審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-008203

走行軌道修正装置および走行軌道修正方法

審判番号
2021-008203
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-007779
請求日
2021年06月22日
審決日
2022年01月04日
公報発行日
2022年03月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 三英技研
  • 【請求人代理人】松永 裕吉
  • 【請求人】株式会社佐藤商會
  • 【請求人代理人】松永 裕吉
審判長/審判官
  • 審判長 山本 信平
  • 審判官 金澤 俊郎
  • 審判官 星名 真幸
分類
P18 .121-Z (B60W) / P18 .575-Z (B60W)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-7779「走行軌道修正装置および走行軌道修正方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月20日出願公開、特開2021-75256〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年1月21日(優先権主張 令和元年10月31日)の出願であって、その手続は、以下のとおりである。 令和2年1月21日:早期審査に関する事情説明書の提出 令和2年2月13日付け(発送日:同年2月18日):拒絶理由通知書 令和2年4月17日:意見書、手続補正書の提出 令和2年6月30日付け(発送日:同年7月7日):拒絶理由通知書(最後) 令和2年8月26日:意見書の提出 令和2年10月22日付け(発送日:同年10月27日):拒絶理由通知書 令和2年12月28日:意見書、手続補正書の提出 令和3年3月19日付け(発送日:同年3月23日):拒絶査定 令和3年6月22日:審判請求書、手続補正書の提出 令和3年10月4日:上申書の提出 令和3年10月28日:早期審理に関する事情説明書の提出 第2 令和3年6月22日の手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 令和3年6月22日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本件補正について (1)本件補正前(令和2年12月28日の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 車両の走行すべき軌道として作成された走行軌道であって直線、円弧およびクロソイド曲線からなる走行軌道を前記車両の走行状況変化に応じて修正する走行軌道修正装置であって、 前記車両の現在位置を検知する車両位置検知部と、 前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱量を計算する逸脱量計算部と、 前記車両の車速を検知する車速検知部と、 前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角を検知する方向角検知部と、 前記走行軌道上で前記車両の現在位置よりも先の曲線区間上の地点に目標点を設定する目標点設定部と、 前記車両が所定速度以上で走行中に前記逸脱量が閾値を超えたとき、始点の方向角を前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角とし、終点の方向角を前記目標点における方向角とし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の現在位置から前記目標点に滑らかに繋がる修正軌道を生成し、前記走行軌道において前記目標点までの部分を前記修正軌道に置き換えて前記走行軌道を修正する軌道修正部とを備えた走行軌道修正装置。」 (2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり補正された(下線は、補正箇所を示すために当審で付与した。)。 「【請求項1】 車両の走行すべき軌道として作成された走行軌道であって直線、円弧およびクロソイド曲線からなる走行軌道を前記車両の走行状況変化に応じて修正する走行軌道修正装置であって、 前記車両の現在位置を検知する車両位置検知部と、 前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱量を計算する逸脱量計算部と、 前記車両の車速を検知する車速検知部と、 前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角を検知する方向角検知部と、 前記走行軌道上で前記車両の現在位置よりも先の曲線区間上の地点に目標点を設定する目標点設定部と、 前記車両が所定速度以上で走行中に前記走行軌道から前記先の曲線区間の外方向に逸脱し、その逸脱量が閾値を超えたとき、始点の方向角を前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角とし、終点の方向角を前記目標点における方向角とし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の現在位置から前記目標点に滑らかに繋がり、かつ、途中で前記走行軌道と交差することのない修正軌道を生成し、前記走行軌道において前記目標点までの部分を前記修正軌道に置き換えて前記走行軌道を修正する軌道修正部とを備えた走行軌道修正装置。」 2 本件補正の適否 (1)本件補正の内容 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「逸脱量」に関して、「走行軌道から前記先の曲線区間の外方向に逸脱し、その」という事項を付加して限定し、「修正軌道」に関して、「かつ、途中で前記走行軌道と交差することのない」という事項を付加して限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (2)引用文献 ア 引用文献1 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-171971号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「自動車用表示装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。 (ア)「【0015】 以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。 実施の形態1 図1に、この発明の実施の形態1に係る自動車用表示装置を備えた自動車の構成を示す。この自動車は、自動運転と手動運転とを切り換え可能に構成されたものであり、運転席1と、運転席1の前方に配置されたインストルメントパネル2と、運転席1とインストルメントパネル2との間に配置されたステアリング3と、インストルメントパネル2に配置された自動車用表示装置4とを有する。 【0016】 インストルメントパネル2は、車室の前部を車幅方向に延びるように配置され、自動運転と手動運転とを切り換えるスイッチなどの様々な車載機器が設けられている。なお、自動運転としては、自動車の運転を完全に制御するものだけでなく、搭乗者Dの運転を部分的に支援する運転支援システムも含むものである。 ステアリング3は、手動運転時に搭乗者Dが自動車を操舵するためのものであり、自動運転時には収納可能に形成されている。 【0017】 自動車用表示装置4は、運転席1に座る搭乗者Dに対して自動車の走行における安全性を表示するものであり、搭乗者Dの前方において視認可能な位置に配置されている。 【0018】 次に、自動車用表示装置4の構成について詳細に説明する。 図2示すように、自動車用表示装置4は、変化区間特定部5を有し、この変化区間特定部5に表示経路生成部6、表示制御部7および表示部8が順次接続されている。また、表示制御部7には走行画像生成部9が接続され、表示経路生成部6と走行画像生成部9から画像生成部10が構成されている。また、変化区間特定部5、画像生成部10および表示制御部7には装置制御部11が接続され、この装置制御部11に運転制御部12が接続されている。 【0019】 運転制御部12は、搭乗者Dによる自動運転と手動運転の切り換えに応じて自動車の運転を制御する。運転制御部12は、図示しない記憶部と位置取得部とを有し、自動運転時には、記憶部に予め記憶された地図データと位置取得部から得られる自動車の現在の位置とに基づいて、自動車が走行する目的地までの経路を示す目標経路が設定される。そして、運転制御部12は、算出された目標経路に沿って自動車が走行するように自動車の走行を制御する。一方、運転制御部12は、手動運転時には搭乗者Dによるステアリング3などの操作量に応じて自動車の運転を制御する。 