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特許拒絶査定不服審判

2018-006791

合わせガラス

審判番号
2018-006791
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-571951外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年05月18日
審決日
2019年02月19日
公報発行日
2019年05月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C03C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法49条1項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-571951「合わせガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日国際公開、WO2016/121559〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)1月18日(優先権主張 平成27年1月26日、平成28年1月14日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月26日に手続補正書が提出され、同年11月10日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月18日に審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願に係る発明は、平成29年12月26日付けの手続補正により補正されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「一端から対向する他端に至るにしたがって厚さが変化し、かつ水平方向に筋目が形成されている第1のガラス板と、 筋目が形成されている第2のガラス板と、 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に位置し、板厚方向視で前記第1のガラス板の筋目と前記第2のガラス板の筋目が直交するように、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを接着する中間膜と、を備え、 前記第1のガラス板は、フロートガラス板であって、フロート法による成形時に溶融金属に接触していたボトム面と、前記ボトム面とは反対側のトップ面とを有し、 前記第1のガラス板の前記ボトム面が、前記中間膜との接触面であることを特徴とする合わせガラス。」(以下、「本願発明」という。) 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 「この出願については、平成29年11月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」 というものであり、その理由1は、 「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 というものであり、その備考の欄の記載から、上記理由1は、下記の「引用文献1」に記載された発明を主引用発明とする拒絶の理由であることが認められる。 そして、原査定の備考の欄に、 「●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1~12 ・引用文献等 1~5、8~9 … <引用文献等一覧> 1.特開平7-175007号公報 2.米国特許第3700542号明細書(周知技術を示す文献) 3.特開2000-119048号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2002-97041号公報(周知技術を示す文献) 5.特表2002-516201号公報(周知技術を示す文献) 8.特表2002-542086号公報(新たに引用された文献:周知技術を示す文献) 9.特開2006-13505号公報(新たに引用された文献:周知技術を示す文献)」との記載がある。 第4 当審の判断 当審は、原査定の上記理由のとおり、本願発明は、特開平7-175007号公報(以下、原査定と同様に、「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。 1 引用文献1及び周知技術を示す文献とその記載事項 (1)引用文献1 引用文献1は、「ヘッドアップディスプレイ装置」を発明の名称とする、本願の最先の優先日よりも前に頒布されたことが明らかな特許文献である。 引用文献1には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1の剛性の層と、 第2の剛性の層と、 ディスプレイ発生源から投影され、透明体の外面で反射される像が前記ディスプレイ発生源から投影され前記透明体の反対側の主要外面で反射された像上に概ね重ねられるように透明体の両側の主要外面が非平行で、かつ相互に対して方向づけられるように前記第1の層を前記第2の層に固定する手段とを含むことを特徴とする積層透明体。 【請求項2】 内側と外側の両側の主要面を有する第1の層と、 内側と外側の両側の主要面を有する第2の層と、 ディスプレイ発生源から投影され、前記第1の層の前記外面で反射された像が前記ディスプレイ発生源から投影され、前記第2の層の前記外側の主要面で反射された像の上に概ね重ねられるように前記層の前記の外側の主要面が相互に対して非平行で、かつ相互に対して方向づけられるように前記第1の層の前記内側の主要面を前記第2の層の前記内側の主要面に固定する手段とを含むことを特徴とする積層透明体。 … 【請求項7】 前記層の少なくとも一方の厚さにテーパがついていることを特徴とする請求項2の積層透明体。 【請求項8】 前記層がガラスで、前記固定手段が熱可塑性材のシートであることを特徴とする請求項7の積層透明体。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はヘッドアップディスプレイ装置用コンバイナに関し、特に、ヘッドアップディスプレイ装置用コンバイナとして機能し、かつ二重像を排除するためくさび状形態を有する自動車の風防に関する。」 「【0019】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、ディスプレイ装置のコンバイナとして積層風防が用いられた場合発生する二重像の量を低減するヘッドアップディスプレイ装置用風防を提供する。前記風防は風防組立体上へ、あるいはその中へいずれの付加的要素をも組み入れる必要ない、ヘッドアップディスプレイ装置用コンバイナとして機能する。本発明の風防は、該風防の両側の主要外面が平行でなく、相互に対して収束していることによってディスプレイ源から投影され、風防の第1の主要面から反射した像が、風防の反対側の主要面で反射したディスプレイ源からの同じ像と概ね重ねられるよう構成されている。」 「【0030】 …特に図4を参照すれば、ガラス層232および234の一方あるいは双方にテーパを設けることにより組立体230が積層されると、非延伸中間層236を用いて一体構造体を形成し、風防230の両面238,240は非平行で、かつ二重形像を排除するよう相互に対して収束させられる。…」 (2)周知技術を示す文献 (a)米国特許第3700542号明細書(原査定の「引用文献2」である。以下「周知例a」という。)なお、周知例aは、英語表記であるため、当該引用箇所を和訳にて示す。 周知例aは「安全風防及びその製造」を発明の名称とする特許文献である。 周知例aには、以下の記載があることが認められる。 (a1)「1.第1のガラス層と、第2のガラス層と、それらの間の樹脂中間層材料の層とを含み、前記第1及び第2の層内に歪み線を有し、前記第1の層のガラス内の歪み線は、前記第2の層のガラス内の歪み線に対して最小で約70°の角で配向されている積層ガラス風防。 2.前記第1の層内の前記歪み線は、前記第2のガラス層内の歪み線に対して実質的に垂直に配向されている、請求項1の積層ガラス風防。 … 13.前記ガラス層の両方が湾曲され、フロートガラスである、請求項2の積層ガラス風防。」(6欄36行から70行) (a2)「フロートガラス又は板ガラスから安全風防を製造する際に、シートの少なくとも1枚はガラスカットWSWから作られる。好ましくは、ブランクカットWLWはブランクカットWSWと対にされ、通常プラスチック中間層が設けられる。この技術は、品質又は歩留まりを改善し、極薄のフロートガラス又は板ガラスから風防を作るのに特に有用である。このようにして製造された風防は、第2のガラスシート内の歪み線に対してある角度で配向された、第1のガラスシート内の歪み線を有する。」(1欄12~20行) (a3)「板ガラス又はフロートのリボンから風防ブランクを切り出すのに、「WLW」と「WSW」の2つの異なった方法がある。風防ブランクは一般的に横長形である。WLWは横長形の長辺がリボンの長手方向となる。WSWは横長形の長辺がリボンの幅方向となる。本発明前、市販の積層風防は、両方を同じように切り出した1対のガラスプライ、WLW又はWSWからなっていた。…略…。しかし、両方がWSWである1対のガラス層からなる積層風防は、「クロスカー歪み」として知られる欠点を有しているため、商業的には不適当であった。「クロスカー歪み」は、そのガラスの品質が例外的に、歪みや引っ張り線を実質的に見えないようにしない限り、当業者がWSWを積層風防に組み入れるのを妨げる要因である。」(2欄27~44行) (a4)「図1において、フロートガラス又は板ガラスリボン2が示されており、その長さは矢印4方向に平行に延びている。6で示されているのはリボン2からの風防ブランクカットWSWである。ブランク8及び10はリボン2から切り出されるWLWである。ブランク6,8,10上には、フロートガラス又は板ガラスにほぼ常に存在する歪みの線に対応する、通常はほとんど見えない、表示線12である。」(3欄14~21行) (a5)「実施例3 2枚のフロートガラス、又は、2枚の板ガラス、又は、1枚のフロートガラスと1枚の板ガラスを可塑化したポリビニルブチラールの中間層の両面に積層して、以下のガラス-プラスチック積層体のセットを調製した。…略…。試験された特定の積層体は、互いに平行に配向されたガラスシートの延伸線を有し、他のものは互いに垂直に配向されたガラスシートの延伸線を有していた。 積層体試料を、水平に対して異なる角度で異なる斜面に取り付け、以下に説明する光学的検査試験を用いて検査した。試験した試料が光学的検査試験に合格した最小許容角は以下の表に列挙する。 ガラスのタイプ      配向         最小許容角(度) 全フロートガラス 平行(WLW)    33.8 垂直         23.0 全板ガラス    平行(WLW)    37.3 垂直         26.2 フロート-板ガラス    平行(WLW)    36.0 垂直         29.5 上記の結果から明らかなように、歪み線が互いに垂直に配向されたガラスシートで構成された積層ガラス-プラスチックは、フロートガラス又は所与の品質の板ガラスを、歪み線が互いに平行に配向されたガラスシートで構成された積層ガラス-プラスチックよりも鋭角の設置角で光学的要件を満たすことができる。」