特許拒絶査定不服審判
2024-002518
流量計および流量計の製造方法
- 審判番号
- 2024-002518
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-027194外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サーパス工業株式会社
- 【請求人代理人】藤田 考晴
- 【請求人代理人】三苫 貴織
- 【請求人代理人】川上 美紀
- 【請求人代理人】長田 大輔
- 分類
- P18 .121-WZ (G01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 27194「流量計および流量計の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 9日出願公開、特開2021-131323〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年2月20日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 8月15日付け:拒絶理由通知書
同年10月23日 :意見書及び手続補正書の提出
同年11月 7日付け:拒絶査定
令和6年 2月14日 :審判請求書の提出
同年10月31日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書
」という。)
令和7年 1月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年1月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
<本願発明>
「液体が流入する流入口と該流入口から流入した液体を流出させる流出口とを有するとともに軸線に沿って延びる内部流路が形成された導電性を有する測定管と、
前記軸線に沿って加熱用抵抗体と温度検出用抵抗体とが検出面に形成された温度検出基板と、を備え、
平坦状に形成された前記検出面には、前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を薄膜状の絶縁材料により被膜した絶縁領域が前記絶縁材料を蒸着させることにより形成されており、
前記測定管の外周面には、前記温度検出基板の前記検出面が対向して配置される平坦面が形成されており、
前記温度検出基板の前記検出面から前記内部流路の内周面までの第1距離が前記測定管の頂部から前記内部流路の内周面までの第2距離よりも短く、
前記絶縁領域は0.1μm以上かつ10μm以下の厚さで前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を被膜しており、
前記絶縁領域が前記軸線に沿って前記測定管の前記平坦面に接着剤により接合されている流量計。」
3 当審拒絶理由通知書における拒絶理由の概要
本願発明は、本件補正前の請求項1に係る発明を補正したものであるところ、当審拒絶理由通知書における拒絶理由は、当該請求項1に係る発明に対する、次の理由を含むものである。
(進歩性)請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2016-156651号公報
2.特開2006-78218号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-355815号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2019-82346号公報(周知技術を示す文献)
4 当審の判断
(1)引用文献の記載及び引用発明の認定
ア 引用文献の記載
当審拒絶理由通知書で引用された特開2016-156651号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
「【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の熱式流量計100について図面を参照して説明する。
本実施形態の熱式流量計100は、内部流路を流通する液体を加熱し、加熱された液体の温度を検出することで液体の流量を測定する熱式流量計である。本実施形態の熱式流量計100は、例えば、0.1cc/min~30cc/minの微少流量を測定するのに適している。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態の熱式流量計100は、センサ部10と、制御基板20と、中継基板30と、アッパーケース40と、ボトムケース50とを備える。」
「【0022】
次に、図3~図8を参照してセンサ部10について詳細に説明する。
図3および図4に示すように、センサ部10は、測定管11と、センサ基板12(温度検出基板)と、ガイド14と、ナット15と、流入側ボディ16と、流出側ボディ17と、流入側フェルール18と、流出側フェルール19とを有する。
【0023】
