特許拒絶査定不服審判
2024-013127
希薄運転ハイブリッドガソリンエンジン
- 審判番号
- 2024-013127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-560077外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年08月13日
- 審決日
- 2025年07月29日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
- 【請求人代理人】アクシス国際弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (B60W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-560077「希薄運転ハイブリッドガソリンエンジン」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月7日国際公開、WO2021/198065、令和5年5月23日国内公表、特表2023-521021〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年4月2日、(GB)グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 7月20日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年7月25日)
令和6年 1月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 4月 8日付け:拒絶査定(発送日:同年4月11日)
令和6年 8月13日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年10月31日付け:前置報告書
令和7年 1月14日 :上申書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和6年8月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「 フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットであって、前記フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、前記内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されており、前記エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-希薄燃焼モードで前記内燃エンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる。」
第3 原査定における拒絶理由の概要
当該拒絶理由のうち、本願発明についての進歩性に係る理由の概要は、次のとおりである。
1 (進歩性)本出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明及び引用文献4ないし6にて例示される慣用技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
●理由1(進歩性)について
引用文献1:国際公開第2014/087501号
引用文献4:特開2012-086724号公報(周知の技術を示す文献)
引用文献5:特開2018-001869号公報(周知の技術を示す文献)
引用文献6:特開2016-150673号公報(周知の技術を示す文献)
第4 引用文献
1 引用文献1の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/087501号(平成26年6月12日公開。以下「引用文献1」という。)には、「ハイブリッド車両の制御装置」に関し図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、リーン燃焼モードとストイキ燃焼モードとを切り替え可能な内燃機関を備えたハイブリッド車両に適用される制御装置に関する。
背景技術
[0002] リーン燃焼モードとストイキ燃焼モードとを切り替え可能で、かつ排気を循環させるEGR装置を有する内燃機関と、第1モータ・ジェネレータと、第2モータ・ジェネレータとを備えたハイブリッド車両に適用され、内燃機関の燃焼を停止して第2モータ・ジェネレータを駆動源として走行するEVモードの実行中に、第1モータ・ジェネレータで内燃機関をモータリングさせながらEGR装置で排気を循環させて排気通路の排気浄化触媒の温度低下を抑える制御装置が知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2~4が存在する。」
イ 「発明が解決しようとする課題
[0004] 特許文献1の制御装置は、EVモードの実行時の排気浄化触媒の温度低下を抑えることができる。しかし、内燃機関のモータリングによって第1モータ・ジェネレータが電力を消費するのでEVモード実行時のシステム効率が低下する。
[0005] そこで、本発明は、内燃機関の燃料消費を抑えながら排気浄化触媒の温度低下を抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。」
ウ 「発明を実施するための形態
[0013](第1の形態)
図1に示すように、車両1は複数の動力源を組み合わせたハイブリッド車両として構成されている。車両1は、内燃機関3と、電動機としての2つのモータ・ジェネレータ4、5とを走行用の動力源として備えている。内燃機関3は4つの気筒10を備えた直列4気筒型の内燃機関である。各気筒10には吸気通路11と排気通路12とがそれぞれ接続されている。吸気通路11には、空気濾過用のエアクリーナ13、及び空気流量を調整可能なスロットルバルブ14がそれぞれ設けられている。排気通路12には、内燃機関3の空燃比(A/F)に対応した信号を出力するA/Fセンサ15が設けられている。また、排気通路12には、排気中の有害成分を浄化するスタート触媒16及びNOx触媒17が設けられている。排気通路12の上流側のスタート触媒16は三元触媒として構成されている。スタート触媒16は下流側のNOx触媒17よりも容量が小さく、主として内燃機関3の始動時の排気を浄化する触媒として機能する。排気浄化触媒としてのNOx触媒17は周知の吸蔵還元型のNOx触媒である。各触媒16、17の温度を検出するため、スタート触媒16には温度センサ18が、NOx触媒17には温度センサ19がそれぞれ設けられている。
[0014] 内燃機関3と第1モータ・ジェネレータ4とは動力分割機構6に接続されている。動力分割機構6の出力は出力ギア20に伝達される。出力ギア20と第2モータ・ジェネレータ5とは互いに連結されていて一体回転する。出力ギア20から出力した動力は減速装置21及び差動装置22を介して駆動輪23に伝達される。第1モータ・ジェネレータ4はステータ4aとロータ4bとを有する。第1モータ・ジェネレータ4は、動力分割機構6にて分割された内燃機関3の動力を受けて発電する発電機として機能するとともに、交流電力にて駆動される電動機としても機能する。同様に、第2モータ・ジェネレータ5はステータ5aとロータ5bとを有し、電動機及び発電機としてそれぞれ機能する。各モータ・ジェネレータ4、5はモータ用制御装置25を介してバッテリ26に接続される。モータ用制御装置25は各モータ・ジェネレータ4、5が発電した電力を直流変換してバッテリ26に蓄電するとともにバッテリ26の電力を交流変換して各モータ・ジェネレータ4、5に供給する。
[0015] 動力分割機構6はシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されており、サンギアSと、リングギアRと、これらのギアS、Rに噛み合うピニオンPを自転及び公転可能な状態で保持するプラネタリキャリアCとを有している。サンギアSは第1モータ・ジェネレータ4のロータ4aに連結され、リングギアRは出力ギア20に連結され、プラネタリキャリアCは内燃機関3のクランク軸7に連結される。なお、クランク軸7とプラネタリキャリアCとの間にはダンパ8が介在し、そのダンパ8は内燃機関3のトルク変動を吸収する。
