特許拒絶査定不服審判
2024-000406
折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム
- 審判番号
- 2024-000406
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-107857
- 請求日
- 2024年01月11日
- 審決日
- 2025年03月05日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 素川 慎司
- 審判官 道祖土 新吾
- 分類
- P18 .121-Z (C09J) / P18 .575-Z (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-107857「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月12日出願公開、特開2022-153403〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年4月24日に出願した特願2018-82862号の一部を令和4年7月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 7月19日 :上申書の提出
令和5年 6月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 4月 8日 :上申書の提出
第2 令和6年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月11日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年1月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年9月29日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
厚みが50~75μmであり極限粘度が0.65~1.0dl/gであり全光線透過率が87%以上であるポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有し、
ポリエステルフィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
ポリエステルフィルムの粘着層を有する面側と反対面側に、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度が2H以上であり全光線透過率が87%以上であるハードコート層が積層され、
粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され、粘着層の厚みは3~15μmであり、
ハードコート層は、アクリル系樹脂で形成されている折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
厚みが50~75μmであり極限粘度が0.73~1.0dl/gであり全光線透過率が87%以上であるポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有し、
ポリエステルフィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
ポリエステルフィルムの粘着層を有する面側と反対面側に、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度が2H以上であり全光線透過率が87%以上であるハードコート層が積層され、
粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され、粘着層の厚みは3~15μmであり、
ハードコート層は、アクリル系樹脂で形成されている折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「ポリエステルフィルム」の「極限粘度」の下限を、「0.65[dl/g]」から「0.73[dl/g]」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成A1から構成C5までに分説する。
<本件補正発明の分説>
A1 厚みが50~75μmであり
A2 極限粘度が0.73~1.0dl/gであり
A3 全光線透過率が87%以上である
A0 ポリエステルフィルム
B0 の一方の面側に粘着層を有し、
A4 ポリエステルフィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
C0 ポリエステルフィルムの粘着層を有する面側と反対面側に、
C1 厚みが1~40μmであり
C2 鉛筆硬度が2H以上であり
C3 全光線透過率が87%以上である
C0 ハードコート層が積層され、
B1 粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され、
B2 粘着層の厚みは3~15μmであり、
C4 ハードコート層は、アクリル系樹脂で形成されている
X 折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は携帯端末機器等に装備される折りたたみ型ディスプレイの表面に貼付して使用される折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルムに関し、繰り返し折りたたんでも、表面に位置している表面保護フィルムの変形による画像の乱れが起こり難い折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルムに関する。
…(中略)…
【0005】
そこで近年、フレキシブルディスプレイ、折りたたみ型ディスプレイを組み込んだ携帯端末が提案されている。この方式であれば、画像が途切れることなく、大画面のディスプレイを搭載した携帯端末機器として利便性よく携帯できる。
【0006】
携帯端末機器の表示体表面には、一般的にはガラスやハードコートフィルムが用いられ傷に強い構成になってはいるが、石や金属などで擦れた場合はどうしても傷が入ってしまうため、現実には粘着付表面保護フィルムを後から貼付して使用されている(特許文献1参照)。
【0007】
ここで、従来の折りたたみ構造を有しないディスプレイや携帯端末機器については、そのディスプレイの表面保護フィルムは、安価で耐衝撃性に強いポリエステルフィルムが用いられているものもある。一方、折りたたみ型ディスプレイでは、一定の折りたたみ部分に当たる箇所が繰り返し折り曲げられるため、当該箇所のフィルムが経時的に変形し、一般的なポリエステルフィルムを用いた場合では、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来のディスプレイ用表面保護フィルムが有する課題を解決しようとするものであって、繰り返し折りたたんだ後に折りたたみ部分に表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルムを提供しようとするものである。
…(中略)…
【発明の効果】
【0011】
本発明の折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの表面に位置している表面保護フィルムが繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさないため、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないものである。前記のような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。」
「【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0018】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
…(中略)…
【0021】
フィルムが単層構成、積層構成であることに関わらず、フィルムの極限粘度は、0.65dl/g以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.68dl/g以上である。0.65dl/g以上あれば、十分に耐屈曲性の効果が得られる。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であるフィルは、操業性よく製造でき好ましい。
【0022】
ポリエステルフィルムの厚みは、10~75μmであることが好ましく、25~75μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると、粘着層の反対面にハードコート層を積層した場合のハードコート層の鉛筆硬度向上効果が見られ、厚みが75μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。
…(中略)…
【0029】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができて好ましい。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。
…(中略)…
【0040】
(粘着層の膜厚)
粘着層の膜厚としては、1~25μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。1μmより厚ければ十分な粘着力を有し、屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く好ましい。25μmより薄ければ屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無いため好ましい。
…(中略)…
【0044】
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚としては、1~40μmが好ましい。1μmより厚ければ十分に硬化し、良好な鉛筆硬度が得られる。また厚みを40μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
【0047】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、B以上が好ましく、H以上が更に好ましい。B以上の鉛筆硬度があれば、容易に傷がつくことはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが10H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
…(中略)…
【0049】
本発明において、ポリエステルフィルムの粘着層を積層した側と反対側の表面にハードコート層を積層した場合には、ハードコート層の全光線透過率はポリエステルフィルム同様、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができて好ましい。前記の場合の全光線透過率も高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。」
「【実施例】
【0050】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0051】
(1)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの該当するポリエステル層を削り取ることで、各層単体の極限粘度を評価した。
【0052】
(2)耐屈曲性
サンプルの粘着面を50μm厚のポリイミドフィルムに貼付し、幅方向50mm×流れ方向100mmの大きさの測定用サンプルを用意する。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、屈曲半径3mmを設定し、1回/秒の速度で、5万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は50mm×80mmとした。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。下記の各実施例、比較例水準においては、ハードコート層つき表面保護フィルムの耐屈曲性を評価した。
◎ :サンプルの変形を確認できない。
○ :サンプルの変形があるが、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm未満。
× :サンプルに折跡があるか、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
【0053】
(3)鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4:1999に準拠し、荷重750g、速度0.5mm/sでハードコート層表面を測定した。
【0054】
(4)全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。下記の各実施例、比較例水準においては、ハードコート層つき表面保護フィルムの全光線透過率とヘイズを測定した。
【0055】
(5)粘着力
サンプルの粘着面をSUS板(SUS304)に貼り付け、重さ2kgのゴムローラーを1往復させたあと室温に20時間放置した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の速度で180゜の角度で粘着テープをSUS板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0056】
(ハードコート塗布液1の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、製品名:A-DPH、固形分濃度:100重量%)94.9重量部、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins社製、製品名:Omnirad907、固形分濃度:100重量%)5重量部、シリコーン添加剤(ビックケミージャパン社製、BYK-3505、固形分濃度:40重量%)0.25重量部を混合し、MEK/トルエン/IPA=1/1/1の溶媒で希釈して、40%のハードコート塗布液1を調製した。
【0057】
(粘着剤塗布液2の調製)
