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特許拒絶査定不服審判

2024-001307

膜形成用組成物、レジスト組成物、感放射線性組成物、アモルファス膜の製造方法、レジストパターン形成方法、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜の製造方法及び回路パターン形成方法

審判番号
2024-001307
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-565237
請求日
2024年01月25日
審決日
2025年01月14日
公報発行日
2025年04月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】三菱瓦斯化学株式会社
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】大貫 敏史
  • 【請求人代理人】内藤 和彦
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 宮澤 浩
  • 審判官 本田 博幸
分類
P18 .161-Z (G03F) / P18 .572-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-565237「膜形成用組成物、レジスト組成物、感放射線性組成物、アモルファス膜の製造方法、レジストパターン形成方法、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜の製造方法及び回路パターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月16日国際公開、WO2020/145406〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)1月10日(優先権主張 平成31年1月11日)を国際出願日とする出願であって、令和5年5月23日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和6年1月25日に審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 令和6年1月25日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月25日の手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正前の請求項1に係る発明 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「 式(1A)及び式(1B)で表される芳香族ヒドロキシ化合物(ただし、下記式(M-3)で表される化合物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂(ただし、下記式P-1A及びP-1Bで表され、かつ、重量平均分子量1900及び分散度1.4又は重量平均分子量3600及び分散度1.5である、ポリフェノール樹脂を除く。)であって、前記繰り返し単位同士が、芳香環同士の直接結合によって連結している多環ポリフェノール樹脂を含む、膜形成用組成物。 [図:0001421130000001.jpg] (式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、Yは炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、ここで、Xが無架橋であるとき、Yは前記2n価の基である(ただし、当該2n価の基は、フルオレン骨格を有する化合物に由来する基を含まない。)。また、式(1B)中、Aはアントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン又はオバレンを表す。さらに、式(1A)及び式(1B)中、R0は各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、炭素数2~40のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、ここで、R0の少なくとも1つは水酸基であり、mは各々独立して1~9の整数である。nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~3の整数である。) 【化2】 [図:0001421130000002.jpg] 【化3】 [図:0001421130000003.jpg] (式P-1A及びP-1B中、nは、繰り返し単位数を表す。)」 (2)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。 「 式(1A)及び式(1B)で表される芳香族ヒドロキシ化合物(ただし、下記式(M-3)で表される化合物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂(ただし、(i)下記式P-1A及びP-1Bで表され、かつ、重量平均分子量1900及び分散度1.4又は重量平均分子量3600及び分散度1.5である、ポリフェノール樹脂と(ii)下記式(α)で表されるポリフェノール樹脂を除く。)であって、前記繰り返し単位同士が、芳香環同士の直接結合によって連結している多環ポリフェノール樹脂を含む、膜形成用組成物。 【化1】 [図:0001421130000004.jpg] (式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、Yは炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、ここで、Xが無架橋であるとき、Yは前記2n価の基である(ただし、当該2n価の基は、フルオレン骨格を有する化合物に由来する基を含まない。)