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特許拒絶査定不服審判

2024-004540

無線通信方法及び無線通信システム

審判番号
2024-004540
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-507985
請求日
2024年03月14日
審決日
2024年10月29日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本電信電話株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 丸山 高政
  • 審判官 上田 翔太
分類
P18 .121-Z (H04B) / P18 .575-Z (H04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-507985「無線通信方法及び無線通信システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月23日国際公開、WO2021/186699〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)3月19日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 7月20日付け 拒絶理由通知書 9月22日 意見書・手続補正書 12月12日付け 拒絶査定 令和 6年 3月14日 審判請求書・手続補正書 7月 4日 前置報告書 10月 3日 上申書 以下では、令和5年12月12日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和6年3月14日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、以下の(1)に示す請求項1の記載を以下の(2)に示すように補正すること(以下「請求項1補正事項」という。)を含む。 (1)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の令和5年9月22日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、 前記無線受信局装置が、トレーニング信号を生成し、 前記無線送信局装置が、前記無線受信局装置により生成された前記トレーニング信号に基づいて、通信路行列を推定し、 前記無線送信局装置が、推定した前記通信路行列を前記無線受信局装置に送信し、 前記無線受信局装置が、前記無線送信局装置により推定された前記通信路行列を周波数領域に変換し、変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域に変換し、各々を受信ウェイト行列と、送信ウェイト行列とし、 前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行い、 前記無線受信局装置が、前記受信ウェイト行列に基づいて、受信ビーム形成を行う、 無線通信方法。」 (2)本件補正後の請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、 前記無線受信局装置が、トレーニング信号を生成し、 前記無線送信局装置が、前記無線受信局装置により生成された前記トレーニング信号に基づいて、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定し、 前記無線送信局装置が、推定した前記通信路行列を前記無線受信局装置に送信し、 前記無線受信局装置が、前記無線送信局装置により推定された前記通信路行列を周波数領域に変換し、変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる各々の行列を、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列と、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される送信ウェイト行列とし、 前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行い、 前記無線受信局装置が、前記受信ウェイト行列に基づいて、受信ビーム形成を行う、 無線通信方法。」 2 補正の目的 請求項1補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「通信路行列」について「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される」との限定を付加し、さらに、「変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域に変換し、各々を受信ウェイト行列と、送信ウェイト行列とし、」との記載を「変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる各々の行列を、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列と、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される送信ウェイト行列とし、」と補正することによって、特異値分解によって得られる行列(ユニタリ行列と随伴行列の各々)の複素共役転置行列を時間領域に変換したものが「行列」であることを限定し、かつ、「受信ウェイト行列」及び「送信ウェイト行列」が「時間領域の行列に変換することで得られる」ことを限定し、かつ、「受信ウェイト行列」及び「送信ウェイト行列」について「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 3 補正の適否 請求項1補正事項に係る本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)の記載により特定されるものと認める。 なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Hに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A 複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、 B 前記無線受信局装置が、トレーニング信号を生成し、 C 前記無線送信局装置が、前記無線受信局装置により生成された前記トレーニング信号に基づいて、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定し、 D 前記無線送信局装置が、推定した前記通信路行列を前記無線受信局装置に送信し、 E1 前記無線受信局装置が、前記無線送信局装置により推定された前記通信路行列を周波数領域に変換し、 E2 変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる各々の行列を、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列と、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される送信ウェイト行列とし、 F 前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行い、 G 前記無線受信局装置が、前記受信ウェイト行列に基づいて、受信ビーム形成を行う、 H 無線通信方法。 (2)引用文献の記載 原査定で引用された米国特許出願公開第2019/0319677号明細書(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。 ア 「DETAILED DESCRIPTION [0010] FIG. 1 depicts a wireless communications system 100, including a plurality of wireless devices. In particular, FIG. 1 illustrates an access point 104 connected with a client device 108 via a wireless link 112. The access point 104 can be, for example, a wireless router connecting the client device 108 to a wide area network (not shown) such as the Internet. The access point 104 may also be, for example, a media server, a home computer, a mobile device, and the like. The client device 108, meanwhile, can be a mobile device such as a smartphone, a tablet computer and the like. The client device 108 may also be an access point itself, for example in implementations in which the devices 104 and 108 are components in a backhaul infrastructure. More generally, the wireless devices 104 and 108 can include any suitable combination of computing devices with wireless communication assemblies suitable for communicating with one another. The devices 104 and 108 are referred to herein as an access point and a client device simply for illustrative purposes. The access point 104 may also be referred to herein as a transmitter station or a beamformer station, while the client device 108 may also be referred to herein as a receiver station or a beamformee station.」 (当審訳: 詳細な説明 [0010] 図1は無線通信システム100を描いており、複数の無線デバイスを含んでいる。具体的には、図1は、無線リンク112を介してクライアントデバイス108と接続するアクセスポイント104を説明している。アクセスポイント104は、例えば、クライアントデバイス108をインターネットのような広域ネットワーク(図示せず)へ接続する無線ルータであり得る。アクセスポイント104は、例えば、メディアサーバ、ホームコンピュータ、モバイルデバイス等であってもよい。クライアントデバイス108は、それに対し、スマートフォン、タブレットコンピュータ等のモバイルデバイスであり得る。クライアントデバイス108は、例えば、デバイス104及び108は、バックホールインフラストラクチャの構成要素であるような実装において、アクセスポイントそれ自身であってもよい。より一般的には、無線デバイス104及び108は、お互いが通信するのに適した無線通信部品を備えるコンピュータデバイスの適切な組み合わせのいかなるものをも含み得る。デバイス104及び108は、ここにおいて、単なる例示のために、アクセスポイント及びクライアントデバイスと称される。アクセスポイント104は、ここにおいて、送信局又はビーム形成局と称されてもよく、他方、クライアントデバイス108は、ここにおいて、受信局又は被ビーム形成局と称されてもよい。) イ 「[0014] The communications assemblies 116 and 156 include respective controllers 118 and 158 in the form of one or more integrated circuits, configured to establish and maintain communications links with other devices (e.g., the link 112). The controllers 118 and 158 are configured to process outgoing data for transmission via respective antenna arrays 120 and 160 (e.g. each including a phased array of antenna elements) and to receive incoming transmissions from the arrays 120 and 160 and process the transmissions for communication to the processors 110 and 150. The controllers 118 and 158 can therefore each include a baseband processor and one or more transceivers (also referred to as radio processors), which may be implemented as distinct hardware elements or integrated on a single circuit.」 (当審訳: [0014] 通信組立体116及び156は、それぞれ対応するコントローラ118及び158を1以上の集積回路の形態で含み、他のデバイスと通信リンク(例えば、リンク112)を確立し維持するよう構成される。コントローラ118及び158は、それぞれ対応するアンテナアレイ120及び160(例えば、各々はアンテナ素子のフェイズドアレイ含む)を介して送信のために発信データを処理し、アレイ120及び160からの入来伝送信号を受信しプロセッサ110及び150と通信するために該伝送信号を処理するよう構成される。従って、コントローラ118及び158の各々は、ベースバンドプロセッサ及び1以上の送受信機(ラジオプロセッサとも称される)を含み得、それらは別個のハードウェア要素として実装されてもよく、又は、単一回路に集積されてもよい。) ウ 「[0016] Turning now to FIG. 2, a beamforming method 200 will be discussed in connection with its performance within the system 100. In particular, certain blocks of the method 200 are performed by the device 104, while other blocks of the method 200 are performed by the device 108, as indicated in FIG. 2.」 (当審訳: [0016] 次に図2を見ると、ビームフォーミング方法200は、システム100内での動作に関連して論じられるだろう。特に、図2に示されるように、方法200の特定のブロックは、デバイス104によって実行される一方、方法200の他のブロックはデバイス108によって実行される。) エ 「[0018] Having selected the beamforming feedback mode, at block 210 the access point 104 is configured to transmit beamforming data to the client device 108, as well as beamforming control data including an indicator of the selected beamforming feedback mode. The training data, as will be apparent to those skilled in the art, can include any suitable number of predefined training sequences (e.g. Golay sequences or the like) appended to any suitable data frame(s), including Null frames. The beamforming feedback mode indicator can be, for example, a single bit contained in a predetermined field or subfield of the above-mentioned frames. In other examples, the beamforming feedback mode indicator is transmitted in a separate frame, such as a frame containing a capabilities element transmitted before the above-mentioned training data.」 (当審訳: [0018] ビームフォーミングフィードバックモードが選択され、ブロック210でアクセスポイント104は、ビームフォーミングデータと、選択されたビームフォーミングモードのインジケータを含むビームフォーミング制御データとをクライアントデバイス108に送信するよう構成される。トレーニングデータは、当業者に明らかなように、空フレームを含む適切なデータフレームに付加された適切な数の所定のトレーニング系列(ゴレイ系列又は同様のもの)を含み得る。ビームフォーミングフィードバックモードインジケータは、例えば、上述のフレームの所定のフィールド又はサブフィールドに含まれる単一ビットであり得る。