特許拒絶査定不服審判
2021-000415
樹脂材表面の凸部加飾加工方法
- 審判番号
- 2021-000415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-078341
- 請求日
- 2021年01月12日
- 審決日
- 2022年06月27日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】天昇電気工業株式会社
- 【請求人代理人】田辺 敏郎
- 【請求人代理人】田辺 恵
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 井口 猶二
- 審判官 石附 直弥
- 分類
- P18 .113-Z (B29C) / P18 .121-Z (B29C) / P18 .575-Z (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2019- 78341「樹脂材表面の凸部加飾加工方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月29日出願公開、特開2020-175555〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特願2019-78341号(以下「本件出願」という。)は、平成31年4月17日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 2年 8月13日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月 1日提出:意見書
令和 2年10月 1日提出:手続補正書
令和 2年10月 6日付け:拒絶査定
令和 3年 1月12日提出:審判請求書
令和 3年 1月12日提出:手続補正書
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月12日にした手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和2年10月1日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 樹脂材表面に所望の嵩高構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記嵩高構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂加飾物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加飾加工方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 樹脂材表面に凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記嵩高構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂加飾物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加飾加工方法。」
(3)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の、発明を特定するために必要な事項である「所望の嵩高構成部品」を「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高構成部品」に限定することを含むものである。また、この補正は、本件出願の出願当初の明細書の【0007】、【0021】等の記載に基づくものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
2 独立特許要件についての判断(新規性及び進歩性)
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開昭57-32940号公報)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア「2、特許請求の範囲
凹凸を有する樹脂基材の突出部分の上に発泡体を設け、この発泡体を設けた樹脂基材の上より、全体を覆うように、接着剤が設けられた化粧シートを真空成形法によりラミネートしたことを特徴とする成形品の製造方法。」
イ「3、発明の詳細な説明
本発明はクッション性のある成形品の製造方法に関するものであり、高級感のある成形品を容易に製造しようとするものである。
以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。
第1図に示すものは完成した成形品を示しており、まず用いる材質と構造について説明する。樹脂基材1としてはスチレン樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂を用いる。この樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着する。この接着は発泡体2と樹脂基材1を両面接着テープで固定してもよいし、樹脂基材1上にスプレー法、はけ塗り法で接着剤を塗布してもよく、さらに発泡体20の片面に接着剤をスプレー法、はけ塗り法で接着剤を塗布して接着してもよい。3は接着剤である。発泡体2としては塩ビ発泡体、発泡ウレタンを用いることができ、発泡倍率は必要なクッション性により低発泡から高発泡のうち適切なものを選択すればよい。発泡体2および露出した樹脂基材1の部分上に接着剤4によって化粧シート5を接着する。この化粧シート5としては無可塑の塩化ビニール樹脂中に可塑剤の働きをするEVA(エチレン-酢ビ)樹脂、強化材の働きをするABS樹脂、スチレン系樹脂の接着性を向上するためのスチレン樹脂の三種の熱可塑性樹脂を配合した新殊熱可塑性樹脂から成る樹脂シートが用いられる。化粧シート5には木目模様等任意の模様を付しておく。