。また、式(1B)中、Aはアントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン又はオバレンを表す。さらに、式(1A)及び式(1B)中、R0は各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、炭素数2~40のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、ここで、R0の少なくとも1つは水酸基であり、mは各々独立して1~9の整数である。nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~3の整数である。) 【化2】 [図:0001421130000005.jpg] 【化3】 [図:0001421130000006.jpg] (式P-1A及びP-1B中、nは、繰り返し単位数を表す。) 【化4】 [図:0001421130000007.jpg] (式(α)中、Zは、C(=O)、N(R)、C1-100-ヒドロカルビレン、置換C1-100-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり;Rは、C1-20-アルキル、C5-30-アリールおよびC2-20-不飽和脂肪族部分から選択され;各R1および各R2は、独立に、H、OR、C1-30-ヒドロカルビル、置換C1-30-ヒドロカルビル、-C(=O)-O-R5、SR、S(=O)R、S(=O)2R、N(R5)(R6)およびN(R7)C(=O)R5から選択され;1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;R3およびR4は、独立に、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択され;R3およびR4は、それらが結合されている炭素と共に、1つ以上の芳香環に縮合され得、かつ任意選択的に置換されている5または6員環を形成し得;R5およびR6は、独立に、C1-20-アルキルまたはC5-30-アリールであり;R7は、HまたはR6であり;R5およびR6は、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;a1およびa2の各々は、0~5であり;m1およびm2の各々=1~100であり;およびn=2~1000である。)」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「多環ポリフェノール樹脂」について、「式(α)で表されるポリフェノール樹脂」を除くとするものである。本件補正は、「多環ポリフェノール樹脂」の範囲を減縮するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 3 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。 4 引用出願 (1)引用出願5 原査定の拒絶の理由「理由3(拡大先願)」において「出願5」として引用された先願である特願2019-142017号(特開2020-27302号として出願公開)の優先権基礎出願(米国特許仮出願62/719376号)は、本願の優先権主張の日である平成31年1月11日よりも前の、2018年(平成30年)8月17日の特許出願である。 引用出願5の発明者「シェン・リュー」、「ジェームズ・エフ・キャメロン」、「シンタロウ ヤマダ」は、本願の発明者と同一でない。また、本願の出願時において、引用出願5の出願人「ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー」は、本願の出願人と同一でもない。 ここで、先願明細書等と先願の優先権基礎出願の明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定し、特許法29条の2の規定の適用に関しては、先願は、先願の優先権基礎出願の出願日である、2018年(平成30年)8月17日に出願がなされたものとして扱う。 ア 引用出願5の記載事項 引用出願5の優先権主張の基礎とされた米国特許仮出願62/719376号には、以下の記載事項があり、対応する日本語公開公報「特開2020-27302号」において公開されている。なお、以下に引用した段落番号及び記載事項は、日本語公開公報の記載に基づく。また、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 (ア)技術分野 (優先権基礎出願の段落[001]) 「【0001】 本発明は、概して、電子デバイスを製造する分野に関し、より具体的には、半導体製造において下層として使用するための材料の分野に関する。」 (イ)発明が解決しようとする課題 (優先権基礎出願の段落[004]) 「【0005】 芳香族構成ブロックは、所望の熱安定性を有する下層材料を提供するために典型的に使用される。しかしながら、高い芳香族炭素含有量を有する下層材料は、一般的な処理溶媒への不十分な溶解性という難点を有する傾向がある。ヒドロキシル基および脂肪族炭素をポリマーに導入する従来のノボラック重合方法を使用して高い芳香族含有量の下層材料を調製する様々な試みがなされている。比較的低い温度で硬化し、一般的な処理溶媒への良好な溶解性を有し、金属触媒、ホウ素、ハロゲンおよび/またはリン汚染の難点がない下層材料が依然として必要とされている。」 (ウ)課題を解決するための手段 (優先権基礎出願の段落[005]) 「【0006】 本発明は、(a)電子デバイス基板を提供する工程と、(b)1つ以上の硬化性化合物を含むコーティング組成物の層を電子デバイス基板の表面上にコートする工程であって、1つ以上の硬化性化合物は、式(1) 【0007】 【化1】 [図:0001421130000008.jpg] 【0008】 (式中、Zは、共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)、S(=O)2、N(R)、C1-100-ヒドロカルビレン、置換C1-100-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり;Rは、H、C1-20-アルキル、C5-30-アリールおよびC2-20-不飽和脂肪族部分から選択され;各R1および各R2は、独立に、H、OR、C1-30-ヒドロカルビル、置換C1-30-ヒドロカルビル、-C(=O)-O-R5、SR、S(=O)R、S(=O)2R、N(R5)(R6)およびN(R7)C(=O)R5から選択され;1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;R3およびR4は、独立に、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択され;R3およびR4は、それらが結合されている炭素と共に、1つ以上の芳香環に縮合され得、かつ任意選択的に置換されている5または6員環を形成し得;R5およびR6は、独立に、C1-20-アルキルまたはC5-30-アリールであり;R7は、HまたはR6であり;R5およびR6は、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;a1およびa2の各々は、0~5であり;m1およびm2の各々=1~100であり;およびn=2~1000である) の繰り返し単位を含むポリマーである、工程と、(c)硬化性化合物の層を硬化させて下層を形成する工程と、(d)フォトレジストの層を下層上にコートする工程と、(e)フォトレジスト層を、マスクを通して化学線に露光する工程と、(f)露光されたフォトレジスト層を現像してレジストパターンを形成する工程と、(g)パターンを下層に転写して電子デバイス基板の一部分を露出させる工程とを含む方法を提供する。」 (エ)発明を実施するための形態 (優先権基礎出願の段落[014]~[017],[019]~[022]) 「【0021】 電子デバイスの製造において、芳香族下層は、(a)電子デバイス基板を提供する工程と、(b)1つ以上の硬化性化合物を含むコーティング組成物の層を電子デバイス基板の表面上にコートする工程であって、1つ以上の硬化性化合物は、式(1) 【0022】 【化4】 [図:0001421130000009.jpg] 【0023】 (式中、Zは、共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)、S(=O)2、N(R)、C1-100-ヒドロカルビレン、置換C1-100-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり;Rは、H、C1-20-アルキル、C5-30-アリールおよびC2-20-不飽和脂肪族部分から選択され;各R1および各R2は、独立に、H、OR、C1-30-ヒドロカルビル、置換C1-30-ヒドロカルビル、-C(=O)-O-R5、SR、S(=O)R、S(=O)2R、N(R5)(R6)およびN(R7)C(=O)R5から選択され;1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;R3およびR4は、独立に、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択され;R3およびR4は、それらが結合されている炭素と共に、1つ以上の芳香環に縮合され得、かつ任意選択的に置換されている5または6員環を形成し得;R5およびR6は、独立に、C1-20-アルキルまたはC5-30-アリールであり;R7は、HまたはR6であり;R5およびR6は、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;a1およびa2の各々は、0~5であり;m1およびm2の各々=1~100であり;およびn=2~1000である) の繰り返し単位を含むポリマーである、工程と、(c)硬化性化合物の層を硬化させて下層を形成する工程と、(d)フォトレジストの層を下層上にコートする工程と、(e)フォトレジスト層を、マスクを通して化学線に露光する工程と、(f)露光されたフォトレジスト層を現像してレジストパターンを形成する工程と、(g)パターンを下層に転写して電子デバイス基板の一部分を露出させる工程とを含む方法によって形成される。次に、基板をパターン化し、パターン化された下層を取り除く。好ましい一実施形態において、フォトレジストの層を下層の直接上にコートする。別の好ましい実施形態において、工程(d)前にシリコン含有組成物、有機反射防止組成物(BARC)およびそれらの組合せの1つ以上の層を下層の直接上にコートし、かつ任意選択的に硬化させて中心層を形成し、次にフォトレジストの層をシリコン含有組成物層、BARC層の1つ以上または各々の層の直接上にコートする。シリコン含有中心層が使用されるとき、工程(f)後かつ工程(g)前にパターンがシリコン含有中心層に転写される。 【0024】 多様な電子デバイス基板、例えばマルチチップモジュール;フラットパネルディスプレイ基板;集積回路基板;有機発光ダイオード(OLED)などの発光ダイオード(LED)のための基板;半導体ウエハー;多結晶シリコン基板等の包装用基板を本発明において使用し得、半導体ウエハーが好ましい。このような基板は、典型的に、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅および金の1つ以上から構成される。