審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-013368

地域熱エネルギー配給システム

審判番号
2023-013368
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-111740
請求日
2023年08月08日
審決日
2024年08月26日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】関根 毅
  • 【請求人代理人】赤岡 明
  • 【請求人代理人】出口 智也
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 充
  • 審判官 飯星 潤耶
  • 審判官 竹下 和志
分類
P18 .121-Z (F24D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-111740「地域熱エネルギー配給システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年12月16日出願公開、特開2021-191993〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、2016年(平成28年)11月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年11月4日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2018-521926号の一部を、特許法第44条第1項の規定により令和3年7月5日に新たな特許出願としたものであって、以降の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 7月 6日 :上申書の提出 令和4年 6月30日付け :拒絶理由通知書 令和4年 8月24日 :意見書及び手続補正書の提出 令和4年10月14日付け :拒絶理由通知書 令和5年 1月 4日 :意見書及び手続補正書の提出 令和5年 4月28日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和5年 8月 8日 :審判請求書及び手続補正書の提出 令和5年11月24日 :上申書の提出 第2 令和5年8月8日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年8月8日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 自身を通る熱伝達液体の流れを可能にするための、高温導管および低温導管(12、14)を備える熱エネルギー回路(10)と、 一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器(22)であって、それぞれが前記熱エネルギー回路(10)の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器(22)と、 一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器(32)であって、それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路(10)の熱伝達液体に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器(32)と、 を備え、 各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、熱エネルギー消費器バルブ(23)または熱エネルギー消費器ポンプ(24)のどちらか一方を介して、前記高温導管(12)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)から熱伝達液体が前記低温導管(14)に戻るのを可能にするために前記低温導管(14)に接続され、 前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、熱エネルギー発生器バルブ(33)または熱エネルギー発生器ポンプ(34)のどちらか一方を介して、前記低温導管(14)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)から熱伝達液体が前記高温導管(12)に戻るのを可能にするために前記高温導管(12)に接続されるものであり、 各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、前記熱伝達液体が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管(14)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(12、14)と流体的に相互接続し、 各前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、前記熱伝達液体が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管(12)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(14、12)と流体的に相互接続するものであり、 各前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管(14)に戻すように構成され、 各前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管(12)に戻すように構成されている、 地域熱エネルギー配給システム。 