特許拒絶査定不服審判
2024-015386
Doherty電力増幅器および電力増幅方法
- 審判番号
- 2024-015386
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-579068
- 請求日
- 2024年09月26日
- 審決日
- 2025年03月10日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中興通訊股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】宮田 英毅
- 【請求人代理人】酒井 宏明
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P18 .121-Z (H03F) / P18 .575-Z (H03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-579068「Doherty電力増幅器および電力増幅方法」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和3年)12月30日国際公開、WO2021/259265、令和5年7月21日国内公表、特表2023-531224〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)6月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2020年6月23日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和5年12月13日付けで拒絶の理由が通知され、令和6年3月11日付け誤訳訂正書により手続補正がされたが、令和6年6月6日付けで拒絶査定がされたものである。これを不服として令和6年9月26日に本件審判請求がされ、同時に手続補正がされた。
第2 令和6年9月26日にされた手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月26日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和6年9月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前の請求項1の記載を、本件補正後の請求項1の記載にする補正を含むものであり、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。(下線部は、補正により変更された箇所である。)
[本件補正前]
【請求項1】
少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器であって、
前記搬送波電力増幅器は、少なくとも1グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタであり、
各前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含む、
Doherty電力増幅器。
[本件補正後]
【請求項1】
少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器であって、
前記搬送波電力増幅器は、少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタであり、
各前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含む、
Doherty電力増幅器。
2 補正の適否
(1)本件補正前の請求項1の記載を、本件補正後の請求項1の記載にする補正について
ア 補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「前記搬送波電力増幅器は、少なくとも1グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、」を、「前記搬送波電力増幅器は、少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 独立特許要件
本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(ア)本件補正発明
本件補正発明は、上記本件補正後の請求項1の記載により特定される次のとおりのものである。
[本件補正発明]
少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器であって、
前記搬送波電力増幅器は、少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタであり、
各前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含む、
Doherty電力増幅器。
(イ)引用文献
a 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2018-148558号公報(以下「引用文献1」という。)には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
