特許拒絶査定不服審判
2022-013006
癌または炎症性疾患の治療のためのヘテロ二環式カルボキシ酸
- 審判番号
- 2022-013006
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-541422
- 請求日
- 2022年08月19日
- 審決日
- 2024年06月07日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シェンチェン イオノヴァ ライフ サイエンス カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 【請求人】フォーシャン イオノヴァ バイオセラピューティクス カンパニー インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 井上 千弥子
- 審判官 岩下 直人
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-541422「癌または炎症性疾患の治療のためのヘテロ二環式カルボキシ酸」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日国際公開、WO2019/149286、令和 3年 5月27日国内公表、特表2021-513512〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)2月2日(優先権主張:2018年2月5日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする特許出願であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年 9月 9日付け 拒絶理由通知書
令和4年 1月18日 手続補正書及び意見書の受付
同年 4月20日付け 拒絶査定
同年 8月19日 審判請求書及び手続補正書の受付
同年10月 5日付け 前置報告
令和5年11月 8日付け 拒絶理由通知書
令和6年 4月 8日 手続補正書及び意見書の受付
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年4月8日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
固形腫瘍癌または炎症性疾患の治療において使用するための治療製品であって、以下の構造を有する化合物
【化1】
[図:0001415663000001.jpg]
またはその医薬的に許容される塩を含む、治療製品。」
第3 当審において通知した拒絶の理由
令和5年11月8日付けで当審において通知した拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明(本願発明に対応)についての進歩性に関する理由の要旨は、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、本願優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1~7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2012-500211号公報
2.Oncoimmunology,2017年,Vol.6, No.8,e1338239, pp.1-14(周知技術を示す文献)
3.特表2017-516775号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2018/008711号(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2017/014323号(周知技術を示す文献)
6.国際公開第2014/200075号(周知技術を示す文献)
7.特表2013-538825号公報(周知技術を示す文献)
8.「○新医薬品の臨床評価に関する一般指針について」平成4年6月29日薬新薬第43号各都道府県衛生主管部局長あて厚生省薬務局新医薬品課長通知(https://www.pmda.go.jp/files/000206739.pdf)(周知技術を示す文献)
第4 引用文献について
1 引用文献1について
(1)引用文献1には、次の記載がある。なお、原文に元々なかった下線は、強調のために合議体によって付した。(以下、同様。)
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
式I
【化1】
[図:0001415663000002.jpg]
式I
[式中:
R1およびR2は、水素、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロシクロアルキル、およびC1-6フルオロアルキルからなる群から独立して選択され、または、R1およびR2は、それらが共に結合している炭素原子と一緒になって、Rcで任意に置換された3-6員の炭素環を完成し;もしくは、S、OおよびNRbから選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含有する3~6員環を完成し、ここでRbは、水素、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロシクロアルキル、C1-6フルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C(O)C1-6アルキル、C(O)アリール、S(O)2アルキル、およびS(O)2アリールからなる群から選択され;
YはOまたはSであり;
Xは結合、=CH-、CH2、O、またはSであり;Ar1およびAr2は、C3-6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、またはC3-6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルの縮合類似体(fused analog)であり、ここでAr1およびAr2は、1~3個のRc基で任意に置換されており;
Rcは、ハロおよびR1から独立して選択され、
Raは、-CO2H、-CO2M、-C(O)NHS(O)2Raa、または
【化2】
[図:0001415663000003.jpg]
を表し、
Raaは、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6シクロハロアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択され;Mは、医薬的に許容される塩またはエステルプロドラッグ基であり;
【化3】
[図:0001415663000004.jpg]
は6,6-、5,5-、5,6-または6,5-二環式テンプレート(bicyclic template)である]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
・・・
【請求項29】
式Iの化合物、またはその医薬的に許容される塩を、1つ以上の生理的に許容される担体または賦形剤と混合して含む、医薬組成物。
【請求項30】
EP4受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態に苦しむヒトまたは動物対象を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1記載の化合物の有効量を投与することを含む方法。
・・・
【請求項33】
癌の治療を必要とする哺乳類の癌を治療する方法であって、該哺乳類に、請求項1記載の化合物の治療的有効量を、1つ以上の他の化学療法剤と組み合わせて投与することを含む方法。」
イ 段落【0007】~【0008】
「【0007】
本発明は、プロスタグランジンE2媒介疾患を治療するための新規の化合物および方法、ならびにその医薬組成物に関する。本発明の化合物は、NSAIDおよびオピエートと構造的に異なっており、E型プロスタグランジンの疼痛および炎症効果のアンタゴニストである。特に、本発明は、PGE2受容体のEP4サブタイプのアンタゴニストである新規の化合物に関する。それゆえ該化合物は、ヒトを含む哺乳類において、急性および慢性疼痛、骨関節炎、関節リウマチならびに癌を含む、EP4受容体によって媒介される疾患または状態の治療に有用であると期待される。
【0008】
発明の概略
1つの態様において、本発明は、急性および慢性疼痛、骨関節炎、関節リウマチならびに癌などのEP4受容体媒介性の疾患または状態の治療に、EP4受容体アンタゴニストとして有用な一連の新規アミド誘導体に関する。医薬組成物および使用方法も本発明の範囲内に含まれる。」
ウ 段落【0056】
「【0056】
有用性