[0016] 車両1の制御は電子制御装置(ECU)30にて制御される。ECU30は内燃機関3及び各モータ・ジェネレータ4、5に対して各種の制御を行う。以下、本発明に関連してECU30が行う主要な制御について説明する。ECU30は、運転者が要求する要求パワーに対するシステム効率が最適となるように各種のモードを切り替えながら車両1を制御する。例えば、内燃機関3の熱効率が低下する低負荷領域では内燃機関3の燃焼を停止して第2モータ・ジェネレータ5を駆動するEVモードが選択される。また、内燃機関3だけではトルクが不足する場合は、内燃機関3とともに第1モータ・ジェネレータ4及び第2モータ・ジェネレータ5の少なくとも一方を走行用駆動源とするハイブリッドモードが選択される。
[0017] 内燃機関3は、理論空燃比及びその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と、ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼との間で運転モードを切り替えることができる。ECU30はA/Fセンサ15の出力値を参照して空燃比を計測し、その実際の空燃比と目標空燃比との偏差が低下するようにフィードバック制御を行う。リーン燃焼は目標とする空燃比がストイキ燃焼の目標とする空燃比よりも大きいので、運転モードをストイキ燃焼に維持する場合と比べて燃料消費量を低減できる。ここでは、内燃機関3をリーン燃焼で運転するハイブリッドモードをリーン燃焼モードと呼び、内燃機関3をストイキ燃焼で運転するハイブリッドモードをストイキ燃焼モードと呼ぶ。
[0018] 各モードの選択は、要求パワーに対するシステム効率に基づいて行う。システム効率は各モータ・ジェネレータ4、5の電力消費量、内燃機関3の燃料消費量及び熱効率、各モータ・ジェネレータ4、5の電気的効率等の種々の要素が考慮されて定められたパラメータである。システム効率の算出方法の詳細は省略するが公知の方法によってECU30が計算する。
[0019] 図2に示すように、EVモードとハイブリッドモードとの間には要求パワーにするシステム効率の効率分岐点Pe1、Pe2が存在する。リーン燃焼モードとEVモードとの間の効率分岐点Pe1よりも要求パワーが大きい状況では、EVモードを選択するよりもリーン燃焼モードを選択するほうがシステム効率は高い。逆に、効率分岐点Pe1よりも要求パワーが小さい状況ではリーン燃焼モードを選択するよりもEVモードを選択するほうがシステム効率は高い。また、ストイキ燃焼モードとEVモードとの間の効率分岐点Pe2よりも要求パワーが大きい状況では、EVモードを選択するよりもストイキ燃焼モードを選択するほうがシステム効率は高い。逆に、効率分岐点Pe2よりも要求パワーが小さい状況ではストイキ燃焼モードを選択するよりもEVモードを選択するほうがシステム効率は高い。
[0020] 要求パワーは2つの効率分岐点Pe1、Pe2によって3つの領域R1、R2、R3に分けることができる。領域R1では、システム効率が高い順に各モードを並べると、EVモード、リーン燃焼モード、ストイキ燃焼モードの順番となる。領域R2では、システム効率が高い順に各モードを並べると、リーン燃焼モード、EVモード、ストイキ燃焼モードの順番となる。領域R3では、システム効率が高い順に各モードを並べると、ストイキ燃焼モード、EVモード、リーン燃焼モードの順番となる。
[0021] ECU30は、原則として、複数のモードのうち要求パワーに対するシステム効率が高いモードを優先的に選択するように制御する。例えば、ECU30は、要求パワーが領域R1に該当する場合、EVモードを最優先で選択し、バッテリ26の蓄電率が低い場合等の何らかの原因でEVモードを選択できない場合は次にシステム効率が高いリーン燃焼モードを選択する。本形態は、要求パワーが領域R2に該当する場合に実施する制御に特徴がある。換言すれば、本形態は、要求パワーに対するシステム効率がEVモードに比べてリーン燃焼モードの方が上回り、かつシステム効率がEVモードに比べてストイキ燃焼モードの方が下回る特定条件の場合に実施する制御に特徴がある。この特定条件は本発明に係る「条件」に相当する。
[0022] 図3及び図4を参照しながら、ECU30が実施する制御の一例を説明する。図3の制御ルーチンのプログラムはECU30に保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS1において、ECU30は温度センサ18の出力信号を参照してスタート触媒16の温度Tscを取得する。次に、ステップS2において、ECU30は温度センサ19の出力信号を参照してNOx触媒17の温度Tncを取得する。なお、温度センサ18、19の代わりに、温度Tsc、Tncの少なくとも一方を内燃機関3の運転状態から推定して取得することもできる。
[0023] ステップS3において、ECU30はスタート触媒16の温度Tscが活性化温度範囲の下限値Tscmよりも高いか否かを判定する。温度Tscが下限値Tscmよりも高い場合はステップS5に進む。温度Tscが下限値scm以下の場合はステップS4に進み、スタート触媒16及びNOx触媒17のそれぞれの温度を強制的に上昇させる触媒昇温制御を実施する。本形態において、触媒昇温制御は内燃機関3をストイキ燃焼モードかつ高負荷で運転することにより実施する。
[0024] ステップS5において、ECU30は要求パワーを取得する。ECU30は、図1に示したアクセルペダル28の踏み込み量に応じた信号を出力するアクセル開度センサ31の出力信号と、車速に応じた信号を出力する車速センサ32の出力信号とを参照し、所定の方法で計算することにより要求パワーを取得する。ステップS6において、ECU30はステップS5で取得した要求パワーが図2に示した領域R1~R3のいずれに属するかを判定する。ステップS7において、要求パワーが領域R1に属すると判定した場合、ステップS9に進み、要求パワーに対するシステム効率が最も高いEVモードを選択する。ステップS8において、要求パワーが領域R2に属すると判定した場合、ステップS10に進み図4に示した特別処理を実施する。ステップS8で否定的判定がされた場合は要求パワーが領域R3に属することになるので、ステップS11に進み、要求パワーに対するシステム効率が最も高いストイキ燃焼モードを選択する。
[0025] 図4のステップS101において、ECU30はNOx触媒17の温度Tncが第1所定値Tα以下であるか否かを判定する。第1所定値TαはNOx触媒17が活性化する温度範囲の下限値として設定されている。なお、第1所定値Tαとしては、制御の安定性を考慮してNOx触媒17が活性化する温度範囲の下限値よりも少し高めの温度に設定してもよい。NOx触媒17の温度Tncが第1所定値Tα以下の場合はステップS102に進む。NOx触媒17の温度Tncが第1所定値Tαよりも高い場合、すなわちNOx触媒17の温度Tncが活性化温度範囲内の場合はステップS103に進み、要求パワーに対するシステム効率が最も高いリーン燃焼モードを選択する。」
エ 「
[図:0001430733000001.jpg]
」([図1])
オ 「
[図:0001430733000002.jpg]
」([図2])
カ 「
[図:0001430733000003.jpg]
」([図3])
キ 「
[図:0001430733000004.jpg]
」([図4])
(2)引用発明
上記(1)の記載及び図面の図示内容から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5に対して各種の制御を行う電子制御装置(ECU)30であって、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5は、内燃機関3及びモータ・ジェネレータ4、5を含み、内燃機関3のクランク軸7は遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは出力ギア20に連結され、電子制御装置(ECU)30は、以下のように構成される、電子制御装置(ECU)30:
-リーン燃焼モードで内燃機関3を運転し、
-EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5の要求パワーを取得し、
-要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属するかを判定し(効率分岐点Pe1は、要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合リーン燃焼モードで内燃機関3を運転するのに比べてEVモードの方がシステム効率が上回る要求パワーである)、そして
-EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5の要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5をEVモードで運転する。」
2 引用文献2ないし4の記載事項及び周知技術
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-86724号公報(平成24年5月10日公開。以下「引用文献2」という。)には、「ハイブリッド車両の駆動装置」に関し図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】 【0001】
本発明は、多様な動力伝達態様を実現可能に構成されたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の駆動装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハイブリッド車両では、エンジンから出力された動力を全て電動機の駆動電力に変換して駆動軸に出力するシリーズモード、エンジンから出力された動力を機械的な動力のまま駆動軸に出力すると共に残余を電力に変換して駆動軸へと出力するパラレルモード等が、運転状況等に応じて自動的に切替えられる。
【0003】
上述した動力伝達モードの切替動作は、動力伝達機構として構成されるプラネタリギヤ等に、切り離し及び結合が可能なクラッチ等を設けることで実現される。具体的には、エンジンを切り離すクラッチを解放すると共にリングギヤの回転動作を固定するクラッチを係合することで、シリーズモードを実現しようとする技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。」
イ 「【0033】
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の駆動装置」の一例である。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに図2は、ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0034】
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、主にエンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600、第1クラッチ710、第2クラッチ720及び第3クラッチ730を備えて構成されている。」
ウ 「【0045】
動力分割機構300は、本発明の「動力伝達機構」の一例であり、中心部に設けられた本発明の「第1回転要素」の一例たるサンギヤS1と、サンギヤS1の外周に同心円状に設けられた、本発明の「第2回転要素」の一例たるリングギヤR1と、サンギヤS1とリングギヤR1との間に配置されてサンギヤS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギヤP1と、これら各ピニオンギヤの回転軸を軸支する本発明の「第3回転要素」の一例たるキャリアC1とを備えている。」
エ 「【0050】
Tes=-Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置10は更に、エンジン軸400及び連結部位410間を連結するように、第1クラッチ710が設けられている。第1クラッチ710は、その係合状態に応じてエンジン200から出力された動力の伝達を制御できる。具体的には、第1クラッチ710が切り離された状態においては、エンジン200から出力された動力は連結部位410(即ち、動力分割機構300側)に伝達されない。一方で、第1クラッチ710が係合された状態では、エンジン200から出力された出力が連結部位410へと伝達される。連結部位410には、MG1及びサンギヤS1との連結を実現するための第2クラッチ720が設けられている。また、キャリアC1との連結を実現するための第3クラッチ730が設けられている。
【0051】
第1クラッチ710、第2クラッチ720及び第3クラッチ730の各々は、例えば回転可能な噛合い式のドグクラッチとして構成されており、ECU100のモード切替部によって各々の係合状態が制御される。第1クラッチ710、第2クラッチ720及び第3クラッチ730の係合状態を変化させることにより、複数種類の動力伝達モードを実現可能である。
【0052】
以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置10によって実現される動力伝達モードについて、図4から図7を参照して詳細に説明する。ここに図4は、ハイブリッド駆動装置によって実現される動力伝達モードを示すマトリクス図である。また図5は、EV2モードの動作点を示す共線図であり、図6は、シリーズモードの動作点を示す共線図であり、図7は、シリーズパラレルモードの動作点を示す共線図である。
【0053】
図4及び図5において、第1クラッチ710を解放(即ち、OFF)すると共に、第2クラッチ720及び第3クラッチ730を夫々係合(即ち、ON)するとEV2モードが実現される。EV2モードでは、第1クラッチ710が解放されているため、エンジン200から出力される動力が動力分割機構300に伝達されない。よって、ハイブリッド車両1は、モータジェネレータMG1及びMG2から出力される動力によって走行する。またEV2モードでは、第2クラッチ720及び第3クラッチ730が共に係合されているため、動力伝達機構300を構成する回転要素たるサンギヤS1、リングギヤR1及びキャリアC1は一体的に回転する。よって、MG1から出力される動力を駆動軸500に対して効率よく伝達することが可能である。EV2モードは、本発明の「第2の動力伝達モード」の一例である。」
オ 「【0057】
尚、第1クラッチ710、第2クラッチ720及び第3クラッチ730を全て解放する、或いは第1クラッチ710のみを係合し、第2クラッチ720及び第3クラッチ730を解放することで、EV1モードが実現可能である。
【0058】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置10は、上述した4種類の動力伝達モードを走行状況に応じて切替ながら走行できるため、運転効率を効果的に高めることが可能である。尚、上述した4種類の動力伝達モード以外の動力伝達モードを実現可能に構成されても構わない。」
カ 「
[図:0001430733000005.jpg]
」(【図2】)
キ 「
[図:0001430733000006.jpg]
」(【図4】)
(2)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2018-1869号公報(平成30年1月11日公開。以下「引用文献3」という。)には、「ハイブリッド車両」に関し図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズモードおよびシリーズパラレルモードのどちらかの走行モードを選択可能に構成されたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両には、駆動力源として、エンジンおよびモータが備えられる。従来、エンジンおよびモータの双方の動力を用いて走行する方式として、シリーズ走行およびシリーズパラレル走行が知られている。
【0003】
シリーズ走行は、エンジンをジェネレータに接続し、エンジンの動力をジェネレータに伝達して一旦電力に変換し、その電力でモータを駆動する方式である。すなわち、シリーズ走行では、エンジンの動力はジェネレータに伝達されて電力に変換される。
【0004】
シリーズパラレル走行は、エンジンを動力分割機構(遊星歯車機構など)を介してジェネレータおよび駆動輪に接続し、エンジンの動力を分割してジェネレータと駆動輪とに伝達する方式である。すなわち、シリーズパラレル走行では、エンジンの動力の一部はジェネレータに伝達されて電力に変換され、残りが駆動輪に機械的に伝達される。
【0005】
上記の2つの走行方式(シリーズ走行、シリーズパラレル走行)を切替可能に構成されたハイブリッド車両が、たとえば特開2012-86725号公報(特許文献1)に開示されている。」
イ 「【0021】
<車両の全体構成>
