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特許拒絶査定不服審判

2024-020636

ジャンプスタート用電流共有システムを備えたジャンプスタート装置及びジャンプスタート用電流共有方法

審判番号
2024-020636
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-534654
請求日
2024年12月24日
審決日
2026年01月07日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ・ノコ・カンパニー
  • 【請求人代理人】山尾 憲人
  • 【請求人代理人】前堀 義之
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 丸山 高政
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P18 .121-Z (H02J) / P18 .57 -Z (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項
データ出所
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特願2022-534654「ジャンプスタート用電流共有システムを備えたジャンプスタート装置及びジャンプスタート用電流共有方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年6月17日国際公開、WO2021/119656、令和5年2月3日国内公表、特表2023-504580〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)12月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年12月9日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 6月13日付け 拒絶理由通知書 11月13日 意見書・手続補正書 令和 6年 1月31日 拒絶理由通知書 5月 2日 意見書・手続補正書 8月19日付け 拒絶査定 12月24日 審判請求書・手続補正書 令和 7年 2月14日付け 前置報告書 4月16日 上申書 8月26日付け 審尋 9月24日 回答書 以下では、令和6年5月2日の意見書を単に「意見書」といい、同年8月19日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年12月24日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正の内容を示すために、本件補正前後の請求項1の記載を、それぞれ以下の(1)及び(2)に示す。 (1)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の令和6年5月2日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。 【請求項1】 消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であって、前記装置は、 プラス端子及びマイナス端子を有する充電式バッテリと、 前記充電式バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含み、前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含み、ジャンプスタータの使用時に前記充電式バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され、ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタによって共有される、スイッチと、 前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプと、を備える、ジャンプスタート装置。 (2)本件補正後の請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 【請求項1】 消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であって、前記装置は、 プラス端子及びマイナス端子を有する充電式バッテリと、 前記充電式バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含み、前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された1つまたは複数のリレー及び1つまたは複数の電界効果トランジスタ(FET)を含み、前記充電式バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され、ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は1つまたは複数のリレー及び1つまたは複数の電界効果トランジスタによって共有される、スイッチと、 前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプと、を備え、 前記1つまたは複数の電界効果トランジスタはパルス幅変調され、 前記スイッチは、前記ジャンプスタート用電流共有回路において前記1つまたは複数のリレーと前記1つまたは複数の電界効果トランジスタを選択的に接続するように構成された複数の回路スイッチを含む、 ジャンプスタート装置。 