特許拒絶査定不服審判
2022-020247
空気調和機
- 審判番号
- 2022-020247
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-068193
- 請求日
- 2022年12月13日
- 審決日
- 2023年10月16日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社富士通ゼネラル
- 【請求人代理人】弁理士法人ドライト国際特許事務所
- 【請求人代理人】弁理士法人落合特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 水野 治彦
- 分類
- P18 .113-WZ (F24F) / P18 .121-WZ (F24F) / P18 .575-WZ (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 68193「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月17日出願公開、特開2019-178811〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月30日の出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 2月21日付け:拒絶理由通知書
同 年 4月22日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 9月 6日付け:拒絶査定
同 年12月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年12月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
少なくとも室温センサ、湿度センサおよび人が存在するか否かを検出する人感センサを含むセンサ群と、
前記センサ群に接続される制御回路と
を備え、
前記制御回路は、冷媒の循環方向の変更を伴わない特定の機能を実行する運転動作を複数記憶させた運転動作記憶手段と、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき前記複数の運転動作のうち少なくとも一つを人が存在する場合に実行する運転動作選択手段と、前記運転動作の選択にあたって、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する判定手段とを有することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、前記制御回路は、
優先度に従って、前記パラメータに基づき選択された運転動作を実行する自動モード実行手段と、
操作ユニットから出力される選択信号に基づき選択された運転動作を実行する個別選択モード実行手段と、
除湿機能に関わる複数の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第1データと、運転開始時に特有の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第2データと、人の不存在時に特有の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第3データとを保持する記憶手段とを備える
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和機において、前記記憶手段は、決められた時刻に室外機の発生音を低減する運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第4データを保持することを特徴とする空気調和機。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の令和4年4月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも室温センサ、湿度センサおよび人が存在するか否かを検出する人感センサを含むセンサ群と、
前記センサ群に接続される制御回路と
を備え、
前記制御回路は、冷媒の循環方向の変更を伴わない特定の機能を実行する運転動作を複数記憶させた運転動作記憶手段と、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき前記複数の運転動作のうち少なくとも一つを人が存在する場合に実行する運転動作選択手段と、前記運転動作の選択にあたって、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する判定手段とを有することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、前記制御回路は、
優先度に従って、前記パラメータに基づき選択された運転動作を実行する自動モード実行手段と、
操作ユニットから出力される選択信号に基づき選択された運転動作を実行する個別選択モード実行手段と、
除湿機能に関わる複数の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第1データと、運転開始時に特有の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第2データと、人の不存在時に特有の運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第3データとを保持する記憶手段とを備える