本発明の化合物はEP4受容体のアンタゴニストであり、それゆえ、EP4受容体媒介疾患の治療に有用であると期待される。1つの実施態様では、式Iのものを含む本発明に記載されているEP4アンタゴニストのプロドラッグは、インビボの生体内変換によりプロスタグランジンに対する拮抗作用を有し、それゆえ治療、特に、ヒトを含む哺乳類対象における疼痛、神経因性疼痛、内臓痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、慢性疼痛、急性疼痛、発熱またはリウマチ熱と関連する炎症、インフルエンザまたは他のウイルス感染、風邪、腰痛および頸部痛、骨痛、分娩後疼痛、月経困難症、頭痛、片頭痛、歯痛、捻挫および筋挫傷(strains)、筋炎、神経痛、線維筋痛、滑膜炎、関節リウマチを含む関節炎、変性関節疾患(骨関節炎)、痛風および強直性脊椎炎、滑液包炎、放射線および腐食性化学薬品(corrosive chemical)による傷害を含む熱傷、日焼け、外科的および歯科的処置後の疼痛、骨折、免疫および自己免疫疾患;細胞悪性形質転換または転移性腫瘍増殖;糖尿病性網膜症、腫瘍血管形成;月経困難症と関連するプロスタノイド誘導性平滑筋収縮、早期分娩、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息または好酸球関連障害、高グロブリン血症、キャッスルマン病、骨髄腫;アルツハイマー病、睡眠障害、内分泌障害;緑内障;骨量減少;骨粗鬆症、骨形成の促進;パジェット病:消化性潰瘍、胃炎、局所性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎または他の胃腸病変における細胞保護作用;GI出血および化学療法を受けている患者;低プロトロンビン血症、血友病、および他の出血障害から選択される血液凝固障害;腎疾患;血栓症;閉塞性血管疾患;手術前;ならびに抗血液凝固;交感神経依存性疼痛;切断に起因する疼痛、皮膚疾患(例えば湿疹または乾癬など);眼疾患、例えば緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎および眼組織に対する急性傷害(例えば結膜炎など);肺障害(例えば気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、ハト愛好家病、農夫肺、またはCOPDなど);胃腸管障害(例えばアフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、疣状胃炎(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性大腸症候群、炎症性腸疾患、または胃腸逆流疾患(gastrointestinal reflex disease)など);臓器移植;炎症性要素を有する他の状態、例えば血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症筋無力症(myaesthenia gravis)、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性エリテマトーデス、腱炎、滑液包炎、およびシェーグレン症候群;血小板機能異常(例えば閉塞性血管疾患など);利尿作用;インポテンスまたは勃起機能障害;骨代謝異常または再吸収によって特徴付けられる骨疾患、例えば骨粗鬆症;高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、骨溶解症、骨転移を伴うまたは伴わない悪性高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、骨関節炎、骨痛、骨減少症、癌悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に尿路結石症)、固形癌、痛風および強直性脊椎炎、腱炎および滑液包炎;骨吸収、NSAIDおよびCOX-2阻害剤の血行動態副作用、心血管疾患、高血圧症または心筋虚血;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法(varicose therapy);痔核;ならびに動脈圧の著しい低下と関連するショック状態(例えば敗血症ショックなど);神経変性疾患および神経変性、例えば認知症、特に変性認知症(老年性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病、ALS、ならびに運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);ならびに、頭蓋内占拠性病変と関連する認知症;外傷;感染および関連状態(HIV感染を含む);代謝;毒素;無酸素症およびビタミン欠乏症;ならびに、加齢と関連する軽度認知障害、特に加齢による記憶障害;神経保護、および脳卒中、心停止、肺バイパス(pulmonary bypass)、外傷性脳損傷、または脊髄損傷後の神経変性;耳鳴、1型糖尿病の合併症(例えば糖尿病性細小血管症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、または緑内障など)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病およびサルコイドーシス;腎機能障害(例えば腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、または腎炎症候群など)、肝機能障害(肝炎、または肝硬変など)、胃腸障害(下痢など)、アルコール性肝硬変、アミロイドーシス、アテローム性動脈硬化症、心疾患、硬化症、臓器移植反応、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、歯牙欠損、骨折、多発性骨髄腫、様々な浮腫、高血圧症、月経前緊張症、尿路結石、乏尿、高リン酸尿症、掻痒(prutitus) 蕁麻疹(urticaria)、接触皮膚炎、ウルシ皮膚炎、頻尿、学習障害、歯肉炎(gingiritis)、歯周炎(predontitis)、肺傷害、肝傷害、ならびに便秘などの疾患または状態の治療に有用である。」
エ 段落【0078】
「【0078】
製剤
本発明は、上記の治療方法に使用するための医薬組成物も提供する。本発明の医薬組成物は、有効成分として式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩を、EP4受容体に拮抗するのに十分な量にて含み、医薬的に許容される担体および任意に他の治療成分も含有してよい。・・・」
オ 段落【0108】~【0115】
「【0108】
生物学的活性を決定するためのアッセイ
式Iの化合物は、インビトロおよびインビボでのそれらのプロスタノイドアンタゴニストまたはアゴニスト活性、ならびにそれらの選択性を決定するために、下記のアッセイを用いて試験することができる。実証したプロスタグランジン受容体活性は、DP、EP1、EP2、EP3、EP4、FP、IPおよびTPである。
【0109】
実施例A.ヒト胎児腎臓(HEK)293(ebna)細胞株におけるプロスタノイド受容体の安定発現
・・・
【0110】
実施例B.プロスタノイド受容体結合アッセイ
受容体結合アッセイに使用するために、トランスフェクトされたHEK293(ebna)細胞を培養液中に維持し、収集し、プロテアーゼ阻害剤の存在下で細胞を溶菌後、分画遠心法によって膜を調製する。プロスタノイド受容体結合アッセイ(DP1、DP2(CRTH2)、EP1、EP2、EP3-III、EP4、FP、IP、およびTP用)は、1mM EDTA、2.5~30mMの二価のカチオンおよび適切な放射性リガンドを含有する、10mM MES/KOH(pH6.0)(EPs、FPおよびTP)または10mM HEPES/KOH(pH7.4)(DPsおよびIP)中で行う。全てのインキュベーションで1%(v/v)に保つジメチルスルホキシドに合成化合物を加える。膜タンパク質を加えることによって反応を開始する。10μMの対応する非放射性プロスタノイドの存在下で非特異的結合を決定する。室温または30℃で60~90分間インキュベーションを実施し、急速濾過によって終結する。全結合から非特異的結合を減算することによって特異的結合を計算する。各リガンド濃度での残余の特異的結合を計算し、シグモイドの濃度-反応曲線を作成するためにリガンド濃度の関数として表す。化合物の結合親和性は、式Ki=InPt/1+[放射性リガンド]/Kd[式中、Kdは放射性リガンド:受容体相互作用についての平衡解離定数であり、InPtは用量-反応曲線の屈曲点である]から平衡阻害定数(Ki)を計算することによって決定する。
【0111】
EP4受容体結合アッセイは、台湾のMSD Pharma Serviceにて、下記のアッセイ条件下で行った:
【表3】
[図:0001415663000005.jpg]
【表4】
[図:0001415663000006.jpg]
【0112】
実施例C.プロスタノイド受容体アゴニストおよびアンタゴニストアッセイ
受容体リガンドがアゴニストであるかアンタゴニストであるかを決定するために、HEK-293(ebna)-hEP4細胞内での細胞内cAMP蓄積の刺激を測定する細胞全体での二次メッセンジャーアッセイを行う。・・・
【0113】
実施例D.ラット足浮腫アッセイ
方法は、チャンら(Chan et al)(J. Pharmacol. Exp. Ther. 274: 1531-1537, 1995)に記載されているのと同一である。
【0114】
実施例E.ラットにおいてカラギーナンによって誘導される急性炎症性痛覚過敏
方法はボイスら(Boyce et al)(Neuropharmacology 33: 1609-1611, 1994)に記載されているのと同様であり、参照することによって本明細書に援用される。
【0115】
実施例F.ラットにおけるアジュバント誘導性関節炎