増加する一方の携帯電話のユーザに、途切れることの無い会話状態を提供する、という強い要請に応えるべく、益々複雑化する信号形式を採用することが迫られている。そのため、現在の携帯電話に使われている信号は、ピーク強度と平均強度の極端に大きな差、あるいは比(Peal-to-Average ratio: PAR)を持っている。携帯電話システムに採用されているアンプの構成がその様な信号に適しておらず、また、ユーザに効率的に増幅できない場合には、アンプの放熱機構、ひいては消費電力が膨大なものとなってしまう。この様に、その種の複雑な信号形式を実装することに対し、ハードウェア上の限界、FPGA、DAC、ADC等の動作速度の限界が存在する。
【0003】
ユーザ数の増加、すなわち、さらなる通信容量の増加の要請に対応するために、電話業者は、スペクトル強度を増加させるという最も簡便でコスト効率の高い方法を採用してきた。その結果、そこに搭載されるアンプについては、平均強度と効率だけでなく、大きなピーク信号に対応することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高出力、平均及びピーク強度の双方、に対応するには、アンプに採用されるトランジスタについてそのダイサイズ(チップの物理的大きさ)の大きなものを採用することが理想的かつ簡便な手法である。しかし、残念ながら、大きなサイズのトランジスタは以下の本質的な課題を有している。
【0005】
a.低インピーダンスかつ大きな寄生成分を有しており、インピーダンス整合をとることが難しい。
b.トランジスタを収納するパッケージについてその放熱設計が難しくなる。
特に、後者の効率的な放熱設計に困難を来すことが多く、極端に大きな出力、たとえば、単相で500Wを超えるパワーを消費するトランジスタを入手することは実際上不可能である。アンプ設計者はパワー(平均、ピークの双方)の面で、その回路構成と使用するトランジスタの選択に非常なる制約を抱えていると言える。
【0006】
ピーク/平均強度の比(PAR)が10で、平均パワー100Wを必要とする場合を考えると、アンプの構成は、1kWのRFパワーに対応することが必要とされる。上で述べた様に、単相出力で500Wを超えるトランジスタは入手が難しい。次表は、入手可能な最大出力のトランジスタ、単相出力で250Wを得ることのできるトランジスタを前提として、採用可能な回路構成をまとめたものである。
【0007】
【表1】
「
[図:0001425582000001.jpg]
」
「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るドハティアンプの構成、動作について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るドハティアンプの基本構成図である。入力端子に与えられた高周波信号は分岐回路20により3分割されキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力する。ここで三つのアンプ100~102は内部に二つの半導体チップを搭載するアンプであり、その裸特性(回路に組み込まずにアンプ単体で得られる特性)は互いに実質的に同等である。そして、二つのピークアンプ101、102は同一のバイアス条件が与えられる。すなわち、半導体チップをB級もしくはC級で動作させるゲートバイアス条件が与えられる。
【0012】
キャリアアンプ100の出力は、このドハティアンプが対象とする高周波信号の波長に対し、π/2(ラジアン)、すなわち1/4波長の電気長を有する伝送線路を介して合成ノードN0に至る。π/2(ラジアン)の長さの電気長とは、高周波信号がこの線路上を伝搬する間にその位相が90°回転する長さを意味する。一方、二つのピークアンプの出力はそれぞれZP1、ZP2の線路を介して合成ノードに至る。ここで、この線路ZP1、ZP2についてその電気長は必ずしもπ/2(ラジアン)には設定されず、かつ、そのインピーダンスが合成ノードN0における特性インピーダンスZN0および、この合成ノードN0と出力端との間に介在する伝送線TL2の特性インピーダンス(ZTL2)よりも大きい値に設定される。
【0013】
高周波信号の強度が小さく、ピークアンプがオフ状態にある時、従来のドハティアンプでは、トランジスタのオフ状態に依拠して合成ノードからピークアンプを見込んだインピーダンスを考慮していた。ピークアンプがオフの条件下では、キャリアアンプの出力がそれぞれπ/2(ラジアン)の長さを備える二つの伝送線路TL1、TL2を介して、すなわちπ(ラジアン)の長さを有する伝送線路を介して出力される様に設計する。そして、入力信号強度がしだいに大きくなりピークアンプがオンになる、いわゆる、バックオフレベルになると、ピークアンプがオン状態に移行し、合成ノードから見込んだピークアンプのインピーダンスが有意な値になり、同時に、キャリアアンプから出力を見込んだインピーダンスが次第に小さくなる。そして、キャリアアンプ、ピークアンプの双方が最大出力となった時(飽和出力時)には、キャリアアンプ、ピークアンプ双方から負荷を見込んだインピーダンスがいずれも合成ノードから伝送線TL2を介して負荷を見込んだインピーダンスZN0、すなわち、
ZN0=ZTL22/Zload、
Zloadは負荷インピーダンスであり、通常は50Ωに設定される、が、50Ωに限定されることはない。
【0014】
