特許拒絶査定不服審判
2024-005279
導電フィルムおよびその製造方法、ならびに温度センサフィルムおよびその製造方法
- 審判番号
- 2024-005279
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-181491
- 請求日
- 2024年03月28日
- 審決日
- 2025年07月16日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日東電工株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人はるか国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 南川 泰裕
- 審判官 道祖土 新吾
- 分類
- P18 .121-WZ (G01K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-181491「導電フィルムおよびその製造方法、ならびに温度センサフィルムおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 56161〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)10月1日にされた出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 8月10日付け:拒絶理由通知書
同年12月12日 :意見書の提出
同月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 1月 9日 :原査定の謄本の送達
同年 3月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年3月28日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「 樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する導電フィルムであって、
前記可撓性基板の厚みが1mm以下であり、
前記可撓性基板は、無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接しており、
導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下である、温度センサ用導電フィルム。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成A1から構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
(構成A1) 樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する導電フィルムであって、
(構成A2) 前記可撓性基板の厚みが1mm以下であり、
(構成B) 前記可撓性基板は、無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接しており、
(構成C) 導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下である、
(構成X) 温度センサ用導電フィルム。
<参考図>
【図1】(導電フィルムの積層構成例を示す断面図)
[図:0001427506000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム基材上にパターニングされた金属薄膜を備える温度センサフィルム、および温度センサフィルムの作製に用いられる導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には多数の温度センサが用いられている。温度センサとしては、熱電対やチップサーミスタが一般的である。熱電対やチップサーミスタ等により、面内の複数箇所の温度を測定する場合は、測定点ごとに温度センサを配置し、それぞれの温度センサをプリント配線基板等に接続する必要があるため、製造プロセスが煩雑となる。また、面内の温度分布を測定するためには基板上に多数のセンサを配置する必要があり、コストアップの要因となる。
【0003】
特許文献1には、可撓性のフィルム基材上に金属薄膜を設け、金属薄膜をパターニングして、リード部11と測温抵抗部12を有するようにパターニングした温度センサフィルムが開示されている(図2参照)。このように金属薄膜をパターニングすれば、個々の測温センサを配線で接続する作業を必要としないため、温度センサを備えるデバイスの生産性を向上可能である。また、可撓性基板を用いるため、デバイスのフレキシブル化や大面積化への対応も容易であるとの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-91045号公報【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、可撓性基板上に金属薄膜を設けた導電フィルムをパターニングすることにより、温度センサフィルムを形成できる。しかし、金属薄膜をパターニング後のフィルムは、パターニング領域およびその周辺にうねりが生じており、ハンドリングが困難となることや、温度センサフィルムの表面に保護フィルムを貼り合わせた際に貼り合わせ界面に気泡が混入すること等が懸念される。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、金属薄膜をパターニング後にうねりが小さい温度センサフィルム、および当該温度センサフィルムを形成するための導電フィルムの提供を目的とする。
…(中略)…
【発明の効果】
【0013】
導電フィルムの加熱寸法変化率H1と、導電フィルムから金属薄膜を除去したフィルムの加熱寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が小さいことにより、金属薄膜をパターニング後の温度センサフィルムのうねりが抑制される傾向がある。そのため、温度センサフィルムのハンドリング性が向上する。また、温度センサフィルムの表面に保護フィルムを貼り合わせた際に、貼り合わせ界面への気泡の混入を抑制できる。」
「【0025】
図2に示す温度センサフィルム110では、リード部11および測温抵抗部12以外の領域14では、金属薄膜が除去され、可撓性基板40が露出しているが、リード部11を介して測温抵抗部12における抵抗値を読み取り可能であれば、リード部11および測温抵抗部12以外の領域にも金属薄膜が設けられていてもよい。具体的には、リード部11および測温抵抗部12と導通しないようにパターニングされていれば、リード部11および測温抵抗部12以外の領域の金属薄膜10を除去せずに残存させてもよい(図6および図7、ならびに前述の特許文献1参照)。」
「【図6】
[図:0001427506000002.jpg]
【図7】
[図:0001427506000003.jpg]
」
「【0029】
このように、可撓性基板40上の金属薄膜10をパターニングして温度センサフィルムを形成すると、金属薄膜が設けられている領域と金属薄膜が設けられていない領域との境界に段差が存在し、うねりが生じる場合がある。例えば、リード部およびその近傍では、リード配線11a,11bと、可撓性基板露出領域14,16との境界に沿って段差が生じ、リード配線11a,11b(および残余片15c)が凸部または凹部となり、リード配線の延在方向と直交する方向に沿って波打った形状となる。測温抵抗部およびその近傍では、測温抵抗部12の外周に沿って段差が生じ、測温定航部が凸部または凹部であるうねりが生じる(図8の比較例5参照)。
【0030】
金属薄膜をパターニング後のフィルムにうねりが発生する原因について検討したところ、金属薄膜をエッチング等によりパターニングした後、フィルムを加熱した際に、うねりが生じやすいことが判明した。例えば、金属薄膜をウェットエッチングによりパターニングする場合は、エッチャントを水洗した後に、加熱乾燥が行われる。また、金属薄膜の低抵抗化や抵抗温度係数(TCR)向上を目的として加熱が行われる場合がある。
【0031】
加熱により、うねりが生じたり、うねりが大きくなるとの現象に着目して、本発明者らが検討の結果、金属薄膜が設けられている領域と金属薄膜が設けられていない領域の加熱寸法変化率に差があることが、うねりの要因であることを見出した。すなわち、可撓性基板40上に金属薄膜10が設けられている領域の加熱寸法変化率H1と、金属薄膜が除去され可撓性基板40が露出している領域の加熱寸法変化率H2が異なることが、うねりを発生させる一要因であり、H1とH2との差の絶対値|H2-H1|が小さい場合に、パターニング後のフィルムのうねりが抑制される傾向がある。
【0032】
加熱寸法変化率(%)は、加熱前の2点間距離L0、および加熱後の2点間距離Lを用いて、100×(L-L0)/L0で定義される。本明細書において、「加熱寸法変化率」とは、特に断りのない限り、150℃で25分加熱した際の加熱前後での所定方向の寸法の変化率を表す。加熱寸法変化率の符号が正である場合は膨張、負である場合は収縮を表す。H2-H1>0である場合は、金属薄膜が設けられている領域は、金属薄膜が除去された領域に比べて加熱後の寸法が小さい(熱収縮し易い)ことを意味する。
【0033】
H2-H1>0である場合は、金属薄膜が設けられている領域が凹部、金属薄膜が除去された領域が凸部となるようにフィルムにうねりが生じる傾向がある。H2-H1<0である場合は、金属薄膜が設けられている領域が凸部、金属薄膜が除去された領域が凹部となるようにフィルムにうねりが生じる傾向がある。H2-H1>0である場合は、金属薄膜の加熱収縮が可撓性基板の加熱収縮よりも大きいために、金属薄膜が設けられている領域の熱収縮が大きくなると考えられる。金属薄膜が設けられている領域では、可撓性基板40と金属薄膜10との界面に応力が生じ、金属薄膜10形成面を内側としたカールが生じる。一方で、金属薄膜が設けられていない領域では、このような界面での応力が生じない。そのため、金属薄膜がパターニングされた温度センサフィルムは、金属薄膜が設けられた領域の金属薄膜側が内側(凹状)となるように波状のうねりが生じるものと考えられる。
【0034】
H2-H1<0である場合は、可撓性基板の加熱収縮が金属薄膜の加熱収縮よりも大きいために、金属薄膜が設けられている領域では、可撓性基板40と金属薄膜10との界面の応力により、金属薄膜10形成面が外側(凸状)となるように波状のうねりが生じるものと考えられる。
【0035】
H2-H1>0である場合、およびH2-H1<0である場合のいずれにおいても、H2-H1の絶対値|H2-H1|が小さいほど、可撓性基板40と金属薄膜10との界面における応力が小さいため、うねりが抑制されると考えられる。なお、上記では、可撓性基板および金属薄膜が加熱収縮する場合を例として説明したが、可撓性基板および/または金属薄膜が加熱により膨張する場合(加熱寸法変化率が0より大きい場合)も、|H2-H1|が小さいほど、うねりが抑制される傾向がある。
【0036】
金属薄膜をパターニング後のフィルムのうねりが小さい、またはうねりが生じていなければ、ハンドリング性に優れ、温度センサ素子の生産性や歩留まりの向上に寄与する。また、温度センサフィルムの表面に保護フィルムを貼り合わせた際に、貼り合わせ界面への気泡の混入等の不具合を抑制できる。
【0037】
|H2-H1|は、0.10%以下が好ましく、0.07%以下がより好ましく、0.05%以下がさらに好ましい。|H2-H1|が小さいほどうねりが小さくなる傾向があるため、|H2-H1|は小さいほど好ましく、理想的には0である。
【0038】
寸法変化率(熱収縮率)が方向によって異なる場合は、いずれか一方向の加熱寸法変化率差が上記範囲であればよい。金属薄膜がストライプ状にパターニングされている場合は、パターニング方向(パターンが並んでいる方向)における加熱寸法変化率差が上記範囲であることが好ましい。理想的には、全方向の加熱寸法変化率差が上記範囲である。
【0039】
|H2-H1|を小さくするためには、可撓性基板40上に金属薄膜10を成膜する際の成膜界面での残留応力の低減や、可撓性基板40および/または金属薄膜10に加熱寸法変化を生じさせる外部作用を小さくする等の方法が挙げられる。また、金属薄膜の厚みが大きいほど、H2-H1が大きくなる傾向がある。」
「【0052】
<下地層>
可撓性基板40は、樹脂フィルム基材50上に下地層20を備えていてもよい。下地層20は単層でもよく、図1に示すように2層以上の薄膜21,22の積層構成でもよい。下地層20は有機層でも無機層でもよく、有機層と無機層とを積層したものでもよいが、少なくとも1層は無機薄膜であることが好ましく、特に、金属薄膜10の直下に設けられる薄膜22が無機薄膜であることが好ましい。下地層20として無機薄膜が設けられることにより、金属薄膜10を形成する際に、樹脂フィルム基材50からの金属薄膜10への有機ガスの混入が抑制され、金属薄膜10の抵抗温度係数(TCR)が大きくなる傾向があり、温度センサフィルムにおける温度測定精度が向上する。
【0053】
金属薄膜10の直下に下地層が設けられることにより、金属薄膜の有無による加熱寸法変化率差|H2-H1|が小さくなる傾向がある。下地層を設けることにより加熱寸法変化率差が小さくなる推定要因の1つとして、下地層による応力緩和効果が挙げられる。例えば、樹脂フィルム基板上に非晶質の下地層が形成されることにより、金属薄膜の格子間隔のミスマッチに起因する応力を緩和する効果が期待される。また、樹脂フィルム基板上の下地層がバリア層として作用することも、加熱寸法変化率差が小さくなる要因の1つとして考えられる。下地層がバリア層として作用することにより、樹脂フィルム基板からの水分や有機物等の不純物の金属薄膜への混入が抑制される。そのため、格子欠陥の少ない金属薄膜が形成されやすく、加熱時の原子の再配列等による金属薄膜の寸法変化が生じ難いため、金属薄膜の有無による加熱寸法変化率差が小さくなると考えられる。」