【0020】 変化区間特定部5は、運転制御部12で算出された目標経路において自動車の走行方向が変化する変化区間を特定する。 表示経路生成部6は、変化区間特定部5で特定された変化区間が滑らかになるように目標経路を変化させた表示経路を生成する。 走行画像生成部9は、運転制御部12における地図データと自動車の位置情報とに基づいて自動車が現在走行している位置の周辺情報を示す走行画像を生成する。 【0021】 表示制御部7は、走行画像生成部9で生成された自動車の走行画像に表示経路生成部6で生成された表示経路を目標経路に換えて表示部8に表示させる。 表示部8は、インストルメントパネル2において搭乗者Dに視認可能な位置に配置され、表示制御部7の制御の下、搭乗者Dに対して自動車の走行画像と表示経路を表示する。 【0022】 装置制御部11は、運転制御部12から入力される自動運転および手動運転の運転情報に基づいて自動車用表示装置4内の各部の制御を行うものである。 なお、画像生成部10、表示制御部7、装置制御部11および運転制御部12は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。」 (イ)「【0023】 次に、この実施の形態の動作について説明する。 まず、図1に示すように、運転席1に座る搭乗者Dがステアリング3を操舵して自動車が運転される。ここで、自動車が自動運転される場合には、図2に示すように、運転制御部12が、地図データと自動車の現在の位置とに基づいて目標経路を算出し、その目標経路に基づいて自動車の運転を制御する。 【0024】 この時、運転制御部12は、装置制御部11を介して目標経路の情報を変化区間特定部5に出力する。また、運転制御部12は、装置制御部11を介して地図データおよび自動車の位置情報を画像生成部10の走行画像生成部9に出力する。 【0025】 走行画像生成部9は、図3に示すように、運転制御部12から入力された地図データおよび自動車Mの位置情報に基づいて、車線R(走行レーン)を走行する自動車Mの周辺情報を示す走行画像を生成する。生成された走行画像は、走行画像生成部9から表示制御部7に出力される。 一方、変化区間特定部5は、運転制御部12から目標経路T1が入力されると、その目標経路T1に沿って自動車Mの走行方向の変化を特定する。この時、目標経路T1において特定された走行方向の変化が所定の値より小さい場合には、画像生成部10を介して目標経路T1の情報を表示制御部7にそのまま出力する。 【0026】 表示制御部7は、自動車Mの走行画像が走行画像生成部9から入力されると共に目標経路T1が変化区間特定部5から入力されると、自動車Mの走行画像に目標経路T1を重ねて表示部8に表示させる。 これにより、自動車Mに搭乗した搭乗者Dが、表示部8に表示された目標経路T1を視認することで自動車Mの進路を明確に把握することができ、自動運転される自動車Mに安心して搭乗することができる。」 (ウ)「【0027】 ここで、自動車Mが外部環境の変化、例えば横風および轍などの外乱により目標経路T1から突然外れた場合には、運転制御部12により自動車Mの目標経路T1が新たに算出される。例えば、図4に示すように、自動車Mが、右側からの強い横風により目標経路T1から左側に外れたものとする。運転制御部12は、自動車Mの位置情報に基づいて自動車Mの走行位置が目標経路T1から外れていることを検知すると、目標経路T1から外れた自動車Mの走行位置を目標経路T1上に戻すために新たな目標経路T2を算出し、自動車Mの進路を目標経路T1から目標経路T2に変更する。 【0028】 そして、運転制御部12は、算出した目標経路T2を変化区間特定部5に出力する。変化区間特定部5は、運転制御部12から目標経路T2が入力されると、目標経路T1と同様に、目標経路T2に沿って自動車Mの走行方向の変化を探索する。そして、目標経路T2において走行方向の変化が所定の値以上である場合には、その区間を目標経路T2の変化区間P1として特定する。 例えば、運転制御部12が、自動車Mの走行位置を早い段階で元の目標経路T1上に戻す目標経路T2を設定すると、走行方向が大きく変化する変化区間P1が形成される場合がある。なお、変化区間特定部5は、目標経路T2が変化する角度および角度の変化率などに基づいて変化区間P1を特定することができる。特定された変化区間P1は、変化区間特定部5から表示経路生成部6に出力される。 【0029】 変化区間特定部5から表示経路生成部6に目標経路T2の変化区間P1が入力されると、表示経路生成部6は、変化区間P1が全体的に滑らかになるように目標経路T2を変化させた表示経路Sを生成する。 例えば、表示経路生成部6は、上記のように目標経路T1から外れた自動車の走行位置を戻すように目標経路T1が変更された場合には、目標経路T2における変化区間P1の開始位置P2から変化区間P1の終了位置を過ぎた位置に目標位置P3を設定する。目標位置P3としては、例えば、自動車Mが目標経路T2に従って走行した時に、自動車Mの走行位置が元の目標経路T1上に完全に戻ると推定される位置に設定することができる。このようにして、目標位置P3が設定されると、表示経路生成部6は、変化区間P1の開始位置P2から目標位置P3に向かって直線状に滑らかに延びる表示経路Sを生成する。すなわち、表示経路生成部6は、局所的に変化することなく滑らかに延びる表示経路Sを生成する。生成された表示経路Sは、表示経路生成部6から表示制御部7に出力される。」 上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「自動車Mの走行すべき経路として作成された目標経路T1を前記自動車Mの外部環境の変化に応じて変更する自動車用表示装置4であって、 前記自動車Mの現在位置を取得する位置取得部と、 前記目標経路T1からの前記自動車Mの走行位置が目標経路T1から外れたことを検知する運転制御部12と、 前記自動車Mが走行中に前記目標経路T1から外れたとき、新たな目標経路T2を生成し、前記目標経路T1を新たな目標経路T2に置き換えて前記目標経路T1を変更する運転制御部12とを備えた自動車用表示装置4。」 イ 引用文献2 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-193189号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「走行制御装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「【0004】 図1は、カーブ区間を含む典型的な道路の形状の一部を示したものである。一般に、道路のカーブ形状はクロソイド曲線と円弧の組み合わせで設計されている。円弧は、曲率が一定であり、走行距離に対する曲率の変化率がゼロである。クロソイド曲線は、曲率が連続的に変化し、走行距離に対する曲率の変化率が一定である。円弧区間の前後に曲率が単調増加する区間と単調減少する区間があり、この曲率が単調変化する区間は緩和曲線と呼ばれる。ここで、直線と円弧とを直接繋ぐと、その接続点で曲率が0からある一定値に不連続に変化してしまう。仮に曲率が不連続だと、理論上、操舵角を不連続にしないと追従できないので、ドライバへの違和感や、操舵が足りずに車線を逸脱する虞があることから、通常、道路には緩和曲線の区間が設けられている。」 上記記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 「道路の形状が、直線とクロソイド曲線と円弧からなること。」 ウ 引用文献3 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-210255号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「車両走行制御装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明の種々の側面は、車両走行制御装置に関する。」 (イ)「【0006】 本発明の一側面に係る車両走行制御装置は、目標走行軌跡に基づいて車両を走行させる車両走行制御装置であって、前記車両の向き及び走行位置を取得する取得部と、前記車両の向き、前記走行位置及び目標車線の車線中央位置に基づいて、前記走行位置から前記目標車線の車線中央位置までの目標走行軌跡を生成する軌跡生成部と、前記目標走行軌跡を用いて前記車両を走行させる走行制御部と、前記目標車線の車線中央を基準として前記車両の向きが車線幅方向に外向きであるか否かを判定する判定部と、を備え、前記軌跡生成部は、前記判定部によって前記車両の向きが前記目標車線の車線中央を基準として車線幅方向に外向きであると判定された場合、前記車両の向きを前記目標車線の車線中央に沿った向き又は前記目標車線の車線中央を基準として車線幅方向に内向きと仮定して、前記目標走行軌跡を生成する。 【0007】 この車両走行制御装置は、車両の向きが目標車線の車線中央を基準として車線幅方向に外向きである場合、車両の向きを目標車線の車線中央に沿った向き又は目標車線の車線中央を基準として車線幅方向に内向きと仮定して、目標走行軌跡を生成するため、目標走行軌跡が走行車線の外側方向(車線中央から離れる方向)に膨らむように弧を描くことを回避することができる。