【請求項2】 前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)および前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が循環ポンプである、 請求項1に記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項3】 前記循環ポンプが周波数制御されている、 請求項2に記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項4】 前記熱エネルギー消費器バルブ(23)および前記熱エネルギー発生器バルブ(33)が調整バルブである、 請求項1から3のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項5】 前記高温導管(12)および/または前記低温導管(14)が、絶縁されていない、プラスチックの単一壁パイプで形成されている、 請求項1から4のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項6】 前記熱エネルギー回路(10)が、自身を通って流れる熱伝達液体における熱エネルギーを循環させるため、および、貯蔵するために配置され、 前記熱エネルギー回路(10)における前記高温導管(12)が、第1の温度の熱伝達液体が自身を通って流れるのを可能にするように構成され、 前記熱エネルギー回路(10)における前記低温導管(14)が、前記第1の温度よりも低い第2の温度の熱伝達液体が自身を通って流れるのを可能にするように構成される、 請求項1から5のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和5年1月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 自身を通る熱伝達液体の流れを可能にするための、高温導管および低温導管(12、14)を備える熱エネルギー回路(10)と、 一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器(22)であって、それぞれが前記熱エネルギー回路(10)の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器(22)と、 一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器(32)であって、それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路(10)の熱伝達液体に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器(32)と、 を備え、 各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、熱エネルギー消費器バルブ(23)または熱エネルギー消費器ポンプ(24)のどちらか一方を介して、前記高温導管(12)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)から熱伝達液体が前記低温導管(14)に戻るのを可能にするために前記低温導管(14)に接続され、 前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、熱エネルギー発生器バルブ(33)または熱エネルギー発生器ポンプ(34)のどちらか一方を介して、前記低温導管(14)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)から熱伝達液体が前記高温導管(12)に戻るのを可能にするために前記高温導管(12)に接続される、 地域熱エネルギー配給システム。 【請求項2】 前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)および前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が循環ポンプである、 請求項1に記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項3】 前記循環ポンプが周波数制御されている、 請求項2に記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項4】 前記熱エネルギー消費器バルブ(23)および前記熱エネルギー発生器バルブ(33)が調整バルブである、 請求項1から3のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項5】 前記高温導管(12)および/または前記低温導管(14)が、絶縁されていない、プラスチックの単一壁パイプで形成されている、 請求項1から4のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項6】 前記熱エネルギー回路(10)が、自身を通って流れる熱伝達液体における熱エネルギーを循環させるため、および、貯蔵するために配置され、 前記熱エネルギー回路(10)における前記高温導管(12)が、第1の温度の熱伝達液体が自身を通って流れるのを可能にするように構成され、 前記熱エネルギー回路(10)における前記低温導管(14)が、前記第1の温度よりも低い第2の温度の熱伝達液体が自身を通って流れるのを可能にするように構成される、 請求項1から5のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項7】 各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、前記熱伝達液体が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管(14)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(12、14)と流体的に相互接続し、 各前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、前記熱伝達液体が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管(12)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(14、12)と流体的に相互接続する、 請求項1から6のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。 【請求項8】 各前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管(14)に戻すように構成され、 各前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管(12)に戻すように構成されている、 請求項1から7のいずれかに記載の地域熱エネルギー配給システム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「熱エネルギー消費器熱交換器(22)」、「熱エネルギー発生器熱交換器(32)」、「熱エネルギー消費器ポンプ(24)」及び「熱エネルギー発生器ポンプ(34)」について、それぞれ次のとおり限定を直列的に付加するものである。 ・「各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、前記熱伝達液体が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管(14)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(12、14)と流体的に相互接続」すること。 ・「各前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、前記熱伝達液体が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管(12)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(14、12)と流体的に相互接続する」こと。 ・「各前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管(14)に戻すように構成され」ること。 ・「各前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管(12)に戻すように構成され」ること。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献6 (ア)引用文献6の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特許第2707362号公報(平成10年1月28日発行。以下、「引用文献6」という。)には、以下の記載及び図面がある。(下線は、当審が付した。以下同様。) a「〔課題を解決するための手段〕 上記目的を達成するために、本発明では、中央熱源プラントと需要家との間を供給配管と戻り配管の2本の配管で結び、需要家側にはそれらの配管に、冷水用熱交換器と冷水汲上ポンプ及び温熱専用のヒートポンプと熱源水汲上ポンプを設置した配管を、それぞれ接続した地域冷暖房システムにおいて、中央熱源プラントでは、供給配管と戻り配管を熱交換器を介した配管により接続して循環回路を構成し、該熱交換器では循環水を冷却する冷却用熱交換と循環水を加温する加温用熱交換を行い、該循環回路は需要家の冷熱需要と温熱需要の変化に応じて水流が逆転できるように構成したことを特徴とする地域冷暖房システムとしたものである。」(第2ページ左欄第12~24行目) b「〔実施例〕 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。 実施例1 第1図に本発明の基本構成図を示す。 第1図において、1は中央熱源プラントで、30は各需要家であり、1と30は配管2と3で接続されている。中央熱源プラント1には、加熱用熱交換器4及び冷却用熱交換器5と、加熱用熱交換器4に熱源を供給する加熱用ボイラ6及び冷却用熱交換器を冷却する冷凍機12が設けられてとおり、また、熱交換器4、5に接続する配管には逆止弁8、11が設けられ、さらに配管2には冷却水量計15が設置されている。一方、需要家30には、冷熱需要に用いる冷水用熱交換器32と温熱需要に用いる温熱専用ヒートポンプ35及びそれぞれにポンプ31、34が設けられ、それぞれ冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続している。 そして、上記のシステムにおいては、冷水供給配管2の冷水は7℃に、熱源水供給配管3の熱源水は14℃に調整されているが、これに限定されるものではなく、例えば冷水は約0~10℃で熱源水は約10~20℃で供給できる。」(第2ページ左欄第35行目~右欄第6行目) c「次に、この地域冷暖房システムの操作状態を説明する。需要家30において、冷熱需要があると、冷水汲上ポンプ31を運転し冷水供給配管2より冷水を汲み上げ、冷水用熱交換器32により昇温された水は熱源水供給配管3へ戻る。また、温熱需要があると、熱源水汲上ポンプ34を運転し、熱源水供給配管3より熱源水を汲み上げ、温熱専用ヒートポンプ35により降温された水は冷水供給配管2に戻る。夏期においては冷熱需要が温熱需要を上回るため、需要家から発生した熱源水が中央熱源プラント1へ流れるようになる。中央熱源プラント1では、冷却用熱交換器5により熱源水は冷水温度まで冷却される。冬期においては、温熱需要が冷熱需要を上回るため、需要家から発生した冷水が中央熱源プラント1へ流れるようになる。中央熱源プラント1では加熱用熱交換器4により、冷水は熱源水温度まで昇温される。」(第2ページ右欄第7~21行目) d「 [図:0001418779000001.jpg] 」(第1図) (イ)上記(ア)から認められること a 上記(ア)a及びbの記載事項から、「循環回路」が、冷水供給配管2及び熱源水供給配管3を備えるものといえる。 b 上記(ア)dの図示事項から、温熱専用ヒートポンプ35において「温熱需要との熱交換」がされていることと、冷水用熱交換器32において「冷熱需要との熱交換」がされていることが看て取れる。そうすると、上記(ア)cの記載事項から、地域冷暖房システムは、温熱専用ヒートポンプ35であって、熱源水供給配管3より汲み上げられた熱源水が、温熱需要との熱交換により降温する、温熱専用ヒートポンプ35と、冷水用熱交換器32であって、汲み上げられた冷水が冷熱需要との熱交換により昇温して熱源水供給配管3へ戻る、冷水供給配管2とを備えるものといえる。 c 上記(ア)b及びcの記載事項から、「温熱専用ヒートポンプ35」は、熱源水汲上ポンプ34を設けて熱源水供給配管3に接続され、かつ温熱専用ヒートポンプ35から水が冷水供給配管2へ戻るように冷水供給配管2に接続されるものであること、「冷水用熱交換器32」は、冷水汲上ポンプ31を設けて冷水供給配管2に接続され、かつ冷水用熱交換器32から水が熱源水供給配管3へ戻るように熱源水供給配管3に接続されるものであることが把握できる。 d 上記(ア)b及びcの記載事項から、「温熱専用ヒートポンプ35」は、熱源水が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35を通って流れ、温熱専用ヒートポンプ35によって降温された水が冷水供給配管2へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続するものであること、「冷水用熱交換器32」は、冷水が、冷水供給配管2から冷水用熱交換器32を通って流れ、冷水用熱交換器32によって昇温された水が熱源水供給配管3へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続するものであることが把握できる。 