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特許拒絶査定不服審判

2024-005235

ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するためのSCR触媒

審判番号
2024-005235
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-504248
請求日
2024年03月28日
審決日
2026年03月31日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ビーエーエスエフ モバイル エミッションズ カタリスツ エルエルシー
  • 【請求人代理人】江藤 聡明
  • 【請求人代理人】倉脇 明子
  • 【請求人代理人】山口 修
  • 【請求人代理人】稲垣 謙司
  • 【請求人代理人】長山 弘典
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 金 公彦
分類
P18 .537-WZ (B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法49条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第49条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-504248「ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するためのSCR触媒」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月30日国際公開、WO2020/020927、令和 3年11月25日国内公表、特表2021-531966〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本件拒絶査定不服審判事件に係る特願2021-504248号の出願(以下、「本願」という。)は、2019年(令和1年)7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2018年7月24日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和5年5月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月20日付けで拒絶査定がされ、令和6年3月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、令和7年6月10日付けで、当審から拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明(特許請求の範囲の記載) 本願の請求項1~15に係る発明は、令和7年12月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒であって、 (i)入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含む、フロースルー基材であって、セラミック物質を含むフロースルー基材; (ii)前記内壁と前記通路との間の界面を規定する前記基材の前記内壁の表面に適用された第1コーティングであって、前記第1コーティングが前記基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、前記第1コーティングが銅を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含み、前記第1コーティングの95~100質量%が前記銅を含む8員環の多孔性ゼオライト材料からなり、且つ、前記第1コーティングは、酸化物バインダーをさらに含む、第1コーティング; (iii)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、前記第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、前記第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む、第2コーティング を含み、 前記触媒において、前記第1コーティングは総装填量(l1)を有し、前記第2コーティングは総装填量(l2)を有し、前記第1コーティングの総装填量の前記第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲であり、 前記第1コーティングは、1~4g/in3の範囲の装填量でゼオライト材料を含み、 前記第1コーティングは、0.05~0.15g/in3の範囲の装填量で酸化物バインダーを含み、 前記第2コーティングは、0.5~4.0g/in3の範囲の装填量で第1酸化物材料を含み、 前記第2コーティングは、0.01~0.6g/in3の範囲の装填量で第2酸化物材料を含む、 選択的接触還元触媒。」 3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、サポート要件違反についての拒絶理由を含むものであり、その内容は、概略、次のとおりである。 <サポート要件違反の拒絶理由> 本件補正前の請求項1~17に係る発明は、その課題を「低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供すること」とするところ、本願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明(以下、それぞれ「本願明細書」、「本願発明の詳細な説明」といい、同特許請求の範囲、図面を「本願特許請求の範囲」、「本願図面」という。)の記載により当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該課題を解決できる範囲のものであるともいえないから、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 4 本願明細書及び本願図面の記載 本願明細書及び本願図面には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様である。)。 (1) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、Cu及びFeの1つ以上を含むゼオライト材料を含む第1コーティング、及びチタニアを含む第2コーティングを含む、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関する。本発明はさらに、当該選択的接触還元触媒を含む排気ガスを処理するシステムに、この選択的接触還元触媒の製造方法に関する。さらに、本発明は、この選択的接触還元触媒及び当該システムの使用に、及びこの選択的接触還元触媒及び当該システムの使用方法に関する。 【背景技術】 【0002】 Yisun Chengら,ディーゼルSCR触媒の耐硫黄性及びDeSOx研究,SAE International Journal Fuels and Lubricants 1(1),471~476頁,2008年(非特許文献1)は、卑金属含有ゼオライト材料、特にFe-ゼオライト及びCu含有ゼオライトを含む触媒に対する硫黄被毒の影響を開示している。硫黄の影響は、特に300℃未満の温度で、鉄含有ゼオライトよりも銅含有ゼオライトに対してより顕著であることが実証されている。 【0003】 Krishna Kamasamudramら,ディーゼル後処理システムにおけるN2Oの形成及び緩和,Cummins Inc.,SAE International Journal Engines 5(2),688~698頁,2012年(非特許文献2)は、触媒とのSCR反応中の亜酸化窒素(N2O)の形成、及び銅含有触媒及びバナジウムベース触媒などのさまざまなSCR触媒を使用したその可能な制御を研究した。 【0004】 Ashok Kumarら,ゼオライトベースのSCR触媒の触媒機能及び硫酸化挙動に及ぼす遷移金属イオン特性の影響,SAE International Journal Engines 10(4),1604~1612頁,2017年(非特許文献3)は、銅含有BEAゼオライト材料、鉄含有BEAゼオライト材料及びH型BEAゼオライト材料を開示している。これらの材料がテストされ、銅含有BEAゼオライト材料が、標準及び高速なSCR反応下でより高いN2O形成を示すことがわかった。したがって、銅含有ゼオライトだけでは、亜酸化窒素(N2O)排出を少なくすることができないことが実証されている。 【0005】 US5047378B(特許文献1)は、定置型発電市場向けの触媒を記載している。NH3-SCRに加えて、CO酸化にも重点が置かれている。当該文献は、チタニア担持のCu又はCo粒子とCu-ゼオライトとの混合物を開示している。CN105944755 A(特許文献2)は、硫酸化に対する保護を提供するための、Cu-SAPOでTiO2を沈殿させるプロセスを記載している。しかしながら、これらの文献は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するためのSCR触媒における亜酸化窒素排出及び/又は長期硫酸化を低減する方法を教示していない。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 したがって、本発明の目的は、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供することであった。驚いたことには、本発明による選択的接触還元触媒は、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成することを可能にすることが見出された。」 (2) 「【課題を解決するための手段】 【0009】 したがって、本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、 (i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材; (ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含むゼオライト材料を含み、このゼオライト材料が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、ZON、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型、好ましくはCHA、AEI、BEA、MFI、FAU、FER、RTH、 LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される骨格型を有する、第1コーティング; (iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%がチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング を含む。 ・・・ 【0011】 したがって、本発明はさらに、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒に関し、当該選択的接触還元触媒は、 (i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材; (ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング; (iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング を含む。」 (3) 「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0023】 本発明の文脈において、好ましくは、第1コーティングに含有される8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA、AEI、RTH、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有する。より好ましくは、第1コーティングに含有される8員環の多孔性ゼオライト材料は骨格型CHAを有する。より好ましくは、8員環の多孔性ゼオライト材料はゼオライトSSZ-13である。 ・・・ 【0025】 好ましくは、第1コーティングに含有されるゼオライト材料は銅を含み、CuOとして計算されるゼオライト材料中の銅の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、より好ましくは0.1~10質量%の範囲、より好ましくは1.5~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは3.0~4.0質量%の範囲、より好ましくは3.0~3.5質量%の範囲である。より好ましくは、Fe2O3として計算されるゼオライト材料に含まれる鉄の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、0~0.01質量%の範囲、より好ましくは1~0.001質量%の範囲、より好ましくは0~0.0001質量%の範囲である。 ・・・ 【0030】 本発明によれば、好ましくは、触媒において、第1コーティングは、0.5~5g/in3の範囲、より好ましくは1~4g/in3の範囲、より好ましくは1.5~2.5g/in3の範囲の装填量(loading)でゼオライト材料を含む。 【0031】 (ii)による第1コーティングは、好ましくは、酸化物バインダーをさらに含み、ここで、この酸化物バインダーが、より好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、並びにZr、Al、Ti及びSiの2つ以上を含む混合酸化物の1つ以上を含み、より好ましくはシリカ、アルミナ及びジルコニアの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはジルコニアを含む。より好ましくは、触媒において、第1コーティングは、0.05~0.15g/in3の範囲、より好ましくは0.08~0.14g/in3の範囲の装填量で酸化物バインダーを含む。 【0032】 好ましくは、第1コーティングは、装填量(lz)のゼオライト材料、及び装填量(lb)の酸化物バインダーを含み、ここで、酸化物バインダーの装填量(lb)とゼオライト材料の装填量(lz)との比、(lb):(lz)は、0.02:1~0.1:1の範囲、より好ましくは0.03:1~0.8:1の範囲、より好ましくは0.03:1~0.07:1の範囲である。 【0033】 第1コーティングの、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び上記で定義された酸化物バインダーからなる。 ・・・ 【0036】 (iii)による第2コーティングにおいて、好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する。 ・・・ 【0039】 第2コーティングの第1酸化物材料の、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、チタニア(ここで、チタニアが、より好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する)、及び任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなる。より好ましくは、第2コーティングの第1酸化物材料の99~100質量%は、80~95質量%、より好ましくは85~92質量%のチタニア、及び5~20質量%、より好ましくは8~15質量%の、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなる。 【0040】 好ましくは、触媒において、第2コーティングは、15.26~305.1g/l(0.25~5.0g/in3)の範囲、より好ましくは30.51~244.1g/l(0.5~4.0g/in3)の範囲、より好ましくは45.8~213.6g/l(0.75~3.5g/in3)の範囲、より好ましくは48.8~183.1g/l(0.8~3.0g/in3)の範囲、より好ましくは54.9~122.05g/l(0.9~2.0g/in3)の範囲の装填量で第1酸化物材料を含む。 【0041】 好ましくは、第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上、より好ましくはシリカ及びアルミナの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む。より好ましくは、第2酸化物材料は、アルミナ及びシリカ、より好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカを含み、より好ましくはアルミナ及びシリカ、より好ましくはガンマ-アルミナ及びシリカからなり、ここで、アルミナ、より好ましくはガンマ-アルミナが任意に、シリコンを含有する。あるいは、より好ましくは、第2酸化物材料は、シリカを含み、より好ましくはシリカからなる。 【0042】 好ましくは、触媒において、第2コーティングは、0.61~36.6g/l(0.01~0.6g/in3)の範囲、より好ましくは1.22~24.4g/l(0.02~0.4g/in3)の範囲、より好ましくは3.05~21.36g/l(0.05~0.35g/in3)の範囲の装填量で第2酸化物材料を含む。 【0043】 第2コーティングの、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、上記で定義された、第1酸化物材料及び第2酸化物材料からなる。 ・・・ 【0045】 第2コーティングの、好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%は、1種以上の酸化バナジウムからなる。より好ましくは、第2コーティングは酸化バナジウムを含まない。 ・・・ 【0049】 本発明の文脈において、好ましくは、触媒において、第1コーティングは総装填量(l1)を有し、第2コーティングは総装填量(l2)を有し、ここで、第1コーティングの総装填量の第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲、より好ましくは0.75:1~3:1の範囲、より好ましくは1:1~2:1の範囲である。 【0050】 フロースルー基材は、好ましくはセラミック物質又は金属物質を含み、より好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる。より好ましくは、フロースルー基材は、セラミック物質を含み、より好ましくはセラミック物質からなり、ここで、より好ましくは、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、より好ましくはコーディエライト又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル、及びチタニアの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイド及びコーディエライトの1つ以上、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはそれらからなる。あるいは、より好ましくは、フロースルー基材は、金属物質を含み、より好ましくは金属物質からなり、ここで、より好ましくは、金属物質が、酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含み、より好ましくは酸素、並びに鉄、クロム及びアルミニウムの1つ以上からなる。 ・・・ 【0098】 1.ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒、好ましくは実施態様1aに記載の選択的接触還元触媒であって、前記選択的接触還元触媒は、 (i)入口端部、出口端部、前記入口端部から前記出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材; (ii)前記内壁と前記通路との間の界面を規定する前記基材の前記内壁の表面に適用された第1コーティングであって、前記第1コーティングが前記基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、前記第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング; (iii)前記基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、前記第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、前記第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、前記第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティング を含む、選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0105】 8.