーンエネルギーとして製造された水素に関して、経済性、安全性、利便性と地球温暖化対策を満たした水素供給が可能となる」ものであるから、本件発明1における「エネルギー生成に活用される水素活用システム」に相当する。 更に、甲1発明における「水素分離膜ユニット」は、「ブレンドガスから水素を分離する」ものであるから、本件発明1における「前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜」に相当し、甲1発明において「水素取出し部」が「ブレンドガスから水素を分離する水素分離膜ユニットを備え」ることは、本件発明1において「前記水素精製装置」が「前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜」「を備え」ることに相当し、甲1発明における「ガス戻し部」は、「ブレンドガス(0.3MPa、80℃)から水素が分離された後の都市ガスが主成分の前記戻しガス」を「ガスパイプラインに戻」すものであるから、本件発明1における「前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路」に相当する。 イ 前記アによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、 前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜を備え、 前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路を備えている、水素活用システム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「水素活用システム」における「水素精製装置」が「水素分離膜を加熱する加熱手段」「を備え、前記加熱手段は、前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱」するものであるのに対して、甲1発明はそのような「加熱手段」を備えない点。 ・相違点2:本件発明1は、「水素活用システム」が「戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備え」ているのに対して、甲1発明は、「ガス戻し部」が「減圧冷却調整器」や「戻しガス流量計」を備えている点。 (2) 判断 ア 始めに、前記(1)イの相違点1から検討すると、甲第2号証には、天然ガス(主成分:CH4)と水蒸気から水素を生成する反応(水蒸気改質反応)を促進する触媒と、水素選択透過性を有するPd系水素分離膜を一つの反応器内に配した、膜反応器(membrane reactor)型の水素製造装置である水素分離型改質器において、反応器内で、水蒸気とともに導入された天然ガス(CH4)が与えられた温度・圧力条件での平衡組成となるまで水素を含む混合ガスへと改質・改変され、この混合ガスから、Pd系水素分離膜の水素透過機構により水素だけが引き抜かれ、残ったガス(オフガス)は反応器を熱する燃料として再利用されることが記載されている(前記1(2)ア)。 前記記載からみれば、前記水素分離型改質器においては、水蒸気とともに導入された天然ガス(CH4)が、水蒸気改質反応により水素を含む混合ガスへと改質・改変され、その内部に前記触媒及び前記Pd系水素分離膜が配された前記反応器が、前記混合ガスから前記Pd系水素分離膜により水素だけが引き抜かれて残ったガス(オフガス)を燃料として加熱されるものといえる。 ところが、甲1発明における「水素膜分離ユニット」は、「都市ガス(13A)に水素がブレンドされた」「ブレンドガス」から「水素ガス」を分離して取り出すものに過ぎず、水蒸気とともに導入された天然ガス(CH4)を、水蒸気改質反応により水素を含む混合ガスへと改質・改変する水素分離型改質器とはいえないから、そもそも、甲1発明に、甲第2号証に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しない。 イ 更に、甲第2号証には、「水素分離膜を加熱する加熱手段」が、「前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱」することは記載も示唆もされていないから、甲1発明を前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 ウ 前記ア、イによれば、前記(1)イの相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明2~4について検討しても事情は同じである。 3 申立人の主張について (1) 申立人の主張の概要 特許異議申立書における申立人の主張の内容は、概略、以下のとおりである。 本件発明における構成要素[B]、すなわち「前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜と、水素分離膜を加熱する加熱手段とを備え」ることについて、甲第1号証には段落[0040]、[0068]、[0075]の記載がある。 そして、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄積されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器を備えていない点、加熱手段としてガス式加熱器と電気式加熱器とを条件に応じて選択的に用いることが記載されていない点で相違するが、甲第2号証には、混合ガスから、Pd系水素分離膜の水素透過機構(後述)により水素だけが引き抜かれ、残ったガス(オフガス)は反応器を熱する燃料として再利用されることが記載されており、これは、「水素分離膜の加熱に使用されるエネルギーを極力少なくして、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うことを解決課題として挙げていることに対応する。」という本件特許の審査の過程で令和5年5月2日に提出した意見書における主張と同様のことである。 また、非常時に蓄電池から電源を供給し、動作を確保することは通常行われている技術であるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(5ページ11行~7ページ22行、7ページ32行~8ページ18行)。 (2) 申立人の主張についての判断 ア 甲第1号証の段落[0040]、[0068]、[0075](前記1(1)イ、ウ)には、甲第1号証に記載された発明における「水素取出し部」は、水素分離膜法、圧力変動吸着分離法(PSA:Pressure Swing Adsorption)、温度変動吸着分離法(TSA:Thermal. Swing Adsorption)などの分離機構を備え、前記分離方法に適した条件(温度、圧力など)に合わせるための加圧・減圧・加熱・冷却などを行う機構を備えていると好適であること(段落[0040])、前記「水素取出し部」は、取出しガス流量計と、「ブレンドガス」を昇圧して昇温する昇温昇圧調整器と、「ブレンドガス」から水素を分離する「水素分離膜ユニット」を備えていること(段落[0068])、前記「水素分離膜ユニット」は、昇温昇圧調整器で0.3Mpa、80℃に調整されたブレンドガスから99.9998%の水素ガスを取り出して、圧力温度流量調整器に送り、残りの戻しガスをガス戻し部に戻すこと(段落[0075])が記載されている。 そして、これらの記載からみれば、甲第1号証には、「水素取出し部」の「水素分離膜ユニット」に供給する「ブレンドガス」を昇圧して昇温することが記載されているに過ぎないのであり、「水素分離膜ユニット」を加熱することが記載されているとはいえないし、甲第1号証のそのほかの記載をみても、甲第1号証には、本件発明1における前記構成要素[B]のうち、「前記水素精製装置」が「水素分離膜を加熱する加熱手段」「を備え」ることが記載されているとはいえない。 イ また、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しないことは、前記2(2)アに記載したとおりであるが、仮に、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせたとしても、甲第2号証には、水素を引き抜かれた残ったガス(オフガス)を反応器を熱する燃料として再利用することが記載されているに過ぎず、「都市ガスパイプライン」の「メタンガスと水素とを含む混合ガス」「を燃焼させて加熱するガス式加熱器」が記載されるものではないし、ましてや、「前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器」は記載も示唆もされていない。 してみれば、甲第2号証に記載された水素分離型改質器が、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギーを極力少なくして、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うものである点で本件発明1と同様であり、また、非常時に蓄電池から電源を供給し、動作を確保することが通常行われている技術であるとしても、前記2(2)イの事情に変わりはないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、前記(1)の申立人の主張は採用できない。 4 小括 したがって、本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700144

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