アクリル系粘着剤(東洋インキ社製、製品名:オリバインBPS5762K、固形分濃度:45.5重量%)100重量部、架橋剤(東洋インキ社製、製品名:BXX5627固形分濃度:50重量%)1.4重量部、MEK30.6重量部を混合し、固形分濃度35%の粘着剤塗布液2を調製した。
【0058】
(粘着剤塗布液3の調製)
シリコーン粘着剤(信越化学工業社製、品名:X-40-3237)100重量部、触媒(信越化学工業社製、品名:PL-50T)0.5重量部、架橋剤(信越化学工業社製、品名:KS-3802)0.5重量部をトルエンで希釈して、固形分濃度40%の粘着剤塗布液3を調製した。
【0059】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(a)を得た。
【0060】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(b)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の製造工程について、第3エステル化反応の滞留時間を調節した他は同様の方法にて極限粘度を0.580dl/gに調整し、ポリエチレンテレフタレートペレット(b)を得た。
【0061】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(c)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(c)を作成した。
【0062】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(d)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(d)を作成した。
【0063】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(e)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.83dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(e)を作成した。
【0064】
上記のポリエチレンテレフタレートマスターペレット(a)を180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に、ポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を押出機にそれぞれ供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸した。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて幅方向に95℃で4.2倍延伸し、220℃にて5秒間熱処理し、表1のNo.1のポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。上記と若干の条件調整を行った他はほぼ同様の工程に、ポリエチレンテレフタレートマスターペレット(b)~(e)を供給し、表1のNo.1~7のポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0065】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートフィルムNo.4の一方の面にマイヤーバーを用いて、ハードコート塗布液1を乾燥後の膜厚が2.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm2)、ハードコート層を積層した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのハードコート層が積層されていない側の表面に粘着剤塗布液2を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、120℃で1分間乾燥させて、表面保護フィルムを作成した。
【0066】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレートフィルムNo.4の一方の面にマイヤーバーを用いて、ハードコート塗布液1を乾燥後の膜厚が2.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm2)、ハードコート層を積層した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのハードコート層が積層されていない側の表面に粘着剤塗布液3を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、130℃で1分間乾燥させて、表面保護フィルムを作成した。
【0067】
(実施例3~5、比較例1~3)
実施例1と同様の方法にて、表2中の条件で表面保護フィルムを作成した。
【0068】
【表1】
[図:0001423114000001.jpg]
【0069】
【表2】
[図:0001423114000002.jpg]
」
「【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、折りたたみ型ディスプレイを繰り返し折りたたんだ後の表面保護フィルムの変形が起こりづらく、経時的な画像の乱れを生じ難い折りたたみ型ディスプレイ用保護フィルムの提供が可能となった。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2018-10821号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
(ア) 段落【0001】~【0008】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムに関するものであり、耐屈曲性と表面硬度が高いため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用可能なポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置」という。)の実用化が進んでいる。この有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、表示装置としての薄膜化、フレキシブル化が可能となっている。このため、折り畳みや丸めることが可能なフレキシブル表示装置の開発が加速しており、表示装置表面の傷付きを防止するカバーフィルムについても耐屈曲性が求められている。
【0003】
例えば、画像表示装置向けに、耐傷性を向上させる手法として、ポリエステルフィルムを含む基材の両面にハードコート層を積層したハードコートフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。また、フレキシブル表示装置向けに、ポリエステルフィルムを含む可撓性を有する透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に反射防止層が設けられた反射防止フィルムが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-61750号公報
【特許文献2】特開2016-75869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の画像表示装置向けに使用されるフィルムは、ハードコート層、反射防止層に特徴があり、基材となるポリエステルフィルムには特徴を有していないため、耐傷性と耐屈曲性の両立が不十分であり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用への適用は困難であった。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記した問題点を解消することにあり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として適用された際、耐屈曲性と耐傷性を両立できるポリエステルフィルムを提供することにある。
…(中略)…
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として、耐屈曲性と表面硬度の高いポリエステルフィルムを提供でき、特に表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いることができる。」
(イ) 段落【0009】~【0017】
「【0009】
以下に、本発明に係るポリエステルフィルムについて、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルを与える、グリコールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
【0010】
また、本発明に用いるポリエステルを与えるジカルボン酸あるいはその誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。
本発明におけるポリエステルの組成としては、グリコール単位の80モル%以上がエチレングリコール由来の構造単位であることが好ましく、さらに好ましくは85モル%以上であり、90モル%以上であれば最も好ましい。また、ジカルボン酸単位の80モル%以上がテレフタル酸由来の構造単位であることが好ましく、85モル%以上であればさらに好ましく、90モル%以上であれば最も好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、耐傷性の観点から、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さが150N/mm2以上である必要がある。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とすることで、フィルム表面の傷付きを抑制することができる。ここで、マルテンス硬さとは、ナノインデンテーション法により測定される値であり、圧子を試験荷重を増加しながらフィルム表面に押し込み、そのときの試験荷重のくぼみ表面積の商で定義されており、くぼみ表面積は、圧子押し込み深さより算出できる。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さは170N/mm2以上であればより好ましく、180N/mm2以上500N/mm2以下であれば最も好ましい。また、A面の反対面(B面)のマルテンス硬さにおいても150N/mm2以上であることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とする方法としては、例えば、少なくとも片面(A面)の面配向係数が0.16以上0.18以下とする方法が挙げられる。面配向係数を0.16以上0.18以下と高く制御することで、フィルム面内の分子配向が進行するため、フィルム表面からの押し込みに対する剛性が向上し、マルテンス硬さを150N/mm2以上とするのに有効である。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムの面配向係数は0.163以上0.178以下であればより好ましく、0.165以上0.175以下であれば最も好ましい。面配向係数を0.16以上0.18以下とする方法としては、キャスト工程で得られた未延伸ポリエステルシートを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで制御することができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。また延伸温度は、延伸ムラが生じない程度に低温とすることが好ましく、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は50~60℃、延伸温度は80~90℃とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は70~80℃、延伸温度は90~100℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数が50000回以上であることが必要である。フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数を50000万回以上と非常に高くすることで、フィルムを繰り返し屈曲に耐えることができるため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のフレキシブル化に有効である。ここで、MIT屈曲破断回数とは、JISP8115に基づいて測定することができ、繰り返し屈曲試験を行い、フィルムが破断した際の屈曲回数である。また、フィルムの主配向軸方向とは、フィルム面内において、分子が最も分極している方位のことであり、屈折率楕円体においては最も屈折率が高い方位のことを指す。X方向とY方向のMIT屈曲破断回数は100000万回以上であればより好ましく、300000万回以上であれば最も好ましい。また、屈曲破断回数は多ければ多いほど良好な耐屈曲性を示すので好ましいが、実用的な上限としては、1000000万回以下である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、X方向とY方向のMIT屈曲破断回数を50000万回以上と非常に高い屈曲性を得るためには、繰り返し屈曲させた際の残存歪みを低減させる必要がある。このため、分子鎖の滑りを抑制する絡み合いが重要であり、例えばポリエステルフィルムの固有粘度を0.65以上1.0dl/g以下と高くする方法が有効である。ポリエステルフィルムの固有粘度は0.68以上1.0dl/g以下であればより好ましく、0.69以上0.9dl/g以下であれば最も好ましい。