適した基板は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレイ、光集積回路およびLEDの製造において使用されるウエハーのようなウエハーの形態であり得る。本明細書中で用いられるとき、用語「半導体ウエハー」は、シングルチップウエハー、マルチプルチップウエハー、はんだ接続を必要とする様々なレベルのためのパッケージまたは他の組立体など、「半導体基板」、「半導体デバイス」および様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを含むことを意図する。このような基板は、任意の適したサイズであり得る。好ましいウエハー基板の直径は、200mm~300mmであるが、より小さいおよびより大きい直径を有するウエハーが本発明によって好適に使用され得る。本明細書中で用いられるとき、用語「半導体基板」には、半導体デバイスの能動または動作可能部分を任意選択的に含み得る1つ以上の半導体層または構造物を有する任意の基板が含まれる。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスが上にバッチ製造されたかまたはされている半導体基板を意味する。 【0025】 任意選択的に、本コーティング組成物の堆積前に接着促進剤の層を基板表面に適用し得、その後、それを硬化させて下層を形成する。接着促進剤が望ましい場合、シラン、好ましくはトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシランまたはガンマ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤など、ポリマーフィルムのための任意の適した接着促進剤を使用し得る。特に適した接着促進剤には、Dow Electronic Materials(Marlborough,Massachusetts)から入手可能である、商品名AP3000、AP8000およびAP9000Sとして販売されている接着促進剤が含まれる。 【0026】 本発明において有用なコーティング組成物は、1つ以上の硬化性化合物を含み、硬化性化合物は、式(1) 【0027】 【化5】 [図:0001421130000010.jpg] 【0028】 (式中、Zは、共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)、S(=O)2、N(R)、C1-100-ヒドロカルビレン、置換C1-100-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり;Rは、H、C1-20-アルキル、C5-30-アリールおよびC2-20-不飽和脂肪族部分から選択され;各R1および各R2は、独立に、H、OR、C1-30-ヒドロカルビル、置換C1-30-ヒドロカルビル、-C(=O)-O-R5、SR、S(=O)R、S(=O)2R、N(R5)(R6)およびN(R7)C(=O)R5から選択され;1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;R3およびR4は、独立に、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択され;R3およびR4は、それらが結合されている炭素と共に、1つ以上の芳香環に縮合され得、かつ任意選択的に置換されている5または6員環を形成し得;R5およびR6は、独立に、C1-20-アルキルまたはC5-30-アリールであり;R7は、HまたはR6であり;R5およびR6は、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;a1およびa2の各々は、0~5であり;m1およびm2の各々=1~100であり;およびn=2~1000である) の繰り返し単位を含むポリマーである。Zの好ましいC1-100-ヒドロカルビレン部分は、C1-50-アルキレン、C2-50-アルケニレン、C2-50-アルキニレンおよびC5-30-アリーレン、より好ましくはC1-20-アルキレン、C2-20-アルケニレン、C2-20-アルキニレンおよびC5-30-アリーレンである。Zは、共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)、S(=O)2、N(R)、C1-50-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり、より好ましくは共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)2、C1-50-ヒドロカルビレン、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり、さらにより好ましくは共有化学結合、O、C(=O)、S、S(=O)2、C5-60-アリーレン、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択され、さらにより好ましくは共有化学結合、O、C(=O)、S、C5-60-アリーレン、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択されることが好ましい。Rは、好ましくは、H、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択される。好ましくは、R1およびR2の各々は、独立に、H、ORおよびC1-30-ヒドロカルビル、より好ましくは独立にHまたはC1-30-ヒドロカルビル、さらにより好ましくはC10-15-ヒドロカルビルから選択される。さらにより好ましくは、1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5または6員環を形成する。