前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、好ましくはCHA、AEI、RTH、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有し、より好ましくは、前記第1コーティングに含有される前記8員環の多孔性ゼオライト材料は骨格型CHAを有し、 前記8員環の多孔性ゼオライト材料は、より好ましくはゼオライトSSZ-13である、実施態様1から7のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 【0106】 9.前記第1コーティングに含有される前記ゼオライト材料は銅を含み、CuOとして計算される前記ゼオライト材料における銅の量は、前記ゼオライト材料の総質量に基づいて、好ましくは0.1~10質量%の範囲、より好ましくは1.5~5.5質量%の範囲、より好ましくは2.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは3.0~4.0質量%の範囲、より好ましくは3.0~3.5質量%の範囲である、実施態様1から8のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0114】 17.前記触媒において、前記第1コーティングは、0.5~5g/in3の範囲、好ましくは1~4g/in3の範囲、より好ましくは1.5~2.5g/in3の範囲の装填量で前記ゼオライト材料を含む、実施態様1から16のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 【0115】 18.前記第1コーティングは酸化物バインダーをさらに含み、前記酸化物バインダーは、好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、並びにZr、Al、Ti及びSiの2つ以上を含む混合酸化物の1つ以上を含み、より好ましくはシリカ、アルミナ及びジルコニアの1つ以上を含み、より好ましくはアルミナ及びジルコニアの1つ以上、より好ましくはジルコニアを含む、実施態様1から17のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 【0116】 19.前記触媒において、前記第1コーティングは、0.05~0.15g/in3の範囲、好ましくは0.08~0.14g/in3の範囲の装填量で前記酸化物バインダーを含む、実施態様18に記載の選択的接触還元触媒。 【0117】 20.前記第1コーティングの、95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び好ましくは実施態様18又は19に記載の酸化物バインダーからなる、実施態様1から19のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0120】 23.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、実施態様1から22のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0124】 27.前記第2コーティングの前記第1酸化物材料の、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、チタニア、及び任意に酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素及び酸化タングステンの1つ以上、好ましくは酸化セリウム及び酸化タングステンの1つ以上、より好ましくは酸化タングステンからなり、チタニアは、好ましくは正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有する、実施態様25又は26に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0126】 29.前記触媒において、前記第2コーティングは、15.26~305.1g/l(0.25~5.0g/in3)の範囲、より好ましくは30.51~244.1g/l(0.5~4.0g/in3)の範囲、より好ましくは45.8~213.6g/l(0.75~3.5g/in3)の範囲、より好ましくは48.8~183.1g/l(0.8~3.0g/in3)の範囲、より好ましくは54.9~122.05g/l(0.9~2.0g/in3)の範囲の装填量で前記第1酸化物材料を含む、実施態様1から28のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 【0127】 30.前記第2コーティングは、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上、好ましくはシリカ及びアルミナの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含む、実施態様1から29のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0129】 32.前記触媒において、前記第2コーティングは、0.61~36.6g/l(0.01~0.6g/in3)の範囲、より好ましくは1.22~24.4g/l(0.02~0.4g/in3)の範囲、より好ましくは3.05~21.36g/l(0.05~0.35g/in3)の範囲の装填量で前記第2酸化物材料を含む、実施態様30又は31に記載の選択的接触還元触媒。 【0130】 33.前記第2コーティングの、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%は、第1酸化物材料、及び実施態様30から32のいずれか一項に記載の第2酸化物材料からなる、実施態様1から32のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0133】 36.前記第2コーティングの、0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%は1種以上の酸化バナジウムからなり、より好ましくは、前記第2コーティングは酸化バナジウムを含まない、実施態様1から35のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 ・・・ 【0137】 40.前記触媒において、前記第1コーティングは総装填量(l1)を有し、前記第2コーティングは総装填量(l2)を有し、前記第1コーティングの総装填量の前記第2コーティングの総装填量に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲、好ましくは0.75:1~3:1の範囲、より好ましくは1:1~2:1の範囲である、実施態様1から39のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。 【0138】 41.前記フロースルー基材は、セラミック物質又は金属物質を含み、好ましくはセラミック物質又は金属物質からなる、実施態様1から40のいずれか一項に記載の選択的接触還元触媒。」 (4) 「【実施例】 【0188】 参考例1:Dv90値の決定 Sympatec HELOS装置を使用して静的光散乱法によって、粒径分布を決定し、ここで、サンプルの光学濃度が5~10%の範囲であった。 【0189】 参考例2:Cu-CHAゼオライトの製造 US 8 293 199 B2の教示に従って、Cuを含む骨格構造型CHAを有し、かつ本明細書の実施例に使用されるゼオライト材料を製造した。特に、US 8 293 199 B2,コラム15,26~52頁の実施例2を参照した。 【0190】 参考例3:DOC触媒の製造 最初に、アルミナ(デルタ及びシータ相;95m2/gのBET比表面積、0.47ml/gの総細孔容積、及び125マイクロメーターのDv90)を、アルミナ量の2質量%に相当する量の硝酸(50%溶液)と組み合わせて滴下した。硝酸の後、固形分が93質量%に達するまで蒸留水をアルミナに添加し、アルミナ混合物を形成した。 【0191】 これとは別に、蒸留水、酢酸(白金前駆体溶液の体積の4倍の量をチタニアに添加した)及び水酸化ジルコニウム(52質量%の固形分、>30m3/gのBET比表面積、及び45マイクロメーターのDv90;ZrO2として計算されたジルコニアの総質量は、か焼後の触媒の最終質量の12質量%を示す)を一緒に混合した。酢酸の添加によって、この混合物のpHを3.5に調整した。この混合物に、アルミナ混合物をジルコニアアセテート溶液(30質量%の固形分、ZrO2として計算されたジルコニアアセテートからのジルコニア総質量は、か焼後の触媒の最終質量の3質量%を示す)と一緒に添加した。酢酸を添加して、得られたスラリーのpHを3.5に調整した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、スラリーを粉砕した。 【0192】 これとは別に、蒸留水とモノエタノールアミン(MEA)の溶液(チタニアの乾燥量の0.2%)、及び16.6質量%の固形分を有する白金前駆体、すなわち、アミン安定化ヒドロキソPt(IV)錯体を混合した。この混合物に、チタニア(TiO2、アナターゼ相、110m2/gのBET比表面積及び>10nmの平均細孔径を有する)を添加して、スラリーを形成した。か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量は1g/in3に相当した。さらに、酢酸と蒸留水との1:1の混合物(白金前駆体溶液の1/5の体積)をこのスラリーに添加した。 