特許拒絶査定不服審判
2024-021010
業務支援システム及び業務支援プログラム
- 審判番号
- 2024-021010
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-178294
- 請求日
- 2024年12月27日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社湯山製作所
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 【請求人代理人】仲石 晴樹
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 古川 哲也
- 審判官 小池 堂夫
- 分類
- P18 .121-WZ (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-178294「業務支援システム及び業務支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月11日出願公開、特開2022- 69224〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月23日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月23日 :出願
令和6年 5月15日付け:拒絶理由通知書
同年 7月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月20日付け:拒絶査定
同年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年10月27日付け:拒絶理由通知書
同年12月23日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和7年12月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。
「【請求項1】
患者の入院の開始に係る第1タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第1薬品情報と、前記患者の退院に係る第2タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第2薬品情報とを、区別可能な態様で出力する出力処理部を備え、
前記出力処理部は、前記第1タイミングにおける前記患者の服用対象が複数種類の薬品である場合、当該複数種類の薬品の全てに関する情報を含む前記第1薬品情報と、前記第2タイミングにおける前記患者の服用対象である全ての薬品に関する情報を含む前記第2薬品情報とを、比較可能な態様で表示し、
前記出力処理部は、予め定められている第1表示領域に前記第1薬品情報を表示し、前記第1表示領域とは別に予め定められている第2表示領域に前記第2薬品情報を表示することで、前記第1薬品情報と前記第2薬品情報とを比較可能な態様で表示し、
前記第1薬品情報に対する前記第2薬品情報の変更内容を自動的に判定し、当該変更内容に関する変更情報を前記出力処理部に出力させる経過判定処理部を更に備える、
業務支援システム。」
第3 拒絶の理由
令和7年10月27日付けで当審において通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
1.一般社団法人秋田県薬剤師会,“平成30年度患者のための薬局ビジョン推進事業『患者を地域へ繋げるための人材育成事業』実施報告書”,[online],2019年3月,[取得日:2025年10月20日],<https://www.akiyaku.or.jp/assets/uploads/2019/09/Vision_Report.pdf>
2.一般社団法人日本病院薬剤師会,“薬剤管理サマリー(改訂版)”,[online],2018年1月15日,[取得日:2025年10月20日],<https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20180115-1.html>(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)引用文献1の摘記
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、“平成30年度患者のための薬局ビジョン推進事業『患者を地域へ繋げるための人材育成事業』実施報告書”(平成31年3月発行。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付与した。以下において同様である。
ア 第1ページ
「
[図:0001435832000001.jpg]
」
イ 第9ページ
「【情報連携ツールの作成と利用】