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和機において、前記記憶手段は、決められた時刻に室外機の発生音を低減する運転動作の実行または不実行を判定するための条件を含む第4データを保持することを特徴とする空気調和機。」
2 補正の適否
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0041】には、「図4に示されるように、自動モードプログラム55が実行されると、制御回路53は、ステップS1で、センサ群45、46、47、38から室温信号、湿度信号、時刻信号および温度分布信号を取得する。制御回路53は、ステップS2で、予め決められた時間が経過したか否かを判定する。予め決められた時間は、各種センサの検出が安定するまでの時間であればよい。予め決められた時間が経過していれば、制御回路53は、ステップS3で、取得した室温、湿度、時刻、人の在不在、床面の輻射温度および壁面の輻射温度に基づき、予め決められた室内環境の判定基準に従って室内環境を数値化する。」と記載されている。
そうすると、「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定」することは、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項であるから、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき1つの室内環境を特定」することについて、「予め決められた時間間隔ごとに」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるものである。
(2) 引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2015-25631号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様。)
(ア) 「【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における空調制御システム装置の概略制御構成を示すブロック構成図である。
図において、この実施形態に係る空調制御システムは、空間A,B(それぞれ被空調空間の例)を空気調和する空調機22と、この空調機22の運転制御を行なう制御装置1と、から構成されている。空調機22は、例えば1台の室外機101と、2台の室内機102a,102bと、これらを環状に接続する冷媒配管と、動力線および通信線と、から構成されている。個々の室内機102a,102bは、室内側熱交換器、膨張弁、および室内側送風機など(いずれも図示省略)を備えている。室外機101は、冷媒圧縮機、室外側熱交換器、アキュムレータ、室外側送風機など(いずれも図示省略)を備えている。2つの室内機102a,102bは、室外機101に対し冷媒配管を介して並列に接続されて冷媒回路を構成している。室内機102aは空間A内に設置され、室内機102bは空間B内に設置されている。また、空間A内には、空間Aの室温データ(室内温度)8aを検出する温度センサー103aと、空間Aの湿度データ(室内湿度)9aを検出する室内湿度センサー104aと、空間A内に居る人の存在を検知する人感センサー105aと、が配備されている。空間B内には、空間Bの室温データ(室内温度)8bを検出する温度センサー103bと、空間Bの湿度データ(室内湿度)9bを検出する室内湿度センサー104bと、空間B内に居る人の存在を検知する人感センサー105bと、が配備されている。
【0012】
制御装置1は、空調機22を運転制御したり、温度センサー103a,103b、湿度センサー104a,104b、人感センサー105a,105bからの情報を入手したりするための通信を行なう通信部2と、空調機22の制御内容の決定と制御装置1内部の制御を担う制御部3と、各センサーからの情報を元に体感温度に関する情報を導出する演算部4と、ユーザが空調機22を操作するために空調機22の発停、モード設定、温度設定を入力するためのキーボードやタッチパネルなどに代表される入力部5と、現在の被空調環境(室温、空調機運転状態など)をユーザに提示するための表示部6と、監視、制御対象である空間A,Bの室温、湿度、人感ON/OFF情報を記憶するデータ格納部7と、を備えている。これら制御装置1の各部は、例えばマイクロコンピュータ、メモリ、ソフトウェアの機能などにより実現される。
【0013】
各空間A,Bに設置されている、温度センサー103a,103bで検出された室温データ8a,8bに関する情報と、湿度センサー104a,104bで検出された湿度データ9a,9bに関する情報とが、制御装置1の通信部2で受信され、演算部4に送られる。そこで、演算部4の体感温度導出手段23の機能は、それぞれ検出された、室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bとに基づいて、それぞれの空間A,Bにおける体感温度を導出する。体感温度の導出方法は後出の実施形態2で詳説される。導出された体感温度は表示部6により表示され、ユーザに対し体感温度に関する情報が開示される。また、入力部5からユーザにより入力される目標温度は、従来のような湿度成分を含まない温度として取り扱われるのではなく、体感温度の目標温度として取り扱われ、通信部2および室外機101で制御パラメータとして使用される。因みに、従来の空調機は湿度を含まない室温のみを基に制御されていた。例えば、冷房時に目標温度<室温となれば、サーモONにするなどの制御を行っていたのである。しかしながら、この実施形態1では体感温度を基に、サーモONなどの制御を行なう。すなわち、制御部3の空調制御手段26の機能が、演算部4により導出された体感温度に応じて空調機22の空調制御を行なっているのである。」
(イ) 「【0015】
実施の形態2.