図1は、本実施の形態による車両1の全体構成の一例を模式的に示す図である。車両1は、駆動装置2と、駆動輪90と、制御装置100と、油圧回路500とを含む。駆動装置2は、エンジン10と、第1モータジェネレータ(第1MG)20と、第2モータジェネレータ(第2MG)30と、第1遊星歯車装置(動力分割装置)40と、第2遊星歯車装置50と、クラッチC1と、クラッチC2と、ブレーキB1とを含む。第2遊星歯車装置50、クラッチC1,C2、ブレーキB1、および油圧回路500は、後述するように、エンジン10と第1遊星歯車装置40との接続状態を切り替える切替装置として機能する。」
ウ 「【0024】
第1軸12上には、第1MG20と、第2遊星歯車装置50と、第1遊星歯車装置40と、クラッチC2と、クラッチC1と、エンジン10とが順次配置されている。
【0025】
第2遊星歯車装置50は、サンギヤS2と、複数のピニオンギヤP2と、各ピニオンギヤP2を接続するキャリアCA2と、リングギヤR2とを含む。第2遊星歯車装置50は、シングルプラネタリギヤである。」
エ 「【0028】
第1遊星歯車装置40は、サンギヤS1と、複数のピニオンギヤP1と、各ピニオンギヤP1を接続するキャリアCA1と、リングギヤR1とを含む。第1遊星歯車装置40は、シングルプラネタリギヤである。」
オ 「【0034】
クラッチC2は、エンジン10のクランク軸21とキャリアCA1とを連結可能な油圧式の摩擦係合要素である。クラッチC2が係合状態とされると、クランク軸21およびキャリアCA1が連結されると共に互いに一体的に回転する。クラッチC2が解放状態とされると、キャリアCA1は、クランク軸21との連結状態が解除される。
【0035】
クラッチC1は、回転軸22(サンギヤS1およびサンギヤS2)と、クランク軸21とを連結可能な油圧式の摩擦係合要素である。クラッチC1が係合状態になると、回転軸22とクランク軸21とが連結され、エンジン10の動力を第1MG20に直接伝達することができる。その一方で、クラッチC1が解放されると、エンジン10のクランク軸21は、回転軸22との連結状態が解除される。」
カ 「【0043】
<車両1の走行モード>
車両1の走行モードには、モータ走行モード(以下「EV走行モード」という)と、ハイブリッド走行(以下「HV走行」という)モードとが含まれる。
【0044】
EV走行モードは、エンジン10を停止させて、第1MG20および第2MG30の少なくとも一方の動力で車両1を走行させるモードである。本実施の形態において、EV走行モードには、第2MG30単独の動力を用いる「MG2単独駆動モード」と、第1MG20および第2MG30の両方の動力を用いる「両駆動モード」とが含まれる。」
キ 「【0050】
<<各走行モード中の制御状態(係合表)>>
制御装置100は、クラッチC1,C2およびブレーキB1の各摩擦係合要素の制御状態(係合/解放)と、エンジン10、第1MG20および第2MG30の駆動を制御することによって、上記の複数の走行モードのうちからいずれか1つを選択する。
【0051】
図3は、各走行モードにおける各摩擦係合要素の制御状態を示す係合表である。図3において「C1」、「C2」、「B1」、「MG1」、「MG2」はそれぞれクラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、第1MG20、第2MG30を示す。C1、C2、B1の各欄の丸印(○)は「係合」を示し、無印は「解放」を示す。
【0052】
MG2単独駆動モード中においては、クラッチC1が係合され、その他の摩擦係合要素は解放される。両駆動モード中においては、ブレーキB1が係合され、その他の摩擦係合要素は解放される。シリーズモード中においては、クラッチC1が係合され、その他の摩擦係合要素は解放される。シリーズパラレルモード中においては、クラッチC2が係合され、その他の摩擦係合要素は解放される。」
ク 「【0067】
<走行モードの選択>
上述のように、車両1は、エンジン10を停止させて走行するEV走行モードと、エンジン10を動作させて走行するHV走行モードとの切替が可能である。たとえば、制御装置100は、車両1に対する要求駆動力が第1レベルL1未満である低負荷領域では、エンジン10の熱効率(以下「エンジン熱効率」あるいは単に「熱効率」ともいう)が低い領域であるため、エンジン10を停止させて走行するEV走行モードを選択する。一方、要求駆動力が第1レベルL1よりも大きい領域では、エンジン10を動作させて走行するHV走行モードを選択する。」
ケ 「
[図:0001430733000007.jpg]
」(【図1】)
コ 「
[図:0001430733000008.jpg]
」(【図3】)
(3)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献6として引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-150673号公報(平成28年8月22日公開。以下「引用文献4」という。)には、「ハイブリッド車両」に関し図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】 【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関し、特に、第1および第2回転電機と変速部とを含むハイブリッド車両に関する。」
イ 「【0025】
図1を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジン10と、駆動装置2と、駆動輪90と、制御装置100とを含む。駆動装置2は、第1モータジェネレータ(以下、「第1MG」という)20と、第2モータジェネレータ(以下、「第2MG」という)30と、変速部40と、差動部50と、クラッチCSと、入力軸21と、出力軸(カウンタ軸)70と、デファレンシャルギヤ80と、油圧回路500とを含む。」
ウ 「【0029】
第1軸12上には、変速部40、差動部50およびクラッチCSがさらに設けられている。変速部40、差動部50、第1MG20およびクラッチCSは、挙げた順にエンジン10に近い側から並んでいる。
【0030】
第1MG20は、エンジン10からの動力が入力可能に設けられている。より具体的には、エンジン10のクランク軸には、駆動装置2の入力軸21が接続されている。入力軸21は、第1軸12に沿って、エンジン10から遠ざかる方向に延びている。入力軸21は、エンジン10から延びた先端でクラッチCSに接続されている。第1MG20の回転軸22は、第1軸12に沿って筒状に延びる。入力軸21は、クラッチCSに接続される手前で回転軸22の内部を通過している。入力軸21は、クラッチCSを介して、第1MG20の回転軸22に接続されている。
【0031】
クラッチCSは、エンジン10から第1MG20への動力伝達経路上に設けられている。クラッチCSは、入力軸21と第1MG20の回転軸22とを連結可能な油圧式の摩擦係合要素である。クラッチCSが係合状態とされると、入力軸21および回転軸22が連結され、エンジン10から第1MG20への動力の伝達が許容される。クラッチCSが解放状態とされると、入力軸21および回転軸22の連結が解除され、エンジン10からクラッチCSを介して伝達される第1MG20への動力の伝達が遮断される。
【0032】
変速部40は、エンジン10からの動力を変速して差動部50に出力する。変速部40は、サンギヤS1、ピニオンギヤP1、リングギヤR1およびキャリアCA1を含むシングルピニオン式の遊星歯車機構と、クラッチC1およびブレーキB1とを有する。」
エ 「【0035】
本実施の形態においては、キャリアCA1が、エンジン10からの動力が入力される入力要素として設けられ、リングギヤR1が、キャリアCA1に入力された動力を出力する出力要素として設けられている。サンギヤS1、ピニオンギヤP1、リングギヤR1およびキャリアCA1を含む遊星歯車機構により、キャリアCA1に入力された動力は変速されてリングギヤR1から出力される。
【0036】
クラッチC1は、サンギヤS1とキャリアCA1とを連結可能な油圧式の摩擦係合要素である。クラッチC1が係合状態とされると、サンギヤS1およびキャリアCA1が連結され一体回転する。クラッチC1が解放状態とされると、サンギヤS1およびキャリアCA1の一体回転が解除される。
【0037】
ブレーキB1は、サンギヤS1の回転を規制(ロック)可能な油圧式の摩擦係合要素である。ブレーキB1が係合状態とされると、サンギヤS1が駆動装置のケース体に固定されて、サンギヤS1の回転が規制される。ブレーキB1が解放(非係合)状態とされると、サンギヤS1が駆動装置のケース体から切り離され、サンギヤS1の回転が許容される。