【0193】 粉砕したアルミナ-ジルコニアのスラリーをPt-チタニアのスラリーに添加した。その後、蒸留水とスクロースとの1:1の混合物(か焼後の触媒の最終質量の0.6質量%)もスラリーに添加した。この次に、オクタノール(か焼後の触媒の最終質量の2質量%)を添加した。さらに、アルミナバインダー(80質量%の固形分、185m2/gのBET比表面積、45マイクロメーターのDv80)をか焼後の触媒の最終質量の0.1質量%の量で添加した。最後に、モノエタノールアミン(MEA)(か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量の1質量%)を再び得られたスラリーに添加し、蒸留水を添加して、41質量%の最終スラリーの固形分を得た。 【0194】 次に、以下の参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径30.48cm(12インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり300/(2.54)2セル、及び0.127ミリメートル(5ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、最終スラリーを適用した。その後、基材を、125℃の温度で15分間、165℃で30分間乾燥させ、590℃の温度で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、106.79g/l(1.75g/in3)であり、61.02g/l(1.0g/in3)のチタニア、29.47g/l(0.483g/in3)のデルタ/シータアルミナ、15.26g/l(0.25g/in3)のジルコニア、及び1.04g/l(0.017g/in3)のアルファ-アルミナを含んでいた。か焼後の触媒中の白金含有量は、10g/ft3であった。 【0195】 参考例4:一般的なコーティング方法 フロースルー基材を1つ以上のコーティングでコーティングするために、フロースルー基材を、基材の特定の長さで、所定のスラリーの一部に垂直に浸漬した。このようにして、ウォッシュコートは基材の壁に接触した。サンプルを、特定の期間、通常1~10秒間、スラリー中に放置した。真空を適用して、スラリーを基材中に引き込んだ。次に、基材をスラリーから取り出し、反転させ、基材から排出させることによって過剰なスラリーを基材から除去し、次に、より良好な分布のために圧縮空気を吹き付けた。 【0196】 実施例1:SCR触媒の製造 a)本発明による新鮮なSCR触媒の製造 第1コーティング(底部コーティング) 30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が7.02g/l(0.115g/in3)であるように、本質的に参考例2のように製造し、133.34g/l(2.185g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0197】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、140.35g/l(2.3g/in3)であり、133.34g/l(2.185g/in3)のCu-CHA、及び7.02g/l(0.115g/in3)のジルコニアを含んでいた。 【0198】 第2コーティング(トップコーティング) 水、及び0.11g/in3のか焼後の触媒中の最終的なSi含有アルミナ装填量に対応するSi含有ガンマ-アルミナ(5質量%のシリカ、180m2/gのBET比表面積、90マイクロメーターのDv90、0.63ml/gの総細孔容積を有するガンマ-Al2O3)を用いて、40質量%の固形分を有する混合物を製造し、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が12マイクロメーターになるまで粉砕した。 【0199】 これとは別に、蒸留水を、39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤と混合した。チタニア(TiO2として)の乾燥質量に基づいて3質量%として、分散剤の量を計算した。か焼後の触媒中の最終的なチタニア装填量が1.05g/in3になるように、これに、チタニア(TiO2-アナターゼ相)を添加してチタニアスラリーを形成した。次に、ガンマ-アルミナ混合物を、0.01g/in3のか焼後の触媒中の最終装填量に対応する量で、チタニアコロイド結合剤(17質量%の固形分、1のpH、35マイクロメーターのD50)と共にチタニアスラリーに添加した。 【0200】 水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを5.0に設定した。最後に、か焼後の触媒中のシリカの最終装填量が0.03g/in3であるように、コロイド状シリカバインダー(40質量%の固形分、9.25のpH、142m2/gのBET比表面積)をスラリーに添加した。蒸留水も添加して、38質量%の固形分を有する最終スラリーを得た。 【0201】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって最終スラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、73.23g/l(1.2g/in3)であり、64.69g/l(1.06g/in3)のチタニア、6.71g/l(0.11g/in3)のSi安定化ガンマ-アルミナ、及び1.83g/l(0.03g/in3)のシリカを含んでいた。 【0202】 b) a)で得られた触媒のエージング a)で得られた触媒を、空気中650℃で50時間さらにエージングした。 【0203】 比較例1:本発明によらないSCR触媒の製造 第1コーティング(底部コーティング) 30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が3.97g/l(0.065g/in3)であるように、本質的に参考例2のように製造し、75.67g/l(1.24g/in3)の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0204】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、79.63g/l(1.305g/in3)であり、75.67g/l(1.24g/in3)のCu-CHA、及び3.97g/l(0.065g/in3)のジルコニアを含んでいた。 【0205】 第2コーティング(トップコーティング) 1.52g/in3のか焼後の触媒中の最終的なFe-BEA装填量に対応するFe-BEAゼオライト(Fe2O3として計算されたFeが1.5質量%、SiO2:Al2O3モル比が40)、蒸留水、及び7のpHを有する有機分散剤を用いて、44質量%の固形分を有する混合物を製造した。固形分を44質量%に固定した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が5マイクロメーターになるまで、スラリーを粉砕した。その後、1.52g/in3のか焼後の触媒中の最終的なFe-MFI装填量に対応するFe-MFIゼオライト(Fe2O3として計算されたFeが3.5質量%、SiO2:Al2O3モル比が27.5)を、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が9.15g/l(0.15g/in3)であるように、コロイド状シリカバインダー(40質量%の固形分、9.25のpH、142m2/gのBET比表面積)と共にスラリーに添加した。か焼後の触媒中の最終的なアルミナ装填量が0.004g/in3であるように、アルファ-アルミナもこれに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が6マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0206】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって得られたスラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、195.28g/l(3.2g/in3)であり、92.76g/l(1.52g/in3)のFe-BEA、92.76g/l(1.52g/in3)のFe-MFI、0.244g/l(0.004g/in3)のアルファ-アルミナ及び9.15g/l(0.15g/in3)のシリカを含んでいた。 【0207】 比較例2:本発明によらないSCR触媒の製造 a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造 30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が0.225g/in3であるように、本質的に参考例2のように製造し、4.275g/in3の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0208】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートル(3.4ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、274.60g/l(4.5g/in3)であり、260.88g/l(4.275g/in3)のCu-CHA、及び13.73g/l(0.225g/in3)のジルコニアを含んでいた。 【0209】 b) a)で得られた触媒のエージング a)で得られた触媒を、空気中650℃で50時間エージングした。 【0210】 実施例2:実施例1及び比較例1~2のSCR触媒の使用-NOx変換/N2O形成 テストのために、平行に配置された2つの実施例1によるSCR触媒の上流に配置された参考例3に記載のように得られたDOCを含むシステム、及び平行に配置された2つの比較例1によるSCR触媒の上流に配置された参考例3に記載のように得られたDOCを含むシステム、及び2つの比較例2による触媒を使用するシステムを製造した。実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル-高温相)で、これらのシステムを評価した。