化粧シート5によってラミネートするには真空成形法を用いることによって良好な成形品を得ることができる。
真空成形法の一方法である真空圧空成形法を用いて成形品を作る場合について説明する。第2図に示すように下層成形体6の内部に上下動自在な台7が設けられ、この台7に空気の通る孔8a、8bが設けられている。この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ、空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通る。発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置される。一方接着剤4が塗布された化粧シート5は下層成形体6と上層成形体10との間に張られている。上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させておく。
今、第2図の状態において、上層成形体10の孔12と下層成形体6の孔13から同時に空気を抜いて内部を1~3torr程度の真空状態に保持する。このとき、化粧シート5は軟化しているので少し下方に湾曲している。次に台7を上方に移動させて発泡体2の上面が化粧シート5の下面の接着剤4に接触する手前まで達したところで台7の上昇を停止させ、孔12から1~5Kg/cm2の圧力で空気を入れる。この空気圧によって第3図に示すように化粧シート5を発泡体2および樹脂基材1の露出部分に密着させることができる。
具体的には下記の材料、条件で実施することができる。
塩ビシート:大日本印刷(株)製
接着剤(M-2アクリル系樹脂):コニシ(株)製
ポリスチレン樹脂(492/683=50/50wt%):旭ダウ(株)製
ヒータ電圧:100~110ボルト
塩ビシート表面温度:140~155℃
真空度:1~1.5torr
圧空圧:2~3Kg/cm2
シート加熱時間:30~40秒
圧空成形時間:10~15秒
以上のように本発明によれば複雑な凹部のある部分にまで化粧シートを密着させることができ、しかも突出部分には発泡体が収納されているのでクッション性のあるものが得られ、高級感のある成形品を得ることができる。この成形品はたとえばテレビジョン受像機のセット台の扉などに用いることができる。」(第1頁左下欄第10行~第2頁左下欄第4行)
ウ 第1図
[図:0001400866000001.jpg]
エ 第2図
[図:0001400866000002.jpg]
オ 第3図
[図:0001400866000003.jpg]
(2)引用発明
引用文献1において、第1頁及び第1図に記載された完成した成形品を、第2頁及び第2図、第3図に実施例として製造する方法が記載されている。ここで、第1頁~第2頁の記載により、樹脂基材1はポリスチレン樹脂であり、化粧シート5は塩ビシートであることが理解できる。
そうしてみると、上記(1)より、引用文献1には、特許請求の範囲に記載された成形体の製造方法の実施例として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 ポリスチレン樹脂である樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着し、発泡体2および露出した樹脂基材1の部分上に接着剤4によって塩ビシートである化粧シート5を接着した成形品の製造方法であって、
下層成形体6の内部に上下動自在な台7が設けられ、この台7に空気の通る孔8a、8bが設けられていて、この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ、空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通り、発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置され、一方接着剤4が塗布された化粧シート5は下層成形体6と上層成形体10との間に張られていて、上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させておき、
上層成形体10の孔12と下層成形体6の孔13から同時に空気を抜いて内部を1~3torr程度の真空状態に保持し、このとき、化粧シート5は軟化しているので少し下方に湾曲していて、次に台7を上方に移動させて発泡体2の上面が化粧シート5の下面の接着剤4に接触する手前まで達したところで台7の上昇を停止させ、孔12から1~5Kg/cm2の圧力で空気を入れ、この空気圧によって化粧シート5を発泡体2および樹脂基材1の露出部分に密着させることができる、成形品の製造方法。」
(3)対比
本件補正後発明と引用発明を対比する。
ア 樹脂材、嵩高構成部品及び樹脂フィルム
引用発明の「成形品」は、「ポリスチレン樹脂である樹脂基材1の突出部分の上に発泡体2を接着し、発泡体2および露出した樹脂基材1の部分上に接着剤4によって塩ビシートである化粧シート5を接着した」ものである。
上記構成からみて、引用発明の「樹脂基材1」及び「化粧シート5」は、それぞれ、本件補正後発明の「樹脂材」及び「樹脂フィルム」に相当する。
また、上記構成からみて、引用発明の「発泡体2」は、構成部品であるといえる。そうしてみると、引用発明の「発泡体2」は、本件補正後発明の「嵩高構成部品」と、「構成部品」の点で共通する。
