審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-002721

歯科用ダイヤモンドバー

審判番号
2024-002721
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-141209
請求日
2024年02月16日
審決日
2025年05月27日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】マニー株式会社
  • 【請求人代理人】SK弁理士法人
  • 【請求人代理人】奥野 彰彦
  • 【請求人代理人】伊藤 寛之
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 正章
  • 審判官 立花 啓
  • 審判官 栗山 卓也
分類
P18 .121-Z (A61C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-141209「歯科用ダイヤモンドバー」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月22日出願公開、特開2021- 23403〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和 元年 7月31日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和 4年10月27日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 2月15日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 5月31日付け:拒絶理由通知書 同年 8月 3日 :意見書の提出 同年11月14日付け:拒絶査定 令和 6年 2月16日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、令和 5年 2月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「棒状部材と、該棒状部材の先端表面にめっき層を介して固着されたダイヤモンド製の複数の砥粒とを備えた歯科用ダイヤモンドバーであって、 前記複数の砥粒には、長手方向の長さの、該長手方向と直交する短手方向の長さに対する比で表されるアスペクト比が1.4以上2.0以下である複数の特定砥粒が含有され、 前記複数の砥粒の粒度分布において、前記アスペクト比が1.4以上である砥粒の累積個数の、該複数の砥粒の全個数に対する累積比率は50%以上であり、 前記めっき層は、前記複数の特定砥粒の短手方向長さと略同じ厚さを有し、 前記複数の特定砥粒は、短手方向が前記棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第1砥粒と、長手方向が該棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第2砥粒とを有し、 前記第1砥粒は、前記めっき層内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該めっき層の表面からはみ出し、 前記第2砥粒は、長手方向の一方側の部分が前記めっき層の表面から突出しており、 前記第1砥粒を介して相隣接する前記第2砥粒間に研削屑を逃がすための複数のポケットが形成されることを特徴とする、歯科用ダイヤモンドバー。」 第3 原査定の拒絶の理由 拒絶査定の理由である、令和 5年 5月31日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。 (進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献:特開昭61-19570号公報 第4 引用文献及び周知例の記載並びに引用発明 1 引用文献 引用文献には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「一般にダイヤモンドポイントと称する人間の歯牙切削に使用する歯科用切削具としては第4図(当審注:「第」は略字体。以下本欄で同じ。)~第6図に示すものが知られている。 これは金属製の棒体1の切刃部2の外周にニッケル又はクローム等の接続部3を介して30~250ミクロンの多数のダイヤモンド微粒子4をメッキの原理により電着させたものである。この切削具を使用して人間の歯牙を切削する場合、棒体1を回転しながら切刃部2を歯牙5に当てるとダイヤモンド微粒子4の鋭利さとダイヤモンド自体の硬度により難削性の歯牙でも他の硬質刃物に比べて切削加工が容易である。」(第1ページ右下欄第2~13行) 「即ち、ダイヤモンド微粒子4を電着させるのでダイヤモンド径の大きさには限度があり、例えば第5図、第6図のように150ミクロンのダイヤモンド微粒子4を電着させた場合、ダイヤモンド微粒子4の直径の3分の2程度はニッケル又はクローム等の接続部3内に包み込まれてしまい、切削に役立つ鋭利部の長さl1は50ミクロン前後しか接続部3の表面に露出しない。」(第1ページ右下欄第17行~第2ページ左上欄第4行) 第4図「 [図:0001425307000001.jpg] 」 第5図「 [図:0001425307000002.jpg] 」 参考図(第5図に符号M1、M2、N及び矢印を付したもの) [図:0001425307000003.jpg] 上記参考図から、M1、M2で示すダイヤモンド微粒子4(以下「第2ダイヤモンド微粒子4」という。)