測定管11は、液体が流入する流入口11aと流入口11aから流入した液体を流出させる流出口11bとを有する管である。図6(図3のA-A矢視断面図)に示すように、測定管11には軸線Xに沿って延びる断面視が円形の内部流路10cが形成されている。測定管11は、ガラス(例えば、二酸化ケイ素の含有率の高い石英ガラス)により形成されている。
【0024】
センサ基板12は、図8に示すように、軸線Xに沿って加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが検出面12dに形成されたガラス製(例えば、二酸化ケイ素の含有率の高い石英ガラス製)の基板である。
加熱用抵抗線12aと、温度検出用抵抗線12bと、温度検出用抵抗線12cとは、それぞれ白金等の金属膜をガラス製の基板上に蒸着させて形成される。」
「【0027】
図6(図3のA-A矢視断面図)に示すように、測定管11はセンサ基板12が接着される位置において、軸線Xに直交する平面による断面が略円形となっている。測定管11の外周面のうちセンサ基板12の検出面12dが対向して配置される面は、平坦面11cとなっている。
また、図7(図5(b)のB-B矢視断面図)に示すように、測定管11はセンサ基板12が接着されない位置において、軸線Xに直交する平面による断面が円形となっている。
【0028】
図5および図6に示すように、測定管11の平坦面11cはセンサ基板12の検出面12dと対向するように配置されている。平坦面11cと検出面12dとは、接着剤により接着されている。
ここで、接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、紫外線硬化性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤(熱硬化性接着剤)、低融点ガラス等を用いることができる。
【0029】
図6に示すように、センサ基板12の検出面12dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D1(第1距離)は、測定管11の頂部11dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D2(第2距離)よりも短くなっている。これは、センサ基板12の検出面12dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D1を短くして、加熱用抵抗線12aから液体への熱伝導性を向上させるとともに温度検出用抵抗線12bおよび温度検出用抵抗線12dによる温度検出特性を向上させるためである。」
[図:0001425301000001.jpg]
[図:0001425301000002.jpg]
[図:0001425301000003.jpg]
イ 引用文献1から認定できる事項
【0028】の「平坦面11cと検出面12dとは、接着剤により接着され」との記載と図5(b)及び図6から、検出面12dが平坦状に形成されていることが看取できる。
ウ 引用発明の認定
引用文献1には、第1実施形態(図1~図8)に記載された熱式流量計について、次の発明(以下「引用発明」という。a等は分説のために付した。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「a センサ部10を備え、(【0017】)
b センサ部10は、測定管11と、センサ基板12(温度検出基板)を有し、(【0022】)
c 測定管11は、液体が流入する流入口11aと流入口11aから流入した液体を流出させる流出口11bとを有する管であり、測定管11には軸線Xに沿って延びる断面視が円形の内部流路10cが形成され、測定管11は、ガラスにより形成され、(【0023】)
d センサ基板12(温度検出基板)は、軸線Xに沿って加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが検出面12dに形成されたガラス製の基板であり、(【0024】)
e 測定管11の外周面のうちセンサ基板12の検出面12dが対向して配置される面は、平坦面11cとなっており、(【0027】)
f 測定管11の平坦面11cはセンサ基板12(温度検出基板)の検出面12dと対向するように配置され、平坦面11cと検出面12dとは、接着剤により接着され、(【0028】)
g センサ基板12(温度検出基板)の検出面12dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D1(第1距離)は、測定管11の頂部11dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D2(第2距離)よりも短く、(【0029】)
h 検出面12dは平坦状に形成されている(前記イ)
i 熱式流量計100(【0017】)。」