よって、この走行制御装置は、目標走行軌跡に基づいて車両を走行させる際に、車両が走行車線を逸脱することを回避することができる。 【0008】 一実施形態では、軌跡生成部は、車両が走行している走行車線を目標車線として、目標走行軌跡を生成してもよい。この場合、この走行制御装置は、車両の走行車線の車線中央に車両を位置させる場合に、車両が走行車線から逸脱することを回避することができる。 【0009】 一実施形態では、軌跡生成部は、車両が走行している走行車線に隣接する隣接車線を目標車線とし、目標走行軌跡を生成してもよい。この場合、この走行制御装置は、例えば走行車線から隣接車線への車線変更の際に、車両が走行車線を車線変更先の隣接車線とは反対側へ逸脱することを回避することができる。 【発明の効果】 【0010】 本発明の種々の側面及び実施形態によれば、走行位置から目標横位置までの目標走行軌跡に基づいて車両を走行させる際に、車両が走行車線を逸脱することを回避することができる。」 (ウ)「【0013】 [第1実施形態] 図1は、第1実施形態に係る車両走行制御装置1を備える車両Vの構成を説明するブロック図である。図1に示すように、乗用車などの車両Vには、車両システム100が搭載されている。車両システム100は、車両走行制御装置1を備える。車両走行制御装置1は、目標走行軌跡に基づいて車両Vを走行させる装置である。目標走行軌跡とは、例えば、所定区間の車線において、車両Vの目標となる走行位置を繋いだ線である。車両Vを走行させるとは、自動運転による走行又は運転支援による走行を意味する。後述のとおり、車両走行制御装置1は、例えば、目標走行軌跡に沿って車両Vを自動運転により走行させる装置、又は、運転者の運転操作にシステム介入して目標走行軌跡に沿うように車両Vを走行させる装置である。 【0014】 車両システム100は、外部センサ2、GPS(Global Positioning System)受信部3、内部センサ4、地図データベース5、ナビゲーションシステム6、HMI(Human Machine Interface)7、アクチュエータ8、及び、ECU10を備えている。外部センサ2、GPS受信部3、内部センサ4、地図データベース5、ナビゲーションシステム6、HMI7、アクチュエータ8、及び、ECU10は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、双方向通信可能とされている。 【0015】 外部センサ2は、車両Vの周辺情報である外部状況を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ、レーダー(Radar)、及びライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)のうち少なくとも一つを含む。 【0016】 カメラは、車両Vの外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、例えば、車両Vのフロントガラスの裏側に設けられている。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、例えば両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有している。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれている。カメラは、車両Vの外部状況に関する撮像情報をECU10へ出力する。 【0017】 レーダーは、電波を利用して車両Vの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波である。レーダーは、電波を車両Vの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダーは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報として出力することができる。レーダーは、検出した物体情報をECU10へ出力する。なお、後段においてセンサーフュージョンを行う場合には、反射された電波の受信情報をECU10へ出力してもよい。 【0018】 ライダーは、光を利用して車両Vの外部の物体を検出する。ライダーは、光を車両Vの周囲に送信し、物体で反射された光を受信することで反射点までの距離を計測し、物体を検出する。ライダーは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報として出力することができる。ライダーは、検出した物体情報をECU10へ出力する。なお、後段においてセンサーフュージョンを行う場合には、反射された光の受信情報をECU10へ出力してもよい。なお、カメラ、ライダー及びレーダーは、必ずしも重複して備える必要はない。 【0019】 GPS受信部3は、3個以上のGPS衛星から信号を受信して、車両Vの位置を示す位置情報を取得する。位置情報には、例えば緯度及び経度が含まれる。GPS受信部3は、測定した車両Vの位置情報をECU10へ出力する。なお、GPS受信部3に代えて、車両Vが存在する緯度及び経度が特定できる他の手段を用いてもよい。 【0020】 内部センサ4は、車両Vの走行状態に応じた情報を検出する検出器である。内部センサ4は、車両の向きを検出するセンサを含む。このようなセンサとして、例えばヨーレートセンサが挙げられる。あるいは、車両の向きを検出するセンサとして、タイヤ角を検出するセンサであってもよい。このようなセンサとして、例えばステアリングセンサが挙げられる。なお、内部センサ4は、車速センサ及び加速度センサをさらに含んでもよい。 【0021】 ヨーレートセンサは、車両Vの重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、車両Vのヨーレートを含むヨーレート情報をECU10へ出力する。 【0022】 ステアリングセンサは、例えばステアリングの回転状態を検出する検出器である。回転状態の検出値は、例えば操舵トルク又は舵角である。ステアリングセンサは、例えば、車両Vのステアリングシャフトに対して設けられる。ステアリングセンサは、ステアリングの操舵トルク又は舵角を含む情報をECU10へ出力する。 【0023】 車速センサは、車両Vの速度を検出する検出器である。車速センサとしては、例えば、車両Vの車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフトなどに対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサは、車両Vの速度を含む車速情報(車輪速情報)をECU10へ出力する。 【0024】 加速度センサは、車両Vの加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両Vの前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両Vの横加速度を検出する横加速度センサとを含んでいる。加速度センサは、車両Vの加速度を含む加速度情報をECU10へ出力する。 【0025】 地図データベース5は、地図情報を備えたデータベースである。地図データベース5は、例えば、車両Vに搭載されたHDD(Hard disk drive)内に形成されている。地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報、交差点及び分岐点の位置情報が含まれる。道路形状の情報には、例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率などが含まれる。さらに、車両システム100が建物又は壁などの遮蔽構造物の位置情報、又はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を使用する場合には、地図情報に外部センサ2の出力信号を含ませてもよい。なお、地図データベース5は、車両Vと通信可能な情報処理センターなどの施設のコンピュータに記憶されていてもよい。 【0026】 ナビゲーションシステム6は、車両Vの運転者によって地図上に設定された目的地までの案内を車両Vの運転者に対して行う装置である。ナビゲーションシステム6は、GPS受信部3によって測定された車両Vの位置情報と地図データベース5の地図情報とに基づいて、車両Vの走行するルートを算出する。ルートは、例えば複数車線の区間において車両Vが走行する走行車線を特定したルートでもよい。ナビゲーションシステム6は、例えば、車両Vの位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により目標ルートの報知を運転者に対して行う。ナビゲーションシステム6は、例えば車両Vの目標ルートの情報をECU10へ出力する。