退院後の薬学的ケアを地域で継続するため情報連携ツールとして、お薬手帳や日本病院薬剤師会で作成した「薬剤管理サマリー」などがあり、お薬手帳への書き込みや薬剤管理サマリーの返書書式などで、双方向の情報共有に使用できるものとなっている。しかし、薬剤管理サマリーは、情報連携ツールとして定着するところまでは未だ至っておらず、「退院時の処方が反映されない」、「退院後もモニタリングして中止して欲しい薬剤情報が伝わっていなかった」、「ポリファーマシー解消のため入院中に減薬した薬が中止理由不明のため退院後に再開される」などの声が聞かれる。そこで今回、薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させるため、iPadを使用した薬剤管理サマリーを作成し、県内3病院と3薬局(1病院1薬局/1組)で使用について検討した。
※日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として、記載項目を検討し標準フォーマットを作成。病院と保険薬局の双方から書き込むことで、薬物療法の患者データとして蓄積。
※タブレットからの入力となるため、出来るだけ作成が簡便となるよう、選択形式や画像添付が可能な様式とし、更新時はアプリの通知機能でお知らせする形とした。
※タブレット形式としたことで、在宅現場では多職種との共有情報源として活用できる。
※使用患者には、病院と保険薬局にて十分な説明をし、同意を取得した後に実施する。
[図:0001435832000002.jpg]
」
ウ 第10ページ~第11ページ
「
[図:0001435832000003.jpg]
[図:0001435832000004.jpg]
[図:0001435832000005.jpg]
[図:0001435832000006.jpg]
[図:0001435832000007.jpg]
」
エ 第12ページ~第13ページ
「▼薬剤管理サマリーの項目
・報告欄:手入力(追記形式:連絡事項等を記載)
・作成日時:自動入力
・作成者:自動入力
・情報を共有する施設を選択:検索欄
・更新日時:自動入力
・更新者:自動入力
・連携先病院名:手入力(初回のみ)
・担当薬剤師(病院):手入力(初回のみ)
・連携先薬局名:手入力(初回のみ)
・担当薬剤師(薬局):手入力(初回のみ)
・生年月日:手入力(年月日をスクロールで選択)
・年齢:手入力
・身長(測定日):手入力
・体重(測定日):手入力
・性別:選択肢(男性、女性)
・入院時担当医:手入力
・かかりつけ医(施設名):手入力
・担当ケアマネージャー(施設名):手入力
・入院日:手入力(年月日をスクロールで選択)
・退院日:手入力(年月日をスクロールで選択)
・薬剤によるアレルギー:選択肢(なし、あり)、手入力(該当薬剤、発現時期、発現状況等)
・禁忌薬:選択肢(なし、あり)、手入力(該当薬剤、発現時期、発現状況等)
・副作用歴:選択肢(なし、あり)、手入力(該当薬剤、発現時期、発現状況等)
・血清クレアチニン(mg/dL)(測定日):手入力
・eGFR(mL/min/1.73m2)(測定日):手入力
・その他検査値情報(測定日):手入力
・入院中の服薬管理:選択肢(自己管理、服薬介助(1日配薬)、服薬介助(1回配薬)、服薬介助(開封)、服薬介助(服用))
・薬剤投与経路:選択肢(経口、経管(経鼻、胃瘻、食道瘻、腸瘻))
・調剤方法:選択肢(PTP、一包化、簡易懸濁、粉砕)
・調剤方法特記事項:手入力
・服薬時の問題点:選択肢(嚥下困難、拒薬あり、医師の指示のない自己判断調整)
・服薬状況:選択肢(良好、時々忘れる、忘れる)
・退院後の薬剤管理:選択肢(本人、家族、施設、その他)
・服薬管理の工夫:選択肢(なし、1日分セット、お薬ケース、服薬カレンダー、声掛け)
・一般用医薬品・健康食品等:選択肢(なし、あり)、一般用医薬品等品名入力:手入力
・入院時持参薬(入力):手入力
・入院時持参薬(画像):ファイル添付(1GBまで)
・退院時処方(入力):手入力
・退院時処方(画像):ファイル添付(1GBまで)
・特記事項:手入力
・サマリー確認欄:選択肢(確認しました、未確認)
・患者同意確認欄:選択肢(同意済み(病院)、同意済み(薬局))
・その他付随情報(画像):ファイル添付(1GBまで)」
(2)引用文献1記載の技術的事項
上記(1)の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 上記(1)アの
「・情報共有ツールの作成と利用(ICTを活用した薬剤管理サマリーで一元管理)」との記載、
同イの
「日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として、記載項目を検討し標準フォーマットを作成。病院と保険薬局の双方から書き込むことで、薬物療法の患者データとして蓄積。」との記載、
同イの
「【情報連携ツールの作成と利用】
退院後の薬学的ケアを地域で継続するため情報連携ツールとして、お薬手帳や日本病院薬剤師会で作成した「薬剤管理サマリー」などがあり、お薬手帳への書き込みや薬剤管理サマリーの返書書式などで、双方向の情報共有に使用できるものとなっている。」との記載、
同ウの
「・使用端末及びアプリケーション