雌性ルイスラット(体重~146-170g)を秤量し、耳標をつけ、群に割り当て(関節炎を誘導しなかった陰性対照群、ビヒクル対照群、総1日用量1mg/kgでインドメタシンを投与された陽性対照群、および総1日用量0.10~3.0mg/kgの試験化合物を投与された4つの群)、各群の中で体重が同等になるようにした。6つの群の各10匹のラットについて、0.1mLの軽鉱油(アジュバント)中の0.5mgのマイコバクテリウム・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)を後足に注射し、陰性対照群の10匹のラットにはアジュバントを注射しなかった。体重、反対側の足容積(水銀置換プレチスモグラフィーによって決定する)およびX線写真側面像(ケタミンおよびキシラジン麻酔下で得られる)をアジュバント注射前(-1日)および21日後に決定し、第一足容積をアジュバント注射前(-1日)ならびに4日後および21日後に決定する。X線写真およびアジュバントの注射のために、0.03~0.1mLのケタミン(87mg/kg)およびキシラジン(13mg/kg)の組み合わせを筋肉内注射することによりラットに麻酔をかける。第0日および第21日に、Faxitron(45kVp、30秒)およびKodak X-OMAT TL フィルムを用いてX線写真を両方の後足から作成し、自動プロセッサにて現像する。実験的治療を知らされていない研究者によって、軟組織および硬組織内の変化についてX線写真を評価する。以下のX線写真変化は、重症度に従って数値的に段階付けしたものである:軟組織容積増加(0-4)、関節腔の狭窄または拡張(0-5)、軟骨下糜爛(0-3)、骨膜反応(0-4)、骨溶解(0-4)、亜脱臼(0-3)、および変性関節変化(0-3)。各X線写真変化についての重症度の数値的段階を確立するために特定の判断基準を用いる。1つの足あたりの可能な最大スコアは26であった。総1日用量0.1、0.3、1、および3mg/kg/日の試験化合物、総1日用量1mg/kg/日のインドメタシン、またはビヒクル(0.5%メトセルの滅菌水溶液)の1日2回の経口投与を、アジュバントの注射後に開始し、21日間継続する。化合物は毎週製造し、用いるまで暗中で冷蔵し、投与直前にボルテックスで混合する。」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、EP4受容体アンタゴニストである式Iの化合物を含む医薬組成物が記載されている(上記(1)ア~エ)。
そして、第1表には、式1の代表的化合物として5つの化合物のPGE2結合の%阻害が記載されており、これら5つの化合物のうち、最も阻害率が優れたものが、次の2つの化合物である(上記(1)オ(第1表の上から1番目と2番目の化合物))。
[図:0001415663000007.jpg]
[図:0001415663000008.jpg]
そうすると、引用文献1には、次の発明が記載されているといえる。
「EP4受容体アンタゴニストである下記の化合物を含む、医薬組成物。
[図:0001415663000009.jpg]
又は
[図:0001415663000010.jpg]
」(以下、「引用発明」という。)
2 引用文献2~8について
(1)引用文献2には、次の記載がある。原文は英文なので当審による和訳を示す。
ア 要約
「代替的に活性化された腫瘍関連マクロファージ(M2TAM)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、及び制御性T細胞(Treg)を標的とする免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)の再プログラミングは、新しいがん免疫療法を開発するための有望な戦略である。アラキドン酸経路の代謝産物であり慢性炎症のメディエーターであるプロスタグランジンE2(PGE2)は、その4つの受容体(EP1-EP4)の1つ以上との結合を通じて、TMEにおける強力な免疫抑制剤として浮上した。我々は、経口で生体利用可能なEP4特異的アンタゴニストであるE7046を開発し、E7046がPGE2媒介前腫瘍骨髄細胞の分化と活性化に対して特異的かつ強力な阻害活性を有することを示した。E7046治療は、骨髄性T細胞とCD8+T細胞の両方に依存する方法で、in vivoで増殖を減少させ、さらには確立された腫瘍を拒絶した。さらに、E7046とTregを優先的に殺すIL-2とジフテリア毒素の融合タンパク質であるE7777を同時投与すると、骨髄系とTregの免疫抑制ネットワークが相乗的に破壊され、マウス腫瘍モデルにおいて効果的かつ持続的な抗腫瘍免疫応答が生じた。TMEでは、E7046及びE7777は、CD8+granzymeB+細胞傷害性T細胞(CTL)/生Treg及びそのM1様/M2TAMの比率を著しく増加させ、STAT1/IRF-1及びIFNγ制御遺伝子の実質的な誘導によって示されるように、慢性炎症表現型を急性炎症に変換した。注目すべきことに、E7046は、腫瘍内Tregを減少させることが報告されている抗CTLA-4抗体と組み合わせると、相乗的な抗腫瘍活性も示した。したがって、我々の研究は、前臨床モデルにおけるがん治療における骨髄性免疫抑制とTreg由来の免疫抑制の両方を相乗的に軽減する手段として、EP4遮断とE7046とE7777の新規組合せによる特異的な骨髄性細胞分化修飾活性を明らかにした。」
イ 図1
「
[図:0001415663000011.jpg]
」
(2)引用文献3には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
がんの処置を必要とする対象において前記がんを処置する方法であって、前記対象に、EP4アンタゴニストを処置有効量で、放射線治療および抗体治療からなる群から選択される治療と併用して投与する工程を含む、方法。
・・・
【請求項6】
前記EP4アンタゴニストが式(I):
【化1】
[図:0001415663000012.jpg]
[式中:
R1aとR1bのうち一方が水素であり、他方がメチルであり;またはR1aとR1bとが一緒になってシクロプロピル環を形成し、
R2はメチルまたはフルオロメチルであり、
R3はメチルであり、
R4は、水素、ハロ、メチル、フルオロメチル、メトキシまたはフルオロメトキシであり、
R5は、水素、ハロ、メチル、フルオロメチル、メトキシまたはフルオロメトキシであり、
R6は、水素、ハロ、メチルまたはメトキシであり、
R7は、水素、ハロ、メチルまたはメトキシであり、および
Xは酸素である]
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、
【化2】
[図:0001415663000013.jpg]
からなる群から選択されるかまたはこれらの薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、
【化3】
[図:0001415663000014.jpg]
またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、乳がん、子宮頚がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、頭頚部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん(例えば黒色腫)および尿路がんからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
・・・」
イ 段落【0001】
「【0001】
背景技術
プロスタグランジンE2(PGE2)とプロスタグランジンE受容体4(EP4)との相互作用によるPGE2シグナル伝達をアンタゴニストによって遮断すると、炎症を低減するのに有効であることが示されている(Chen et al.(2010)British J. Pharmacol. 160, 292-310)。PGE2はまた、多くの固形腫瘍によって作り出される免疫抑制環境における重要な構成要素として意味づけられており(Whiteside(2010)Expert Opinion in Biological Therapy. 2010. 10, 1019-1035)、アンタゴニストによるEP4シグナル伝達の抑制は、腫瘍成長(Terada et al.(2010)Cancer Res. 70, 1606-1615)および腫瘍動物モデルにおける腫瘍転移(Yang et al.(2006)Cancer Res. 66, 9665-9672)を低減することが示された。」
ウ 段落【0063】~【0085】
「【0063】
実施例1:ER-886046と放射線または抗体との併用治療
・・・
【0077】
結論
ER-886046と、放射線、抗CTLA4、抗PDL1または抗PD1との併用は、前臨床動物モデルにおいて有意な抗腫瘍活性を有した。併用処置にER-886046を含めると、単一薬剤または単独の方法と比較して、腫瘍成長抑制および腫瘍拒絶さえもが増強した。このため、がん患者を処置するために医療現場で治療的使用を有することが可能になる。
【0078】
実施例2:ER-886046と放射線および代謝拮抗物質化学治療との併用治療
・・・
【0085】
結論
これらのデータは、免疫適格性動物がんモデルにおいて、ER-886046と放射線を伴う代謝拮抗物質化学治療との併用は、有意な抗腫瘍成長活性を有したという証拠を提供するものである。ER-886046と放射線を伴う代謝拮抗物質化学治療との併用処置は、放射線を伴う代謝拮抗物質化学治療のみでの処置と比較して、抗腫瘍活性を有意に増強させた。このため、がんを処置するために医療現場で治療的使用をすることが可能になる。」
(3)引用文献4には、次の記載がある。
ア 段落[0004]~[0007]
「背景技術
[0004] プロスタグランジンE2(PGE2)は、アラキドン酸カスケード中の代謝産物として知られており、細胞保護作用、子宮収縮作用、疼痛閾値の低下作用、消化管の蠕動運動促進作用、覚醒作用、胃酸分泌抑制作用、血圧降下作用、利尿作用等を有していることが知られている。
[0005] 近年の研究の中で、PGE2受容体には、それぞれ役割の異なったサブタイプが存在することがわかってきた。現時点で知られているサブタイプは、大別して4つあり、それぞれEP1、EP2、EP3、EP4と呼ばれている(非特許文献1)。
[0006] これらのサブタイプのうち、EP4受容体は、マクロファージからのMCP-1産生抑制、リンパ球からのTNF-α、IL-2、およびIFN-γ産生抑制、ならびにIL-10産生増強による抗炎症、血管拡張、血管新生、弾性線維の形成抑制、MMP-9発現制御に関与していると考えられている。さらに、EP4受容体は、骨髄(ミエロイド)由来免疫抑制細胞(Myeloid Derived Suppressor Cells)、制御性T細胞およびナチュラルキラー細胞を介したがん免疫制御にも関与していると考えられている。