しかしながら、トランジスタのサイズが大きくなってくると、例えば、トランジスタが電界効果トランジスタ(FET)であり、そのゲート幅が大きくなると、トランジスタのオフ状態にするゲートバイアスを印加しても、FETのドレイン-ソース間の寄生素子、いわゆる、寄生容量が原因となって、ドレインに印加される高周波信号が寄生素子を介してソースに現れる現象、ソースに漏れる現象が顕著になる。これはトランジスタのサイズのみならず、高周波信号の周波数が高くなるほどに顕著になる。
【0015】
本実施の形態において採用される、ピークアンプ101、102に出力に接続された高インピーダンスライン、ZP1、ZP2は、従来のトランジスタサイズの増大化、信号の高周波化にともない顕著となったドレインからソースに漏れ出る信号、すなわち、ピークアンプ101、102の非オフ化に対応するために設定されたものであり、トランジスタが十分にオフにならない場合においても、合成ノードからピークアンプ101、102を見込んだインピーダンスを十分に高く設定する機能を有する。
【0016】
この高インピーダンスラインZP1、ZP2を有する場合、全てのアンプ100~102が飽和出力を発揮している時の合成ノードN0回りのインピーダンスの関係は図2の基本図で与えられる。すなわち、飽和出力を発揮している条件下では、各アンプの出力インピーダンス(各アンプの出力端かその内部を見込んだインピーダンス)は十分に小さくなり、伝送線路TL1、TL2、及び高インピーダンスラインZP1、ZP2の一端が実質的に接地される。
【0017】
[実施例]
図4は本発明に係るドハティアンプのレイアウトを示す図である。ドハティアンプ1は、搭載基板2上に搭載された三つのアンプ100~102を備え、これら三つのアンプ100~102を挟んで入力基板1Aと出力基板1Bが配置される。入力基板1A上には、左端の入力端子Inから高周波信号が入力し、入力ウィルキンソンカプラWCで分岐されたこの高周波信号はさらに分岐回路により3分割され、キャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力する。入力分岐回路とそれぞれのアンプ100~102の間には、DCカット用のキャパシタCG0~CG2、及び入力のゲートパターン10G~12Gを有し、分岐信号はこれらの素子を経てアンプ100~102に入力する。
【0018】
各ゲートパターン10G~12Gには、それぞれのゲートパッドVG0~VG2にゲートバイアス電圧が個別に供給され、このバイアス電圧は各アンプ100~102の直近でゲートパターン10G~12Gに提供される。各ゲートバイアスパッドVG0~VG1に隣接して接地パターン(GND)が配置されており、ゲートバイアスパッドVG0~VG1との間で複数のキャパシタ(バイパスキャパシタ)が接続されている。接地パターン(GND)と入力基板裏面に形成されている裏面接地パターンは、接地パターンに接続し入力基板1Aを貫通する基板ビアにより電気的に接続されている。
【0019】
出力基板1B上には、キャリアアンプについては、出力パターン10Dによりアンプ100の出力リードから出力された信号を一つにまとめ、DCカットキャパシタCD0を介して伝送線路TL1に伝えるパターンが、一方、ピークアンプ101、102については、出力された信号を出力パターン11D、12Dにより一つにまとめ、DCカットキャパシタCD1、CD2を介してそれぞれ高インピーダンス線ZP1、ZP2に伝えるパターンが、それぞれ設けられている。そして、伝送線路TL1と高インピーダンス線ZP1、ZP2の出力は一点N0において合成された後出力端子Outに提供される。各アンプ100~102の出力パターンは、ドレインパッドVD0~VD2にそれぞれ提供されたドレインバイアスを、各アンプ100~102の直近で提供するパターンが付随する。そして、各ドレインパッドVD0~VD2には、接地(GND)パターンが付随し、この接地パターンとの間で複数のバイパスキャパシタが実装される。
【0020】
ここで、伝送線路TL1は、端子Inに与えられる高周波信号に対し、π/2(ラジアン)の電気長を有しており、キャリアアンプ100に対してピークアンプ101、102の出力がオフの時に有意な負荷特性を与えている。一方、二つのピークアンプ101、102の出力は高インピーダンス線ZP1、ZP2を介して接合ノードN0に与えられている。ピークアンプに搭載されるトランジスタのサイズが大きくなってくると、トランジスタをオフしたとしても、例えば、電界効果トランジスタでは、そのドレイン-ソース間の寄生容量成分により、高周波信号がドレインからソースに漏れてしまう。すなわち、トランジスタのゲートバイアスを、トランジスタがオフされるバイアスにまで深めていても、ドレインリーク電流が流れ、トランジスタがそのドレイン端子からみて有意なインピーダンスを示してしまう。合成ノードN0からみて、トランジスタがオフされていることにならず、伝送線路TL1を介して合成ノードN0に至った信号がピークアンプ101、102側に漏れ出てしまうことになる。本実施の形態に係るドハティアンプでは、ピークアンプ101、102の出力を高インピーダンス線ZP1、ZP2を介して合成ノードN0に接続しているので、合成ノードN0からピークアンプZP1、ZP2を見込んだ、ピークアンプ101、102がオフ時のインピーダンスを高めることができる。合成ノードN0において合成された各アンプ100~102の出力は、π/2(ラジアン)の長さを有する別の伝送線路TL2を介して出力端Outに提供される。
【0021】