は、長手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直であり、Nで示すダイヤモンド微粒子4(以下「第1ダイヤモンド微粒子4」という。)は、短手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直であり、接続部3の厚さは第1ダイヤモンド微粒子4の短手方向長さと略同じであり、第1ダイヤモンド微粒子4は、接続部3内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が接続部3の表面からはみ出しており、第2ダイヤモンド微粒子4は、長手方向の一方側が前記接続部3の表面から突出しており、第1ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接する第2ダイヤモンド微粒子4間に空間が形成されていることが看て取れる。また、引用文献のダイヤモンド微粒子4は多数あることから、第1ダイヤモンド微粒子4が複数あり、第1ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接する第2ダイヤモンド微粒子4間に形成される空間が複数あることは明らかである。 上記の記載を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「棒体1の切刃部2の外周にニッケル又はクローム等の接続部3を介して多数のダイヤモンド微粒子4をメッキの原理により電着させた、一般にダイヤモンドポイントと称する歯科用切削具であって、 接続部3の厚さは第1ダイヤモンド微粒子4の短手方向長さと略同じであり、 短手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第1ダイヤモンド微粒子4と、長手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第2ダイヤモンド微粒子4とを有し、 前記第1ダイヤモンド微粒子4は、前記接続部3内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該接続部3内の表面からはみ出し、 前記第2ダイヤモンド微粒子4は、長手方向の一方側の部分が前記接続部3の表面から突出しており、 前記第1ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接する前記第2ダイヤモンド微粒子4間に複数の空間が形成される、一般にダイヤモンドポイントと称する歯科用切削具。」 2 周知例1 原査定の拒絶の理由で例示された国際公開第2018/080778号(以下「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。付記した訳文は、日本語ファミリー公報である特表2019-531913号公報に基づき、当審が作成した。) 「[0062] In some embodiments, the abrasive particles comprise an aspect ratio of an average length to an average thickness of 1.5 or greater. As used herein, the term "length" with respect to a particle refers to the longest dimension of the particle. The term "thickness" with respect to a particle refers to the shortest dimension of the particle. In certain embodiments, the abrasive particles comprise an aspect ratio of an average length to an average thickness of 2.0 or greater, 2.5 or greater, 3.0 or greater, 4.0 or greater, 5.0 or greater, 7.5 or greater, 10.0 or greater, 12.5 or greater, or 15.0 or greater; and 20.0 or less, 18.0 or less, or 16 or less, or 15 or less, or 14 or less, or 12 or less. For instance, suitable abrasive particles could include shapes such as rods, prisms, ellipsoids, platelets, irregular (e.g., crushed) shapes, as long as they have these aspect ratios.」 [0062] いくつかの実施形態では、研磨粒子は、1.5以上の平均厚さに対する平均長のアスペクト比を構成する。本明細書で使用される場合、粒子に対しての「長さ」という用語は、粒子の最長寸法を指す。