別の例では、ビームフォーミングフィードバックモードインジケータは、上述のトレーニングデータの前に送信される機能要素を含むフレームのような別個のフレームで送信される。) オ 「[0019] At block 215, the client device 108 is configured to receive the beamforming training data (at the antenna array 160). At block 220 the client device 108 (more specifically, the controller 158) is configured to determine whether the single-carrier beamforming feedback mode mentioned above is active. The client device 108 performs block 220 by examining the above-mentioned indicator received from the access point 104. When the determination at block 220 is negative, indicating that the OFDM beamforming mode is active, the client device 108 proceeds according to OFDM-based beamforming mechanisms, examples of which will occur to those skilled in the art. As noted above, OFDM-based beamforming is not the primary subject of this disclosure, and thus for the purposes of this disclosure the method 200 ends following a negative determination at block 220.」 (当審訳: [0019] ブロック215で、クライアントデバイス108は、ビームフォーミングトレーニングデータを(アンテナアレイ160で)受信するように構成される。ブロック220で、クライアントデバイス108(より具体的には、コントローラ158)は、上述のシングルキャリアビームフォーミングフィードバックモードがアクティブであるか否かを判断するよう構成される。クライアントデバイス108は、アクセスポイント104から受信した上述のインジケータを検査することによってブロック220を実行する。ブロック220での判断が否定的なときは、OFDMビームフォーミングモードがアクティブであることを示しており、クライアントデバイス108はOFDMベースのビームフォーミングメカニズムに従って進み、該メカニズムのいくつかの例を当業者は思い浮かべるだろう。上述のように、OFDMベースのビームフォーミングは、この開示の主題ではなく、そしてそれゆえに、この開示のために、方法200はブロック220で否定的判断の後に終了する。) カ 「[0020] When the determination at block 220 is affirmative, the method 200 proceeds to block 225. At block 225, the client device 108 is configured to generate and send, to the access point 104, feedback data comprising an uncompressed time-domain channel representation. The feedback data includes a set of polynomial digital filters; more specifically, the feedback data includes a polynomial digital filter for each pair of antenna elements of the antenna arrays 120 and 160. Thus, if the antenna array 120 includes eight elements and the antenna array 160 includes four elements, the feedback data contains thirty-two polynomial digital filters. As will now be apparent, conventional feedback data includes frequency-domain beamforming parameters in a compressed form rather than the above-mentioned uncompressed time-domain channel representation. The computational burden imposed on the client device 108 may be reduced in this way. Various techniques will occur to those skilled in the art for generating the above-mentioned uncompressed time-domain channel representation.」 (当審訳: [0020] ブロック220の判断が肯定的であるとき、方法200はブロック255に進む。ブロック255で、クライアントデバイス108は、アクセスポイント104に対して非圧縮の時間領域チャネル表現を含むフィードバックデータを生成し送信する。フィードバックデータは、多項式デジタルフィルタの集合を含んでおり、より具体的には、フィードバックデータは、アンテナアレイ120及び160の各アンテナ素子対に対する多項式デジタルフィルタを含む。従って、アンテナアレイ120が8素子を含み、アンテナアレイ160が4素子を含むならば、フィードバックデータは、32個の多項式デジタルフィルタを含む。今や明らかなように、従来のフィードバックデータは、上述の非圧縮時間領域チャネル表現ではなく、周波数領域のビームフォーミングパラメータを圧縮形式で含む。クライアントデバイス108における演算負荷は、この方法により削減されるかもしれない。上述の非圧縮時間領域チャネル表現を生成するために、様々な手法を当業者は思い浮かべるだろう。) キ 「[0021] At block 230, the access point 104 receives the beamforming feedback information generated at block 225 by the client device 108. The access point 104 is further configured to convert the uncompressed time-domain channel representation to the frequency domain, for example by applying a fast Fourier transform (FFT) or a discrete Fourier transform (DFT). The access point 104 therefore obtains a frequency domain channel representation in the form of a matrix H, as follows: [図:0001419127000001.jpg] [0022] In the equation above, k is a frequency bin, which will range from zero to n-1, where n is the length of the discrete Fourier transform.」 (当審訳: [0021] ブロック230で、アクセスポイント104は、ブロック225でクライアントデバイス108により生成されたビームフォーミングフィードバック情報を受信する。アクセスポイント104は、さらに、例えば、高速フーリエ変換(FFT)又は離散フーリエ変換(DFT)を適用することにより、非圧縮時間領域チャネル表現を周波数領域に変換するように構成されている。アクセスポイント104は、その結果、以下に示す行列Hの形で周波数領域チャネル表現を得る: [図:0001419127000002.jpg] [0022] 前記数式において、kは周波数ビンであり、0からn-1の範囲をとり、ここで、nは離散フーリエ変換の長さである。) ク 「[0023] At block 235, the access point 104 is configured to generate beamforming parameters in the frequency domain, for example by computing the singular value decomposition (SVD) of the frequency-domain channel representation. As will be apparent to those skilled in the art, the SVD computation at the access points 104 yields the following: [図:0001419127000003.jpg] 」 (当審訳: [0023] ブロック235で、アクセスポイント104は、例えば、周波数領域チャネル表現の特異値分解(SVD)を計算することによって、周波数領域でビームフォーミングパラメータを生成するように構成される。