図5はアンプ100のリッドを外した状態のキャリアアンプ100内を示す平面図である。以下の説明ではキャリアアンプ100について説明するが、ピークアンプ101、102も同様の構成を有している。
【0022】
キャリアアンプ100は二つの互いに独立な半導体チップ10A、10Bを、その内部に搭載している。具体的には、金属製のベース10bとセラミック製の壁10wで囲まれた空間内のベース10b上に直接搭載されている。ベース10bには、その長手方向に延長された先に、このアンプを搭載基板2に搭載するための螺子が係合する切り込みが形成されている。壁10wの上面にはメタライズ部10sがそれぞれの端子10tに対応して設けられており、端子10tはこのメタライズ部10sにロウ付けされている。図5において斜線で示した領域、すなわち、メタライズ部10s以外の壁10wにセラミック製の蓋がロウ付けされた、半導体チップ10A、10Bを気密封止する。
【0023】
各半導体チップ10A、10B、および入力マッチング回路10m、10nは、ベース10b上に、例えば金錫(AuSn)等の共晶半田、あるいは、銀(Ag)フィラーを含有する導電性樹脂により固定される。各半導体チップ10A、10Bは複数のゲートフィンガを有し、全体としてそのゲート幅は3mmである。ゲートパッドには、リード端子10tからゲートバイアスとともに高周波信号が、入力マッチング回路10mを介して入力する。すなわち、入力マッチング回路はリード端子10tと半導体チップ10A、10B内のゲートパッドとそれぞれ複数のボンディングワイヤにより接続されており、また、入力マッチング回路10m自体はボンディングワイヤが接続される表面と、裏面との間で平行平板キャパシタの構成を有しており、入力端子10tとゲートパッドとの間でT型LCL形状のマッチング回路を構成する。
【0024】
一方、出力側は、各半導体チップ10A、10Bのドレインパッドは、複数のボンディングワイヤにより直接出力端子10tに接続される。すなわち、出力マッチング回路は有していない。これは、大きなサイズのトランジスタでは寄生成分のために、トランジスタオフ時であってもその出力インピーダンスが大きくならず、適切なマッチング回路の設計が難しくなるからである。このため、本実施の形態に係るドハティアンプでは、各アンプ100~102の外部に、その出力端とドハティアンプの出力合成端N0との間に高インピーダンス線を設け、合成端N0からピークアンプ101、102に係る各半導体チップを見込んだインピーダンスを高めている。これにより、サイズの大きなトランジスタを各アンプ100~102に対応させても、適切なバックオフ特性を実現することができる。」
「
[図:0001425582000002.jpg]
」
「
[図:0001425582000003.jpg]
」
b 引用文献1に記載された発明の認定
(a)ドハティアンプ
段落【0011】、【0012】、【図1】の記載によれば、引用文献1には、「ドハティアンプ」の発明が記載されており、その「入力端子に与えられた高周波信号は分岐回路20により3分割されキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力」し、「三つのアンプ100~102は内部に二つの半導体チップを搭載するアンプ」である。また、「キャリアアンプ100の出力」は、「1/4波長の電気長を有する伝送線路(図1のTL1)を介して合成ノードN0」に至り、「二つのピークアンプの出力」は、「それぞれZP1、ZP2の線路を介して合成ノード」に至る。「この合成ノードN0と出力端との間」には「伝送線TL2」が介在するから、「合成ノードN0」は、「伝送線TL2」を介して「出力端」に接続されている。
以上によれば、引用文献1には、
“入力端子に与えられた高周波信号は分岐回路20により3分割されキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力し、三つのアンプ100~102は内部に二つの半導体チップを搭載するアンプであり、キャリアアンプ100の出力は、伝送線路TL1を介して合成ノードN0に至り、二つのピークアンプの出力は、それぞれZP1、ZP2の線路を介して合成ノードに至り、この合成ノードN0は伝送線TL2を介して出力端に接続されているドハティアンプ”
が記載されている。
(b)高周波信号の入力
段落【0017】、【図4】の記載によれば、「ドハティアンプ1」の「入力基板1A」では、「入力端子In」から入力した「高周波信号」は、「入力ウィルキンソンカプラWCで分岐」され、「さらに分岐回路により3分割」され、「キャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力」される。また、「入力分岐回路とそれぞれのアンプ100~102の間には、DCカット用のキャパシタCG0~CG2、及び入力のゲートパターン10G~12Gを有し、分岐信号はこれらの素子を経てアンプ100~102に入力」される。
以上によれば、引用文献1に記載されたドハティアンプは、
“入力端子Inから入力した高周波信号は、入力ウィルキンソンカプラWCで分岐され、さらに分岐回路により3分割され、分岐信号は、DCカット用のキャパシタCG0~CG2、及び入力のゲートパターン10G~12Gを経てキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力”
されるものである。
(c)高周波信号の出力