さらに、上記構成からみて、引用発明の「樹脂基材1」の表面に「発泡体2」を接着したといえる。そうしてみると、引用発明の「接着」は、本件補正後発明の「貼着」に相当する(当合議体注:本願明細書の「上述した種々形状の嵩高構成部品2を所望の配列状態で上述の物品基材1の表面1aに接着材3によって貼着する。」(【0025】)との記載からも、「貼着」は「接着」を含むものであることが確認できる。)。また、引用発明の「樹脂機材1」は、本件補正後発明の「樹脂材」の「樹脂材表面に」「構成部品を貼着した」との点で共通する。
イ 樹脂材を受け治具に載置する工程
引用発明は、「下層成形体6の内部に上下動自在な台7が設けられ、この台7に空気の通る孔8a、8bが設けられていて、この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ、空気はこの補助台9a、9bの下面に設けられた通路を通り、発泡体2が取付けられた樹脂基材1は補助台9a、9bによって位置決めされて、台7上に載置され」る工程を具備する。
上記工程からみて、引用発明の「台7」は、「空気の通る孔8a、8bが設けられていて、この孔8a、8bの上に補助台9a、9bが設けられ」たものである。そうしてみると、引用発明の「台7」及び「補助台9a、9b」は、本件補正後発明の「受け治具」に相当する。
また、上記工程からみて、引用発明は、「樹脂基材1」を「台7」及び「補助台9a、9b」に載置」するといえる。そうしてみると、引用発明は、本件補正後発明の「樹脂材を受け治具に載置した」工程(以下「工程1」という。)との点で共通する。
ウ 樹脂フィルムに樹脂材およびその表面の嵩高構成部品を密着させる工程
引用発明は、「一方接着剤4が塗布された化粧シート5は下層成形体6と上層成形体10との間に張られていて、上層成形体10内にはヒータ11が設けられこのヒータ11によって化粧シート5を軟化させておき、上層成形体10の孔12と下層成形体6の孔13から同時に空気を抜いて内部を1~3torr程度の真空状態に保持し、このとき、化粧シート5は軟化しているので少し下方に湾曲していて、次に台7を上方に移動させて発泡体2の上面が化粧シート5の下面の接着剤4に接触する手前まで達したところで台7の上昇を停止させ、孔12から1~5Kg/cm2の圧力で空気を入れ、この空気圧によって化粧シート5を発泡体2および樹脂基材1の露出部分に密着させることができる」工程を具備する。
上記工程からみて、引用発明は、「樹脂基材1」の上方に「化粧シート5」を配置するものである(当合議体注:このことは、引用文献1の第2図及び第3図からも確認できる。)。そうしてみると、引用発明は、本件補正後発明の「前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し」との要件を満たす。
また、上記工程からみて、引用発明は、「樹脂基材1」および「化粧シート5」の周囲を負圧状態にするとともに「化粧シート5」を加熱、軟化させるものである。そうしてみると、引用発明は、本件補正後発明の「前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ」との要件を満たす。
さらに、上記工程からみて、引用発明は、「台7」及び「補助台9a、9b」を「化粧シート5」に向けて上昇させて軟化状態の「化粧シート5」に「樹脂基材1」およびその表面の「発泡体2」を密着させるものである。そうしてみると、引用発明は、本件補正後発明の「前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記構成部品を密着させ」る工程の点で共通する。
上記のことから、引用発明は、本件補正後発明と、「前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記構成部品を密着させ」る工程(以下「工程2」という。)の点で共通する。
エ 樹脂加飾物品を取り出す工程
上記アの構成からみて、引用発明の「成形品」は、本件補正後発明の「樹脂加飾物品」と、「樹脂」「物品」である点で共通する。
また、技術常識から、引用発明において、成形品を製造装置から取り出すことは自明のことであるので、引用発明は、「台7」及び「補助台9a、9b」の周囲を開放し、成形品を取り出すものといえる。そうしてみると、引用発明は、本件補正後発明と、「前記受け治具の周囲を開放し、樹脂物品を取り出す」工程(以下「工程3」という。)の点で共通する。
オ 工程1~3の順序
上記イ~エの工程からみて、引用発明は、本件補正後発明の工程1~3の順に行うとの要件を満たす。
カ 凸部加飾加工方法
上記ア~オを総合すると、引用発明の「成形品の製造方法」は、本件補正後発明と、「樹脂材表面の」「加工方法」の点で共通する。
(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 樹脂材表面に構成部品を貼着した樹脂材を受け治具に載置した後、前記樹脂材の上方に樹脂フィルムを配置し、前記樹脂材および前記樹脂フィルムの周囲を負圧状態にするとともに前記樹脂フィルムを加熱、軟化させ、前記受け治具を前記樹脂フィルムに向けて上昇させて軟化状態の前記樹脂フィルムに前記樹脂材およびその表面の前記構成部品を密着させた後、前記受け治具の周囲を開放し、樹脂物品を取り出すことを特徴とする樹脂材表面の凸部加工方法。」
イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点1>
「構成部品」が、本件補正後発明は、「凹凸加飾すべき凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるのに対して、引用発明の「発泡体2」は、この点が一応明らかでない点。