「【0074】
上記のように、本発明の導電フィルムは、金属薄膜をパターニングする前の導電フィルムの加熱寸法変化率H1と、導電フィルムから金属薄膜を除去したフィルムの加熱寸法変化率H2との差の絶対値が小さい。そのため、金属薄膜をパターニング後の温度センサフィルムでは、金属薄膜が設けられている領域の加熱寸法変化率h1と、金属薄膜が設けられていない領域の加熱寸変化率h2の差のh2-h1の絶対値も小さくなる。そのため、エッチャントを水洗後の乾燥等の際に加熱を行っても、加熱寸法変化の差に起因するうねりの発生が抑制される。
【0075】
|h2-h1|は、0.10%以下が好ましく、0.07%以下がより好ましく、0.05%以下がさらに好ましい。|h2-h1|が小さいほどうねりが小さくなる傾向があるため、|h2-h1|は小さいほど好ましく、理想的には0である。」
「【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
<ハードコート層付きフィルム基材の作製>
平均粒子径1.5μmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(積水化成品工業製「テクポリマー SSX-101」)と紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(アイカ工業製「アイカアイトロン Z844-22HL」とを含み,メチルイソブチルケトンを溶媒とするコーティング組成物を調製した。組成物中の粒子の量は、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して,0.2重量部であった.この組成物を、厚み150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製「ルミラー 149UNS」)の一方の面に塗布し、100℃で1分間乾燥した。その後,紫外線照射により硬化処理を行い,厚み0.8μmのハードコート層を形成した。
【0081】
<金属薄膜の形成>
ロールトゥーロールスパッタ装置内に、上記のハードコート層付きフィルム基材のロールをセットし、スパッタ装置内を到達真空度が5×10-3Paとなるまで排気した後、スパッタガスとしてアルゴンを導入し、基板温度40℃、圧力0.25Pa、パワー密度5.0W/cm2の条件で、ハードコート層形成面上にDCスパッタにより厚み70nmのニッケル薄膜を成膜した。
【0082】
[実施例2]
ニッケル薄膜成膜時の基板温度を80℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコート層上にニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。
【0083】
[実施例3]
実施例1と同様にハードコート層付きフィルム基材を作成し、ロールトゥーロールスパッタ装置内にセットし、スパッタ装置内を到達真空度が5×10-3Paとなるまで排気した後、基板温度150℃にて、ハードコート層形成面上に、厚み5nmのシリコン薄膜、厚み10nmの酸化シリコン薄膜、および厚み70nmのニッケル薄膜を、順に、DCスパッタにより成膜し、ハードコート層上に、下地層としてのシリコン薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。Si層およびSiO2層の形成には、BドープSiターゲットを用いた。Si層は、スパッタガスとしてアルゴンを導入し、圧力0.3Pa、パワー密度1.0W/cm2の条件で成膜した。SiO2層は、スパッタガスとしてのアルゴンに加えて反応性ガスとして酸素を導入し(O2/Ar=0.12/1.0)、圧力0.3Pa、パワー密度1.8W/cm2の条件で成膜した。ニッケル薄膜の成膜条件は、基板温度を150℃に変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
【0084】
[実施例4]
基板温度を80℃、ニッケル薄膜の膜厚を160nmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ハードコート層上に、下地層としてのシリコン薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。
【0085】
[実施例5]
シリコン薄膜に代えて厚み5nmの金属クロム薄膜を形成したこと以外は、実施例3と同様にして、ハードコート層上に、下地層としてのクロム薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。クロム薄膜の形成には金属クロムターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを導入し、圧力0.25Pa、パワー密度0.74W/cm2の条件で成膜した。
【0086】
[実施例6]
シリコン薄膜に代えて厚み5nmの酸化インジウム錫(ITO)薄膜を形成したこと以外は、実施例3と同様にして、ハードコート層上に、下地層としてのITO薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。ITO薄膜の形成には酸化インジウム錫の焼結ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンに加えて酸素を導入し(O2/Ar=0.12/1.0)、圧力0.19Pa、パワー密度1.82W/cm2の条件で成膜した。
【0087】
[実施例7]
シリコン薄膜に代えて厚み10nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)薄膜を形成したこと以外は、実施例3と同様にして、ハードコート層上に、下地層としてのAZO薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。AZO薄膜の形成には酸化アルミニウムドープ酸化亜鉛の焼結ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンに加えて酸素を導入し(O2/Ar=0.12/1.0)、圧力0.19Pa、パワー密度0.75W/cm2の条件で成膜した。
【0088】
[比較例1]
ニッケル薄膜の厚みを50nmに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、ハードコート層上に、下地層としてのシリコン薄膜および酸化シリコン薄膜を介してニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。
【0089】
[比較例2]
ニッケル薄膜の厚みを220nmに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ハードコート層上にニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。
【0090】
[比較例3]
ニッケル薄膜の厚みを260nmに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ハードコート層上にニッケル薄膜を備える導電フィルムを作製した。
【0091】
[評価]
<加熱寸法変化率>
導電フィルムから100mm×100mmの正方形の試験片を切り出し、MD方向(スパッタ成膜時の搬送方向)およびTD方向(MD方向と直交する方向)に、80mm間隔で4点の標点(傷)を形成し、標点間の距離L0を表面座標測定機(TOPCON製「CP600S」)により測定した。155℃の加熱オーブン中で25分間静置し、室温まで放冷した後、標点間の距離Lを測定した。MDおよびTDのそれぞれについて、2か所の加熱寸法変化率の平均を、導電フィルムの加熱寸法変化率H1とした。
【0092】
導電フィルムから100mm×100mmの正方形の試験片を切り出し、塩酸に浸漬してニッケル薄膜をエッチング除去した。その後、上記と同様にして、MD方向およびTD方向の155℃25分加熱後の加熱寸法変化率H2を測定した。
【0093】
<うねり量>
導電フィルムから70mm×70mmの正方形の試験片を切り出し、ニッケル薄膜の表面に幅2mmのポリイミドテープを2mm間隔でストライプ状に貼り合わせた。この試験片を塩酸に浸漬して、ポリイミドテープが貼り合わせられていない領域のニッケル薄膜をエッチング除去し、純水への浸漬により水洗した後、ポリイミドテープをゆっくりと剥離した。155℃の加熱オーブン中で25分間静置し、室温まで放冷した。MD方向をパターニング方向とした場合(TD方向に延在するようにポリイミドテープを貼り合わせた場合)およびTD方向をパターニング方向とした場合(MD方向に延在するようにポリイミドテープを貼り合わせた場合)のそれぞれについて、コヒーレンス走査型干渉計(Zygo NewView 7300)により、下記の条件で三次元表面形状を測定し、パターニング方向に隣接する山と谷の高低差の最大値をうねり量とした。ニッケル薄膜が設けられている部分が凹部(谷)となっている場合はうねり量の符号を正とし、ニッケル薄膜が設けられている部分が凹部(山)となっている場合はうねり量の符号を負とした。
(測定条件)
対物レンズ:2.5倍、ズームレンズ1倍
測定視野:10mm×5mm
Removed:Cylinder
Filter: OFF
Filter Type: AVERAGE
Remove spikes: OFF
Spike Height (xRMS): 2.50
【0094】
<レーザーパターニングによるうねりの評価>
実施例4および比較例2の導電フィルムを試料として、レーザーパターニングにより、導電フィルムのニッケル薄膜を線幅30μmのストライプ形状(L/S=30μm/30μm)にパターニングし、蛍光灯下にて目視観察し、ニッケル薄膜表面での反射像の歪の有無を確認した。
【0095】
[評価結果]
実施例および比較例の導電フィルムの構成(下地層の構成、ニッケル薄膜の厚みおよび基板温度)、MD方向の加熱寸法変化率およびMD方向をパターニング方向とした場合のうねり量、ならびにTD方向の加熱寸法変化率およびTD方向をパターニング方向とした場合のうねり量を、表1に示す。また、実施例4および比較例2の導電フィルムをレーザーパターニングした試料の蛍光灯下での観察像を図8に示す。」
「【図8】
[図:0001427506000004.jpg]
」
「【0096】
【表1】
[図:0001427506000005.jpg]
」
「【0097】
表1の加熱寸法変化率の数値に着目すると、いずれの実施例および比較例においても、MD方向の加熱収縮がTD方向よりも大きくなる傾向がみられた。これは、樹脂フィルムの生産、ならびに樹脂フィルム上へのハードコート層、下地層および金属薄膜の形成がいずれもロールトゥーロールプロセスにより実施され、搬送時の張力によりフィルムがMD方向に伸びているため、張力を付与しない状態で加熱するとMD方向に収縮しやすいと考えられる。
【0098】
表1の加熱寸法変化率とうねりの関係に着目すると、H1およびH2の数値とうねり量には明確な相関はみられなかった。一方、|H2-H1|とうねり量には相関がみられ、|H2-H1|が大きいほど、うねり量の絶対値が大きくなる傾向がみられた。また、H2-H1が正の値である場合は、うねり量の符号が正(ニッケル薄膜が設けられている領域が谷となるうねり)となり、H2-H1が負の値である場合は、うねり量の符号が負(ニッケル薄膜が設けられている領域が山となるうねり)となる傾向がみられた。
【0099】
図8において、実施例5では蛍光灯の反射像が直線状であるのに対して、比較例2ではパターニング領域を中心として蛍光灯の反射像が歪んでおり、うねりが生じていることが分かる。これらの結果から、ウェットエッチングにより金属薄膜をパターニングする場合だけでなく、レーザ加工等のドライプロセスにより金属薄膜をパターニングする場合も、|H2-H1|が小さいほど、うねりが抑制される傾向があることが分かる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する拒絶の理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において発行された次の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2005-091045号公報
引用文献2.特開2013-045633号公報
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献1(特開2005-091045号)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記(2)において引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
ア 段落【0001】~【0014】
「【技術分野】
【0001】