使用端末:Apple社製 IPad
使用アプリケーション:サイボウズ株式会社製Kintone(キントーン)
・通信用回線
4G回線:OCNモバイルONEプリペイド(データ通信、SMS)
WiFi回線:各施設の環境による
最大通信可能容量:1GBまたは3ヶ月
・データ保管場所
サイボウズ社クラウドを使用」との記載、
同ウの
「端末にログイン後、アイコンをタップしてKintoneを起動。
サーバー選択の画面が現れたら、「2018apavision.s.cybozu.com」を選択(画像2)。
各使用者に指定されたユーザー名、パスワードでログインする(画像3)。」との記載、
を参酌すると、情報連携ツールとしての薬剤管理サマリーを一元管理するためには、端末、サーバー、データ保管場所としてのクラウド、通信用回線を用いていることが把握できるから、引用文献1には、「端末、サーバー、データ保管場所としてのクラウド、通信用回線を備えた、情報連携ツールとしての薬剤管理サマリーを一元管理するためのシステム」が記載されている。
イ 上記(1)イの
「・・・薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させるため、iPadを使用した薬剤管理サマリーを作成し、・・・」との記載、
同イの
「※日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として、記載項目を検討し標準フォーマットを作成。」との記載、
同エの
「▼薬剤管理サマリーの項目
・・・途中省略・・・
・入院時持参薬(入力):手入力
・入院時持参薬(画像):ファイル添付(1GBまで)
・退院時処方(入力):手入力
・退院時処方(画像):ファイル添付(1GBまで)
・特記事項:手入力
・・・以下省略・・・」との記載、
を踏まえると、
引用文献1には、「薬剤管理サマリーは、薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させるために利用されるものであり、日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として、入院時持参薬、退院時処方を記載項目として含んでいる」との事項が記載されている。
ウ 上記(1)イの
「・・・iPadを使用した薬剤管理サマリーを作成し、・・・」との記載、「タブレットからの入力となるため、出来るだけ作成が簡便となるよう、選択形式や画像添付が可能な様式とし、・・・」との記載、「タブレット形式としたことで、在宅現場では多職種との共有情報源として活用できる。」との記載、「患者情報、服薬情報、検査値など、項目に従って入力するだけです。」との記載、「IPadセルラーモデルを使用しているため、在宅の現場でも利用できます。」との記載、「2 患者情報を入力して保存 3 連携先で情報を参照」との記載、同ウ及び同エの記載
を踏まえると、
引用文献1には、「端末は、タブレット形式(iPad)のものであって、薬剤管理サマリーの記載項目に情報を入力する手段、前記作成された薬剤管理サマリーを表示(参照)する手段、を備えている」との事項が記載されている。
(3)引用発明
上記(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「端末、サーバー、データ保管場所としてのクラウド、通信用回線を備えた、情報連携ツールとしての薬剤管理サマリーを一元管理するためのシステムであって、(上記(2)ア)
薬剤管理サマリーは、薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させるために利用されるものであり、日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として、入院時持参薬、退院時処方を記載項目として含んでおり、(上記(2)イ)
端末は、タブレット形式(iPad)のものであって、薬剤管理サマリーの記載項目に情報を入力する手段、前記作成された薬剤管理サマリーを表示(参照)する手段、を備えている(上記(2)ウ)
システム。」
2 引用文献2(周知例)
本願の出願前の周知例として引用する“薬剤管理サマリー(改訂版)”(平成30年1月15日公開。以下「引用文献2」という。)には、次のとおり記載されている。
「
[図:0001435832000008.jpg]
」
3 引用文献3(周知例)
本願の出願前の周知例として引用する特許第6730485号(令和2年7月29日発行。以下「引用文献3」という。)には、次のとおり記載されている。
「【0088】薬剤師は、図14示す薬歴表示画面を参照しながら、患者に対して服薬指導を行う(S1010)。
【0089】薬歴表示画面は、大きく4つの列から構成されており、左から1列目に、前々回に患者が来訪した際の薬歴が表示され、左から2列目に前回来訪した際の薬歴が表示されている。そして左から3列目および4列目に、今回の薬歴が処方内容とともに表示されている。