当業者に明らかなように、アクセスポイント104でのSVD計算は、以下を与える: [図:0001419127000004.jpg] ) ケ 「[0024] The matrix V corresponds to the frequency-domain beamforming parameters. At block 240, the access point 104 converts the frequency-domain beamforming parameters to the time domain, for example by applying an inverse FFT. The time-domain beamforming parameters may be expressed as follows, in which “I” is the frequency bin index: [図:0001419127000005.jpg] 」 (当審注:上記の「I」は「l」の誤記と認める。) (当審訳: [0024] 行列Vは、周波数領域ビームフォーミングパラメータに相当する。ブロック240で、アクセスポイント104は、例えば逆FFTを適用することによって、周波数領域ビームフォーミングパラメータを時間領域に変換する。時間領域ビームフォーミングパラメータは、以下のように表現され、ここで、lは周波数ビンのインデックスである: [図:0001419127000006.jpg] ) コ 「[0025] At block 245, the access point 104 applies the time-domain beamforming parameters to subsequent transmissions to the client device 108. For example, the access point 104 can be configured to determine a steering matrix (e.g. a set of complex weights, each corresponding to one of the elements of the antenna array 120) from the time-domain beamforming parameters. The weights of the steering matrix can then be applied to the antenna array 120 for subsequent transmissions to the client device 108.」 (当審訳: [0025] ブロック245で、アクセスポイント104は、その後のクライアントデバイス108への送信に時間領域ビームフォーミングパラメータを適用する。例えば、アクセスポイント104は、時間領域ビームフォーミングパラメータからステアリング行列(例、複素重みの集合であり、各々はアンテナアレイ120の素子の1つに相当する)を決定するように構成され得る。そして、ステアリング行列の重みは、クライアントデバイス108へのその後の送信のためにアンテナアレイ120に適用され得る。) サ FIG.1 [図:0001419127000007.jpg] [0018]等の記載から、FIG.1の104はアクセスポイント104のことであり、FIG.1の108はクライアントデバイス108のことであると解される。 よって、FIG.1によれば、アクセスポイント104はアンテナアレイ120を備え、クライアントデバイス108はアンテナアレイ160を備えると解される。 シ FIG.2 [図:0001419127000008.jpg] FIG.2のブロック210におけるtraining dataは、[0018]のtraining dataのことであると解され、FIG.2のブロック215におけるbeam training dataは[0019]のbeam training dataのことであると解される。そして、クライアントデバイス108で受信されるbeam training dataには、少なくとも、アクセスポイント104が送信するtraining dataが含まれていると解される。 よって、FIG.2、[0018]及び[0019]によれば、アクセスポイント104はトレーニングデータを送信し、クライアントデバイス108はトレーニングデータを受信すると解される。 (3)引用文献の記載の解釈及び引用発明の認定 引用発明を認定するに先立ち、必要となる技術常識を以下のアに示し、以下のイにおいて前記技術常識に照らして引用文献の記載を解釈し、以下のウにおいて引用発明を認定する。 ア 技術常識 離散フーリエ変換は、理工学の広い分野で基礎的に用いられる技術であり、通信分野においても一般的なものである。 離散フーリエ変換及びその逆変換(逆離散フーリエ変換)について、以下は技術常識である。 (ア)離散フーリエ変換、逆離散フーリエ変換 時間領域における周期Tの関数f(t)の1周期について、時刻0、Δt、2Δt、…、(n-1)Δtにおけるn個のサンプルを、x(s)で表す。すなわち、x(s)=f(sΔt)であるとする(sは0~n-1の整数)。 このとき、各x(s)は、周波数領域における級数として、次式(以下「IDFT式」という。)で表される(逆離散フーリエ変換)。 [図:0001419127000009.jpg] IDFT式におけるn個の係数X(k)は、次式(以下「DFT式」という。)で与えられる(離散フーリエ変換)。 [図:0001419127000010.jpg] (イ)離散フーリエ変換における時間シフト 時間領域のサンプルx(s)と、周波数領域の係数X(k)との間には、以下の関係がある(逆も成立する)。 [図:0001419127000011.jpg] 換言すれば、以下のa及びbのとおりである。 a x(s)の離散フーリエ変換をX(k)で表すと、x(s-s0)の離散フーリエ変換は、 [図:0001419127000012.jpg] となる。 b X(k)の逆離散フーリエ変換をx(s)で表すと、 [図:0001419127000013.jpg] の逆離散フーリエ変換は、x(s-s0)となる。 (ウ)チャネル表現と送受信信号 h(s)を通信チャネル特性の時間領域表現(すなわちインパルス応答)とし、H(k)を該チャネル特性の周波数領域表現(すなわち周波数応答)とする。このとき、h(s)を離散フーリエ変換したものがH(k)となり、H(k)を逆離散フーリエ変換したものがh(s)となる。 同様に、送信信号の時間領域表現をx(s)とし、その周波数領域表現をX(k)とする。 なお、s及びkは、0~n-1の整数であるとする。 このとき、送信信号X(k)が周波数応答H(k)のチャネルにより伝送されて受信信号Y(k)となる場合、次式が成立する。 [図:0001419127000014.jpg] また、送信信号x(s)が前記チャネルにより伝送されて受信信号y(s)となる場合、次式が成立する。 [図:0001419127000015.jpg] ここで、二項演算子*は畳み込み和を表し、畳み込み和は次式により表される。 [図:0001419127000016.jpg] イ 引用文献の記載の解釈 引用文献の記載と前記アに示した技術常識によれば、以下の(ア)~(ソ)において解釈して示した事項は、引用文献に開示されているに等しい。 (ア)引用文献の[0021]及び[0022]によれば、[0021]に示される数式(以下「[0021]式」という。)は、非圧縮時間領域チャネル表現を離散フーリエ変換して得られた周波数領域チャネル表現であり、kは周波数ビンを表し、nは離散フーリエ変換の長さ(=周波数ビンの総数)であるとされている。前記ア(ウ)に示した技術常識に鑑みれば、[0021]式に示される周波数領域チャネル表現Hkは、周波数ビンkにおけるチャネルの周波数応答であり、非圧縮時間領域チャネル表現はチャネルのインパルス応答であると解される。 (イ)[0021]式の行列は2行2列の行列であるから、送信側、受信側共にアンテナ素子が2つあり、送信側の各アンテナ素子と受信側の各アンテナ素子との間に存在する2×2=4つのチャネルの周波数ビンkにおける周波数応答を表し、該行列の各要素におけるhの添え字(左上は00、右上は01、左下は10、右下は11)は、左側の数字が受信側のアンテナ素子の番号を表し、右側が送信側のアンテナ素子の番号を表すと解される。 すなわち、aを受信側のアンテナ素子の番号とし、bを送信側のアンテナ素子の番号とした場合、行列Hkの要素である次式 [図:0001419127000017.jpg] は、受信側のアンテナ素子aと送信側のアンテナ素子bとの間のチャネル(以下「チャネルab」と表す。)の周波数ビンkにおける周波数応答を表すと解される。 上式は、前記ア(イ)bにおいてX(k)=hab、s0=-1としたものであるから、habの逆離散フーリエ変換をhab(s)で表すと、 [図:0001419127000018.jpg] の逆離散フーリエ変換は、hab(s+1)となる。 (ウ)前記(イ)に示した式hab(s+1)は、時間領域でsに1を加えることにより、sよりも1つ未来へとシフトするものと解される。 しかしながら、チャネルの時間領域表現において未来へシフトすることは、未来の結果を現在に反映することを意味し、因果律を破ることになるので、不合理である。 そもそも、因果律を満たす時間シフトは、過去へのシフトに限られるから、前記ア(イ)においてs0≧0でなくてはならない。s0≧0の場合、前記ア(イ)の [図:0001419127000019.jpg] のeの右肩の符号は正にはなり得ない。 したがって、前記(イ)に示した行列の要素の右側は、jの左にマイナス符号が抜け落ちていると解さざるを得ない。すなわち、前記(イ)に示した行列の要素の右側は、次式の誤記であると解さざるを得ない。 [図:0001419127000020.jpg] (エ)前記(イ)に示した行列Hkの要素の式の左側であるhabは、表現上、kを含んでいないため、周波数ビンkに依存しない数値であると解する余地がある。 しかしながら、チャネルの周波数応答特性が周波数に依存しないとは考えら難いから、habは周波数依存性がないと解釈するのは不自然であり、habとの記載は、kの記載を省略したか、又は、kを書き忘れたと解するのが妥当である。 上記を踏まえ、habが周波数ビンkに依存することを明示するために、以下ではhabに代えてHab(k)と表現する。(なお、この表現においても、Hab(k)が全てのkに対して同一の値をとる関数とした場合には、周波数依存性を持たないhabを表現できるため、仮にhabが周波数依存性がないものであったとしても、Hab(k)と表現することには矛盾はない。) (オ)前記(ウ)及び(エ)によれば、[0021]式は、次式(以下「正[0021]式」という。)のように表現されるべきものと解される。 [図:0001419127000021.jpg] すなわち、チャネルabの周波数ビンkにおける周波数応答は、次式(以下「1式」という。)で与えられると解される。 [図:0001419127000022.jpg] (カ)k=0~n-1(kは整数)のHab(k)(1式左側)に対して、逆離散フーリエ変換を適用したものを、以下ではhab(s)で表す(sは0~n-1の整数)。念のために付言すると、hab(s)は時間領域の表現であり、周波数領域の表現である[0021]式のhabとは別物である。 1式で表されるチャネルabの周波数応答は、1式右側によれば、前記ア(イ)におけるs0=1の時間シフトを持つので、時間領域に変換すると(逆離散フーリエ変換すると)、hab(s-1)として表現される。 すなわち、引用文献の周波数領域チャネル表現である行列Hkの時間領域チャネル表現は、次式の行列hsとして表現され得る(sは0~n-1の整数であり、hab(-1)=hab(n-1)である。)。ただし、次式のhab(s-1)の各々は複素数のスカラー量であって、多項式ではないので、次式のhab(s-1)は、引用文献にいう「多項式デジタルフィルタ」([0020])とは表現の形式が異なる。 [図:0001419127000023.jpg] (キ)引用文献の記載によれば、アクセスポイント104はアンテナアレイ120を備え、クライアントデバイス108はアンテナアレイ160を備えており(FIG.1)、アンテナアレイ120が8つのアンテナ素子を含み、アンテナアレイ160が4つのアンテナ素子を含む([0020])ことを例示している。すなわち、アクセスポイント104は、8つのアンテナ素子を含み、クライアントデバイス108は、4つのアンテナ素子を含むことが例示されている。 そして、アクセスポイント104は送信局と称され、クライアントデバイス108は受信局と称される([0010])から、引用文献には、送信側が8つのアンテナ素子を含み、受信側が4つのアンテナ素子を含むことが例示されている。 (ク)前記(オ)に示したHk及び前記(カ)に示したhsは、2×2行列であり、送信側受信側共に2つずつのアンテナ素子を含む例であるが、前記(キ)に示した例のように、送信側に8つのアンテナ素子を含み、受信側に4つのアンテナ素子を含む場合には、Hk及びhsが次式(以下「2式」という。)のようになることは、明らかである。 [図:0001419127000024.jpg] (ケ)送信側のアンテナ素子b(bは0~7の整数)から送信される送信信号をxb(s)で表すと、2式のhs及び前記ア(ウ)によれば、送信信号xb(s)がチャネルabを通って受信側のアンテナ素子a(aは0~3の整数)に到達したとき、この到達した信号yab(s)は、次式(以下「3式」という。)で表される。 [図:0001419127000025.jpg] (コ)3式の入出力関係(xb(s)とyab(s)との関係)は、技術常識であるz変換により、次式(以下「4式」という。)と同値であることが明らかである。 [図:0001419127000026.jpg] なお、4式におけるxb[z]及びyab[z]は、それぞれxb(s)及びyab(s)(sは、0~n-1の整数)をz変換したものを表す。 (サ)4式によれば、チャネルabの伝達関数hab[z]が次式(以下「5式」という。)で表されることは、明らかである。 [図:0001419127000027.jpg] 5式の伝達関数は、送信アンテナb及び受信アンテナaのアンテナ対間のチャネルabの伝達関数を、遅延作用素z-1の多項式(n次式)によって時間領域で表現したものであり、デジタルフィルタの一種であるFIRフィルタにより実装できることが技術常識から明らかである。すなわち、この表現は、引用文献の「アンテナアレイ120及び160の各アンテナ素子対に対する多項式デジタルフィルタ」([0020])に合致するから、hab[z](aは0~3の整数、bは0~7の整数)は、引用文献にいう「非圧縮時間領域チャネル表現」であると解される。 (シ)引用文献には、周波数応答であるHkをUkSkVkHに特異値分解する旨が記載されている([0023])。 特異値分解は技術常識となっている行列演算であり、Hkが2式に示した4行8列の行列の場合、Ukは4行4列のユニタリ行列となり、VkHは8行8列のユニタリ行列Vkの随伴行列となり、Skは4行8列の対角行列となることは、明らかである。 (ス)引用文献の[0024]の記載によれば、VkHの複素共役転置行列である8行8列のユニタリ行列Vkは、周波数領域ビームフォーミングパラメータの行列であると解され、[0024]の式(以下「[0024]式」という。)中のVxy(l)は、Vkの要素であると解され、Vkは次式(以下「6式」という。)で表されると解される。なお、6式では[0024]式の周波数ビンのインデックスlをkに置き換えている。 [図:0001419127000028.jpg] (セ)引用文献の[0024]の記載によれば、周波数領域ビームフォーミングパラメータVxy(k)(x、yは0~7の整数、kは0~n-1の整数)は、時間領域ビームフォーミングパラメータvxy(s)(sは0~n-1の整数)に変換されると解される。 すなわち、前記ア(ア)によれば、次式(以下「7式」という。)が成立する。 [図:0001419127000029.jpg] なお、引用文献[0024]式では、eの右上のjの左にマイナス符号が付されているが、前記ア(ア)によれば逆離散フーリエ変換を行うと7式のとおりとなるので、[0024]式のjの左に付されたマイナス記号は誤記であり、該マイナス記号が付されない7式が正しいと解される。 なお、時間領域ビームフォーミングパラメータvxy(s)が次式の行列vsを成すことは明らかである。 [図:0001419127000030.jpg] (ソ)前記(2)の記載及び前記(ア)~(セ)によれば、引用文献から、以下が理解できる。 理解1 引用文献には、送信側である8つのアンテナ素子を含むアクセスポイント104と、受信側である4つのアンテナ素子を含むクライアントデバイス108とによって実行されるビームフォーミング方法200([0016]、前記(キ))が開示されている。 以下、アクセスポイント104のアンテナ素子の番号をb(bは0~7の整数)で表し、クライアントデバイス108のアンテナ素子の番号をa(aは0~3の整数)で表す。 理解2 引用文献には、クライアントデバイス108がアクセスポイント104に対して非圧縮時間領域チャネル表現を含むフィードバックデータを生成し送信し、フィードバックデータは、アクセスポイント104のアンテナ素子b及びクライアントデバイス108のアンテナ素子aからなるアンテナ素子対の各々に対する多項式デジタルフィルタを含む非圧縮時間領域チャネル表現を含むことが開示されている。 多項式デジタルフィルタ表現は、5式(次式として再掲)のとおり表現され、 [図:0001419127000031.jpg] 非圧縮時間領域チャネル表現は、次式(以下「8式」という。)のとおり表現される。 [図:0001419127000032.jpg] 理解3 5式を参照すれば、非圧縮時間領域チャネル表現がhab(s-1)を含むことは明らかである。そして、hab(s-1)を離散フーリエ変換することにより1式が得られる(前記(カ))。 すなわち、アクセスポイント104は、8式の非圧縮時間領域チャネル表現を含むビームフォーミングフィードバック情報に離散フーリエ変換を適用することにより、非圧縮時間領域チャネル表現を周波数領域に変換し、その結果、2式に示す周波数ビンkについての周波数領域チャネル表現Hk(kは0~n-1の整数)を得る([0021])。 [図:0001419127000033.jpg] 理解4 アクセスポイント104は、周波数領域チャネル表現Hkの特異値分解を計算することによって、Hk=UkSkVkHとして([0023])、4行4列のユニタリ行列Uk、8行8列のユニタリ行列Vkの随伴行列VkH及び4行8列の対角行列Skを求める(前記(シ))。 理解5 随伴行列VkHの複素共役転置行列Vkは、ビームフォーミングパラメータの行列であり、6式(次式として再掲)で示される(前記(ス))。 [図:0001419127000034.jpg] 理解6 アクセスポイント104は、周波数領域ビームフォーミングパラメータVkを時間領域に変換し、時間領域ビームフォーミングパラメータとする([0024])。 