実施の形態2について、以下に概要を説明する。
各空間A,Bの温度センサー103a,103bおよび湿度センサー104a,104bからのデータ8a,8b,9a,9bに基づいて、ヒートインデックス値11a,11b(体感温度)が算出される。従来の室温のみの表示ではなく、ユーザが実際に感じている被空調環境に近いヒートインデックス値11a,11bが表示部6によりモニタ表示される。このヒートインデックス値11a,11bは継続して監視され、ヒートインデックス値11a,11bが上昇して或る一定の体感温度に到達した場合、ユーザに異常空調環境であることがわかる様に表示方法を変更する。引き続き、ヒートインデックス値11a,11bが上昇して在室者が熱中症になり得る症状段階に達した場合、空調機22を自動的に制御して正常な被空調環境に戻す。上記制御内容を実施するか否かをユーザで設定できるようにする。設定は入力部5から実行される。
このようなヒートインデックス値は温度と湿度から計算される体感温度であり、室温だけでは表現しきれない、人が感じる蒸し暑さを直感的にかつわかりやすく表現できる。体感温度の表し方としては、例えば「不快指数」、「ミスナールの体感温度」など幾つか挙げられているが、中でもアメリカ国立気象局が採用しているヒートインデックス値が、熱中症に陥る参考値として最適と考えられる。
【0016】
斯かるアメリカ式のヒートインデックス値の導出方法を以下に示す。このヒートインデックス値は、気温と湿度とから算出された体感温度(単位:度)の指標である。このヒートインデックス値は、暑気症状を防ぐために、アメリカ国立気象局(USナショナルウェザーサービス)により開発されたものである。アメリカなどでは、この指標を利用し天気予報などで熱中症への注意が呼びかけられている。
「ヒートインデックス値算出式」(上記の非特許文献1,2参照。)
Heat Index = -42.379 + 2.04901523*T + 10.14333127*RH - 0.22475541*T*RH - 0.00683783*T*T - 0.05481717*RH*RH + 0.00122874*T*T*RH + 0.00085282*T*RH*RH - 0.00000199*T*T*RH*RH ・・・(1)
尚、式(1)中のTは気温、RHは相対湿度を表している。
【0017】
次に具体的な動作について説明する。その具体的な動作の制御フローを図2に示す。まず、周期的に各空間A,Bの温度センサー103a,103bと湿度センサー104a,104bにより検出された室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bが、通信部2から制御装置1に取り込まれる(ステップ201)。取り込まれた検出データはデータ格納部7の各空間A,Bに関する室温データ8a,8b、湿度データ9a,9bに格納される。格納された各データは表示部6により表示される。空調制御システム装置の基本的な機能として、ユーザが空調機22を操作するデータの設定入力のための入力部5が設けられている。
【0018】
そこで、演算部4の体感温度導出手段23の機能は、それぞれ検出された、室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bとに基づいて、それぞれの空間A,Bにおけるヒートインデックス値11a,11bを導出する(ステップ202)。導出されたヒートインデックス値11a,11bは、データ格納部7の所定の記憶エリアに格納される。そして、演算部4は、ユーザ側で設定された「熱中症予防となる制御」を実施する設定があるか否かを判断し(ステップ219)、実施すると設定されている場合(ON)、制御部3は以下の制御を行う。この例では、ヒートインデックス値11a,11bは、計算ではなく、図3に示したヒートインデックス識別表12から導出される。図3のヒートインデックス識別表12は、環境温度(室内温度)と相対湿度(室内湿度)との関係で、熱中症の複数の症状段階に対応して区画された複数の領域(I)~(V)を表したものである。すなわち、このヒートインデックス識別表12において、例えば空間Aの室温データが26度、湿度データが50%の場合、ヒートインデックス値は27度となる。そのため、ヒートインデックス識別表12はデータ格納部7に予め記憶されている。また、室温および湿度の小数点以下の値は四捨五入して使用される。ヒートインデックス識別表12の範囲外の値について、25度未満の場合は「25度以下」と表示する。或いは、先述した算出式(1)に温度、湿度のセンサー値を入力してヒートインデックス値を導出するようにしても構わない。」
(ウ) 「【0024】
ステップ207においてヒートインデックス値が42度より大きかった場合(NO)、人感センサー105a,105bの検出値により制御対象の空間A,Bに在室者がいるか否かが判定される(図5のステップ210)。人感センサー105a,105bにより在室者が検知されなかった場合(ステップ210のOFF)、制御部3は制御を実行しない。ステップ210において在室者が存在すると判定された場合(ON)、処理はステップ211に移行する。
【0025】