また、ナビゲーションシステム6は、ジャイロセンサを備え、車両Vの向きを算出するための情報をECU10へ出力するように構成されていてもよい。なお、ナビゲーションシステム6は、車両Vと通信可能な情報処理センターなどの施設のコンピュータに記憶された情報を用いてもよい。例えば、ナビゲーションシステム6は、施設のコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報を取得してもよい。また、ナビゲーションシステム6により行われる処理の一部が、施設のコンピュータによって行われてもよい。 【0027】 HMI7は、車両Vの乗員(運転者を含む)と車両システム100との間で情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI7は、例えば、乗員に画像情報を表示するためのディスプレイパネル、音声出力のためのスピーカ、及び乗員が入力操作を行うための操作ボタン又はタッチパネルなどを備えている。HMI7は、自動運転開始又は運転支援開始の乗員の要求操作を入力する入力部であるON/OFFスイッチを含む。ON/OFFスイッチは、自動運転終了又は運転支援終了に係る要求操作を入力できる構成であってもよい。ON/OFFスイッチは、自動運転又は運転支援の開始もしくは終了に係る要求操作が乗員によりなされると、自動運転又は運転支援の開始もしくは終了を示す情報をECU10へ出力する。なお、入力部は、スイッチに限られるものではなく、自動運転又は運転支援の開始もしくは終了の乗員の意図を判断可能な情報を入力できるものであれば何でもよい。例えば、入力部は、開始ボタン、終了ボタンなどであってもよいし、乗員が操作可能な画面に表示されたスイッチ又はボタンのオブジェクトであってもよい。HMI7は、無線で接続された携帯情報端末を利用して、乗員に対する情報の出力を行ってもよく、携帯情報端末を利用して乗員による入力操作を受け付けてもよい。 【0028】 アクチュエータ8は、車両Vの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ8は、スロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及びステアリングアクチュエータを少なくとも含む。スロットルアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両Vの駆動力を制御する。なお、車両Vがハイブリッド車又は電気自動車である場合には、スロットルアクチュエータを含まず、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。 【0029】 ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両Vの車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。ステアリングアクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、ステアリングアクチュエータは、車両Vのステアリングトルクを制御する。 【0030】 ECU10は、車両Vを制御する。ECU10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN通信回路などを有する電子制御ユニットである。ECU10は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、上述した車両Vの構成要素と通信可能に接続されている。ECU10は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述するECU10の構成要素の機能を実現する。なお、ECU10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。 【0031】 ECU10は、外部状況認識部11、車両位置認識部12、走行状態認識部13(取得部の一例)、走行計画生成部14(判定部及び軌跡生成部の一例)、及び走行制御部15(走行制御部の一例)を備えている。車両走行制御装置1は、走行状態認識部13、走行計画生成部14、及び走行制御部15を備えて構成されている。車両走行制御装置1は、走行状態認識部13、走行計画生成部14、及び走行制御部15を備えていればよく、外部状況認識部11及び車両位置認識部12を必ずしも備える必要はない。 【0032】 外部状況認識部11は、車両Vの周辺情報に基づいて、車両Vの外部状況を認識する。外部状況認識部11は、例えば、CPUが出力する信号に基づいてCAN通信回路を動作させるとともに、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで実現する。 【0033】 周辺情報とは、車両Vの所定範囲内の環境又は状況を示す情報である。例えば、外部状況認識部11は、車両Vの周辺情報として、外部センサ2の検出結果を取得する。外部センサ2の検出結果には、例えばカメラの撮像情報、レーダーの物体情報、又はライダーの物体情報などが含まれる。あるいは、外部状況認識部11は、車両Vの周辺情報をとして、ナビゲーションシステム6の情報を、通信を介して取得してもよい。 【0034】 車両Vの外部状況とは、車両Vの所定範囲内の環境又は状況である。例えば、車両Vの外部状況は、走行道路の分岐、合流地点、交通規制、車両Vに対する走行車線の車線境界線の位置もしくは車線中央の位置及び道路幅、道路の形状などを含む。道路の形状は、例えば、走行車線の曲率、外部センサ2の見通し推定に有効な路面の勾配変化、うねりなどである。また、車両Vの外部状況は、車両Vの周辺の障害物や他車両などの物体の状況であってもよい。物体の状況は、例えば、固定障害物と移動障害物とを区別する情報、車両Vに対する障害物の位置、車両Vに対する障害物の移動方向、車両Vに対する障害物の相対速度などを含んでもよい。 【0035】 車両位置認識部12は、車両Vの車両位置(地図上における車両Vの位置)を認識する。車両位置認識部12は、例えば、CPUが出力する信号に基づいてCAN通信回路を動作させるとともに、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで実現する。車両位置認識部12は、例えば、GPS受信部3で受信した車両Vの位置情報、及び地図データベース5の地図情報に基づいて、地図上における車両Vの位置を認識する。なお、車両位置認識部12は、ナビゲーションシステム6で用いられる車両位置を、該ナビゲーションシステム6から取得して認識してもよい。車両位置認識部12は、道路などの外部に設置されたセンサで車両位置が測定され得る場合、このセンサから通信によって車両位置を取得してもよい。 【0036】 走行状態認識部13は、内部センサ4の検出結果に基づいて、車両Vの走行状態を認識する。走行状態認識部13は、例えば、CPUが出力する信号に基づいてCAN通信回路を動作させるとともに、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで実現する。内部センサ4の検出結果には、例えばヨーレートセンサのヨーレート情報が含まれる。あるいは、内部センサ4の検出結果には、ステアリングセンサの舵角が含まれてもよい。また、内部センサ4の検出結果には、車速センサの車速情報、加速度センサの加速度情報などが含まれてもよい。 【0037】 車両Vの走行状態を示す情報には、車両Vの向き及び車両Vの走行位置が含まれる。走行状態認識部13は、外部状況認識部11及び車両位置認識部12の認識結果と、内部センサ4の検出結果に基づいて、車両Vの向き及び車両Vの走行位置を認識する。車両Vの向きとは、例えば、車両Vの走行車線に対する車両Vの向きであり、より具体的な一例としては、車両Vの走行車線の延在方向(車両Vの進行すべき方向)に対して車両Vが向いている方向である。例えば、車両Vの向きは、走行車線の車線中央の延在方向を0とするヨー角で表現することができる。ヨー角は、例えば、ヨーレート情報から算出される。あるいは、車両Vの向きは、ステアリングセンサの舵角から推定されてもよい。あるいは、車両Vの向きは、ナビゲーションシステム6から取得されてもよい。あるいは、車両Vの向きは、外部センサ2(カメラ)などから得られた車線境界線の検出結果のみに基づいて、取得されてもよい。また、車両Vの走行位置とは、車両Vの走行時の車両位置であり、目標走行軌跡の始点となる位置である。 【0038】 走行計画生成部14は、目標走行軌跡を生成する。走行計画生成部14は、例えば、CPUが出力する信号に基づいてCAN通信回路を動作させるとともに、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで実現する。目標走行軌跡は、例えば、車両Vが走行車線から逸脱しないように制御する 自動運転又は運転支援に用いられる。 【0039】 自動運転とは、例えば目標走行軌跡を用いて車両Vの走行を制御することである。