排気を30分間蓄積し、高温相サイクルに基づいてSCR触媒の出口端部で30分後に変換されたNOx及び形成されたN2Oを計算するために統合した。測定条件を図1に示し、結果を図2に示す。 【0211】 図2からわかるように、実施例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は5.32g/kWhであり、N2O形成は0.053g/kWhであった。比較例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は4.94g/kWhであり、N2O形成は0.053g/kWhであった。これは、本発明のSCR触媒が、その第2コーティング(トップコーティング)にFe-ゼオライトを含む層状SCR触媒と比較して、新鮮な条件下で低いN2O生成を維持しながら、改善されたNOx変換を達成することを示している。さらに、実施例1のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.327g/kWhであり、N2O形成は0.076g/kWhであった。比較例2のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.453g/kWhであり、N2O形成は0.115g/kWhであった。これは、本発明のSCR触媒が、Cu-CHAを含むSCR触媒と比較して、良好なNOx変換を示すと同時に、低減されたN2O生成(~33.6%)を達成することを示している。 【0212】 この実施例は、本発明の触媒が、実際の条件下で低いN2O生成を維持しながら、優れたNOx変換を示すことを実証している。 【0213】 実施例3:SCR触媒の製造 a)本発明による新鮮なSCR触媒の製造 第1コーティング(底部コーティング) 30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が6.41g/l(0.105g/in3)であるように、本明細書の参考例2に従って製造し、121.74g/l(1.995g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0214】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートル(6ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、第1コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で20分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第1コーティングのウオッシュコート装填量は、128.15g/l(2.1g/in3)であり、121.74g/l(1.995g/in3)のCu-CHA、及び6.41g/l(0.105g/in3)を含んでいた。 【0215】 第2コーティング(トップコーティング) か焼後の触媒中のチタニア+タングステンの装填量が1.43g/in3であるように、チタニア(TiO2、アナターゼ相、90質量%、及び10質量%のWO3として計算されたタングステン、90m2/gのBET比表面積、8.6マイクロメーターのDv90)を、蒸留水、及び39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤と混合した。有機分散剤の量を、か焼後の触媒中のチタニア+酸化タングステンの最終装填量の5%に設定し、最終スラリーの固形分を46質量%に調整した。水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを6.3に設定した。最後に、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が0.07g/in3であるように、シリカをスラリーに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が2マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを混合した。 【0216】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって得られたスラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、91.53g/l(1.5g/in3)であり、87.26g/l(1.43g/in3)のチタニア+酸化タングステン、及び4.27g/l(0.07g/in3)のシリカを含んでいた。 【0217】 b) a)で得られた触媒のエージング a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間さらにエージングした。 【0218】 比較例3:本発明によらないSCR触媒の製造 a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造 第1コーティング(底部コーティング) 実施例3の第1コーティングのように、第1コーティングを製造した。 【0219】 第2コーティング(トップコーティング) V2O5として計算された0.0375g/in3のか焼後の触媒中の最終的なバナジア装填量に対応するバナジウムオキザラート溶液(3%のバナジウム)を蒸留水と混合し、1.392g/in3のか焼後の触媒中の最終的なタングステン-チタニア装填量に対応するチタニア(TiO2、アナターゼ相、90質量%、及び10質量%のWO3、90m2/gのBET比表面積、8.6マイクロメーターのDv90)をゆっくりと添加し、5分間混合した。その後、39質量%の活性含有量及び8のpHを有する有機分散剤を添加した。有機分散剤の量を、か焼後の触媒中の最終的なチタニア+タングステン装填量の5質量%として計算した。最終スラリーの固形分を46質量%に設定した。水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pHを5.0に設定した。最後に、か焼後の触媒中の最終的なシリカ装填量が0.07g/in3であるように、シリカをスラリーに添加した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が2マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを混合した。 【0220】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、第1コーティングの全長にわたって最終スラリーを適用して、第2コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で30分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中の第2コーティングのウオッシュコート装填量は、92.14g/l(1.51g/in3)であり、85.43g/l(1.4g/in3)のチタニア+酸化タングステン、4.27g/l(0.07g/in3)のシリカ、及び2.29g/l(0.0375g/in3)のバナジウム(V2O5として計算する)を含んでいた。 【0221】 b) a)で得られた触媒のエージング a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間さらにエージングした。 【0222】 比較例4:本発明によらないSCR触媒の製造 a)本発明によらない新鮮なSCR触媒の製造 30質量%の固形分を有するジルコニル-アセテート混合物を、か焼後の触媒中の最終的なジルコニア装填量(ZrO2として計算する)が6.41g/l(0.105g/in3)であるように、本明細書の参考例2に従って製造し、121.74g/l(1.995g/in3)のか焼後の触媒中の最終的なCu-CHA装填量に対応するCu-CHAゼオライト(CuOとして計算されたCuが3.25質量%、SiO2:Al2O3モル比が32)及び脱イオン水と混合した。次に、本明細書の参考例1に記載されているように決定された得られたDv90が10マイクロメーターになるまで、得られたスラリーを粉砕した。 【0223】 次に、参考例4に記載されているコーティング方法を使用して、コーティングしていないハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートル(6ミル)の壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって、スラリーを適用して、コーティングを得た。その後、基材を、120℃で15分間、165℃で20分間乾燥させ、次に450℃で30分間か焼した。か焼後の触媒中のウオッシュコート装填量は、128.15g/l(2.1g/in3)であり、121.74g/l(1.995g/in3)のCu-CHA、及び6.41g/l(0.105g/in3)を含んでいた。 【0224】 b) a)で得られた触媒のエージング a)で得られた触媒を、10体積%のH2O及び10体積%のO2を有する空気中で、550℃で100時間エージングした。 【0225】 実施例4:実施例3及び比較例3~4のSCR触媒の使用-NOx変換及びN2O生成 テストのために、実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル)で、実施例3及び比較例3~4のSCR触媒をそれぞれ評価した。サイクルを30回繰り返した(WHTC-第1サイクルが低温相で、その後のサイクルが高温相で)。排気を30分間蓄積し、SCR触媒の出口端部で30分後に変換されたNOx及び形成されたN2Oを計算するために統合した。高温相サイクルに基づいて、N2O生成のNOx変換に対する比をさらに計算した。測定条件を図3に示しており、結果を以下の表1~4に示している。 【0226】 【表1】 [図:0001438666000001.jpg] 【0227】 【表2】 [図:0001438666000002.jpg] 【0228】 表1及び2からわかるように、実施例3の新鮮な触媒により、実際の排気ガス条件下で、NOx変換とN2O生成との間の優れたバランスを得ることができる。特に、これは、0.022~0.030の亜酸化窒素生成のNOx変換に対する低い比によって示される。さらに、NOx変換、及び0.024g/kWhを超えないN2O生成は、30サイクル後も安定する。