時間領域ビームフォーミングパラメータは、行列Vkのx行y列の要素をVxy(k)としたとき(x、yは0~7の整数)、7式(次式として再掲)で示され、 [図:0001419127000035.jpg] vxy(s)は次式の時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vsを成す(前記(セ))。 [図:0001419127000036.jpg] ウ 引用発明の認定 前記(2)の記載及び前記イ(ソ)に示した理解1~6によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が開示されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~hに分説し、「構成a」のようにして参照する。 a 送信側である8つのアンテナ素子を含むアクセスポイント104と、受信側である4つのアンテナ素子を含むクライアントデバイス108とによって実行されるビームフォーミング方法200であって、アクセスポイント104のアンテナ素子の番号をb(bは0~7の整数)で表し、クライアントデバイス108のアンテナ素子の番号をa(aは0~3の整数)で表し、(理解1) b アクセスポイント104はトレーニングデータを送信し、クライアントデバイス108はトレーニングデータを受信し、(FIG.2) c クライアントデバイス108は、シングルキャリアビームフォーミングフィードバックモードがアクティブであるか否かを判断し、該判断が肯定的であるとき、クライアントデバイス108がアクセスポイント104に対して非圧縮時間領域チャネル表現を含むフィードバックデータを生成し送信し、([0019]、[0020]、理解2) c1 フィードバックデータは、アクセスポイント104のアンテナ素子b及びクライアントデバイス108のアンテナ素子aからなるアンテナ素子対の各々に対する多項式デジタルフィルタhab[z]を含む次式の非圧縮時間領域チャネル表現を含み、(理解2) [図:0001419127000037.jpg] c2 非圧縮時間領域チャネル表現は、次式に示され、(理解2) [図:0001419127000038.jpg] d アクセスポイント104は、非圧縮時間領域チャネル表現を含むビームフォーミングフィードバック情報に離散フーリエ変換を適用することにより、非圧縮時間領域チャネル表現を周波数領域に変換し、その結果、次式に示す周波数ビンkについての周波数領域チャネル表現Hk(kは0~n-1の整数)を得、(理解3) [図:0001419127000039.jpg] e アクセスポイント104は、周波数領域チャネル表現Hkの特異値分解を計算することによって、Hk=UkSkVkHとして、4行4列のユニタリ行列Uk、8行8列のユニタリ行列Vkの随伴行列VkH及び4行8列の対角行列Skを求め、(理解4) e1 随伴行列VkHの複素共役転置行列Vkは、ビームフォーミングパラメータの行列であり、次式で示され、(理解5) [図:0001419127000040.jpg] f アクセスポイント104は、周波数領域ビームフォーミングパラメータVkを時間領域に変換し、時間領域ビームフォーミングパラメータとし、(理解6) f1 時間領域ビームフォーミングパラメータvxy(s)は、行列Vkのx行y列の要素をVxy(k)としたとき、次式で示され、(理解6) [図:0001419127000041.jpg] f2 vxy(s)は次式の時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vsを成し、(理解6) [図:0001419127000042.jpg] g アクセスポイント104は、その後のクライアントデバイス108への送信に時間領域ビームフォーミングパラメータを適用し、時間領域ビームフォーミングパラメータからステアリング行列を決定し、ステアリング行列の重みは、クライアントデバイス108へのその後の送信のためにアンテナアレイ120に適用される、([0025]) h ビームフォーミング方法200。 (4)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 発明特定事項A及びHについて 発明特定事項Aは「複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、」というものであり、発明特定事項Hは「無線通信方法。」というものである。 引用発明の「アクセスポイント104」は、「送信側」であり、引用発明の「クライアントデバイス108」は、「受信側」であり、「アクセスポイント104」が備える「アンテナ素子」及び「クライアントデバイス108」が備える「アンテナ素子」は、いずれもアンテナに他ならず、「アクセスポイント104」の「アンテナ素子」は8つあるから(構成a)、引用発明の「アクセスポイント104」及び「クライアントデバイス108」は、それぞれ本件補正発明の「複数のアンテナを有する無線送信局装置」及び「アンテナを有する無線受信局装置」に相当する。 引用発明は、「アクセスポイント104」が「クライアントデバイス108への送信に時間領域ビームフォーミングパラメータを適用」する(構成g)「ビームフォーミング方法200」(構成h)であり、アンテナ間での通信、すなわち、無線通信を行うものと解されるから、「アクセスポイント104」及び「クライアントデバイス108」を少なくとも含むシステムにおける無線通信方法であるといえ、本件補正発明の「無線通信システムにおける無線通信方法」に相当する。 引用発明は、「シングルキャリアビームフォーミングフィードバックモードがアクティブであるか否かを判断し、該判断が肯定的であるとき」(構成c)に実行される方法であるから、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信方法であると認められる。 以上を総合すると、本件補正発明と引用発明とは、「複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であ」る点で一致する。 イ 発明特定事項Bについて 発明特定事項Bは「前記無線受信局装置が、トレーニング信号を生成し、」というものである。 引用発明では「アクセスポイント104はトレーニングデータを送信し」(構成b)、引用発明の「トレーニングデータ」は、本件補正発明の「トレーニング信号」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、「トレーニング信号を生成」する点で共通するものの、「トレーニング信号を生成」する主体が、本件補正発明では「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明では「アクセスポイント104」である点で相違する。 ウ 発明特定事項Cについて 発明特定事項Cは、「前記無線送信局装置が、前記無線受信局装置により生成された前記トレーニング信号に基づいて、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定し、」というものである。 引用発明では「クライアントデバイス108がアクセスポイント104に対して非圧縮時間領域チャネル表現を含むフィードバックデータを生成」(構成c)する。ここで、「非圧縮時間領域チャネル表現」は「アクセスポイント104のアンテナ素子b及びクライアントデバイス108のアンテナ素子aからなるアンテナ素子対の各々に対する多項式デジタルフィルタhab[z]を含む」もの(構成c1)であり、 [図:0001419127000043.jpg] で表現される(構成c1)ところ、hab[z]は、チャネルすなわち通信路の伝達関数であり、本件補正発明の「伝達関数」に相当する。 そして、引用発明の「非圧縮時間領域チャネル表現」は、次式で表される(構成c2) [図:0001419127000044.jpg] から、行列の各要素が通信路の伝達関数であり、本件補正発明の「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列」に相当する。 引用文献において、hab[z]及び「非圧縮時間領域チャネル表現」と、「トレーニングデータ」との関係は明示されていないものの、「非圧縮時間領域チャネル表現」は「フィードバックデータ」に含まれ(構成c)、該「フィードバックデータ」は、「クライアントデバイス108」による「トレーニングデータ」の受信(構成b)に対するフィードバックであると解され、技術常識によれば、伝達関数は受信したトレーニングデータに基づいて推定されるものであるから、引用発明における「非圧縮時間領域チャネル表現」は、「トレーニングデータ」に基づいて推定されたものであると解される。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「生成された前記トレーニング信号に基づいて、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定」する点で共通するものの、「通信路行列を推定」する主体が、本件補正発明では「無線送信局装置」であるのに対し、引用発明では「クライアントデバイス108」である点で相違する。(なお、「トレーニング信号」を生成する主体については、前記イと同様である。) エ 発明特定事項Dについて 発明特定事項Dは「前記無線送信局装置が、推定した前記通信路行列を前記無線受信局装置に送信し、」というものである。 