特許拒絶査定不服審判
2022-009579
粘着シート、表示体および表示体の製造方法
- 審判番号
- 2022-009579
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-166247
- 請求日
- 2022年06月22日
- 審決日
- 2024年07月31日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】リンテック株式会社
- 【請求人代理人】早川 裕司
- 【請求人代理人】村雨 圭介
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 弘實 由美子
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P18 .121-Z (C09J) / P18 .575-Z (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-166247「粘着シート、表示体および表示体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 44024〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月30日の出願であって、令和3年2月25日付けの拒絶理由通知に対し、同年5月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月20日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月29日及び同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年3月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。謄本送達は、同年同月22日。)がなされ、これに対して同年6月22日に審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年6月22日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 手続補正の内容
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
令和4年の6月22日の手続補正(以下「本件補正」ともいう。)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。下線は、補正箇所を示す。
「【請求項1】
一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、波長340nmの光線透過率が5%以下であり、波長390nmの光線透過率が60%以上である紫外線遮蔽性部材であり、前記粘着剤層が、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nm、光路長10mmの吸光度が0.3以上である光重合開始剤を含有する、単一種の活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記粘着剤がアクリル系粘着剤であり、前記活性エネルギー線硬化性の粘着剤のゲル分率が、30%以上、70%以下であり、活性エネルギー線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%以上、95%以下であり、前記粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上であり、前記粘着剤層を活性エネルギー線の照射によって硬化させて硬化後粘着剤層とした場合におけるソーダライムガラスに対する粘着力が、25N/25mm以上であることを特徴とする粘着シート。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年11月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、波長340nmの光線透過率が5%以下であり、波長390nmの光線透過率が60%以上である紫外線遮蔽性部材であり、前記粘着剤層が、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nm、光路長10mmの吸光度が0.3以上である光重合開始剤を含有する、単一種の活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記活性エネルギー線硬化性の粘着剤のゲル分率が、30%以上、70%以下であり、前記粘着剤層を活性エネルギー線の照射によって硬化させて硬化後粘着剤層とした場合におけるソーダライムガラスに対する粘着力が、25N/25mm以上であることを特徴とする粘着シート。」
2 本件補正の目的
本件補正は補正前請求項1の「粘着剤」を「アクリル系粘着剤」と特定し、補正前請求項1の「粘着剤のゲル分率」について、「活性エネルギー線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%以上、95%以下であり」、「粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上であり」と特定する補正である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 独立特許要件についての判断
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載した本件補正後の請求項1に係る発明である。
(2) 独立特許要件(特許法第29条2第2項(進歩性))について
ア 原査定で引用された引用文献
引用文献4:中国特許出願公開第107099257号明細書
イ 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、次の記載がある。(訳文は引用文献4に係る中国出願の日本語ファミリー文献である特開2017-149807号公報を参照して当審で付したものであり、強調のために下線を付した。参考のために、日本語ファミリー文献の対応する段落を【】内に記載した。)
(ア)「
[図:0001414469000001.jpg]
[図:0001414469000002.jpg]
」
(当審訳
[0012]【0009】
一方、上記のような紫外線架橋性粘着シートにおいて、一般的な光重合開始剤を含有する紫外線硬化性粘着剤を使用した場合、保護パネルの種類によっては紫外線硬化性粘着剤が十分に硬化せず、耐久条件下で問題が生じることがあった。例えば、高温高湿条件を施したときに、段差近傍に気泡が発生したり、保護パネルであるプラスチック板からアウトガスが発生して気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生したりすることがあった。
(イ)「
[図:0001414469000003.jpg]
」
(当審訳
[0016]【0012】
上記発明(発明1)に係る粘着シートにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤は熱架橋されているため、粘着剤層の被膜強度は比較的高い。また、粘着剤層が特定の光重合開始剤(D)を含有することにより、一の表示体構成部材および/または他の表示体構成部材が紫外線吸収剤を含有する場合でも、粘着剤層は紫外線照射により十分に硬化し、段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。)
(ウ)「
[図:0001414469000004.jpg]
[図:0001414469000005.jpg]