ステップ211では、湿度センサー104a,104bによる検出値が判定されて、以降の制御内容が変更される。ステップ211において検出された湿度データ9a,9bが65%未満であった場合(YES)、制御部3は制御(IV)-aを実施する。一方、湿度データ9a,9bが65%以上であった場合(NO)、制御部3は制御(IV)-bを実施する。この場合、制御(IV)-a、 制御(IV)-bを行なうヒートインデックス値領域を示したものが、図3中の領域(IV)-a、 領域(IV)-bに該当する。制御内容を領域(IV)-aと領域(IV)-bとで変更する理由としては、図3の領域(IV)-bでは湿度が高いためにヒートインデックス値も高くなっているから、湿度を下げる制御(IV)-bが優先して実行される。一方、領域(IV)-aは、温度を下げることを優先して実行される。
【0026】
ステップ211にて湿度が65%未満の場合(YES)、制御部3は以下のように温度を下げる制御(IV)-aを実行する(ステップ212)。
<制御(IV)-a>
・動作 ・・・ 空調機がONである場合、以下の設定内容に変更。
空調機がOFFである場合、以下の設定内容で運転ON。
・運転モード・・・ 冷房
・設定温度 ・・・ 27度
・風速 ・・・ 弱
制御部3は、ヒートインデックス値が正常値(27度)以下になるまで上記の制御(IV)-aを継続する(ステップ213)。そして、ヒートインデックス値が27度を下回った時点で(ステップ213のYES)、制御部3は空調機22の制御を停止させる。
【0027】
一方、ステップ211において湿度が65%以上の場合、制御部3は以下の制御(IV)-bを実行する(ステップ214)。
<制御(IV)-b>
・動作 ・・・ 空調機がONである場合、以下の設定内容に変更。
空調機がOFFである場合、以下の設定内容で運転ON。
・運転モード・・・ 除湿(ドライ)
制御部3は、ヒートインデックス値が正常値(27度)以下になるまで上記の制御(IV)-bを継続する(ステップ215)。そして、ヒートインデックス値が27度を下回った時点で(ステップ215のYES)、制御部3は空調機22の制御を停止させる。
【0028】
他方で、ステップ209においてヒートインデックス値が55度より大きかった場合(NO)、演算部4は、人感センサー105a,105bの検出値により対象空間に在室者がいるか否かを判定する(図6のステップ216)。人感センサー105a,105bにより在室者が検知されない場合(ステップ216のOFF)、制御部3は制御を実行しない。ステップ216において在室者が存在すると判定された場合(ON)、処理はステップ217に移行する。
【0029】
ステップ217においてヒートインデックス値を改善するために、制御部3は、該当する空間A,Bに設置されている室内機102a,102bを以下のように制御する。
<制御(V)>
・動作 ・・・ 空調機がONである場合、以下の設定内容に変更。
空調機がOFFである場合、以下の設定内容で運転ON。
・運転モード・・・ 冷房
・設定温度 ・・・ 27度
・風速 ・・・ 強
制御部3は、ヒートインデックス値が正常値(27度)以下になるまで上記の制御(V)を継続する(ステップ218)。これにより、室内機103a,103bからの空調済み空気が空間A,Bへそれぞれ供給される。そして、ヒートインデックス値が27度を下回った時点で(ステップ218のYES)、制御部3は空調機22の制御を停止させる。すなわち、制御部3の空調制御手段26の機能は、データ格納部7から読み出した熱中症の症状段階が最も重篤な症状段階であり、且つ、人感センサー105a,105bにより人の存在が検知されたときに、空調機22に対し冷房運転または除湿運転の制御を行なうのである。」
(エ) 「【図1】
[図:0001405538000001.jpg]
」
(オ) 「【図2】
[図:0001405538000002.jpg]
」
(カ) 「【図5】
[図:0001405538000003.jpg]
」
(キ) 「【図6】
[図:0001405538000004.jpg]
」
(ク) 【図2】のフローチャートから、ステップ207とステップ210との間にヒートインデックス値を55度と比較するステップ209が存在しており(上記(オ)参照。)、【図5】のフローチャートから、ステップ209において「YES」の場合、ステップ210において人感センサー判定を行うことが把握される(上記(カ)参照。)から、段落【0024】に記載された「ステップ207においてヒートインデックス値が42度より大きかった場合(NO)、人感センサー105a,105bの検出値により制御対象の空間A,Bに在室者がいるか否かが判定される(図5のステップ210)。」(上記(ウ)参照。)は、「ステップ207においてヒートインデックス値が42度より大きかった場合(NO)、ヒートインデックス値を55度と比較する(ステップ209)。ステップ209においてヒートインデックス値が55度より小さかった場合(YES)、人感センサー105a,105bの検出値により制御対象の空間A,Bに在室者がいるか否かが判定される(図5のステップ210)。」と理解できる。
(ケ) 段落【0012】には、「制御装置1」が「温度センサー103a,103b、湿度センサー104a,104b、人感センサー105a,105bからの情報を入手したりするための通信を行なう通信部2」を備えていることが記載されており(上記(ア)参照。)、この記載から、「制御装置1」は、「温度センサー103a,103b、湿度センサー104a,104b、人感センサー105a,105b」に接続されるものと認められる。