(2)本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願発明の「液体が流入する流入口と該流入口から流入した液体を流出させる流出口とを有するとともに軸線に沿って延びる内部流路が形成された導電性を有する測定管と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「液体が流入する流入口11a」、「流入口11aから流入した液体を流出させる流出口11b」、「軸線Xに沿って延びる」「内部流路10c」及び「測定管11」(c参照)は、それぞれ、本願発明の「液体が流入する流入口」、「該流入口から流入した液体を流出させる流出口」、「軸線に沿って延びる内部流路」及び「測定管」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、「液体が流入する流入口と該流入口から流入した液体を流出させる流出口とを有するとともに軸線に沿って延びる内部流路が形成された」「測定管」の点で共通するものの、測定管が、本願発明は「導電性を有する」ものであるのに対し、引用発明は「ガラスにより形成され」たものであることから、導電性を有しないものである点で相違する。
イ 本願発明の「前記軸線に沿って加熱用抵抗体と温度検出用抵抗体とが検出面に形成された温度検出基板と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)」、「温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)」、「検出面12d」及び「センサ基板12(温度検出基板)」(d参照)は、それぞれ、本願発明の「加熱用抵抗体」、「温度検出用抵抗体」、「検出面」及び「温度検出基板」に相当する。そして、引用発明の「加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)」は、「軸線Xに沿って」「検出面12dに形成された」(d参照)ものであるから、本願発明でいう「前記軸線に沿って」「検出面に形成された」ものである。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。
ウ 本願発明の「平坦状に形成された前記検出面には、前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を薄膜状の絶縁材料により被膜した絶縁領域が前記絶縁材料を蒸着させることにより形成されており」との特定事項について
引用発明の「検出面12d」は、「平坦状に形成され」(h参照)たものであるから、本願発明でいう「平坦状に形成された」ものである。
また、引用発明において、検出面12dには、加熱用抵抗体12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが形成された(d参照)領域が形成されているといえる。
そうすると、本願発明の上記特定事項と、引用発明とは、「平坦状に形成された前記検出面には、前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体」が形成された領域が「形成されて」いる点で共通するが、検出面における加熱用抵抗体および温度検出用抵抗体に対して、本願発明は「薄膜状の絶縁材料により被膜した絶縁領域が前記絶縁材料を蒸着させることにより形成されて」いるのに対し、引用発明は、そのような絶縁領域が形成されていない点で相違する。
エ 本願発明の「前記測定管の外周面には、前記温度検出基板の前記検出面が対向して配置される平坦面が形成されており」との特定事項について
引用発明の「測定管11の外周面のうちセンサ基板12の検出面12dが対向して配置される面は、平坦面11cとなって」(e参照)いることは、本願発明の「前記測定管の外周面には、前記温度検出基板の前記検出面が対向して配置される平坦面が形成されて」いることに相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。
オ 本願発明の「前記温度検出基板の前記検出面から前記内部流路の内周面までの第1距離が前記測定管の頂部から前記内部流路の内周面までの第2距離よりも短く」との特定事項について
引用発明の「センサ基板12(温度検出基板)の検出面12dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D1(第1距離)は、測定管11の頂部11dから内部流路10cの内周面10dまでの距離D2(第2距離)よりも短」(g参照)いことは、本願発明の「前記温度検出基板の前記検出面から前記内部流路の内周面までの第1距離が前記測定管の頂部から前記内部流路の内周面までの第2距離よりも短」いことに相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。
カ 本願発明の「前記絶縁領域は0.1μm以上かつ10μm以下の厚さで前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を被膜しており」との特定事項について
本願発明は「前記絶縁領域は0.1μm以上かつ10μm以下の厚さで前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を被膜して」いるのに対し、引用発明は、上記ウで検討したように、絶縁領域が形成されていないことから、そのような構成を備えていない点で相違する。