2 本件補正の目的、本件補正の適否 本件補正は、請求項1に係る発明を特定する事項である「リレー」について、本件補正前は「単一の」リレーであったのを、本件補正後は「1つまたは複数の」リレーへと拡張すると共に、請求項1に係る発明を特定する事項である「電界効果トランジスタ」について、本件補正前は「複数の」電界効果トランジスタであったのを、本件補正後は「1つまたは複数の」電界効果トランジスタへと拡張する補正を含むものであり、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとは認められない。 また、上記補正が、特許法17条の2第5項1号に掲げる「請求項の削除」、同項3号に掲げる「誤記の訂正」及び同項4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」のいずれにも該当しないことは、明らかである。 よって、本件補正は、特許法17条の2第5項1号~4号に掲げるいずれの目的にも該当しない補正を含むものであるから、同項に規定する要件に違反し、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は前記第2のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 なお、後の参照の便宜のため、請求項1の記載に記号1A~1Eを付して以下のように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。 【請求項1】 1A 消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であって、前記装置は、 1B プラス端子及びマイナス端子を有する充電式バッテリと、 1C1 前記充電式バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含み、 1C2 前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含み、 1C3 ジャンプスタータの使用時に前記充電式バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され、 1C4 ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタによって共有される、 1C スイッチと、 1D 前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプと、 1E を備える、ジャンプスタート装置。 第4 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項8~10に係る発明は、文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1~4、6及び17に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献3~5に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項5及び7に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献2~5に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項8~11及び13に係る発明は、文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項12及び14~16に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献2に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 文献1.中国特許出願公開第110011371号明細書 文献2.特開2014-172602号公報 文献3.特開2019-161693号公報 文献4.実願昭51-14162号(実開昭52-107337号)のマイクロフィルム 文献5.特開2017-184333号公報 第5 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由で引用された中国特許出願公開第110011371号明細書(以下「引用文献」という。)には以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。 1 [図:0001435822000001.jpg] (当審訳: [0029]上記の原理に基づき、図1は本発明の第1実施例が提供するスマートバッテリクランプの構造原理を示す。このスマートバッテリクランプは自動車の緊急始動に使用する。図1によると、このスマートバッテリクランプ2は始動電源1と自動車バッテリ3を接続し、自動車バッテリ3の劣化あるいはその他の原因により蓄電能力が不足する時、始動電源1はこのスマートバッテリクランプ2から自動車バッテリー3に充電を行い、自動車の始動時点火を行う。) 2 [図:0001435822000002.jpg] (当審訳: [0031]図2はスマートバッテリクランプの外観図である。使用時2つの入力端子Vin+とVin-はそれぞれ始動電源1の正極と負極に接続し、2つのクランプ端子Vout+とVout-はそれぞれ自動車バッテリ3の正極と負極を挟む。) 3 [図:0001435822000003.jpg] (当審訳: [0037]第1実施例と合わせて本発明の第2実施例は上記充電部の一種の電気回路を提供する。図3に示すように、Bat+は始動電源1の正極11、Bat-は始動電源1の負極12を表し、Vout+とVout-はそれぞれ自動車バッテリ3の正極と負極を挟む2つのクランプ端子を表す。) 4 [図:0001435822000004.jpg] (当審訳: [0038]この充電部のメイン充電回路21はおもに大きな電流を流すための回路であり、自動車の始動に適用する。