また、MIT屈曲破断回数を50000万回以上と高くする方法としては、片面(A面)とその反対面(B面)の面配向係数の差の絶対値が、0.0001以上0.005以下であることが有効である。A面とB面の面配向係数の差を上記範囲とすることで耐屈曲性が向上するメカニズムは明らかではないが、0.0001以上0.005以下という表裏で若干の面配向差をつけることでフィルムを屈曲させた際の残存歪みが低減されるため、耐屈曲性が向上すると推定している。一方で、表裏での面配向の差が大きく過ぎると、屈曲させた際に、面配向が小さい面側に応力が集中するため破断しやすくなると推定される。A面とB面の面配向係数の差の絶対値は、0.0001以上0.004以下であればより好ましく、0.0002以上0.003以下であれば最も好ましい。A面とB面の面配向係数の差の絶対値を0.0001以上0.005以下とする方法としては、例えば、キャスト工程で未延伸ポリエステルシートを得る際に、片面とその反対面のフィルム表面の温度差をつける方法が挙げられる。具体的には、片面の冷却温度を非常に低温化し、反対面のフィルム表面温度よりも低く制御する方法もしくは、逆に片面の冷却温度を高く設定することで、反対面のフィルム表面温度よりも高く制御する方法などが挙げられるが、片面の冷却温度を高く設定し、キャスト後にフィルムを急冷する方法が好ましく用いられる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、加工時の寸法安定性、表示装置としての反り抑制の観点から、150℃での熱収縮率が、フィルム主配向軸方向(X方向)および主配向軸方向と直交す方向(Y方向)ともに3%以下であることが好ましい。
150℃での熱収縮率が、X方向、Y方向ともに3%以下とすることで、硬化性樹脂を含有する層を積層する際の乾燥工程での寸法変化、表示装置とした際の反りを低減することができる。ここで、150℃におけるX方向およびY方向の熱収縮率とは、フィルムをX方向およびY方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った前後の標線間距離の変化率を指す。150℃でのX方向とY方向の熱収縮率は、2.5%以下であればより好ましく、2%以下であれば最も好ましい。
【0011】
150℃での熱収縮率をX方向、Y方向ともに3%以下とする方法としては、製膜条件を調整する方法、オフアニール処理を行う方法などが挙げられるが、製膜条件としては、例えば、延伸後の熱処理を220℃以上250℃以下の高温とすることが好ましい。熱処理ゾーンが複数ある場合は、最も高温の熱処理ゾーンの温度が上記範囲であれば好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、表示装置としての見栄えの観点から、フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキが5度以内であることが好ましい。フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキを5度以内とすることで、表示装置として視認した際の色むらが抑制され良好な見栄えを達成することができる。ここで、本発明において、フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキは、フィルムサンプルの中心の主配向軸方向を基準方向とし、基準方向に対する4隅の配向角の最も大きい角度をバラツキとして評価した。フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキは4度以内であればより好ましく、3度以内であれば最も好ましい。
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキを5度以内とする方法としては、例えば、延伸後の熱処理を複数のゾーンに分けて段階的に昇温・降温する方法や、熱処理工程で幅方向に微延伸する方法が好ましく採用される。例えば熱処理前半温度を180℃以上210℃以下で幅方向に1%以上10%以下、好ましくは3%以上10%以下微延伸し、熱処理後半温度を200℃以上240℃以下で幅方向に1%以上10%以下、好ましくは3%以上10%以下微延伸する方法が挙げられる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点より、フィルム厚みは10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上100μm以下であればさらに好ましく、20μm以上50μm以下であれば最も好ましい。
本発明において、耐傷性の観点から、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能である。
ここで、硬化性樹脂とは、熱や光を照射することで架橋構造を形成し、硬化する樹脂をさす。硬化性樹脂としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、具体的には、有機シリコーン系、ポリオール系、メラミン系、エポキシ系、多官能アクリレート系、ウレタン系、イソシアネート系、有機材料と無機材料の複合材料である有機無機ハイブリット系および硬化性のある官能基を有するシルセスキオキサン系などの樹脂が挙げられる。より好ましくは、エポキシ系、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。更に好ましくは、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。
【0013】
硬化性樹脂として用いる多官能アクリレート系、シルセスキオキサン系樹脂については、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、などが好ましい。多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレート及びその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
…(中略)…
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルムは、硬化性樹脂を含有する層の表面の平均粗さSRaが1~10nmであることが好ましい。SRaが1nm未満では、表面の滑り性が悪く、キズが付くことがあり、Raが10nmを超えると突起が削れてキズが発生することがある。平均粗さRaはキズがより付きにくくなることから2~8nmであることがより好ましく、3~7nmであることが更に好ましい。硬化層表面の平均粗さRaを1~10nmとするには、前記した粒径の粒子を前記した含有量で添加することにより達成可能である。
本発明において、耐傷性向上効果をより高めるために、ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、傷付き抑制効果を非常に高めることが可能である。
本発明の硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmであることが好ましい。硬化性樹脂を含有する層の厚みが1μmより薄いと、十分な表面硬度が得られない場合がある。また、硬化性樹脂を含有する層の厚みが20μmを超えると積層ポリエステルフィルムを折り曲げた際に、積層された硬化性樹脂を含有する層にクラックが発生することがある。硬化性樹脂を含有する層の厚みは、2μm以上15μm以下であればより好ましく、3μm以上10μm以下であれば最も好ましい。なお、ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する構成の場合は、各面の硬化性樹脂を含有する層の厚みが、それぞれ1~20μmであることが好ましい。(後略)」
(ウ) 段落【0018】~【0031】
「【0018】
次に本発明のポリエステルフィルムの具体的な製造方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0019】
まず、ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を乾燥、予備結晶化させた後、単軸押出機に供給し、溶融押出する。この際、樹脂温度は265~295℃に制御することが好ましい。次いで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0020】
キャスト工程で得られた未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。また延伸温度は、延伸ムラが生じない程度に低温とすることが好ましく、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は50~60℃、延伸温度は80~90℃とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は70~80℃、延伸温度は90~100℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。
…(中略)…
【0027】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、耐屈曲性と表面硬度が高いため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして適用することで、表示装置のフレキシブル性を損なうことなく、表示装置表面の傷付きを防止することができる。
【0028】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置であって、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることが好ましい。前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計を120μm以下とすることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置となる。前記積層ポリエステルフィルムと偏光板の厚み合計は110μm以下であればより好ましく、100μm以下であれば最も好ましい。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子より構成されることが好ましい。(後略)」
(エ) 段落【0032】~【0082】
「【実施例】
【0032】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
【0033】
(1)フィルム厚み
フィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
【0034】
(2)樹脂層、硬化性樹脂を含有する層の厚み
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、ポリエステルフィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。合計で20点の樹脂層厚みを測定して平均値とした。
【0035】
(3)主配向軸
フィルムの任意の点において100mm×100mmの寸法でサンプルを切り出し、KSシステムズ製(現王子計測機器社)のマイクロ波分子配向計MOA-2001A(周波数4GHz)を用い、ポリエステルフィルムの面内の主配向軸を求め、X方向とし、X方向と直交する方向をY方向とした。
【0036】
(4)マルテンス硬さ
ナノインデンテーション試験機ENT-2100(エリオニクス社製)を使用し、以下の条件で測定した。なお、マルテンス硬さとは、測定結果によって得られた荷重と深さ最大値hmaxから、以下の式により算出される値である。
マルテンス硬さ[N/mm2]=荷重[μN]/24.5×(深さ最大値hmax(μm)2)
試験モード:負荷-除荷試験
負荷プロセス:直線
除荷プロセス:直線
圧子形状:バーコビッチ
圧子先端補正方式:田中方式
除荷フィッティング方式:直線(70-95)
負荷開始荷重:0mN
負荷終了荷重:0.5mN
負荷分割数:500
負荷ステップ間隔:20msec
最大荷重保持時間:1000msec
最大保持時測定:20
除荷開始荷重:0.5mN
除荷終了荷重:0mN
除荷分割数:500
除荷ステップ間隔:20msec
サンプリング数:1250
(5)MIT屈曲破断回数
MIT耐折度試験機(マイズ社製試験機No.702)を用い、JIS-P8115に準じて、長さ110mm(試験方向)、幅15mmサイズに切り出したサンプルを荷重1000g、屈曲角度左右135°(R:+135°、L:-135°)、屈曲速度175回/分、チャック先端R:0.38mmで屈曲試験を行い、フィルムが破断されたときの屈曲回数をMIT屈曲破断回数とした。なお、試験は3回実施し、その平均値を採用した。
【0037】
(6)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(nMD)、幅方向の屈折率(nTD)、厚み方向の屈折率(nZD)を測定し、下記式から面配向係数(fn)を算出した。なお、本発明においてはフィルムの長手方向、幅方向が不明な場合は、主配向軸方向(X方向)を幅方向、主配向軸方向と直交する方向(Y方向)を長手方向として測定を行った。
fn=(nMD+nTD)/2-nZD 。
【0038】
(7)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂またはポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量する
(8)固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0039】
(9)表面自由エネルギー
23℃、65%RHの条件下で、該条件で24時間調湿したフィルムサンプルについて、接触角計(協和界面化学製CA-D型)を使用して、水、エチレングリコ-ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の測定液を用い、協和界面化学(株)製接触角計CA-D型を用いて、各液体の熱可塑性樹脂基材(A)層表面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について得られた接触角と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、4つの式からなる連立方程式をγL、γ+、γ-について解いた。
【0040】
(γL γjL )1/2 +2(γ+ γj- )1/2 +2(γj+γ- )1/2 =(1+cosθ)[γjL +2(γj+ γj- )1/2 ]/2
ただし、γ=γL +2(γ+ γ- )1/2γj =γjL +2(γj+ γj- )1/2ここで、γ、γL 、γ+ 、γ- は、それぞれ、基材表面の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、また、γj 、γjL 、γj+ 、γj- は、それぞれ、用いた測定液の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターをあらわすものとする。