粒子に対しての「厚さ」という用語は、粒子の最短寸法を指す。ある特定の実施形態では、研磨粒子は、2.0以上、2.5以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、7.5以上、10.0以上、12.5以上、又は15.0以上の、及び20.0以下、18.0以下、又は16以下、又は15以下、又は14以下、又は12以下の平均厚さに対する平均長のアスペクト比を構成する。例えば、好適な研磨粒子は、これらのアスペクト比を有する限り、ロッド、プリズム、楕円体、板状片、不規則な(例えば、粉砕された)形状などの形状を含むことができる。 「[0064] Specific examples of suitable abrasive materials include ・・・ diamond,・・・」 [0064] 好適な研磨材料の具体例としては・・・ダイヤモンド・・・が挙げられる。・・・ 「[00143] An exemplary dental bur 1400 is shown in FIG. 14. Referring now to FIG. 14, dental bur 1400 includes head 1430 secured to shank 1420. Dental bur 1400 comprises abrasive particles 1405 secured in porous metal bond, resin bond, or vitreous bond 1410.」 [00143] 例示的な歯科用バー1400を図14に示す。ここで図14を参照すると、歯科用バー1400は、軸1420に固定されたヘッド1430を含む。歯科用バー1400は、多孔性のメタルボンド、樹脂ボンド、又はガラス質ボンド1410に固定された研磨粒子1405を含む。 図14「 [図:0001425307000004.jpg] 」 上記の記載を総合すると、周知例1には、以下の事項が記載されている。 「歯科用バー1400が研磨粒子1405を含み、研磨材料はダイヤモンドであり、研磨粒子は、1.5以上の平均厚さに対する平均長のアスペクト比を構成すること。」 3 周知例2 当審において周知例として新たに例示する、荻野碩哉、山木昌雄、“ダイヤモンドポイントの実験的製法に関する研究 : (第一報)砥粒の調査と基材の固定法について”、広島大学歯学雑誌、広島大学歯学会、平成5年6月、第25巻、第1号、p.217-227(以下「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) 「歯科においてダイヤモンドポイントが実用化されて久しい。」(第217ページ左欄第6~7行) 「既存のダイヤモンドポイントを調査し,実験に使用する砥粒の選択,砥粒固定の為のメッキ浴の選定を行った。」(第217ページ右欄第2~4行) 「表1に示した4種のポイントのダイヤモンド砥粒を採取し,秤量および光学顕微鏡観察を行った。」(第217ページ右欄第15~16行) 「各々8個の砥粒の長辺と短辺を測定した値および,それぞれのポイントに電着されていたダイヤモンド重量を表8に示す。」(第220ページ右欄第13~15行) 表1「 [図:0001425307000005.jpg] 」 表8「 [図:0001425307000006.jpg] 」 表8から、各ダイヤモンドポイントの砥粒のアスペクト比を長辺と短辺との比により計算すると、ホリコ1Xでは約1.5、ホリコ2rでは1.7、デンスコ8Rでは1.6、デンスコ1XLCでは約1.9である。 上記の記載を総合すると、周知例2には、以下の事項が記載されている。 「歯科において実用化された既存のダイヤモンドポイントを調査すると、砥粒の長辺と短辺との比であるアスペクト比が約1.5~1.9であったこと。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明の「棒体1」、「切刃部2」、「切刃部2の外周」、「ニッケル又はクローム等の接続部3」、「多数のダイヤモンド微粒子4」、「電着」、「一般にダイヤモンドポイントと称する歯科用切削具」は、その構造及び機能から、本願発明の「棒状部材」、「棒状部材の先端」、「棒状部材の先端表面」、「めっき層」、「ダイヤモンド製の複数の砥粒」、「固着」、「歯科用ダイヤモンドバー」にそれぞれ相当する。 2 引用発明の「接続部3の厚さは第1ダイヤモンド微粒子4の短手方向長さと略同じであ」ることと、本願発明の「前記めっき層は、前記複数の特定砥粒の短手方向長さと略同じ厚さを有」することとは、前記めっき層は、前記複数の砥粒の短手方向長さと略同じ厚さを有することの限りで一致する。 3 引用発明の「空間」は、その構造から、本願発明の「ポケット」に相当する。