(5欄37~75行) (b)特表2002-516201号公報(原査定の「引用文献5」である。以下「周知例b」という)。 周知例bには、以下の記載がある。 (b1)「【0002】 合わせ安全ガラスは今日、主としてフロートガラスから作製される。例えば、自動車のフロントガラスは熱による自重たわみまたは加熱後のプレス成型のいずれかにより湾曲された2枚のフロートガラスから作製される。湾曲されたガラス片は、可塑化されたポリビニルブチラール(PVB)中間層によって貼り合わされる。」 (b2)「【0010】 接着性試験 積層体の接着性、即ちガラスに対するPVB中間層の接着性は、図1のジグ10、12を使用して圧縮せん断強さ(CSS)を用いて測定する。接着性測定用積層体は、積層する前に先ず、ポリビニルブチラール中間層を相対湿度23±3%の環境内で一夜の間23℃±2℃でコンディショニングすることにより調製する。次いで、図1を参照して、脱塩水で洗浄し、すすいでおいた寸法12インチ×12インチ(305mm×305mm)および公称厚さ2.3mmの焼きなました2枚のフロートガラス片16および20の間に中間層18を挟み込む。各PVB中間層から2つの積層体、すなわち、両面にガラス片のスズ側がある中間層を有する積層体(ATTA)、および両面がガラス片の空気側と接触する中間層を有する積層体(TAAT)が作製される。」 (b3)「【0027】 (比較実施例C5) この実施例におけるポリビニルブチラール中間層は、ギ酸マグネシウムの形態でのマグネシウムを唯一の接着性制御添加剤として使用したことを除いて、比較実施例C3における中間層と同一の方法で作製した。マグネシウム濃度は4.2meq/kgであった。他のレベリング剤は全く使用しなかった。接着性および曇りの結果を表1に示す。ATTA方向の接着性がTAAT方向の接着性よりも高かった…。」 (c)特表2002-542086号公報(原査定の「引用文献8」である。以下「周知例c」という)。 周知例cには、以下の記載がある。 (c1)「【0011】 本発明の積層板は、耐久性、衝撃抵抗性、靱性、およびガラスによる切断に対する抵抗性に優れている。本発明の積層板は、特に、ハリケーンや暴風にさらされた建物における建築上の適用に有用であり、ある者が乗り物に押し入ることによる繰り返される攻撃を受け得る自動車およびトラック用のサイドウインドとしても有用である。中間層を介してフレームに付着した本発明の積層板は、そのような圧力または攻撃後もフレームから剥がれない。本発明の積層板はさらに、曇り度(haze)が低く、透明性に優れている…。」 (c2)「【0018】 積層板のガラス表面を非常に大きな力が加えられる方向に選択的に方向付けること(orienting)により、さらに改善することができる。積層グレージング構造に用いるガラスは、溶融ガラスを液体スズ浴の表面上に流し込んで周知および慣用のフロートガラス法により製造することができる。このようにして製造されたガラス表面は、一般に、スズ側および空気側を有すると言う。スズ側が熱可塑性ポリマー中間層に結合するようにガラス層を方向付けることにより、応力または衝撃の際のガラスの粉砕およびガラスの剥離を減少することができる。」 2 引用文献1に記載された発明 引用文献1の特許請求の範囲の請求項1、2、7、8の記載及び【0030】の記載からみて、引用文献1には、請求項8を独立形式で書き改めて表記したものに概ね相当する、以下の「積層透明体」の発明が記載されているということができる。 「内側と外側の両側の主要面を有する第1の層と、 内側と外側の両側の主要面を有する第2の層と、 ディスプレイ発生源から投影され、前記第1の層の前記外面で反射された像が前記ディスプレイ発生源から投影され、前記第2の層の前記外側の主要面で反射された像の上に概ね重ねられるように前記両層の前記の外側の主要面が相互に対して非平行で、かつ相互に対して方向づけられるように前記第1の層の前記内側の主要面を前記第2の層の前記内側の主要面に固定する手段とを含む積層透明体であって、 前記両層の一方あるいは双方の厚さにテーパがついており、 前記両層がガラスで、前記固定手段が熱可塑性材のシートである積層透明体。」 (以下、「引用発明」という。) 3 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における第1の層の方の厚さにテーパがついているとして、引用発明における「内側と外側の両側の主要面を有する第1の層」のガラスは、本願発明における「一端から対向する他端に至るにしたがって厚さが変化」する「第1のガラス板」に相当し、引用発明における、他のガラスである、「内側と外側の両側の主要面を有する第2の層」は、本願発明における、「第2のガラス板」に相当する。 そして、引用発明における、「ディスプレイ発生源から投影され、前記第1の層の前記外面で反射された像が前記ディスプレイ発生源から投影され、前記第2の層の前記外側の主要面で反射された像の上に概ね重ねられるように前記両層の前記の外側の主要面が相互に対して非平行で、かつ相互に対して方向づけられるように前記第1の層の前記内側の主要面を前記第2の層の前記内側の主要面に固定する手段」であって、「熱可塑性材のシートである」固定する手段は、本願発明における、「前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを接着する中間膜」に相当する。 