」
(当審訳
[0037]【0026】
上記の通り、粘着シート1における粘着剤層11は、粘着性組成物Pを熱架橋してなる粘着剤からなり、当該粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有する。一方、紫外線硬化性成分(C)は、未だ硬化しておらず、粘着性組成物Pに配合されたままの状態で粘着剤中に存在する。この紫外線硬化性成分(C)は、粘着シート1の使用時(被着体を貼合したあと)に、粘着剤層11に対して紫外線が照射されたときに重合し硬化する。)
(エ)「
[図:0001414469000006.jpg]
[図:0001414469000007.jpg]
」
(当審訳
[0040]【0029】
一方、本実施形態に係る粘着シート1を使用する場合、粘着シート1の粘着剤層11によって一の表示体構成部材と他の表示体構成部材とを貼合した後に、一の表示体構成部材または他の表示体構成部材を介して粘着剤層11に対して紫外線を照射し、粘着剤層11を硬化させて硬化後粘着剤層(後述する図2中では硬化後粘着剤層11’)とする。これにより、得られた積層体(表示体)を高温高湿条件下、例えば、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。さらに、表示体構成部材と硬化後粘着剤層との界面における気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生も抑制される。すなわち、本実施形態に係る粘着シート1は、初期の段差追従性の他、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性にも優れる。
[0041]【0030】
ここで、上記一の表示体構成部材および/または他の表示体構成部材が紫外線吸収剤を含有する場合において、粘着剤に従来の光重合開始剤、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを使用した場合に、上記一の表示体構成部材または他の表示体構成部材を介して粘着剤層に対し紫外線を照射すると、上記光重合開始剤を開裂させるための波長の紫外線が表示体構成部材中の紫外線吸収剤に吸収され、光重合開始剤の開裂が阻害される。その結果、紫外線硬化性成分の硬化反応が良好に進行せず、粘着剤層の硬化が不十分となる。これにより、粘着剤層は、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に劣るものとなる。これに対し、本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11は、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が0.3以上である光重合開始剤(D)を含有する。この場合、紫外線吸収剤を含有する表示体構成部材を介して粘着剤層11に対し紫外線を照射したとしても、光重合開始剤(D)を開裂させるための波長(長波長)の紫外線が表示体構成部材中の紫外線吸収剤に吸収されず、光重合開始剤(D)が問題なく開裂する。その結果、紫外線硬化性成分(C)の硬化反応が良好に進行し、粘着剤層11が十分に硬化する。これにより、得られる積層体(表示体)は、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。すなわち、本実施形態に係る粘着シート1によれば、一の表示体構成部材および/または他の表示体構成部材が紫外線吸収剤を含有する場合でも、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れる。
[0042]【0031】
(1)(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)
[0043]
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、熱架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が熱架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、被膜強度の比較的高い粘着剤層11が得られる。
[0044]【0032】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、熱架橋剤(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響の少ない水酸基含有モノマーが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が比較的低くても、所望の凝集力が発揮される観点からは、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。)
(オ)「
[図:0001414469000008.jpg]
」
(当審訳
[0048]【0036】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、下限値として3質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、上限値として35質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには25質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、被膜強度の比較的高い粘着剤層11が得られるとともに、粘着剤中に、所定量の水酸基が残存することとなる。水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、常温常湿に戻したときの粘着剤の白化が抑制されることとなる(耐湿熱白化性に優れる)。)
(カ)「
[図:0001414469000009.jpg]
[図:0001414469000010.jpg]
」
(当審訳
[0051]【0039】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。・・・
[0052]【0040】
・・・(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有すれば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に好適な粘着性を付与させることができる。)
(キ)「
[図:0001414469000011.jpg]
」
(当審訳
[0060]【0048】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、・・・等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。)
(ク)「
[図:0001414469000012.jpg]
[図:0001414469000013.jpg]
」
(当審訳
[0073]【0059】
粘着性組成物P中における熱架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。熱架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤が十分な柔軟性を有しながら、良好な凝集力を発揮し、被膜強度の比較的高い粘着剤層11が得られる。
[0074]【0060】
(3)紫外線硬化性成分(C)