段落【0019】、【図4】の記載によれば、「ドハティアンプ1」の「出力基板1B」では、「キャリアアンプ」については、「出力パターン10Dによりアンプ100の出力リードから出力された信号を一つにまとめ、DCカットキャパシタCD0を介して伝送線路TL1に伝えるパターン」が設けられており、「ピークアンプ101、102」については、「出力された信号を出力パターン11D、12Dにより一つにまとめ、DCカットキャパシタCD1、CD2を介してそれぞれ高インピーダンス線ZP1、ZP2に伝えるパターン」が設けられており、「伝送線路TL1と高インピーダンス線ZP1、ZP2の出力は一点N0において合成された後出力端子Outに提供」される。
以上によれば、引用文献1に記載されたドハティアンプは、
“キャリアアンプについては、出力パターン10Dによりアンプ100の出力リードから出力された信号を一つにまとめ、DCカットキャパシタCD0を介して伝送線路TL1に伝えるパターンが設けられており、ピークアンプ101、102については、出力された信号を出力パターン11D、12Dにより一つにまとめ、DCカットキャパシタCD1、CD2を介してそれぞれ高インピーダンス線ZP1、ZP2に伝えるパターンが設けられており、伝送線路TL1と高インピーダンス線ZP1、ZP2の出力は一点N0において合成された後出力端子Outに提供される”
ものである。
(d)引用発明
以上の(a)~(c)をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
入力端子に与えられた高周波信号は分岐回路20により3分割されキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力し、三つのアンプ100~102は内部に二つの半導体チップを搭載するアンプであり、キャリアアンプ100の出力は、伝送線路TL1を介して合成ノードN0に至り、二つのピークアンプの出力は、それぞれZP1、ZP2の線路を介して合成ノードに至り、この合成ノードN0は伝送線TL2を介して出力端に接続されているドハティアンプであって、
入力端子Inから入力した高周波信号は、入力ウィルキンソンカプラWCで分岐され、さらに分岐回路により3分割され、分岐信号は、DCカット用のキャパシタCG0~CG2、及び入力のゲートパターン10G~12Gを経てキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力され、
キャリアアンプについては、出力パターン10Dによりアンプ100の出力リードから出力された信号を一つにまとめ、DCカットキャパシタCD0を介して伝送線路TL1に伝えるパターンが設けられており、ピークアンプ101、102については、出力された信号を出力パターン11D、12Dにより一つにまとめ、DCカットキャパシタCD1、CD2を介してそれぞれ高インピーダンス線ZP1、ZP2に伝えるパターンが設けられており、伝送線路TL1と高インピーダンス線ZP1、ZP2の出力は一点N0において合成された後出力端子Outに提供される、
ドハティアンプ。
c 引用文献2
原査定で周知技術を示す文献として引用された実願昭54-003535号(実開昭55-104818号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次に掲げる事項が記載されている。
「本考案は、例えば、VHF、UHF帯の低入出力インピーダンスを有するトランジスタを用いた増幅装置に関する。
一般に大出力のトランジスタ電力増幅装置においては、数個のトランジスタの出力を並列合成する方式が採用されている。このような方式の電力増幅装置の従来例を第1図に示す。第1図の増幅装置では、8個のトランジスタの出力を並列に合成するようにしており、電源回路及びバイアス回路は図面の簡略化のため省略している。同図において、11は信号が供給される入力端子、12は信号を分配する第1の分配器、13,14はこの第1の分配器12からの信号を分配する第2の分配器、15~18はこの第2の分配器からの信号を更に分配する第3の分配器、19~26はこの第3の分配器15~18の出力インピーダンスとトランジスタ27~34の入力インピーダンスとの整合をとる整合回路、35~38は前記トランジスタ27~34で増幅されたそれぞれ1対の信号を合成する第1の合成器、39~46は前記トランジスタ27~34の出力インピーダンスと前記第1の合成器35~38の入力インピーダンスとの整合を行なう整合回路、47,48は前記第1の合成器35~38からのそれぞれ1対の信号を合成する第2の合成器、49は前記第2の合成器47,48からのそれぞれの信号を合成する第3の合成器、50はこの第3の合成器49に接続され、出力信号を取り出す出力端子である。
上記の様に構成された増幅装置において、入力端子11に加えられた信号は第1の分配器12により2分配され、2分配されたそれぞれの信号は第2の分配器13,14に供給されて、ここで2分配された後、更に第3の分配器15~18でそれぞれ2分配される。この第3の分配器15~18からの信号はそれぞれ整合回路19~26を介してトランジスタ27~34に供給され、増幅される。これらトランジスタ27~34からのそれぞれの信号はそれぞれ対応する整合回路39~46を介して第1の合成器35~38に供給され、それぞれ合成される。この第1の合成器35~38からのそれぞれの信号は第2の合成器47,48に加えられ、2合成された後、更に第3の合成器49に加えられて、最後の合成が行なわれる。従って、出力端子50からは第3の合成器49で合成された出力信号が得られる。」(第1頁第18行~第4頁第5行)