【0041】
ここで用いた各液体の表面張力は、Oss(Fundamentals ofAdhesion, L.H.Lee(Ed.), p153, Plenum ess, New York(1991))によって提案された表1の値を用いた。
【0042】
(10)150℃熱収縮率
フィルムを主配向軸方向(X方向)およびX方向に直交する方向(Y方向)にそれぞれ長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔(中央部から両端に50mmの位置)で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)={(加熱処理前の標線間距離)-(加熱処理後の標線間距離)}/(加熱処理前の標線間距離)×100。
【0043】
(11)フィルム10cm×20cm範囲における配向角のバラツキ
フィルムの任意の点において、20cm(E方向)×30cm(F方向)のサンプルを準備し、KSシステムズ製(現王子計測機器)のマイクロ波分子配向計MOA-2001A(周波数4GHz)を用いて、サンプルの中心(G点)における主配向軸を求め、基準方向とした。続いて、20cm(E方向)×30cm(F方向)サンプルの4隅からそれぞれ、フィルム中心に向かってE方向に5cm、F方向に5cmの位置(4箇所)において、主配向軸を求め、基準方向となす角度を該位置の配向角とした。該測定位置(4箇所)を結ぶと、G点を中心として、E方向に10cm、F方向に20cmの大きさとなり、該4箇所の測定位置での配向角の中で最も大きい角度を、フィルム10cm×20cm範囲における配向角のバラツキとした。
【0044】
(12)円偏光板の作製
(円偏光板-I)
厚さ40μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬した。次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。得られた偏光子の、一方の面に予めコロナ処理されたλ/4位相差フィルム(環状オレフィンフィルム 23μm)、他方の面に予めケン化処理を施した保護フィルム(トリアセチルセルロールフィルム 25μm)を、接着剤を介して貼合せて、厚さ60μmの円偏光板を作製した。
【0045】
(円偏光板-II)
ポリビニルアルコールフィルムの厚さを80μm、λ/4位相差フィルムの厚さを33μm、保護フィルムの厚さを40μmとし、円偏光板-Iと同様にして、厚さに95μmの円偏光板を作製した。
【0046】
(13)有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製
本発明の積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ製 15EL9500)を、それぞれアクリル系粘着剤(厚さ20μm)を介して有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ社製 商品名15EL9500)の視認側に貼り合せて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。
【0047】
(14)耐屈曲性
本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、U字伸縮試験器(ユアサシステム機器製 DLDMLH-FS)を用いて、幅108mm、長さ112mmに切り出したサンプルを、チルトクランプが水平状態にて、ストローク方向がサンプル長さ方向になるようにチルトクランプ端部に貼り付け、試験速度60r/min、試験ストローク60mm、面間距離3mmにて10000回屈曲し、試験後のサンプルについて、積層ポリエステルフィルム側の蛍光灯の反射光と、外観より以下の判定を行った。
A:外観変化がなく、反射光の歪みも観察されなかった。
B:外観上の変化はなかったが、反射光の歪みが観察された。
C:外観に若干の折り曲げラインが観察された。
D:外観に折り曲げラインが鮮明に観察された。
【0048】
(15)耐傷性
本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、新東科学株式会社製 HEIDON-14DRを用いて、積層ポリエステルフィルム側を測定面として、温度23℃、湿度65%RHにおいて下記条件にて測定した。鉛筆の硬度については、下記に示す次の順に硬いことを表し、10Bが最も柔らかく9Hが最も硬い。従って、例えば「鉛筆硬度H以上」とは、鉛筆硬度がH、2H、3H、・・・、9Hのいずれかであることを意味する。
【0049】
・加重:750g
・角度:45°
・傷付け速度:30mm/min
・傷付け:10mm×5本
・サンプル状態:ガラス板にフィルムをテープで貼り付けて実施。
【0050】
・鉛筆の硬度:10B(柔らかい)・・・B、HB、F、H、2H・・・9H(硬い)
・鉛筆硬度決定方法:5本中、3本無傷であればその硬度を有していると判断した。
【0051】
(例えば、Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、2本の傷が確認され、次いで2Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、3本の傷が確認された場合は、鉛筆硬度はHとする。また、例えば2Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、観察される傷の数が2本以下である場合は、鉛筆硬度は少なくとも2H以上であると判断する。)
A:鉛筆硬度が3H以上であった。
B:鉛筆硬度が2H以上3H未満であった。
C:鉛筆硬度がH以上2H未満であった。
D:鉛筆硬度がH未満であった。
【0052】
(16)反り高さ
(13)で得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置について、積層ポリエステルフィルム側が上面になるように水平なガラス板に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり高さを測定し、最大の高さを反り高さとし、下記の基準で評価を行った。
A:反り高さが5mm未満であった。
B:反り高さが5mm以上10mm未満であった。
C:反り高さが10mm以上15mm未満であった。
D:反り高さが15mm以上であった。
【0053】
(17)見栄え
(13)で得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置について、画面に垂直な方向より観察を行い、見栄え評価を下記の基準で行った。
A:画面上にムラが確認できず、シャープな黒色が得られた。
B:画面上にムラが僅かに確認できたが、シャープな黒色が得られた。
C:画面上にムラが僅かに確認でき、黒色鮮鋭性が低下していた。
D:画面上にムラが確認された。
【0054】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0055】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0056】
(ポリエステルB)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0057】
(粒子マスター)
ポリエステルB中に平均粒子径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を粒子濃度1質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0058】
(樹脂Pの調合)
ポリエステルフィルムの表面に積層する樹脂層は以下のように準備した。
【0059】
樹脂溶液(a):酸成分であるテレフタル酸(88mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(12mol%)、ジオール成分であるエチレングリコール(100mol%
)の酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水溶性塗液を70重量部と、酸成分であるテレフタル酸(50mol%)、イソフタル酸(49mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(1mol%)とジオール成分であるエチレングリコール(55mol%)、ネオペンチルグリコール(44mol%)、ポリエチレングリコール(分子量:4000)(1mol%)の酸性分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水分散体30重量部を混合した溶液。
架橋剤(b):メチロール基型メラミン架橋剤
架橋剤(c):オキサゾリン基含有架橋剤
粒子(d):粒子径150nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
粒子(e):粒子径300nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
フッ素系界面活性剤(f):DIC(株)製メガファックF-444
これらを固形分重量比で(a)/(b)/(c)/(d)/(e)/(f)=47重量部
/19重量部/20重量部/4.9重量部/0.7重量部/0.1重量部で混合した。
屈折率は1.57。
【0060】
(硬化性樹脂Qの調合)
粒径100nmのシリカ粒子(日産化学工業株式会社製 オルガノシリカゾル)と、多官能アクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD PET30)を、質量比50:50で混合し、トルエン/MEK混合溶媒(質量比50:50)で、希釈して硬化性樹脂を調合した。
【0061】
(実施例1)
ポリエステルAと粒子マスターを質量比99:1で混合して押出機に投入した後、280℃で溶融させて、Tダイより33℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。その後、10℃に温度制御した冷却ロールで急冷し、続いて、予熱温度55℃、延伸温度85℃で長手方向に3.8倍延伸し、その後一旦冷却した。次いて、この一軸延伸フィルムの両面にコロナ放電処理を施し、フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルムの両面に樹脂Pを塗布し、その後、テンター式延伸機にて予熱温度75℃、延伸温度95℃で幅方向に3.8倍延伸し、テンター内にて熱処理前半温度200℃とし、幅方向に5%微延伸し、続いて、熱処理後半温度230℃にて、幅方向に3%微延伸を行い、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂Qを厚み5μmとなるように塗工し、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0062】
(実施例2)
冷却ドラムの温度を35℃に温度制御した以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0063】
(実施例3)
冷却ドラムの温度を40℃に温度制御した以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0064】
(実施例4)
長手方向の延伸倍率を3.6倍、幅方向の延伸倍率を3.6倍とした以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0065】
(実施例5)
長手方向の延伸倍率を3.5倍、幅方向の延伸倍率を3.5倍とした以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0066】
(実施例6)
冷却ドラムの温度を25℃に温度制御し、長手方向の延伸倍率を3.4倍、幅方向の延伸倍率を3.4倍とした以外は、実施例1と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0067】
(実施例7)
ポリエステルBと粒子マスターを質量比99:1で混合して使用した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0068】
(実施例8)
フィルム両面に樹脂Pを塗工しなかった以外は実施例2と同様にして、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、硬化性樹脂Qを厚み5μmとなるように塗工し、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0069】
(実施例9)
実施例2と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルムを得て、その後、硬化性樹脂Qをポリエステルフィルムの片面のみに塗工し、フィルム厚み30μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0070】
(実施例10)
実施例2と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-IIを貼り合わせて評価した。
【0071】
(実施例11)
実施例2と同様にしてフィルム厚み45μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み55μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0072】
(実施例12)
実施例2と同様にしてフィルム厚み19μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み29μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0073】
(実施例13)
延伸後の熱処理条件を、テンター内にて熱処理前半温度170℃とし、幅方向に3%微延伸し、続いて、熱処理後半温度190℃にて、幅方向に4%微延伸を行った以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0074】
(実施例14)
延伸後の熱処理を、テンター内にて熱処理温度230℃で実施した以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0075】
(比較例1)