この発明は、薄膜抵抗測温シートに関し、詳しくは積層基板のホットプレス装置や熱融着シートのシーラー等で使用される薄膜抵抗測温シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は高度な機能を有し且つ小型軽量化が求められており、この双方を実現するために、狭いスペースに複雑な制御回路を実装する必要があることから、制御回路用のプリント基板として、複数の配線層と絶縁層でなる多層基板が用いられる。この多層基板は、複数の配線層と絶縁層をサンドイッチ状に上下に積み重ねてプレスするホットプレス工程を経て製作される。このホットプレス工程は、多層基板1枚を製作するための複数の配線層と絶縁層を上下に積み重ねた状態の1個のワークを、複数個、更に上下に重ねて、上下2個の熱板で挟み、100~200℃の高温、高圧でプレスするものである。このホットプレス工程では、プレス時のワークの表面温度のばらつきが多層基板の品質に重要な影響を及ぼすことから、その温度管理が必要であり、そのためにはホットプレス工程におけるプレス時のワークの表面温度分布を測定する必要がある。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の熱電対チップ24を用いる場合、或いは、熱電対シート27を用いる場合のいずれの場合も、これらの熱電対チップ24や熱電対シート27をホットプレス工程で十数回繰り返して使用すると、これらの熱電対チップ24や熱電対シート27のポリイミド等のプラスチックシートの部分が、高温と高圧のため、縮んだりしわができたりして、平面性が損なわれ使用できなくなり、耐久性に劣るという問題があった。
そこで、この発明はこの問題を解決するためになされたものであって、高温高圧の条件下で行なわれるホットプレス工程における測温においても、繰り返して使用が可能な耐久性に優れた薄膜抵抗測温シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の従来例において、熱電対チップや熱電対シートが十数回の繰り返し使用でプラスチックシートの部分が、縮んだりしわができたりしたのは、プラスチックシートは、本来、高温高圧に対して、縮んだりしわになったりしやすいところ、プラスチックシートのみの部分は、金属であるリード線によるサポートがないためと考えられる。
ところで、上記の従来例では、熱電対を用いてホットプレス工程におけるワークの表面温度分布を測定しているが、温度測定方法としては、熱電対を用いる方法以外に、さまざまな方法があり、抵抗膜を用いた温度測定方法もその一つである。この抵抗膜を用いる温度測定方法では、薄膜抵抗測温シートを用いるが、この薄膜抵抗測温シートは、例えば、ポリイミド等のプラスチックシートに抵抗膜層でなる薄膜を形成したものであり、本発明は、この薄膜抵抗測温シートの抵抗膜層の薄膜のパターンを工夫することにより、上記の熱電対チップや熱電対シートのプラスチックシートの部分に発生したような縮みやしわの発生の防止を図ったものである。
【0007】
具体的には、本発明の薄膜抵抗測温シートは、少なくとも、シート状で耐熱性の絶縁材でなるベース層と、シート状で温度により電気抵抗が変化する耐熱性の抵抗膜層とで形成される積層シートでなり、前記積層シートの端部に、外部接続用の端子部を設けるとともに、前記抵抗膜層に、感温抵抗部と薄膜リード部とを、前記感温抵抗部と前記薄膜リード部とが形成される以外の前記抵抗膜層のエリアの一部を除去した部分でなる絶縁部で、周囲を囲んで形成し、前記感温抵抗部は、始端から終端に到る連続した形状であり、前記薄膜リード部は、前記感温抵抗部の前記始端及び前記終端を前記端子部に接続してなることを特徴としている。
【0008】
上記の薄膜抵抗測温シートでは、前記抵抗膜層に形成された、前記感温抵抗部、前記薄膜リード部、前記絶縁部、及び、前記端子部以外の部分における前記抵抗膜層を、除去せずに残存させていることが重要である。これにより、ベース層の表面は、広い範囲に渡って抵抗膜層で覆われており、ベース層のみの部分は少なく、薄膜抵抗測温シートの略全体に渡って、一般に金属が用いられる抵抗膜層が一般にプラスチックが用いられるベース層をサポートすることで、高温高圧下における測温においても、縮みやしわを生じにくくさせていると考えられる。
…(中略)…
【0013】
また、上記の薄膜抵抗測温シートにおいて、前記抵抗膜層を、銅、ニッケル、または、白金とするのが好ましい。
【0014】
また、上記の薄膜抵抗測温シートにおいて、前記感温抵抗部及び前記薄膜リード部の周囲を囲む前記絶縁部を、前記抵抗膜層のエッチングにより形成するのが実用的である。
…(中略)…
【発明の効果】
【0017】
本発明の薄膜抵抗測温シートは、少なくとも、シート状で耐熱性の絶縁材でなるベース層と、シート状で温度により電気抵抗が変化する耐熱性の抵抗膜層とで形成される積層シートでなり、前記積層シートの端部に、外部接続用の端子部を設けるとともに、前記抵抗膜層に、感温抵抗部と薄膜リード部とを、前記感温抵抗部と前記薄膜リード部とが形成される以外の前記抵抗膜層のエリアの一部を除去した部分でなる絶縁部で、周囲を囲んで形成している。即ち、本発明の薄膜抵抗測温シートでは、前記抵抗膜層に形成された、前記感温抵抗部、前記薄膜リード部、前記絶縁部、及び、前記端子部以外の部分の前記抵抗膜層を除去せずに残存させている。そのため、ベース層の表面は、広い範囲に渡って抵抗膜層で覆われており、ベース層のみの部分は少なく、薄膜抵抗測温シートの略全体に渡って、一般に金属が用いられる抵抗膜層が一般にプラスチックが用いられるベース層をサポートしているといえる。そこで、本発明の薄膜抵抗測温シートを高温高圧下でのホットプレス工程等におけるプレス時のワークの表面温度分布測定等に用いても、縮みやしわを生じにくくさせていると考えられる。従って、本発明によれは、高温高圧の条件下で行なわれるホットプレス工程等における測温おいても、繰り返して使用が可能な耐久性に優れた薄膜抵抗測温シートを提供することができる。」
イ 段落【0018】~【0020】、図2、図3
「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施例につき、図面に基づき詳しく説明する。本実施例の薄膜抵抗測温シートは、積層基板のホットプレス工程におけるプレス時のワークの表面温度分布測定に用いられるものである。図1は、本実施例の薄膜抵抗測温シートの平面図、図2は、本実施例の薄膜抵抗測温シートの測温部の拡大平面図、図3は、図2のA-B断面図である。図1において、本実施例の薄膜抵抗測温シートは、縦240mm、横400mm、厚さ(図3のd)約0.05mmであり、耐熱性の絶縁材でなるベース層2と、温度により電気抵抗が変化する耐熱性の電気抵抗体でなる抵抗膜層3と、耐熱性の絶縁材でなるカバー層4の3層から構成される積層シートである。」
「【図1】
[図:0001427506000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001427506000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001427506000008.jpg]
」
「【0019】
ベース層2は、厚さ(図3のd1)が約0.015mmの耐熱性の絶縁材であるポリイミドで形成する。抵抗膜層3は、本実施例では、厚さ(図3のd2)が約0.008mmの銅箔で形成し、ベース層2の表面上に貼り付け或いは電着する。銅は一般に電気の導体として知られているが、電気抵抗を有しており、本実施例では、薄膜抵抗測温シートの抵抗膜層を、この銅を用いて形成する。この抵抗膜層3上には、この抵抗膜層3の一部を除去することでパターンを描くことにより、後述するような、全体の大きさが、縦10mm、横5mm程度の複数個の測温部11と、この測温部11に一端を接続するリード部12とを形成する。この薄膜抵抗測温シート1の端部には、外部接続用の端子部5を設け、リード部12の他端をこの端子部5に接続する。本実施例では、リード部12は、電圧測定用と電流測定用の2種類を備えている。本実施例では、薄膜抵抗測温シート1に複数個の測温部11を形成しており、これらを、図1に示すように、薄膜抵抗測温シート1の中央に1箇所、その周囲に4箇所の計5箇所に設けている。また、抵抗膜層3の表面には、この抵抗膜層3を保護するため、厚さ(図3のd3)が約0.015mmの耐熱性の絶縁材であるポリイミドで形成されたカバー層4を、接着剤9を用いて貼り付けしている。尚、カバー層4を接着剤を用いず、コーティングして形成することも出来る。コーティングを用いる方が、接着剤を用いた貼り付けよりも、抵抗膜層3の銅箔の抵抗値が長時間に渡り安定するという効果がある。
【0020】
図1~図3において、抵抗膜層3は、厚さ(図3のd2)が約0.008mmの銅箔で形成されているが、この銅箔をエッチング等の技術により一部帯状に除去して、図2に示すようなパターンを描くことにより、測温部11とリード部12とを形成する。即ち、測温部11については、抵抗膜層3の銅箔に、上述した測温部11の大きさである縦10mm×横5mmのエリア内に収まるような、蛇行した帯状のパターンの感温抵抗部11aの輪郭が現れるように、その抵抗膜層3の銅箔の一部を帯状に削除して絶縁部10を形成することにより、感温抵抗部11aを形成して測温部11としている。同様にしてリード部12については、抵抗膜層3の銅箔に、帯状のパターンの電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bの輪郭が現れるように、抵抗膜層3の銅箔の一部を帯状に削除して絶縁部10を形成することにより、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bを形成してリード部12としている。上記の感温抵抗部11aと電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bは、感温抵抗部11aの始端及び終端が、それぞれ、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bの先端につながるように形成されている。上記の帯状の感温抵抗部11aの幅(図3のW2)は、0.03~0.04mmとするのが好ましく、また、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bの周囲に形成される帯状の絶縁部10の幅(図3のW1)は、0.025~0.035mmとするのが好ましい。
【0021】
後述するように、本実施例の薄膜抵抗測温シート1を用いる温度の測定は、感温抵抗部11aで構成される測温部11が、リード部12及び端子部5を介して測定回路に接続して行われることから、これらの電気的特性が、測定に使用される測定回路に適合させるのが好ましい。このような観点から、一例として、感温抵抗部11aの常温における電気抵抗を50Ω±10%とする場合に対して、上述した抵抗膜層3の厚さや、測温部11の全体の大きさ、測温部11を構成する帯状の感温抵抗部11aの幅や帯状の絶縁部10の幅等のサイズは、これらを満足するように設定されたものである。また、これらのサイズは、本実施例の薄膜抵抗測温シート1の製作技術上からも妥当とされるものである。
【0022】
本実施例の薄膜抵抗測温シート1は、次のようにして製作される。まず、ポリイミド製のシートであるベース層2と、その表面に貼り付けまたは電着された銅箔でなる抵抗膜層3とでなるシートの抵抗膜層3の表面に感光剤を塗布した後、このシートの表面に感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bのパターンが透明なフイルム上に描かれた原版を重ねて露光処理を行ない、現像した後エッチング液に浸して不要な部分の銅箔を溶かし出して除去するエッチング処理を行ない、このエッチング処理完了後に洗浄する。すると、ポリイミド製のシートの表面に、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bのパターンが銅箔で形成されるので、抵抗膜層3の表面にポリイミド製のシートをカバー層4として接着剤を用いて貼り付けし、端子部5を形成してリード線6を接続する。尚、カバー層4の形成方法としては、上述したように、接着剤を用いず、コーティングによる方法もある。
【0023】
本実施例の薄膜抵抗測温シート1を用いた温度測定は、次のようにして行なわれる。電流測定用薄膜リード部12aの両端子に測定用の直流電源と電流計を直列に接続するとともに、電圧測定用薄膜リード部12bの両端子に電圧計を接続し、電流と電圧とを測定して、この測定値から薄膜抵抗測温シート1の感温抵抗部11aの抵抗値を求める。図4はこの測定における測定回路の等価回路であり、図中、17は直流電源、18は電圧計、そして、19は電流計である。また、T1及びT4は、端子部5における電流測定用薄膜リード部12aの両端子であり、T2及びT3は、端子部5における電圧測定用薄膜リード部12bの両端子である。薄膜抵抗測温シート1の感温抵抗部11aの抵抗値と温度との関係は予め求められているので、感温抵抗部11aの抵抗値がわかれば、温度を知ることができる。
【0024】
本実施例の薄膜抵抗測温シート1では、図2からわかるように、測温部11及びリード部12以外の部分にも、抵抗膜層3の銅箔の部分を周辺部13として残している。即ち、抵抗膜層3で、抵抗膜層3の銅箔が存在しないのは、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bを形成するために、抵抗膜層3の銅箔を帯状に削除して形成した絶縁部10のみである。従って、ベース層2の表面は、そのほとんどが抵抗膜層3で覆われており、薄膜抵抗測温シート1全体に渡って、銅箔でなる抵抗膜層3がポリイミドでなるベース層2をサポートすることで、高温高圧下における測温においても、従来例の熱電対シートにおけるプラスチックシートのみの部分に生じたような、縮みやしわを生じにくくさせているといえる。
【0025】