したがって、引用発明の「短手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第1ダイヤモンド微粒子4と、長手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第2ダイヤモンド微粒子4とを有し、前記第1ダイヤモンド微粒子4は、前記接続部3内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該接続部3内の表面からはみ出し、前記第2ダイヤモンド微粒子4は、長手方向の一方側の部分が前記接続部3の表面から突出しており、前記第1ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接する前記第2ダイヤモンド微粒子4間に複数の空間が形成される」ことと、本願発明の「前記複数の特定砥粒は、短手方向が前記棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第1砥粒と、長手方向が該棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第2砥粒とを有し、前記第1砥粒は、前記めっき層内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該めっき層の表面からはみ出し、前記第2砥粒は、長手方向の一方側の部分が前記めっき層の表面から突出しており、前記第1砥粒を介して相隣接する前記第2砥粒間に研削屑を逃がすための複数のポケットが形成される」こととは、前記複数の砥粒は、短手方向が前記棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第1砥粒と、長手方向が該棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第2砥粒とを有し、前記第1砥粒は、前記めっき層内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該めっき層の表面からはみ出し、前記第2砥粒は、長手方向の一方側の部分が前記めっき層の表面から突出しており、前記第1砥粒を介して相隣接する前記第2砥粒間に複数のポケットが形成されることの限りで一致する。 したがって、両者は、 「棒状部材と、該棒状部材の先端表面にめっき層を介して固着されたダイヤモンド製の複数の砥粒とを備えた歯科用ダイヤモンドバーであって、 前記めっき層は、前記複数の砥粒の短手方向長さと略同じ厚さを有し、 前記複数の砥粒は、短手方向が前記棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第1砥粒と、長手方向が該棒状部材の表面に対して略垂直な複数の第2砥粒とを有し、 前記第1砥粒は、前記めっき層内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該めっき層の表面からはみ出し、 前記第2砥粒は、長手方向の一方側の部分が前記めっき層の表面から突出しており、 前記第1砥粒を介して相隣接する前記第2砥粒間に複数のポケットが形成される、歯科用ダイヤモンドバー。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、「前記複数の砥粒には、長手方向の長さの、該長手方向と直交する短手方向の長さに対する比で表されるアスペクト比が1.4以上2.0以下である複数の特定砥粒が含有され」、「前記めっき層は、前記複数の特定砥粒の短手方向長さと略同じ厚さを有し」、「第1砥粒」と「第2砥粒」が「前記複数の特定砥粒」であるのに対し、引用発明は、特定砥粒が含有されるか不明である点。 [相違点2] 本願発明は、「前記複数の砥粒の粒度分布において、前記アスペクト比が1.4以上である砥粒の累積個数の、該複数の砥粒の全個数に対する累積比率は50%以上であ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。 [相違点3] 本願発明は、複数のポケットが「研削屑を逃がすための」ものであるのに対し、引用発明は、複数の空間がそのように特定されていない点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について検討する。 [相違点1] 歯科用ダイヤモンドバーに用いるダイヤモンド製の砥粒として、長手方向の長さの、該長手方向と直交する短手方向の長さに対する比で表されるアスペクト比が1.5~1.9のものを用いることは、周知例1及び2に例示されるように周知であるから、引用発明において、ダイヤモンド微粒子4に、上記周知のダイヤモンド製の砥粒を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、引用発明において、上記周知の砥粒とすれば、接続部3の厚さは特定砥粒の短手方向長さと略同じであり、複数の特定砥粒は、短手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第1砥粒と、長手方向が棒体1の切刃部2の表面に対して略垂直な複数の第2砥粒とを有し、前記第1砥粒は、前記接続部3内に埋没しているか、又は短手方向の一方側の部分が該接続部3内の表面からはみ出し、前記第2砥粒は、長手方向の一方側の部分が前記接続部3の表面から突出しており、前記第1砥粒を介して相隣接する前記第2砥粒間に複数の空間が形成されるものとなる。 したがって、引用発明において、ダイヤモンド微粒子4として、上記周知の砥粒を用いることで上記相違点1に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2] 上記周知の砥粒を採用すれば、複数の砥粒の粒度分布において、アスペクト比が1.4以上である砥粒の累積個数の、該複数の砥粒の全個数に対する累積比率は50%以上となる。 [相違点3] 引用発明において、研削する際に複数の空間に研削屑が入ることは明らかである。 したがって、上記相違点3は実質的な相違点ではない。 