【0038】
変速部40の変速比(入力要素であるキャリアCA1の回転速度と、出力要素であるリングギヤR1の回転速度との比、具体的には、キャリアCA1の回転速度/リングギヤR1の回転速度)は、クラッチC1およびブレーキB1の係合および解放の組み合わせに応じて切り替えられる。クラッチC1が係合され、かつブレーキB1が解放されると、変速比が1.0(直結状態)となるローギヤ段Loが形成される。クラッチC1が解放され、かつブレーキB1が係合されると、変速比が1.0よりも小さい値(たとえば0.7、いわゆるオーバードライブ状態)となるハイギヤ段Hiが形成される。なお、クラッチC1が係合され、かつブレーキB1が係合されると、サンギヤS1およびキャリアCA1の回転が規制されるため、リングギヤR1の回転も規制される。
【0039】
変速部40は、動力を伝達する非ニュートラル状態と、動力を伝達しないニュートラル状態とを切り替え可能に構成されている。本実施の形態では、上記の直結状態およびオーバードライブ状態が、非ニュートラル状態に対応する。一方、クラッチC1およびブレーキB1がともに解放されると、キャリアCA1が第1軸12を中心に空転することが可能な状態となる。これにより、エンジン10からキャリアCA1に伝達された動力が、キャリアCA1からリングギヤR1に伝達されないニュートラル状態が得られる。」
オ 「【0049】
図2は、図1における車両の各構成要素の動力伝達経路を簡略に示したブロック図である。図2を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジン10と、第1MG20と、第2MG30と、変速部40と、差動部50と、バッテリ60と、クラッチCSとを備える。
【0050】
第2MG30は、駆動輪90に動力を出力可能に設けられる。変速部40は、エンジン10からの動力が入力される入力要素と、入力要素に入力された動力を出力する出力要素とを有する。変速部40は、その入力要素と出力要素との間で動力を伝達する非ニュートラル状態と、入力要素と出力要素との間で動力を伝達しないニュートラル状態とを切り替え可能に構成される。」
カ 「【0052】
差動部50は、第1MG20に接続される第1回転要素と、第2MG30および駆動輪90に接続される第2回転要素と、変速部40の出力要素に接続される第3回転要素とを有する。差動部50は、たとえば遊星歯車機構などのように、第1~第3回転要素のうちのいずれか2つの回転速度が定まると残りの1つの回転速度が定まるように構成される。
【0053】
ハイブリッド車両1は、動力を伝達する2つの経路K1,K2の少なくともいずれかによってエンジン10から第1MG20に動力を伝達可能に構成される。経路K1は、エンジン10から変速部40および差動部50を経由して第1MG20に動力を伝達する経路である。経路K2は、経路K1とは別の経路でエンジン10から第1MG20に動力を伝達する経路である。クラッチCSは、経路K2に設けられ、エンジン10から第1MG20への動力を伝達する係合状態と、エンジン10から第1MG20への動力の伝達を遮断する解放状態とを切り替え可能である。」
キ 「【0056】
なお、変速部40は、必ずしも変速比を変更可能なものでなくても良く、経路K1のエンジン10と差動部50の動力伝達を遮断可能な構成であれば、単なるクラッチのようなものでもよい。」
ク 「【0080】
図5は、各走行モードと、各走行モードにおける変速部40のクラッチC1およびブレーキB1の制御状態とを示す図である。
【0081】
制御装置100は、「モータ走行モード(以下「EV走行モード」という)」あるいは「ハイブリッド走行モード(以下「HV走行モード」という)」でハイブリッド車両1を走行させる。EV走行モードとは、エンジン10を停止し、第1MG20あるいは第2MG30の少なくとも一方の動力でハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。HV走行モードとは、エンジン10および第2MG30の動力でハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。EV走行モードおよびHV走行モードのそれぞれにおいて、制御モードはさらに細分化されている。
【0082】
図5において、「C1」、「B1」、「CS」、「MG1」、「MG2」はそれぞれクラッチC1、ブレーキB1、クラッチCS、第1MG20、第2MG30を示す。C1、B1、CSの各欄の丸(○)印は「係合」を示し、×印は「解放」を示し、三角(△)印はエンジンブレーキ時にクラッチC1およびブレーキB1のどちらか一方を係合することを示す。また、MG1の欄およびMG2の欄の「G」は主にジェネレータとして動作させることを示し、「M」は主にモータとして動作させることを示す。
【0083】
EV走行モード中においては、制御装置100は、第2MG30単独の動力でハイブリッド車両1を走行させる「単モータ走行モード」と、第1MG20および第2MG30の両方の動力でハイブリッド車両1を走行させる「両モータ走行モード」とを、ユーザの要求トルクなどに応じて選択的に切り替える。
【0084】
駆動装置2の負荷が低負荷の場合には単モータ走行モードが使用され、負荷が高負荷になると両モータ走行モードに移行される。
【0085】
図5のE1欄に示すように、EV単モータ走行モードでハイブリッド車両1を駆動(前進あるいは後進)させる場合、制御装置100は、クラッチC1を解放しかつブレーキB1を解放することで、変速部40をニュートラル状態(動力を伝達しない状態)とする。このとき、制御装置100は、第1MG20を主にサンギヤS2をゼロに固定させる固定手段として動作させ、第2MG30を主にモータとして動作させる(後述の図6参照)。第1MG20を固定手段として動作させるために、第1MG20の回転速度がゼロになるように回転速度をフィードバックして第1MG20の電流を制御しても良く、トルクがゼロでも回転速度をゼロに維持できる場合には、電流を加えずコギングトルクを利用しても良い。なお、変速部40をニュートラル状態とすると制動時にエンジン10が連れ回されないのでその分のロスが少なく、大きな回生電力を回収することができる。」
ケ 「【0088】
一方、図5のE3欄に示すように、EV両モータ走行モードでハイブリッド車両1を駆動(前進あるいは後進)させる場合、制御装置100は、クラッチC1を係合しかつブレーキB1を係合して変速部40のリングギヤR1の回転を規制(ロック)する。これにより、変速部40のリングギヤR1に連結された差動部50のキャリアCA2の回転も規制(ロック)されるため、差動部50のキャリアCA2が停止状態に維持される(エンジン回転速度Ne=0となる)。そして、制御装置100は、第1MG20および第2MG30を主にモータとして動作させる(後述の図7参照)。
【0089】
なお、EV走行モード(単モータ走行モードおよび両モータ走行モード)では、エンジン10が停止しているため、MOP501も停止している。したがって、EV走行モードでは、EOP502の油圧を用いてクラッチC1あるいはブレーキB1が係合される。」
コ 「
[図:0001430733000009.jpg]
」(【図1】)
サ 「
[図:0001430733000010.jpg]
」(【図2】)
シ 「
[図:0001430733000011.jpg]
」(【図5】)
(4)引用文献2ないし4にて例示される慣用技術
上記(1)ないし(3)より、「フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットとフルハイブリッドエンジンを備えた車両」の技術分野において、以下の技術は慣用の技術(以下、「慣用技術」という。)であると認められる。
「内燃エンジンは遊星歯車機構として構成される動力分割機構及びクラッチを介してドライブトレインに結合されており、クラッチを用いて内燃エンジンをドライブトレインから切り離して、フルハイブリッドエンジンを複数の電気モードで運転させること。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5」はその機能、構成又は技術的意義からみて本願発明における「フルハイブリッドエンジン」に相当することから、引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5に対して各種の制御を行う電子制御装置(ECU)30」は「フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニット」に相当する。