e 上記(ア)cの記載事項から、「熱源水汲上ポンプ34」が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35へ熱源水を汲み上げて冷水供給配管2に戻すように構成されていること、「冷水汲上ポンプ31」が、冷水供給配管2から冷水用熱交換器32へ冷水を汲み上げて熱源水供給配管3に戻すように構成されていることが把握できる。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)から、引用文献6には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「熱源水供給配管3及び冷水供給配管2を備える循環回路と、 温熱専用ヒートポンプ35であって、熱源水供給配管3より汲み上げられた熱源水が温熱需要との熱交換により降温する、温熱専用ヒートポンプ35と、 冷水用熱交換器32であって、汲み上げられた冷水が冷熱需要との熱交換により昇温して熱源水供給配管3へ戻る、冷水用熱交換器32と、 を備え、 温熱専用ヒートポンプ35は、熱源水汲上ポンプ34を設けて熱源水供給配管3に接続され、かつ温熱専用ヒートポンプ35から水が冷水供給配管2へ戻るように冷水供給配管2に接続され、 冷水用熱交換器32は、冷水汲上ポンプ31を設けて冷水供給配管2に接続され、かつ冷水用熱交換器32から水が熱源水供給配管3へ戻るように熱源水供給配管3に接続されるものであり、 温熱専用ヒートポンプ35は、熱源水が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35を通って流れ、温熱専用ヒートポンプ35によって降温された水が冷水供給配管2へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続され、 冷水用熱交換器32は、冷水が、冷水供給配管2から冷水用熱交換器32を通って流れ、冷水用熱交換器32によって昇温された水が熱源水供給配管3へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続されるものであり、 熱源水汲上ポンプ34が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35へ熱源水を汲み上げて冷水供給配管2に戻すように構成され、 冷水汲上ポンプ31が冷水供給配管2から冷水用熱交換器32へ冷水を汲み上げて熱源水供給配管3に戻すように構成されている、 地域冷暖房システム。」 イ 引用文献7 (ア)引用文献7の記載事項 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開昭56-46939号公報(昭和56年4月28日出願公開。以下、「引用文献7」という。)には、次の記載及び図面がある。 a「2.特許請求の範囲 建物内の負荷側回路に地域配管の往管から所定範囲内圧力の熱源水を供給し、地域配管の還管に所定範囲内圧力の熱源水を返送する地域冷暖房システムの建物側配管系において、この配管系に介装したポンプをパイバスするバイパス管を設け、このバイパス管に弁を取付け、このポンプの発停と弁の閉開の選択制御を、配管系の総流量に地域配管からの供給圧と地域配管への返送圧との差圧をカスケード制御した信号によつて行なうようにした地域冷暖房シスデムの建物内ポンプ制御装置。」(第1ページ左下欄第4~14行) b「第1図は、地域配管の往管1と還管2に、負荷群3を有せる建物側配管を接続した低層部分を示す本発明系統図である。本発明においては、建物内ポンプ4をバイパスするバイパス管5を設け、このバイパス管5に弁6(バタ弁)を介装し、この弁6の開閉とポンプ4の切換えを、流量計7と供給側差圧発信器8とのカスケード制御によつて行なうようになつている。第1図において9は負荷側圧力調整弁であり、この調整弁9の開度制御により前述の所定圧にして地域還管2に熱源水を返送する。すなわち、建物内往管10と還管11との間の管内差圧を検出する負荷側差圧発信器12の差圧信号を負荷側差圧調整器13で調節して調整弁9の開度制御を行ない、規定範囲の圧力として地域還管2に返送する。そのさい、流量計7からの信号と供給側差圧発信器8の信号とを減算器14に送り、負荷流量読込値を受入れ返送圧力差の読込値によつてカスケードし、モニタースイツチ15にポンプ4のON、OFF信号を与え、同時に弁6を閉と開に追従制御する。すなわち、ある流量に対して受入れ返送圧力差が所定値以上であるときは、ポンプ4を停止し、弁6を開として返送する。なお第1図において、16は受入側バルブ、17は返送側バルブ、18は高層側往管、19は高層側還管を示している。」(第1ページ右下欄第20行~第2ページ右上欄第4行) c「このようにして本発明は、地域冷暖房システムにおいて従来ポンプ稼動によつて不必要に高い返送圧力としていたのを、系内に圧力変動を起すことなくスムースにバイパス制御できるようにしたものであり、ポンプ駆動時間の短縮化により動力低減を達成した省エネルギーシステムを提供するものである。」(第2ページ右下欄第5~11行) d「 [図:0001418779000002.jpg] 」(第1図) (イ)上記(ア)から認められること a 上記(ア)dの図示事項から、供給側差圧発信器8は「地域配管の往管1と還管2との圧力差」を検出していることが看て取れる。そして、上記(ア)bの記載事項から、「受入れ返送圧力差」は供給側差圧発信器8によって検出されることが把握できるため、「受入れ返送圧力差」は、「地域配管の往管1と還管2との圧力差」であるといえる。 (ウ)引用文献7に記載された技術 上記(ア)及び(イ)から、引用文献7には、以下の技術(以下、「引用文献7に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献7に記載された技術> 「地域冷暖房システムにおいて、建物内ポンプ4と、建物内ポンプ4をバイパスするバイパス管5に設けられた弁6と、地域配管の往管1と還管2との圧力差である受入れ返送圧力差を検出する供給側差圧発信器8とを備え、受入れ返送圧力差によって、ポンプ4のON、OFF信号を与え、同時に弁6を閉と開に追従制御することで、ポンプ駆動時間の短縮化により動力低減を達成した省エネルギーシステムを提供すること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「熱源水供給配管3」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件補正発明の「高温導管」に相当する。