冷却ドラム温度を25℃とし、長手方向の延伸倍率を3.3倍、幅方向の延伸倍率を3.3倍とし、延伸後の熱処理を、テンター内にて熱処理温度230℃で実施した以外は、実施例6と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0076】
(比較例2)
冷却ドラム温度を55℃とし、その後、温度制御した冷却ロールで急冷せず、長手方向の延伸倍率を3.6倍、幅方向の延伸倍率を3.6倍とし、延伸後の熱処理を、テンター内にて熱処理温度210℃で実施した以外は、比較例1と同様にしてフィルム厚み35μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み45μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
【0077】
(比較例3)
冷却ドラム温度を33℃とした以外は、比較例1と同様にしてフィルム厚み25μmのポリエステルフィルム、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
…(中略)…
【0079】
【表2】
[図:0001423114000003.jpg]
【0080】
【表3】
[図:0001423114000004.jpg]
[図:0001423114000005.jpg]
【0081】
【表4】
[図:0001423114000006.jpg]
【0082】
【表5】
[図:0001423114000007.jpg]
」
イ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
(ア)a 引用文献1の段落【0008】には、「表面硬度の高いポリエステルフィルムを提供」することが記載されている。
b また、引用文献1の段落【0048】~【0051】には、積層ポリエステルフィルムの耐傷性を、A(鉛筆硬度が3H以上であった。)、B(鉛筆硬度が2H以上3H未満であった。)、C(鉛筆硬度がH以上2H未満であった。)、D(鉛筆硬度がH未満であった。)の4段階で評価することが記載されているが、同様にフィルム特性をA~Dの4段階で評価している「(14)耐屈曲性」、「(16)反り高さ」、「(17)見栄え」の評価基準を参照すると(段落【0047】、【0052】~【0053】を参照)、いずれもA、B、C、Dの順に光学フィルムとしての特性が好ましくなっていることが読み取れる。以上に鑑みれば、引用文献1に記載の「積層ポリエステルフィルム」は、鉛筆硬度がH以上、より好ましくは2H以上であることが耐傷性の観点から望ましいことを理解できる。
c さらに、引用文献1の段落【0079】~【0082】には、実施例における積層ポリエステルフィルムの耐傷性の評価が記載されており、実施例5及び6以外は全て評価がA又はBである。すなわち、実施例の積層ポリエステルフィルムの大部分は2H以上の鉛筆硬度を有している。
d 前記a~cを踏まえると、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項」という。)
[引用文献1技術事項]
「積層ポリエステルフィルムの鉛筆硬度は、2H以上であること。」
(イ) 引用文献1の段落【0038】の記載においては「(8)固有粘度」としつつ「ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は」と記載されているように、「固有粘度」と「極限粘度」が同義であることは技術常識である(化学大辞典(株式会社東京化学同人 出版日:1989年10月20日 p.588「極限粘度数」)も参照。)
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「折り畳み可能な表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いられる積層ポリエステルフィルムであって、(【0008】、【0028】)
積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する構成とされ、(【0012】)
ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点より、フィルム厚みは15μm以上100μm以下であり、(【0012】)
ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解して測定したポリエステルフィルムの極限粘度は0.69以上0.9dl/g以下であり、(【0010】、【0038】)
ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の未延伸フィルムを逐次二軸延伸方法、または、同時二軸延伸方法により延伸を行うことで得られたものであり、(【0019】、【0020】)
硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めたものであり、(【0012】)
硬化性樹脂は、多官能アクリレート系樹脂であり、(【0012】)
硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmであり、(【0016】)
積層ポリエステルフィルムの鉛筆硬度は、2H以上であり、(引用文献1技術事項)
積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せるためのアクリル系粘着剤の厚さは20μmである、(【0046】)
積層ポリエステルフィルム。」
(3) 技術常識の認定
ア 技術常識A2の認定
(ア) 引用文献12に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である「JIS K 7367-5 : 2000 プラスチック -毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方- 第5部:熱可塑性ポリエステル(TP)ホモポリマー及びコポリマー」、日本規格協会、2000年1月20日(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「1. 適用範囲
この規格は,熱可塑性ポリエステル(TPs)を規定の溶媒で希釈して得た溶液の粘度数を測定する方法を規定する。この方法は,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT),ポリエチレンナフタレート(PEN),及び共重合ポリエステル並びに他のポリエステルなどISO 7792-1に規定され,規定溶媒のどれかに規定条件下で溶解するものに適用できる。
粘度数は,この規格で規定する特定条件によって,ISO 1628-1に規定される一般的な方法で測定する。
熱可塑性ポリエステルの粘度数を測定することによって,そのポリマーの相対的な分子量の大きさを知ることができる。
…(中略)…
3. 原理
溶媒及びポリマー0.005g/ml溶液の25℃における流下時間を通常の方法で測定し,これらの測定結果と適用したポリマー濃度に基づいて粘度数を計算する。
…(中略)…
6. 溶媒及び溶解
6.1 溶媒の選択
6.1.1 熱可塑性ポリエステルの粘度数の値は,使用する溶媒によって異なる。この規格では,次の6種類の溶媒を規定する。
フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(4.1)
フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(4.2)
o-クロロフェノール(4.3)
m-クレゾール(4.4)
ジクロロ酢酸(4.5)
フェノール/2, 4, 6-トリクロロフェノール(4.6)
溶媒の流下時間は,これを使用する際には少なくとも1日に1回測定しなければならない(7.2参照)。その流下時間が,溶媒を準備した際の当初の値から1%以上異なる場合は,その溶媒を廃棄し,新しい溶媒を調製する。
特定の熱可塑性ポリエステルに用いる溶媒は,次に規定する。
6.1.2 PETには,フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50),フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50,又は,60/40),o-クロロフェノール,又は,ジクロロ酢酸のいずれかを溶媒として用いる。
備考 これら4種類の溶媒間の粘度数の換算式は,附属書A(参考)A.3.1に示す。
…(中略)…
8. 結果の表示
粘度数は,次の式によって算出し,ml/gで表す。」
「附属書A(参考) ラウンドロビンテスト
…(中略)…
A.3 種々の溶媒で測定した粘度数の相互換算
種々の溶媒で測定した粘度数の相関は,次のとおりである。
A.3.1 PETの粘度数
フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)に溶かしたPETと,フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50, 60/40),o-クロロフェノール及びジクロロ酢酸に溶かしたPETの粘度数の相関図を,附属書図A.1に示す。
この図から,直線関係であることが分かる。それらの関係を次に示す。
a) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50)
y=1.07x-2.00
b) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(60/40)
y=0.83x+11.07
c) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とo-クロロフェノール
y=0.82x+8.40
d) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とジクロロ酢酸
y=0.83x+15.00
ここに,y:代替溶媒での粘度数
x: フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)での粘度数」
「
[図:0001423114000008.jpg]
」
(イ) 技術常識A2の認定
前記(ア)に示した引用文献12の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識A2」という。)なお、技術常識の参照符号(ここでは「A2」)は、対応する本件補正発明の構成の符号に合わせている。
<技術常識A2>
「ポリエチレンテレフタレートの粘度数の値は、測定に使用する溶媒によって異なり、それぞれ以下の相関関係を有すること。
b) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(60/40)
y=0.83x+11.07
c) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とo-クロロフェノール
y=0.82x+8.40
y:代替溶媒での粘度数(ml/g)
x:フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)での粘度数(ml/g)」
イ 技術常識A1の認定
(ア) 引用文献13に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2011-227489号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。
「【0013】
<ハードコートフィルム>
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に積層されたハードコート層とを備え、かつ、該ハードコート層の表面に反射防止層を設けるためのハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤および界面活性剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を鋳型と接触させながら硬化させることにより形成され、かつ、前記ハードコート層の対水接触角θが、下記式(1)を満たす。
…(中略)…
【0020】
基材フィルムとしては、光学的に透明性を有するフィルムであって、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることができる活性エネルギー線を透過するものであれば特に制限されるものではなく、各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニル;などからなるフィルムが例示される。以上の中でも、透明性、機械強度、熱安定性、低湿度透過性、等方性などの点からセルロースアセテート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート等からなるフィルムが好ましく、透明性、機械強度の点からセルロースアセテートからなるフィルムがより好ましい。
【0021】
基材フィルムの厚みは、20μm以上250μm以下であることが好ましく、より好ましくは、30μm以上150μm以下である。基材フィルムの厚みが20μm未満である場合には、ハードコートフィルムとしての十分な硬度を得ることが難しいことがある。また、基材フィルムの厚みが250μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコスト等の観点から好ましくない。ハードコートフィルム全体の厚みを薄くする観点からは、基材フィルムの厚みは150μm以下、さらには120μm以下とするのがより好ましい。
…(中略)…
【0023】
本発明のハードコートフィルムを光学用途、特に液晶ディスプレイ(LCD)を構成する光学部材として使用する場合、たとえば、偏光板の保護フィルムとして使用する場合、偏光フィルムや液晶セルなどの他の光学部材を紫外線から保護するため、基材フィルムは、UV吸収剤を含有することが好ましい。」
(イ) 技術常識A1の認定
前記(ア)に示した引用文献13の摘記事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識A1」という。)
<技術常識A1>
「基材フィルム上にハードコート層を備えてなるハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムの表面硬度を向上させるために、基材フィルムをある程度厚くしようとすること。」