[0007] これらのことより、EP4受容体に強く結合し、拮抗作用を有する化合物は、EP4受容体の活性化による疾患、例えば、骨疾患、がん、全身性肉芽腫、免疫疾患、アレルギー、アトピー、喘息、歯槽膿漏、歯肉炎、歯周病、アルツハイマー、川崎病、熱傷、多臓器不全、慢性頭痛、疼痛、血管炎、静脈不全、静脈瘤、動脈瘤、大動脈瘤、痔瘻、尿崩症、ストレス、子宮内膜症、子宮腺筋症、新生児動脈管開存症、胆石症等の疾患治療に有用であると考えられる(非特許文献2-7)。」
イ 段落[0024]~[0025]
「発明が解決しようとする課題
[0024] 本発明の課題は、有効ながん治療法を見出し、医薬品として提供することである。
課題を解決するための手段
[0025] 本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究した結果、後述の一般式(I)で示される化合物、その塩、そのN-オキシド体、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグ(以下、本発明に用いられる化合物と略記することがある。)が、EP4受容体拮抗薬として作用すること、および、本発明に用いられる化合物と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせ(以下、本発明の組み合わせと略記することがある。)により、本発明の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
ウ 段落[0026]~[0030]
「[0026] すなわち、本発明は、
〔1〕 一般式(I)
[0027][化5]
[図:0001415663000015.jpg]
[0028](式中、
R1はCOOR8、テトラゾール、SO3H、SO2NH2、SO2NHR8-1、CONHSO2R8-1、SO2NHCOR8-1、またはヒドロキサム酸を表し、
R8は水素原子、C1-4アルキル、またはベンジルを表し、
R8-1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C3-10炭素環、または3-10員複素環を表し、各々の該C3-10炭素環および3-10員複素環は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4アルコキシ、-O(C1-4ハロアルキル)、C1-4アルキルチオ、-S(C1-4ハロアルキル)、ハロゲン、またはニトリル(「-CN」を示す;以下同じ)で置換されていてもよく、
L1は、C1-5アルキレン、C2-5アルケニレン、またはC2-5アルキニレンを表し、
R2は、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、-O(C1-4ハロアルキル)、-S(C1-4ハロアルキル)、-C(O)(C1-4アルキル)、-SO2(C1-4アルキル)、-CONH(C1-4アルキル)、-CON(C1-4アルキル)2、-NHC(O)(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)C(O)(C1-4アルキル)、-NHSO2(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)SO2(C1-4アルキル)、-SO2NH(C1-4アルキル)、-SO2N(C1-4アルキル)2、-NR17R17、ニトロ、ニトリル、水酸基、アルデヒド(ホルミルを示す;以下同じ)、またはカルボキシルを表し、各々の該C1-4アルキルはハロゲンで置換されていてもよく、
該R2における(C1-4アルキル)2とは、独立した2個のC1-4アルキルを表し、それぞれのC1-4アルキルは同一でも異なっていてもよく、
X1はCR6または窒素原子を表し、R6は水素原子またはR2を表し、
X2はCR7または窒素原子を表し、R7は、水素原子、R2、または-L3-R9を表し、L3は、メチレン、酸素原子、または酸化されていてもよい硫黄原子を表し、R9は、ハロゲン、C1-4アルキル、およびC1-4ハロアルキルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよい4-10員複素環を表し、
L2は、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2S-、-SCH2-、-CH2S(O)-、-S(O)CH2-、-CH2SO2-、-SO2CH2-、-CH2NH-、-NHCH2-、-NHCO-、-CONH-、-NHSO2-、または-SO2NH-を表し、
R3はC1-4アルキルまたはハロゲンを表し、
R4は、ハロゲン、C1-4アルキル、またはC1-4ハロアルキルを表し、
X3は、メチレン、酸素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、またはNR10を表し、R10は、C1-4アルキル、-C(O)(C1-4アルキル)、-C(O)O(C1-4アルキル)、または-SO2(C1-4アルキル)を表し、各々の該C1-4アルキルはハロゲンで置換されていてもよく、
ringはベンゼン環または5-6員単環式芳香族複素環を表し、
[0029][化6]
[図:0001415663000016.jpg]
[0030]は単結合または二重結合を表し、
R5は、(1)ハロゲン、(2)C1-4アルキル、(3)カルボキシル、(4)ニトリル、(5)-CONHR11、(6)-C(O)R12、(7)-OR14、(8)-S(O)tR15、(9)-CH2R16、(10)-NR17R17、(11)-NHCOR11、(12)C4-10炭素環、または(13)4-10員複素環を表し、該C4-10炭素環または4-10員複素環は1~3個のR18で置換されていてもよく、該R18が複数である場合、R18はそれぞれ独立して同一でも異なっていてもよく、
R11は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、または4-6員複素環を表し、R11は1~3個のR13で置換されていてもよく、該R13が複数である場合、R13はそれぞれ独立して同一でも異なっていてもよく、
R13は、ハロゲン、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、水酸基、-NR20R21、ベンゼン、または4-6員複素環を表し、
R20およびR21は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキルを表し、
R12は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ベンゼン、または4-6員複素環を表し、該C3-6シクロアルキル、ベンゼン、または4-6員複素環は、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-4アルキル、またはC1-4アルコキシで置換されていてもよく、
R14は、水素原子、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ベンゼン、またはベンジルを表し、該C1-6アルキルは1~3個のR19で置換されていてもよく、該R19が複数である場合、R19はそれぞれ独立して同一でも異なっていてもよく、
R19は、C1-4アルコキシ、-CONH(C1-4アルキル)、-CON(C1-4アルキル)2、またはC1-4アルキルおよびC1-4ハロアルキルからなる群より選択される置換基で置換されていてもよい5-6員単環式芳香族複素環を表し、
該R19における(C1-4アルキル)2とは、独立した2個のC1-4アルキルを表し、それぞれのC1-4アルキルは同一でも異なっていてもよく、
R15は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、ベンゼン、またはベンジルを表し、
R16は水酸基またはC1-4アルコキシを表し、
R17は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル、またはC3-6シクロアルキルを表し、
R18は、ハロゲン、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、オキソ、ニトリル、水酸基、ヒドロキシメチル、1-メチル-1-ヒドロキシエチル、(C1-4アルキル)SO2-、4-6員複素環、(C1-4アルキル)NH-、または(C1-4アルキル)2N-を表し、
該R18における(C1-4アルキル)2とは、独立した2個のC1-4アルキルを表し、それぞれのC1-4アルキルは同一でも異なっていてもよく、
mは1~4の整数を表し、nは0~4の整数を表し、pは0~2の整数を表し、qは0~6の整数を表し、rは0~6の整数を表し、sは0~4の整数を表し、tは0~2の整数を表し、
ただし、p、q、r、およびsがそれぞれ2以上の整数を表す場合、R2、R3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物、その塩、そのN-オキシド体、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと免疫チェックポイント阻害薬とを組み合わせてなる医薬、・・・」
エ 段落[0293]~[0294]
「[0293] 実施例2-2:4-{4-シアノ-2-[({(2’R,4S)-6-[(2-メトキシエチル)カルバモイル]-2,3-ジヒドロスピロ[クロメン-4,1’-シクロプロパン]-2’-イル}カルボニル)アミノ]フェニル}ブタン酸
[0294][化53]
[図:0001415663000017.jpg]
」
オ 段落[0314]~[0315]
「[0314] 実施例2-13:4-[4-シアノ-2-({[(2’R,4S)-6-(イソプロピルカルバモイル)-2,3-ジヒドロスピロ[クロメン-4,1’-シクロプロパン]-2’-イル]カルボニル}アミノ)フェニル]ブタン酸