また、引用発明の「冷水供給配管2」は、本件補正発明の「低温導管」に相当し、引用発明の「循環回路」は、本件補正発明の「熱エネルギー回路」に相当する。さらに、引用発明の「熱源水供給配管3及び冷水供給配管2」は、それぞれ自身を通る熱源水及び冷水の流れを可能にするものであるから、本件補正発明の「自身を通る熱伝達液体の流れを可能にするための、高温導管および低温導管」に相当する。 そうすると、引用発明の「熱源水供給配管3及び冷水供給配管2を備える循環回路」は、本件補正発明の「自身を通る熱伝達液体の流れを可能にするための、高温導管および低温導管を備える熱エネルギー回路」に相当する。 (イ)引用発明の「温熱専用ヒートポンプ35」は、本件補正発明の「一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器」及び「熱エネルギー消費器熱交換器」に相当し、引用発明の「汲み上げられた熱源水」は、本件補正発明の「熱伝達液体」に相当する。また、引用発明の「熱源水供給配管3より汲み上げられた熱源水」は、上記(2)ア(イ)a及び上記(2)ア(ウ)で示したように、「熱源水供給配管3」が「循環回路」を構成するものであるから、本件補正発明の「熱エネルギー回路の熱伝達液体」に相当する。 本件補正発明の「それぞれが前記熱エネルギー回路の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達する」ことの技術的意義は、本願明細書の段落【0046】の記載事項から、加熱ニーズのために高温導管12の熱伝導液体から熱を引き出すことと解される。一方、引用発明の「温熱専用ヒートポンプ35」において熱源水が降温するのは、温熱需要との熱交換により、熱源水からの熱が引き出されることによることが、熱が引き出されると温度が下がるという技術常識から明らかである。そうすると、引用発明の「熱源水供給配管3より汲み上げられた熱源水が温熱需要との熱交換により降温する」ことは、本件補正発明の「それぞれが前記熱エネルギー回路の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達する」ことに相当するといえる。 したがって、引用発明の「温熱専用ヒートポンプ35であって、熱源水供給配管3より汲み上げられた熱源水が温熱需要との熱交換により降温する、温熱専用ヒートポンプ35」は、本件補正発明の「一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器であって、それぞれが前記熱エネルギー回路の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器」に相当する。 (ウ)引用発明の「冷水用熱交換器32」は、本件補正発明の「一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器」及び「熱エネルギー発生器熱交換器」に相当し、引用発明の「汲み上げられた冷水」は、本件補正発明の「熱伝達液体」に相当する。また、引用発明の「昇温して熱源水供給配管3へ戻る」「汲み上げられた冷水」は、上記(2)ア(イ)a及び上記(2)ア(ウ)で示したように、「熱源水供給配管3」が「循環回路」を構成するものであるから、本件補正発明の「熱エネルギー回路の熱伝達液体」に相当する。 本件補正発明の「それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路の熱伝達液体に伝達する」ことの技術的意義は、本願明細書の段落【0047】の記載事項から、冷却ニーズのために低温導管14の熱伝達液体から冷却を引き出すことと解される。一方、引用発明の「冷水用熱交換器32」において冷水が昇温するのは、冷熱需要との熱交換により、冷水からの冷却が引き出されることによることが、冷却が引き出されると温度が上がるという技術常識から明らかである。そうすると、引用発明の「汲み上げられた冷水が冷熱需要との熱交換により昇温して熱源水供給配管3へ戻る」ことは、本件補正発明の「それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路の熱伝達液体に伝達する」ことに相当するといえる。 したがって、引用発明の「冷水用熱交換器32であって、汲み上げられた冷水が冷熱需要との熱交換により昇温して熱源水供給配管3へ戻る、冷水用熱交換器32」は、本件補正発明の「一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器であって、それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路の熱伝達液体に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器」に相当する。 (エ)引用発明の「熱源水汲上ポンプ34」は、本件補正発明の「熱エネルギー消費器ポンプ」に相当し、引用発明の「水」は、本件補正発明の「熱伝達液体」に相当し、引用発明の「冷水供給配管2へ戻るように」することは、本件補正発明の「低温導管に戻るのを可能にする」ことに相当する。 そうすると、引用発明の「温熱専用ヒートポンプ35は、熱源水汲上ポンプ34を設けて熱源水供給配管3に接続され、かつ温熱専用ヒートポンプ35から水が冷水供給配管2へ戻るように冷水供給配管2に接続され」ることは、本件補正発明の「各前記熱エネルギー消費器熱交換器は、熱エネルギー消費器バルブまたは熱エネルギー消費器ポンプのどちらか一方を介して、前記高温導管に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器から熱伝達液体が前記低温導管に戻るのを可能にするために前記低温導管に接続され」ることと、「各前記熱エネルギー消費器熱交換器は、熱エネルギー消費器ポンプを介して、前記高温導管に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器から熱伝達液体が前記低温導管に戻るのを可能にするために前記低温導管に接続され」る限りにおいて一致する。 (オ)引用発明の「冷水汲上ポンプ31」は、本件補正発明の「熱エネルギー発生器ポンプ」に相当し、引用発明の「熱源水供給配管3へ戻るように」することは、本件補正発明の「高温導管に戻るのを可能にする」ことに相当する。 