(コ) 冷凍サイクルに関する技術常識を加味すると、段落【0026】に記載された制御(IV)-aの冷房運転、段落【0027】に記載された制御(IV)-bの除湿(ドライ)運転及び段落【0029】に記載された制御(V)の冷房運転(上記(ウ)参照。)は、いずれも、その実行中に冷媒の循環方向が変化しないことが明らかである。
(サ) 段落【0026】に記載された制御(IV)-aの冷房運転、段落【0027】に記載された制御(IV)-bの除湿(ドライ)運転及び段落【0029】に記載された制御(V)の冷房運転(上記(ウ)参照。)を実行するためには、当然に、各制御を実行する運転動作が予め記憶されていなければならないところ、段落【0012】に記載された「これら制御装置1の各部は、例えばマイクロコンピュータ、メモリ、ソフトウェアの機能などにより実現される」(上記(ア)参照。)を加味すると、制御装置1には、制御(IV)-a、制御(IV)-b及び制御(V)を実行する運転動作が記憶されていると認められる。
イ 上記アから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「空間A内には、空間Aの室温データ(室内温度)8aを検出する温度センサー103aと、空間Aの湿度データ(室内湿度)9aを検出する室内湿度センサー104aと、空間A内に居る人の存在を検知する人感センサー105aと、が配備されており、空間B内には、空間Bの室温データ(室内温度)8bを検出する温度センサー103bと、空間Bの湿度データ(室内湿度)9bを検出する室内湿度センサー104bと、空間B内に居る人の存在を検知する人感センサー105bと、が配備されており、
制御装置1は、温度センサー103a,103b、湿度センサー104a,104b、人感センサー105a,105bに接続されるものであり、
周期的に各空間A,Bの温度センサー103a,103bと湿度センサー104a,104bにより検出された室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bが、通信部2から制御装置1に取り込まれ、それぞれ検出された、室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bとに基づいて、それぞれの空間A,Bにおけるヒートインデックス値11a,11bを導出し、
制御装置1には、制御(IV)-a、制御(IV)-b及び制御(V)を実行する運転動作が記憶されており、
ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%未満の場合、制御部3は、運転モードを冷房、風速を弱に設定して空調機を運転する制御(IV)-aを実行し、
ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%以上の場合、制御部3は、運転モードを除湿(ドライ)に設定して空調機を運転する制御(IV)-bを実行し、
ヒートインデックス値が55度より大きく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定された場合、制御部3は、運転モードを冷房、風速を強に設定して空調機を運転する制御(V)を実行し、
制御(IV)-a、制御(IV)-b及び制御(V)の実行中、冷媒の循環方向が変化しない空調制御システム。」
(3) 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「空間Aの室温データ(室内温度)8aを検出する温度センサー103a」及び「空間Bの室温データ(室内温度)8bを検出する温度センサー103b」は、本件補正発明の「室温センサ」に相当する。
引用発明の「空間Aの湿度データ(室内湿度)9aを検出する室内湿度センサー104a」及び「空間Bの湿度データ(室内湿度)9bを検出する室内湿度センサー104b」は、本件補正発明の「湿度センサ」に相当する。
引用発明の「空間A内に居る人の存在を検知する人感センサー105a」及び「空間B内に居る人の存在を検知する人感センサー105b」は、本件補正発明の「人が存在するか否かを検出する人感センサ」に相当する。
そうすると、引用発明の「空間A内には、空間Aの室温データ(室内温度)8aを検出する温度センサー103aと、空間Aの湿度データ(室内湿度)9aを検出する室内湿度センサー104aと、空間A内に居る人の存在を検知する人感センサー105aと、が配備されており、空間B内には、空間Bの室温データ(室内温度)8bを検出する温度センサー103bと、空間Bの湿度データ(室内湿度)9bを検出する室内湿度センサー104bと、空間B内に居る人の存在を検知する人感センサー105bと、が配備されて」いることは、本件補正発明の「少なくとも室温センサ、湿度センサおよび人が存在するか否かを検出する人感センサを含むセンサ群」を備えることに相当する。
イ 引用発明の「制御装置1」は、本件補正発明の「制御回路」に相当する。
そうすると、引用発明の「制御装置1は、温度センサー103a,103b、湿度センサー104a,104b、人感センサー105a,105bに接続されるものであ」ることは、本件補正発明の「前記センサ群に接続される制御回路」を備えることに相当する。
ウ 引用発明の「制御(IV)-a」、「制御(IV)-b」及び「制御(V)」は、いずれも、その「実行中、冷媒の循環方向が変化しない」ものであるから、本件補正発明の「冷媒の循環方向の変更を伴わない特定の機能」に相当する。