引用発明では、「クライアントデバイス108」が「アクセスポイント104に対して」「非圧縮時間領域チャネル表現を含むフィードバックデータを」「送信」する(構成c)から、前記ウも考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「推定した前記通信路行列を」「送信」する点で共通するものの、「通信路行列を」「送信」する主体及び送信される客体が、本件補正発明ではそれぞれ「無線送信局装置」及び「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明ではそれぞれ「クライアントデバイス108」及び「アクセスポイント104」である点で相違する。 オ 発明特定事項E1について 発明特定事項E1は「前記無線受信局装置が、前記無線送信局装置により推定された前記通信路行列を周波数領域に変換し、」というものである。 引用発明では、「アクセスポイント104は、非圧縮時間領域チャネル表現を含むビームフォーミングフィードバック情報に離散フーリエ変換を適用することにより、非圧縮時間領域チャネル表現を周波数領域に変換」する(構成d)から、本件補正発明と引用発明とは「前記通信路行列を周波数領域に変換」する点で共通するものの、「変換」する主体が、本件補正発明では「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明では「アクセスポイント104」である点で相違する。(なお、「通信路行列」を推定する主体については、前記ウと同様である。) カ 発明特定事項E2について 発明特定事項E2は「変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列の各々の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる各々の行列を、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列と、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される送信ウェイト行列とし、」というものである。 (ア)引用発明では、「アクセスポイント104は、周波数領域チャネル表現Hkの特異値分解を計算することによって、Hk=UkSkVkHとして、4行4列のユニタリ行列Uk、8行8列のユニタリ行列Vkの随伴行列VkH及び4行8列の対角行列Skを求め」(構成e)ており、Hkは、周波数ビンkについての周波数領域チャネル表現である(構成d)から、Hkを特異値分解した結果であるUkSkVkHも周波数ビンkについてのものであり、ひいては、Ukも、Skも、VkHも、周波数ビンkについてのものである。 引用発明の「ユニタリ行列Uk」及び「随伴行列VkH」は、それぞれ本件補正発明の「ユニタリ行列」及び「随伴行列」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、「変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られるユニタリ行列と随伴行列」を備える点で一致する。 (イ)引用発明の「随伴行列VkHの複素共役転置行列Vk」(構成e1)は、本件補正発明の「随伴行列」の「複素共役転置行列」に相当する。 引用発明では、「アクセスポイント104は、周波数領域ビームフォーミングパラメータVkを時間領域に変換し、時間領域ビームフォーミングパラメータとし」ており(構成f)、得られた「時間領域ビームフォーミングパラメータvxy(s)」は「時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vsを成」す(構成f2)から、引用発明の「周波数領域ビームフォーミングパラメータVk」すなわち「随伴行列VkHの複素共役転置行列Vk」は、時間領域に変換することにより、「時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vs」となる。よって、引用発明の「行列vs」は、本件補正発明の「随伴行列」の「複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる」「行列」に相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「随伴行列」の「複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる」「行列」を備える点で共通する。 (ウ)引用発明では、「ステアリング行列の重みは、クライアントデバイス108へのその後の送信のためにアンテナアレイ120に適用される」(構成g)から、「ステアリング行列」は、送信の「重み」を表現しており、本件補正発明の「送信ウェイト行列」に相当する。 また、引用発明では、「時間領域ビームフォーミングパラメータからステアリング行列を決定し」ている(構成g)から、「時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vs」を、何らかの手法で「ステアリング行列」としていると解される。 よって、本件補正発明と引用発明とは、前記(イ)の「行列」を、「行列によって表される送信ウェイト行列と」する点で共通する。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られる」「随伴行列」「の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる」「行列を、」「行列によって表される送信ウェイト行列と」する点で共通するものの、 本件補正発明の「送信ウェイト行列」は「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列」で表されるのに対し、引用発明の「ステアリング行列」は、伝達関数行列であるか否かが不明である点、及び、 本件補正発明は、「ユニタリ行列」の「複素共役転置行列」を時間領域の行列に変換することで得られる行列を「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列」としているのに対し、引用発明は、「4行4列のユニタリ行列Uk」の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することはしておらず、受信ウェイト行列に相当する構成を備えない点で相違する。 キ 発明特定事項Fについて 発明特定事項Fは「前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行い、」というものである。 引用発明では、「アクセスポイント104」が「ステアリング行列の重み」を「クライアントデバイス108へのその後の送信のために」適用する(構成g)から、「アクセスポイント104」が「ステアリング行列」に基づいて送信ビーム形成を行っていると解される。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行」う点で一致する。 ク 発明特定事項Gについて 本件補正発明は、「前記無線受信局装置が、前記受信ウェイト行列に基づいて、受信ビーム形成を行う」(発明特定事項G)のに対し、前記カ(エ)に示したとおり、引用発明は「4行4列のユニタリ行列Uk」の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することはしていないから、発明特定事項Gに対応する構成を備えていない点で相違する。 ケ 一致点及び相違点 前記ア~クによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「複数のアンテナを有する無線送信局装置と、アンテナを有する無線受信局装置とを備え、シングルキャリアによって無線信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、 トレーニング信号を生成し、 生成された前記トレーニング信号に基づいて、行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定し、 推定した前記通信路行列を送信し、 前記通信路行列を周波数領域に変換し、変換した周波数領域の通信路行列に対して、周波数ごとに特異値分解を行うことにより得られる随伴行列の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することで得られる行列を、行列によって表される送信ウェイト行列とし、 前記無線送信局装置が、前記送信ウェイト行列に基づいて、送信ビーム形成を行う、 無線通信方法。」である点。 〈相違点1〉 本件補正発明は、トレーニング信号を生成する主体が「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明は、それが「アクセスポイント104」である点。(発明特定事項B) それに伴い、本件補正発明は、通信路行列を推定する主体が「無線送信局装置」であるのに対し、引用発明は、それが「クライアントデバイス108」である点。(発明特定事項C) 〈相違点2〉 本件補正発明では、通信路行列を送信する主体及び客体がそれぞれ「無線送信局装置」及び「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明は、それらがそれぞれ「クライアントデバイス108」及び「アクセスポイント104」である点。(発明特定事項D) それに伴い、本件補正発明は、通信路行列を周波数領域に変換する主体が「無線受信局装置」であるのに対し、引用発明は、それが「アクセスポイント104」である点。