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特許無効審判

2023-800038

逆流防止弁

審判番号
2023-800038
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2020-203118
登録番号
7025518
請求日
2023年06月20日
審決日
2024年03月28日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】前澤化成工業 株式会社
  • 【請求人代理人】重信 和男
  • 【請求人代理人】石川 好文
  • 【請求人代理人】秋庭 英樹
  • 【請求人代理人】大久保 岳彦
  • 【被請求人】アロン化成 株式会社
  • 【被請求人代理人】赤岡 和夫
  • 【被請求人代理人】吉岡 亜紀子
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 佐藤 史彬
  • 審判官 住田 秀弘
分類
P1123.113-Y (E03F) / P1123.121-Y (E03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第44条、特許法第29条第1項第3号、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第7025518号発明「逆流防止弁」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第7025518号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない 審判費用は請求人の負担とする との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 出願分割の経緯の概略 本件無効審判の請求に係る特許第7025518号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年12月8日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって、平成29年5月31日に出願した特願2017-107595号の一部を新たな特許出願としたものである。 2 本件特許の手続の経緯の概略 (1)本件特許の出願から設定登録までの経緯 令和 2年12月 8日 :出願 令和 4年 1月 6日付け:拒絶理由通知 令和 4年 1月25日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 2月 2日付け:特許査定 令和 4年 2月15日 :設定登録 (2)本件無効審判の手続の経緯 令和 5年 6月20日 :審判請求書の提出 令和 5年 9月 4日 :審判事件答弁書の提出 令和 5年11月20日付け:審理事項通知 令和 5年12月12日 :請求人による口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書」という。)の提出 令和 6年 1月 9日 :被請求人による口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書」という。)の提出 令和 6年 1月30日 :口頭審理、請求人による上申書(以下「請求人上申書1」という。)の提出 令和 6年 2月20日 :請求人による上申書(以下「請求人上申書2」という。)の提出 令和 6年 2月21日 :被請求人による上申書(以下「被請求人上申書」という。)の提出 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」~「本件特許発明3」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 流入口と、流出口と、前記流入口と前記流出口とを接続するインバート部と、そして前記インバート部の上方で開口した点検口とを備えた排水ますに取り付けられる逆流防止弁であって、 排水ますの内壁面または流入口に取り付けられる弁管と、 前記弁管の下流側の上部端部において揺動自在に軸支される弁体とを有しており、そして 前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されていることを特徴とする排水ます用逆流防止弁。 【請求項2】 前記開口端は、前記弁管を排水ますへ取り付けた時、排水ますの前記流入口へ接続される前記インバート部から離間した上方の位置で開口することを特徴とする請求項1に記載の排水ます用逆流防止弁。 【請求項3】 前記弁体は、前記弁体の下流側の表面が下流側から上流側へ向けて凹むように湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水ます用逆流防止弁。