それと比較して、比較例4の新鮮な触媒は、サイクル後に安定性の低いNOx変換を示し、特に、新鮮な条件下で0.042~0.054g/kWhの高いN2O(これは本発明によるN2O生成の2倍である)を示す。亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約3倍高い。さらに、比較例3の新鮮な触媒は、安定なNOx変換を示すが、本発明の触媒と比較して低いNOx変換、及び新鮮な条件下で、特に本発明の触媒と比較して1.5~1.8倍高いN2O生成を示し、亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約2倍高い。これらの表は、実施例3の新鮮な触媒が、実際の排気ガス条件下で、比較例の触媒と比較して、改善された触媒性能を示すことを実証している。 【0229】 【表3】 [図:0001438666000003.jpg] 【0230】 【表4】 [図:0001438666000004.jpg] 【0231】 表3及び4からわかるように、実施例3のエージングした触媒によっても、実際の排気ガス条件下で、NOx変換とN2O生成との間の優れたバランスを得ることができる。特に、これは、0.028~0.037の亜酸化窒素生成のNOx変換に対する低い比によって示される。さらに、NOx変換、及び0.017g/kWhを超えないN2O生成は、30サイクル後も安定する。それと比較して、比較例4のエージングした触媒で得られたNOx変換はサイクル後に約14%減少し、N2O生成は本発明の触媒で得られたものよりも少なくとも2倍高い。したがって、亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約2倍高い。さらに、比較例3のエージングした触媒は、本発明の触媒よりもわずかに高い安定なNOx変換を示す。しかしながら、N2O生成は、本発明の触媒を使用する場合に測定したN2O生成より約4倍高い。亜酸化窒素生成のNOx変換に対する比は、本発明の触媒で得られた比より約3.5~3.7倍高い。これらの結果は、実施例3の触媒(新鮮及びエージングした)が、実際の排気ガス条件下で、比較例の触媒と比較して、改善された触媒性能を示すことを実証している。 【0232】 実施例4は、本発明のSCR触媒(新鮮及びエージングした)の特定の組成が、実際の排気ガス条件下で、N2O生成を低減することを可能にすると同時に、優れたNOx変換を得ることができることを実証している。これは、本発明のSCR触媒が改善された触媒性能を有し、安定であり、また硫酸化に対してより耐性があることを示している。」 (5) 「【図1】 [図:0001438666000005.jpg] 【図2】 [図:0001438666000006.jpg] 【図3】 [図:0001438666000007.jpg] 」 5 当審の判断 (1) サポート要件の判断手法について 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、また、本願明細書のサポート要件の適合については、本願出願人すなわち審判請求人が挙証責任を負うと解するのが相当である。 以下、この観点に立って検討する。 (2) 本願特許請求の範囲の記載 本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、前記2のとおりである。 (3) 本願発明の詳細な説明の記載 本願発明の詳細な説明(及び本願図面)には、前記4において摘記した記載があるところ、特に、以下の記載事項を認めることができる。 ア 「発明の技術分野」に関して ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒、当該選択的接触還元触媒を含む排気ガスを処理するシステム、当該選択的接触還元触媒の製造方法に関すること(【0001】)。 イ 「発明が解決する課題」に関して (ア) SCR触媒(選択的接触還元触媒)において、銅含有ゼオライトの硫黄被毒の影響は顕著であること(【0002】)、銅含有触媒及びバナジウムベース触媒などのさまざまなSCR触媒を使用して、SCR反応中の亜酸化窒素(N2O)形成の制御の研究がされていること(【0003】)、銅含有ゼオライトだけでは、亜酸化窒素排出を少なくすることができないこと(【0004】)、並びに、チタニア担持のCu又はCo粒子とCu-ゼオライトとの混合物のSCR触媒や、Cu-SAPOでTiO2を沈殿させるプロセスによるSCR触媒が研究されているが、亜酸化窒素排出及び/又は長期硫酸化を低減する方法を教示していないこと(【0005】)との背景技術があること。 (イ) 本発明の目的は、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供すること(【0008】)。 ウ 「課題を解決するための手段」に関して (ア) ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒は、(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含むゼオライト材料を含み、このゼオライト材料が、BEA、CHAなどの特定の骨格型、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択される骨格型を有する、第1コーティング;(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%がチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングを含む、選択的接触還元触媒であること(【0009】)。 (イ) ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒は、(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングを含む、選択的接触還元触媒であること(【0011】)。 エ 「発明を実施するための形態」に関して (ア) ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒は、(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングを含む、選択的接触還元触媒であること(【0098】)。 (イ) 前記第1コーティングは、1~4g/in3の範囲の装填量でゼオライト材料を含み(【0030】、【0114】)、好ましくは、酸化物バインダーをさらに含み(【0031】、【0115】)、0.05~0.15g/in3の範囲の装填量で酸化物バインダーを含み(【0031】、【0116】)、酸化物バインダーの装填量(lb)とゼオライト材料の装填量(lz)との比(lb):(lz)は、0.02:1~0.1:1の範囲であり(【0032】)、第1コーティングの好ましくは95~100質量%は、銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び酸化物バインダーからなること(【0033】、【0117】)。 (ウ) 第1コーティングに含有される8員環の多孔性ゼオライト材料は、CHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、それらの2種以上の混合物、及びそれらの2種以上の混合型からなる群から選択され(【0023】、【0105】)、銅を含み、CuOとして計算されるゼオライト材料中の銅の量は、ゼオライト材料の総質量に基づいて、好ましくは0.1~10質量%の範囲であること(【0025】、【0106】)。 (エ) 前記第2コーティングは、好ましくは30.51~244.1g/l(0.5~4.0g/in3)の範囲の装填量で第1酸化物材料を含み(【0040】、【0126】)、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含み(【0041】、【0127】)、0.61~36.6g/l(0.01~0.6g/in3)の範囲の装填量で第2酸化物材料を含み(【0042】、【0129】)、第2コーティングの好ましくは90~100質量%は、第1酸化物材料及び第2酸化物材料からなること(【0043】、【0130】)。 (オ) 前記第2コーティングの第1酸化物材料に含まれるチタニアは、正方晶系及び斜方晶系の1つ以上、より好ましくは正方晶系、より好ましくはルチル及びアナターゼ構造の1つ以上、より好ましくはアナターゼ構造を有し、第2コーティングの第1酸化物材料の好ましくは90~100質量%は、チタニアからなること(【0036】、【0039】、【0120】、【0124】)。 (カ) 前記第2コーティングの好ましくは0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%は、1種以上の酸化バナジウムからなり、より好ましくは、第2コーティングは酸化バナジウムを含まないこと(【0045】、【0133】)。 (キ) 第1コーティングの総装填量(l1)の第2コーティングの総装填量(l2)に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲であること(【0049】、【0137】)。 (ク) 前記フロースルー基材は、好ましくはセラミック物質を含むこと(【0050】、【0138】)。 オ 「実施例」に関して (ア) 実施例1のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が2.3g/in3であり、2.185g/in3のCu-CHA、及び0.115g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が1.2g/in3であり、1.06g/in3のチタニア、0.11g/in3のSi安定化ガンマ-アルミナ、及び0.03g/in3のシリカを含むSCR触媒であること(【0196】~【0201】)。 (イ) 比較例1のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が1.305g/in3であり、1.24g/in3のCu-CHA、及び0.065g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が3.2g/in3であり、1.52g/in3のFe-BEA、1.52g/in3のFe-MFI、0.004g/in3のアルファ-アルミナ及び0.15g/in3のシリカを含むSCR触媒であること(【0203】~【0206】)。 (ウ) 比較例2のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり600/(2.54)2セル、及び0.086ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成されたコーティングからなり、コーティングのウオッシュコート装填量が4.5g/in3であり、4.275g/in3のCu-CHA、及び0.225g/in3のジルコニアを含むSCR触媒であること(【0207】~【0208】)。 (エ) 平行に配置された2つのSCR触媒の上流に配置されたDOCを含むシステムを製造し、実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル-高温相)で評価して、実施例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は5.32g/kWh、N2O形成は0.053g/kWhであり、比較例1の新鮮な触媒で測定されたNOx変換は4.94g/kWh、N2O形成は0.053g/kWhであり、本発明のSCR触媒が、その第2コーティング(トップコーティング)にFe-ゼオライトを含む層状SCR触媒と比較して、新鮮な条件下で低いN2O生成を維持しながら、改善されたNOx変換を達成すること、さらに、実施例1のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.327g/kWh、N2O形成は0.076g/kWhであり、比較例2のエージングした触媒で測定されたNOx変換は5.453g/kWh、N2O形成は0.115g/kWhであり、本発明のSCR触媒が、Cu-CHAを含むSCR触媒と比較して、良好なNOx変換を示すと同時に、低減されたN2O生成を達成すること(【0210】~【0211】)。 (オ) 実施例3のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が2.1g/in3であり、1.995g/in3のCu-CHA、及び0.105g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が1.5g/in3であり、1.43g/in3のチタニア+酸化タングステン(90質量%TiO2、10質量%WO3)、及び0.07g/in3のシリカを含むSCR触媒であること(【0213】~【0216】)。 (カ) 比較例3のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が2.1g/in3であり、1.995g/in3のCu-CHA、及び0.105g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が1.51g/in3であり、1.4g/in3のチタニア+酸化タングステン(90質量%TiO2、10質量%WO3)、0.07g/in3のシリカ、及び0.0375g/in3のバナジウム(V2O5として計算する)を含むSCR触媒であること(【0218】~【0220】)。 (キ) 比較例4のSCR触媒が、ハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm×長さ15.24cm、平方センチメートルあたり400/(2.54)2セル、及び0.152ミリメートルの壁厚を有する円筒形の基材)の全長にわたって形成したコーティングからなり。コーティングのウオッシュコート装填量が2.1g/in3であり、1.995g/in3のCu-CHA、及び0.105g/in3のジルコニアを含むSCR触媒であること(【0222】~【0223】)。 (ク) 実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル)で、実施例3及び比較例3~4のSCR触媒をそれぞれ評価し、実施例3の新鮮な触媒及びエージングした触媒は、実際の排気ガス条件下で、NOx変換とN2O生成との間の優れたバランスを得ることができ、比較例の触媒と比較して、改善された触媒性能を有し、安定であり、また硫酸化に対してより耐性があること(【0225】~【0232】)。 (4) サポート要件充足性の判断 ア 本願発明の課題 本願発明の課題は、前記(3)イの記載事項からみて、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供することといえる。 イ 本願発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段 (ア) 本願発明の詳細な説明には、前記(3)ウに示したとおり、「課題を解決するための手段」が、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒であり、(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングを含む、選択的接触還元触媒(以下、「選択的接触還元触媒A」という。)、あるいは、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための選択的接触還元触媒であり、(i)入口端部、出口端部、入口端部から出口端部まで延びる基材軸方向長さ、及びそれを通って延びるフロースルー基材の内壁によって規定される複数の通路を含むフロースルー基材;(ii)内壁と通路との間の界面を規定する基材の内壁の表面に適用された第1コーティングであって、第1コーティングが基材軸方向長さの40~100%にわたって延び、第1コーティングが銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料を含む、第1コーティング;(iii)基材軸方向長さの20~100%にわたって延びる第2コーティングであって、第2コーティングがチタニアを含む第1酸化物材料を含み、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなる、第2コーティングを含む、選択的接触還元触媒(以下、「選択的接触還元触媒B」という。)であることが記載されている。 (イ) また、本願発明の詳細な説明には、前記(3)エに示したとおり、「発明を実施するための形態」として、前記(ア)の「選択的接触還元触媒B」が記載され(前記(3)エ(ア))、さらに、当該選択的接触還元触媒における、第1コーティングに含まれるゼオライト材料や酸化物バインダーの含有量、装填量、装填量比や、8員環の多孔性ゼオライト材料の種類(前記(3)エ(イ)、(ウ))、第2コーティングに含まれる第1酸化物材料、第2酸化物材料の種類や装填量、酸化バナジウムの含有量、第1酸化物材料に含まれるチタニアの結晶構造(前記(3)エ(エ)~(カ))、第1コーティングの総装填量と第2コーティングの総装填量の比率(前記(3)エ(キ))、並びに、フロースルー基材の材質(前記(3)エ(ク))などが記載されているから、前記(ア)の「選択的接触還元触媒B」について、第1コーティングが、1~4g/in3の範囲の装填量でゼオライト材料を含み、0.05~0.15g/in3の範囲の装填量で酸化物バインダーを含むこと、第1コーティングの95~100質量%は、銅を含む8員環の多孔性ゼオライト材料、及び酸化物バインダーからなること、第2コーティングが、0.5~4.0g/in3の範囲の装填量で第1酸化物材料を含み、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含み、0.01~0.6g/in3の範囲の装填量で第2酸化物材料を含むこと、第1コーティングの総装填量(l1)の第2コーティングの総装填量(l2)に対する比、(l1):(l2)は、0.5:1~5:1の範囲であること、並びに、フロースルー基材はセラミック物質を含むことを特定した選択的接触還元触媒(以下、「選択的接触還元触媒B’」という。)も記載されているといえる。 (ウ) 他方、本願発明の詳細な説明の「発明を実施するための形態」の前記記載は、選択的接触還元触媒に含まれる成分や、その含有量や装填量などの数値範囲を羅列しているだけであって、ディーゼルエンジンの排ガス処理における、NOx変換やN2O生成、触媒の硫黄耐性にどのように影響しているかについては何ら説明していない。 (エ) 加えて、選択的接触還元触媒の第1コーティングに含まれる銅及び鉄の1つ以上を含む8員環の多孔性ゼオライト材料が、ディーゼルエンジンの排ガス処理におけるNOx還元触媒であり、NOx変換に関与していることは、本願出願時の技術常識であるといえるものの、第2コーティングに含まれる第1酸化物材料のチタニア、第2酸化物材料に含まれる成分、及び酸化バナジウムの、NOx変換やN2O生成、触媒の硫黄耐性に対する役割が技術常識であるとの証拠はない。 (オ) 前記(ウ)、(エ)で検討したとおり、本願発明の詳細な説明の「発明を実施するための形態」には、第2コーティングに含まれる第1酸化物材料のチタニア、第2酸化物材料に含まれる成分、及び酸化バナジウムや、それらの装填量や含有量が、NOx変換やN2O生成、触媒の硫黄耐性に対してどのような影響をしているかについて説明されていないし、そのような技術常識を示す証拠がないため、「課題を解決するための手段」として記載された前記(ア)の「選択的接触還元触媒A」、「選択的接触還元触媒B」、及び「発明を実施するための形態」に記載された前記(イ)の「選択的接触還元触媒B’」は、ディーゼルエンジンの排ガス処理において、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温において、優れたNOx除去を達成することを推認することは困難であるといわざるを得ず、本願発明の課題を解決できると認識できない。 (カ) そこで、実施例に係る具体例に目を向けると、実施例1には、前記(3)オ(ア)に示したとおり、ハニカムコーディエライトモノリス基材の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が2.3g/in3であり、2.185g/in3のCu-CHA、及び0.115g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が1.2g/in3であり、1.06g/in3のチタニア、0.11g/in3のSi安定化ガンマ-アルミナ、及び0.03g/in3のシリカを含むSCR触媒が記載され、また、実施例3には、前記(3)オ(オ)に示したとおり、ハニカムコーディエライトモノリス基材の全長にわたって形成した第1コーティングと、第1コーティングの全長にわたって形成した第2コーティングからなり、第1コーティングのウオッシュコート装填量が2.1g/in3であり、1.995g/in3のCu-CHA、及び0.105g/in3のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量が1.5g/in3であり、1.43g/in3のチタニア+酸化タングステン(90質量%TiO2、10質量%WO3)、及び0.07g/in3のシリカを含むSCR触媒が記載されている。 そして、実施例2には、前記(3)オ(イ)~(エ)に示したとおり、実際の排気ガス条件下で、過渡試験サイクル条件下(WHTC-世界調和試験サイクル-高温相)で評価して、実施例1の新鮮なSCR触媒が、第2コーティングにFe-ゼオライトを含む比較例1の新鮮なSCR触媒と比較して、新鮮な条件下で低いN2O生成を維持しながら、改善されたNOx変換を達成すること、実施例1のエージングしたSCR触媒が、Cu-CHAを含むSCR触媒のみから構成され、エージングした比較例2のSCR触媒と比較して、良好なNOx変換を示すと同時に、低減されたN2O生成を達成することが記載され、また、実施例4には、前記(3)オ(カ)~(ク)に示したとおり、実施例3の新鮮なSCR触媒及びエージングしたSCR触媒は、第2コーティングにチタニアとバナジウムを含む比較例3のSCR触媒や、Cu-CHAを含むSCR触媒のみから構成される比較例4のSCR触媒と比較して、NOx変換とN2O生成との間のバランスが優れていることが記載されている。 (キ) 前記(カ)を踏まえると、実施例1及び3のSCR触媒は、比較例のSCR触媒と比較して、改善された触媒性能を有し、安定であり、また硫酸化に対してより耐性があるといえるため、実施例1及び3のSCR触媒は、当業者において、本願発明の課題を解決できると認識できる。 (ク) また、実施例1と比較例1、2との比較から、チタニアが含まれている第2コーティングを使用することで、新鮮な条件下で低いN2O生成を維持しながら、改善されたNOx変換を達成し、エージングされたときには、良好なNOx変換を示すと同時に、低減されたN2O生成を達成できること、さらに、実施例3と比較例3との比較から、チタニアが含まれている第2コーティングにバナジウムが存在すると、新鮮な条件下又はエージングされたときに、NOx変換とN2O生成との間のバランスが悪くなることが一応理解できる。 (ケ) しかしながら、前記(ウ)で検討したとおり、本願発明の詳細な説明には、第2コーティングに含まれるチタニアや酸化バナジウムの含有量、第1酸化物材料や第2酸化物材料の装填量、あるいは、第2酸化物材料に含まれる成分が、NOx変換やN2O生成、触媒の硫黄耐性に対してどの程度影響するかについて記載されていない。 そして、化学の分野では、発明の構成から発明の効果を予測することが困難であることを考慮すると、第2コーティングに含まれるチタニアや酸化バナジウムの含有量、第1酸化物材料や第2酸化物材料の装填量、あるいは、第2酸化物材料に含まれる成分が、NOx変換やN2O生成、触媒の硫黄耐性に対してどの程度影響するかを予測することも困難といわざるを得ない。 そうしてみると、前記(ク)で検討したとおり、第2コーティングに含まれるチタニアやバナジウムの役割が理解できたとしても、前記(イ)の「選択的接触還元触媒B’」のように、第2コーティングの少なくとも75質量%が、TiO2として計算されるチタニアからなり、第2コーティングの0~0.01質量%が、V2O5として計算される1種以上の酸化バナジウムからなり、第2コーティングが、0.5~4.0g/in3の範囲の装填量で第1酸化物材料を含み、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びセリアの1つ以上を含む第2酸化物材料をさらに含み、0.01~0.6g/in3の範囲の装填量で第2酸化物材料を含むといったすべての範囲において、実施例1及び3のSCR触媒と同様に、本願発明の課題を解決できると認識できることについてまで、当業者が認識することは到底できない。 ウ 本願特許請求の範囲の記載と本願発明の詳細な説明の記載との対比判断 本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、前記2に摘記したとおりであって、本願発明の「選択的接触還元触媒」は、前記イ(イ)の「選択的接触還元触媒B’」であるから、前記イ(オ)、(ケ)で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識に照らして、本願発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものといえない。 エ 請求人の主張の検討 (ア) 請求人の主張について 令和7年12月5日提出の意見書における請求人の主張は、次のとおりである(同意見書の「(5)理由2(サポート要件)について」参照。)。 「本願請求項に係る発明の課題は、新鮮時及び経時劣化時のいずれにおいても、低いN2O形成を示し、硫黄耐性がより高い一方で、低温においてさえ、優れたdeNOxを達成する選択的接触還元触媒を提供することにあり、且つその課題は達成されました(本願明細書の段落[0002]~[0005]、[0008]、[0211]、[0228]~[0231])。 これに対して、本願請求項1においては、基材、第1コーティング及び第2コーティングの構成が明確に特定されています。 本願明細書の実施例1には、SCR触媒について、ハニカムコーディエライトモノリス基材が用いられたこと、第1コーティングのウオッシュコート装填量は140.35g/l(2.3g/in3)であり、133.34g/l(2.185g/in3)のCu-CHA、及び7.02g/l(0.115g/in3)のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量は73.23g/l(1.2g/in3)であり、64.69g/l(1.06g/in3)のチタニア、6.71g/l(0.11g/in3)のSi安定化ガンマ-アルミナ、及び1.83g/l(0.03g/in3)のシリカを含んでいたことが記載されています(本願明細書の段落[0196]~[0201])。 また、本願明細書の実施例3には、SCR触媒について、ハニカムコーディエライトモノリス基材が用いられたこと、第1コーティングのウオッシュコート装填量は128.15g/l(2.1g/in3)であり、121.74g/l(1.995g/in3)のCu-CHA、及び6.41g/l(0.105g/in3)のジルコニアを含み、第2コーティングのウオッシュコート装填量は91.53g/l(1.5g/in3)であり、87.26g/l(1.43g/in3)のチタニア+酸化タングステン、及び4.27g/l(0.07g/in3)のシリカを含んでいたことが記載されています(本願明細書の段落[0213]~[0216])。 そして、本願明細書の実施例2及び4において、実施例1及び3のSCR触媒は、新鮮時及び経時劣化時のいずれにおいても、比較例1~4のSCR触媒と比べて、低いN2O生成を維持しながら、優れたNOx変換を示すことも示されています(本願明細書の段落[0210]~[0212]、[0225]~[0232])。 即ち、本願実施例1においては、第1コーティングの約95%(133.34/140.35×100%)が銅を含むCu-CHAからなり、第2コーティングの少なくとも約88質量%(73.23/64.69×100%)が、TiO2として計算されるチタニアからなり、(l1):(l2)が、1.92(140.35/73.23):1であり、第1コーティング中のゼオライト装填量が、2.185g/in3であり、第1コーティング中の酸化物バインダーの装填量が、0.115g/in3であり、第2コーティング中の第1酸化物材料の装填量が、1.06g/in3であり、第2コーティング中の第2酸化物材料が、シリカ及びアルミナであり、且つその装填量が、0.14g/in3(0.11+0.03)であることが示されています。 また、同様に実施例3においては、第1コーティングの約95%(121.74/128.15×100%)が銅を含むCu-CHAからなり、第2コーティングの少なくとも約95質量%(87.26/91.63×100%)が、TiO2として計算されるチタニアからなり、(l1):(l2)が、1.4(128.15/91.53):1であり、第1コーティング中のゼオライト装填量が、1.995g/in3であり、第1コーティング中の酸化物バインダーの装填量が、0.105g/in3であり、第2コーティング中の第1酸化物材料の装填量が、1.43g/in3であり、第2コーティング中の第2酸化物材料が、シリカであり、且つその装填量が、0.07g/in3であることが示されています。 そして、上記本願明細書の実施例1及び3に記載される事項は、本願請求項1及び13に係る発明の範囲に包含されているものと思料します。したがいまして、本願請求項1~15に係る発明は、サポート要件を満たすものと思料します。」 (イ) 主張に対する判断 前記(ア)の主張は、要するに、本願発明の課題を解決できる実施例1及び3のSCR触媒が、本願発明に包含されていることを論拠にして、本願発明がサポート要件を満たすことを主張するものである。 しかしながら、本願発明の一部である実施例1及び3のSCR触媒が本願発明の課題を解決できるとしても、前記イで検討したとおり、本願発明に含まれるすべての範囲において、本願発明の課題を解決できると認識できないから、前記(ア)の主張は採用できない。 オ 小括 以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。 6 むすび 以上のとおり、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その余の事項について検討するまでもなく、特許法第49条第4号に該当するため拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-005235

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