「
[図:0001425582000004.jpg]
」
(ウ)本件補正発明と引用発明との対比
a Doherty電力増幅器
引用発明は、「入力端子に与えられた高周波信号は分岐回路20により3分割されキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力し、・・・キャリアアンプ100の出力は、伝送線路TL1を介して合成ノードN0に至り、二つのピークアンプの出力は、それぞれZP1、ZP2の線路を介して合成ノードに至り、この合成ノードN0は伝送線TL2を介して出力端に接続されているドハティアンプ」であり、引用発明の「キャリアアンプ100」、「ピークアンプ101、102」、「ドハティアンプ」は、それぞれ、本件補正発明の「搬送波電力増幅器」、「ピーク値電力増幅器」、「Doherty電力増幅器」に相当する。
また、引用発明の「キャリアアンプ100」と「ピークアンプ101、102」は並列に接続されている。
よって、本件補正発明と引用発明は、「少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器」である点で一致する。
b 搬送波電力増幅器
引用発明の「キャリアアンプ100」は、「内部に二つの半導体チップを搭載するアンプ」であるから、本件補正発明の「搬送波電力増幅ユニットを含み」、「前記搬送波電力増幅ユニット」は、「電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含」む「搬送波電力増幅器」に相当する。また、引用発明の「二つの半導体チップ」に用いられるトランジスタは、所望の出力電力を二つの半導体チップで共同して実現するものであるから、本件補正発明でいう「中低電力増幅トランジスタ」といえる。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記搬送波電力増幅器は、搬送波電力増幅ユニットを含み、前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含」む点で共通する。
しかしながら、本件補正発明では、「搬送波電力増幅器」は、「少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行」うものであるのに対し、引用発明では、「キャリアアンプ100」(本件補正発明の「搬送波電力増幅器」に相当)は、1つである点で両者は相違する。
c ピーク値電力増幅器
引用発明の「ピークアンプ101、102」は、「内部に二つの半導体チップを搭載するアンプ」であるから、本件補正発明の「少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニット」は、「電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含」む「ピーク値電力増幅器」に相当する。また、引用発明の「二つの半導体チップ」に用いられるトランジスタは、所望の出力電力を二つの半導体チップで共同して実現するものであるから、本件補正発明でいう「中低電力増幅トランジスタ」といえる。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含」む点で一致する。
d 電力増幅トランジスタ
引用文献1の段落【0005】、【0006】に記載されているように、アンプを設計する際には、アンプにおける所望の出力電力や入手可能性等に応じてトランジスタの最大定格電力が決定されるから、引用発明の「キャリアアンプ100」や「二つのピークアンプ101、102」に搭載する「二つの半導体チップ」で用いるトランジスタの最大定格電力は、アンプにおける所望の出力電力や入手可能性等に応じた予め設けられた閾値以下のものである。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタ」である点で一致する。
e 搬送波電力増幅ユニット、ピーク値電力増幅ユニット
引用発明では、「入力端子In」から入力した「高周波信号」は、次の(a)~(e)の経路で「出力端子Out」に提供される。
(a)入力ウィルキンソンカプラWCで分岐され、さらに分岐回路により3分割され、分岐信号は、DCカット用のキャパシタCG0~CG2、及び入力のゲートパターン10G~12Gを経てキャリアアンプ100と二つのピークアンプ101、102に入力される。
(b)キャリアアンプ100(ピークアンプ101、102)では、内部の二つの半導体チップに、入力のゲートパターン10G(11G、12G)を経て入力され、出力パターン10D(11D、12D)によりアンプ100(101、102)の出力リードから出力された信号が一つにまとめられる。
(c)一つにまとめられたキャリアアンプ100の出力信号は、DCカットキャパシタCD0を介して伝送線路TL1に伝えられる。
(d)一つにまとめられたピークアンプ101(102)の出力信号は、DCカットキャパシタCD1(CD2)を介してそれぞれ高インピーダンス線ZP1(ZP2)に伝えられる。
(e)伝送線路TL1と高インピーダンス線ZP1、ZP2の出力は一点N0において合成された後出力端子Outに提供される。
上記(b)の「入力のゲートパターン10G(11G、12G)」は、キャリアアンプ100(ピークアンプ101、102)の内部の二つの半導体チップに、高周波信号を入力するものであるから、本件補正発明の「第1の電力分割モジュール」と、「第1の電力分割部」といえる点で共通する。