つまり、自動運転は、例えば、運転者がステアリング操作を行うことなく、運転者の介入が行われない状態で車両システム100の制御のみで車両Vの走行を実現させることである。運転支援とは、例えば目標走行軌跡及びステアリング操作の操作量に基づいてステアリング操作と協調して車両Vを走行させることである。つまり、運転支援は、運転者と車両システム100との両方が車両Vの走行に関係可能な状態であり、システム介入が可能な状態で少なくとも運転者のステアリング操作の操作量に基づいて車両Vの走行を実現することである。 【0040】 走行計画生成部14は、車両制御前に目標走行軌跡を予め生成する。車両制御前とは、制御の実行前のことであり、自動運転中又は運転支援中であってもよい。走行計画生成部14は、例えば、ON/OFFスイッチから自動運転又は運転支援の開始を示す情報を取得したときに、目標走行軌跡を生成してもよい。 【0041】 走行計画生成部14は、例えば、走行状態認識部13により認識された車両Vの向き及び走行位置と、目標横位置とに基づいて、走行位置から目標横位置までの目標走行軌跡を生成する。目標横位置とは、目標車線に設定され、例えば車両制御の目標となる車線幅横方向の位置である。目標車線とは、車両Vを走行させる目標の車線である。車両Vが走行車線から逸脱しないように自動運転又は運転支援を行う場合、目標車線は走行車線(車両Vが走行している車線)となる。目標横位置は、自動運転中又は運転支援中に設定されてもよいし、予め設定されていてもよい。目標横位置の一例としては、車線中央位置、車線中央位置から所定距離オフセットした位置などである。」 (エ)「【0042】 図2は、目標横位置の一例を説明する図である。図2に示す例では、車線境界線L1,L2によって区画された走行車線50を車両Vが走行するシーンを示している。図2に示すように、車両Vは、走行位置P3、向きYで走行車線50を走行する。目標横位置は、ここでは、車線中央位置となるP4である。目標横位置P4は、例えば、車線境界線L1,L2の位置に基づいて演算(検出)される。より具体的な一例としては、目標横位置P4は、車線中央位置であり、車線境界線L1,L2の所定位置P1,P2の中間位置として演算される。目標横位置P4は、走行車線50に沿って車両Vの前方において所定の間隔で複数演算されてもよい。図中では、連続する目標横位置P4を示している。この連続する目標横位置P4を通る方向Zが車線中央に沿った方向である。言い換えれば、連続する目標横位置P4を通る方向Zが、走行車線50の延在方向(目標車線の車線中央位置の延在方向)となる。 【0043】 走行計画生成部14は、例えば、車両Vの向きY、走行位置P3、及び目標横位置P4に基づいて幾何学的な手法により目標走行軌跡を生成する。図3は、目標走行軌跡の例を説明する図である。図3の(A)に示すように、走行計画生成部14は、始点が走行位置P3、終点が車両Vの前方の車線中央位置(目標横位置P4)、走行位置P3における軌跡の延在方向が向きY1となることを拘束条件とし、幾何学的な手法により走行位置P3と車線中央位置(目標横位置P4)とを滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R1を生成する。走行計画生成部14は、例えば複合クロソイド曲線を用いて目標走行軌跡を生成する。あるいは、走行計画生成部14は、走行位置P3及び車線中央位置(目標横位置P4)だけでなく、さらに目標車速及び目標時間を用いて目標走行軌跡を生成してもよい。この場合、走行計画生成部14は、目標車速で目標時間内に車線中央位置(目標横位置P4)へ到達することができる目標走行軌跡を生成する。あるいは、走行計画生成部14は、車両Vが安全、法令順守、走行効率などの基準を満たした走行をするように目標走行軌跡を生成してもよい。さらに、走行計画生成部14は、車両Vの周辺の物体の状況に基づき、物体との接触を回避するように車両Vの目標走行軌跡を生成してもよい。 【0044】 ここで、車両Vの向きが、走行車線50における目標横位置P4を基準として車線幅方向に外向き又は車線幅方向に内向きとなることがある。より具体的には、目標横位置P4が車線中央位置である場合、車両Vの向きが、走行車線50の車線中央を基準として車線幅方向に外向き又は車線幅方向に内向きとなることがある。以下では、目標横位置P4が車線中央位置である場合を例として説明する。 【0045】 最初に、車線幅方向に外向きについて説明する。「車線中央を基準として車線幅方向に外向き」とは、車両Vが、車線中央ではなく車線境界線を向いていることをいう。つまり、この車線境界線は、走行位置が車線中央位置(目標横位置)よりも左側である場合には、走行車線の左側の車線境界線であり、走行位置が車線中央位置(目標横位置)よりも右側である場合には、走行車線の右側の車線境界線である。例えば、図3の(B)に示す例では、車両Vの向きが、走行車線50の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向き(向きY2)となっており、車線境界線L1を向いている。同様に、図3の(C)に示す例では、車両Vの向きが、走行車線50の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向き(向きY3)となっており、車線境界線L2を向いている。なお、車線中央に車両Vが存在する場合であっても、車両Vが車線中央ではなく車線境界線を向いている場合には、車両Vの向きは、車線中央を基準として車線幅方向に外向きとなる。車両Vが車線中央を基準として車線幅方向に外向きのときに、上述の手法で走行位置P3と車両Vの前方の車線中央位置(目標横位置P4)とを滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R2(目標走行軌跡R3)を生成した場合、目標走行軌跡R2(目標走行軌跡R3)が走行車線50の外側方向に膨らんだ軌跡となり、目標走行軌跡R2(目標走行軌跡R3)と車線境界線L1(車線境界線L2)とが交差するおそれがある。 【0046】 次に、車線幅方向に内向きについて説明する。「車線中央を基準として車線幅方向に内向き」とは、車両Vが、車線中央を向いていることをいう。例えば、図3の(D),(E)に示す例では、車両Vの向きが、走行車線50の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向き(向きY4,Y5)となっており、車線中央を向いている。車両Vが車線中央を基準として車線幅方向に内向きのときに、上述の手法で走行位置P3と車両Vの前方の車線中央位置(目標横位置P4)とを滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R4(目標走行軌跡R5)を生成した場合、目標走行軌跡R4(目標走行軌跡R5)と車線境界線L1,L2とは交差しない。なお、車両Vの向きが車線中央に沿った向き(目標横位置P4の延在方向と同一の向き)である場合も、目標走行軌跡は車線境界線L1,L2と交差しない。 【0047】 上述のとおり、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向きのときに、目標走行軌跡R2,R3を採用した場合、車両Vが走行車線50から逸脱するおそれがある。このため、走行計画生成部14は、目標走行軌跡を生成する処理として、走行状態認識部13の認識結果に基づいて、走行車線50の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車両Vの向きが車線幅方向に外向きであるか否かを判定する。そして、走行計画生成部14は、車両Vの向きが走行車線50の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向きであると判定した場合、車両Vの向きが走行車線50の車線中央に沿った向きであると仮定する。あるいは、走行計画生成部14は、車両Vの向きが目標車線の車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向きであると仮定する。なお、仮定するとは、演算に使用する車両Vの向きを変更することをいう。そして、走行計画生成部14は、仮定した車両Vの向きを用いて目標走行軌跡を生成する。 【0048】 図4は、車両の向きを仮定して目標走行軌跡を生成する例を説明する図である。図4の(A)は、図3の(B)に示すシーンと同一であり、車両Vの向きが、走行車線50における車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向き(向きY2)となっており、車線境界線L1を向いている。このため、走行計画生成部14は、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向きであると判定した場合、図4の(B)に示すように、車両Vの向きは車線中央(連続する目標横位置P4)に沿った向きであると仮定する。