キ 本願発明の「前記絶縁領域が前記軸線に沿って前記測定管の前記平坦面に接着剤により接合されている」との特定事項について
引用発明は、「測定管11の平坦面11cは、センサ基板12(温度検出基板)の検出面12dと対向するように配置され、平坦面11cと検出面12dとは、接着剤により接着され」(f参照)るものであるところ、「軸線Xに沿って加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが検出面12dに形成され」(d参照)ることからすれば、検出面12dに形成された加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが形成された領域が軸線Xに沿って測定管11cの平坦面11cに接着剤により接合されているといえる。
したがって、本願発明と、引用発明とは、前記検出面に形成された前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体が形成された「領域が前記軸線に沿って前記測定管の前記平坦面に接着剤により接合されている」点で共通するが、軸線に沿って測定管の平坦面に接着剤により接合されるのが、本願発明では「絶縁領域」であるのに対し、引用発明では、検出面12dに形成された加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが形成された領域であり、絶縁領域ではない点で相違する。
ク 本願発明の「流量計」との特定事項について
引用発明の「熱式流量計100」(i参照)は、本願発明の「流量計」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「液体が流入する流入口と該流入口から流入した液体を流出させる流出口とを有するとともに軸線に沿って延びる内部流路が形成された測定管と、
前記軸線に沿って加熱用抵抗体と温度検出用抵抗体とが検出面に形成された温度検出基板と、を備え、
平坦状に形成された前記検出面には、前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体が形成された領域が形成されており、
前記測定管の外周面には、前記温度検出基板の前記検出面が対向して配置される平坦面が形成されており、
前記温度検出基板の前記検出面から前記内部流路の内周面までの第1距離が前記測定管の頂部から前記内部流路の内周面までの第2距離よりも短く、
前記検出面に形成された前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体が形成された領域が前記軸線に沿って前記測定管の前記平坦面に接着剤により接合されている流量計。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
測定管について、本願発明は「導電性を有する」ものであるのに対し、引用発明は「ガラスにより形成された」ものであるから、導電性を有しないものである点。
<相違点2>
検出面には、本願発明は「前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を薄膜状の絶縁材料により被膜した絶縁領域が前記絶縁材料を蒸着させることにより形成されており」、「前記絶縁領域は0.1μm以上かつ10μm以下の厚さで前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を被膜して」いるのに対し、引用発明は、そのような絶縁領域が形成されていない点。
<相違点3>
軸線に沿って測定管の平坦面に接着剤により接合されるのが、本願発明では「絶縁領域」であるのに対し、引用発明では、検出面12dに形成された加熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)と温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)と温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)とが形成された領域であり、絶縁領域ではない点。
(3)判断
ア 相違点1~3について
相違点1~3は、相互に関連するので、まとめて検討する。
熱式流量計において、測定管を熱伝導性、耐腐食性等を考慮してステンレスなどの金属やガラス状炭素等の導電体で形成することは、例えば、以下の文献に記載されているように周知技術である。
・周知技術を示すために当審拒絶理由通知書で引用文献2として引用された特開2006-78218号公報
(「【0002】・・・熱式流量センサ・・・」、「【0005】・・・流路を構成する配管は通常ステンレスなどの金属(導電体)であることが多く・・・」)
・周知技術を示すために当審拒絶理由通知書で引用文献3として引用された特開2004-355815号公報