この効果を確認するため、本実施例の薄膜抵抗測温シート1を製作するとともに、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bのパターンが、本実施例の薄膜抵抗測温シート1と全く同じで、周辺部13の銅箔を全て除去した比較用薄膜抵抗測温シートを製作して、両者をおよそ150℃前後の高温、高圧の条件下で行なわれるホットプレス工程における温度測定に用いて、両者の比較耐久試験を行なった。その結果、比較用薄膜抵抗測温シートは20回程度の繰り返し使用でベース層とカバー層のみでなるプラスチックシートのみの部分に生じる縮みやしわにより、平面性が損なわれて使用できなくなったが、本実施例の薄膜抵抗測温シート1は、100回繰り返し使用しても外観上の異常はほとんど生じず、本実施例の薄膜抵抗測温シート1は、繰り返し使用に対する耐久性に優れていることがわかった。
…(中略)…
【0027】
上記の本実施例の薄膜抵抗測温シート1の厚さ(図3のd)は約0.05mmであり、これよりも多少厚くしてもよいが、厚さとしては、0.05~0.1mmとするのが好ましい。これは、例えば、前述した図5(a)、(c)に示すような、ホットプレス工程における温度測定の場合、薄膜抵抗測温シートの厚さは、上熱板21及び下熱板22のストローク距離に影響を与えるので、小さい方が望ましいからであり、この観点で、上記の数値は好ましいものである。
また、上記の本実施例の薄膜抵抗測温シート1では、薄膜抵抗測温シートの抵抗膜層を銅で形成しているが、ニッケルまたは白金を用いてもよく、或いは、その他の電気抵抗を有する抵抗膜層を用いてもよい。また、上記の本実施例の薄膜抵抗測温シート1では、5箇所に測温部11を設けているが、測温部11を1個のみとし、この測温部11を収容するだけの小さい形状のベース層2とカバー層4とを用いた単体の薄膜抵抗測温シートを製作することもできる。
また、本発明の薄膜抵抗測温シートは、そのシートの形状を、熱融着シートのシーラー等に適合する形状に変える等することにより、熱融着シートのシーラー等におけるシール時の温度測定にも使用することができる。
【0028】
本実施例の薄膜抵抗測温シート1は、測温部11及びリード部12以外の部分にも、抵抗膜層3の銅箔の部分を周辺部13として残しており、ベース層2の表面は、そのほとんどが、抵抗膜層3の銅箔で覆われているので、前述のとおり、高温高圧下での使用に対して優れた耐久性を有する特徴を備えている。しかし、高温高圧下で使用しないのであれば、周辺部13の銅箔を全て除去した薄膜抵抗測温シートであっても、十分使用することができる。」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、薄膜抵抗測温シートに係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「 積層基板のホットプレス装置や熱融着シートのシーラー等で使用される薄膜抵抗測温シートであって(【0001】)、
プラスチックシートは、本来、高温高圧に対して、縮んだりしわになったりしやすいところ、この薄膜抵抗測温シートの抵抗膜層の薄膜のパターンを工夫することにより、上記の熱電対チップや熱電対シートのプラスチックシートの部分に発生したような縮みやしわの発生の防止を図ったものであって(【0006】)、
厚さ約0.05mmであり、耐熱性の絶縁材でなるベース層2と、温度により電気抵抗が変化する耐熱性の電気抵抗体でなる抵抗膜層3と、耐熱性の絶縁材でなるカバー層4の3層から構成され(【0018】)、
ベース層2は、厚さが約0.015mmの耐熱性の絶縁材であるポリイミドで形成され(【0019】)、
抵抗膜層3は、厚さが約0.008mmの銅箔で形成し、ベース層2の表面上に貼り付け或いは電着され(【0019】)、
抵抗膜層3上には、この抵抗膜層3の一部を除去することでパターンを描くことにより、全体の大きさが、縦10mm、横5mm程度の複数個の測温部11と、この測温部11に一端を接続するリード部12とを形成したものであり(【0019】)、
カバー層4は、厚さが約0.015mmの耐熱性の絶縁材であるポリイミドで形成され(【0019】)、
測温部11及びリード部12以外の部分にも、抵抗膜層3の銅箔の部分を周辺部13として残しており、抵抗膜層3で、抵抗膜層3の銅箔が存在しないのは、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bを形成するために、抵抗膜層3の銅箔を帯状に削除して形成した絶縁部10のみである(【0024】)、
薄膜抵抗測温シート。」
5 引用文献2の記載事項と技術事項の認定
(1) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2013-045633号)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の技術事項の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 【0001】~【0013】
「【0001】
本発明は、可撓性透明基材の一方の面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムの製造方法に関する。
…(中略)…
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル等に用いられる透明導電性フィルムとして、透明フィルム等の可撓性透明基材に、ITO等の導電性金属酸化物からなる透明導電体層が積層されたものが知られている。近年、多点入力(マルチタッチ)が可能な投影型静電容量方式のタッチパネルや、マトリックス型の抵抗膜方式タッチパネルが脚光を浴びているが、これらのタッチパネルでは、透明導電性フィルムの透明導電体層が、所定形状(例えばストライプ状)にパターン化されている。このような透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有している。
【0003】
透明導電体層がパターン化されている場合、透明導電体層が形成されている部分(パターン形成部)と透明導電体層が形成されていない(パターン開口部)との間の反射率差に起因して、パターンが視認され、表示素子としての見栄えが悪くなる場合がある。このような透明導電体層の有無による視認性の相違を抑制する観点から、フィルム基材と透明導電体層との間に複数の光学干渉層をアンダーコート層として設け、光学干渉層の屈折率等を所定範囲に調整することが提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-15861号公報
【特許文献2】特開2008-98169号公報
【特許文献3】特許第4364938号明細書
【特許文献4】特開2009-76432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、透明導電体層がパターン化されている場合は、その境界が視認され難いことが求められるが、これに加えて、表示装置の軽量化や薄型化の観点から、タッチパネル等に用いられる透明導電性フィルムの薄型化が求められている。透明導電性フィルムの厚みを小さくするためには、その厚みの大部分を占めるフィルム基材の厚みを小さくすることが必要である。しかしながら、本発明者らが検討したところ、フィルム基材の厚みを小さくすると、基材と透明導電体層との間に光学干渉層が設けられていても、透明導電性フィルムをタッチパネルに組み込んだ際に、透明導電体層のパターン境界が視認され易く、見栄えが悪くなる場合があることが判明した。
【0006】
上記に鑑みて、本発明は、基材の厚みが80μm以下と小さい場合でも、タッチパネルに組み込んだ際に、透明導電体層のパターンが視認され難い透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて本発明者らが検討の結果、透明導電性フィルムの透明導電体層をパターン化した後におこなわれる熱処理工程において、パターン形成部とパターン開口部との寸法変化率の差を小さくすることによって、透明導電体層のパターンが視認され難くなることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、厚み80μm以下の可撓性透明基材上にパターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムの製造方法に関する。透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有する。本発明の製造方法は、透明フィルム基材を有する可撓性透明基材上にパターン化されていない透明導電体層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、透明導電体層の一部を除去して可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とにパターン化するパターン化工程、および透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程を有する。
【0009】
本発明においては、熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値が小さいことが好ましい。具体的には、H1-H2が0.03%未満であることが好ましく0.025%以下であることがより好ましく、0.02%以下がさらに好ましく、0.015%以下が特に好ましい。
【0010】
一実施形態において、透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程での温度は100℃未満であることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態において、透明導電体層の一部の除去は、エッチャントを用いたウェットエッチングにより好適に行うことができる。この場合、熱処理工程では前記積層体を加熱乾燥することが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態において、可撓性透明基材は、透明フィルム基材の透明導電体層形成面側にアンダーコート層が形成されたものである。また、透明導電体層はスズドープ酸化インジウムからなることが好ましく、可撓性透明基材は、透明フィルム基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明導電体層をパターン化した後の透明導電性フィルムにおいて、パターン形成部とパターン開口部の加熱時の寸法変化率の差が所定範囲内である。そのため、加熱後においても透明導電体層と可撓性透明基材の界面に生じる応力が小さく、フィルムにうねりが生じ難い。このようにして得られた透明導電性フィルムをガラス板等の剛性の基体と貼り合わせてタッチパネル等を形成した場合において、パターン境界での段差が低減され、パターン境界が視認されることによる見栄えの低下が抑止される。」
イ 【0015】~【0057】、【図1】~【図6】
「【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、パターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムの一形態を示す模式的断面図である。図1に示す透明導電性フィルム100は、可撓性透明基材1の一方の面に、パターン化された透明導電体層2を有している。可撓性透明基材は、透明フィルム基材11の表面に、必要に応じてアンダーコート層12等が形成されている。透明導電性フィルム100は、透明導電体層2が形成されているパターン形成部Pと、透明導電体層が形成されていないパターン開口部Oとから構成されている。図2は、可撓性透明基材1の透明導電体層2が形成されていない側の面に粘着剤層3を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムの一形態を示す模式的断面図である。図3は、この粘着剤層3を介して透明導電性フィルムがガラス等の剛性の基体50に貼り合わせられている粘着剤層付き透明導電性フィルム110を示す模式的断面図である。」
「【図1】
[図:0001427506000009.jpg]
【図2】
[図:0001427506000010.jpg]
【図3】
[図:0001427506000011.jpg]
」
「【0016】
まず、上記のような構成を有する透明導電性フィルムにおいて、可撓性透明基材1の厚みを小さくした場合に、透明導電体層2のパターン境界が視認され易くなる原因について検討した。厚み23μmのPETフィルム基材からなる可撓性透明基材1上にITOからなるパターン化された透明導電体層2が形成された透明導電性フィルム100を粘着剤層3を介してガラス板50に貼り合わせた場合の、透明導電体層側の表面形状プロファイルの一例を図5に示す。図5においては、透明導電体層が形成されているパターン形成部Pと、透明導電体層が形成されていないパターン開口部Oとの境界で、150nm以上の高低差(段差)が生じている。この例において、パターン境界における高低差は透明導電体層の厚み(22nm)よりもはるかに大きく、この段差がパターン境界を視認され易くしている要因であると考えられた。」
「【図5】
[図:0001427506000012.jpg]
」
「【0017】
