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特許拒絶査定不服審判

2024-001553

光加熱方法、n型SiC半導体用の光加熱装置

審判番号
2024-001553
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-155581
請求日
2024年01月29日
審決日
2025年01月08日
公報発行日
2025年02月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】ウシオ電機株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 河本 充雄
  • 審判官 綿引 隆
  • 審判官 大橋 達也
分類
P18 .121-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023-155581「光加熱方法、n型SiC半導体用の光加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和5年9月21日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年11月 2日付け:拒絶理由通知書 同年11月27日 :意見書 令和6年 1月16日付け:拒絶査定 同年 1月29日 :審判請求書、手続補正書 第2 原査定の理由の概要 原査定(令和6年1月16日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。 本願の請求項1、2、4~6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願の請求項3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.国際公開第2007/049413号 引用文献2.特開2011-171548号公報 引用文献3.特開2009-27001号公報 引用文献4.特開平10-326754号公報 引用文献5.特開2018-44915号公報 引用文献6.特開2000-182980号公報 第3 本願発明 本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、令和6年1月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 n型SiC半導体である被処理体に対し、赤外光ランプを備えた光源部から出射された色温度が2,200K~2,600Kの範囲内の加熱光を、窓部材を介して照射して前記被処理体を加熱する工程(a)を有することを特徴とする、光加熱方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「[0015][実施例1] 図1は本発明の実施例1に係る半導体製造装置の構成を示す図である。図1に示す実施例1の装置は、炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する際に使用される急速加熱処理装置であり、炭化珪素半導体基板の表裏両面に電気的に接続を取るための電極を形成する工程を示している。 [0016] 急速加熱処理装置は、透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱して、熱処理を施す装置である。 ・・・ [0019] 加熱処理装置の加熱室内に載置される炭化珪素半導体基板10の表面(一方主面)側には金属薄膜11、裏面(他方主面)側には金属薄膜12がそれぞれスパッタ法、電子ビーム蒸着法などの方法により形成されている。 [0020] 炭化珪素半導体基板10には、例えばpnダイオード、縦型MOSFET等の半導体素子13が形成されている。pnダイオードであれば金属薄膜11は、例えばp型に対するコンタクトメタルであるTi/Al、Ni/Alなどが好適である一方、金属薄膜12はn型に対するコンタクトメタルであるNiなどが好適である。MOSFETであれば、金属薄膜11は、例えばソース電極に相当し、金属薄膜12はドレイン電極に相当する。一般的に、nチャネル型のMOSFETが多用されるのでソース、ドレイン電極は供にn型であるので、コンタクトメタルはNiなどが好適である。また、ゲート電極に対するコンタクトメタルとして同じくNiなどを用いてもよい。 ・・・ [0030] 熱伝導体21a,21bの寸法は、少なくとも炭化珪素半導体基板10を覆うだけの十分な大きさのものがよい。炭化珪素半導体のようなワイドギャップ半導体は一般に赤外線の吸収が乏しく、赤外線ランプによる急速加熱は困難である。しかしながら、この実施例1のように、赤外吸収の強い熱伝導体21a,21bを炭化珪素半導体基板10に近接させて配置することで、加熱された熱伝導体21a,21bが加熱源となって、さらには均熱板の役割も担って、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる。」 「[0053][実施例3] 図6は本発明の実施例3に係る半導体製造装置の構成を示す図である。図6に示す実施例3の装置は、先の図1と同様の急速加熱処理装置であり、炭化珪素半導体基板の表裏両面に電気的に接続を取るための電極を形成する工程に使用する。なお、図6の保持構造体25以外の構成、ならびに炭化珪素半導体基板10に対するオーミックコンタクトの電極材料などについては先の実施例1で述べた内容と同様であり、説明は省略する。 [0054] 図6において、この実施例3の特徴は、先の実施例1の熱伝導体が保持構造体25を兼ねた構造体となっている。保持構造体25の材料としては、実施例1で述べた保持構造体20と同様に高耐熱、高純度が必要であると同時に、赤外線を吸収する材料がよく、例えばシリコン結晶が取扱いが容易でコストも安く好適であるが、他にはゲルマニウムの単結晶または多結晶、あるいは炭素または炭化珪素の焼結体などを用いることができる。 ・・・ [0062] 以上説明したように、上記実施例3においては、炭化珪素半導体基板10を保持する保持構造体25に実施例1で説明した熱伝導体21a、21bの機能を備えることで、構成が簡単になり作業性を向上することができる。」 「[図1] [図:0001419063000001.jpg] [図2] [図:0001419063000002.jpg] [図3] [図:0001419063000003.jpg] [図4] [図:0001419063000004.jpg] 」 「[図6] [図:0001419063000005.jpg] 」 (2)引用発明 ア 実施例1の記載について (ア)上記(1)の [0015]には、急速加熱処理装置が炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する際に使用されるものであることが記載されている。 (イ)上記(1)の [0016]には、「急速加熱処理装置は、透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱して、熱処理を施す装置である」ことが記載されている。 (ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱して、炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する方法が記載されているといえる。 (エ)上記(1)の[0019]には、炭化珪素半導体基板10の表面(一方主面)側には金属薄膜11、裏面(他方主面)側には金属薄膜12が形成されていることが記載されている。 (オ)上記(1)の[0020]には、金属薄膜12はn型に対するコンタクトメタルであるNiなどが好適であることが記載されている。 (カ)上記(1)の[0030]には、「熱伝導体21a,21bの寸法は、少なくとも炭化珪素半導体基板10を覆うだけの十分な大きさのものがよい。炭化珪素半導体のようなワイドギャップ半導体は一般に赤外線の吸収が乏しく、赤外線ランプによる急速加熱は困難である。しかしながら、この実施例1のように、赤外吸収の強い熱伝導体21a,21bを炭化珪素半導体基板10に近接させて配置することで、加熱された熱伝導体21a,21bが加熱源となって、さらには均熱板の役割も担って、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる。」と記載されているから、この「赤外吸収の強い熱伝導体21a,21bを炭化珪素半導体基板10に近接させて配置することで、加熱された熱伝導体21a,21bが加熱源となって、さらには均熱板の役割も担って、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる。」との構成は、赤外吸収の強い熱伝導体21a,21bを炭化珪素半導体基板10に近接させて配置し、熱伝導体21に対して赤外光を照射することにより加熱された熱伝導体21a,21bが加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができるものであるといえる。 (キ)上記(ア)~(カ)から、引用文献1には、実施例1として、 「透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱して、炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する方法であって、 炭化珪素半導体基板10の表面(一方主面)側には金属薄膜11、裏面(他方主面)側にはn型に対するコンタクトメタルであるNiなどが好適である金属薄膜12が形成されており、 赤外吸収の強い熱伝導体21a,21bを炭化珪素半導体基板10に近接させて配置し、熱伝導体21に対して赤外光を照射することにより加熱された熱伝導体21a,21bが加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる、 炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する方法。」 が記載されているといえる。 イ 実施例3の記載について (ア)上記(1)の[0053]には、「図6に示す実施例3の装置は、先の図1と同様の急速加熱処理装置であり、炭化珪素半導体基板の表裏両面に電気的に接続を取るための電極を形成する工程に使用する。なお、図6の保持構造体25以外の構成、ならびに炭化珪素半導体基板10に対するオーミックコンタクトの電極材料などについては先の実施例1で述べた内容と同様であり、説明は省略する。」と記載されている。 (イ)上記(1)の[0054]には、保持構造体25の材料としては、赤外線を吸収する材料がよいことが記載されている。 (ウ)上記(1)の[0062]には、「炭化珪素半導体基板10を保持する保持構造体25が、実施例1で説明した熱伝導体21a、21bの機能を備えること」が記載されている。 (エ)上記(ア)~(ウ)から、引用文献1には、実施例3として、保持構造体25以外の構成、ならびに炭化珪素半導体基板10に対するオーミックコンタクトの電極材料などについては先の実施例1で述べた内容と同様であり、 熱伝導体21a、21bの機能を備える赤外吸収の強い保持構造体25に対して赤外光を照射することにより、保持構造体25が加熱され、保持構造体25が加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができることが記載されているといえる。 