【0090】図14の薬歴表示画面の左から3列目には、今回患者に処方された医薬品が一覧表示されている。そしてこれらの医薬品の一覧において、「日変」と記載されている医薬品は、前回の服薬指導時と比べて服用日数が変更されたことを示す。また「量変」と記載されている医薬品は、前回の服薬指導時と比べて1回の服用量が変更されたことを示す。
【0091】また「▲」は、前回処方されていないが、過去に処方されたことがある薬であることを示す。このマークをクリックすると、過去の処方日と処方された病院が表示される。「初投」は、初回投与の薬であることを示す。「▼」は、前回処方されたが、今回は処方されなかった薬を示す。」
「【0098】また図14または図15の薬歴表示画面の左から4列目において、「詳細入力」タブを選択すると、薬局端末100は、図16に示す詳細入力タブを表示する。・・・
【0103】「処方変化」欄が選択されると、薬剤師支援システム200は、今回の処方箋の内容と、前回の処方箋の内容、前々回の処方箋の内容を比較し、用法や用量、日数などの変化部分を抽出して薬局端末100に表示する(不図示)。これにより薬剤師は、今までとは飲み方が変わる医薬品について、患者に説明をすることができる。」
「【図14】
[図:0001435832000009.jpg]
」
「【図16】
[図:0001435832000010.jpg]
」
4 引用文献4(周知例)
本願の出願前の周知例として引用する特開2003-150711号公報(平成15年5月23日出願公開。以下「引用文献4」という。)には、次のとおり記載されている。
「【0030】なお、前述のように、引継ぎ情報には、前回処方と今回処方との比較内容が含まれる。より具体的には、当該患者についての同一医療機関及び同一診療科の処方箋であることを前提に、前回投薬時における処方箋の内容と、今回投薬時における処方箋の内容とが制御手段112によって自動的に比較され、削除された薬剤(青色)、新規に処方された薬剤(赤色)、過去に処方されたことがあり今回再度追加された薬剤(紫色)、同一薬効群から変更された薬剤(緑色)等があった場合、これらの情報が引継ぎ情報として色別表示されるように構成されている。従って、斯かる引継ぎ情報を視認することにより、前回投薬時における処方箋の内容と、今回投薬時における処方箋の内容との相違点に特に注意を払って服薬指導を行うことができる他、処方箋の記載ミス等による医療事故の未然防止にも役立つものである。」
「【図3】
[図:0001435832000011.jpg]
」
第5 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 「患者の入院の開始に係る第1タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第1薬品情報と、前記患者の退院に係る第2タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第2薬品情報とを、区別可能な態様で出力する出力処理部を備え、」について
引用発明における薬剤管理サマリーの記載項目である「入院時持参薬」及び「退院時処方」に表示される情報は、それぞれ、本願発明の「患者の入院の開始に係る第1タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第1薬品情報」と「前記患者の退院に係る第2タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第2薬品情報」に相当する。
また、引用発明において、「入院時持参薬」と「退院時処方」は、別の記載項目として定義されているから、「入院時持参薬」及び「退院時処方」に表示される情報は、「区別可能な態様で出力する」ものである。
そして、引用発明の「作成された薬剤管理サマリーを表示(参照)する手段」は、情報の出力処理を行うものといえるから、「出力処理部」と称し得るものである。
以上を踏まえると、引用発明の「作成された薬剤管理サマリーを表示(参照)する手段」は、本願発明の「患者の入院の開始に係る第1タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第1薬品情報と、前記患者の退院に係る第2タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第2薬品情報とを、区別可能な態様で出力する出力処理部」に相当する。
イ 「業務支援システム」について
引用発明において、薬剤管理サマリーは、薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させるために利用されるものであるから、引用発明の「情報連携ツールとしての薬剤管理サマリーを一元管理するためのシステム」は、薬剤師の業務を支援するシステムといえる。
してみると、引用発明の「情報連携ツールとしての薬剤管理サマリーを一元管理するためのシステム」は、「業務支援システム」と称し得るものである。
(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