そして、引用発明の「積層透明体」は、本願発明の「合わせガラス」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「一端から対向する他端に至るにしたがって厚さが変化する第1のガラス板と、 第2のガラス板と、 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に位置し前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを接着する中間膜と、を備える合わせガラス。」 の点において一致し、以下の点A,Bにおいて相違する。 A 本願発明は、第1のガラス板が「水平方向に筋目が形成されている」ものであり、第2のガラス板が「筋目が形成されている」ものであり、中間膜が「板厚方向視で前記第1のガラス板の筋目と前記第2のガラス板の筋目が直交するよう」に接着するものであるのに対して、引用発明の第1、2のガラス層の筋目の有無、接着時の両者の筋目の関係は不明である点(以下、「相違点A」という。) B 本願発明は、「第1のガラス板が、フロートガラス板であって、フロート法による成形時に溶融金属に接触していたボトム面と、前記ボトム面とは反対側のトップ面とを有し、前記第1のガラス板の前記ボトム面が、前記中間膜との接触面である」のに対し、 引用発明は、フロートガラス板とは明示されておらず、両ガラスの内側の主要面同士が、向き合って熱可塑性材のシートで固定されている点(以下、「相違点B」という。) 4 相違点についての判断 (1)相違点Aについて まず、引用発明の「積層透明体」は、具体的には、「自動車の風防」(【0001】)に用いる合わせガラスである。そして「自動車の風防」に用いる合わせガラスを構成するガラス板の成形方法として、フロート法は代表的な方法の一つであり(周知例a及び周知例b(b1)等を参照)、フロート法によって成形されたフロートガラスには、ガラス素地の流れ方向に沿う歪み線(本願発明における「筋目」。以下、「筋目」という。)が発生すること(周知例a(a4)等を参照)、及び、溶融金属に接触していた面と反対側の面とに性状において差異があること(周知例b、c等を参照)は、本願優先日前に当業者に周知のことであると認められる。 そうすると、引用発明の「自動車の風防」に用いる合わせガラスを構成する第1,2のガラス層としても、フロートガラス、即ち、筋目が形成されているものが用いられることは一般的であるということができる。 次に、「自動車の風防」の合わせガラスのガラスをフロートガラスとし、第1,2のガラスの筋目を同じ上下方向に配向するとき「クロスカー歪み」として知られる欠点を有することが知られ(周知例a(a3)参照)、同じ左右方向に配向するときより、筋目を互いに垂直に配向したとき、すなわち、「板厚方向視で前記第1のガラス板の筋目と前記第2のガラス板の筋目が直交するよう」にしたときの方が、「鋭角の設置角で光学的要件を満たすことができる」ことが知られている(周知例a(a5)参照)。 ここで、引用発明は、「自動車の風防」であって、特に「ディスプレイ装置のコンバイナとして積層風防が用いられた場合発生する二重像の量を低減するヘッドアップディスプレイ装置用風防」(【0019】)に用いるものであるから、より良好な光学特性が求められるものであると認められる。 そうすると、引用発明において、第1,2のガラス層として、一般的なフロートガラスが用いられている場合に、より良好な光学特性が得られるように「板厚方向視で前記第1のガラス層の筋目と前記第2のガラス層の筋目が直交するよう」に接着とすることは、当業者が上記周知技術に基づき容易になし得たことといえる。 (2)相違点Bについて 引用発明は「自動車の風防」に用いる合わせガラスであって、構成するガラスをフロートガラスとすることが一般的であるから、上記(1)のとおり、フロートガラスには溶融金属に接触していた面(以下、「ボトム面」という。)と反対側の面(以下「トップ面」という。)があり、引用発明の第1,2のガラス層は、それぞれボトム面、トップ面を有するものであるということができる。 ここで、両者には性状に差異があることが知られており、合わせガラスの第1,2のガラスをフロートガラスとするとき、両ガラスを中間膜に接着する態様には、両ガラスのトップ面同士、ボトム面同士、及び、一方がトップ面、他方がボトム面、という3つの態様が考えられる。引用発明の第1,2のガラス層を熱可塑性材シート(中間膜)に接着するとき、上記3つの態様のうち何れの態様とするかは、風防用途に要求される特性に対応して、当業者が適宜選択すべき事項であるといえるが、例えば、要求される特性が強度であるときは、周知例b(b3)、c(c2)等の教示から、「スズ側」すなわち、ボトム面同士をそれぞれの内側の主要面として中間膜に接着する等、「第1のガラス板の前記ボトム面が、前記中間膜との接触面」となるようにすることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。 なお、本願明細書【0028】【0029】に記載されている相違点Bに係る本願発明の効果については、実施例等による具体的な裏付けもなく、相違点Bに係る容易想到性についての判断を左右するものではない。 5 まとめ そうすると、本願発明は、その出願前頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第1項第2号に該当し、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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