[0075]粘着性組成物Pが紫外線硬化性成分(C)を含有することにより、形成される粘着剤層11は、紫外線硬化性の粘着剤層となる。この粘着剤層11は、被着体貼付後の紫外線照射による硬化により、紫外線硬化性成分(C)が互いに重合し、その重合した紫外線硬化性成分(C)が(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造を有する粘着剤は、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。
[0076]【0061】
紫外線硬化性成分(C)は、後述する光重合開始剤(D)の存在下で紫外線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)等との相溶性に優れる分子量1,000未満の多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。)
(ケ)「
[図:0001414469000014.jpg]
[図:0001414469000015.jpg]
」
(当審訳
[0083]【0068】
粘着性組成物P中における紫外線硬化性成分(C)の含有量は、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性を優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが特に好ましい。一方、上記含有量は、架橋が密になり過ぎて粘着力が低下して耐久性が悪化するのを防止する観点から、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
[0084]【0069】
(4)光重合開始剤(D)
[0085]本実施形態における光重合開始剤(D)は、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が0.3以上であるものである。粘着剤層11を構成する粘着剤がかかる光重合開始剤(D)を含有することより、紫外線吸収剤を含有する表示体構成部材を介して粘着剤層11に紫外線を照射したときにも、粘着剤層11(紫外線硬化性成分(C))が良好に硬化し、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。
[0086]【0070】
上記の観点から、光重合開始剤(D)の波長380nmの吸光度は、0.5以上であることが好ましく、特に1.0以上であることが好ましい。当該吸光度の上限値は特に限定されないが、通常は2.5以下であることが好ましく、特に2.0以下であることが好ましい。吸光度が2.5を超えると、粘着シート形成時又は保管時に、蛍光灯等の環境光により、光重合開始剤(D)による紫外線硬化性成分(C)の硬化反応が進行し、その後の使用時の段差追従性が低下する場合がある。ここで、光重合開始剤(D)の吸光度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
[0087]【0071】
また、光重合開始剤(D)は、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長200~500nmの吸光度の吸収極大波長が350nm以上にあることが好ましく、特に370nm以上にあることが好ましく、さらには380nm以上にあることが好ましい。なお、波長200~500nmの吸光度の吸収極大波長が複数存在する場合には、少なくとも一つの吸収極大波長が上記範囲にあればよい。これにより、紫外線吸収剤を含有する表示体構成部材を介して粘着剤層11に紫外線を照射したときに、粘着剤層11(紫外線硬化性成分(C))の硬化性がより向上し、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性がより優れたものとなる。一方、上記吸収極大波長の上限値は特に制限されないが、粘着剤層11を環境光中で保管した場合に硬化反応の進行を防止する観点から、450nm以下であることが好ましく、特に410nm以下であることが好ましく、さらには405nm以下であることが好ましい。
[0088]【0072】
このような光重合開始剤(D)としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。)
(コ)「
[図:0001414469000016.jpg]
」
(当審訳
[0105]【0086】
(8)粘着剤層の形成
[0106]粘着剤層11は、粘着性組成物Pを熱架橋してなるものである。すなわち、粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行う。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。
[0107]【0087】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
[0108]【0088】
上記の加熱処理(及び養生)により、熱架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が良好に架橋される。
[0109]【0089】
粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が20μm以上であると、所望の粘着力を発揮し易い。また、粘着剤層11の厚さの下限値が30μm以上であると、表示体構成部材の通常の段差に対して十分な段差追従性を確保することができる。)
(サ)「
[図:0001414469000017.jpg]
」
(当審訳
[0111]【0091】
[0112](9)ゲル分率(紫外線照射前)
粘着剤層11を構成する粘着剤(紫外線照射前)のゲル分率は、下限値として30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。紫外線照射前の粘着剤のゲル分率の下限値が上記以上であると、粘着剤層11の凝集力が向上し、被膜強度がより高いものとなる。また、紫外線照射前の粘着剤のゲル分率は、上限値として70%以下であることが好ましく、特に65%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。紫外線照射前の粘着剤のゲル分率の上限値が上記以下であると、粘着剤が硬くなり過ぎず、初期の段差追従性がより優れたものとなる。この粘着剤(紫外線照射前)のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。)
(シ)「
[図:0001414469000018.jpg]
」
(当審訳
[0126]【0102】
上記硬化後粘着剤層11’は、第2に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と熱架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有するとともに、紫外線硬化性成分(C)の硬化物を含有する粘着剤からなり、当該粘着剤(紫外線照射後)のゲル分率が40%以上、95%以下であることが好ましい。硬化後粘着剤層11’を構成する粘着剤のゲル分率は、紫外線硬化性成分(C)が紫外線硬化することによって、紫外線硬化前の粘着剤層11を構成する粘着剤のゲル分率よりも高くなる。)
(ス)「
[図:0001414469000019.jpg]
」
(当審訳
[0128]【0104】
一方、粘着剤層11に対して紫外線吸収剤を含有しない表示体構成部材越しに紫外線照射した場合、硬化後粘着剤層11’を構成する粘着剤のゲル分率は、上限値として90%以下であることが好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。また、粘着剤層11に対して紫外線吸収剤を含有する表示体構成部材越しに紫外線照射した場合、硬化後粘着剤層11’を構成する粘着剤のゲル分率は、上限値として90%以下であることが好ましく、特に80%以下であることが好ましく、さらには75%以下であることが好ましい。紫外線照射後の粘着剤のゲル分率の上限値が上記以下であると、硬化後粘着剤層11’の粘着力が低下して耐久性が悪化するのを防止することができる。この粘着剤(紫外線照射後)のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。)