ウ 技術常識A3の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2010-214675号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)用途として好適に用いられる光学用積層ポリエステルフィルムに関するものであって、光学特性に優れ、光学製品の品質向上や消費エネルギー低減に寄与することができる光学用ポリエステルフィルムに関する。」
「【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが必要であり、好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。フィルムの全光線透過率が85%未満であると、高度な透明性を必要とする光学用途には使用できなくなる。また、各波長の光線透過率が下記式を満たすことを必要とする。
ΔT=TA-TB≧-1%
(上記式中、TAは波長500~600nmにおける光線透過率の平均値、TBは波長700~800nmにおける光線透過率の平均値である)」
(イ) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2011-140543号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性と耐湿熱性に優れた易接着性熱可塑性樹脂フィルムに関する。詳しくは、ディスプレイなどに主として用いられる、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズム状レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルムなどの機能性フィルムの基材として好適な易接着性熱可塑性樹脂フィルムに関する。」
「【0019】
また、フィルムの滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善するために、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を含有させる場合がある。しかしながら、光学用部材の基材フィルムとして用いる場合は、高度な透明性を維持しながらハンドリング性に優れていることが要求される。具体的には、光学用部材の基材フィルムとして使用する場合、易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、89%以上がよりさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。」
(ウ) 技術常識A3の認定
前記(ア)及び(イ)に示した引用文献2及び引用文献3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識A3」という。)
<技術常識A3>
「ディスプレイ用光学フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムとして透明度が高いほど望ましく、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいこと。」
エ 技術常識B0、B2a、B2bの認定
(ア) 引用文献14に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2008-95064号公報(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。
a 請求項1、段落【0001】、【0081】
「【請求項1】
ハードコート層を有するフィルム基材からなるハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた保護粘着フィルムであって、
前記フィルム基材の弾性率が3~7GPa、厚さが38~100μmであり、
前記ハードコート層の厚さが5~25μmであり、
前記ハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、
前記粘着剤層の厚さが5~20μmであり、
総厚さが60~150μmであることを特徴とする保護粘着フィルム。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルやELディスプレイ等の表示装置の表面に設けられるスクリーンパネルを保護する保護粘着フィルム、保護粘着フィルムを有するスクリーンパネル及び当該スクリーンパネルを有する携帯電子端末に関する。」
「【0081】
[ハードコートフィルムの製造方法]
本発明の保護粘着フィルムは、フィルム基材上に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して硬化させ、ハードコート層を形成してハードコートフィルムとした後、フィルム基材のハードコート層を有する面と逆の面に粘着剤層を形成することで製造できる。」
b 段落【0002】~【0004】、【0087】~【0088】
「【背景技術】
【0002】
小型短小化が進む携帯電子端末の要請に伴い、画像表示装置(以下表示装置)の薄型化が進められている。液晶等の表示装置の破損を防止するため、保護用のスクリーンパネル(以下パネル)が設けられている。薄型化のためには、パネルの薄型化と、表示装置とパネルの間隙縮小が有効である。
【0003】
しかし、従来のアクリルやポリカーボネート等の樹脂製パネルでは、剛性が不足するため、パネル部分を指で押すと表示装置が変形し表示不良を起こしたり、湿熱条件等での長期耐久性試験時にパネルが画像表示パネルに部分的に貼り付くといった問題が発生する。
【0004】
そこで、従来の樹脂製のスクリーンパネルに代わる、高剛性のスクリーンパネルが求められており、例えば、ガラス板製のパネルが採用され始めている。しかし、ガラス製パネルは割れた場合の安全対策が必要となる。そのため、パネルの表面に、飛散防止機能を備えた保護粘着フィルムの貼付が検討されている。保護粘着フィルムとしては、液晶表示体における偏光板用、あるいは各種ディスプレイ保護用のハードコートフィルムが特許文献1に開示されている。開示のハードフィルムは、ベースフィルムに188μmPETフィルムを使用し表面鉛筆硬度4Hを発揮しているが、フィルム厚みが厚く、薄型化の目的に適さない。また、同一ハードコート剤を薄手のベースフィルムに設けると、粘着剤層を有さない構成であれば、3H等の高い表面鉛筆硬度を有するが、パネルに積層する際に粘着剤層を介すると、粘着剤層が変形しパネルとしての表面鉛筆硬度が大きく低下する問題があった。」
「【0087】
[粘着剤層]
本発明に用いる粘着剤層としては、厚さが5~20μmの粘着剤層を使用する。本発明においては、粘着剤層の厚さを当該厚さとすることで、被着対象との十分な粘着力を発現できると共に、保護粘着フィルムの表面で応力集中が生じた場合にも、保護粘着フィルム全体の弾性率を高く保持できるため、粘着フィルム表面に設けられたハードコート層の硬度の低下を抑制できると考えられる。
【0088】
本発明に用いる粘着剤層に使用される粘着剤には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2~14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。例えば、n-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。」
c 実施例
「【実施例】
【0102】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
…(中略)…
【0117】
(粘着剤層(1)の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが10μmの粘着剤層(1)を形成した。
【0118】
(粘着剤層(2)の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層(2)を形成した。
【0119】
(実施例1)
ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μmの保護粘着フィルムを得た。
…(中略)…
【0124】
(比較例2)
ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(2)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ、40℃で2日間養生後、厚さ113μmの保護粘着フィルムを得た。
…(中略)…
【0127】
【表1】
[図:0001423114000009.jpg]
」
(イ) 引用文献15に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2006-213808号公報(以下「引用文献15」という。)には、次の記載がある。
「【0007】
さらには、近年、フラットパネルディスプレイや携帯電話などの薄型化が進み、粘着剤層の厚さもより薄くするといった要望がある。しかしながら、粘着剤層を薄くしていくと、接着力が低下することは広く知られていることで、粘着剤層が20μm以下では、必要な接着性を維持するのが困難であることが判明し、粘着剤層の厚みをより薄くできる手法が求められている。
【特許文献1】特許第2549388号公報
【特許文献2】特開平4-254803号公報
【特許文献3】特開平4-268502号公報
【特許文献4】特開平4-268503号公報
【特許文献5】特開平4-268504号公報
【特許文献6】特開平5-45517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粘着剤層の厚みが10~20μmと薄くても接着性が良好で、透明性に優れる光学部村用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は前記光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層を提供することを目的とする。さらには、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着型光学部材を提供すること、ならびに、前記粘着型光学部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」
(ウ) 技術常識B0の認定
前記(ア)aに示した引用文献14の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識B0」という。)
[技術常識B0]
「基材の一方の面にハードコート層を有し、他方の面に粘着層を有する表示装置用表面保護フィルム」
(エ) 技術常識B2aの認定
前記(イ)に示した引用文献15の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識B2a」という。)
[技術常識B2a]
「ディスプレイの薄型化のためにディスプレイ用光学部材の粘着剤層をミクロンオーダーでできる限り薄くしようとすること。」
(オ) 技術常識B2bの認定
前記(ア)b及びcに示した引用文献14の摘記事項に例示されているように、ディスプレイ用のハードコートフィルムの粘着剤層の膜厚を調整し、一定の膜厚以下とすることでハードコートフィルムの硬度の低下を抑制していることが読み取れる。
したがって、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識B2b」という。)
[技術常識B2b]
「表示装置用表面保護フィルムにおける粘着層の厚さについて、被着対象との十分な粘着力を発現できるとともに保護フィルムの表面硬度を維持するために例えば10μm程度に薄くすること。」
オ 技術常識C3の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2014-238614号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用されるハードコートフィルムに関するものである。」
「【0031】
本発明のハードコートフィルムについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を示す概略断面図である。
図1に例示するように、ハードコートフィルム1は、基板2と、基板2上に形成されたハードコート層3とを有している。ハードコート層3は、異形シリカ微粒子と、重量平均分子量およびアクリル当量が所定の範囲内であるアクリル系ポリマーと、マトリクス樹脂とを含有している。すなわち、ハードコート層3は、反応性異形シリカ微粒子と、重量平均分子量およびアクリル当量が所定の範囲内であるアクリル系ポリマーと、モノマーとを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物から構成されている。
以下、本発明のハードコートフィルムにおける各構成について説明する。」
「【0132】
ハードコート層は光透過性を有するものである。ハードコート層の可視光領域における透過率としては、具体的には、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。上記透過率が上記範囲であることにより、光透過性に優れたハードコート層を形成することができるからである。
ここで、ハードコート層の透過率は、JISK7105で規定する方法により測定した全光線透過率とする。」
(イ) 技術常識C3の認定
前記(ア)に示した引用文献6の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識C3」という。)
<技術常識C3>
「ディスプレイ用ハードコートフィルムのハードコート層は、光透過率が高いものが好ましく、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいこと。」
(4) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム)
a 引用発明の「積層ポリエステルフィルム」は、「折り畳み可能な表示装置」の「前面のカバーフィルムとして好適に用いられる」ものであるから、本件補正発明の「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」に相当する。