そうすると、引用発明の「制御装置1には、制御(IV)-a、制御(IV)-b及び制御(V)を実行する運転動作が記憶されて」いることは、本件補正発明の「前記制御回路」が有する「冷媒の循環方向の変更を伴わない特定の機能を実行する運転動作を複数記憶させた運転動作記憶手段」に相当する。
エ 引用発明の「人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され」ることは、本件補正発明の「人が存在する場合」に相当する。
引用発明の「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%未満の場合」に「制御(IV)-aを実行」し、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%以上の場合」に「制御(IV)-bを実行」し、「ヒートインデックス値が55度より大きく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定された場合」に「制御(V)を実行」することは、本件補正発明の「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき前記複数の運転動作のうち少なくとも一つを人が存在する場合に実行する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「制御装置1」がこれら「制御(IV)-a」、「制御(IV)-b」及び「制御(V)」を選択的に実行することは、本件補正発明の「前記制御回路」が有する「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき前記複数の運転動作のうち少なくとも一つを人が存在する場合に実行する運転動作選択手段」に相当する。
オ 引用発明の「ヒートインデックス値」及び「湿度データ」は、本件補正発明の「室内環境」に相当する。
引用発明は、「周期的に各空間A,Bの温度センサー103a,103bと湿度センサー104a,104bにより検出された室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bが、通信部2から制御装置1に取り込まれ」るものであり、当該「周期」が予め決められた時間間隔であることが明らかであるから、引用発明の制御装置1は、予め決められた時間間隔で室温データ及び湿度データを取り込むものである。
そうすると、引用発明の「周期的に各空間A,Bの温度センサー103a,103bと湿度センサー104a,104bにより検出された室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bが、通信部2から制御装置1に取り込まれ、それぞれ検出された、室温データ8a,8bと湿度データ9a,9bとに基づいて、それぞれの空間A,Bにおけるヒートインデックス値11a,11bを導出」することは、本件補正発明の「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定」することに相当する。
そして、上記エのとおり、引用発明が「ヒートインデックス値」及び「湿度データ」に応じて「制御(IV)-a」、「制御(IV)-b」及び「制御(V)」を選択的に実行することは、運転動作の選択にあたって、「ヒートインデックス値」及び「湿度データ」と、「制御(IV)-a」、「制御(IV)-b」及び「制御(V)」とが紐付けされているといえるから、本件補正発明の「個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「制御装置1」が予め決められた時間間隔で空間A,Bの「湿度データ」を取り込むとともに「ヒートインデックス値」を導出し、これらに応じて「制御(IV)-a」、「制御(IV)-b」及び「制御(V)」を選択的に実行することは、本件補正発明の「前記制御回路」が有する「前記運転動作の選択にあたって、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する判定手段」に相当する。
カ 引用発明の「空調制御システム」は、本件補正発明の「空気調和機」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、以下のとおりすべての点で一致し、相違点は認められない。
<一致点>
「少なくとも室温センサ、湿度センサおよび人が存在するか否かを検出する人感センサを含むセンサ群と、
前記センサ群に接続される制御回路と
を備え、
前記制御回路は、冷媒の循環方向の変更を伴わない特定の機能を実行する運転動作を複数記憶させた運転動作記憶手段と、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき前記複数の運転動作のうち少なくとも一つを人が存在する場合に実行する運転動作選択手段と、前記運転動作の選択にあたって、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する判定手段とを有する空気調和機。」
(4) 判断
上記のとおり、本件補正発明と引用発明との間に相違点が認められないから、本件補正発明は、引用発明である。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5) 審判請求書における審判請求人の主張について