(セ)「
[図:0001414469000020.jpg]
」
(当審訳
[0134]【0108】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における硬化後粘着剤層11’側に、額縁状に形成されることが一般的である。
[0135]【0109】
第1の表示体構成部材21、特に保護パネルとしての第1の表示体構成部材21は、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。この場合、表示体2は耐光性に優れたものとなり、製造後の表示体2に対して第1の表示体構成部材21側から紫外線が浴びせられたとしても、硬化後粘着剤層11’およびその下層の第2の表示体構成部材22の劣化が抑制される。特に硬化後粘着剤層11’においては、優れた段差追従性および耐ブリスター性が良好に維持されることとなる。)
(ソ)「
[図:0001414469000021.jpg]
」
(当審訳
[0142]【0116】
表示体2の最も好ましい態様は、第1の表示体構成部材21が紫外線吸収剤を含有するプラスチック板を含む保護パネルであり、第2の表示体構成部材22が紫外線を透過しない表示体モジュールであるタッチパネルである。なお、パターニングされた透明導電膜や金属層は、いずれの部位に存在していてもよい。かかる表示体2は、耐光性、段差追従性および耐ブリスター性の全てに優れるものである。)
(タ)「
[図:0001414469000022.jpg]
」
(当審訳
[0145]【0119】
その後、上記積層体中の粘着剤層11に対して紫外線を照射する。これにより、粘着剤層11中の紫外線硬化性成分(C)が重合し、粘着剤層11が硬化して硬化後粘着剤層11’となる。粘着剤層11に対する紫外線の照射は、通常、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22のいずれか一方越しに行い、好ましくは、保護パネルとしての第1の表示体構成部材21越しに行う。ここで、紫外線照射側の表示体構成部材(好ましくは、保護パネルとしての第1の表示体構成部材21)が紫外線吸収剤を含有する場合であっても、粘着剤層11を構成する粘着剤が含有する光重合開始剤(D)は、波長380nmの吸光度が0.3以上であるものであることから、光重合開始剤(D)を開裂させるための波長の紫外線が表示体構成部材中の紫外線吸収剤に吸収されず、光重合開始剤(D)が問題なく開裂する。その結果、紫外線硬化性成分(C)の硬化反応が良好に進行し、粘着剤層11が十分に硬化する。これにより、得られる表示体2は、高温高湿条件下での段差追従性および耐ブリスター性に優れたものとなる。)
(チ)「
[図:0001414469000023.jpg]
」
(当審訳
[0156]【0127】
2.粘着性組成物の調製
[0157]上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、熱架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.2質量部と、紫外線硬化性成分(C)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート5.0質量部と、光重合開始剤(D)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部と、シランカップリング剤(E)としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM-403」)0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度50質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。)
(ツ)「
[図:0001414469000024.jpg]
」
(当審訳
[0161]~[0176]【0130】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n-ブチル
AA:アクリル酸
[熱架橋剤(B)]
TDI系:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
エポキシ系:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
[光重合開始剤(D)]
D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
D2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
D3:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとを1:1の質量比で混合したもの
D4:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
(テ)「
[図:0001414469000025.jpg]
[図:0001414469000026.jpg]
」
(当審訳
[0189]【0133】
〔試験例1〕(吸光度の測定)
実施例および比較例で使用した光重合開始剤の濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液を調製し、その溶液における波長200~500nmの範囲の吸光度を、(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)を使用して測定した。その結果に基づき、波長380nmの吸光度、および波長200~500nmの吸光度における吸収極大波長(nm)を導出した。結果を表1に示す。
[0190]【0134】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
[0191]実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
[0192]【0135】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(紫外線照射前)を導出した。結果を表2に示す。
[0193]【0136】
一方、実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層に対して、下記の条件で紫外線を直接照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(紫外線照射後;直接照射)を導出した。結果を表2に示す。
[0194]【0137】
また、実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面に貼合した。次いで、上記粘着剤層に対して上記樹脂板越しに、下記の条件で紫外線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(紫外線照射後;樹脂板越し照射)を導出した。また、直接照射に係る紫外線照射後のゲル分率から樹脂板越し照射に係る紫外線照射後のゲル分率を差し引いた値を算出した。結果を表2に示す。
[0195]~[0198]【0138】
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量2000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