図3に示すように、メイン充電回路21はメインスイッチ211を含み、メインスイッチ211を接続した時、始動電源1と自動車バッテリ3間に回路が形成され充電が実現する。メインスイッチ211を切断した時、始動電源1はメイン充電回路21を通じて自動車バッテリ3の充電を停止する。メインスイッチ211はリレーに基づき実現し、多くの並列スイッチ(例えば並列MOSチューブ)あるいはその他の大電流に適用するスイッチにも基づき実現することが可能である。) 5 [図:0001435822000005.jpg] (当審訳: [0039]この充電部のバイパス充電回路22は一つのバイパスモジュール221を含み、同様にバイパスモジュール221は一つのバイパススイッチに基づき実現する。このスイッチは電界効果トランジスタの導通方向が対立するMOSチューブでも可能であり、信号リレー、フォトカプラも可能である。このバイパススイッチを接続した時、始動電源1と自動車バッテリ3間に回路が形成され、予備充電が実現する。バイパススイッチを切断した時、始動電源1はバイパス充電回路22を通じて自動車バッテリ3への予備充電を停止する。そのほかバイパスモジュール221は限流抵抗器と/あるいはダイオードも含み、バイパスを過大な電流が流れる、あるいは逆流することを防ぐ。) 6 [図:0001435822000006.jpg] (当審訳: [0040]制御装置23はMCU231に基づき実現する。例えばHR7P169B、HR7P153、HT66F0175、HT66F0172のMCUが可能である。図4はMCU231の部分のポートを示している。その中のポート1とポート10はそれぞれGND端子と電源入力端子VCCであり、MCU231への電力供給に使用する。これらはスマートバッテリクランプ2と始動電源1の接続部から電気エネルギーを取得することが可能であり、またスマートバッテリクランプ2と自動車バッテリ3を接続するクランプ端子からも電気エネルギーを取得することが可能である。どちらか一方の端子に電力があれば、スマートバッテリクランプ2は動作することが可能となり、MCU231は状態を提示することが可能となる。ポート2は出力電圧サンプリング端子であり、スマートバッテリクランプ2のクランプ端子の出力電圧に対しサンプリングを行う。ポート3は入力電圧サンプリング端子であり、スマートバッテリクランプ2と始動電源1の接続部の入力電圧に対しサンプリングを行う。ポート4は電流サンプリング端子であり、始動電源1からスマートバッテリクランプ2へ流れる電流のサンプリングを可能とし、またスマートバッテリクランプ2から始動電源1に逆流する電流のサンプリングも可能であり、これにより始動電源1への逆流を防止し、始動電源1を保護することが可能となる。ポート5はクランプ温度サンプリング端子である。ポート6はバイパス駆動信号端子SWであり、バイパスモジュール221に出力駆動信号を発信し、バイパスモジュール221の接続を制御する。ポート7はメイン駆動信号端子Relayであり、メインスイッチ211に出力駆動信号を発信し、メインスイッチ211の接続を制御する。ポート8は音警報信号出力端子であり、音により情報を提示しユーザーに現在の状態を知らせる。ブザー類に接続した音装置である。ポート9は光電子警報信号出力端子であり、LEDランプやLEDニキシー管に接続して情報を提示することが可能である。その中でLEDランプは一つあるいは複数に接続可能であり、また異なる色のLEDランプが可能である。LEDニキシー管も異なる色を使用することが可能であり、数値あるいは文字を提示して異なる動作状態を表す。例えば現在バイパス充電回路22の予備充電状態か、メイン充電回路21の充電状態のどちらかを表し、やスマートバッテリクランプ2の温度状態などを表す。) 7 [図:0001435822000007.jpg] (当審訳: [0048]異なる自動車バッテリ3の電気抵抗値は異なるであろうことを考慮すると、固定された電気抵抗値を使用するバイパスモジュールが的確に自動車バッテリを識別することは恐らく不可能である。そのため第1、第2実施例と合わせて、本発明の第3実施例は上記充電部のもう一つの回路構造を提供する。図5に示すように、本実施例中のバイパス充電回路22は少なくとも二つの異なる電気抵抗値のサブバイパス充電回路を含み、その中の各サブバイパス充電回路は、スマートバッテリクランプ2の入力端子とクランプ端子間を並列に接続している。具体的には第2実施例の基礎に多くのバイパスモジュールを設置することが可能であり、図5では二つのバイパスモジュールを例示している。) 8 [図:0001435822000008.jpg] (当審訳: [0069]しかしメイン充電回路21の中のメインスイッチ211の接続動作を遅くする(例えばメインスイッチ211がリレーを使用する時)ことを考慮することが好ましい。バイパス充電回路22を直ちに切断した場合、この時メインスイッチ211は完全に接続していない可能性がある。制御装置23が出力電圧を検出し続けられるよう、メイン充電回路21とバイパス充電回路22の切替時間が接続時間に重なるよう設定すべきである。同様にメイン充電回路21を切断する時は、メイン充電回路21がバイパス充電回路22の接続前に切断することを回避するため、事前にバイパス充電回路22を接続しなければならない。つまりメイン充電回路21とバイパス充電回路22は共に接続し、接続時間は推移する。そのためメイン充電回路21の充電サイクルにおいて、制御装置23はメイン充電回路21を接続し、予め設定された第1レイテンシーの経過後バイパス充電回路22を切断する。制御装置23はメイン充電回路21を切断し、予め設定された第2レイテンシーの経過後バイパス充電回路22を切断する。残り時間はバイパス充電回路22の接続状態を維持する。) 9 [図:0001435822000009.jpg] (当審訳: [0070]上述した各実施例を合わせて、本発明の第5実施例はスマートバッテリクランプを内蔵する一体型始動電源装置も提供する。