[0315][化58]
[図:0001415663000018.jpg]
」
カ 段落[0610]~[0628]
「[0610] 薬理実施例:
薬理実施例1:プロスタノイドレセプターサブタイプ発現細胞を用いたEP4拮抗活性測定実験
・・・
[0612] その結果、本発明に用いられる化合物が、強力なEP4受容体拮抗活性を有することが分かった。例えば、いくつかの本発明に用いられる化合物のIC50値は、下記の表1に示したとおりであった。一方、特許文献2記載の実施例8-128のEP4受容体拮抗活性は、非常に弱く2800nMであった。
[0613]
[図:0001415663000019.jpg]
[0614] 一般式(I)に代表されるEP4受容体拮抗薬として、4-[4-シアノ-2-({[(2’R,4S)-6-(イソプロピルカルバモイル)-2,3-ジヒドロスピロ[クロメン-4,1’-シクロプロパン]-2’-イル]カルボニル}アミノ)フェニル]ブタン酸(実施例2-13化合物)を使用して以下の試験を行った。
[0615] 薬理実施例2-1:マウス大腸がん細胞株MC38の同種移植モデルにおける実施例2-13化合物及び抗マウスPD-1抗体との併用効果
・・・
[0618] 以上の結果より、実施例2-13化合物は単独で腫瘍増殖を抑制し、抗マウスPD-1抗体と併用することより腫瘍増殖を更に強く抑制した。
[0619] 薬理実施例2-2:マウス大腸がん細胞株MC38の同種移植モデルにおける実施例2-2化合物及び抗マウスPD-1抗体との併用効果
・・・本結果より、実施例2-2化合物は単独で腫瘍増殖を抑制し、抗マウスPD-1抗体と併用することより腫瘍増殖を更に強く抑制した。
[0621] 薬理実施例3:マウス大腸がん細胞株MC38の同種移植モデルにおける実施例2-13化合物及び抗マウスCTLA-4抗体との併用効果
・・・本結果より、実施例2-13化合物は単独で腫瘍増殖を抑制し、抗マウスCTLA-4抗体と併用することにより、腫瘍増殖を更に強く抑制した。
[0623] 薬理実施例4:マウス線維肉腫細胞株Sa1Nの同種移植モデルにおける実施例2-13化合物及び抗マウスPD-1抗体との併用効果
・・・その結果、実施例2-13化合物は単独で腫瘍増殖を抑制し、抗マウスPD-1抗体と併用することにより腫瘍増殖を更に強く抑制した。
[0625] 薬理実施例5:マウス大腸がん細胞株CT26の同種移植モデルにおける実施例2-13化合物及び抗マウスPD-1抗体との併用効果
・・・
[0627] その結果、実施例2-13化合物は単独で腫瘍増殖を抑制し、抗マウスPD-1抗体と併用することにより腫瘍増殖を更に強く抑制した。
産業上の利用可能性
[0628] 本発明の組み合わせは、強い抗腫瘍効果を発揮するため、がん治療に有用である。」
(4)引用文献5には、次の記載がある。原文は英文なので当審による和訳を示す。
ア 特許請求の範囲
「1. 式(I):
【化1】
[図:0001415663000020.jpg]
[式中、
G1は、炭素原子又は窒素原子を示し、
G2は、炭素原子又は窒素原子を示し、
環Aは、さらに置換されていてもよい6員の含窒素複素環を示し、
G3は、酸素原子、置換されていてもよいメチレン、NR1、硫黄原子、S(O)又はS(O)2を示し、
R1は、水素原子又は置換基を示し、
Xは、置換されていてもよいエチレンを示し、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示すか、あるいはR2及びR3は、結合して、それぞれ置換されていてもよい、シクロアルカン又は複素環を形成し、
R4は、水素原子又は置換基を示し、
環Bは、さらに置換されていてもよい環を示し、
環Cは、さらに置換されていてもよい環を示し、
Wは、結合、又は主鎖の原子数が1ないし4個であるスペーサーを示す。]
で表される化合物、またはその塩。
・・・
3. 4-[(1S)-1-[[4-[(3-クロロフェニル)メチル]-2,3-ジヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-5-イル]アミノ]エチル]安息香酸又はその塩。
4. 4-[1-[[4-[(3,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2,3-ジヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-5-イル]アミノ]シクロプロピル]安息香酸又はその塩。
5. 4-[(1S)-1-[[4-[(4-メトキシフェニル)メチル]-2,3-ジヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-5-イル]アミノ]エチル]安息香酸又はその塩。
6. 請求項1に記載の化合物またはその塩を含む医薬。
7. EP4受容体アンタゴニストである、請求項6に記載の医薬。
8. EP4受容体関連疾患の予防または治療剤である、請求項6に記載の医薬。
9. EP4受容体関連疾患が、関節リウマチ、大動脈瘤、子宮内膜症、強直性脊椎炎および炎症性乳癌から選ばれる、請求項8に記載の医薬。
・・・」
イ 段落[0001]~[0003]
「[0001]
本発明は、EP4受容体拮抗作用を有し、EP4受容体関連疾患(例、関節リウマチ、大動脈瘤(例、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤等)、子宮内膜症、強直性脊椎炎、炎症性乳癌等)等の予防または治療剤として有用であり得る、新規な複素環化合物に関する。
[0002]
(発明の背景)
プロスタグランジンE2(PGE2)は、動物種全体に渡って最も広範に分布するプロスタノイドの1つで、シクロオキシゲナーゼ(COX)のアラキドン酸に対する作用により生体内に広範囲に産生する。PGE2は、熱、疼痛、炎症等の多くの生理学的及び病態生理学的応答に関与し(非特許文献1)、4つの受容体サブタイプEP1-4、即ち、全てのGタンパク質共役受容体を通して生物学的機能を引き起こす。
[0003]
最新の生物学により、免疫系におけるEP4受容体の重要な役割が明らかにされた(非特許文献2及び3)。例えば、EP4受容体活性化が、樹状細胞を刺激し、CD40及びToll-様受容体シグナル伝達と共力して、IL-23産生を促進する。次いで、PGE2が、IL-23と共力してTh17細胞の増殖を高める。EP4受容体活性化が、IL-12と共力して、ナイーブT細胞からのTh1の分化を促進する。PGE2が、マクロファージのEP4受容体を介して、LPSと共力して、IL-6及びIL-1βの発現を誘導する。Th1、Th17及びマクロファージ細胞は、自己免疫/炎症性疾患の進展にカギとなる役割を果たす。このように、選択的なEP4受容体拮抗薬は、IL-23&IL-6産生及びTh1&Th17機能抑制を阻害し(非特許文献4及び5)、炎症性疼痛を低減し、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患及び他の自己免疫/炎症性疾患のための魅力的な治療アプローチを提供することが期待される。」
ウ 段落[0323]~[0325]
「[0323]
実施例B2: 4-[(1S)-1-[[4-[(3-クロロフェニル)メチル]-2,3-ジヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-5-イル]アミノ]エチル]安息香酸
[0324]
[図:0001415663000021.jpg]
[0325]
実施例B1と同様の方法で、実施例A2(0.8 g, 1.82 mmol)で得られた化合物及び水酸化カリウム(0.3 g, 5.48 mmol)を用いて、標題化合物をオフホワイト固体(0.68 g, 88 %)として得た。・・・」
エ 段落[0329]~[0331]
「[0329]
実施例B4: 4-[1-[[4-[(3,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2,3-ジヒドロピリド[4,3-b][1,4]オキサジン-5-イル]アミノ]シクロプロピル]安息香酸
[0330]
[図:0001415663000022.jpg]
[0331]
実施例B1と同様の方法で、実施例A4で得られた化合物(6.0 g, 13 mmol)及び水酸化カリウム(2.2 g, 40 mmol)を用いて、標題化合物をオフホワイト固体(5.2 g, 82 %)として得た。・・・」
オ 段落[0377]~[0381]
「[0377]
実験例1
・・・
[0380]
表9: 300 nMでのhEP4放射性リガンド結合アッセイ及び1μMでの細胞ベースアッセイ (cAMP) における化合物の効力
[0381]
【表9-1】
[図:0001415663000023.jpg]
・・・」
カ 段落[0382]
「[0382]
実験例2
雌性Lewisラットのアジュバント誘発関節炎 (AIA) モデルにおける関節炎の発症抑制
・・・
実施例B2で処置したラットは、研究期間の終了時において、ベヒクル処置と比較して、0.1、 0.3、 1、3、10及び30mg/kg BIDの用量で、それぞれ23、45、46、67、68及び71%の関節炎スコアの減少を示した。ED50は0.76 mg/kg、経口、BIDであった。
実施例B4で処置したラットは、研究期間の終了時において、ベヒクル処置と比較して、0.1、0.3、1、3、10及び30mg/kg BIDの用量で、それぞれ3、4、27、39、51及び55%の関節炎スコアの減少を示した。ED50は8.8mg/kg、経口、BIDであった。」
(5)引用文献6には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲
「[請求項1] 一般式(I):
[化1]
[図:0001415663000024.jpg]