そうすると、引用発明の「冷水用熱交換器32は、冷水汲上ポンプ31を設けて冷水供給配管2に接続され、かつ冷水用熱交換器32から水が熱源水供給配管3へ戻るように熱源水供給配管3に接続される」ことは、本件補正発明の「前記熱エネルギー発生器熱交換器は、熱エネルギー発生器バルブまたは熱エネルギー発生器ポンプのどちらか一方を介して、前記低温導管に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器から熱伝達液体が前記高温導管に戻るのを可能にするために前記高温導管に接続される」ことと、「前記熱エネルギー発生器熱交換器は、熱エネルギー発生器ポンプを介して、前記低温導管に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器から熱伝達液体が前記高温導管に戻るのを可能にするために前記高温導管に接続される」限りにおいて一致する。 (カ)引用発明の「熱源水」は、本件補正発明の「熱伝達液体」に相当し、引用発明の「降温された水が冷水供給配管2へ戻るように」することは、本件補正発明の「熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管へ戻るのを可能にする」ことに相当し、引用発明の「冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続」することは、本件補正発明の「前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続」することに相当する。 そうすると、引用発明の「温熱専用ヒートポンプ35は、熱源水が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35を通って流れ、温熱専用ヒートポンプ35によって降温された水が冷水供給配管2へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続」することは、本件補正発明の「各前記熱エネルギー消費器熱交換器は、前記熱伝達液体が、前記高温導管から前記熱エネルギー消費器熱交換器を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続」することに相当する。 (キ)引用発明の「冷水」は、本件補正発明の「熱伝達液体」に相当し、引用発明の「昇温された水が熱源水供給配管3へ戻るように」することは、本件補正発明の「熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管へ戻るようにするのを可能にする」ことに相当し、引用発明の「冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続」することは、本件補正発明の「前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続」することに相当する。 そうすると、引用発明の「冷水用熱交換器32は、冷水が、冷水供給配管2から冷水用熱交換器32を通って流れ、冷水用熱交換器32によって昇温された水が熱源水供給配管3へ戻るように、冷水供給配管2と熱源水供給配管3に接続する」ことは、本件補正発明の「各前記熱エネルギー発生器熱交換器は、前記熱伝達液体が、前記低温導管から前記熱エネルギー発生器熱交換器を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続する」ことに相当する。 (ク)引用発明の「熱源水を汲み上げ」ることは、本件補正発明の「熱伝達液体を圧送」することに相当する。 そうすると、引用発明の「熱源水汲上ポンプ34が、熱源水供給配管3から温熱専用ヒートポンプ35へ熱源水を汲み上げて冷水供給配管2に戻すように構成され」ることは、本件補正発明の「各前記熱エネルギー消費器ポンプが、前記高温導管から前記熱エネルギー消費器熱交換器へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管に戻すように構成され」ることに相当する。 (ケ)引用発明の「冷水を汲み上げ」ることは、本件補正発明の「熱伝達液体を圧送」することに相当する。 そうすると、引用発明の「冷水汲上ポンプ31が冷水供給配管2から冷水用熱交換器32へ冷水を汲み上げて熱源水供給配管3に戻すように構成され」ることは、本件補正発明の「各前記熱エネルギー発生器ポンプが、前記低温導管から前記熱エネルギー発生器熱交換器へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管に戻すように構成され」ることに相当する。 (コ)引用発明の「地域冷暖房システム」は、本件補正発明の「地域熱エネルギー配給システム」に相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「自身を通る熱伝達液体の流れを可能にするための、高温導管および低温導管を備える熱エネルギー回路と、 一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器であって、それぞれが前記熱エネルギー回路の熱伝達液体からの熱エネルギーを、それぞれの周囲に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー消費器熱交換器と、 一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器であって、それぞれがそれぞれの周囲からの熱エネルギーを、前記熱エネルギー回路の熱伝達液体に伝達するために配置された、一つ以上の熱エネルギー発生器熱交換器と、 を備え、 各前記熱エネルギー消費器熱交換器は、熱エネルギー消費器ポンプを介して、前記高温導管に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器から熱伝達液体が前記低温導管に戻るのを可能にするために前記低温導管に接続され、 前記熱エネルギー発生器熱交換器は、熱エネルギー発生器ポンプを介して、前記低温導管に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器から熱伝達液体が前記高温導管に戻るのを可能にするために前記高温導管に接続されるものであり、 各前記熱エネルギー消費器熱交換器は、前記熱伝達液体が、前記高温導管から前記熱エネルギー消費器熱交換器を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続し、 各前記熱エネルギー発生器熱交換器は、前記熱伝達液体が、前記低温導管から前記熱エネルギー発生器熱交換器を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管と流体的に相互接続するものであり、 各前記熱エネルギー消費器ポンプが、前記高温導管から前記熱エネルギー消費器熱交換器へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管に戻すように構成され、 各前記熱エネルギー発生器ポンプが、前記低温導管から前記熱エネルギー発生器熱交換器へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管に戻すように構成されている、 地域熱エネルギー配給システム。」 <相違点1> 「熱エネルギー発生器熱交換器」が「低温導管に接続され」ることについて、本件補正発明では「熱エネルギー消費器バルブまたは熱エネルギー消費器ポンプのどちらか一方」を介して「選択的に」接続されるのに対して、引用発明では「熱源水汲上ポンプ34」を介して接続される点。 <相違点2> 「熱エネルギー消費器熱交換器」が「高温導管に接続され」ることについて、本件補正発明では「熱エネルギー発生器バルブまたは熱エネルギー発生器ポンプのどちらか一方」を介して「選択的に」接続されるのに対して、引用発明では「冷水汲上ポンプ31」を介して接続される点。 (4)判断 以下、相違点1及び2について検討する。 ア 相違点1及び2 引用発明と引用文献7に記載された技術はいずれも、地域冷暖房システムに関するものである点で、技術分野が共通している。また、当該技術分野においても省エネルギー化は周知の課題であり、引用発明においても当該課題は内在しているといえ、引用文献7に記載された技術と課題が共通しているといえる。さらに、引用発明における「熱源水汲上ポンプ34」及び「冷水汲上ポンプ31」と、引用文献7に記載された技術における「建物内ポンプ4」とは、地域配管から建物の負荷回路に熱伝達液体を供給し他の地域配管へ返送するという点で、機能が共通している。 したがって、引用発明と引用文献7に記載された技術とを組み合わせる動機付けが存在するものといえる。 そうすると、引用発明に引用文献7に記載された技術を適用して、熱源水汲上ポンプ34及び冷水汲上ポンプ31のそれぞれをバイパスするバイパス管と、当該各バイパス管に弁を設けることで、温熱専用ヒートポンプ35を、バイパス管の弁または熱源水汲上ポンプ34のどちらか一方を介して選択的に熱源水供給配管3に接続するように構成し、また、冷水用熱交換器32を、バイパス管の弁または冷水汲上ポンプ31のどちらか一方を介して選択的に冷水供給配管2に接続するように構成して、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献7に記載された技術から、当業者が予測し得る範囲のもの過ぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献7に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)審判請求書における審判請求人の主張 審判請求人は、令和5年8月8日に提出した審判請求書の(4)において、引用文献6及び7は、本願の請求項1に記載された技術的特徴を開示するものではなく、その示唆すらされておらず、その動機付けとなる作用効果について開示および示唆すらされていない旨を主張している。 しかしながら、上記(4)アで説示したとおり、引用発明と引用文献7に記載された技術はいずれも、地域冷暖房システムに関するものである点で、技術分野が共通している。また、当該技術分野においても省エネルギー化は周知の課題であり、引用発明においても当該課題は内在しているといえ、引用文献7に記載された技術と課題が共通しているといえる。さらに、引用発明における「熱源水汲上ポンプ34」及び「冷水汲上ポンプ31」と、引用文献7に記載された技術における「建物内ポンプ4」とは、地域配管から建物の負荷回路に熱伝達液体を供給し他の地域配管へ返送するという点で、機能が共通している。したがって、引用発明に引用文献7に記載された技術を適用する動機付けはあり、引用発明及び引用文献7に記載された技術に基いて、本件補正発明とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。 (6)上申書における審判請求人の主張 審判請求人は、令和5年11月24日に提出した上申書の(2)において、令和5年8月8日提出の手続補正書の請求項1について、以下の補正案の補正事項1~3からなる補正案を示し、拒絶理由を通知することを希望している。 <補正案の補正事項1> 請求項1の「各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、熱エネルギー消費器バルブ(23)または熱エネルギー消費器ポンプ(24)のどちらか一方を介して、前記高温導管(12)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)から熱伝達液体が前記低温導管(14)に戻るのを可能にするために前記低温導管(14)に接続され、」という記載を「各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、直列に接続された熱エネルギー消費器バルブ(23)と熱エネルギー消費器ポンプ(24)を介して、前記高温導管(12)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)から熱伝達液体が前記低温導管(14)に戻るのを可能にするために前記低温導管(14)に接続され、」という記載に変更。 <補正案の補正事項2> 請求項1の「前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、熱エネルギー発生器バルブ(33)または熱エネルギー発生器ポンプ(34)のどちらか一方を介して、前記低温導管(14)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)から熱伝達液体が前記高温導管(12)に戻るのを可能にするために前記高温導管(12)に接続される」という記載を「前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、直列に接続された熱エネルギー発生器バルブ(33)と熱エネルギー発生器ポンプ(34)を介して、前記低温導管(14)に選択的に接続され、かつ前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)から熱伝達液体が前記高温導管(12)に戻るのを可能にするために前記高温導管(12)に接続される」という記載に変更。 <補正案の補正事項3> 請求項1に、請求項6の発明特定事項を付加。 しかしながら、上記補正案の補正事項1における、「各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、直列に接続された熱エネルギー消費器バルブ(23)と熱エネルギー消費器ポンプ(24)を介して、前記高温導管(12)に選択的に接続され」るという特定事項及び上記補正案の補正事項2における、「前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、直列に接続された熱エネルギー発生器バルブ(33)と熱エネルギー発生器ポンプ(34)を介して、前記低温導管(14)に選択的に接続され」るという特定事項について、引用文献6の第1図(上記2(2)ア(ア)d)から、熱源水汲上ポンプ34及び冷水汲上ポンプ31のそれぞれの下流側に記号が看て取れるが、当該記号がバルブを示すことは、技術常識であるため、引用文献6には、「熱源水汲上ポンプ34とバルブを直列に接続すること」及び「冷水汲上ポンプ31とバルブを直列に接続すること」も記載されているといえる。 したがって、当該上申書の補正案を踏まえても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという判断を覆すことはできないから、拒絶の理由を改めて通知する必要性は認められない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 1 本願発明 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、令和5年1月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりのものである。 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である以下の引用文献6に記載された発明及び引用文献7に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献6:特許第2707362号公報 引用文献7:特開昭56-46939号公報 3 引用文献 引用文献6の記載事項、認定事項、引用発明については、上記第2の3(2)アに記載したとおりである。 引用文献7に記載された技術については、上記第2の3(2)イ(イ)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、以下の限定事項を削除したものである。 「各前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)は、前記熱伝達液体が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)を通って流れ、前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)によって前記熱伝達液体における熱エネルギーが消費された後に前記低温導管(14)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(12、14)と流体的に相互接続し、 各前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)は、前記熱伝達液体が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)を通って流れ、前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)によって熱エネルギーが前記熱伝達液体に生成された後に前記高温導管(12)へ戻るようにするのを可能にするように、前記低温導管および前記高温導管(14、12)と流体的に相互接続するものであり、 各前記熱エネルギー消費器ポンプ(24)が、前記高温導管(12)から前記熱エネルギー消費器熱交換器(22)へ前記熱伝達液体を圧送して前記低温導管(14)に戻すように構成され、 各前記熱エネルギー発生器ポンプ(34)が、前記低温導管(14)から前記熱エネルギー発生器熱交換器(32)へ前記熱伝達液体を圧送して前記高温導管(12)に戻すように構成されている、」 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献7に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献7に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-013368

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1件(エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ)
  • 2024-000433拒絶査定不服審判 / 2024-11-20 / 請求不成立一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチ
    同じ当事者: エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
同じ論点・分野の審決(審決分類)4件(121・F24D)
  • 2019-010680拒絶査定不服審判 / 2021-11-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ヒートポンプネットワーク
    共通の審決分類: 121・F24D
  • 2018-012375拒絶査定不服審判 / 2019-10-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)採暖装置及び車両用座席
    共通の審決分類: 121・F24D
  • 2017-007947拒絶査定不服審判 / 2019-01-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)床暖房用温水マット
    共通の審決分類: 121・F24D
  • 2016-005048拒絶査定不服審判 / 2017-12-11 / 原査定取消(特許/登録すべき)少なくとも1つの廃水処理プラントから流体を提供する方法
    共通の審決分類: 121・F24D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存