2 効果について 本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものということはできない。 3 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。なお、審判請求書における「引用文献2」は上記引用文献、「引用文献1」は上記周知例1である。 「本願発明では、アスペクト比が所定範囲(構成B)の特定砥粒は、所定の累積比率(構成C)で含有され、しかも第1砥粒と第2砥粒とを有しこれらとめっき層との関係(構成D~G)が特定されているため、優れた研削性能及び研削耐久性能が得られるだけでなく、(構成B~G)により、第1砥粒を介して相隣接する第2砥粒間に研削屑を逃がすために形成される複数のポケット(構成H)は、その大きさが十分に確保され研削時に目詰まりが発生し難くなるため、優れた研削性能が維持されます(本願明細書の段落[0033]、[0035]、[0041]~[0043]、実施例等をご参照ください)。このように、本願発明は、全体(構成A~H)として一つの発明概念を構成しています。これに対して、引用文献2及び1は、(構成B~G)と(構成H)との因果関係について何ら情報を与えません。したがって、引用文献2に記載された発明に、引用文献1に開示されている周知の技術に基づいて、本願請求項1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではありません。」(以下「主張1」という。) 「(ア)引用文献2に記載された発明の必須構成である「基体の外周に突起を盛り付け、この突起の表面に硬質の微粒子を固着させた」こと(請求項1記載事項)を欠落させた点は、上記意見書の(3)欄に記載しましたとおり、引用文献2の一部の記載のみから、合理的な根拠無く、引用文献2に記載された発明を認定したものと考えます(審査ハンドブックの3214 引用発明の認定に関する留意事項の枠外(1))。そうである以上、「上記相違点の事項を備える砥粒を採用した歯科用ダイヤモンドバーの構造上の構成は、本願の請求項1に係る発明の歯科用ダイヤモンドバーの構造上の構成と、同一である」とは認められません。 (イ)また、引用文献2には、ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接するダイヤモンド微粒子4間に研削屑を逃がすための複数のポケットが形成される点(構成H)について記載も示唆もありません。そもそも、引用文献2には、(構成H)の前提・契機となり得る情報(ダイヤモンド微粒子4のアスペクト比、配置等)の記載又は示唆がありません。 (ウ)そうしますと、引用文献2の図5に追加された符号Nで示すダイヤモンド微粒子4が「第1砥粒」に相当し、符号M1、M2で示すダイヤモンド微粒子4が「第2砥粒」に相当するとして、引用文献2には、「N」を介して相隣接する「M1」、「M2」間に研削屑を逃がすための複数のポケットが形成される歯科用ダイヤモンドバーが記載されているといえるとの認定(2.(2)欄)は、もはや引用文献2の文脈に沿ったものとはいえず、本願発明の知識を得た上で、引用文献2に記載された発明の内容を理解し、それと引用文献1の記載事項との組み合わせが可能となるように、その内容を曲解したものであると考えます。」(以下「主張2」という。) 「(ア)3.(2)のイの(イ)欄に記載しましたとおり、引用文献2には、研削屑を逃がすための複数のポケット及びその前提・契機となり得るダイヤモンド微粒子4のアスペクト比について記載も示唆もないことから、引用文献2に記載された発明において、引用文献1をみた当業者が、引用文献1の記載事項の中から、段落[0062]に記載の研磨粒子のアスペクト比をあえて適用する動機付けの存在が認められません。 (イ)付言しますと、令和5年2月15日付け提出の意見書に記載しましたとおり、引用文献1に記載されているのは、図6A(結合研磨物品の概略断面側面図)等に示されるように、断面を見たときに研磨面と軸の間(ボンド中)に研磨粒子が積層された状態の結合研磨物品であり、引用文献2に記載された発明とは構造上の構成が相違します。そうである以上、引用文献1の記載事項は、引用文献2に記載された発明において、当業者が通常は適用を考えないものです。この点からも、上記動機付けの存在が認められません。 (ウ)また、引用文献1の段落[0062]に複数例示される研磨粒子のアスペクト比の中で最も狭い範囲は「1.5以上」「12以下」です。「引用文献1において、アスペクト比が1.5以上、12以下と開示されていることは、」「1.5~12の範囲のアスペクト比のものを選択して用いることを開示しているものである。」との認定のとおり、引用文献1には「1.5~12」よりも狭い範囲を選択する具体的開示も積極的示唆もないことを考慮しますと、引用文献2に記載された発明において、ダイヤモンド微粒子4のアスペクト比を、「1.5~12」の範囲よりも上限が顕著に狭い「1.4以上2.0以下」(構成B)とすることは、引用文献1をみた当業者であっても容易に想到し得ることではありません。なお、引用文献2に記載された発明において、引用文献1をみた当業者が「1.5~12の範囲のアスペクト比のものを選択して用い」た場合は、ダイヤモンド微粒子4の長手方向の長さのばらつきが大きいことに起因して、上記「M1」と「M2」がめっき層から脱落し易くなり、上記「N」はその長手方向両端がめっき層からはみ出すおそれや、ポケットが広くなり過ぎること等の不都合に起因して、研削耐久性能が低下し、維持されないことは当業者であれば簡単に予測できます。 (エ)そして、「当該技術分野において既に知られ利用されている数値範囲のなかの数値を選択することだけでは、進歩性を認めることはできない。」との認定では、先行技術に記載の数値範囲に含まれる又は一部が重なる改良発明は総じて特許が認められないことになります。本願発明の(構成B)で特定する数値範囲は、引用文献1に具体的開示又は積極的示唆がない以上、単に、引用文献1に記載の数値範囲のなかの数値を選択することとは認められません。さらに、本願発明の(構成B)で特定する数値範囲は、(構成H)を実現するための一つの構成要素であり、単に、引用文献1に記載の数値範囲のなかの数値を選択することだけでは、本願発明は構成されません。この点からも、本願請求項1に係る発明の進歩性が阻却されるものではないと確信いたします。」(以下「主張3」という。) 上記主張1について、上記1で述べたとおり、本願発明は、引用発明において上記周知の砥粒を採用したものにすぎない。 上記主張2について、引用文献の請求項1に記載される「基体の外周に突起を盛り付け、この突起の表面に硬質の微粒子を固着させた」という事項は、仮に引用発明の認定に加えたとしても、本願発明との対比において新たな相違点が生じるものではなく、上記1の結論に影響しない。また、上記第4で述べたとおり、引用文献の第5図からは、第1ダイヤモンド微粒子4を介して相隣接する第2ダイヤモンド微粒子4間に空間が形成されていることが看て取れる。 上記主張3について、上記1で述べたとおり、歯科用ダイヤモンドバーに用いるダイヤモンド製の砥粒として、長手方向の長さの、該長手方向と直交する短手方向の長さに対する比で表されるアスペクト比が1.4以上2.0以下であるものは周知であり、引用発明において上記周知の砥粒を採用することに、特段の困難性はない。そして、上記1で述べたとおり、本願発明は、引用発明において上記周知の砥粒を採用したものにすぎない。 4 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-002721

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決6件(マニー株式会社)
  • 2024-012640拒絶査定不服審判 / 2026-03-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)オーステナイト系ステンレス鋼製伸線材および該伸線材から形成された医療器具、並びに…
    同じ当事者: マニー株式会社
  • 2020-016586拒絶査定不服審判 / 2021-09-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)刺通針付きカニューレ
    同じ当事者: マニー株式会社
  • 2020-014347拒絶査定不服審判 / 2021-05-28 / 請求不成立2次元コード表示媒体
    同じ当事者: マニー株式会社
  • 2018-016915拒絶査定不服審判 / 2020-01-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)硝子体手術用プローブの製造方法
    同じ当事者: マニー株式会社
  • 2019-007973拒絶査定不服審判 / 2019-11-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)ブリスターパック
    同じ当事者: マニー株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)217件(121・A61C)
  • 2024-011207拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)倍音特徴を利用した歯科材料の加熱、染料の吸収、および材料特性
    共通の審決分類: 121・A61C
  • 2024-007541拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)複数の歯牙位置を歯磨きするためのブラシ毛付きパッドおよびマウスピースの製造方法な…
    共通の審決分類: 121・A61C
  • 2023-002817拒絶査定不服審判 / 2026-05-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)3Dスキャンを使用して、歯肉線を追跡し、歯周測定値を表示する器具
    共通の審決分類: 121・A61C
  • 2024-012620拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 請求不成立データ処理装置、データ処理方法、およびプログラム
    共通の審決分類: 121・A61C
  • 2024-008584拒絶査定不服審判 / 2026-04-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)歯間清掃具
    共通の審決分類: 121・A61C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存