また、引用発明における「内燃機関3」は本願発明における「内燃エンジン」に相当し、同様に、「モータ・ジェネレータ4、5」は「電気モーター」に相当することから、引用発明における「内燃機関3及びモータ・ジェネレータ4、5を含」むことは本願発明における「内燃エンジン及び電気モーターを含」むことに相当する。
さらに、引用発明における「内燃機関3のクランク軸7」は「内燃機関3」の一部を構成するものであることから本願発明における「内燃エンジン」に相当し、また、引用発明における「遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは出力ギア20」は本願発明における「ドライブトレイン」に相当し、同様に、「連結され」ることは「結合されて」いることに相当することから、引用発明における「内燃機関3のクランク軸7は遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは出力ギア20に連結され」ることは本願発明における「内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されて」いることと「内燃エンジンはドライブトレインに結合されて」いることの限りにおいて一致する。
(2)引用発明における「リーン燃焼モード」は本願発明における「希薄燃焼モード」に相当し、同様に、「内燃機関3を運転」することは「内燃エンジンを運転」することに相当することから、引用発明における「リーン燃焼モードで内燃機関3を運転」することは本願発明における「希薄燃焼モードで内燃エンジンを運転」することに相当する。
また、引用発明における「要求パワー」は本願発明における「現在の負荷レベル」に相当し、同様に、「要求パワーを取得」することは「現在の負荷レベルを決定」することに相当することから、引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5の要求パワーを取得」することは本願発明における「フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定」することに相当する。
さらに、引用発明における「要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合」は本願発明における「希薄燃焼負荷閾値」が「それ未満では」に相当し、同様に、「リーン燃焼モードで内燃機関3を運転する」ことは「希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転」に相当する。そして、引用発明における「リーン燃焼モードで内燃機関3を運転するのに比べてEVモードの方がシステム効率が上回る」ことは本願発明における「希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が望ましくない」ことに相当することから、引用発明における「リーン燃焼モードで内燃機関3を運転するのに比べてEVモードの方がシステム効率が上回る」ことは本願発明における「希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない」ことに包含され、これより、引用発明における「効率分岐点Pe1は、要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合リーン燃焼モードで内燃機関3を運転するのに比べてEVモードの方がシステム効率が上回る要求パワーである」ことは本願発明における「希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する」ことに包含される。そうすると、引用発明における「要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属するかを判定し(効率分岐点Pe1は、要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定したリーン燃焼モードで内燃機関3を運転するのに比べてEVモードの方がシステム効率が上回る要求パワーである)」ということは本願発明における「現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)」ということに相当する。
さらにまた、引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5の要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合」は本願発明における「フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合」に相当する。また、引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5をEVモードで運転する」ことは本願発明における「内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる」ことと「フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる」ことの限りにおいて一致する。そうすると、引用発明における「EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5の要求パワーが効率分岐点Pe1よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5をEVモードで運転する」ことは本願発明における「フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる」ことと「フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる」ことの限りにおいて一致する。
(3)引用発明における「電子制御装置(ECU)30」は本願発明における「エンジン制御ユニット」と上記(1)及び(2)の限りに一致する「エンジン制御ユニット」の限りにおいて一致する。
2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットであって、フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、内燃エンジンはドライブトレインに結合されており、エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-希薄燃焼モードで内燃エンジンを運転し、
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる。」
【相違点】
「内燃エンジン」と「ドライブトレイン」に関して、本願発明は、内燃エンジンは「クラッチを介して」ドライブトレインに結合されており、フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、「内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、」フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させるものであるのに対し、引用発明は、内燃機関3のクランク軸7(内燃エンジン)は「遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは」出力ギア20(ドライブトレイン)に連結され(結合され)てはいるものの、本願発明のように「クラッチを介して」ではなく、また、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)の要求パワー(現在の負荷レベル)が効率分岐点Pe1(希薄燃焼負荷閾値)よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合(を下回っている場合)、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)をEVモード(電気モード)で運転する(運転させる)ものではあるものの、本願発明のように「内燃エンジンをドライブトレインから切り離し」なされるものではない点。
第6 判断
1 以下、相違点について検討する。