このように、ガラス板に貼り合わせた透明導電性フィルムのパターン境界において大きな段差が生じる原因についてさらに検討したところ、ガラス板に貼り合わせる前の透明導電性フィルムには、図6(a)に概念的に示すように、パターン形成部Pの透明導電体層2形成面側を凸として波状のうねりが発生していた。このようにうねりが生じているフィルムが、粘着剤層を介して平坦なガラス板に貼り合わせられると、ガラス板の方がフィルムよりも剛性が大きいために、フィルムのうねり自体はほぼ解消されて平坦となる。一方で、透明導電性フィルムのうねりが解消されて平坦となる際には、凸状に湾曲していたパターン形成部Pの境界部にひずみが集中するために、図6(b)に概念的に示すように、透明導電体層が端部の境界付近で盛り上がり、これが境界に段差を生じる原因であると推定される。なお、図3および図6(b)においては、透明導電性フィルム100の可撓性透明基材1側が粘着剤層3を介して剛性の基体と貼り合わせられた形態が図示されているが、透明導電体層2側が他の基体(例えばタッチパネルのウィンドウ層)と貼り合わせられた場合においても、フィルムのうねりが原因でパターン境界に段差が生じ、パターン境界が視認され易くなっているものと考えられる。」
「【図6】
[図:0001427506000013.jpg]
」
「【0018】
段差を解消して、パターン境界を視認され難くするためには、ガラス等の剛性基体に貼り合わせられる前の透明導電性フィルムのうねりを解消することが重要であると考えられた。さらに、透明導電性フィルムにうねりが生じる原因について考察したところ、透明導電体層をエッチング等によりパターン化した後、フィルムが加熱されると、うねりが生じやすいことが判明した。一般に、透明導電体層をウェットエッチングによりパターン化した後には、エッチャントが水洗され、その後に加熱乾燥が行われる。また、透明導電体層が非晶質である場合は、透明導電体層の加熱信頼性や透明性の向上、低抵抗化等を目的として酸素存在下で加熱することによって透明導電体層を結晶化する場合がある。さらには、透明導電性フィルム上にIC等の制御手段と透明導電体層とを電気的に接続するためのパターン配線を形成する際やタッチパネルの組立加工時にも加熱が行われる。
【0019】
本発明は、透明導電体層をパターン化後の熱処理工程においてうねりが発生することを抑制すれば、ガラス板等の剛性基体に透明導電性フィルムが貼り合わせられた場合の段差が低減し、パターン境界が視認され難くなるとの推定原理に基づいてなされたものである。そして、さらに検討の結果、透明導電体層をパターン化後の加熱工程において、パターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2が略同等であれば、うねりの発生が抑制され、ガラス等と貼り合わせた場合でも、パターン境界が視認され難くなることが見出された。
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一形態にかかる透明導電性フィルムの模式的断面図である。図1においては、可撓性透明基材1上に、透明導電体層2が形成された透明導電性フィルム100が図示されている。図1においては、可撓性透明基材1としてフィルム基材11上にアンダーコート層12が形成されたものが図示されているが、可撓性透明基材1はアンダーコート層を有していなくともよい。また、フィルム基材11の透明導電体層2が形成されていない側の面に、ハードコート層、ブロッキング防止層、反射防止層等の機能性層(不図示)が形成されていてもよい。
【0021】
<可撓性透明基材>
(フィルム基材)
可撓性透明基材1を構成する透明フィルム基材11としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。なお、例えば図1において、符号「1」で示される部材(すなわち、可撓性透明基材)が透明フィルム基材11のみで構成される場合も、当該部材を可撓性透明基材という。
【0022】
透明導電性フィルムにうねりや段差を生じ難くする観点からは、基材フィルムの厚みを大きくして、剛性を高めることが好ましいが、薄型化の観点から、本発明における基材フィルムの厚みは80μm以下である。なお、後述するようにフィルム基材11上に光学干渉層やハードコート層等のアンダーコート層12が形成されている場合は、これらも含めた可撓性透明基材としての厚みが80μm以下であることが好ましい。
…(中略)…
【0024】
フィルム基材は、加熱時の寸法安定性が高いことが好ましい。一般にプラスチックフィルムは加熱時の膨張や収縮による寸法変化を生やすい。これに対して、金属酸化物からなる透明導電体層は寸法変化を生じ難いため、加熱時に基材フィルムに寸法変化が生じると、可撓性透明基材と透明導電体層との界面にひずみが生じ、これがうねりを発生させる原因となる。そのため、基材フィルムは熱変形温度が高いことが好ましい。
…(中略)…
【0026】
透明フィルム基材はそのまま可撓性透明基材1として用いることもできるが、図1に示すように、透明フィルム基材11の透明導電体層2形成面側に、ハードコート層、ブロッキング防止層、光学干渉層等のアンダーコート層12を設けたものであってもよい。
【0027】
(アンダーコート層)
一般に、ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられ、アンチブロッキング層は、フィルム表面に凹凸を形成して滑り性や耐ブロッキング性を付与するために設けられる。また、光学干渉層は、透明導電体層をパターン形成部とパターン開口部とにパターン化した際に両者の反射率差を低減し、パターンが視認されることを抑止するために設けられる。
【0028】
ハードコート層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3~6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0029】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、透明フィルム11上にハードコート層を形成する樹脂組成物を塗工し、乾燥後、硬化処理する方法が採用される。樹脂組成物の塗工は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。なお、塗工にあたり、前記樹脂組成物は、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等の一般的な溶剤で希釈して溶液としておくことが好ましい。
【0030】
ハードコート層は、上記のように、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられるものであるが、本発明においては、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与させることもできる。すなわち、ハードコート層は一般に架橋構造を有しているために、ポリマーフィルム基材に比して寸法変化を生じ難く、フィルム基材上にハードコート層が形成された可撓性透明基材は、フィルム基材単体の場合に比して加熱寸法変化が小さい。そのため、透明フィルム基材11上にアンダーコート層12としてハードコート層を設けることによって可撓性透明基材の寸法変化が抑制され、透明導電体層2がパターン化された透明導電性フィルムを加熱した場合のうねりの低減にも寄与し得る。
【0031】
ハードコート層の厚みは、1~7μmが好ましく、2μm~5μmがより好ましい。ハードコート層の厚み小さいと、硬度が不足したり、上記のような寸法変化の抑制効果が十分に発揮されない場合がある。一方、厚みが過度に大きいと、可撓性透明基材や透明導電性フィルムにカールを生じたり、ハードコート層にクラックが発生する等の不具合を生じる場合がある。
…(中略)…
【0037】
光学干渉層は、透明フィルム基材11と透明導電体層2との間に設けることができ、導電層としての機能を有しないものである。すなわち、光学干渉層は、パターン化された透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられる。従って、光学干渉層は、通常、表面抵抗が、1×106Ω/□以上であり、好ましくは1×107Ω/□以上、さらに好ましくは1×108Ω/□以上である。なお、光学干渉層の表面抵抗の上限に特に制限はない。一般的には、光学干渉層の表面抵抗の上限は測定限界である、1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
【0038】
光学干渉層の屈折率は、透明導電体層の屈折率との差が、0.1以上であることが好ましい。透明導電体層の屈折率と光学干渉層の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、光学干渉層の屈折率は、通常、1.3~2.5、さらには1.38~2.3、さらには1.4~2.3であるのが好ましい。このように光学干渉層の屈折率を制御することによって、パターン形成部とパターン開口部との反射率差を低減することができる。
【0039】
透明フィルム基材11に最も近い光学干渉層は、有機物により形成されていることが、透明導電体層をエッチングによりパターン化する上で好ましい。そのため、光学干渉層が1層からなる場合には、光学干渉層は、有機物により形成するのが好ましい。
【0040】
光学干渉層が、2層以上からなる場合には、少なくとも、透明フィルム基材から最も離れた光学干渉層は、無機物により形成されていることが、透明導電体層をエッチングによりパターン化する上で好ましい。光学干渉層が3層以上からなる場合には、フィルム基材から第二層目より上の光学干渉層についても無機物により形成されていることが好ましい。
【0041】
無機物により形成された光学干渉層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセス、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。光学干渉層を形成する無機物としては、前述の通り、SiO2が好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0042】
以上から、光学干渉層を層設ける場合には、第一光学干渉層を有機物により形成し、第二光学干渉層を無機物により形成するのが好ましい。
【0043】
光学干渉層の厚みは、特に制限されるものではないが、光学設計や、透明フィルム基材からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1~300nm程度であり、好ましくは5~300nmである。なお、光学干渉層が2層以上からなる場合、各層の厚みは、5~250nm程度であることが好ましく、10~250nmであることがより好ましい。
【0044】
このような光学干渉層は、基材フィルム上に直接設けることもできるし、前述のようなハードコート層やブロッキング防止層上に設けてもよい。光学干渉層も、上記のハードコート層と同様に可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与し得る。しかしながら、光学干渉層は、一般にハードコート層に比して厚みが小さいために、加熱寸法変化の抑制効果はハードコート層の方が優れている。そのため、透明フィルム基材上にハードコート層を設け、その上に光学干渉層を設けることで、可撓性透明基材の寸法変化を抑制しつつ、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制することもできる。
…(中略)…
【0049】
<透明導電体層のパターン化>
上記のようにして可撓性透明基材上に透明導電体層が形成された積層体は、透明導電体層の一部が除去されてパターン化される。透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムは、可撓性透明基材1上に透明導電体層2を有するパターン形成部Pと、可撓性透明基材1上に透明導電体層を有していないパターン開口部Oとを有する。パターンの形状は、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種形状を形成することができる。パターン形成部Pの形状としては、例えば、図4に示すストライプ状の他、スクエア状等が挙げられる。なお、図4では、パターン形成部Pの幅がパターン開口部Oの幅より大きく図示されているが、本発明は当該形態に制限されるものではない。」
「【図4】
[図:0001427506000014.jpg]
」
「【0050】
透明導電体層2のパターン化はウェットエッチングにより行なわれることが好ましい。透明導電体層2の一部をウェットエッチングにより除去してパターン化を行う場合、パターンを形成するためのマスクにより透明導電体層2の一部(パターン形成部)を覆って、透明導電体層のマスクにより覆われていない部分(パターン開口部)をエッチャントに曝すことによって除去する。前述のように透明導電体層2は、ITOやATO等の導電性金属酸化物が用いられるため、エッチャントとしては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0051】
<熱処理>
上記のように透明導電体層がパターン化された後の透明導電性フィルムは、熱処理工程に供される。熱処理としては、パターン化に用いたエッチャントを水等の洗浄液を用いて洗浄した後の洗浄液を乾燥するための加熱、非晶質の透明導電体層を結晶化するための加熱、パターン化された透明導電体層をIC等の制御手段と電気的に接続するためのパターン配線形成時に銀ペースト等を乾燥するための加熱、およびタッチパネルの組立加工時の加熱等が挙げられる。
【0052】