[0199]【0139】
〔試験例3〕(耐ブリスター性の評価)
[0200]実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んだ。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
[0201]~[0203]【0140】
得られた積層体の粘着剤層に対して、上記樹脂板越しに試験例2と同様の条件で紫外線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、硬化後粘着剤層と被着体との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
○…気泡および浮き・剥がれの発生なし
×…気泡、気泡跡または浮き・剥がれが発生)
(ト)「
[図:0001414469000027.jpg]
」
(当審訳
【0147】
【表1】
[図:0001414469000028.jpg]
【0148】
【表2】
[図:0001414469000029.jpg]
)
ウ 引用文献に記載された発明
(ア) 引用文献4の実施例1~5において、[0199]、[0200](【0139】)によると、粘着剤層は片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用されることが記載されている。
(イ) 引用文献4の[表1]、[表2]に記載された実施例1~5、[0161]~[0176](【0130】)を参酌すると、光重合開始剤(D)として「D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド」(実施例1,4)、「D2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド」(実施例2,5)、「D3:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとを1:1の質量比で混合したもの」(実施例3)を使用し、それぞれの380nm吸光度が1.5(実施例1,4)、1.8(実施例2,5)、1.4(実施例3)であることが記載され、[0189](【0133】)には、「光重合開始剤の濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液を調整し、その溶液における波長200~500nmの範囲の吸光度を、(島津製作所社製、製品名「UV-3600」)を使用して測定」することが記載されている。
(ウ) 引用文献4の実施例1~3,[0161]~[0176](【0130】)を参酌すると、実施例1~3の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル/IBXA:アクリル酸イソボルニル/ACMO:N-アクリロイルモルホリン/HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチルを60/10/10/20(質量部)の割合で配合したものである。また、熱架橋剤(B)はTDI系:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.2質量部配合し、紫外線硬化性成分(C)はε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートは5.0質量部配合したものである。
(エ) 引用文献4の実施例4,5,[0161]~[0176](【0130】)を参酌すると、実施例4,5の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はBA:アクリル酸n-ブチル/AA:アクリル酸を90/10(質量部)の割合で配合したものである。また、熱架橋剤(B)はエポキシ系:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.05質量部配合し、紫外線硬化性成分(C)はε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを10.0質量部配合したものである。
(オ) また、引用文献4の実施例1~5を参照すると、○1(当審注:○の中に1、他の数字も同様に表す)紫外線照射前のゲル分率が55(実施例1)、52(実施例2)、53(実施例3)、52(実施例4)、51(実施例5)、○2紫外線照射後(直接照射)のゲル分率が72(実施例1)、68(実施例2)、69(実施例3)、75(実施例4)、73(実施例5)であることが記載されているから、粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量(○2紫外線照射後(直接照射)-○1紫外線照射前)は、72-55=17(実施例1)、68-52=16(実施例2)、69-53=16(実施例3)、75-52=23(実施例4)、73-51=22(実施例5)である。
(カ) そこで、引用文献4の実施例1に着目すると、引用文献4には次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
<引用発明1>
「粘着剤層を備えた粘着シートであって、粘着剤層は、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用され、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸イソボルニル/N-アクリロイルモルホリン/アクリル酸2-ヒドロキシエチルを60/10/10/20(質量部)、熱架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.2質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを5.0質量部、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.5である光重合開始剤D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを0.5質量部含有する粘着剤からなり、前記粘着剤のゲル分率が、55%であり、紫外線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、72%であり、前記粘着剤の紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、17ポイントであることを特徴とする粘着シート。」
(キ) また、引用文献4の実施例2に着目すると、引用文献4には次の発明(以下「引用発明2」という)が記載されているものと認められる。
<引用発明2>
「粘着剤層を備えた粘着シートであって、粘着剤層は、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用され、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸イソボルニル/N-アクリロイルモルホリン/アクリル酸2-ヒドロキシエチルを60/10/10/20(質量部)、熱架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.2質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを5.0質量部、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.8である光重合開始剤D2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを0.5質量部含有する粘着剤からなり、前記粘着剤のゲル分率が、52%であり、紫外線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%であり、前記粘着剤の紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、16ポイントであることを特徴とする粘着シート。」