図6に示すように、この一体型始動電源装置6は始動電源61とスマートバッテリクランプ62を含む。本実施例中の始動電源61は上述した各実施例中の始動電源1と同一であり、本実施例中のスマートバッテリクランプ62は上述した各実施例中のスマートバッテリクランプ2と同一である。始動電源61はバッテリ部分とMCU1を含み、MCU1にもスイッチユニット611を接続している。スイッチユニット611はボタン型に設計することが可能である。始動電源61は自身のMCU1とスマートバッテリクランプ62の制御装置MCU2を通じてデジタル通信を実行する。) 10 図1 [図:0001435822000010.jpg] (当審訳: [図:0001435822000011.jpg] ) 図1によれば、始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続されていると解される。 11 図4 [図:0001435822000012.jpg] (当審訳: [図:0001435822000013.jpg] ) 12 図5 [図:0001435822000014.jpg] (当審訳: [図:0001435822000015.jpg] ) 13 図6 [図:0001435822000016.jpg] (当審訳: [図:0001435822000017.jpg] ) 第6 引用発明の認定 引用文献には、「上述した各実施例を合わせて、本発明の第5実施例はスマートバッテリクランプを内蔵する一体型始動電源装置も提供する。」([0070])との記載があるので、引用文献に記載された発明(以下「引用発明」という。)として、特に第3実施例と合わせた第5実施例を認定する。 1 引用発明を認定するにあたり、引用文献には、「始動電源61は」「始動電源1と同一であり、」「スマートバッテリクランプ62は」「スマートバッテリクランプ2と同一である。」([0070])と記載されているので、「始動電源61」及び「スマートバッテリクランプ62」をそれぞれ「始動電源1」及び「スマートバッテリクランプ2」に読み替えて認定する。 2 引用文献には、「第1、第2実施例と合わせて、本発明の第3実施例は上記充電部のもう一つの回路構造を提供する。図5に示すように、本実施例中のバイパス充電回路22は少なくとも二つの異なる電気抵抗値のサブバイパス充電回路を含み、その中の各サブバイパス充電回路は、スマートバッテリクランプ2の入力端子とクランプ端子間を並列に接続している。具体的には第2実施例の基礎に多くのバイパスモジュールを設置することが可能であり、図5では二つのバイパスモジュールを例示している。」([0048])との記載があり、該記載によれば、第3実施例は、2つのバイパスモジュールとして、2つのサブバイパス充電回路を設置したものであり、それらは図5におけるバイパスモジュール1及びバイパスモジュール2として示されたものと解される。 そして、図5のバイパスモジュール1及び2には、それぞれMCUからSW1及びSW2として示される信号が入力されている。電気回路においてSWという記号はスイッチを表すものと解されるから、図5のバイパスモジュール1及び2にはスイッチが備えられていると解され、当該スイッチは、第2実施例で説明される「バイパスモジュール221」を実現する「バイパススイッチ」([0039])と同じと解される。 以上によれば、引用文献には、第3実施例について、バイパス充電回路22は少なくとも二つの異なるサブバイパス充電回路を含み([0048])、各サブバイパス充電回路は、バイパススイッチに基づき実現し、このスイッチは電界効果トランジスタの導通方向が対立するMOSチューブである([0039])ことが記載されていると認められる。 3 引用文献には、「図4はMCU231の部分のポートを示している。」「ポート7はメイン駆動信号端子Relayであり、メインスイッチ211に出力駆動信号を発信し、メインスイッチ211の接続を制御する。」([0040])と記載されており、該記載によれば、Relayはメインスイッチに対する駆動信号であると解される。 そして、図5において、Relayと記載された信号がバイパスモジュール直下のスイッチに入力されていることから、当該スイッチは、メインスイッチすなわち「リレーに基づき実現」される「メインスイッチ211」([0038])であると解される。 図5において、他にメインスイッチとなる構成は記載されていないから、引用文献には、第3実施例について、メインスイッチ211はただ1つ存在し、メインスイッチ211は、単一のリレーで実現されることが記載されていると認められる。 4 前記1~3及び前記第5の記載によれば、引用文献には以下に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、後の参照の便宜のため、引用発明に記号a~lを付して次のように分説する。 〈引用発明〉 a 始動電源1とスマートバッテリクランプ2を含む一体型始動電源装置6であって、([0070]) b 自動車バッテリ3の劣化あるいはその他の原因により蓄電能力が不足する時、始動電源1はスマートバッテリクランプ2から自動車バッテリ3に充電を行い、自動車の始動時点火を行い、([0029]) c 使用時2つのクランプ端子Vout+とVout-はそれぞれ自動車バッテリ3の正極と負極を挟み、([0031]) d Bat+は始動電源1の正極11、Bat-は始動電源1の負極12を表し、([0037]) e 始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続され、(図1) f メイン充電回路21はメインスイッチ211を含み、メインスイッチ211を接続した時、充電が実現し、メインスイッチ211はリレーに基づき実現し、([0038]) g メインスイッチ211はただ1つ存在し、メインスイッチ211は、単一のリレーで実現され、(前記3) h バイパス充電回路22は少なくとも二つの異なるサブバイパス充電回路を含み、各サブバイパス充電回路は、バイパススイッチに基づき実現し、このスイッチは電界効果トランジスタの導通方向が対立するMOSチューブであり、(前記2) i バイパススイッチを接続した時、予備充電が実現し、([0039]) j メイン充電回路21とバイパス充電回路22の切替時間が接続時間に重なるよう設定し、メイン充電回路21とバイパス充電回路22は共に接続し、([0069]) k 始動電源1はバッテリ部分を含む、([0070]) l 一体型始動電源装置6。 