b したがって、「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」の発明である本件補正発明と「折り畳み可能な表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いられる積層ポリエステルフィルム」の発明である引用発明は、「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」の発明である点で一致する。
(イ) 構成A0~A4の観点(ポリエステルフィルム)
a 構成A0について(ポリエステルフィルム)
構成A0は、「ポリエステルフィルム」を有することである。
引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件補正発明の「ポリエステルフィルム」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A0の観点について、次の点において一致する。
「ポリエステルフィルム」を有する点。
b 構成A1について(厚み)
構成A1は、「ポリエステルフィルム」の「厚みが50~75μmであ[る]」ことである。
引用発明の「ポリエステルフィルム」は、厚みが「15μm以上100μm以下」であって、本件補正発明の「50~75μm」という数値範囲と部分的に重複するものであるところ、両者は、「厚みが15μm以上100μm以下」であるとの条件を満たす点において共通する。
そうすると、本件補正発明と引用発明の構成A1の観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成A1の観点における一致点
「ポリエステルフィルム」の「厚み」が「15~100μm」であるとの条件を満たす点。
(b) 構成A1の観点における相違点
「ポリエステルフィルム」の厚みについて、
本件補正発明においては、「50~75μm」との限定があるのに対して、
引用発明においては、「15μm以上100μm以下」である点。
c 構成A2について(極限粘度)
構成A2は、「ポリエステルフィルム」の「極限粘度が0.73~1.0dl/gであ[る]」ことである。
(a) 引用発明においては、「ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解して測定したポリエステルフィルムの極限粘度は0.69以上0.9dl/g以下」である。
(b) これに対して、本件補正発明においては、本願明細書の段落【0051】の記載を参酌すると、「フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒」を用いて極限粘度を評価している。
(c) ここで、ポリエチレンテレフタレートの粘度数(極限粘度)の測定値は、測定に使用する溶媒によって異なり、測定溶媒に応じて、次の換算式が成立する(技術常識A2参照)。
フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)(x)とフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)(y)との間の換算式
y=0.83x+11.07 (x及びyの単位は[ml/g]・・・式A
フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)(x)とo-クロロフェノール(z)との間の換算式
z=0.82x+8.40 (x及びzの単位は[ml/g]・・・式B
(d) フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)を用いた測定値(y)とo-クロロフェノールを用いた測定値(z)の換算式は、式Aと式Bからxを消去することにより、次のものとなる。
y=1.01z+2.57 (z及びyの単位は[ml/g])・・・式C
これを、[dl/g]の単位を用いたZ及びYで表すと、次式のとおりとなる。
Y=1.01Z+0.0257 (Z及びYの単位は[dl/g])・・・式D
(e) 技術常識A2を踏まえた換算式Dを用いることにより、引用発明におけるポリエステルの極限粘度の範囲である「0.69以上0.9dl/g」を本件補正発明の測定溶媒の条件下で評価したものに換算すると、「0.72以上0.93dl/g以下」となる。
(f) そうすると、ポリエステルの極限粘度の数値範囲について、本件補正発明の「0.73~1.0dl/g」という数値範囲は、引用発明における数値範囲である「0.72~0.93dl/g」と異なるものの、後者の相当の部分を包摂し、両者は、「0.72~1.0dl/g」との条件を満たす点において共通する。
(g) したがって、本件補正発明と引用発明の構成A2の観点における一致点と相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。
i 構成A2の観点における一致点
「ポリエステルフィルム」の「極限粘度」が「0.72~1.0dl/g」であるとの条件を満たす点。
ii 構成A2の観点における相違点
「ポリエステルフィルム」の極限粘度について、
本件補正発明においては、「0.73~1.0dl/g」であるのに対して、
引用発明においては、「0.72以上0.93dl/g以下」である点。
d 構成A3について(全光線透過率)
構成A3は、「ポリエステルフィルム」の「全光線透過率が87%以上である」ことである。
引用発明において、「ポリエステルフィルム」の「全光線透過率」の下限は明示していない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成A3の観点に関し、次の点において相違する。
本件補正発明においては、「ポリエステルフィルムの全光線透過率が87%以上」との下限の限定があるのに対して、
引用発明においては、「ポリエステルフィルム」の「全光線透過率」の下限は限定されていない点。
e 構成A4について(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
構成A4は、「ポリエステルフィルム」が「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ[る]」ことである。
引用発明における「ポリエステルフィルム」は、「ポリエチレンテレフタレート樹脂の未延伸フィルムを逐次二軸延伸方法、または、同時二軸延伸方法により延伸を行うことで得られ[る]」フィルムであるから、本件補正発明における「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A4の観点に関し、次の点において一致する。
「ポリエステルフィルム」が「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」である点。
(ウ) 構成B0~B2の観点(粘着層)
a 構成B0について(粘着層)
構成B0は、「ポリエステルフィルムの一方の面側」に「粘着層」を有することである。
引用発明は、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せ」ているが、積層ポリエステルフィルム自体が「粘着層」を有しているとはいえない。
したがって、本件補正発明と引用発明の構成B0の観点における一致点と相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成B0の観点における一致点
ポリエステルフィルムを貼り合せる際に、「ポリエステルフィルムの一方の面側」に、「粘着剤」からなる層を設ける点。
(b) 構成B0の観点における相違点
本件補正発明においては、「ポリエステルフィルムの一方の面側」に、「粘着層」を備えるのに対して、
引用発明においては、
積層ポリエステルフィルムを貼り合せる際に、積層ポリエステルフィルムの一方の面側に、粘着剤からなる粘着層を設けるものの、当該粘着剤は積層ポリエステルフィルムが有する「粘着層」ではない点。
b 構成B1について(アクリル系粘着剤)
構成B1は、「粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され[ている]」ことである。
引用発明は、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せ」ている。
そうすると、前記a(a)において構成B0の観点で抽出した相違点を除くと、本件補正発明と引用発明は、構成B1に関して、次の点において一致する。
「粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され[ている]」点。
c 構成B2について(厚み)
構成B2は、「粘着層」の「厚み」が「3~15μmであ[る]」ことである。
引用発明は、アクリル系粘着剤の厚さが「20μm」であるが。
そうすると、前記a(a)において構成B0の観点で抽出した相違点を除くと、本件補正発明と引用発明は、構成B1の観点に関して、次の点において相違する。
本件補正発明においては、「粘着層」の「厚み」が「3~15μmであ[る]」のに対し、
引用発明においては、「20μm」である点。
(エ) 構成C0~C4の観点(ハードコート層)
a 構成C0について(ハードコート層)
構成C0は、「ハードコート層」が「ポリエステルフィルムの粘着層を有する面側と反対面側」にあることである。
(a) 引用発明における「硬化性樹脂を含有する層」は、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面」に形成される層であって、「硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能」となるから、本件補正発明の「ハードコート層」に相当する。
(b) そして、引用発明において、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せ」ているところ、前記(a)に示した「硬化性樹脂を含有する層」の機能から、有機エレクトロルミネッセンスパネルに適用する際に、当該「硬化性樹脂を含有する層」は最表面に位置しており、ポリエステルフィルムを貼り合せる際にアクリル系粘着剤面側と反対面側に位置することは明らかである。
(c) そうすると、前記a(a)において構成B0の観点で抽出した相違点を除くと、本件補正発明と引用発明は、構成C0の観点に関して、次の点において相違する。
ポリエステルフィルムの粘着層を設ける面側と反対面側に「ハードコート層が積層され[ている]」点。
b 構成C1について(厚み)
構成C1は、「ハードコート層」の「厚みが1~40μm」であることである。
(a) 引用発明の「硬化性樹脂を含有する層」は、「厚みが1~20μm」であって、引用発明の当該数値範囲は、本件補正発明の「1~40μm」の範囲に包含される。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は、構成C1に関して、次の点において一致する。
「ハードコート層」の「厚みが1~40μm」である点。
c 構成C2について(鉛筆硬度)
構成C2は、「ハードコート層」の「鉛筆硬度が2H以上」であることである。
(a) 前記a(b)に示したように、引用発明の「硬化性樹脂を含有する層」が「積層ポリエステルフィルム」の最表面に設けられることは明らかであるところ、「積層ポリエステルフィルム」が「2H以上の硬度」を有する場合に、その最表面に設けられる「硬化性樹脂を含有する層」も2H以上の鉛筆硬度を有することは自明である。
(b) したがって、本件補正発明と引用発明は、構成C1に関して、次の点において一致する。
「ハードコート層」の「鉛筆硬度が2H以上」である点。
d 構成C3について(全光線透過率)
構成C3は、「ハードコート層」の「全光線透過率が87%以上」であることである。
引用発明においては、「ハードコート層」の「全光線透過率」の下限は明示していない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成C3の観点に関し、次の点において相違する。
本件補正発明においては、「ハードコート層の全光線透過率が87%以上」と下限の限定があるのに対して、
引用発明においては、「ハードコート層」の「全光線透過率」の下限は限定されていない点。
e 構成C4について(アクリル系樹脂)
構成C4は、「ハードコート層」が「アクリル系樹脂で形成されている」ことである。
引用発明において「硬化性樹脂を含有する層」を構成している「硬化性樹脂」は、「多官能アクリレート系樹脂」であり、本件補正発明における「アクリル系樹脂」に該当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、構成C3の観点に関し、次の点において一致する。
「ハードコート層」が「アクリル系樹脂で形成されている」点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「厚みが15~100μmであり極限粘度が0.72~1.0dl/gであるポリエステルフィルムを有し、
ポリエステルフィルムの一方の面側には、ポリエステルフィルムを貼り合せる際に粘着層を設けるものであり、
ポリエステルフィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
ポリエステルフィルムの粘着層を設ける面側と反対面側には、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度が2H以上であるハードコート層が積層され、
粘着層は、アクリル系粘着剤で形成され、
ハードコート層は、アクリル系樹脂で形成されている折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点A(ポリエステルフィルムに関する相違点)
(a) 相違点A1
「ポリエステルフィルム」の厚みについて、
本件補正発明においては、「50~75μm」との限定があるのに対して、
引用発明においては、「15μm以上100μm以下」である点。
(b) 相違点A2
「ポリエステルフィルム」の極限粘度について、
本件補正発明においては、「0.73~1.0dl/g」であるのに対して、
引用発明においては、「0.72以上0.93dl/g以下」である点。
(c) 相違点A3
「ポリエステルフィルム」について、
本件補正発明においては、「全光線透過率が87%以上」との限定があるのに対して、
引用発明においては、その全光線透過率について下限は限定されていない点。
d 相違点B(粘着層に関する相違点)
(a) 相違点B0