R1およびR2の好ましいC1-30-ヒドロカルビル部分は、C1-30-アルキル、C2-30-アルケニル、C2-30-アルキニルおよびC5-30-アリール、より好ましくはC1-20-アルキル、C1-20-アルケニル、C2-20-アルキニルおよびC5-30-アリールである。a1およびa2の各々=0~2であり、より好ましくは0または1であることが好ましい。好ましい実施形態において、a1=a2であり、さらにより好ましくはa1=a2=0または1である。下付き文字n、m1およびm2の各々は、繰り返し単位の数を意味することを当業者は理解するであろう。好ましくは、m1およびm2の各々は、1~50であり、より好ましくは1~25、さらにより好ましくは1~10である。n=2~500、より好ましくは2~100、さらにより好ましくは2~50、さらにより好ましくは2~20であることが好ましい。 ・・・ 【0034】 本発明の硬化性化合物は、典型的に、触媒として塩化銅-アミン錯体を使用して、2-ナフトール部分を有するモノマーの酸化カップリング重合によって調製される。好ましい触媒は、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス-[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリドである。このような酸化カップリング重合は、典型的に、室温において空気中で行われる。適した酸化カップリング重合は、(非特許文献1)において開示されている。本硬化性ポリマーを調製するために有用な好ましい2-ナフトール部分を有するモノマーは、式(2) 【0035】 【化8】 [図:0001421130000011.jpg] 【0036】 (式中、R1、R2、Z、a1およびa2は、式(1)について上に記載された通りであり、1位は、非置換である) の化合物である。式(2)のモノマーを重合させて、式(1)の繰り返し単位を有する硬化性ポリマーを形成する。式(2)のモノマーは、1位において非置換でなければならない。式(2)のモノマーは、式(1)の繰り返し単位において示されるように、2-ナフトール部分の1位において結合(すなわち重合)する。本硬化性ポリマーは、ポリマーの各末端が未反応2-ナフトール部分を終端とする、ホモポリマーである。式(2)の好ましいモノマーは、式(2-1) 【0037】 【化9】 [図:0001421130000012.jpg] 【0038】 (式中、R1、R2、Z、a1およびa2は、式(1)について上に記載された通りであり、1位は、非置換である) のモノマーである。式(2-1)の好ましいモノマーは、式(2a)~(2f)のモノマーである。 【0039】 【化10】 [図:0001421130000013.jpg] 【0040】 モノマー(2a)~(2f)を使用して、繰り返し単位(1a)~(1f)をそれぞれ有するポリマー(各場合のnは、重合度または繰り返し単位数(n=2~1000)を意味する)を調製する。 【0041】 【化11】 [図:0001421130000014.jpg] 【0042】 上に記載された1つ以上の硬化性化合物に加えて、本コーティング組成物は、1つ以上の有機溶媒を任意選択的に含み得、好ましくは含む。適した有機溶媒は、1つ以上の硬化性化合物を溶解する任意の有機溶媒であり、好ましくは電子デバイスの製造において慣例的に使用される有機溶媒である。有機溶媒を単独で使用し得るか、または有機溶媒の混合物を使用し得る。適した有機溶媒には、限定されないが、ケトン、例えばシクロヘキサノンおよび2-ヘプタノン;アルコール、例えば3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび1-エトキシ-2-プロパノール;エーテル、例えばプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール;エステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルラクテート(EL)、メチルヒドロキシイソブチレート(HBM)、エチルピルベート、ブチルアセテート、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、tert-ブチルアセテート、tert-ブチルプロピオネートおよびプロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート;ラクトン、例えばガンマ-ブチロラクトンおよび前述のものの任意の組合せが含まれる。好ましい溶媒は、PGME、PGEE、PGMEA、EL、HBMおよびそれらの組合せである。 【0043】 本コーティング組成物は、例えば、硬化剤、架橋剤、表面均展剤など、このようなコーティングにおいて典型的に使用される1つ以上のコーティング添加材も含み得る。このような任意選択的な添加剤およびそれらの量の選択は、当業者の能力の十分に範囲内である。硬化剤は、典型的に、全固形分に基づいて0~20重量%、好ましくは0~3重量%の量において存在する。架橋剤は、典型的に、全固形分に基づいて0~30重量%、好ましくは3~10重量%の量において使用される。表面均展剤は、典型的に、全固形分に基づいて0~5重量%、好ましくは0~1重量%の量において使用される。使用されるこのような任意選択的な添加剤およびそれらの量の選択は、当業者の能力の範囲内である。」 (オ)実施例 (優先権基礎出願の段落[035]~[040]) 「【0060】 実施例1。モノマーM-1(4.66g、10mmol)を41.71gのエチルラクテート中に溶解した。