[式中、環Aは、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、
環Bは、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
mは0~2のいずれかの整数であり、
nは1~3のいずれかの整数であり、
R1は、水素原子、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ハロゲン原子またはC1~C4ハロアルキル基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、もしくはC1~C4アルキル基であるか、あるいはR2とR3が隣接する炭素原子と一体となってC3~C6の炭素環を形成していてもよく、
R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子もしくはC1~C4アルキル基であるか、あるいはR4とR5が隣接する炭素原子と一体となってC3~C6の炭素環を形成していてもよく、R6およびR7は、それぞれ独立して水素原子、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、C1~C4ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子、C1~C4ハロアルキル基またはC1~C4ハロアルコキシ基であり、
Xは、-OR8、-NR9R10またはハロゲン原子であり、
R8は、水素原子、C1~C4アルキル基またはC1~C4ハロアルキル基であり、
R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子もしくはC1~C4アルキル基であるか、あるいはR9とR10が隣接する窒素原子と一体となって含窒素ヘテロ環を形成していてもよく、Yは、単結合、酸素原子または硫黄原子であり、
Eは、-CO2H、-CO2Pまたはカルボキシル基の生物学的等価体であり、
-CO2Pは、薬理学的に許容されるエステルプロドラッグである。]
で表される4-アルキニルイミダゾール誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩。
・・・
[請求項10] 前記一般式(I)で表される化合物が、
[化2]
[図:0001415663000025.jpg]
のいずれかである請求項1に記載の4-アルキニルイミダゾール誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩。
[請求項11] 前記一般式(I)で表される化合物が、
[化3]
[図:0001415663000026.jpg]
である請求項1に記載の4-アルキニルイミダゾール誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩。
[請求項12] 請求項1~11のいずれかに記載の4-アルキニルイミダゾール誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
[請求項13] 請求項1~11のいずれかに記載の4-アルキニルイミダゾール誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩を含有するEP4受容体拮抗剤。
[請求項14] EP4受容体を介したPGE2の作用に関連した疾患の処置に用いられる請求項12に記載の医薬。
[請求項15] 前記疾患が、炎症性疾患または炎症性疼痛である請求項14に記載の医薬。
[請求項16] 前記疾患が、関節炎疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱炎および腱鞘炎からなる群より選択される疾患の1つ以上である請求項14または15に記載の医薬。
・・・」
イ 段落[0002]~[0005]
「[0002] プロスタグランジン類(PGs)は、プロスタン酸骨格を有する一連の生理活性物質である。この中の1つであるプロスタグランジンE2(PGE2)は、アラキドン酸からアラキドン酸カスケードと呼ばれる4段階の合成反応によって生成され、その作用として、例えば発痛作用、炎症反応、細胞保護作用、子宮収縮、消化管の蠕動運動促進、覚醒作用、胃酸分泌抑制作用、血圧降下作用、血管新生作用、利尿作用等が知られている。従来、このようなPGsに関連する疾患の治療薬としては、アラキドン酸カスケード中の1つの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジンの産生を抑制する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が幅広く用いられているが、アラキドン酸カスケードの上流を阻害することに起因し、例えば胃腸障害等の種々の副作用も併発することが問題となっている。上記副作用の点で、PGE2がPGE2受容体へ結合することを阻害する薬が望ましい。
[0003] PGE2の受容体には、EP1、EP2、EP3及びEP4の4種類のサブタイプが存在し、これらは種々の組織に広く分布している。
[0004] これらのサブタイプのうち、EP4受容体を介したPGE2の作用は、炎症反応(免疫炎症反応を含む)、平滑筋の弛緩、発痛、リンパ球分化、メサンギウム細胞の肥大または増殖、胃腸粘液の分泌などに関与している。そこで、EP4受容体拮抗薬は、EP4受容体を介したPGE2の作用に関連した疾患(例えば、炎症性の疾患や種々の疼痛を伴う疾患等)の消炎及び/又は鎮痛薬として有望であると考えられている。さらに、近年、樹状細胞やT細胞の表面のEP4受容体を介したPGE2の作用によって、Th1細胞やTh17細胞の活性化がおこることが報告されており、活性化されたTh1細胞やTh17細胞は、組織破壊を起こし炎症を惹起して、多発性硬化症などの様々な免疫性疾患を引き起こすことから、EP4受容体拮抗薬は、このような免疫性疾患の治療薬としても注目されている(非特許文献1および2)。この点に関して、互いに骨格の異なる複数のEP4受容体拮抗剤が多発性硬化症に代表される免疫性疾患の動物モデルであるEAE(Experimental autoimmune encephalomyelitis; 実験的自己免疫性脳脊髄炎)モデルにおいて実際に有効であることが確認されている(非特許文献2および3)。
[0005] このように、EP4受容体を介したPGE2の作用に拮抗する化合物は、急性及び/又は慢性炎症、更には免疫炎症なども含む種々の炎症の疾患に対する処置薬として有望であり、これまでにEP4受容体拮抗薬について種々な研究がなされている。」
ウ 段落[0199]~[0217]
「[0199] 試験例1
レポーターアッセイ法によるラットEP4受容体拮抗作用評価試験
・・・
[0203]
[図:0001415663000027.jpg]
(値は、3例の幾何平均値である)
[0204] 試験例2
ラットにおけるカラゲニン誘発足浮腫に対する抗炎症効果評価試験
・・・
[0205] 本発明の化合物の結果を表3に示す。本発明の4-アルキニルイミダゾール誘導体は、その足浮腫抑制率から抗炎症効果を有することが確認された。
[0206]
[図:0001415663000028.jpg]
(値は、5~8例の平均値である)
[0207] 試験例3
ラットにおけるカラゲニン誘発痛覚過敏に対する鎮痛効果評価試験
・・・
[0208] その結果を表4に示す。本発明の4-アルキニルイミダゾール誘導体は、その有効率から鎮痛効果を有することが確認された。
[0209]
[図:0001415663000029.jpg]
(値は、5~7例の平均値である)
[0210] 試験例4
ラットにおけるアジュバント誘発関節炎に対する抗炎症及び鎮痛効果評価試験
・・・
[0212] 抗炎症効果の結果を表5に、鎮痛効果の結果を表6にそれぞれ示す。本発明の4-アルキニルイミダゾール誘導体は、その足浮腫抑制率(%)から抗炎症効果を有すること、その有効率から鎮痛効果を有することが、それぞれ確認された。
[0213]
[図:0001415663000030.jpg]
(値は、8~10例の平均値である)
[0214]
[図:0001415663000031.jpg]
(値は、8~10例の平均値である)
[0215] 試験例5
ラットにおけるモノヨード酢酸誘発関節痛の鎮痛効果評価試験
・・・その結果、化合物10、化合物22、化合物42を投与した群において、左右後肢荷重比を指標に右膝関節痛の抑制が確認された。
[0216] よって、本試験によっても、本発明の4-アルキニルイミダゾール誘導体は、良好な鎮痛効果を有していることが確認された。
産業上の利用可能性
[0217] 本発明の4-アルキニルイミダゾール誘導体(I)は、優れたEP4受容体拮抗作用を有し、EP4受容体が関連する疾患の処置用医薬として有用である。例えば、炎症性の疾患や種々の疼痛を伴う疾患の消炎及び/又は鎮痛薬として有効である。また、Th1細胞及び/又はTh17細胞が活性化され、組織破壊が生じ炎症が惹起されることによっておこる免疫性疾患の処置にも有用である。」
(6)引用文献7には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
[図:0001415663000032.jpg]
[式中、
R1aとR1bの一方は水素であり、他方はメチルであり、またはR1aとR1bは、一緒になってシクロプロピル環を形成しており、
R2は、メチルまたはフルオロメチルであり、
R3は、メチルであり、
R4は、水素、ハロ、フルオロメチル、メトキシ、またはフルオロメトキシであり、
R5は、水素、ハロ、フルオロメチル、メトキシ、またはフルオロメトキシであり、
R6は、水素、ハロ、メチル、またはメトキシであり、
R7は、水素、ハロ、メチル、またはメトキシであり、
Xは、酸素である]
または製薬学的に許容されるその塩。」