ウ 上記ア(キ)及びイ(エ)から、引用文献1には、実施例3として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱して、炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する方法であって、 炭化珪素半導体基板10の表面(一方主面)側には金属薄膜11、裏面(他方主面)側にはn型に対するコンタクトメタルであるNiなどが好適である金属薄膜12が形成されており、 熱伝導体21a、21bの機能を備える赤外吸収の強い保持構造体25に対して赤外光を照射することにより、保持構造体25が加熱され、保持構造体25が加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる、 炭化珪素半導体基板の両面にオーミックコンタクトを形成する方法。」 2 引用文献2について (1)引用文献2には、以下の記載がある。 「【0019】 以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。この製造方法は、まず、ステップS101で、シリコン層を備えた基板の上にシリコン素子からなる回路を形成する(第1工程)。例えば、公知の、成膜技術,リソグラフィー技術,エッチング技術,不純物導入技術,レジスト剥離技術,および洗浄技術などにより、トランジスタ,抵抗素子,容量素子,電極,配線,および不純物導入領域などを含むシリコン電子回路を形成する。また、公知の成膜技術,リソグラフィー技術,エッチング技術,不純物導入技術,レジスト剥離技術,および洗浄技術などにより、シリコンコア,クラッド,不純物導入領域,電極,および配線などを含むシリコン光回路を形成する(非特許文献2参照)。 【0020】 次に、ステップS102で、基板の上にゲルマニウム層を成長(形成)する(第2工程)。ゲルマニウム層の成長は、例えば、GeH4をソースガスとしたCVD法により行うことができる。例えば、所望とする箇所のシリコン層が露出しているようにすることで、露出しているシリコン層の上に選択的にゲルマニウム層を形成することができる。次に、ステップS103で、波長1.1nmよりも長波長側に発光スペクトルの成分を有する赤外線ランプによる赤外線の照射でゲルマニウム層を選択的に加熱する(第3工程)。この加熱により、ゲルマニウム層(ゲルマニウム結晶)の成長過程において生じる格子欠陥の数が低減できる。 ・・・ 【0027】 従って、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が含まれる赤外線ランプを用いれば、シリコンは加熱せずに、ゲルマニウムを選択的に加熱することができる。例えば、シリコン回路部分は、温度が450℃より低温に維持した状態で、ゲルマニウム層は900℃程度に加熱することが可能となる。このような赤外線ランプとしては、熱処理用赤外線ハロゲンランプを用いることができる。 【0028】 例えば、熱処理用赤外線ハロゲンランプの発光スペクトルは、図2に示すようになる(非特許文献3参照)。図2は、色温度が異なる4つのハロゲンランプの特性を示しており、図中に示す2200K,2600K,3000K,および3400Kは、色温度を示している。図2より明らかなように、ハロゲンランプの色温度が2200Kの場合、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が存在する。このような発光スペクトルを持つ赤外線ランプの照射によりゲルマニウムは発熱する。この熱の一部は、熱伝導によりシリコン部分にも伝わるが、シリコン基板の上に占めるゲルマニウム素子の面積比は極わずかであるので、ゲルマニウム層から離れるに従って、急激に温度は下がり、他のデバイスへの影響は少ないと考えられる。」 (2)上記(1)の記載によれば、シリコン層を備えた基板の上にシリコン素子からなる回路を形成し(【0019】)、次に、基板の上にゲルマニウム層を成長し(【0020】)、次に、波長1.1nmよりも長波長側に発光スペクトルの成分を有する赤外線ランプによる赤外線の照射でゲルマニウム層を選択的に加熱し(【0020】)、ハロゲンランプの色温度が2200Kの場合、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が存在し(【0028】)、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が含まれる赤外線ランプを用いれば、シリコンは加熱せずに、ゲルマニウムを選択的に加熱することができること(【0027】)は、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 3 引用文献3について (1)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2009-27001号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。 「【0031】 昇温加熱用ランプ10B及び定温加熱用ランプ10Aは、いずれのものも、定格点灯時(定格電力を投入して点灯させたとき)のフィラメントの色温度が2100K以上であるものであることが好ましく、より好ましくは2100~3200Kであり、温度調整時の制御性やランプ寿命を考慮すると、2300~3000Kであるものであることが特に好ましい。フィラメントの色温度が2100K未満である場合には、フィラメントの温度が低すぎる状態となるため、フィラメントランプから放射される光のうち、例えばシリコンウエハを透過する、1.1μm以上の長波長領域における光出力が大きくなり、シリコンウエハ上の温度分布が不均一になる、という不具合が生じる。 ・・・ 【0043】 また、昇温加熱用ランプ10Bおよび定温加熱用ランプ10Aが、定格点灯時におけるフィラメントの色温度が2100K(ケルビン)以上のものであることにより、被処理体Wの加熱に寄与する波長光、例えば被処理体Wがシリコンウエハである場合には、波長1.1μm以下の光について十分に高い光出力を確実に得ることができ、所望の加熱処理を確実に行うことができる。」 (2)上記(1)の記載によれば、定格点灯時(定格電力を投入して点灯させたとき)のフィラメントの色温度が、2300~3000Kであるものであることが好ましく、被処理体Wがシリコンウエハである場合に、被処理体Wの加熱に寄与する波長光である波長1.1μm以下の光について十分に高い光出力を確実に得ることができることは、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 4 引用文献4について (1)引用文献4には、以下の記載がある。 「【0027】実施例1 本実施例においては図2に示した形状の加熱装置10を用いた。該加熱装置10の支持台11としては、気相熱分解法により作製された炭化珪素であり、外径310mm、内径290mm、厚さ1mmの円環状に構成されたものを用いた。 ・・・ 【0029】この支持台11の光吸収スペクトルを図5に示すが、赤外線ランプ16の発する光ピーク波長は図7のように1.5μm以下が中心であるのに対して、図5のように該炭化珪素は1.5μm付近以下でも50%程度の透過率を有することから、赤外線ランプから発した輻射光を透過する効果を有していることを確認した。一方、従来より支持台に用いられているグラファイトの場合、ピーク波長が1.5μm付近の光の透過率は0である。 【0030】図2に示した加熱装置10の透明容器13内に直径300mm、p型で面方位(100)の主表面を有する珪素単結晶基板12を導入し、前記支持台11上に載置した。該支持台11は、珪素単結晶基板12が載置されると加熱処理が終了するまでの間、回転軸17を中心に自転する。 【0031】珪素単結晶基板12の中心と外周に熱電対を取付けて前記炭化珪素からなる支持台11上に置き、透明容器13内にガス導入口から窒素ガスを流しながら、赤外線ランプ16を点灯させて2分間で前記珪素単結晶基板12を1000℃に昇温した後に1時間保持し、赤外線ランプを消灯して室温まで降温した。」 (2)上記(1)の記載によれば、気相熱分解法により作製された炭化珪素である支持台11上に珪素単結晶基板12を載置し、ピーク波長が1.5μm以下が中心である赤外線ランプ16を点灯させて2分間で前記珪素単結晶基板12を1000℃に昇温することは、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 なお、引用文献5、6については、本願発明3の特定事項について引用されたものであるから、摘記を省略する。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10」は、「透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30を通して、筐体30の上下に設けられた赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し」、「短時間で急速に加熱」される、すなわち、処理されるものであるから、被処理体であるといえる。 また、引用発明において、「炭化珪素半導体基板10の表面(一方主面)側には金属薄膜11、裏面(他方主面)側にはn型に対するコンタクトメタルであるNiなどが好適である金属薄膜12が形成されて」いるから、引用発明の「炭化珪素半導体基板10」は、n型SiC半導体の領域を含んでいるといえる。 したがって、引用発明の「炭化珪素半導体基板10」と、本願発明1の「n型SiC半導体である被処理体」とは、n型SiC半導体を含む被処理体である点で共通する。 イ 引用発明においては、「赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線を照射し、筐体30内部に設置された炭化珪素半導体基板10を短時間で急速に加熱」するものであるから、「赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線」は、赤外線ランプを備えた光源部から出射された加熱光であるといえる。 そうすると、引用発明の「赤外線ランプ35a,35b」は、本願発明1の「赤外光ランプを備えた光源部」に相当し、本願発明1と引用発明とは、「赤外光ランプを備えた光源部から出射された」「加熱光」である点で共通する。 ウ 引用発明の「透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30」は「赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線」を通すものである。 一方、本願発明1において、「赤外光ランプを備えた光源部から出射された」「加熱光」は、「窓部材を介して照射」されるものであるから、当該「窓部材」は、「赤外光ランプを備えた光源部から出射された」「加熱光」を通すものであるといえる。 そうすると、引用発明の「透明石英ガラスなどの高純度、且つ高耐熱の筐体30」は、本願発明1の「窓部材」に相当する。 エ 引用発明においては、「炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させ」ているから、「炭化珪素半導体基板10」を加熱する工程を有しているといえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記被処理体を加熱する工程(a)を有する」点で共通する。 オ 以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「赤外光ランプを備えた光源部から出射された加熱光を、窓部材を介して照射して、n型SiC半導体を含む被処理体を加熱する工程(a)を有する、光加熱方法。」 <相違点> 相違点1:「被処理体」について、本願発明1は、「n型SiC半導体である」のに対し、引用発明は「炭化珪素半導体基板10」がn型SiC半導体を含む被処理体である点。 