(発明特定事項E1) 〈相違点3〉 本件補正発明の「送信ウェイト行列」は「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列」で表されるのに対し、引用発明の「ステアリング行列」は、伝達関数行列であるか否かが不明である点。(発明特定事項E2) 〈相違点4〉 本件補正発明は、「ユニタリ行列」の「複素共役転置行列」を時間領域の行列に変換することで得られる行列を「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列」としているのに対し、引用発明は、「4行4列のユニタリ行列Uk」の複素共役転置行列を時間領域の行列に変換することはしておらず、受信ウェイト行列に相当する構成を備えない点。(発明特定事項E2) これに伴い、本件補正発明は、「前記無線受信局装置が、前記受信ウェイト行列に基づいて、受信ビーム形成を行う」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。(発明特定事項G) (5)相違点1及び2についての判断 相違点1及び2は、引用発明において「トレーニングデータ」の生成、「非圧縮時間領域チャネル表現」の推定、及び、「非圧縮時間領域チャネル表現」を周波数領域への変換の各々を、「アクセスポイント104」で行うか、「クライアントデバイス108」で行うかの違いであり、そのどちらで行うかは設計的事項に過ぎない。以下に詳述する。 ア 情報を伝送するに先立ち、通信にあずかる装置の一方から既知のトレーニング信号を送信し、他方の装置で受信されたトレーニング信号と既知のトレーニング信号とを用いて、伝送路のインパルス応答ないし伝達関数を推定することは、文献を挙げるまでもない周知技術であり、その際、トレーニング信号を送信する側を、情報を送信する側とするものも、情報を受信する側とするものも、共に文献を挙げるまでもない周知技術である。 その際、伝送路のインパルス応答ないし伝達関数を推定するのは、受信したトレーニング信号を観測する側、すなわち、トレーニング信号の受信側とするのが当然である。 したがって、引用発明において、「トレーニングデータ」を送信する側を「アクセスポイント104」から「クライアントデバイス108」に代え、それに伴い、「非圧縮時間領域チャネル表現」を推定する側を「クライアントデバイス108」から「アクセスポイント104」に代えることは、周知技術に基づいて適宜設計すべき事項に過ぎず、この点に格別の困難性は存在しない。 イ また、通信路のインパルス応答ないし伝達関数を、情報の通信にあずかる送信側及び受信側の両側で共有するために、通信路のインパルス応答ないし伝達関数を推定した側から他方へ伝送することも、文献を挙げるまでもない周知技術である。 そうすると、前記アのように、「非圧縮時間領域チャネル表現」の推定を「アクセスポイント104」で行うように構成した場合は、「アクセスポイント104」で得られた「非圧縮時間領域チャネル表現」を「アクセスポイント104」が送信し、それを「クライアントデバイス108」で受信することで共有をはかることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 ウ そして、前記イのように、通信路のインパルス応答ないし伝達関数を、送信側及び受信側の双方で共有しているならば、通信路のインパルス応答ないし伝達関数を、必要に応じて双方で周波数領域に変換するよう構成することで、引用発明の「クライアントデバイス108」において周波数変換を行う構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別のこととは認められない。 エ 前記ア~ウによれば、相違点1に係る構成は設計的事項に過ぎず、相違点2に係る構成は、相違点1に係る設計に伴って当業者が適宜なし得たことであるから、これらは全体として、周知技術に基づく設計的事項に過ぎない。 (6)相違点3についての判断 引用発明の「時間領域ビームフォーミングパラメータの行列vs」は、構成f2のとおり、 [図:0001419127000045.jpg] で表される。 行列vsの各々の要素は、ビームフォーミングの技術常識によれば、送信データ系列dy(s)(yは0~7の整数)を、送信側アンテナ素子x(xは0~7の整数)にて送信する際にdy(s)に畳み込みされるものであると解されるから、各々のvxy(s)が、前記(3)イ(サ)と同様にz変換により伝達関数として表現できることは明らかである。 vxy(s)(sは0~n-1の整数)をz変換したものをvxy[z]で表すと、vxy[z]は次式(以下「9式」という。)のように表されることが明らかである。 [図:0001419127000046.jpg] 9式のvxy[z]を、送信データ系列dy(s)のz変換に乗ずることにより、送信側アンテナ素子xが送信する信号をz変換したものとなることは明らかであるから、vxy(s)をz変換したvxy[z]は、構成gでいう「ステアリング行列」として機能することが明らかである。 そうすると、引用発明の「ステアリング行列」の各要素を、9式で示されるような伝達関数の行列とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (7)相違点4についての判断 時間領域の通信路行列に対して特異値分解を行うことで、左側のユニタリ行列、中央の対角行列及び右側のユニタリ行列の随伴行列とし、右側のユニタリ行列の随伴行列の複素共役転置行列(つまり右側のユニタリ行列)から送信ウェイトを算出し、左側のユニタリ行列の複素共役転置行列から受信ウェイトを算出して適用することは、周知技術である(例えば、原査定で引用された特開2012-209742号公報【0028】~【0031】、同じく特開2005-65242号公報【0089】、【0090】を参照)。 したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、4行4列のユニタリ行列Ukの複素共役転置行列を時間領域の行列に変換した行列から算出した受信ウェイト行列に基づいて受信ビーム形成を行うよう構成することは、当業者が容易になし得ることである。 (8)効果についての判断 本件補正発明の効果は、その構成から自明なものであり、格別のものとは認められない。 (9)請求人の主張についての判断 請求人は、審判請求書にて、概して以下を主張する。 引用発明1では、ウェイト行列等がスカラー行列で表現されているため、仮に引用文献2及び3の技術を引用発明1に組み合わせたとしても本願発明1とはなり得ない。 引用発明1のように、一般的には、ウェイトはスカラーで表現されるが、本願発明1では、FIRフィルタへの適用を前提としている。これに対して、引用発明1では、FIRフィルタへの適用を前提としておらず、本願発明1のように行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される通信路行列を推定しないため、結果として行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される受信ウェイト行列及び送信ウェイト行列を取得することはできない。そのため、引用発明1では、FIRフィルタへの適用は困難である。 請求人の上記主張について検討する。 前記(6)に示したとおり、引用発明の「ステアリング行列」は、スカラー行列ではなく、z-1の多項式で表現される。 そして、z-1の多項式がFIRフィルタとして実装できることは、技術常識である。 なお、本件補正発明は、「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列」と特定しているに過ぎず、これをもってFIRフィルタへの適用を前提としていると断定することはできない。 よって、請求人の主張1は採用できない。 (10)小括 以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)の記載により特定されるものと認める。 第4 原査定の概要 原査定の概要は、以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の文献1に記載された発明並びに文献2及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 文献1.米国特許出願公開第2019/0319677号明細書 文献2.特開2012-209742号公報 文献3.特開2005-65242号公報 第5 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献に対応)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に示したとおりである。 第6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「通信路行列」について「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される」との限定を削除し、特異値分解によって得られる行列の複素共役転置行列を時間領域に変換したものが「行列」であるとの限定を削除し、かつ、「受信ウェイト行列」及び「送信ウェイト行列」が「時間領域の行列に変換することで得られる」との限定を削除し、かつ、「受信ウェイト行列」及び「送信ウェイト行列」について「行列の要素が伝達関数である伝達関数行列によって表される」との限定を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004540

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