イ 段落【0005】
「【0005】
・・・こうした結果は、PGE2/EP4シグナル伝達の抑制が、リウマチ様関節炎や多発性硬化症などの炎症性自己免疫疾患の疾患修飾において治療的価値を有する可能性があることを示唆している。」
ウ 段落【0169】~【0172】
「【0169】
[実施例52~111]
<in vitro生物活性>
・・・
【0172】
本発明の典型的な化合物を、上述の放射リガンドEP4受容体結合アッセイにおいて、上述の方法に従って検定した。以下の表3は、上述の放射リガンドEP4受容体結合アッセイによって求めたとき、Ki値を有する本発明の典型的な化合物を示すものである。
【表3A】
[図:0001415663000033.jpg]
【表3B】
[図:0001415663000034.jpg]
エ 段落【0173】~【0174】
「【0173】
[実施例112~113]
<in vivo生物活性>
実施例112: CIAモデルにおける関節炎発現の抑制
CFAに乳化させたウシII型コラーゲン(bCII)150μgを含有する0.1mLの乳濁液を尾の付け根に注射することにより、雄のDBA/1マウスを免疫化した。1回目の免疫化から3週間後、すべてのマウスを、フロイント不完全アジュバントに乳化させたウシII型コラーゲンで追加免疫した。疾患発症前(予防的評価)または疾患誘発後(治療的評価)の一次免疫化後20日目から、ER-886046を10、30または100mg/kgの用量で毎日経口投与した。各マウスの足における関節炎症状の重症度を、Williams RO(Collagen-induced arthritis as a model for rheumatoid arthritis、Methods Mol Med 2004、98:207~216)に従って、二重盲検式で1日おきに段階評価した。結果を図1に示す。
【0174】
実施例113: グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(G6PI)モデルにおける関節炎発現の抑制
CFA中に300μgの組換え型ヒトGPI-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質(hGPI)を含有する乳濁液0.15mLを尾の付け根に注射することにより、雄のDBA/1マウスを免疫化した。疾患発症前(予防的評価)または疾患誘発後(治療的評価)の一次免疫化後6日目から、ER-886046を100mg/kgの用量で毎日経口投与した。各治療群は、6~8匹のマウスからなるものとした。次のような関節炎スコア記録システム(Iwanami K、Matsumoto I、Tanaka-Watanabe Y、Mihira M、Ohsugi Y、Mamura Mら、Crucial role of IL-6/IL-17 axis in the induction of arthritis by glucose-6-phosphate isomerase、Arthritis Rheum 2008、58:754~763)によって、関節炎動物を1日おきに臨床評価した。0=炎症の形跡なし、1=微妙な炎症または局所的な浮腫、2=容易に確認されるが、足の背側または腹側の表面に局在化した腫脹、およびスコア3=足の全側面における腫脹。結果を図2に示す。
オ 図1~2
「
[図:0001415663000035.jpg]
[図:0001415663000036.jpg]
」
(7)引用文献2~7の記載から理解できる技術常識
引用文献2~7の記載によれば、本願優先日当時、「EP4受容体アンタゴニスト」は、アラキドン酸カスケードの代謝産物として知られるプロスタグランジンE2(PGE2)と、それに対応する受容体の一つであるEP4との相互作用によるシグナル伝達を遮断することができるものであって、(i)固形腫瘍癌の増殖抑制に有用であり、他の治療方法(放射線、代謝拮抗物質化学治療、抗CTLA4抗体、抗PDL1抗体、抗PD1抗体など)と併用することにより、固形腫瘍癌の増殖抑制効果が増強されること(上記(1)~(3))、(ii)関節炎等の炎症性疾患の治療に有用であること(上記(4)~(6))が、インビボでも治療効果が確認され、技術常識となっていた。
(8)引用文献8には、次の記載がある。
ア 「第五章 臨床試験の進め方」の「第二 第I相試験」の「2 実施要領」の「3) 用法・用量」
「3) 用法・用量
非臨床試験での全成績を詳細に検討、整理記録し、同効薬、類似構造薬に関する従来の知識、経験をも加味し、ヒトに対して十分に安全と見込まれる用量を推定して、初回投与量とする。次に段階的に用量を増し、推定臨床単回投与量を上回るまで単回投与し、用量増加に関連した薬理作用、薬物動態、副作用を調べ、可能ならば有効性の初期徴候を集める。・・・」
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比
(1)引用発明の「医薬組成物」は、治療に用いられる製品であることは自明であるので、本願発明の「治療製品」に相当する。
(2)引用発明の「下記の化合物」である
「
[図:0001415663000037.jpg]
」
及び
「
[図:0001415663000038.jpg]
」
は、それぞれ本願発明の「INV-1121」及び「INV-1120」またはその医薬的に許容される塩に相当するので、引用発明の「下記の化合物」である
「
[図:0001415663000039.jpg]
又は
[図:0001415663000040.jpg]
」「を含む」は、本願発明の「以下の構造を有する化合物
【化1】
[図:0001415663000041.jpg]
またはその医薬的に許容される塩を含む」に相当する。
(3)そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「治療製品であって、以下の構造を有する化合物
【化1】
[図:0001415663000042.jpg]
またはその医薬的に許容される塩を含む、治療製品。」
<相違点>
本願発明は、「固形腫瘍癌または炎症性疾患の治療において使用するための」ものであるのに対し、引用発明は、「医薬組成物」の具体的な対象疾患の特定がない点。
2 判断
(1)上記相違点について検討する。
引用文献1には、EP4受容体アンタゴニストである式Iの化合物が、EP4受容体によって媒介される疾患である固形癌や骨関節炎、関節リウマチのような炎症性疾患の治療に有用であると記載されている(上記第4 1(1)ア~ウ)。加えて、式Iの化合物は、「下記のアッセイを用いて試験することができる」として、実施例A~Fのアッセイが記載され(上記第4 1(1)オ)、実施例Bでは、式Iの代表的化合物として記載された5つの化合物のうちINV-1121とINV-1120に相当する化合物(第1表の1番目と2番目の化合物。以下、「本願発明の化合物」という。)が、最も高いPGE2結合の阻害率であったという記載に続けて、実施例E、Fとして、炎症性疾患である急性炎症性痛覚過敏や関節炎のアッセイ方法が記載されている(上記第4 1(1)オ)。
以上の引用文献1の記載に接した当業者であれば、実施例BでPGE2結合の阻害率が最も高かった本願発明の化合物について、実施例E、Fの炎症性疾患のアッセイを行うこと、また、炎症性疾患と同様にEP4受容体によって媒介される疾患である固形腫瘍癌のアッセイを行うことが動機付けられるといえる。
したがって、EP4受容体アンタゴニストを含む医薬組成物である引用発明において、「固形腫瘍癌または炎症性疾患の治療において使用するための」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)次に、本願発明の効果について検討する。
ア 本願明細書には、本願発明は、様々な免疫不全動物癌モデルにおいて有意な抗腫瘍増殖活性を有し、モノクローナル抗体の併用処置で、抗体単独での治療に比べて抗腫瘍活性が有意に向上したと記載されている(【0122】)。
具体的には、実施例1のマウスを用いたインビボ試験において、INV-1121が大腸癌CT26の腫瘍増殖を抑制したこと、その際に、動物の体重及び動物全体の行動から判断して総体的な毒性を示さなかったことが記載され(【0099】~【0106】)、実施例2~4のマウスを用いたインビボ試験において、INV-1120が皮下紫斑結腸腺癌(MC38)やB16F10メラノーマ、LLC(ルイス肺癌)の腫瘍増殖を抗体単独のときよりも有意に抑制したことが記載されている(【0106】~【0121】)。
また、実施例5及び6では、INV-1120が、関節炎マウスの足の温度を低下させ、腫れ(体積及び厚みともに)を減少させる効果があることが記載されている(【0122】~【0134】)。
イ しかし、上記第4 2(7)のとおり、「EP4受容体アンタゴニスト」は、本願優先日当時、アラキドン酸カスケードの代謝産物として知られるプロスタグランジンE2(PGE2)と、それに対応する受容体の一つであるEP4との相互作用によるシグナル伝達を遮断することができるものであって、(i)固形腫瘍癌の増殖抑制に有用であり、他の治療方法(放射線、代謝拮抗物質化学治療、抗CTLA4抗体、抗PDL1抗体、抗PD1抗体など)と併用することにより、固形腫瘍癌の増殖抑制効果が増強されること、(ii)関節炎等の炎症性疾患の治療に有用であることが、インビボでも治療効果が確認され、技術常識となっていたから、EP4受容体アンタゴニストを含む引用発明の医薬組成物が、インビボで固形腫瘍癌や関節炎の治療に有用であることは当業者が予測し得ることである。
そうすると、本願明細書にINV-1120及びINV-1121の固形腫瘍癌や炎症性疾患に対する治療効果が記載されているとしても、本願発明が予測し得ない効果を奏するということはできない。