第7 本願発明と引用発明との対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 1 発明特定事項1A及び1Eについて 発明特定事項1Aは「消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であって、前記装置は、」というものであり、発明特定事項1Eは「を備える、ジャンプスタート装置。」というものである。 引用発明の「一体型始動電源装置6」は「始動電源1とスマートバッテリクランプ2を含」み(構成a)、「自動車バッテリ3の劣化あるいはその他の原因により蓄電能力が不足する時、始動電源1はスマートバッテリクランプ2から自動車バッテリ3に充電を行い、自動車の始動時点火を行」う(構成b)から、「一体型始動電源装置6」は、「蓄電能力が不足」した「自動車バッテリ3に充電」することで「自動車」のジャンプスタートを行う装置に他ならず、本願発明の「ジャンプスタート装置」に相当する。 そして、「蓄電能力が不足」した「自動車バッテリ3」は、本願発明の「消耗又は放電したバッテリ」に相当する。 以上によれば、本願発明と引用発明とは、「消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であ」る点で一致する。 なお、本願発明の「ジャンプスタート装置」が発明特定事項1B~1Dを備える点は、以下の2~8のとおりである。 2 発明特定事項1Bについて 発明特定事項1Bは「プラス端子及びマイナス端子を有する充電式バッテリと、」というものである。 引用発明の「始動電源1」は、「バッテリ部分を含む」(構成k)から、バッテリであり、「正極11」と「負極12」を備える(構成d)。 引用発明の「正極11」及び「負極12」は、それぞれ本願発明の「プラス端子」及び「マイナス端子」に対応する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、正極及び負極「を有するバッテリ」を備える点で共通するものの、本願発明のバッテリは「充電式」であるのに対し、引用発明の「始動電源1」は充電式であるか否かが特定されていない点で相違するとともに、本願発明の「プラス端子及びマイナス端子」は、「端子」として形成されているのに対し、引用発明の「正極11」及び「負極12」は、端子として形成されているか否かが特定されていない点で相違する。 3 発明特定事項1Cについて 事案に鑑み、発明特定事項1Cについて対比する。 発明特定事項1Cは「スイッチと、」というものであり、これにより、発明特定事項1C1~1C4は「スイッチ」についての特定事項となる。なお、発明特定事項1C1~1C4については、以下の4~7のとおりである。 引用発明では、「始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続され」(構成e)、「メイン充電回路21はメインスイッチ211を含み」(構成f)、「バイパス充電回路22は少なくとも二つの異なるサブバイパス充電回路を含み、各サブバイパス充電回路は、バイパススイッチに基づき実現」する(構成h)から、「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、いずれもスイッチに基づいて実現されるものである。そして、「メインスイッチ211を接続した時、充電が実現し」(構成f)、「バイパススイッチを接続した時、予備充電が実現」する(構成i)から、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、全体として始動電源1と自動車バッテリ3との間のスイッチとして機能し、本願発明の「スイッチ」に相当する。 4 発明特定事項1C1について 発明特定事項1C1は「前記充電式バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含み、」というものである。 (1)引用発明は、「自動車バッテリ3に充電を行い、自動車の始動時点火を行」う(構成b)ジャンプスタート装置であり(前記1)、引用発明では、「メイン充電回路21はメインスイッチ211を含み、メインスイッチ211を接続した時、充電が実現し」(構成f)、「バイパス充電回路22はバイパスモジュール221を含み、バイパスモジュール221はバイパススイッチに基づき実現し」「バイパススイッチを接続した時、予備充電が実現」する(構成i)から、「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、ジャンプスタート用の充電のための回路である。 そして、引用発明では、「メイン充電回路21とバイパス充電回路22の切替時間が接続時間に重なるよう設定し、メイン充電回路21とバイパス充電回路22は共に接続」する(構成j)から、ジャンプスタート用の充電のための電流は、「メイン充電回路21」を流れる充電電流及び「バイパス充電回路22」を流れる予備充電電流として、両回路で共有されるものである。 そうすると、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、ジャンプスタート用の充電のための電流を共有する回路であるから、本願発明の「ジャンプスタート用電流共有回路」に相当する。 (2)引用発明では、「始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続され」る(構成e)から、「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、「始動電源1」に電気的に接続されている。 (3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明の「スイッチ」と、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」とは、「前記バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含」む点で共通する。(バッテリが充電式であるか否かについての相違は、前記2のとおりである。) 5 発明特定事項1C2について 発明特定事項1C2は「前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含み、」というものである。 前記4(1)のとおり、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、本願発明の「ジャンプスタート用電流共有回路」に相当する。 そして、「メイン充電回路21はメインスイッチ211を含み」(構成f)、「メインスイッチ211はただ1つ存在し、メインスイッチ211は、単一のリレーで実現され」る(構成g)から、「メイン充電回路21」は、単一のリレーを含む。 また、「バイパス充電回路22は少なくとも二つの異なるサブバイパス充電回路を含み、各サブバイパス充電回路は、バイパススイッチに基づき実現し、このスイッチは電界効果トランジスタの導通方向が対立するMOSチューブであ」る(構成h)から、「バイパス充電回路22」は、複数の電界効果トランジスタを含む。 そうすると、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含む。 上記単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)が並列に配置されていることは、構成e及び図5から明らかである。 よって、本願発明の「スイッチ」と、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」とは、「前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含」む点で一致する。 6 発明特定事項1C3について 発明特定事項1C3は「ジャンプスタータの使用時に前記充電式バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され、」というものである。 (1)引用発明の「メイン充電回路21」は、「メインスイッチ211を接続した時、充電が実現」する(構成f)ものである。 また、引用発明では「バイパススイッチを接続した時、予備充電が実現し」(構成i)、「バイパス充電回路22は少なくとも二つの異なるサブバイパス充電回路を含み、各サブバイパス充電回路は、バイパススイッチに基づき実現」する(構成h)から、「バイパス充電回路22」は、「バイパススイッチを接続した時、予備充電が実現」するものである。 そうすると、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」は、充電を実現するためのものである。 (2)引用発明は、「自動車バッテリ3の劣化あるいはその他の原因により蓄電能力が不足する時、始動電源1はスマートバッテリクランプ2から自動車バッテリ3に充電を行」うものであり(構成b)、「始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続され」る(構成e)から、前記(1)の充電は、「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」が「始動電源1」から「蓄電能力が不足」した「自動車バッテリ3」へ電流を供給することに他ならない。 (3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明の「スイッチ」と、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」とは、「ジャンプスタータの使用時に前記バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され」る点で共通する。(バッテリが充電式であるか否かについての相違は、前記2のとおりである。) 7 発明特定事項1C4について 発明特定事項1C4は「ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタによって共有される、」というものである。 引用発明では、「始動電源1と自動車バッテリ3との間には、メイン充電回路21及びバイパス充電回路22が並列に接続され」(構成e)、「メイン充電回路21とバイパス充電回路22の切替時間が接続時間に重なるよう設定し、メイン充電回路21とバイパス充電回路22は共に接続」する(構成j)から、「自動車バッテリ3」を充電する電流は、「メイン充電回路21」と「バイパス充電回路22」とで共有される。 そして、「メイン充電回路21」が単一のリレーを含み、「バイパス充電回路22」が複数の電界効果トランジスタを含むことは、前記5のとおりであり、充電電流の共有は、単一のリレーと複数の電界効果トランジスタとの間で行われると解される。 よって、よって、本願発明の「スイッチ」と、引用発明の「メイン充電回路21」及び「バイパス充電回路22」とは、「ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタによって共有される」点で一致する。 8 発明特定事項1Dについて 発明特定事項1Dは「前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプと、」というものである。 