この溶液に0.23g(0.5mmol)のジ-μ-ヒドロキソ-ビス-[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレン-ジアミン)銅(II)]クロリド(Cu-TMEDA)を添加し、反応混合物を室温の空気中で24時間撹拌した。混合物を、1M塩酸を含有するメタノールの混合物(200mL、v/v=20/80)にゆっくりと添加した。沈殿した生成物を濾過によって集め、次にエチルアセテート中に再溶解させた。次に、溶液をメタノールにゆっくりと添加し、沈殿した生成物を集め、2日間真空下で65℃において乾燥させた。ポリマーP-1A(3.2g)が69%の収量で得られた。GPC:Mw=1.9K、PDI=1.4。この反応は、反応スキーム1に示される。 【0061】 実施例2。実施例1の手順を以下のように繰り返す。モノマーM-1(4.66g、10mmol)を43.80gのエチルラクテート中に溶解した。この溶液に0.46g(1.0mmol)のCu-TMEDAを添加し、反応混合物を24時間室温の空気中で撹拌した。混合物を、1M塩酸を含有するメタノールの混合物(200mL、v/v=20/80)にゆっくりと添加した。沈殿した生成物を濾過によって集め、次にエチルアセテート中に再溶解させた。次に、溶液をメタノールにゆっくりと添加し、沈殿した生成物を集め、2日間真空下で65℃において乾燥させた。ポリマーP-1B(3.61g)が78%の収量で得られた。GPC:Mw=3.6K、PDI=1.5。この反応は、反応スキーム1に示される。 【0062】 【化14】 [図:0001421130000015.jpg] ・・・ 【0069】 実施例6:溶解性。溶解性は、本発明の化合物をPGMEおよびPGMEAのそれぞれと固形分5%で混合することによって測定された。それらの混合物を目視検査し、かつ濁度計(Orbeco-Hellige Co)を使用して調べた。濁度値が1未満である場合、化合物は、可溶性であると評価され(「S」)、濁度値が1超である場合、それは、可溶性ではないと評価される(「NS」)。結果を表1に記録する。これらのデータから見ることができるように、本発明の化合物は、全てPGMEおよびPGMEAのそれぞれに可溶性である。 【0070】 【表1】 [図:0001421130000016.jpg] 」 イ 引用出願5に記載された発明 引用出願5の記載事項(ウ)には、課題を解決するための手段が、「(b)1つ以上の硬化性化合物を含むコーティング組成物の層を前記電子デバイス基板の表面上にコートする工程」と、「(c)前記硬化性化合物の前記層を硬化させて下層を形成する工程」と、を含む方法であることが記載されており、当該方法に使用される「コーティング組成物」に含まれる硬化性化合物が、「式(1)・・・n=2~1000である・・・の繰り返し単位を含むポリマー」であることが記載されている。 また、引用出願5の記載事項(エ)の段落【0026】~【0028】には、「コーティング組成物」が記載されており、コーティング組成物が「1つ以上の硬化性化合物を含み、硬化性化合物は、式(1)・・・の繰り返し単位を含むポリマーである」ことが記載されている。これらの記載に基づけば、引用出願5には、下層を形成するための「コーティング組成物」が記載されているといえる。 そして、段落【0040】~【0041】には、式(1)のうち、好ましい繰り返し単位の一つが、式(1a)であることが記載されている。 なお、繰り返し単位(1a)を有するポリマーは、その化学構造からみて、式(1)の要件のうち、以下の下線を付した要件を満たすものである。 「【化1】 [図:0001421130000017.jpg] (式中、Zは、共有化学結合またはO、C(=O)、S、S(=O)、S(=O)2、N(R)、C1-100-ヒドロカルビレン、置換C1-100-ヒドロカルビレン、-O-(C1-20-アルキレン-O-)m1、-O-(C5-60-アリーレン-O-)m2およびC(R3)(R4)から選択される二価連結基であり;Rは、H、C1-20-アルキル、C5-30-アリールおよびC2-20-不飽和脂肪族部分から選択され;各R1および各R2は、独立に、H、OR、C1-30-ヒドロカルビル、置換C1-30-ヒドロカルビル、-C(=O)-O-R5、SR、S(=O)R、S(=O)2R、N(R5)(R6)およびN(R7)C(=O)R5から選択され;1つのR1と、1つのR2と、Zとは、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;R3およびR4は、独立に、C1-20-アルキルおよびC5-30-アリールから選択され;R3およびR4は、それらが結合されている炭素と共に、1つ以上の芳香環に縮合され得、かつ任意選択的に置換されている5または6員環を形成し得;R5およびR6は、独立に、C1-20-アルキルまたはC5-30-アリールであり;R7は、HまたはR6であり;R5およびR6は、それらが結合されている原子と共に5~6員環を形成し得;a1およびa2の各々は、0~5であり;m1およびm2の各々=1~100であり;およびn=2~1000である)」 そして、引用出願5の記載事項(オ)の実施例1及び実施例2において、それぞれ得られた「ポリマーP-1A」及び「ポリマーP-1B」は、「GPC:Mw」の値及び「PDI」の値が異なるものの、その化学構造からみて、上記繰り返し単位(1a)を有するポリマーである。引用出願5の記載事項(オ)の実施例6は、「本発明の化合物」である「ポリマーP-1A」及び「ポリマーP-1B」を「PGMEおよびPGMEAのそれぞれと固形分5%で混合」したものを生成し測定している。実施例6において測定に用いられている「ポリマーP-1A」及び「ポリマーP-1B」を「PGMEおよびPGMEAのそれぞれと固形分5%で混合」して得られた「組成物」は、それぞれ、引用出願5における下層を形成するための「コーティング組成物」の一実施例であるといえる。 