<一応の相違点2>
「樹脂物品」が、本件補正後発明は、「加飾」であるのに対して、引用発明の「成形品」は、加飾であるかどうかが一応明らかでない点。
<一応の相違点3>
「凸部加工方法」が、本件補正後発明は、「加飾」であるのに対して、引用発明の「成形品の製造方法」は、加飾であるかどうかが一応明らかでない点。
(5)判断
技術的関連性に鑑み、相違点1~3についてまとめて検討する。
まず、引用文献1の第1図から、樹脂基材1における凹部及び凸部のうちの凸部に対応する位置に発泡体2が配置されており、その結果、最終的な出来上がり製品たる成形体は少なくとも発泡体2の高さの分だけ嵩高になるといえる。また、技術常識から、発泡体2が樹脂成形によって製作された所望のものであるといえる。そうしてみると、引用発明の「発泡体2」は、本件補正後発明の「凹部及び凸部のうちの凸部に対応する部品で構成され且つ樹脂成形によって製作された所望の嵩高」であるといえる。
仮に、引用発明の「発泡体2」が「樹脂成形によって製作された所望のもの」であるとは限らなかったとしても、発泡体2を樹脂成形によって所望の形状ないし高さに製作することは、文献を掲げるまでもなく周知慣用技術である。
次に、引用文献1の第1頁右欄には、「発泡体2としては塩ビ発泡体、発砲ウレタンを用いることができ、発泡倍率は必要なクッション性により低発泡から高発泡のうち適切なものを選択すればよい。」と記載されている。上記記載から、引用発明の「発泡体2」はクッション性を有するといえる。
一方で、加飾とは、クッション性等の機能性を付与したものも含むものであることは技術常識である。このことは、「プラスチック(表面)加飾技術の最新動向」、2016年7月31日、MTO技術研究所、[令和4年5月30日検索]、インターネットhttps://kashoku.org/wp-content/uploads/2018/04/DecorationTrend2016M.pdf、「プラスチック加飾技術の動向」、2014年5月13日、秋元技術士事務所、[令和4年5月30日検索]、インターネットhttps://ce-akimoto.com/archives/404、特開2004-142347号公報(【0021】等)の各資料からも確認できる。そして、本件明細書において、加飾加工方法がクッション性等の機能性を除外することを窺わせる記載は見当たらない。
そうしてみると、引用発明においても、本件補正後発明の「凹凸加飾すべき」ものであって、引用発明の「成形品」及び「成形品の製造方法」は、いずれも本件補正後発明の「加飾」であるといえる。
したがって、上記一応の相違点1~3は、いずれも実質的な差異ではない。
あるいは、引用発明において、上記一応の相違点1~3に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(6)発明の効果について
本件補正後発明の効果について、本件出願の明細書の【0017】には、「本発明に係る樹脂加飾物品は、物品基材と樹脂フィルムとの間に所定の嵩高構成部品を介在させて一体化することにより凸部を有する加飾外観が得られる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明が具備する効果である。
(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、[A]「引用文献1に記載の発明における「発泡体」はあくまでクッション性のある成形品を製造するためのものである。一方、本願発明の「嵩高構成部品」は、凹凸加飾すべき凸部つまり最終的な出来上がり品たる凹凸加飾物品の凸部を製造するためのものである。」点、及び
[B]「本願発明は、この構成を採用することにより、従来、金型等を使用した射出成型で凹凸表現を実現しようとするとその都度凹凸に合わせた金型を製作せねばならなかったのに対し、このような金型の製作が不要となり、あたかも一体的な樹脂成型を行ったかのような加飾処理が可能となるという格別な作用効果を奏するものである。このような格別な作用効果については、当業者といえども引用文献1に記載の発明に基いて容易に想到し得ないものである。」と主張している。
しかしながら、上記[A]及び[B]については、それぞれ上記(5)及び(6)で述べたとおりであるから、審判請求人の主張は、採用できない。
(8)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
5 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、[理由1]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開昭57-32940号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、[理由2]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、上記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、上記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記「第2」[理由]1(3)で述べた限定を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、上記「第2」[理由]2(3)~(5)で述べたとおり、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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