引用発明の「クランプ端子Vout+」(構成c)は、本願発明の「バッテリクランプ」に相当する。 図5によれば、「クランプ端子Vout+」は、メイン充電回路21(リレー)及びバイパス充電回路22(バイパスモジュール1及び2)と電気的に接続されている。 よって、本願発明と引用発明とは、「前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプ」を備える点で一致する。 9 一致点及び相違点 前記1~8によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「消耗又は放電したバッテリを充電するためのジャンプスタート装置であって、前記装置は、 正極及び負極を有するバッテリと、 前記バッテリに電気的に接続されたジャンプスタート用電流共有回路を含み、前記ジャンプスタート用電流共有回路は並列に配置された単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタ(FET)を含み、ジャンプスタータの使用時に前記バッテリから前記消耗又は放電したバッテリへ電流を供給するように構成され、ジャンプスタータの使用時にスイッチを通って流れる電流は単一のリレー及び複数の電界効果トランジスタによって共有される、スイッチと、 前記ジャンプスタート用電流共有回路に電気的に接続されたバッテリクランプと、を備える、ジャンプスタート装置。」である点。 〈相違点〉 本願発明のバッテリは「充電式」であるのに対し、引用発明の「始動電源1」は充電式であるか否かが特定されていない点。(発明特定事項1B、1C1、1C3) それに関連し、本願発明の「プラス端子及びマイナス端子」は、「端子」として形成されているのに対し、引用発明の「正極11」及び「負極12」は、端子として形成されているか否かが特定されていない点。(発明特定事項1B) 10 請求人の主張について 本願発明と引用発明との対比について、請求人は、概略、以下の主張1及び2を主張する。 〈主張1〉 補正によって、請求項1に記載の発明がジャンプスタート用電流共有回路を有し、そこではリレーとFETとが並列に配置されて電流が共有されることを明確にした。対照的に、引用発明においては、メイン回路とバイパス回路とは、別々に使用され、充電動作中に、2つの回路が電流を共有することはない。 (意見書「(3)本願発明が特許されるべき理由」) 〈主張2〉 補正により、本願のジャンプスタート用電流共有回路において、1つまたは複数の電界効果トランジスタがパルス幅変調される、という特定を追加した。引用文献にはパルス幅変調に関する記載はない。 さらに、補正により、「前記スイッチは、前記ジャンプスタート用電流共有回路において前記1つまたは複数のリレーと前記1つまたは複数の電界効果トランジスタを選択的に接続するように構成された複数の回路スイッチを含む、」という特定を追加した。引用発明には、複数のリレーを搭載することに関する記載はない。 (審判請求書「(3)本願発明が特許されるべき理由」) (1)主張1について検討すると、前記7のとおり、引用文献にはメイン回路とバイパス回路とが電流を共有することが記載されているので、請求人の主張1は採用できない。 (2)主張2について検討すると、主張2における補正は、却下された本件補正のことであるから、主張2は前提において失当であり、採用できない。 第8 判断 相違点及び効果について判断する。 1 バッテリとして充電式のもので正極及び負極に端子があるものは、文献を示すまでもない周知技術であるから、引用発明の「始動電源1」のバッテリとして、周知の充電式でありプラス端子及びマイナス端子が形成されているものを採用することは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願発明の効果は、引用発明に比して格別のものとは認められない。 よって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものと認められる。 2 本願発明の効果について、請求人は、概略、次の主張3を主張する。 〈主張3〉 本願発明においては、大電流を処理できるリレーと、小型で応答速度が速い電界効果トランジスタとを並列に配置して電流を共有できるようにしつつ、トランジスタに過剰な電流が流れてオーバーヒートなどの弊害が起こらないようにスイッチが制御するという優れた効果が得られる。(意見書「(3)本願発明が特許されるべき理由」) スタータ装置が起動されると、リレーおよびFETは同時に「オン」とされるが、リレーのスイッチ応答は、FETの応答よりも遅いため、起動直後は、全ての電流がFETに流れることとなる。リレーの応答が追いつくと、リレーとトランジスタとの間で「電流共有」状態が発生する。このようなスイッチテクニックによれば、FETが有する瞬時応答能力と、リレーが有する大容量許容能力との両方の利点が得られる。本願のスイッチデザインによれば、比較的小規模のFETによって瞬時に回路がオンとなる利点が得られ、さらに、FETへの負荷が高くなって焼け付く等の惧れが発生する前にリレーとの電流共有が開始されるため、結果として安全で高性能なジャンプスタート装置の設計が可能となる。(回答書) 主張3について検討する。 主張3は、リレーとFETとが同時にオンされることを前提としている。 しかしながら、本願発明には、リレーと電界効果トランジスタ(FET)とが同時にオンされることは特定されていない。 よって、主張3は、本願発明を特定する事項に基づいたものではないため、採用できない。 第9 むすび 前記第8のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-020636

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