また、上記(b)の「出力パターン10D(11D、12D)」は、キャリアアンプ100(ピークアンプ101、102)の内部の二つの半導体チップから高周波信号をまとめて出力するものであるから、本件補正発明の「第1のコンバイナーモジュール」と、「第1のコンバイナー部」といえる点で共通する。
上記(a)の「入力ウィルキンソンカプラWC」及び「分岐回路」は、高周波信号を、入力のゲートパターン11G、12Gを経てピークアンプ101、102に入力するものであるから、本件補正発明の「第2の電力分割モジュール」と、「第2の電力分割部」といえる点で共通する。
上記(e)の「一点N0」は、出力パターン11D、12Dから高インピーダンス線ZP1、ZP2に伝えられた出力を合成するものであるから、本件補正発明の「第2のコンバイナーモジュール」と、「第2のコンバイナー部」といえる点で共通する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割部と、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナー部と、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割部と、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナー部と、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割部にそれぞれ接続された第2の電力分割部と、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナー部にそれぞれ接続された第2のコンバイナー部と、をさらに含む」点で共通する。
しかしながら、本件補正発明は、(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方において)「第1の電力分割モジュール」、「第1のコンバイナーモジュール」、「第2の電力分割モジュール」、「第2のコンバイナーモジュール」をさらに含むのに対し、引用発明は、「(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方における)第1の電力分割部」、「(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方における)第1のコンバイナー部」、「(ピーク値電力増幅器における)第2の電力分割部」、「(ピーク値電力増幅器における)第2のコンバイナー部」を含むとはいえるものの、「(搬送波電力増幅器における)第2の電力分割部」、「(搬送波電力増幅器における)第2のコンバイナー部」を含んでおらず、また、各部がモジュールではない点で両者は相違する。
f 一致点、相違点
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点があるといえる。
[一致点]
少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器であって、
前記搬送波電力増幅器は、少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタであり、
各前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割部モジュールと、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナー部モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割部モジュールと、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナー部モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割部モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割部モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナー部モジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナー部モジュールと、をさらに含む、
Doherty電力増幅器。
[相違点]
相違点1
本件補正発明では、「搬送波電力増幅器」は、「少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行」うものであるのに対し、引用発明では、「キャリアアンプ100」(本件補正発明の「搬送波電力増幅器」に相当)は1つである点。
相違点2
本件補正発明は、(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方において)「第1の電力分割モジュール」、「第1のコンバイナーモジュール」、「第2の電力分割モジュール」、「第2のコンバイナーモジュール」をさらに含むのに対し、引用発明は、「(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方における)第1の電力分割部」、「(搬送波電力増幅器、及びピーク値電力増幅器の両方における)第1のコンバイナー部」、「(ピーク値電力増幅器における)第2の電力分割部」、「(ピーク値電力増幅器における)第2のコンバイナー部」を含むとはいえるものの、「(搬送波電力増幅器における)第2の電力分割部」、「(搬送波電力増幅器における)第2のコンバイナー部」を含んでおらず、また、各部がモジュールではない点。