(ク) また、引用文献4の実施例3に着目すると、引用文献4には次の発明(以下「引用発明3」という)が記載されているものと認められる。
<引用発明3>
「粘着剤層を備えた粘着シートであって、粘着剤層は、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用され、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸イソボルニル/N-アクリロイルモルホリン/アクリル酸2-ヒドロキシエチルを60/10/10/20(質量部)、熱架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.2質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを5.0質量部、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.4である光重合開始剤D3(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとを1:1の質量比で混合したもの)を0.5質量部含有する粘着剤からなり、前記粘着剤のゲル分率が、53%であり、紫外線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、69%であり、前記粘着剤の紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、16ポイントであることを特徴とする粘着シート。」
(ケ) また、引用文献4の実施例4に着目すると、引用文献4には次の発明(以下「引用発明4」という)が記載されているものと認められる。
<引用発明4>
「粘着剤層を備えた粘着シートであって、粘着剤層は、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用され、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸n-ブチル/アクリル酸を90/10(質量部)、熱架橋剤(B)として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.05質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを10.0質量部、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.5である光重合開始剤D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを1.0質量部含有する粘着剤からなり、前記粘着剤のゲル分率が、52%であり、紫外線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、75%であり、前記粘着剤の紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、23ポイントであることを特徴とする粘着シート。」
(コ) また、引用文献4の実施例5に着目すると、引用文献4には次の発明(以下「引用発明5」という)が記載されているものと認められる。
<引用発明5>
「粘着剤層を備えた粘着シートであって、粘着剤層は、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート層側の面とで挟んで使用され、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸n-ブチル/アクリル酸を90/10(質量部)、熱架橋剤(B)として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.05質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを10.0質量部、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長380nmの吸光度が1.5である光重合開始剤D2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを1.0質量部含有する粘着剤からなり、前記粘着剤のゲル分率が、51%であり、紫外線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、73%であり、前記粘着剤の紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、22ポイントであることを特徴とする粘着シート。」
エ 本件補正発明と引用発明1~5との対比・判断
(ア) 対比
a 本件補正発明と引用発明1~5(以下、まとめて「引用発明」ともいう)を対比すると引用発明の「片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)」及び「ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)」は、本件補正発明の「一の表示体構成部材」または「他の表示体構成部材」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「ポリメタクリル酸メチル層およびポリカーボネート層を有する樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR-58U」,厚さ:0.8mm,紫外線吸収剤含有)」は本件補正発明の「紫外線遮蔽性部材」に相当する。
b また、引用発明1~3は、粘着剤が「(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸イソボルニル/N-アクリロイルモルホリン/アクリル酸2-ヒドロキシエチルを60/10/10/20(質量部)、熱架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.2質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを5.0質量部」含み、さらに、光重合開始剤を含んでいるから、引用発明1~3の「粘着剤層」は、本件補正発明の「粘着剤層が、光重合開始剤を含有する、単一種の活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記粘着剤がアクリル系粘着剤であり」に相当する。
c 同様に、引用発明4,5は粘着剤が「(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてアクリル酸n-ブチル/アクリル酸を90/10(質量部)、熱架橋剤(B)として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.05質量部、紫外線硬化性成分(C)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを10.0質量部」含み、さらに、光重合開始剤を含んでいるから、引用発明4,5の「粘着剤層」は、本件補正発明の「粘着剤層が、光重合開始剤を含有する、単一種の活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記粘着剤がアクリル系粘着剤であり」に相当する。