本件補正発明においては、「ポリエステルフィルムの一方の面側」に「粘着層」を有している、「のに対して、
引用発明においては、積層ポリエステルフィルムの一方の面側には、積層ポリエステルフィルムを貼り合せる際に粘着層を設けるものであり、当該粘着層は積層ポリエステルフィルムが有する「粘着層」ではない点。
(b) 相違点B2
粘着剤層の厚みが、
本件補正発明においては、「3~15μmであ[る]」のに対して、
引用発明においては、「20μm」である点。
c 相違点C(ハードコート層に関する相違点)
「ハードコート層」について、
本件補正発明においては、「全光線透過率が87%以上」と下限の限定があるのに対して、
引用発明においては、全光線透過率の下限は限定されていない点。
(5) 判断
ア 相違点Aについて(ポリエステルフィルムに関する相違点)
(ア) 相違点A1について(厚み)
a(a) 「ポリエステルフィルム」の厚みについて、引用発明においては、「15μm以上100μm以下」であるところ、本件補正発明においては、「50~75μm」との限定がある。
(b) 「ポリエステルフィルム」の厚みについての本件補正発明の限定していることの技術上の意義を理解するために、本願の明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、次の記載がある。
「【0022】
ポリエステルフィルムの厚みは、10~75μmであることが好ましく、25~75μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると、粘着層の反対面にハードコート層を積層した場合のハードコート層の鉛筆硬度向上効果が見られ、厚みが75μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。」
(c) 明細書の前記【0022】の記載から「ポリエステルフィルム」の厚さの上限である「75μm以下」については、軽量化、可撓性、加工性やハンドリング性などの観点から設定されたことが理解できる。
他方、発明の詳細な説明においては、下限の50μmの技術上の意義について、明示の記載は無いものの、前記【0022】の記載から、粘着層の反対面にハードコート層を積層した場合のハードコート層の鉛筆硬度向上効果があることが推測される。
b 前記a(c)で検討した、本件補正発明におけるポリエステルフィルムの厚みに関する数値限定の技術上の意義を踏まえて、本件補正発明が相違点A1を根拠として、選択発明として進歩性が認められるべきものか否かについて以下考察する。
(a) 引用発明の「ポリエステルフィルム」は、「厚みは15μm以上100μm以下である」ところ、これは「ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点」から設定されたものである(【0012】)。この観点から、数値範囲を変更したとしても、それは許容範囲をどの程度に設定するかという問題にすぎず、相違点A1のうち上限については、実質的な相違点とはいえない。
(b) 次に、下限の技術上の意義について検討すると、基材フィルム上にハードコート層を備えてなるハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムの表面硬度を向上させるために、基材フィルムをある程度厚くしようとすることは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識A1」を参照)。
したがって、ハードコート層を積層した場合のハードコート層の鉛筆硬度向上効果の観点から、下限を50μmとより制限することに進歩性は認められない。
(c) 以上のとおりであるから、引用発明において「ポリエステル」の「厚み」を「50~75μm」の範囲に限定した点をもって選択発明としての進歩性を認めることはできず、相違点A1は設計事項としてしか評価できないものである。
したがって、引用発明において相違点A1に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 相違点A2について(極限粘度)
a 引用発明における「0.72以上0.93dl/g以下」という「ポリエステル」の極限粘度の範囲は、本件補正発明の「0.73~1.0dl/g」という数値範囲と「0.73~0.93dl/g」という相当の部分で重複するものである。
かかる状況においては、相違点A2は、そもそも実質的な相違点と評価すべきではないものである。
b しかも、引用文献1の段落【0010】に、繰り返し屈曲させた際の残存歪みを低減させるためにポリエステルフィルムの固有粘度(極限粘度)を高くすることが記載されているところ、この観点からその下限値を「0.73[dl/g]」に引き上げることが望ましいことは、自明である。
c そして、本願の明細書の発明の詳細な説明からは、ポリエステルフィルムの極限粘度を「0.73[dl/g]」以上とすることに臨界的意義は認められない。
d 以上のとおりであるから、引用発明において、「ポリエステル」の「極限粘度」を「0.73~1.0dl/g」の範囲とすることは、実質的な相違点とはいえないものであり、少なくとも、当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ) 相違点A3について(全光線透過率)
ディスプレイ用光学フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムとして透明度が高いほど望ましく、例えば全光線透過率を90%以上のものを使用することが好ましいことは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識A3」を参照)。
したがって、相違点A3は、実質的な相違点ではない。
イ 相違点Bについて
(ア) 相違点B0について(粘着層を有すること)
「基材の一方の面にハードコート層を有し、他方の面に粘着層を有する表示装置用表面保護フィルム」は、本願の出願前において周知技術である(「周知技術B0」を参照)。
したがって、引用発明は、積層ポリエステルフィルムを「粘着剤」を介してディスプレイパネルに貼り合せているが、前記技術常識B0を採用し、予め積層ポリエステルフィルムの構成として、硬化性樹脂を含有する層の反対側の面に粘着層を有するようにすることは、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。
(イ) 相違点B2について(厚み)
a(a) 引用発明においては、粘着層の厚さが「20μm」であるのに対して、本件補正発明においては、「粘着層」の「厚み」が「3~15μm」である。
(b) 「粘着層」の厚みについての本件補正発明の限定の技術上の意義を理解するために、本願の明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、次の記載がある。
「【0040】
(粘着層の膜厚)
粘着層の膜厚としては、1~25μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。1μmより厚ければ十分な粘着力を有し、屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く好ましい。25μmより薄ければ屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無いため好ましい。」
(c) 前記【0040】の記載から、下限の3μmは粘着力の観点から設定され、上限の15μmは、屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無いことの観点から設定されていることが推測される。
b 前記a(c)で検討した、本件補正発明における粘着層の厚みに関する数値限定の技術上の意義を踏まえて、本件補正発明が相違点B2を根拠として、進歩性が認められるべきものか否かについて以下考察する。
(a) ディスプレイの薄型化のためにディスプレイ用光学部材の粘着剤層をミクロンオーダーでできる限り薄くしようとすることは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識B2a」を参照)から、引用発明における粘着剤の厚さの20μmについて、その厚さを、例えば1/2~1/4程度薄くした値である10~15μmの厚さを目指すことは、当業者が強く動機付けられることである。
(b) さらに、「表示装置用表面保護フィルムにおける粘着層の厚さについて、被着対象との十分な粘着力を発現できるとともに保護フィルムの表面硬度を維持するために粘着剤層を例えば10μm程度に薄くしようとすること」は、本願の出願前において技術常識である(「技術常識B2b」を参照)から、このような観点からも、当業者は、粘着層の厚さを10μm程度とすることに強く動機づけられるといえる。
(c) ここで、「屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無い」という効果については、一見異質な効果に見えるものの、粘着層の厚さが薄ければ粘着層の変形が小さいという当然予測されることに起因する副次的な効果にすぎず、予測・発見困難な効果とはいえない。
(d) 以上のとおりであるから、粘着剤層の厚さが20μmである引用発明において、相違点B2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものと認める。
ウ 相違点Cについて
(ア) ディスプレイ用ハードコートフィルムのハードコート層は、光透過率が高いものが好ましく、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいことは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識C3」を参照)。
したがって、相違点Cは、実質的な相違点ではない。
エ 総合評価
前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において、相違点A~Cに係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点A~Cを総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
本件補正発明は、次のa~dの効果を奏するところ、当該効果は、拒絶査定で引用された各引用文献の記載からは予測することができないから、本件補正発明は進歩性を有する。
a 効果a
優れた光学特性を維持しつつ、優れた耐屈曲性を有するものである。
b 効果b
本件補正発明においては、粘着層に関して、屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く、屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることがない(【0040】)。
c 効果c
アクリル系のハードコート層の屈折率(例えば1.49程度)と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの屈折率(例えば1.57程度)とは異なるが、本件補正発明においては、繰り返し折りたたんだ後に折りたたみ部分に表示される画像に乱れを生じるおそれがないという効果も奏する。
d 効果d
粘着層がアクリル系粘着剤であることで、シリコーンが悪影響を与えやすい電子部品(例えば回路基板のリレーの接点等)を折りたたみ型ディスプレイに用いる場合等にはより好適となる。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人の主張するaの効果からdの効果は、いずれも、本件補正発明が奏するものとして、予測困難な効果であって、かつ、構成の想到容易性に照らして格別顕著な効果であるとは認められないから、前記効果の主張をもって進歩性を認めることはできない。
a 効果aについて
請求人の主張する「優れた光学特性」とは、本願明細書の段落【0069】等の記載を参酌するに、「高透過率」を意味していると解されるところ、透明度の高い部品を用いれば「高透過率」であることは、当然に予測できる効果にすぎない。
耐屈曲性の高さは、ポリエステルフィルムの極限粘度が0.73dl/g以上であることに起因するところ、引用発明においても高い屈曲性を得るために固有粘度を設定しているのであるから(【0010】等参照)、これが予測困難な効果であるとはいえない。
b 効果bについて
前記(5)イ(イ)において検討したとおり、「屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無い」という効果については、一見異質な効果に見えるものの、粘着層の厚さが薄ければ粘着層の変形が小さいという当然予測されることに起因する副次的な効果にすぎず、予測・発見困難な効果とはいえない。
また、前記(5)イ(イ)において検討したとおり、粘着層の厚さとして10μm程度することは当業者が強く動機づけられることであるから、仮に効果bが予測・発見困難なものであるとしても、進歩性を認めるべきほどの顕著な効果であるとは認められない。
c 効果cについて
請求人の主張する前記効果cは、前記効果a及び前記効果bに起因するものと認められるところ、前記a及びbと同様の理由により、かかる効果の主張をもって進歩性を認めることはできない。
d 効果dについて
請求人の主張する効果dは、本件補正発明の構成のものとして当然に予測される効果にすぎず、予測困難な効果とはいえない。
(6) 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(6)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.特開2018-010821号公報
<補助の引用文献>
引用文献2.特開2010-214675号公報
引用文献3.特開2011-140543号公報
引用文献4.特開2008-012834号公報
引用文献5.韓国公開特許第10-2017-0024662号公報
引用文献6.特開2014-238614号公報
引用文献7.特開2016-172422号公報
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項並びに引用発明及び技術常識は、前記第2の3(2)及び(3)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2に示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000406