(「【0006】・・・熱式流量計は・・・良好な熱伝導性を有する材料で流路管を形成する必要がある。そこで、従来より処理液に対する耐腐食性や耐酸性などを考慮してステンレス鋼などの金属管が多用されていた。その結果、金属管(流路管)の構成材料に含まれる金属物質がイオンとして処理液に混入し、そのまま基板に塗布されてしまう場合があった。」「【0031】・・・流路管をガラス状炭素で形成しているので、処理液が流路管内を流通している間に金属イオンが処理液に混入するという従来の熱式流量計が抱えていた問題を解消することができる。また、ガラス状炭素が耐有機溶剤性、耐食性、耐酸性などに優れていることから、処理液により流路管が腐食されず、処理液の流量を正確に計測することが可能となる。」)
・周知技術を示すために当審拒絶理由通知書で引用文献4として引用された特開2019-82346号公報
(「【0021】・・・配管101を、ガラス状カーボンから構成したので、薄く形成されている測定部101aにおける破損が抑制できる状態で、熱式流量計を用いてより流量感度の高い高精度な流量測定ができるようになる。また、ガラス状カーボンは、熱伝導率がフッ素樹脂よりも高く、また、ガラスよりも高い。このため、実施の形態によれば、流量感度を更に向上でき、より高精度な流量センサが提供できるようになる。」)
また、熱式流量計において、金属等の導電体で形成した測定管に、抵抗体からなる加熱部や温度検出部を密着形成する際には、これらの間に絶縁膜を介在させる必要があることは、例えば、以下の文献に記載されているように周知技術である。
・周知技術を示すために当審拒絶理由通知書で引用文献2として引用された特開2006-78218号公報
(「【0005】・・・流路を構成する配管は通常ステンレスなどの金属(導電体)であることが多く、その外壁面に巻線や金属薄膜抵抗体などからなる温度検出部を密着形成するためにはこれらの間に絶縁膜を介在させる必要がある。かかる絶縁膜は金属に比べて基本的に熱伝導率が低いものが多いため、この絶縁膜の厚さを厚くすると熱伝導が悪くなり温度検出部の感度や応答性が低下する。一方、絶縁膜の厚さを薄くすると耐電圧が低くなってしまう問題が生じる。・・・」、「【0035】・・・被測定流体が流れる配管100は例えば金属の管路からなり、ヒータ11は絶縁材で被覆された巻線や薄膜抵抗体などの電気抵抗体からなる。なお、ヒータ11が巻き線の場合は管路外壁面の所定位置に巻き付けられ、薄膜抵抗体の場合は絶縁体層を介して管路外壁面の所定位置に形成される。」
【図1】
[図:0001425301000004.jpg]
)
・周知技術を示すために本審決で新たに引用する特開2017-102091号公報
(「【0019】センサ流路3は、メイン流路管20に接続されたセンサ流路管30により形成されている。センサ流路管30は、概略逆U字形状をなす中空細管(導管)である。本実施形態のセンサ流路管30は、ステンレス等の金属製である。・・・」、「【0022】上流側コイル411は、センサ流路3の上流側におけるセンサ流路管30の外側周面30aに発熱抵抗体6を巻き付けて構成されている。また、下流側コイル412は、センサ流路3の下流側におけるセンサ流路管30の外側周面30aに発熱抵抗体6を巻き付けて構成されている。」、「【0023】上流側コイル411及び下流側コイル412の発熱抵抗体6は、温度に応じて電気抵抗値が変化する金属線から形成されている。」、「【0028】・・・本実施形態の第1絶縁層8は、センサ流路管30の流路方向に沿って螺旋溝7全体を含む範囲において、センサ流路管30の外側周面30a全周を被覆している。この第1絶縁層8は、例えばアルミナ等の電気絶縁性を有する無機材料から形成されている。また、第1絶縁層8は、例えば蒸着又は溶射等により形成された薄膜であり、略均一の膜厚を有するものである。」
【図1】
[図:0001425301000005.jpg]
【図2】
[図:0001425301000006.jpg]
)
・周知技術を示すために本審決で新たに引用する特開2003-240618号公報
(「【0014】前記センサチップ3の材質としては、熱伝導率がシリコンに比べて低く、耐熱性、耐食性および剛性の高い材料、具体的にはステンレス鋼が用いられる。・・・」、「【0023】前記センサチップ3の上面3aには、電気絶縁膜13が全面にわたって形成されており、この電気絶縁膜13の表面に6つの電極パッド14(14a~14f)および配線用金属薄膜15を含む前記流速検出手段12と周囲温度検出手段16が周知の薄膜成形技術によって形成されている。・・・」、「【0024】・・・流速検出手段12は、1つの発熱体(抵抗ヒータ)20と2つの温度センサ21A,21Bとからなり、傍熱型の流速検出手段を構成している。・・・」、「【0025】前記電気絶縁膜13は、厚さが1μm程度の酸化シリコン(SiO2)膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、ポリイミド等によって形成されている。酸化シリコン膜は、例えばスパッタリング、CVDあるいはSOG(スピンオングラス)等により形成される。・・・」
【図1】
[図:0001425301000007.jpg]
【図2】
[図:0001425301000008.jpg]
)