(1)上記第4の2(4)のとおり、「フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットとフルハイブリッドエンジンを備えた車両」の技術分野において、以下の技術は慣用技術であると認められる。
「内燃エンジンは遊星歯車機構として構成される動力分割機構及びクラッチを介してドライブトレインに結合されており、クラッチを用いて内燃エンジンをドライブトレインから切り離して、フルハイブリッドエンジンを複数の電気モードで運転させること。」
(2)そして、内燃機関3のクランク軸7(内燃エンジン)が遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは出力ギア20(ドライブトレイン)に連結され(結合され)ている引用発明において、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)の要求パワー(現在の負荷レベル)が効率分岐点Pe1(希薄燃焼負荷閾値)よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合(下回っている場合)、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)をEVモード(電気モード)で運転する(運転させる)にあたり、運転者が要求する要求パワー(現在の負荷レベル)に対してより適切に対応させたEVモード(電気モード)とするべく、引用発明と同様に内燃エンジンが遊星歯車機構として構成される動力分割機構を介してドライブラインに結合されているフルハイブリッドエンジンを備えた車両についての「内燃エンジンは遊星歯車機構として構成される動力分割機構及びクラッチを介してドライブトレインに結合されており、クラッチを用いて内燃エンジンをドライブトレインから切り離して、フルハイブリッドエンジンを複数の電気モードで運転させる」慣用技術を採用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
2 また、仮に、本願発明において、「希薄燃焼負荷閾値」が「それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能」な「負荷レベルを定義する」もののみに限定される場合についても検討する。
引用発明において、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)の要求パワー(現在の負荷レベル)が効率分岐点Pe1(希薄燃焼負荷閾値)よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合(下回っている場合)については、引用文献1の段落[0019]には「効率分岐点Pe1よりも要求パワーが小さい状況ではリーン燃焼モードを選択するよりもEVモードを選択するほうがシステム効率は高い。」と記載され、段落[0020]には「領域R1では、システム効率が高い順に各モードを並べると、EVモード、リーン燃焼モード、ストイキ燃焼モードの順番となる。」と記載され、段落[0021]には「ECU30は、要求パワーが領域R1に該当する場合、EVモードを最優先で選択し、バッテリ26の蓄電率が低い場合等の何らかの原因でEVモードを選択できない場合は次にシステム効率が高いリーン燃焼モードを選択する。」と記載されている。
このことから、引用発明において、要求パワー(現在の負荷レベル)が効率分岐点Pe1(希薄燃焼負荷閾値)よりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合(を下回っている場合)に、リーン燃焼モード(希薄燃焼モード)で内燃機関3(内燃エンジン)を運転することも可能であると認められる。
一方で、要求パワー(現在の負荷レベル)が小さくなるほどリーン燃焼(希薄燃焼)での内燃機関3(内燃エンジン)の運転(安定運転)が困難ないし不可能となることは、例を挙げるまでもない技術常識であることから、引用発明における領域R1に属する(希薄燃焼負荷閾値を下回っている)要求パワー(現在の負荷レベル)のうちのいずれかの値未満の状況において、リーン燃焼(希薄燃焼)での内燃機関3(内燃エンジン)の運転(安定運転)が困難ないし不可能となり得るといえ、その場合においても、引用発明では、要求パワー(現在の負荷レベル)が領域R1に属する(希薄燃焼負荷閾値を下回っている)以上、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)をEVモード(電気モード)で運転する(運転させる)ものであるといえる。
そうすると、引用発明において、要求パワー(現在の負荷レベル)が領域R1に属し、かつ、リーン燃焼(希薄燃焼)での内燃機関3(内燃エンジン)の運転(安定運転)が困難ないし不可能となる値未満の状況において(それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能な負荷レベルと定義する希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合)、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)をEVモード(電気モード)で運転する(運転させる)ように構成することも、当業者が容易になし得るものである。
3 そして、その効果は、引用発明及び引用文献2ないし4にて例示される慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
4 したがって、本願発明は引用発明及び引用文献2ないし4にて例示される慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張の検討
1 審判請求人の審判請求書における主張の検討
(1)審判請求人の審判請求書における主張の内容
審判請求人は、審判請求書において、原査定における引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4(注:原査定においては上記のとおり引用文献4ないし6)にて例示された慣用技術からみた本願発明の進歩性について、以下のように主張している(注:下線は当審において付した。)。
「 クラッチでエンジンを切り離す技術は、確かに引用文献4~6のように従来から存在している。しかし、引用文献4~6がエンジンクラッチを開示しているものの、それだけでは引用文献1に係る発明においてクラッチが必要又は有用であることを意味するものではない。審判請求人は令和6年1月25日付の意見書の意見を維持する。
すなわち、引用文献1の図1を参照すると、そこに示されているハイブリッド車両の全体構成は、トヨタ自動車株式会社が1997年から、最初にプリウスに実装されたハイブリッドシステムであると推認される。この配置にはクラッチが不要な遊星歯車機構として構成された動力分割機構6(引用文献1の段落0015)を使用して設計されているため、クラッチを設けることは必要ではなく、実際にもクラッチが実装されなかった。
より具体的には、引用文献1に係る発明の内燃機関3は動力分割機構6のプラネタリキャリアCに接続されており、サンギアSは第1モータ・ジェネレータ4のロータ4aに連結され、また、出力ギア20及び第2モータ・ジェネレータ5の両方がリングギアRに連結されている(段落0014、0015)。引用文献1の段落0016に説明されているように、EVモードを選択すると内燃機関3が停止され、第2モータ・ジェネレータ5のみが駆動される。したがって、EVモードにおいて、内燃機関3が停止してクランク軸7及びキャリアCが回転しないときは、第1モータ・ジェネレータ4がサンギアSに力を加えないように制御されることが理解できる。このようにして、力は第2モータ・ジェネレータ5から出力ギア20に伝達され、内燃機関3の状態とは無関係に車両を駆動する。すなわち、第1モータ・ジェネレータ4を介して内燃機関3のクランク軸7に伝達される力によって損失が発生することはない。これは引用文献1の中核的な特徴である。(引用文献1の0004、0005参照。)
上記の点を考慮すると、当業者には、引用文献1に係る発明の制御装置において、エンジンクラッチを設けるように変更をする動機はないと考えられる。追加のクラッチはまったく必要ないからである。逆に、当業者であれば、クラッチを設けると、コストが増加し、重量が増加し、追加のスペースが必要となるといったデメリットがあるため、そのような選択をしないと考えるはずである。引用文献1のほかの記載を参酌しても、クラッチを設けることに関して、何ら開示又は示唆がない。