令和4年12月13日に提出された審判請求書において、審判請求人は、「本願発明と引用発明との対比」として、以下のとおり主張する。
「請求項1に記載の発明では、判定手段は、「前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する」。1つの室内環境に対して対応する運転動作は1つに絞られる。
これに対して、引用文献1では、ヒートインデックス値が42未満であって27以上の場合には、制御(IV)-aが紐付けられることもあれば制御(IV)-bが紐付けられることもある。1つの室内環境に対して2つの運転動作が紐付けられる。1つの室内環境が最適解としての運転動作で改善されるわけではない。すなわち、引用文献1には、請求項1に記載の「個々の室内環境ごとに紐付けられた運転動作を実行する判定手段」は開示されない。示唆さえない。前述の作用効果は達成されない。」(第7ページ第6行~第16行)
審判請求人の主張について検討する。
本件補正発明は、「前記運転動作の選択にあたって、前記センサ群で取得されたパラメータに基づき予め決められた時間間隔ごとに1つの室内環境を特定し、個々の室内環境ごとに紐付けられた前記運転動作を実行する判定手段」という発明特定事項を有するものであるから、「運転動作」を「選択」する際の「室内環境」と「選択」される「運転動作」とが「紐付けられ」るものであると解される。
一方、引用発明は、上記(2)イのとおり、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%未満の場合、制御部3は、運転モードを冷房、風速を弱に設定して空調機を運転する制御(IV)-aを実行し、ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さく、人感センサー105a,105bの検出値により在室者が存在すると判定され、湿度が65%以上の場合、制御部3は、運転モードを除湿(ドライ)に設定して空調機を運転する制御(IV)-bを実行」するものであるから、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さ」いかつ「湿度が65%未満」という室内環境に対して「制御(IV)-a」が選択され、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さ」いかつ「湿度が65%以上」という室内環境に対して「制御(IV)-b」が選択されるものである。そうすると、引用発明は、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さ」いかつ「湿度が65%未満」という室内環境と「制御(IV)-a」とが紐付けられており、「ヒートインデックス値が42度より大きくて55度より小さ」いかつ「湿度が65%以上」という室内環境と「制御(IV)-b」とが紐付けられているものであって、本件補正発明と同様、「運転動作」を「選択」する際の「室内環境」と「選択」される「運転動作」とが「紐付けられ」るものであり、1つの室内環境に対して1つの運転動作が紐付けられるものである。
したがって、引用文献1には、本件補正発明の「個々の室内環境ごとに紐付けられた運転動作を実行する判定手段」が開示されている。
審判請求人は、「ヒートインデックス値が42未満であって27以上の場合には、制御(IV)-aが紐付けられることもあれば制御(IV)-bが紐付けられることもある」と主張するが、上記2(2)ア(ウ)のとおり、引用文献1の段落【0026】には、「制御部3は、ヒートインデックス値が正常値(27度)以下になるまで上記の制御(IV)-aを継続する(ステップ213)。」と記載されており、段落【0027】には、「制御部3は、ヒートインデックス値が正常値(27度)以下になるまで上記の制御(IV)-bを継続する(ステップ215)。」と記載されており、「ヒートインデックス値が42未満であって27以上」は、「制御(IV)-a」又は「制御(IV)-b」を選択する際の状態ではなく、「制御(IV)-a」又は「制御(IV)-b」の選択後、「制御(IV)-a」又は「制御(IV)-b」を継続して実行する際の状態であるから、当を得ない主張である。
よって、審判請求人の主張は、採用することができない。
3 むすび
よって、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和4年4月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)の請求項1に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明が本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2015-25631号公報(上記「引用文献1」と同一の文献である。)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で補正の適否を検討した本件補正発明から、「予め決められた時間間隔ごとに」との限定を省いたものである。
そして、上記第2[理由]2(3)における検討を踏まえると、本願発明と引用発明との間にも相違点が認められないから、本願発明も引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020247