(エ)判断
引用発明は、引用文献1の段落0004~0006に記載されているように、高出力に対応させることを課題の一つとするものであり、特にピークのパワーに対応するために入手可能なトランジスタを用いたアンプを並列にする(図1のピークアンプ101、102)ものである。また、引用文献1の段落0005には、「アンプ設計者はパワー(平均、ピークの双方)の面で、その回路構成と使用するトランジスタの選択に非常なる制約を抱えていると言える。」と記載されており、ピークのパワーだけでなく平均のパワーについても同様の課題があることが示唆されている。
一方、増幅装置(アンプ)において、大出力を得るために、入力信号を分配器により分配して複数の増幅装置で増幅し、それらの出力を合成器で合成して出力信号とする技術は、引用文献2に記載されているように周知の技術であり、該分配器及び合成器は、モジュールであるといえる。
したがって、引用発明において、平均のパワーについても高出力に対応するために、キャリアアンプ100を、二つのピークアンプ101、102と同様の、複数のアンプを並列にする構成とし、またその際に、信号の分割や合成をする部分を引用文献2のような分配器、合成器(モジュール)とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 独立特許要件のまとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定の理由のまとめ
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年9月26日にされた手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年3月11日に補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
[本願発明]
少なくとも1つの搬送波電力増幅器と、少なくとも1つのピーク値電力増幅器を含み、前記搬送波電力増幅器と前記ピーク値電力増幅器は並列に接続されたDoherty電力増幅器であって、
前記搬送波電力増幅器は、少なくとも1グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループの搬送波電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記搬送波電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記ピーク値電力増幅器は、少なくとも1グループのピーク値電力増幅ユニットを含み、そのうち、各グループのピーク値電力増幅ユニットは並列に接続されて電力合成を行い、各前記ピーク値電力増幅ユニットは、中低電力増幅トランジスタをそれぞれ含むとともに、並列に接続されて電力合成を行う2路の電力増幅回路を含み、
前記中低電力増幅トランジスタは、予め設けられた閾値以下の電力を持つ電力増幅トランジスタであり、
各前記搬送波電力増幅ユニットは、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属する搬送波電力増幅器内の各グループの搬送波電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含み、
各前記ピーク値電力増幅ユニットは、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の入力端子とそれぞれ接続された第1の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅ユニット内の2路の電力増幅回路の出力端子とそれぞれ接続された第1のコンバイナーモジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1の電力分割モジュールにそれぞれ接続された第2の電力分割モジュールと、所属するピーク値電力増幅器内の各グループのピーク値電力増幅ユニットにおける第1のコンバイナーモジュールにそれぞれ接続された第2のコンバイナーモジュールと、をさらに含む、
Doherty電力増幅器。
2 引用発明
引用文献1には、上記「第2 2(1)イ(イ)b 引用文献1に記載された発明の認定」で認定した引用発明が記載されている。
3 判断
本願発明は、上記本件補正発明の発明特定事項である「前記搬送波電力増幅器は、少なくとも2グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、」から、「少なくとも2グループ」との限定を省いて、「前記搬送波電力増幅器は、少なくとも1グループの搬送波電力増幅ユニットを含み、」とした発明である。
したがって、本願発明は、その一態様として本件補正発明を含むものであるから、本件補正発明は、本願発明であるともいえる。
また、本件補正発明については、上記「第2 2(1)イ(エ)判断」のとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015386