拒絶査定において、審査官殿は、引用文献1に係る発明において、上記でメリットを考慮してもクラッチを設けるほどの動機付けについて、具体的に認定していない。
したがって、審判請求人は、引用文献1に係る発明において、クラッチを設けることは当業者に容易ではなく、本願発明は進歩性を有するものと思料する。」(審判請求書第2ページないし第3ページの「4.本願発明が特許されるべき理由」の「(1)進歩性について」欄)
(2)上記(1)の主張に対する検討
ア 上記(1)における「当業者には、引用文献1に係る発明の制御装置において、エンジンクラッチを設けるように変更をする動機はないと考えられる。追加のクラッチはまったく必要ないからである。」にみられるような引用発明においてクラッチを新たに設けることに関する主張については、上記「第6 判断」の特に1及び2で説示したとおり、内燃機関3のクランク軸7(内燃エンジン)が遊星歯車機構として構成された動力分割機構6のプラネタリキャリアCに連結され同動力分割機構6のリングギアRは出力ギア20(ドライブトレイン)に連結され(結合され)ている引用発明において、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)の要求パワー(現在の負荷レベル)が効率分岐点Pe1(希薄燃焼負荷閾値)をよりも小さい状況にある領域R1に属すると判定した場合(下回っている場合)、EVモードとハイブリッドモードを実行可能なハイブリッド車両が備える内燃機関3及び2つのモータ・ジェネレータ4、5(フルハイブリッドエンジン)をEVモード(電気モード)で運転する(運転させる)にあたり、運転者が要求する要求パワー(現在の負荷レベル)に対してより適切に対応させたEVモード(電気モード)とするべく、引用発明と同様に内燃エンジンが遊星歯車機構として構成される動力分割機構を介してドライブラインに結合されているフルハイブリッドエンジンを備えた車両についての「内燃エンジンは遊星歯車機構として構成される動力分割機構及びクラッチを介してドライブトレインに結合されており、クラッチを用いて内燃エンジンをドライブトレインから切り離して、フルハイブリッドエンジンを複数の電気モードで運転させる」慣用技術を採用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものであり、引用発明においてクラッチを新たに設けることについては十分に動機を有するものであることから、かかる主張は採用することができない。
イ 上記(1)における「引用文献1の図1を参照すると、そこに示されているハイブリッド車両の全体構成は、トヨタ自動車株式会社が1997年から、最初にプリウスに実装されたハイブリッドシステムであると推認される。・・・実際にもクラッチが実装されなかった。」との主張については、引用文献1に明示的に記載されたものではなく、また、仮に該推認とされるものであって、実際に実装されなかったとの主張の通りであるとしても、該推認とされる時点の一車種についてのことに過ぎず、また、実装されるか否かは技術的な観点のみならず他の様々な要素が考慮されるものでもあり、このような点をもって相違点に係る本願発明特定事項に想到することに技術的な困難性を伴うと直ちに認めることはできず、本出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて本願発明を当業者が容易に発明をすることができたか否かを検討する進歩性の判断においてはその結論を左右するものとして採用するに値するとはいえない。
(3)したがって、審判請求人の上記(1)の審判請求書における主張は失当であって採用することはできない。
2 審判請求人の令和7年1月14日提出の上申書における主張の検討
(1)審判請求人の同上申書における主張の内容
審判請求人は、同上申書において、原査定及び前置報告書における引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4(注:原査定及び前置報告書においては上記のとおり引用文献4ないし6)にて例示された慣用技術からみた本願発明の進歩性について、以下のように主張している(注:下線は当審において付した。ただし、下記イの[請求項1]欄については上申書のとおりである。)。
ア 「令和6年8月13日付けの審判請求書に記載された理由により、引用文献1に係る発明の制御装置において、エンジンクラッチを設けるように変更をする動機はないと考えられる。追加のクラッチはまったく必要ないからである。逆に、当業者であれば、クラッチを設けると、コストが増加し、重量が増加し、追加のスペースが必要となるといったデメリットがあるため、そのような選択をしないと考えるはずである。」(同上申書第1ページの「1.(進歩性)特許法第29条第2項の拒絶理由について」欄)
イ 「 上記説明により進歩性の拒絶理由が解消されないと判断される場合、審判請求人は、以下のように特許請求の範囲の範囲を補正することを検討している。
[請求項1]
フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットであって、前記フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、前記内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されており、前記エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-希薄燃焼モードで前記内燃エンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記クラッチを用いて前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる。」(同上申書第1ページないし第2ページの「2.補正案について」欄)
ウ 「 上記補正案では、独立請求項1及び15において、「前記クラッチを用いて前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し」との発明特定事項が追加され、クラッチの意義がより明確になっている。当該補正の根拠は本願明細書の段落0014、0028~0030である。」(同上申書第4ページの「2.補正案について」欄)
エ 「 補正後の請求項1~16に係る発明については、前述のように、引用文献1に係る発明において、内燃機関3の動力をドライブトレインに伝達しない構成(サンギアSなど)が存在しているため、そもそも内燃機関3をドライブトレインから切り離す必要はない。そのため、引用文献1から、補正後の本願請求項1~16に係る発明に想到できない。」(同上申書第4ページの「2.補正案について」欄)
オ 「 仮に、現在の特許請求の範囲では拒絶理由が解消できないと判断された場合、さらなる補正の機会をいただくよう、お願い申し上げる。」(同上申書第4ページの「3.まとめ」欄)
(2)上記(1)の主張に対する検討
ア 上記(1)アの主張について
上記1(2)と同様である。
イ 上記(1)イないしオの主張について
(ア)上記(1)イ及びウの主張について
上記「第6 判断」の特に1で説示したとおり、引用発明において「クラッチを用いて内燃エンジンをドライブトレインから切り離して、フルハイブリッドエンジンを複数の電気モードで運転させる」ものである慣用技術を採用し、本願発明に想到することは、当業者が容易になし得るものであることから、上記(1)イの「クラッチを用いて」を発明特定事項に加えた補正案の請求項1に係る発明に想到することについても、当業者が容易になし得るものである。
(イ)上記(1)エの主張について
上記1(2)と同様である。
(ウ)上記(1)オの主張について
審判請求人は審判請求時において既に補正の機会を得ており、補正案の請求項1に記載された発明についても上記のとおり引用発明及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることから、そのような補正の機会は提供するまでもなく、かかる主張は採用することはできない。
(3)したがって、審判請求人の上記(1)の上申書における主張は失当であって採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし4にて例示される慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-013127