つまり、走行計画生成部14は、車両Vの向きY2を向きY20へ置換する。あるいは、走行計画生成部14は、図4の(C)に示すように、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向きであると仮定する。つまり、走行計画生成部14は、車両Vの向きY2を向きY21へ置換する。そして、走行計画生成部14は、仮定した車両Vの向きを用いて目標走行軌跡を生成する。これにより、車線逸脱の可能性がある目標走行軌跡R2ではなく、車線逸脱の可能性がない目標走行軌跡R20,R21の何れかが生成される。 【0049】 走行制御部15は、目標走行軌跡を用いて車両Vを走行させる。走行制御部15は、例えば、CPUが出力する信号に基づいてCAN通信回路を動作させるとともに、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで実現する。自動運転の場合、走行制御部15は、走行計画生成部14により生成された目標走行軌跡に基づいて、アクチュエータ8へ制御信号を出力し、車両Vの走行を制御する。一方、運転支援の場合、走行制御部15は、運転者のステアリング入力を車両Vの走行に反映しつつ、走行計画生成部14により生成された目標走行軌跡に基づいてシステム介入を行う。」 (オ)「【0050】 次に、車両走行制御装置1が行う処理について説明する。図5は、本実施形態に係る車両走行制御装置1の車両制御処理の一例を説明するフローチャートである。図5に示す制御処理は、例えばON/OFFスイッチによって自動運転又は運転支援の開始を示す情報が入力されたときに実行される。 【0051】 図5に示すように、車両走行制御装置1は、情報取得処理(S10)として、車両Vの周辺情報を取得する。まず、車両位置認識部12は、GPS受信部3で受信した車両Vの位置情報及び地図データベース5の地図情報に基づいて、車両位置を認識する。外部状況認識部11は、外部センサ2の検出結果又はナビゲーションシステム6の提供情報に基づいて、車両Vの外部状況を認識する。走行状態認識部13は、外部状況認識部11の認識結果及び内部センサ4の検出結果に基づいて、車両Vの走行状態を認識する。つまり、情報取得処理では、車両Vの向き、走行位置、走行車線の車線境界線、目標横位置が少なくとも取得される。 【0052】 次に、走行計画生成部14は、車両向きの判定処理(S12)として、情報取得処理で取得された車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向きであるか否かを判定する。走行計画生成部14は、例えば、図3の(B),(C)に示すように、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線境界線を向いている場合には、車両Vの向きは車線幅方向に外向きであると判定する。車両Vの向きが外向きである場合、車両向きの仮定処理へ処理が移行する。 【0053】 走行計画生成部14は、車両向きの仮定処理(S14)として、車両Vの向きが車線中央に沿った向き(連続する目標横位置P4の延在方向Z)であると仮定する(図4の(B))。あるいは、走行計画生成部14は、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向きであると仮定する(図4の(C))。仮定処理が終了した場合、目標走行軌跡生成処理へ処理が移行する。 【0054】 走行計画生成部14は、目標走行軌跡の生成処理(S16)として、始点が走行位置、終点が車両Vの前方の目標横位置、走行位置における軌跡の延在方向が走行位置の車両向きとなることを拘束条件とし、幾何学的な手法により走行位置と目標横位置とを滑らかに繋ぐ目標走行軌跡を生成する。ここで、走行計画生成部14は、S14の仮定処理で仮定された車両の向きを用いて目標走行軌跡を生成する。これにより、図4の(B),(C)に示す目標走行軌跡R20,R21の何れかが生成される。目標走行軌跡の生成処理が終了した場合、車両制御処理へ処理が移行する。 【0055】 走行制御部15は、車両制御処理(S18)として、目標走行軌跡を用いて車両Vを走行させる。車両制御処理が終了すると、図5に示す制御処理を終了する。 【0056】 一方、S12の判定処理において車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として外向きではない場合、目標走行軌跡生成処理へ処理が移行し、走行計画生成部14は、情報取得処理で取得された車両Vの向きを用いて目標走行軌跡を生成し(S16)、走行制御部15は、目標走行軌跡を用いて車両Vを走行させる(S18)。車両制御処理が終了すると、図5に示す制御処理を終了する。 【0057】 以上で図5に示す車両走行制御装置1の動作を終了する。図5に示すフローチャートを実行することにより、車両走行制御装置1は、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車幅方向に外向きの場合には、車両Vの向きが車線中央に沿った向き(連続する目標横位置P4の延在方向Z)であると仮定し、あるいは、車両Vの向きが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向きであると仮定することで、走行位置P3から車線中央位置(目標横位置P4)までの目標走行軌跡に基づいて車両Vを走行させる際に、車両Vが走行車線50を逸脱することを回避することができる。 【0058】 以上、第1実施形態に係る車両走行制御装置1によれば、車両Vの走行車線50の目標横位置P4に車両Vを位置させる場合に、車両Vが走行車線50から逸脱することを回避することができる。 【0059】 また、第1実施形態に係る車両走行制御装置1によれば、車両Vの向きYが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に外向きである場合、車両Vの向きが車線中央に沿った向き(連続する目標横位置P4の延在方向Z)であると仮定し、又は、車両Vの向きYが車線中央(連続する目標横位置P4)を基準として車線幅方向に内向きであると仮定して、目標走行軌跡を生成するため、目標走行軌跡が走行車線50の外側方向(車線中央から離れる方向)に膨らむように弧を描くことを回避することができる。よって、この走行制御装置は、目標走行軌跡に基づいて車両を走行させる際に、車両が走行車線を逸脱することを回避することができる。」 上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 「車両Vの走行すべき軌道として作成された目標走行軌跡R1を前記車両の走行状況変化に応じて生成する車両走行制御装置であって、 前記車両Vの向きY及び走行位置P3を認識する走行状態認識部13と、 前記車両Vの車速を検知する内部センサ4と、 前記目標走行軌跡R1上の地点に目標横位置P4を設定する走行計画生成部14と、 前記車両Vが自動運転中又は運転支援中に前記走行位置P3が車線中央位置からずれたとき、車両Vの向きYを前記走行位置P3における軌跡の延在方向の向きY1とし、終点の向きを前記車両Vの前方の目標横位置P4における向きとし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の走行位置P3から前記目標横位置P4に滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R1を生成し、前記走行位置P3において前記目標横位置P4までの部分を前記目標走行軌跡R1に置き換えて前記走行位置P3を置換する走行計画生成部14とを備えた車両走行制御装置。」 引用文献3記載事項は、次の事項を備えている。 〔引用文献3記載事項1〕 「前記車両Vの向きY及び走行位置P3を認識する走行状態認識部13」 〔引用文献3記載事項2〕 「車両Vの向きYを前記走行位置P3における軌跡の延在方向の向きY1とし、終点の向きを前記車両Vの前方の目標横位置P4における向きとし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の走行位置P3から前記目標横位置P4に滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R1を生成し、前記走行位置P3において前記目標横位置P4までの部分を前記目標走行軌跡R1に置き換えて前記走行位置P3を置換する走行計画生成部14」 (3)対比、判断 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「自動車M」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件補正発明の「車両」に相当し、以下同様に、「経路」は「軌道」に、「目標経路T1」は「走行軌道」に、「外部環境の変化」は「走行状況変化」に、「変更する」ことは「修正する」ことに、「自動車用表示装置4」は「走行軌道修正装置」に、「取得する」ことは「検知する」ことに、「位置取得部」は「車両位置検知部」に、「走行位置」は「現在位置」に、「運転制御部12」は「逸脱量計算部」及び「軌道修正部」に、「外れ」は「逸脱し」に、「新たな目標経路T2」は「修正軌道」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「外れたことを検知する」ことと、本件補正発明の「逸脱量を計算すること」とは、「逸脱を検知する」という限りにおいて一致する。 