d また、引用発明の粘着剤のゲル分率、紫外線照射後のゲル分率、紫外線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量は、いずれも本件補正発明の範囲を充足する。
e そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
「一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、紫外線遮蔽性部材であり、前記粘着剤層が、光重合開始剤を含有する、単一種の活性エネルギー線硬化性の粘着剤からなり、前記粘着剤がアクリル系粘着剤であり、前記活性エネルギー線硬化性の粘着剤のゲル分率が、30%以上、70%以下であり、活性エネルギー線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%以上、95%以下であり、前記粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上である粘着シート。」
<相違点1>
本件補正発明は紫外線遮蔽性部材が「波長340nmの光線透過率が5%以下であり、波長390nmの光線透過率が60%以上である」のに対し、引用発明はその点が不明である点。
<相違点2>
本件補正発明は、光重合開始剤が「濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nm、光路長10mmの吸光度が0.3以上である」のに対して、引用発明はその点が不明である点。
<相違点3>
本件補正発明は、「粘着剤層を活性エネルギー線の照射によって硬化させて硬化後粘着剤層とした場合におけるソーダライムガラスに対する粘着力が、25N/25mm以上」であるのに対し、引用発明はその点が不明である点。
(イ) 判断
a 以下、相違点1について検討する。
(a) 引用発明の「ポリメタクリル酸メチル層とポリカーボネート層を有し紫外線吸収剤を含有する厚さ0.8mmの樹脂板」は本件補正発明の「紫外線遮蔽性部材」に相当するところ、引用発明を認定した引用文献4の実施例1~5を参照すると、紫外線照射後の粘着剤層のゲル分率は樹脂板越しであるか、直接照射であるかによって異なっている。そして、紫外線照射前の粘着剤層のゲル分率との差分は、実施例1において直接照射では+17%(55%から72%)、樹脂板越し照射では+11%(55%から66%)となっており、樹脂板越し照射におけるゲル分率の差分は直接照射の約65%(=100×11/17)と計算される。
同様に、実施例2~5についても計算すると、それぞれ75%(=100×12/16)、75%(=100×12/16)、87%(=100×20/23)、77%(=100×17/22)である。
直接照射は、波長390nmの光線透過率100%の物体を介して照射した場合に相当することから、引用文献4の実施例1~5における樹脂板の波長390nmの光線透過率はそれぞれ65%、75%、75%、87%、77%程度であると解される。
そうすると、引用発明の紫外線遮蔽性部材は波長390nmの光線透過率が60%以上である蓋然性が高い。
(b) また、引用発明を認定した引用文献4には、「ポリメタクリル酸メチル層とポリカーボネート層を有し紫外線吸収剤を含有する厚さ0.8mmの樹脂板」の波長340nmの光線透過率については明記されていないものの、引用文献4の[0135]【0109】によれば紫外線吸収剤を含有していることで「表示体2は耐光性に優れたものとなり、」と記載されている。そうすると、引用発明の樹脂板についても優れた耐光性を得るべく340nmの光線透過率を5%未満とすることは当業者が容易になし得たことである。
(c) したがって、上記相違点1は、引用発明1~5および引用文献4の記載に基いて当業者が容易になし得たことである。
b 以下、相違点2について検討する。
(a) 引用発明1,4の光重合開始剤D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドは、本願明細書の[0146]、[表1]実施例2~9,11~18にて使用されたものと同じ化合物である。
引用発明2,5の光重合開始剤D2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドは、本願明細書の本願明細書の[0146]、[表1]実施例1,10にて使用されたものと同じ化合物である。
(b) また、引用発明を認定した引用文献4において吸光度の測定は製品名「UV-3600」を使用し、これは本願明細書の[0167]に記載されたものと同じである。
(c) そうすると、引用発明1,2,4,5の光重合開始剤は本願明細書の実施例に記載された光重合開始剤と同じ化合物であり、吸光度の測定を同じ機械により行っているから、引用発明1,2の「光重合開始剤」は本件補正発明の「濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nm、光路長10mmの吸光度が0.3以上である」ことを充足すると解される。
(d) また、引用発明3の光重合開始剤D3(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとを1:1の質量比で混合したもの)は、吸収極大波長を380nmに有し、380nm吸光度が実施例1,2と同程度であるから、引用発明3の光重合開始剤についても「濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nm、光路長10mmの吸光度が0.3以上である」を充足する蓋然性が高い。
(e) したがって、上記相違点2は、本件補正発明と引用発明1~5との間における実質的な相違点であるとはいえない。
c 以下、相違点3について検討する。
(a) 引用発明の粘着剤を硬化させて硬化後粘着剤層とした場合におけるソーダライムガラスに対する粘着力について、引用文献4には明記されていないが、引用文献4には、粘着力向上が望ましい旨、耐久性悪化防止の点から光硬化後の粘着剤層の粘着力低下を防止する旨が記載されていること([0051]【0039】、[0052]【0040】、[0060]【0048】、[0083]【0068】、[0109]【0089】、[0128]【0104】)からみて、十分な粘着力となるように下限値を設定することは、当業者が適宜なし得る範囲の事項である。
(b) したがって、上記相違点3は、引用発明1~5および引用文献4の記載に基いて当業者が容易になし得たことである。
(ウ) 以上のとおり、相違点1~3は、実質的なものでないか、もしくは、当業者が容易になし得たことであるから、本件補正発明は、引用発明1~5および引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 進歩性についての審判請求人の主張
審判請求人は令和4年8月3日付け手続補正書において令和4年6月22日付け審判請求書の請求の理由を補正し、当該補正において以下の旨を主張している。
a 「補正後の本願発明に係る表示体においては、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上となっています。このようにゲル分率が上昇することにより、硬化前の粘着剤層は硬くなり過ぎず、被着体に対して優れた密着性を発揮し、かつ、硬化後粘着剤層は、耐ブリスター性により優れたものとなります(同段落[0107],[0109])。」
b 「本願の実施例10~18は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が68%以上であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が13ポイント以上であり、その結果、耐ブリスター性評価は〇~◎となっています(本願日本語明細書:表2)。