そうすると、引用発明において、上記2つの周知技術を適用して、熱伝導性、耐腐食性等を考慮して、ガラスにより形成された測定管11(a参照)に代えて、ステンレスなどの金属やガラス状炭素等の導電体で形成された測定管とし、センサ基板12(温度検出基板)に形成された熱用抵抗線12a(加熱用抵抗体)、温度検出用抵抗線12b(温度検出用抵抗体)及び温度検出用抵抗線12c(温度検出用抵抗体)と、測定管との間に絶縁膜を介在させることに格別の困難性はない。
そして、薄膜を形成するために、例えば前記特開2017-102091号公報(【0028】)、前記特開2003-240618号公報(【0025】)にも見られるように周知・慣用手段であるスパッタリングやCVD等の蒸着を用いることに何らの困難も認められない。そして、その際には、前記特開2006-78218号公報(【0005】)にも開示されているように、絶縁膜の厚さは温度検出部の感度や応答性と耐電圧のトレードオフであるという技術常識を考慮してこれを決定することは当業者が当然考慮すべき設計事項にすぎないし、相違点2に係る本願発明の「0.1μm以上かつ10μm以下」との具体的な値についても、前記特開2003-240618号公報(【0025】)に見られるようにごく普通の厚さにすぎない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、相違点1~3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 請求人の主張について
請求人は、令和7年1月6日提出の意見書において、
(ア)引用文献2(特開2006-78218号公報)の【0005】には、金属の配管と温度検出部との間に絶縁膜を介在させて温度検出部を密着形成すると、絶縁膜は金属に比べて基本的に熱伝導率が低いものが多いため、この絶縁膜の厚さを厚くすると熱伝導が悪くなり温度検出部の感度や応答性が低下する一方、絶縁膜の厚さを薄くすると耐電圧が低くなってしまう問題が生じるとの課題に対する解決策として、管路内の被測定流体の温度を非接触で検出するという構成を採用することが説明され、金属の配管と温度検出部との間に絶縁膜を介在させて温度検出部を密着形成する構成の問題点が明確に指摘されており、引用文献2で採用が否定されている構成を当業者が採用することは想到し得ない旨、
(イ)引用文献2の【0035】には、「・・・被測定流体が流れる配管100は例えば金属の管路からなり、ヒータ11は絶縁材で被覆された巻線や薄膜抵抗体などの電気抵抗体からなる。なお、ヒータ11が巻き線の場合は管路外壁面の所定位置に巻き付けられ、薄膜抵抗体の場合は絶縁体層を介して管路外壁面の所定位置に形成される。」との記載は引用文献2の図1に示すように赤外線検出センサ12,13を配管から離れた非接触の位置に配置することを前提とした説明であり、加熱用抵抗体だけでなく温度検出用抵抗体も絶縁材料により被膜するという構成を採用し得ず、引用文献1に対して引用文献2の【0035】の記載を適用する場合、当業者であれば、絶縁膜が介在することにより温度検出部の感度や応答性が低下する問題点を考慮して、赤外線検出センサ12,13のように非接触で温度を検出する構成を採用するのが明らかである旨、
(ウ)また、引用文献2の【0005】には、金属の配管と温度検出部との間に絶縁膜を介在させるという解決策が示唆されており、【0035】には、ヒータ11と管路外壁面との間に絶縁膜を介在させることが示唆されているものの、具体的にどのように絶縁膜を介在させるのかについて何等の開示も示唆もなく、したがって、引用文献2の記載から、本願発明の「平坦状に形成された前記検出面には、前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を薄膜状の絶縁材料により被膜した絶縁領域が前記絶縁材料を蒸着させることにより形成されており」との構成を想到することは決して容易なことではない旨、
(エ)さらに、引用文献2の【0005】、【0035】には、絶縁膜の厚さをどのように設定するかについて何等の開示も示唆もなく、したがって、本願発明のように「前記絶縁領域は0.1μm以上かつ10μm以下の厚さで前記加熱用抵抗体および前記温度検出用抵抗体を被膜しており」との構成を採用して絶縁性を確保しつつ熱導電性を維持する効果を奏することは当業者が決して容易に想到し得ることではない旨、
を主張する。
しかしながら、引用文献2は、熱式流量計において、金属等の導電体で形成した測定管に、抵抗体からなる加熱部や温度検出部を密着形成する際には、これらの間に絶縁膜を介在させる必要があることが周知技術であることを示す一例として挙げたものであり、引用文献2の他の記載から絶縁膜を採用し得ないとする請求人の主張は、本審決の理由を正解するものではない。
そして、前記アで検討したように、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、請求人の主張は採用し得ない。
ウ 小括
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-002518