本発明においては、熱処理工程において、パターン形成部Pの寸法変化率H1とパターン開口部Oの寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値が0.03%未満であることが好ましい。熱処理工程におけるパターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差を小さくすることによって、透明導電性フィルムにおけるうねりの発生が抑制される。そのため、透明導電性フィルムをタッチパネル等に組み込んだ際に、パターン境界に大きな段差が生じることによる見栄えの低下が抑止される。うねりの発生を抑制して、パターン境界に生じる段差を小さくする観点からは、H1-H2の絶対値は0.025%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましく、0.015%以下であることが特に好ましい。
【0053】
寸法変化率(%)は、加熱処理前の2点間距離L0、および加熱処理後の2点間距離Lを用いて、100×(L-L0)/L0で定義され、寸法変化率の符号が正である場合は膨張、負である場合は収縮を表す。したがって、H1-H2が負である場合は、透明導電体層が除去されているパターン開口部は、透明導電体層が形成されているパターン形成部に比して、熱処理後の寸法が小さくなる(熱収縮し易い)ことを意味する。熱処理工程における透明導電性フィルムの寸法変化率(熱収縮率)が方向によって異なる場合は、いずれか一方向の寸法変化率の差が前記範囲であることが好ましい。なお、図4に示すように、透明導電体層がストライプ状にパターン化されている場合は、パターン化方向(パターンが並んでいる方向)における寸法変化率の差が前記範囲であることが好ましい。
【0054】
熱処理工程におけるパターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差が小さい場合にうねりが抑制される推定原理について以下に説明する。
【0055】
透明導電体層が除去されたパターン開口部において、可撓性透明基材1は、高温に加熱されると、基材フィルムの熱膨張や熱収縮によって寸法変化を生じ易い。例えば、透明フィルム基材として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられている場合、透明導電性フィルムが120℃程度に加熱されると、パターン開口部の基材は熱収縮を生じ、寸法変化率H2は、一般に負の値となる。一方、金属酸化物からなる透明導電体層2は、基材フィルムに比して硬度が高く、加熱による寸法変化を生じ難い。そのため、可撓性透明基材1上に透明導電体層2が形成されたパターン形成部では、可撓性透明基材の寸法変化が透明導電体層によって抑制され、パターン形成部Pの寸法変化率H1の絶対値は、透明導電体層が除去されたパターン開口部Oの寸法変化率H2の絶対値に比して小さくなる傾向がある。
【0056】
パターン形成部Pにおける寸法変化率H1の絶対値はH2に比して小さいが、透明導電体層によって基材の寸法変化が抑制されているために、可撓性透明基材1と透明導電体層2との界面に応力が生じる。一方で、透明導電体層が形成されていないパターン開口部では、このような界面での応力が生じない。そのため、透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムは、図7(当審注:「図6」の誤記と推察される。)に概念的に示すように、パターン形成部Pの透明導電体層2側を凸として、フィルムに波状のうねりが生じるものと考えられる。なお、図7(当審注:「図6」の誤記と推察される。)では可撓性透明基材が加熱により収縮する場合を示しているが、可撓性透明基材が加熱により膨張するものであれば、パターン形成部の透明導電体層2が形成されていない側を凸としてうねりが生じるものと考えられる。
【0057】
パターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差が小さいということは、前述のような可撓性透明基材と透明導電体層の界面に発生する応力が小さいことを意味するため、H1-H2の絶対値が小さいほど、うねりの発生が抑制されるものと考えられる。そして、透明導電性フィルムのうねりが小さければ、ガラス等の剛性基体と貼り合わせた場合における、パターン境界部の段差が小さくなり、パターン境界が視認され難くなるものと考えられる。
【0058】
以下、熱処理工程の具体例について説明する。透明導電性フィルムをパターン化した後の熱処理の典型例は、パターン化に用いたエッチャントを水等の洗浄液を用いて洗浄した後に、洗浄液を乾燥するための加熱である。一般に水を主成分とする液体が洗浄液として用いられるために、洗浄液を乾燥するための加熱は100℃以上の高温で行われることが多い。一方で、透明導電体層をパターン化後の透明導電性フィルムがこのような高温での熱処理に曝されると、可撓性透明基材が寸法変化を生じ、パターン形成部とパターン開口部との寸法変化率差が大きくなる傾向がある。そのため、洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましい。乾燥時の加熱温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0059】
なお、フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H1-H2の絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合がある。このような場合において、熱処理工程の加熱温度は、H1-H2の絶対値が0.03%以上とならない範囲で、適宜に設定し得る。
【0060】
その他の熱処理としては、非晶質の透明導電体層を結晶化するための加熱、パターン化された透明導電体層をIC等の制御手段と電気的に接続するためのパターン配線形成時に銀ペースト等を乾燥するための加熱、およびタッチパネルの組立加工時の加熱等が挙げられる。これらの熱処理を行う場合においても、上記の洗浄液の乾燥と同様に、加熱温度を調整することによって、H1-H2の絶対値を0.03%未満とすることができる。
【0061】
上記のように透明導電体層2がパターン化された透明導電性フィルムは、タッチパネル等に好適に用いられる。特に、透明導電体層がパターン化されて複数の透明電極を有することから、投影型静電容量方式のタッチパネルや、マトリックス型の抵抗膜方式タッチパネルに好適に用いられる。タッチパネル等への適用に際しては、図2に示すように、可撓性透明基材1の透明導電体層2が形成されていない側の面に粘着剤層3を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムを形成してもよい。この粘着剤層付き透明導電性フィルムを、粘着剤層3を介して、例えば図3に示すように、基体50に貼り合わせて用いることができる。この際、基体50としてガラス板等の剛性の基体が用いられても、透明導電性フィルムのうねりが抑制されていれば、パターン境界での段差の発生が抑制され、視認性に優れるタッチパネルを形成することができる。また、透明導電体層2が設けられている側に粘着剤層を設けて、タッチパネルのウィンドウ層等の他の基体と貼り合わせた場合でも、同様にパターン境界での段差が抑制されるために、視認性に優れるタッチパネルを形成することができる。
(後略)」
ウ 【0068】~【0090】(実施例の記載)、【図7】
「【実施例】
【0068】
[実施例1]
(可撓性透明基材)
透明フィルム基材として、厚み23μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイアホイル」、屈折率1.65)を、そのまま可撓性透明基材として用いた。
【0069】
(ITO膜の製膜)
DCマグネトロンスパッタ装置に、ターゲット材料として、酸化インジウムと酸化スズとを97:3の重量比で含有する焼結体を装着した。可撓性透明基材を搬送しながら、脱水、脱ガスを行った後、基材の加熱温度を100℃とし、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入して、放電出力6.35mW/cm2でDCスパッタリング法により製膜を行い、基材上に厚み22nmのITO膜を形成した。
【0070】
(ITO膜のパターン化)
このようにして得られた可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、ITO膜の表面に幅2mmのポリイミドテープを2mm間隔で複数貼り合わせた。この際、スパッタ製膜時の搬送方向(以下、「MD方向」)がパターン化方向となるように、MD方向と直交する方向(以下、「TD方向」)にテープを貼り合わせた。この試験片を50℃に加温した5wt%塩酸水溶液に10分間浸漬させ、非マスキング部(ポリイミドテープが貼り合わせられていない部分)の透明導電体層のエッチング処理を行った。透明導電体層を除去後の試料を、十分な量の純水に浸漬することによって水洗した後、ポリイミドテープをゆっくりと剥離した。
【0071】
(加熱処理)
パターン化後の透明導電性フィルムを、70℃のオーブン中で5分間加熱して、乾燥を行った。
【0072】
(段差の評価)
このようにして得られたITO膜がパターン化された透明導電性フィルムを、ITO膜面を上にした状態で、ハンドローラーを用いて、厚み22μmのアクリル系粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせた。小坂研究所社製の微細形状測定機(型番「ET4000」)を用いて、カットオフ値0.8mm、速度0.2mm/秒でITO膜形成面側の試料表面を走査させ、透明導電体層が形成されているパターン形成部と透明導電体層が除去されたパターン開口部との境界における段差を計測した。また、目視にて、パターン形成部とパターン開口部との判別ができるか否かを評価した。目視距離は20cm、目視角度はサンプル面から40度とした。
【0073】
(熱処理時の寸法変化率の測定)
以下のように、透明導電体層が形成されている積層体をパターン形成部、透明導電体層をエッチングにより除去したものをパターン開口部とみなして、上記の加熱処理と同様の加熱を行った際のそれぞれの寸法変化率を測定した。
(1)パターン形成部の寸法変化率
可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、50℃の純水に10分間浸漬した。パターン化方向(MD方向)に約50mmの間隔で2点の標点(傷)を可撓性透明基材上に形成した後、上記の加熱処理と同様に70℃で5分間の加熱をおこない、加熱前の標点間距離L0および、加熱後の標点間距離Lを、TOPCON社製の表面座標測定機(型番「CP600S」)により測定して、パターン形成部の寸法変化率H1=100×(L-L0)/L0(%)を求めた。
(2)パターン開口部の寸法変化率
可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、上記のITO膜のパターン化の場合と同様に、50℃に加温した5wt%塩酸水溶液に10分間浸漬してITO膜を除去した。その後、パターン形成部に関して上記したのと同様に熱処理を行い、加熱前後での寸法変化率H2を測定した。
【0074】
[実施例2]
メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物を、固形分で2:2:1の重量比で含む熱硬化型樹脂組成物を、固形分濃度が8重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。この溶液を、実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に塗布し、150℃で2分間加熱硬化させ、膜厚33nmの光学干渉層(屈折率:1.54)を形成した(この光学干渉層を「アンダーコート層A」とする)。このアンダーコート層Aが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0075】
[実施例3]
実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に、ドライプロセスにより、厚み50nm、屈折率1.6~1.9のSiOx(xは1.5以上2未満)からなる光学干渉層を形成した(この光学干渉層を「アンダーコート層B」とする)。このアンダーコート層Bが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0076】
[実施例4]
アクリル・ウレタン系樹脂(DIC製 商品名「ユニディック17-806」)100重量部に、光重合開始剤として、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバガイギー製 商品名「イルガキュア184」)5重量部を加え、トルエンで希釈して、固形分が30重量%となるようにハードコート塗布溶液を調製した。この溶液を、実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に塗布し、100℃で3分間加熱乾燥した後、オゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm2、15cm集光型)2灯で紫外線照射(積算光量300mJ/cm2)を行い、厚さ2μmのハードコート層を形成した(このハードコート層を「アンダーコート層C」とする)。このアンダーコート層Cが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0077】
[実施例5]
厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイアホイル」、屈折率1.65)の一方の面に、実施例2と同様にアンダーコート層Aを形成した。このPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0078】
[実施例6]