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 (1)無効理由1 ア 本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 イ 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術1(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び周知技術1(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2 ア 本件特許発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 イ 本件特許発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術2(甲第4号証~甲第7号証)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 ウ 本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明、周知技術2(甲第4号証~甲第7号証)、及び周知技術1(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開平11-241394号公報 甲第2号証:特開平10-18405号公報 甲第3号証:実公昭48-38968号公報 甲第4号証:特開2009-46828号公報 甲第5号証:特開2010-126888号公報 甲第6号証:特開2005-146524号公報 甲第7号証:特開平11-241393号公報 甲第8号証:「東京都排水設備要綱」東京都下水道局(平成25年3月) 甲第9号証:下水道法(抜粋)(e-Gov法令検索:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC0000000079_20220820_504AC0000000044) 甲第10号証:下水道法施行令(抜粋)(e-Gov法令検索:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334CO0000000147) 甲第11号証:陳述書(前澤化成工業株式会社 山崎哲司 令和5年12月8日) 以下、甲第1号証等を、「甲1」等と略記する。 なお、請求人は、請求人上申書1とともに甲第12号証~甲第13号証を提出したが、いずれも、口頭審理において当事者が合意したように、参考資料1及び2として扱うこととした。 第5 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として乙第1号証~乙第7号証を提出している。 2 証拠方法 乙第1号証:「広辞苑 第七版」、479頁、646頁、2338頁 乙第2号証:「下水道排水設備指針と解説-2016年版-」、301頁、306頁 乙第3号証:「下水道用硬質塩化ビニル製ます JSWAS K-7-2008」、日本下水道協会、1頁、5頁、8~15頁、23~28頁 乙第4号証:特開2003-41648号公報 乙第5号証:「東京都排水設備要綱(令和4年3月改訂)」、東京都下水道局Webページ(https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/contractor/d3/kankou/haisuiyoukoukaisei/)、1~10頁(https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/contractor/pdf/3_1_R3youkou.pdf) 乙第6号証:「下水道排水設備指針と解説-2016年版-」、6頁 乙第7号証:「Googleを用いて「排水設備は、当該区域の公共下水道の排除方式に合わせなければならない」とのキーワード検索したときの検索結果」 第6 当審の判断 1 甲号証の記載 (1)甲1に記載された事項及び甲1発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様である。)。 (ア)「【0004】従って、本発明の課題は、排水桝において排水の逆流を防止することのできる手段を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、排水桝本体(11)下部に上流管接続部(2)と下流管接続部(12)とを設けた構成であって、該上流管接続部(2)は管本体(23)と該管本体(23)端部に形成されている受口部(21)とからなり、該管本体(23)が該受口部(21)よりも下方に大径とされることによって該管本体(23)と該受口部(21)との境界には段部(22)が形成され、該上流管接続部(2)の内側上部からは弁体(3)が揺動可能に吊り下げられており、該弁体(3)は、該排水桝(1)内の水位が上昇すると浮力によって揺動して該段部(22)に当接し、もって該上流管接続部(2)の管路を閉塞することを特徴とする排水桝(1)における逆流防止弁を提供するものであり、また、管本体(23)と該管本体(23)端部に形成されている受口部(21)とからなり、該管本体(23)が該受口部(21)よりも下方に大径とされることによって該管本体(23)と該受口部(21)との境界に段部(22)が形成されている排水桝用上流管接続部材(2)と、該接続部材(2)の内側上部から揺動可能に吊り下げられた弁体(3)とから構成され、該弁体(3)は、該排水桝(1)内の水位が上昇すると浮力によって揺動して該段部(22)に当接し、もって該接続部材(3)の管路を閉塞することを特徴とする排水桝用逆流防止弁付上流管接続部材を提供するものであり、更に、排水桝本体(11)下部に、上記逆流防止弁付上流管接続部材と、下流管接続部(12)とを設けたことを特徴とする排水桝(1)を提供するものである。」 (イ)「【0007】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。本発明の一実施形態による排水桝を図1に示す。図1に示す排水桝1は、桝本体11と、該桝本体11の下流側下部に突設され下流管4bが接続される下流管接続部12と、該桝本体11の上流側下部に貫通配設され上流管4aが接続される上流管接続部2とを具備する。該桝本体11の上端は点検筒接続部13となっており、該桝本体11の内側底面14は下流側が低くなるように若干傾斜している。 【0008】本実施形態では、該下流管接続部12は挿口となっており、該下流管接続部12の内側底面121 が桝本体11の内側底面14と略同じ高さになるように、該桝本体11の下流側周壁下部に突設されている。該上流管接続部2は、管本体23と該管本体23の端部に形成されている受口部21とからなり、該管本体23は、該受口部21よりも下方に大径とされており、それによって該管本体23と該受口部21との境界には段部22が形成されている(図2参照)。この上流管接続部2は、該管本体23の外側底面231 が上記桝本体11の内側底面14に接触するように、該桝本体11の上流側下部に貫通配設されている。 【0009】該上流管接続部2の内側上部からは、弁体3が吊り下げられている。該弁体3は、図2に示すように、上流管接続部2の管路を閉塞する縦長楕円形状の本体部31と、該本体部31上縁に連続し該上流管接続部2の内側上部に取り付けられる取付部32とからなる。該本体部31と該取付部32との境界部分には切込みが入れられ、該本体部31が揺動可能なようにヒンジ部33を構成している。 【0010】上記弁体3は、非透水性及び可撓性を有する必要があるが、それ以外にも、少なくとも本体部31が水に浮くように、比重が1未満である必要がある。このような弁体3の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいは独立気泡を有する発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、ウレタン発泡体、ゴムの発泡体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等のエラストマーの発泡体等が挙げられる。 【0011】上記弁体3は、本体部31を上流管接続部内方側にして取付部32を介して該上流管接続部2に取り付けられ、常態において、該本体部31は該取付部32と略直角をなすか、又は該本体部31の下縁が若干上流側に寄るように傾いており、該本体部31の下縁と該上流管接続部2との間には間隙がある。該本体部31が該上流管接続部2の受口部21側に揺動すると、該本体部31の下縁が該上流管接続部2の段部22上縁に当接すると同時に、該本体部31が該上流管接続部2の管路を閉塞する。 【0012】上記排水桝1においては、通常の状況の下では、上流管4aから流れてきた排水は、弁体3の本体部31下縁と上流管接続部2の段部22との間を通って、または排水の量が多く勢いがある場合には、該弁体3本体部31を排水桝1の内方に揺動させながら該排水桝1の中に流れ込む(図3)。該排水桝1の中に流れ込んだ排水は、該排水桝1桝本体11の傾斜した内側底面14に沿って流下し、下流管接続部12を介して下流管4bに排出される。 【0013】一方、例えば洪水等によって排水が下流管4bから排水桝1内に逆流して、該排水桝1内の水位が弁体3の本体部31下端よりも高くなると、図4に示すように該本体部31が浮力によってヒンジ部33を軸として揺動し、該本体部31の下縁が上流管接続部2の段部22上縁に当接すると同時に、該本体部31が該上流管接続部2の管路を閉塞する。そのため、排水桝1内の排水が上流管4aに逆流することが防止される。なお、排水桝1内の排水の水位が下降すれば、それに伴って弁体3の本体部31が常態に戻り、上流管接続部2の管路が開放される。」 (ウ)図1 「 [図:0001411205000001.jpg] 」 (エ)図2 「 [図:0001411205000002.jpg] 」 (オ)図3 「 [図:0001411205000003.jpg] 」 (カ)図4 「 [図:0001411205000004.jpg] 」 イ 図面から看取できる事項 (ア)上記ア(イ)の段落【0008】の「上流管接続部2は、・・・該桝本体11の上流側下部に貫通配設されている」との記載を踏まえると、上記ア(ウ)、(オ)、及び(カ)の図1、図3、及び図4から、桝本体11の上流側下部には、上流管接続部2が貫通配設される貫通口が設けられることが看取できる。 (イ)上記ア(イ)の段落【0012】の「該排水桝1の中に流れ込んだ排水は、・・・下流管接続部12を介して下流管4bに排出される。」との記載を踏まえると、上記(ウ)の図1から、下流管接続部12の内側の領域は排出口となることが看取できる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり、桝本体11に貫通口が設けられ、下流管接続部12の内側の領域が排出口となるところ、上記ア(ウ)、(オ)、及び(カ)の図1、図3、及び図4から、貫通口は内側底面14に接続するとともに、排出口も内側底面14に接続するから、桝本体11の内側底面14が、貫通口と排出口を接続することが看取できる。 (エ)上記ア(オ)、及び(カ)の図3及び4から、上流管接続部2は、管本体23の内部に空間を有し、当該空間の下流側の端部に位置する上流管接続部2の下流側の縁の部分は、鉛直面上に位置するように形成されていることが看取できる。 (オ)上記ア(オ)、及び(カ)の図3及び4から、弁体3の本体部31の直径は、上流管接続部2の下流側の縁の部分の上端部から、上流管接続部2の段部22上縁までの距離よりも小さいことが看取できる。 ウ 甲1発明 前記ア及びイから、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「排水桝1における逆流防止弁であって、(【0005】) 排水桝1は、桝本体11と、該桝本体11の下流側下部に突設され下流管4bが接続される下流管接続部12と、該桝本体11の上流側下部に貫通配設され上流管4aが接続される上流管接続部2とを具備し、該桝本体11の上端は点検筒接続部13となっており、該桝本体11の内側底面14は下流側が低くなるように若干傾斜しており、(【0007】) 下流管接続部12の内側底面121 が桝本体11の内側底面14と略同じ高さになるように、該桝本体11の下流側周壁下部に突設され、(【0008】) 上流管接続部2は、管本体23と該管本体23の端部に形成されている受口部21とからなり、該管本体23は、該受口部21よりも下方に大径とされており、それによって該管本体23と該受口部21との境界には段部22が形成され、この上流管接続部2は、該桝本体11の上流側下部に貫通配設されており、(【0008】) 桝本体11の上流側下部には、上流管接続部2が貫通配設される貫通口が設けられ、(上記イ(ア)) 下流管接続部12の内側の領域は排出口となり、(上記イ(イ)) 桝本体11の内側底面14が、貫通口と排出口を接続し、(上記イ(ウ)) 上流管接続部2の内側上部からは、弁体3が吊り下げられており、該弁体3は、上流管接続部2の管路を閉塞する縦長楕円形状の本体部31と、該本体部31上縁に連続し該上流管接続部2の内側上部に取り付けられる取付部32とからなり、該本体部31と該取付部32との境界部分には切込みが入れられ、該本体部31が揺動可能なようにヒンジ部33を構成し、(【0009】) 上流管接続部2は、管本体23の内部に空間を有し、当該空間の下流側の端部に位置する上流管接続部2の下流側の縁の部分は、鉛直面上に位置するように形成され、(上記イ(エ)) 弁体3の本体部31の直径は、上流管接続部2の下流側の縁の部分の上端部から、上流管接続部2の段部22上縁までの距離よりも小さく、(上記イ(オ)) 排水が下流管4bから排水桝1内に逆流して、該排水桝1内の水位が弁体3の本体部31下端よりも高くなると、該本体部31が浮力によってヒンジ部33を軸として揺動し、該本体部31の下縁が上流管接続部2の段部22上縁に当接すると同時に、該本体部31が該上流管接続部2の管路を閉塞する、(【0013】) 逆流防止弁。」 (2)甲2に記載された事項及び甲2発明 ア 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 【従来の技術】従来、公共下水道、農業集落排水路などに設けられたマスには、流入管の他に、流出管が接続されている。上記マスに接続された流出管の排水口には、マス内の雨水が逆流しないような工夫が一般的になされている。例えば、実開平4-57582号公報や、実開平4-65883号公報にマスに連通された流出管の開口部を封鎖する機構(装置)が設けられたマスの例が記載されている。 