患者の入院の開始に係る第1タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第1薬品情報と、前記患者の退院に係る第2タイミングにおける前記患者の服用対象の薬品に関する第2薬品情報とを、区別可能な態様で出力する出力処理部を備える、
業務支援システム。
<相違点1>
「出力処理部」について、本願発明においては、「前記第1タイミングにおける前記患者の服用対象が複数種類の薬品である場合、当該複数種類の薬品の全てに関する情報を含む前記第1薬品情報と、前記第2タイミングにおける前記患者の服用対象である全ての薬品に関する情報を含む前記第2薬品情報とを、比較可能な態様で表示」するとの事項が特定されているのに対し、引用発明においては、「入院時持参薬」及び「退院時処方」の表示内容及び表示態様について、かかる事項が特定されていない点。
<相違点2>
「出力処理部」について、本願発明においては、「予め定められている第1表示領域に前記第1薬品情報を表示し、前記第1表示領域とは別に予め定められている第2表示領域に前記第2薬品情報を表示することで、前記第1薬品情報と前記第2薬品情報とを比較可能な態様で表示する」との事項が特定されているのに対し、引用発明においては、「入院時持参薬」及び「退院時処方」の表示態様について、かかる事項が特定されていない点。
<相違点3>
本願発明は、「前記第1薬品情報に対する前記第2薬品情報の変更内容を自動的に判定し、当該変更内容に関する変更情報を前記出力処理部に出力させる経過判定処理部を更に備える」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えるか否か不明な点。
第6 判断
1 相違点1及び相違点2について
相違点1及び2は、出力処理部によって表示する表示内容と表示態様に関するものであるから併せて検討する。
ア 引用発明における「薬剤管理サマリー」は、上記第4の1(1)イに記載されているとおり、「「退院時の処方が反映されない」、「退院後もモニタリングして中止して欲しい薬剤情報が伝わっていなかった」、「ポリファーマシー解消のため入院中に減薬した薬が中止理由不明のため退院後に再開される」などの声が聞かれる」という課題に対応し、「薬剤師双方向(病院⇔地域)のタイムリーな情報連携で薬物療法の継続性向上させる」目的で作成されたものである。
このような課題及び目的を踏まえれば、引用発明において、漏れの無い情報連携は必須の要件であるから、「薬剤管理サマリー」には、対象の患者の服用対象が複数種類の薬品である場合に、全ての薬品に関する情報を表示することは当然の構成といえる。
イ 引用発明における「薬剤管理サマリー」は、「日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーを参考として」作成されたものであって、当該日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーのフォーマットは、当業者にとって常識といえるものである。
そして、引用文献2に記載されているとおり、日本病院薬剤師会の薬剤管理サマリーにおいては、入院時持参薬と退院時処方の欄が、左右に区別可能に配置され、比較可能な様態となっている。
ウ 以上の事項を踏まえると、引用発明の「作成された薬剤管理サマリーを表示(参照)する手段」において表示する「薬剤管理サマリー」の表示内容及び表示態様を相違点1及び2で特定されるようなものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
2 相違点3について
2つの情報を区別可能な態様で表示する情報処理システムにおいて、2つの情報の変更内容を自動的に判定すること、及び、変更内容に関する変更情報を表示することは、引用文献3及び4に例示されるように、いずれも周知技術である。
薬剤師による薬剤管理業務において、薬剤の情報の見落とし・誤認の可能性を低減することは、医療事故等の未然防止の観点から当然の要求といえる。そうすると、引用発明において、引用文献3及び4に例示される周知技術を採用し、「前記第1薬品情報に対する前記第2薬品情報の変更内容を自動的に判定し、当該変更内容に関する変更情報を前記出力処理部に出力させる経過判定処理部を更に備える」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
3 効果について
上記相違点1~相違点3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、本願発明の構成から当業者が予測できなかったものとはいえず、格別顕著なものともいえない。
4 小括
してみると、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項、並びに引用文献3及び4に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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