実施例1と同様にして、可撓性透明基材上にITO膜が形成された積層体を作製した後、ITO膜のパターン化において、ポリイミドテープを貼る方向を変えて、TD方向にパターン化を行った。また、寸法変化率はTD方向について行った。それ以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0079】
[比較例1]
加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0080】
[比較例2]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0081】
[比較例3]
加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例2と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0082】
[比較例4]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例2と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0083】
[比較例5]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例3と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0084】
[比較例6]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例6と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
【0085】
上記各実施例および比較例の透明導電性フィルムの作製条件および評価結果を表1に示す。なお、パターンの目視評価は下記の3段階で評価した結果を示している。
○:パターン形成部とパターン開口部の判別が困難である。
△:パターン形成部とパターン開口部とをわずかに判別できる。
×:パターン形成部とパターン開口部とをはっきりと判別できる。
【0086】
【表1】
[図:0001427506000015.jpg]
【0087】
表1から明らかなように、H1-H2の絶対値が0.03%未満であると、パターン境界での段差が小さくなり、パターン境界が視認され難いことがわかる。また、実施例1、比較例1、および比較例2の対比、実施例2、比較例3、および比較例4の対比、ならびに実施例3と比較例5との対比から、基材が同一であれば、熱処理工程におけるH1-H2の絶対値が小さいほど、段差が抑制されていることがわかる。
【0088】
【表2】
[図:0001427506000016.jpg]
【0089】
また、表2から明らかなように、熱処理工程における加熱温度が100℃未満であると、H1-H2の絶対値が0.03%未満に抑制され、パターン境界での段差が小さくなり、パターン境界が視認され難いことがわかる。また、実施例1、比較例1、および比較例2の対比、実施例2、比較例3、および比較例4の対比、ならびに実施例6と比較例6との対比から、基材が同一であれば、熱処理工程における加熱温度が低いほど、段差が抑制されていることがわかる。」
※当審注 表1について、各実施例及び比較例の透明導電性フィルムの加熱処理条件の温度と時間を併せて記すと次のとおりである。なお、アンダーコート層について、Aは熱硬化型樹脂組成物による膜厚33nmの光学干渉層、BはSiOx(xは1.5以上2未満)からなる膜厚50nmの光学干渉層、Cはアクリル・ウレタン系樹脂からなる厚さ2μmのハードコート層である。)
[図:0001427506000017.jpg]
【0090】
図7は、各実施例および比較例のH1-H2に対して、パターン境界の段差をプロットしたものである。図7によれば、H1-H2の絶対値が大きくなるにしたがって段差が大きくなり、基材の厚みやアンダーコート層の種類、および透明導電体層のパターン化方向に関わらず、H1-H2の値と段差とが高い相関を示していることがわかる。したがって、H1-H2を所定範囲とすることで、段差が低減され、パターン境界が視認され難くなることがわかる。」
「【図7】
[図:0001427506000018.jpg]
」
(2) 引用文献2の技術事項
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
透明性を有する各種のプラスチックフィルムから構成される透明フィルム基材11から構成される可撓性透明基材の一方の面にパターン化されている透明導電体層を有する透明導電性フィルムについて、(【0001】、【0005】、【0021】)
一般にプラスチックフィルムは加熱時の膨張や収縮による寸法変化を生やすいのに対して、金属酸化物からなる透明導電体層は寸法変化を生じ難いため、加熱時に基材フィルムに寸法変化が生じると、可撓性透明基材と透明導電体層との界面にひずみが生じ、これがうねりを発生させる原因となるため、(【0024】)
透明導電体層をエッチング等によりパターン化した後、フィルムが加熱されると、うねりが生じやすいところ、(【0018】)
熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値を小さくする、具体的には、H1-H2が0.03%未満であるようにすることにより、(【0009】)
加熱後においても透明導電体層と可撓性透明基材の界面に生じる応力が小さく、フィルムにうねりが生じ難くすることができ、(【0013】)
透明フィルム基材はそのまま可撓性透明基材1として用いることもできるが、透明フィルム基材11の透明導電体層2形成面側に、ハードコート層、ブロッキング防止層、光学干渉層等のアンダーコート層12を設けたものであってもよく、(【0026】)
ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられるものであるが、ポリマーフィルム基材に比して寸法変化を生じ難く、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与させることもでき、(【0030】)
光学干渉層は、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制するものであって、かつ、パターン化された透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられるものであり、(【0044】、【0037】)
透明フィルム基材から最も離れた光学干渉層は、SiO2等の無機物により形成されており、(【0040】、【0041】)
光学干渉層も、上記のハードコート層と同様に可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与し得るものであり、(【0044】)
洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましいが、(【0058】)
フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H1-H2の絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合があり、熱処理工程の加熱温度は、H1-H2の絶対値が0.03%以上とならない範囲で、適宜に設定し得ること(【0059】)。
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(温度センサ用導電フィルム)
「温度センサ用導電フィルム」の発明である本願発明と「薄膜抵抗測温シート」の発明である引用発明は、「温度センサ用導電フィルム」の発明である点において一致する。
イ 構成A1及びA2の観点(導電フィルム)
(ア) 構成A1は、「樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する導電フィルムであ[ること]」である。
構成A2は、「前記可撓性基板の厚みが1mm以下[であること]」である。
(イ) 引用発明における「ベース層2」は、「厚さが約0.015mmの耐熱性の絶縁材であるポリイミド」で形成されるものである。このような「ベース層2」が可撓性を有することは明らかである。そうすると、引用発明における「ベース層2」は、本願発明における「厚みが1mm以下」の「樹脂フィルムを含む可撓性基板」に相当する。
(ウ) そして、引用発明における「抵抗膜層3」は、「厚さが0.008mmの銅箔で形成[される]」から、本願発明における「金属薄膜」に相当する。
(エ) さらに、引用発明において、「抵抗膜層3は、厚さが約0.008mmの銅箔で形成し、ベース層2の表面上に貼り付け或いは電着され[る]」ことは、本願発明における「樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する[こと]」に相当し、引用発明において、「抵抗膜層3」が「ベース層2の表面上に貼り付け或いは電着され[たもの]」は、本願発明における「導電フィルム」に相当する。
(オ) 以上をまとめると、本願発明と引用発明は、構成A1及びA2の観点について、次の点において一致する。
「樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する導電フィルムであって、
前記可撓性基板の厚みが1mm以下であ[る]」点。
ウ 構成Bの観点(下地層)
(ア) 構成Bは「前記可撓性基板は、無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接して[いる]」ことである。
(イ) これに対して、引用発明のベース層2は、抵抗薄膜層3が「表面上に貼り付け或いは電着」されたものである。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、構成Bの観点について、次の点において相違する。
本願発明においては、可撓性基板は「無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接して」いるのに対して、
引用発明においては、ベース層は下地層を備えていない点。
エ 構成Cの観点(加熱後の寸法変化率の差)
(ア) 構成Cは「導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下」であることである。
(イ) これに対して、引用発明の薄膜抵抗測温シートについては、|H2-H1|の値は不明である。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明の構成Cの観点における相違点は次のとおりである。
本願発明においては、「導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下」であるのに対して、
引用発明においては、|H2-H1|の値が不明である点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「樹脂フィルムを含む可撓性基板の第一主面上に金属薄膜を有する導電フィルムであって、
前記可撓性基板の厚みが1mm以下である、温度センサ用導電フィルム」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1(構成Cの観点における相違点)
本願発明においては、
「導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下」であるのに対して、
引用発明においては、|H2-H1|の値は不明である点。
(イ) 相違点2(構成Bの観点における相違点)
本願発明においては、可撓性基板は「無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接して[いる]」のに対して、
引用発明においては、ベース層は、下地層を備えていない点。
7 判断
(1) 相違点1について
ア(ア) 引用発明は、「積層基板のホットプレス装置や熱融着シートのシーラー等で使用される薄膜抵抗測温シートであって(【0001】)、」「プラスチックシートは、本来、高温高圧に対して、縮んだりしわになったりしやすいところ、この薄膜抵抗測温シートの抵抗膜層の薄膜のパターンを工夫することにより、上記の熱電対チップや熱電対シートのプラスチックシートの部分に発生したような縮みやしわの発生の防止を図ったもの(【0006】)」である。
(イ) 引用発明の目的を踏まえると、当業者は、「プラスチックシートは、本来、高温高圧に対して、縮んだりしわになったりしやすい」という性質に対する対策、とりわけ「薄膜のパターン」を形成した「プラスチックシート」についての前記対策に関する知見・技術情報を広く収集し、引用発明の設計変更を試みるといえる。
イ(ア) ここで、引用文献2には、次に再掲する引用文献2技術事項(前記5(2)参照)が記載されており、これは、前記ア(イ)に示した対策に関する知見・技術情報であり、引用発明の当業者にとっては、引用文献2技術事項は引用発明に密接に関連する技術であるといえる。
<引用文献2技術事項>
透明性を有する各種のプラスチックフィルムから構成される透明フィルム基材11から構成される可撓性透明基材の一方の面にパターン化されている透明導電体層を有する透明導電性フィルムについて、(【0001】、【0005】、【0021】)
一般にプラスチックフィルムは加熱時の膨張や収縮による寸法変化を生やすいのに対して、金属酸化物からなる透明導電体層は寸法変化を生じ難いため、加熱時に基材フィルムに寸法変化が生じると、可撓性透明基材と透明導電体層との界面にひずみが生じ、これがうねりを発生させる原因となるため、(【0024】)
透明導電体層をエッチング等によりパターン化した後、フィルムが加熱されると、うねりが生じやすいところ、(【0018】)
熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値を小さくする、具体的には、H1-H2が0.03%未満であるようにすることにより、(【0009】)
加熱後においても透明導電体層と可撓性透明基材の界面に生じる応力が小さく、フィルムにうねりが生じ難くすることができ、(【0013】)
透明フィルム基材はそのまま可撓性透明基材1として用いることもできるが、透明フィルム基材11の透明導電体層2形成面側に、ハードコート層、ブロッキング防止層、光学干渉層等のアンダーコート層12を設けたものであってもよく、(【0026】)
ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられるものであるが、ポリマーフィルム基材に比して寸法変化を生じ難く、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与させることもでき、(【0030】)
光学干渉層は、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制するものであって、かつ、パターン化された透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられるものであり、(【0044】、【0037】)
透明フィルム基材から最も離れた光学干渉層は、SiO2等の無機物により形成されており、(【0040】、【0041】)
光学干渉層も、上記のハードコート層と同様に可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与し得るものであり、(【0044】)
洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましいが、(【0058】)
フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H1-H2の絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合があり、熱処理工程の加熱温度は、H1-H2の絶対値が0.03%以上とならない範囲で、適宜に設定し得ること(【0059】)。
(イ) 引用文献2技術事項は、「透明性を有する各種のプラスチックフィルムから構成される透明フィルム基材11から構成される可撓性透明基材の一方の面にパターン化されている透明導電体層を有する透明導電性フィルムについて」の技術であるところ、引用文献2の【0002】を参照すると、主に「タッチパネル」が想定されているものの、「一般にプラスチックフィルムは加熱時の膨張や収縮による寸法変化を生やすいのに対して、金属酸化物からなる透明導電体層は寸法変化を生じ難いため、加熱時に基材フィルムに寸法変化が生じると、可撓性透明基材と透明導電体層との界面にひずみが生じ、これがうねりを発生させる原因となる(【0024】)」こと、及び、「透明導電体層をエッチング等によりパターン化した後、フィルムが加熱されると、うねりが生じやすい(【0018】)」との認識を経て「熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値を小さくする、具体的には、H1-H2が0.03%未満であるようにする(【0009】)」ことを解決手段としていることを踏まえると、引用文献2技術事項は、「タッチパネル」に限られず、樹脂フィルム上にパターン化された導電材料が存在しており加熱過程を経るもの一般に適用可能なことは、当業者には自明である。
(ウ) そして、引用発明において「測温部11及びリード部12以外の部分にも、抵抗膜層3の銅箔の部分を周辺部13として残しており、抵抗膜層3で、抵抗膜層3の銅箔が存在しないのは、感温抵抗部11a、電流測定用薄膜リード部12a及び電圧測定用薄膜リード部12bを形成するために、抵抗膜層3の銅箔を帯状に削除して形成した絶縁部10のみである(【0024】)」という対策を講ずる以前の問題として、そもそもプラスチックシートの部分に縮みやしわが発生しにくくなるように配慮すべきことは、当業者には自明の課題であるから、当該課題解決のために引用文献2技術事項の適用を試みることは、当業者には自明の設計変更の選択肢にすぎないといえる。
(エ)a 引用発明に引用文献2技術事項を具体的に適用するに際しては、引用発明に即して、適宜設計又はカスタマイズすることが必要となるところ、引用文献2技術事項のうち「熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率H1とパターン開口部の寸法変化率H2との差H1-H2の絶対値を小さくする、具体的には、H1-H2が0.03%未満であるようにする(【0009】)」という手段の適用に際して、「パターン形成部」及び「パターン開口部」を、それぞれ「抵抗膜層3」がある部分と「抵抗膜層3」を除去した部分とに読み替えることは、自明のことである。
b そうすると、「熱処理工程における「抵抗膜層3」がある部分の「寸法変化率H1」、及び、「熱処理工程における「抵抗膜層3」を除去した部分の寸法変化率H2」は、それぞれ本願発明における「導電フィルム」の「加熱後の寸法変化率H1」と、「導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルム」の「寸法変化率H2」に相当する。
c また、引用文献1においては、【0025】に、「150℃前後の高温、高圧の条件下で行なわれるホットプレス工程における温度測定に用いて、両者の比較耐久試験を行なった。」との記載があるから、150℃の熱処理工程に耐え得る設計が好ましいことは、当業者には自明である。さらに、熱処理工程の時間を適宜設定する必要があるところ、この値を「25分」に選択し設定することは、設計上の事項にすぎない。
d そうすると、当業者が相違点1の「導電フィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H1と、導電フィルムから前記金属薄膜を除去したフィルムの150℃25分加熱後の寸法変化率H2との差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下」である」との要件を満たすことになる。
ウ 以上のとおりであるから、引用発明において、本願発明の相違点1に係る構成を備えるようにすることには、当業者にとっては、自明の設計変更にすぎず、相違点1をもって進歩性を認めることはできない。
(2) 相違点2について
ア 引用文献2技術事項のうち、次の事項(以下「アンダーコート層に関する技術事項」という。)について検討する。
<「アンダーコート層に関する技術事項」>
「透明フィルム基材はそのまま可撓性透明基材1として用いることもできるが、図1に示すように、透明フィルム基材11の透明導電体層2形成面側に、ハードコート層、ブロッキング防止層、光学干渉層等のアンダーコート層12を設けたものであってもよく、(【0026】)
ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられるものであるが、ポリマーフィルム基材に比して寸法変化を生じ難く、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与させることもでき、(【0030】)
光学干渉層は、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制するものであって、かつ、パターン化された透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられるものであり、(【0044】、【0037】)
透明フィルム基材から最も離れた光学干渉層は、SiO2等の無機物により形成されており、(【0040】、【0041】)
光学干渉層も、上記のハードコート層と同様に可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与し得るものであり、(【0044】)
洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましいが、(【0058】)
フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H1-H2の絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合があること(【0059】)。」
イ 引用文献2技術事項のうち、アンダーコート層に関する技術事項から、樹脂フィルムに比較して加熱工程後の寸法変化が小さい層(アンダーコート層)をパターン化された導電層と樹脂フィルムの間に形成することにより、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与できること、アンダーコート層の材料は有機物でも無機物でもよいことが、理解できる。
ウ そうすると、引用発明に対して引用文献2技術事項を適用する際に、アンダーコート層として、無機物を選択して、「可撓性基板は「無機薄膜からなる下地層を備え、前記下地層が前記金属薄膜と接して[いる]」という本願発明の相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計変更にすぎない。
(3) 総合評価
前記(1)、(2)に検討のとおり、前記相違点1、2は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、前記相違点1、2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。
ア 請求人の主張その1
文献2は、原則として100℃未満で行われる加熱工程におけるパターン形成部とパターン開口部の加熱寸法変化率の差を評価するものであり、文献1,2の内容を踏まえると、100℃未満の加熱と150℃の加熱の温度差は有意なものであると認められる。
文献2における100℃未満の加熱での加熱寸法変化率の差に基づく評価が、150℃のホットプレス工程での加熱耐久性の評価に適したものであると評価するであろうとの推論は、客観性・合理性を欠いている。
また、文献2における「熱処理」は100℃未満の熱処理であり、仮に、このような低い温度の熱処理でのパターン形成部とパターン開口部の寸法変化率差の絶対値が0.03%である技術を採用できたとしても、150℃で25分加熱後の寸法変化率差の絶対値|H2-H1|が0.10%以下になるとは限らず、相違点1に関わる構成を導くことはできない。
イ 請求人の主張その2
相違点2に係る構成によって、150℃25分加熱後の寸法変化率差の絶対値|H2-H1|(および|h2-h1|)を小さくして、金属薄膜をパターニング後の温度センサフィルムのうねりを抑制するとの本願発明に関わる技術思想は、文献1~3のいずれからも導き得るものではない。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 請求人の主張その1について
(ア) 特定の技術事項を特定の発明に適用する際には、当該技術事項を当該発明に即した形で適用できるように設計変更することは、当業者が当然に行うことというべきであるから、引用発明に対して引用文献2技術事項を適用するにあたっても、必ずしも引用文献2の全ての記載に縛られる必要はなく、引用発明に適した形での設計変更は当然に行われるべきである。そして、引用文献2技術事項を引用発明に適用した際に熱処理の温度を150℃に設定することが自明であることは、前記(1)イ(エ)において検討したとおりである。
(イ) また、引用文献2の【0058】及び【0059】には、次のとおり記載されており、H1-H2の絶対値を0.03%未満としてうねりの発生を抑制できるのが100℃未満の熱処理工程に限定されないことは明らかである。
「【0058】
以下、熱処理工程の具体例について説明する。透明導電性フィルムをパターン化した後の熱処理の典型例は、パターン化に用いたエッチャントを水等の洗浄液を用いて洗浄した後に、洗浄液を乾燥するための加熱である。一般に水を主成分とする液体が洗浄液として用いられるために、洗浄液を乾燥するための加熱は100℃以上の高温で行われることが多い。一方で、透明導電体層をパターン化後の透明導電性フィルムがこのような高温での熱処理に曝されると、可撓性透明基材が寸法変化を生じ、パターン形成部とパターン開口部との寸法変化率差が大きくなる傾向がある。そのため、洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましい。乾燥時の加熱温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0059】
なお、フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H1-H2の絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合がある。このような場合において、熱処理工程の加熱温度は、H1-H2の絶対値が0.03%以上とならない範囲で、適宜に設定し得る。」
(ウ) したがって、前記請求人の主張その1は、採用できない。
イ 請求人の主張その2について
引用文献2には、前記7(2)アにおいて検討した「アンダーコート層に関する技術事項」が記載されており、当該技術事項に基づいて相違点2に係る本願発明の構成が容易に想到し得たことは、前記7(2)イ及びウにおいて検討したとおりである。
したがって、前記請求人の主張その2は、採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005279