一方、本願の実施例7は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が68%未満であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が13ポイント未満であり、その結果、耐ブリスター性評価は△となっており(本願日本語明細書:表2)、上記の実施例(〇~◎)よりも劣るものとなっています。」
c 「引用文献4の実施例1は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が66%であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が11ポイント(66%-55%)です(引用文献4:表2)。
引用文献4の実施例2は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が64%であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が12ポイント(64%-52%)です(引用文献4:表2)。
引用文献4の実施例3は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が65%であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が12ポイント(65%-53%)です(引用文献4:表2)。
上記の通り、引用文献4の全ての実施例は、硬化後粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が68%未満であり、かつ、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が13ポイント未満です。この物性は、本願の実施例7に相当するものであり、したがって、本願明細書と同じ耐ブリスター性試験を行った場合、耐ブリスター性評価は△になるものと推測されます。
すなわち、引用文献4の全ての実施例は、本願発明に係る実施例(実施例10~18)よりも耐ブリスター性が劣ると考えられます。」
d 上記a~cについての検討
(a) 審判請求人は引用文献4の実施例1~3の活性エネルギー線照射による硬化を伴うゲル分率の変化について、樹脂板越し照射後と照射前の差分(引用文献4の○3-○1相当)を算出して変化量が13ポイント未満である旨主張しているところ、本件補正発明では「活性エネルギー線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%以上、95%以下であり、前記粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上であり、」と特定されている。
(b) ここで、本件明細書には、次の記載がある。
「【0108】(1-2)活性エネルギー線照射後のゲル分率
・・・硬化後粘着剤層を構成する粘着剤(活性エネルギー線照射後)のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。」
「【0168】〔試験例3〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その活性エネルギー線硬化性の粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0169】 次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤(活性エネルギー線硬化性粘着剤)のゲル分率(活性エネルギー線照射前)を導出した。結果を表2に示す。
【0170】
一方、実施例および比較例で得られたカバー材付き粘着シートに対して、カバー材越しに、下記の条件で活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤(硬化後粘着剤)について、上記と同様にしてゲル分率(活性エネルギー線照射後)を導出した。また、活性エネルギー線照射後のゲル分率から活性エネルギー線照射前のゲル分率を差し引いた値(変化量;ポイント)を算出した。結果を表2に示す。
【0171】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用」
(c) ところで、本願発明1における「活性エネルギー線照射」及び「ゲル分率」について、技術用語の意味は明確であり、前記(b)には定義とは記載されていないことからみて、前記(b)に記載されたそれらの条件は、測定条件等の一例に過ぎないと解される。粘着シートの発明として、「前記粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上」という構成となるための測定条件等は重要でないからである。
(d) そうすると、引用文献4の実施例1~3の直接照射時のゲル分率の変化量(引用文献4の表2○2-○1)はそれぞれ17(実施例1),16(実施例2),16(実施例3)であるから、本件補正発明において特定されるゲル分率の変化量を充足している。
(e) 仮に、前記(b)における条件が測定の際に参考となれるべきと仮定しても、前記イ(ト)に摘記した引用文献4の【表2】に記載のように、引用文献4の実施例4、5においては、樹脂板越し照射によっても、それぞれ20、17ポイントのゲル分率上昇が起きているから、新たな相違点は生じない。
(f) したがって、上記出願人の主張は採用できない。
カ まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1~5および引用文献4に記載された事項に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年6月22日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和3年11月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1の(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。
記
引用文献4:中国特許出願公開第107099257号明細書
3 当審の判断
当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、前記引用文献4に記載された発明及び本願出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
理由は以下のとおりである。
(1) 特許法29条第2項について
ア 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4の記載事項は、前記第2の3(2)イに記載したとおりである。
イ 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「粘着剤」について、「アクリル系粘着剤」と特定しないものであり、「活性エネルギー線硬化させた前記粘着剤のゲル分率が、68%以上、95%以下であり、前記粘着剤の活性エネルギー線照射による硬化に伴うゲル分率の変化量が、13ポイント以上であり、」と特定しないものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合、前記第2の3(2)エ(ア)の相違点1~3の点で相違するが、記第2の3(2)エ(イ)に記載した理由と同じ理由により、本願発明も、引用発明1~5および引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-009579