したがって、引用発明の「前記目標経路T1からの前記自動車Mの走行位置が目標経路T1から外れたことを検知する運転制御部12」と、本件補正発明の「前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱量を計算する逸脱量計算部」とは、「前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱を検知する部分」という限りにおいて一致する。 よって、両者は、次の点で一致する。 〔一致点〕 「車両の走行すべき軌道として作成された走行軌道を前記車両の走行状況変化に応じて修正する走行軌道修正装置であって、 前記車両の現在位置を検知する車両位置検知部と、 前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱を検知する部分と、 前記車両が走行中に前記走行軌道から逸脱したとき、修正軌道を生成し、前記走行軌道を前記修正軌道に置き換えて前記走行軌道を修正する軌道修正部とを備えた走行軌道修正装置。」 そして、両者は、以下の点で相違又は一応相違する。 〔相違点1〕 本件補正発明は、「直線、円弧およびクロソイド曲線からなる走行軌道」を修正するのに対し、引用発明は、「直線、円弧およびクロソイド曲線からなる走行軌道」を修正するかどうか明らかでない点。 〔相違点2〕 本件補正発明は、「前記走行軌道からの前記車両の現在位置の逸脱量を計算する逸脱量計算部」を備えるのに対し、引用発明は、「前記目標経路T1からの前記車両の走行位置の目標経路から外れたことを検知する運転制御部12」を備える点。 〔相違点3〕 本件補正発明は、「前記車両の車速を検知する車速検知部」を備えるのに対し、引用発明は「前記車両の車速を検知する車速検知部」を備えるか否か不明である点。 〔相違点4〕 本件補正発明は、 「前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角を検知する方向角検知部と、 前記走行軌道上で前記車両の現在位置よりも先の曲線区間上の地点に目標点を設定する目標点設定部と、 前記車両が所定速度以上で走行中に前記走行軌道から前記先の曲線区間の外方向に逸脱し、その逸脱量が閾値を超えたとき、始点の方向角を前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角とし、終点の方向角を前記目標点における方向角とし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の現在位置から前記目標点に滑らかに繋がり、かつ、途中で前記走行軌道と交差することのない修正軌道を生成し、前記走行軌道において前記目標点までの部分を前記修正軌道に置き換えて前記走行軌道を修正する軌道修正部と」を備えるのに対し、引用発明は、「前記車両が走行中に前記目標経路T1から外れたとき、新たな目標経路T2を生成し、前記目標経路T1を前記新たな目標経路T2に置き換えて前記目標経路T1を変更する運転制御部12」を備える点。 上記相違点について検討する。 〔相違点1について〕 引用文献2には、「道路の形状が、直線とクロソイド曲線と円弧からなること。」(引用文献2記載事項)が記載されている。そして、車両は、道路の形状に沿って走行するものであるから、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、走行軌道を「直線、円弧およびクロソイド曲線からなる走行軌道」とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 〔相違点2について〕 引用発明は、「前記目標経路T1からの前記車両の走行位置の目標経路から外れたことを検知する運転制御部12」を備えるものである。ここで、「目標経路から外れたこと」を検知するということは、目標経路から外れた距離に何らかの閾値があり、それを超えたときに「目標経路から外れた」と判断していると考えられる。 してみれば、引用発明に基いて、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 〔相違点3について〕 自動車において「前記車両の車速を検知する車速検知部」を備えることは、周知慣用の技術であり、引用文献1に記載された自動車においても、「前記車両の車速を検知する車速検知部」を当然備えていると考えられる。 してみれば、引用発明に基いて、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 〔相違点4について〕 まず、本件補正発明において、前記走行軌道上で前記車両の現在位置よりも先の「曲線区間」上の地点に目標点を設定する目標点設定部を備えることの技術的意義について、本願明細書の発明の詳細な説明には何ら記載されていない。そうすると、「曲線区間」上の地点に目標点を設定することは、単なる選択的事項であると考えられる。 次に、前記走行軌道から前記先の「曲線区間の外方向」に逸脱し、その逸脱量が閾値を超えたときとすることについても、本願明細書の発明の詳細な説明にはその技術的意義が記載されておらず、単なる選択的事項であると考えられる。 また、引用発明において、車両の走行速度を「所定速度以上」(明細書の段落【0026】の記載によれば、「例えば、5km/h以上」)とすることは、格別なことではなく、当業者が適宜なし得たことである。 ところで、引用発明は、「前記目標経路上で前記車両の現在位置よりも先の区間上の地点に目標位置P3を設定する表示経路生成部6」を備えるものであるが、「先の区間」が直線か、曲線かについては特に限定されておらず、「先の区間」が曲線の場合に適用できない理由もない。 また、引用発明と、引用文献3記載事項とは、車両の走行制御という共通の技術分野において、車両が軌道から外れたときに軌道上に戻すという共通の課題を解決するものであるから、引用発明において、引用文献3記載事項を適用する動機がある。 そして、引用文献3記載事項は、「車両の向きY及び走行位置P3を認識する走行状態認識部13」(引用文献3記載事項1)及び「車両Vの向きを前記走行位置P3における軌跡の延在方向の向きY1とし、終点の向きを前記車両Vの前方の目標横位置P4における向きとし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の走行位置P3から前記目標横位置P4に滑らかに繋ぐ目標走行軌跡R1を生成し、前記走行位置P3において前記目標横位置P4までの部分を前記目標走行軌跡R1に置き換えて前記走行位置P3を置換する走行計画生成部14」(引用文献3記載事項2)を含むものであり、これらは、本件補正発明における「前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角を検知する方向角検知部」及び「始点の方向角を前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角とし、終点の方向角を前記目標点における方向角とし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の現在位置から前記目標点に滑らかに繋が」る「修正軌道を生成し、前記走行軌道において前記目標点までの部分を前記修正軌道に置き換えて前記走行軌道を修正する軌道修正部」に相当するものを含んでいる。 また、引用文献1(特に図4を参照。)及び引用文献3(特に図3(A)を参照。)には、「前記走行軌道と交差することのない修正軌道」が記載されている。 してみれば、相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献3記載事項1及び2を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。 〔効果について〕 本件補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載事項並びに引用文献3記載事項1及び2から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 〔まとめ〕 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項並びに引用文献3記載事項1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人は、審判請求書の「(3)本願発明と引用発明の対比」において、以下のように主張する。 