そうすると、引用出願5には、課題解決手段において使用される下層を形成するための「コーティング組成物」を具体化した実施例として、次の2つの発明(以下「引用発明P-1A」及び「引用発明P-1B」という。)が記載されていると認められる。 引用発明P-1A 「GPC:Mw=1.9K、PDI=1.4であり、以下の繰り返し単位を有するポリマーP-1Aと、PGME又はPGMEAのそれぞれと固形分5%で混合して得られた下層を形成するためのコーティング組成物。 [図:0001421130000018.jpg] 」 引用発明P-1B 「GPC:Mw=3.6K、PDI=1.5であり、以下の繰り返し単位を有するポリマーP-1Bと、PGME又はPGMEAのそれぞれと固形分5%で混合して得られた下層を形成するためのコーティング組成物。 [図:0001421130000019.jpg] 」 5 対比 本件補正発明と引用発明P-1A又は引用発明P-1Bとを対比する。 (1)芳香族ヒドロキシ化合物 引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、その化学構造からみて、本件補正発明の「式(1A)」において、Xが酸素原子であり、Yが炭素数13の2価の基である芳香族ヒドロキシ化合物のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂であるといえる。 そうすると、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、本件補正発明の 「 式(1A)及び式(1B)で表される芳香族ヒドロキシ化合物」、「からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂」、「であって、前記繰り返し単位同士が、芳香環同士の直接結合によって連結している多環ポリフェノール樹脂」であって、 「 【化1】 [図:0001421130000020.jpg] (式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、Yは炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、ここで、Xが無架橋であるとき、Yは前記2n価の基である(ただし、当該2n価の基は、フルオレン骨格を有する化合物に由来する基を含まない。)。また、式(1B)中、Aはアントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン又はオバレンを表す。さらに、式(1A)及び式(1B)中、R0は各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、炭素数2~40のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、ここで、R0の少なくとも1つは水酸基であり、mは各々独立して1~9の整数である。nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~3の整数である。)」 とする要件を満たしている。 また、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、その化学構造からみて、本件補正発明において特定される「式(M-3)で表される化合物」に由来する繰り返し単位を有するものではない。そうすると、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、本件補正発明の「ただし、下記式(M-3)で表される化合物を除く。」という要件によって除かれるものには該当しない。 さらに、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、は、その化学構造からみて、式(α)中、ZがOで表されるポリフェノール樹脂に該当する。そうすると、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、本件補正発明の「(ii)下記式(α)で表されるポリフェノール樹脂を除く。」という要件によって除かれるものにも該当しない。 しかし、引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」は、本件補正発明における「(i)下記式P-1A及びP-1Bで表され」、かつ、「重量平均分子量1900及び分散度1.4」である、「ポリフェノール樹脂」に該当し、引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」は、本件補正発明における「(i)下記式P-1A及びP-1Bで表され」、かつ、「重量平均分子量3600及び分散度1.5」である、「ポリフェノール樹脂」に該当する。 したがって、本件補正発明の「多環ポリフェノール樹脂」と引用P-1A発明の「ポリマーP-1A」及び引用P-1B発明の「ポリマーP-1B」とは、「式(1A)及び式(1B)で表される芳香族ヒドロキシ化合物(ただし、下記式(M-3)で表される化合物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂(ただし、(ii)下記式(α)で表されるポリフェノール樹脂を除く。)であって、前記繰り返し単位同士が、芳香環同士の直接結合によって連結している多環ポリフェノール樹脂」である点で共通する。 (2)膜形成用組成物 引用発明P-1A及び引用発明P-1Bの「コーティング組成物」は、下層を形成するためのものである。そうすると、引用発明P-1A及び引用発明P-1Bの「コーティング組成物」は、本件補正発明の「膜形成用組成物」に相当する。 (3)一致点及び相違点 以上より、本件補正発明と引用発明P-1A又は引用発明P-1Bとは、 「 式(1A)及び式(1B)で表される芳香族ヒドロキシ化合物(ただし、下記式(M-3)で表される化合物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する多環ポリフェノール樹脂(ただし、(ii)下記式(α)で表されるポリフェノール樹脂を除く。)であって、前記繰り返し単位同士が、芳香環同士の直接結合によって連結している多環ポリフェノール樹脂を含む、膜形成用組成物。」(式(1A)、式(1B)、式(M-3)、式P-1A、式P-1B及び式(α)は、前記1(2)に記載したとおりのものであるため、省略する。) である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本件補正発明の多環ポリフェノール樹脂は、式P-1A及びP-1Bで表され、かつ、重量平均分子量1900及び分散度1.4又は重量平均分子量3600及び分散度1.5である、ポリフェノール樹脂を除いたものであるのに対し、引用発明P-1AのポリマーP-1A及び引用発明P-1BのポリマーP-1Bは、本件補正発明から除くとされたポリフェノール樹脂である点。 6 判断 引用出願5の課題解決手段とされる方法において用いられる式(1)の繰り返し単位を含むポリマーは、その繰り返し数が、「n=2~1000」の範囲とされている。そして、段落【0040】には、「モノマー(2a)~(2f)を使用して、繰り返し単位(1a)~(1f)をそれぞれ有するポリマー(各場合のnは、重合度または繰り返し単位数(n=2~1000)を意味する)を調製する。」と記載されている。そうすると、引用出願5には、課題解決手段において使用される下層を形成するための「コーティング組成物」を具体化した発明である、「引用発明P-1A」又は「引用発明P-1B」において、その繰り返し単位数を調整することが示唆されていたといえる。 そして、繰り返し単位数を変更すると、重量平均分子量も変更されることは自明である。なお、「引用発明P-1A」と「引用発明P-1B」とが、同じ繰り返し単位を有するものでありながら、GPC:Mwの値とPDIの値が異なるのは、nの値の平均値及び分散値が異なるためである。そして、引用出願5の実施例1(引用発明P-1A)と実施例2(引用発明P-1B)は、繰り返し単位数nが異なっていても、同じ繰り返し単位を含むポリマーを用いることにより、同程度の効果が奏されることを示していると考えられる。 また、引用出願5の課題解決手段において用いられる、式(1)の繰り返し単位を含むポリマーは、上記のとおり、その繰り返し数が、「n=2~1000」の範囲であれば足りるものであり、特定のGPC:Mwの値とPDIの値であることを要しない。そうすると、「引用発明P-1A」及び「引用発明P-1B」におけるGPC:Mwの値とPDIの値は、課題解決に関与することがない要件であり、GPC:Mwの値とPDIの値の相違は、課題解決のための具体化手段における微差であるといえる。 したがって、上記[相違点]は、課題解決のための具体化手段における微差に係るものであるから、本件補正発明と引用発明P-1A又は引用発明P-1Bとは、実質同一である。 なお、審判請求書中で請求人は「引用文献5における課題との関係では「式P-1A及びP-1Bで表されるポリフェノール樹脂」を採用したことで既に解決されている(すなわち、当該課題との関係で別途周知技術を参照する理由が特段存在しない)ものと思料する。そこから更に進んで、重量平均分子量や分散度を調整すべきとの認識の下、関係する周知技術等を当業者が参照すること自体、考え難いものと思料する。」(5頁)と主張する。しかし、上記に示した判断により、当該主張は採用できない。 7 むすび 以上より、本件補正発明は、本願に係る優先権主張の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の当初明細書に添付された明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件発明 1 本件発明 本件補正は、前記第2に記載のとおり却下されたので、本願の請求項1~27に係る発明は、令和5年7月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~27に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1~5、11~12、21~27に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。 引用出願5:特願2019-142017号 (特開2020-27302号) 優先権主張番号:62/719376、米国 3 引用出願 原査定の拒絶の理由で引用された引用出願及びその記載事項は、前記第2の4に記載したとおりである。 4 対比・判断 本件発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「式(α)で表されるポリフェノール樹脂を除く。」とする限定事項を削除したものである。 そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項が付された本件補正発明が、前記第2の[理由]5~7に記載したとおり、引用発明P-1A又は引用発明P-1Bと実質同一であるから、本件発明も、同じ理由により、引用発明P-1A又は引用発明P-1Bと実質同一であるといえる。 したがって、本件発明は、本願に係る優先権主張の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の当初明細書に添付された明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001307

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