相違点2:「加熱光」について、本願発明1は、「色温度が2,200K~2,600Kの範囲内」の光であるのに対し、引用発明は、「赤外線」の色温度が不明である点。 相違点3:本願発明1は、「被処理体に対し」「加熱光を」「照射して前記被処理体を加熱する」のに対し、引用発明は、「熱伝導体21a,21bの機能を備える赤外吸収の強い保持構造体25に対して赤外光を照射することにより、保持構造体25が加熱され、保持構造体25が加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させ」ている点。 (2)相違点についての判断 本願明細書の【0052】には、「光加熱装置1によれば、光源部2から出射される加熱光L1の色温度が2,200K~2,600Kの範囲内であるため、被処理体W1がn型SiC半導体を含む場合であっても、この加熱光L1が被処理体W1において吸収される。これにより、被処理体W1に対して非接触による加熱を行うことができる。」と記載されているから、「被処理体」に関する相違点1、「加熱光」に関する相違点2、「被処理体を加熱する」方法に関する相違点3は、密接に関連しているといえる。 したがって、相違点1~3は、まとめて検討する。 ア 上記第4 2(2)において示したとおり、シリコン層を備えた基板の上にシリコン素子からなる回路を形成し、次に、基板の上にゲルマニウム層を成長し、次に、波長1.1nmよりも長波長側に発光スペクトルの成分を有する赤外線ランプによる赤外線の照射でゲルマニウム層を選択的に加熱し、ハロゲンランプの色温度が2200Kの場合、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が存在し、波長1.1μmから1.7μmの間に発光スペクトルの主成分が含まれる赤外線ランプを用いれば、シリコンは加熱せずに、ゲルマニウムを選択的に加熱することができることは、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 また、上記第4 3(2)において示したとおり、定格点灯時(定格電力を投入して点灯させたとき)のフィラメントの色温度が、2300~3000Kであるものであることが好ましく、被処理体Wがシリコンウエハである場合に、被処理体Wの加熱に寄与する波長光である波長1.1μm以下の光について十分に高い光出力を確実に得ることができることも、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 さらに、第4 4(2)において示したとおり、気相熱分解法により作製された炭化珪素である支持台11上に珪素単結晶基板12を載置し、ピーク波長が1.5μm以下が中心である赤外線ランプ16を点灯させて2分間で前記珪素単結晶基板12を1000℃に昇温することも、本願の出願日前における公知技術であったといえる。 イ しかしながら、n型SiC半導体である被処理体に対して、色温度が2,200K~2,600Kの範囲内の光を照射して、n型SiC半導体である被処理体を加熱することは、引用文献1~6のいずれにも記載も示唆もされていないし、本願の出願日前における周知技術であるともいえない。 したがって、引用発明において、「熱伝導体21a,21bの機能を備える赤外吸収の強い保持構造体25に対して赤外光を照射することにより、保持構造体25が加熱され、保持構造体25が加熱源となって、炭化珪素半導体基板10を急速にかつ均一に昇温させることができる」との構成を、赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線をn型SiC半導体である被処理体に照射することにより、n型SiC半導体である被処理体を加熱源としてn型SiC半導体である被処理体を急速にかつ均一に昇温させる構成とするとともに、「赤外線ランプ35a,35bから出射される赤外線」を「色温度が2,200K~2,600Kの範囲内」のものとすること、すなわち、相違点1~3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 小括 よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2、3について 本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明であり、いずれも上記相違点1~3に係る本願発明1の構成を有しているから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2、3は、引用発明及び引用文献2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 3 本願発明4~6について 本願発明4~6は、本願発明1~3に対応する物の発明であって、いずれも上記相違点1~3に係る本願発明1の構成に対応する構成を有しているから、本願発明1~3と同様の理由により、本願発明4~6は、引用発明及び引用文献2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1~3は、いずれも上記相違点1~3に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、また、本願発明4~6は、いずれも上記相違点1~3に係る本願発明1の構成に対応する構成を有するものとなっており、上記第5で検討したとおり、本願発明1~6は、引用発明、公知技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないから、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001553

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