「本願発明と引用発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点がある。 請求項1に係る発明は、「始点の方向角を前記走行軌道上で前記車両の現在位置に相当する点における方向角とし、終点の方向角を前記目標点における方向角とし、一つ以上のクロソイド曲線で前記車両の現在位置から前記目標点に滑らかに繋がる修正軌道を生成」するのに対し、引用発明は、修正軌道がどのようなものであるか不明である点で相違する(以下、「相違点1」という。)。(中略) 請求項1に係る発明は、「前記走行軌道上で前記車両の現在位置よりも先の曲線区間上の地点に目標点を設定する目標点設定部」を備えているのに対し、引用発明は、目標点を車両の現在位置よりも先の曲線区間上の地点に設定するか不明である点で相違する(以下、「相違点2」という。)。引用例1では、目標点は、直線状の目標経路T1上の地点に設定されており、曲線状の目標経路T1上の地点に設定されることの記載はない。 請求項1に係る発明は、「前記車両が所定速度以上で走行中に前記走行軌道から前記先の曲線区間の外方向に逸脱し、その逸脱量が閾値を超えたとき、」修正軌道を生成するのに対し、引用発明は、そのような逸脱を検知して修正軌道を生成するか不明である点で相違する(以下、「相違点3」という。)。引用例1の図4では、車線Rの先が右カーブなのか左カーブなのか不明であり、そのため、自動車Mの逸脱方向が先の曲線区間の外方向であるか不明である。 請求項1に係る発明は、「途中で前記走行軌道と交差することのない修正軌道を生成」するのに対し、引用発明において生成される修正軌道は走行軌道と交差するものでないのかどうか不明である点で相違する(以下、「相違点4」という。)。 (中略) 引用発明に引用例3に記載の技術を適用することで、相違点1はカバーできなくなくもない。しかしながら、引用例3には、例えば図4に例示された走行車線50の先が曲線区間になっていて、その曲線区間上に横目標位置P4を設定することもできることは記載も示唆もなく、また、走行車線50の先が右カーブなのか左カーブなのか不明であるため、車両Vの逸脱方向が先の曲線区間の外方向であるかも不明である。また、引用例1、3には修正軌道が走行軌道と交差しないことは明記されておらず、先の曲線区間およびその曲線区間上に設定される目標点の位置如何によっては走行軌道と交差するような修正軌道が生成される可能性も否定できない。したがって、引用発明に引用例3に記載の技術を適用したとしても、依然として相違点2ないし4が残る。」 しかしながら、請求人の主張する相違点2については、引用文献3の段落【0025】には、「道路形状の情報には、例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率などが含まれる。」と記載され、引用文献3記載事項が、カーブに対応することが示唆されている。また、引用文献3の図3及び図4の道路が直線状に記載されているのは便宜上のものと考えられる。また、図3及び図4において車両Vの向きが走行車線50の車線中央に沿った向きからずれるのは、道路がカーブしていることが一因であるとも考えられる。 また、請求人の主張する相違点3については、上記「相違点4について」で述べたとおり、当業者が適宜なし得たことである。 また、請求人の主張する相違点4については、引用文献3の図3及び図4には、目標走行軌跡が走行車線50の車線中央と交差しないことも示されている。 また、請求人は、審判請求書の「(iii)本願発明に到達するための論理づけ」において、引用発明と引用例3に記載の技術(本審決の「引用文献3記載事項」)との間で課題は共通していない旨主張する。 しかしながら、引用文献1の記載内容には、いくつかの発明が含まれており、そのうち、自動車Mが走行中に前記目標経路T1から外れたとき、新たな目標経路T2を生成し、前記目標経路T1を新たな目標経路T2に置き換えて前記目標経路T1を修正する運転制御部12に関する技術を取り出したのが引用発明であって、引用発明と引用文献3記載事項とは、上記のように、技術分野及び課題が共通しており、引用発明において引用文献3記載事項を適用する動機がある。 請求人は引用文献1の図4を参照して、引用発明に引用文献3に記載の技術(本審決の「引用文献3記載事項」)を適用することには阻害要因があると主張している。 しかしながら、拒絶査定に記載されているように、引用文献1には、「目標経路T2において走行方向の変化が所定の値以上である場合」が、「目標経路T2が複数の線分が連結された折線で構成されている場合にお」けるものであるとの記載はない。引用文献1には、「目標経路T2が変化する角度および角度の変化率などに基づいて変化区間P1を特定することができる」(段落【0028】)ことについて記載されている。そして、引用文献1に記載のものは、「自動車Mの走行方向が大きく変化する自動運転に搭乗者Dが不安になる」ことを抑制する(段落【0032】)ように、自車両Mの走行方向の変化が所定の値以上である変化区間P1を有する目標経路T2を直線状に表示する(段落【0028】-【0031】)ものである。 自車両の走行方向の変化が所定の値以上である変化区間を有する目標経路を直線、円弧、およびクロソイド曲線で構成することで、ただちにそれを見た搭乗者が不安にならなくなるものでないことは、出願時の技術常識から明らかであり、また、引用例1に記載の目標経路T2が直線、円弧、およびクロソイド曲線で構成された場合に、ただちに自動車の走行方向が所定の値以上であるような変化区間が生じないことに必ずなると考えるべき特段の事情は見当たらないことからすれば、「引用例1(引用文献1)に記載の発明に、発明の必須条件を消滅させてしまうような引用例3(引用文献3)に記載の発明を採用しようとする動機付けがないどころか、引用例1(引用文献1)に記載の発明に引用例3(引用文献3)に記載の発明を採用することには阻害要因がある」という主張は採用することができない。 (4)むすび 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和2年12月28日の手続補正書により手続補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2 〔理由〕 1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶理由(令和2年10月22日付け)の概要は以下のとおりである。 (進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-8 ・引用文献等 1-3 <引用文献等一覧> 1.特開2018-171971号公報(本審決における引用文献1) 2.特開2017-193189号公報(本審決における引用文献2) 3.特開2016-210255号公報(本審決における引用文献3) 3 引用文献1ないし3、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2は、前記第2〔理由〕2(2)に記載したとおりである。 4 対比、判断 本願発明は、前記第2〔理由〕2で検討した本件補正発明における「逸脱量」に関する「走行軌道から前記先の曲線区間の外方向に逸脱し、その」という限定、並びに「修正軌道」に関する「かつ、途中で前記走行軌道と交差することのない」という限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2〔理由〕2(3)に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1及び引用文献3記載事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-008203

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)186件(121・B60W、575・B60W)
  • 2019-010013拒絶査定不服審判 / 2020-05-08 / 請求不成立インテリジェントな車両のポジショニングによる衝撃緩和
    共通の審決分類: 121・B60W、575・B60W
  • 2019-004601拒絶査定不服審判 / 2020-01-21 / 請求不成立車両用制御装置
    共通の審決分類: 121・B60W、575・B60W
  • 2019-000565拒絶査定不服審判 / 2020-01-20 / 請求不成立作業車両
    共通の審決分類: 121・B60W、575・B60W
  • 2019-003597拒絶査定不服審判 / 2020-01-20 / 請求不成立車両制御装置および車両制御方法
    共通の審決分類: 121・B60W、575・B60W
  • 2018-012394拒絶査定不服審判 / 2019-09-02 / 請求不成立運転シナリオ構成のシステム及び方法
    共通の審決分類: 121・B60W、575・B60W

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存