さらに、実施例1には、INV-1121が毒性を示さなかったことについても言及されているが、本願優先日当時、最小の副作用の下で最大の薬効・薬理効果が得られるような用法・用量の検討を行うことが技術常識となっており(要すれば、上記第4 2(8)の引用文献8参照)、INV-1121について、所定の投与量において治療効果を奏しつつも毒性がないことを確認することは、通常行う用量の検討にすぎず、EP4受容体アンタゴニストについて、薬効が発現する濃度では、体重減少などの毒性を発現するとの認識が当業者にあったともいえないから、INV-1121が毒性を示さなかったことにより、本願発明が予測し得ない効果を奏するということはできない。
したがって、本願発明が、引用文献1の記載からは予測し得ないような優れた効果を奏するものであるということはできない。
3 小括
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 請求人の主張について
1 請求人の主張
令和6年4月8日受付の意見書において、請求人は、概略以下の点を挙げて、本願発明は、引用文献1から当業者が容易に想到し得る発明ではないと主張している。
(1)引用文献1の表1(EP4受容体結合アッセイ)によれば、化合物INV-1120及びINV-1121が、PGE2結合の最も効果的な阻害剤であるとしても、医薬品開発においては、結合親和性に加えて、結合特異性、毒性、安定性、溶解性、バイオアベイラビリティ、吸湿性など、他の多くの重要な要素を考慮する必要があり、最終的には特定の種類の疾患を治療するための最良の候補化合物ではない可能性がある。
(2)引用文献1の表1(EP4受容体結合アッセイ)によれば、化合物INV-1120及びINV-1121が、PGE2結合の最も効果的な阻害剤であるとしても、以下の表に示すとおり、化合物INV-6188が化合物INV-1120よりも高い結合親和性を示しており、化合物INV-8893は、化合物INV-1120に対して少なくとも同等の結合能力を示しているから、化合物INV-1120及びINV-1121の治療効果を確認することは容易ではない。
[図:0001415663000043.jpg]
(3)引用文献1には、疾患が名前で列挙されているだけで、式Iの化合物がそのような非常に包括的な疾患リストの治療に実際にどのように効果があるのか、どのように信頼できる効果があるのかについての裏付けとなるデータ、試験、又は説明を提供しておらず、この包括的なリストのうち、関節炎と腫瘍は2つの例にすぎず、データも理由も示されていないから、関節炎と腫瘍の治療に使用することは容易ではない。
(4)引用文献1に記載された式Iの化合物のうちのいずれか特定の化合物と、引用文献1に記載されている広範なリストに含まれる多数の疾患のいずれかの疾患との間に明確な根拠はないから、化合物INV-1120及びINV-1121が癌及び炎症性疾患の治療に使用できることは明らかではない。
(5)引用文献1には、腫瘍や炎症性疾患の具体的な治療効果は開示されていないのに対し、本願明細書には、腫瘍の増殖だけでなく、移動性、餌および水の消費量などの行動、体重、目/毛のマッティングおよびその他の異常な影響を監視し、低用量ではある程度の阻害が観察されたが、統計的有意性はないこと、高用量では顕著な抗腫瘍活性が検出され、同時に、毒性は示されなかったこと、その他に、併用療法の癌治療効果も試験し、インビボ抗炎症活性について、マウスの腫れをより効果的に軽減し、マウスのバランス又は調整能力を向上させたことが記載されているから、本願発明は、予測し得ないような優れた効果を奏するものである。
(6)本願発明の化合物は、引用文献2~7に開示された化合物とは著しく構造が異なるところ、化合物の構造又は分子幾何学は、化合物の化学的機能と生物学的活性に影響を与える重要な要素であり、最終的には治療上の有用性の可能性を決定するから、引用文献2~7を考慮した当業者は、癌や炎症性疾患の治療のために本願発明の化合物の使用に頼ることはなく、たとえ当業者が、引用文献2~7を考慮して、癌又は炎症性疾患の治療において本願発明の化合物を使用しようとする動機を持ったとしても、成功するという合理的な期待は存在し得ない。
2 請求人の主張に対する判断
(1)引用文献1には、式Iで表される化合物のうちでも特に第1表に示された5つの化合物についてPGE2結合の阻害率が記載され、その中でも上から1番目と2番目に記載されたINV-1121とINV-1120(本願発明の化合物)は、阻害率が88%、93%と最も高く、しかも、試験濃度も、本願発明の化合物は2nMであって他の化合物の10nMよりも薄い濃度で最も高い阻害率であることから、引用文献1の記載に接した当業者であれば、式Iで表される化合物の中でも特に本願発明の化合物を治療活性を確認する候補化合物として認識するといえる。そして、医薬品開発において、結合親和性以外にも多くの考慮すべき要素があり、結合親和性に優れた化合物が最終的に最良の化合物とは限らないからといって、本願発明の化合物について治療活性の確認を妨げる理由にはならない。
したがって、上記主張(1)は、採用できない。
(2)請求人は、新たに化合物INV-6188、INV-8136、INV-8893のデータを挙げて、これらの化合物が、本願発明の化合物であるINV-1120と同等かそれ以上の結合能力を有していると主張するが、これら新たにデータを提出した化合物は、引用文献1の第1表に挙げられた化合物ではない。したがって、これらのデータが提出されても、引用文献1に記載された化合物のうち、最も阻害率の優れた化合物は本願発明の化合物であることに変わりはなく、引用文献1の記載に接した当業者が、治療活性を確認する候補化合物として、本願発明の化合物を認識することに何ら変わりはない。むしろ、請求人が示した上記1(2)の表によれば、INV-6188、INV-8136、INV-8893は、INV-1120とは、チエノ[3,2-b]ピロール環上の2位のメチル基を他の基に換えただけの極めて化学構造の近似した化合物であるから、結合親和性が近似した結果になることも格別予想外ではない。
したがって、上記主張(2)は、採用できない。
(3)引用文献1に多数の疾患が列挙されていても、疾患名が単に列挙されているのではなく、いずれもEP4受容体媒介疾患として記載されているから(上記第4 1(1)ウ)、EP4受容体結合アッセイの結果に優れた本願発明の化合物が、固形腫瘍癌や炎症性疾患を含むEP4受容体媒介疾患の治療に有用であることを当業者は期待し得るといえる。また、請求人は引用文献1の【0056】の記載を特に指摘して、引用文献1には、非常に包括的な疾患リストが記載されているだけと主張するが、引用文献1には、「発明の概略」として、「本発明は、急性および慢性疼痛、骨関節炎、関節リウマチならびに癌などのEP4受容体媒介性の疾患または状態の治療に、EP4受容体アンタゴニストとして有用な一連の新規アミド誘導体に関する。」(【0008】)と記載されているから(上記第4 1(1)イ)、EP4受容体媒介疾患の中でも特に骨関節炎や関節リウマチ等の炎症性疾患や癌の治療に有用であることが引用文献1には記載されているといえる。
そして、その際、引用文献1に治療活性を裏付けるデータが記載されていなくとも、本願発明の化合物は、EP4受容体結合アッセイにおいて優れた結果を得られたことが、引用文献1の第1表において具体的に確認されているのであるから、当業者は、本願発明の化合物がEP4受容体媒介疾患の治療に有用であることを十分期待するといえる。
したがって、上記主張(3)は、採用できない。
(4)上記第5 2(1)のとおり、引用文献1の記載に接した当業者であれば、実施例BでPGE2結合の阻害率が最も高かった本願発明の化合物について、実施例E、Fの炎症性疾患のアッセイを行うこと、また、炎症性疾患と同様にEP4受容体によって媒介される疾患である固形腫瘍癌のアッセイを行うことが動機付けられるといえる。
したがって、引用文献1に記載された式Iの化合物のうちのいずれか特定の化合物と、引用文献1に記載されている広範なリストに含まれる多数の疾患のいずれかの疾患との間に明確な根拠はないなどということはなく、上記主張(4)は、採用できない。
(5)本願優先日当時、EP4受容体アンタゴニストが腫瘍や炎症性疾患の治療に有用であることは、インビボでも治療効果が確認されており技術常識となっていたから、インビボで治療効果を発揮することを確認したことをもって、予測し得ないような効果とはいえないこと、また、所定の投与量において治療効果を有しつつも毒性がなかったことを確認したことをもって、予測し得ないような効果であるとはいえないことは、上記第5 2(2)イで述べたとおりである。
したがって、上記主張(5)は、採用できない。
(6)化合物の具体的な化学構造は異なっていても、ある疾患に対する共通の薬理活性(本願でいうEP4受容体アンタゴニスト活性)を有する化合物であれば、共通して該疾患の治療に資することは、薬理学の分野における技術常識であるから、引用文献2~7において、具体的な化学構造の異なる種々のEP4受容体アンタゴニストが、固形腫瘍癌や炎症性疾患の治療に有用であることに触れた当業者であれば、引用文献2~7における固形腫瘍癌や炎症性疾患の治療活性は、EP4受容体アンタゴニストであることによるものと理解し、化学構造の異なる他のEP4受容体アンタゴニストについても同様に、固形腫瘍癌や炎症性疾患に対して治療効果を期待するといえる。
そうすると、引用文献2~7において、具体的な化学構造の異なるEP4受容体アンタゴニストが固形腫瘍癌や炎症性疾患の治療に有用であることに触れた当業者は、本願発明の化合物についても、EP4受容体アンタゴニストであることに基づいて、固形腫瘍癌や炎症性疾患に対して治療効果を期待するといえる。その際、引用文献1において、本願発明の化合物について、EP4受容体結合アッセイにおける優れた結果が示されている以上、治療効果の期待はより強いものとなるというべきである。
したがって、上記主張(6)は、採用できない。
3 小括
よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-013006