【0003】上記流出管の開口部の封鎖機構(装置)は、マス本体の側壁に、側壁に沿ってV字型捍体の一方の端部に浮体が、他方の端部に蓋体が設けられた可動片を取り付け、水位の上昇による浮体の浮力によって可動片が回転し、捍体の他端に設けられた蓋体が上記開口部を封鎖するようにした構造のものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来のようなマスに設けられた流出管に対する雨水の逆流防止装置は機能的に優れたものではあるが、マス本体に装置が取り付けられた構造であるため、例えば、後から流出管を接続するような場合には、その施工が困難を来すといった問題が残されている。 【0005】本発明は、このような上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、これらの問題点を解消し、流出管に対する逆流防止装置をマス本体とは独立したものとし、施工が簡単で、後から流出管を接続するような場合であっても、容易に取付加工が行える逆流防止装置、及びこの逆流防止装置が設けられたマスを提供するものである。」 (イ)「【0016】 【発明の実施の形態】図1は本発明の逆流防止装置の一例を示す側面(部分断面)図である。図1に示す逆流防止装置は、下記詳述のように、マス本体に連通する流入管と、この流入管の下方にマス本体の側壁を貫通する流出管とが設けられてなるマスにおいて、上記流出管の管端に接続して用いられるものである。 【0017】図1において、逆流防止装置10の塩化ビニル樹脂製の短筒状の本体11の一端側は、上端より下端にかけて垂直方向に対して内側に向かってほぼ30°傾斜した開口12が設けられている。この開口12の上端には、下端に浮体14が設けられた蓋体13が開口12側に向かって回動可能に垂設されている。即ち、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂板製の上記蓋体13は、ステンレス鋼製のヒンジ15により本体11の上端に回動可能にネジ等を用いて固着されている。 【0018】又、この蓋体13の裏面には、開口12のシールのためのCRスポンジ製のシール材16が張着されている。更に、上記蓋体13の下端には、合成樹脂、例えばポリスチレン樹脂の発泡体等よりなる長球形状の浮体14が、取付金具17を用いて固着されている。 【0019】本体11の他端側の端部には、流出管の管端に接続するための接続口18が設けられている。この接続口18は、従来の汎用受口でも可能であり、又、単に通常の差口であってもよい。 【0020】上記接続口18が流出管に接続された状態で、下記詳述のように、浮体14がマス本体内の排水の水位の増減により浮力を受け、この浮力により蓋体13が回動されて上記開口12が閉鎖、或いは開放されることになる。 【0021】図2は、図1に示す本発明の逆流防止装置10の使用例を示す断面図である。図2において、1はマスであり、上面に蓋1cが設けられたこのマス1は雨水の排水経路において地下に埋設され、流入管2がその上方に連通されて設けられ、この流入管2より流入された雨水が、所定の水位に到達すると、この流入管2と反対側に、ほぼ同一高さに連通して設けられた他方の流入管(図示しない)より、排水経路を経て排水されるようになっている。 【0022】上記マス1において、流入管2の下方には、側壁1bを貫通して側面より流出管3が接続され、その管端に逆流防止装置10が、その接続口18(図1に示す)を接続されて取り付けられている。 【0023】以下本実施例の作用を説明する。マス1のマス本体1a内の雨水の水位がAの状態においては、雨水は流入管2より流入される状態にあり、又同時に流出管3よりも汚水等が流入される状態となっている。この時、蓋体12の下端に垂設された浮体14は、最下位置(但し、この時蓋体13は開口12側にほぼ3°~10°傾斜した状態に設定されている)に位置している。従って、流出管3の開口12は開放されており、汚水等はマス本体1a内に流入できる状態にある。 【0024】雨水が流入管2により流入してきて、マス本体1a内の水位が上昇し、水位B(即ち、流出管3のほぼ管底面と同等)に到達した時には、それまで浮体14の受ける浮力により徐々に開口12側(図中の矢視方向)に移動していたて蓋体13は、開口12を封鎖した状態となる。 【0025】又、この水位B、或いはそれ以上の水位においては、常に働く浮体14の上方への浮力により、蓋体13は上記開口12を常に押圧した状態となり、その裏面に張着されたシール材16(図1に示す)により、開口12は確実に封鎖され、流出管3への雨水の逆流が防止される。 【0026】引き続いてマス本体1a内の雨水の水位が上昇し続けて、水位Cまで到達すると、マス本体1a内の雨水は、反対側に接続された流入管より下流側に排水されてゆく。従って、マス本体1a内の雨水の水位が、水位Bより上方の水位Cにある間は、蓋体13により開口12が封鎖された状態が維持され、流出管3への雨水の逆流が防止されることになる。」 (ウ)図1 「 [図:0001411205000005.jpg] 」 (エ)図2 「 [図:0001411205000006.jpg] 」 イ 甲2発明 前記アから、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明> 「逆流防止装置10であって、 上面に蓋1cが設けられたマス1は雨水の排水経路において地下に埋設され、流入管2がその上方に連通されて設けられ、この流入管2より流入された雨水が、所定の水位に到達すると、この流入管2と反対側に、ほぼ同一高さに連通して設けられた他方の流入管より、排水経路を経て排水されるようになっており、(【0021】) 上記マス1において、流入管2の下方には、側壁1bを貫通して側面より流出管3が接続され、その管端に逆流防止装置10が、その接続口18を接続されて取り付けられており、(【0022】) 逆流防止装置10の塩化ビニル樹脂製の短筒状の本体11の一端側は、上端より下端にかけて垂直方向に対して内側に向かってほぼ30°傾斜した開口12が設けられており、この開口12の上端には、下端に浮体14が設けられた蓋体13が開口12側に向かって回動可能に垂設されており、(【0017】) 本体11の他端側の端部には、流出管の管端に接続し、(【0019】) 浮体14がマス本体内の排水の水位の増減により浮力を受け、この浮力により蓋体13が回動されて上記開口12が閉鎖、或いは開放され、(【0020】) マス1のマス本体1a内の雨水の水位がAの状態においては、雨水は流入管2より流入される状態にあり、又同時に流出管3よりも汚水等が流入される状態となっており、この時、蓋体12の下端に垂設された浮体14は、最下位置に位置しており、従って、流出管3の開口12は開放されており、汚水等はマス本体1a内に流入できる状態にあり、(【0023】) 雨水が流入管2により流入してきて、マス本体1a内の水位が上昇し、水位B(即ち、流出管3のほぼ管底面と同等)に到達した時には、それまで浮体14の受ける浮力により徐々に開口12側に移動していた蓋体13は、開口12を封鎖した状態となり(【0024】) この水位B、或いはそれ以上の水位においては、常に働く浮体14の上方への浮力により、蓋体13は上記開口12を常に押圧した状態となり、開口12は確実に封鎖され、流出管3への雨水の逆流が防止される、(【0025】) 逆流防止装置10。」 (3)甲4~甲7に記載された事項及び周知技術 ア 甲4に記載された事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0022】 図1及び図2は、逆流防止弁体付き桝装置1を示し、この逆流防止弁体付き桝装置1は、桝本体2とこの桝本体2に着脱自在に取付けられた弁体3とを備えている。 【0023】 桝本体2は、合成樹脂にて成形され、図3に示されるように、流入側接続口4、流出側接続口5が形成され、これら流入側接続口4と流出側接続口5とを接続するインバート部6及びこのインバート部6の上方に開口する掃除口7が形成されている。」 (イ)図1 「 [図:0001411205000007.jpg] 」 イ 甲5に記載された事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0025】 桝本体1は、合成樹脂にて成形され、後部に流入側接続口2、前部に流出側接続口3、この流入側接続口2と流出側接続口3とを接続するインバート部4及びこのインバート部4の上方に開口する掃除口5とを備えている。この掃除口5は受口に形成し、この受口の掃除口5には立ち上がり管6の下端部が嵌合され、この立ち上がり管6の上端部には枠体7が嵌着されている。」 (イ)図1 「 [図:0001411205000008.jpg] 」 ウ 甲6に記載された事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0043】 この排水ます10は、特に図6において、主として上方の点検筒部材11と下方のインバート部材12とからなり、特に、この点検筒部材11に直接、流入口たる流入管用接続部13が一体成形されて突出しているので、通常の筒状管体でなく、横向きチーズ状管体(例えば、T字における垂直部が水平部より小径で、かつ、水平部の一方端に偏って設けられた管体)になっている。 【0044】 そして、この点検筒部材11とインバート部材12とは、このインバート部材12がストレートや右、左90度大曲り、球面インバード、段差付き球面インバート等多用化させるため、また、埋設深さ調節等のため、別体で構成し、製造工場または施工現場使用時に接合するようにしている。」 (イ)「【0060】 この流れの下向き案内部材25を、特にバッフルエルボ25Aで構成すると、排水の周辺への飛散や排水中の固形物の飛散による付着を防止するのは勿論、落差接合構造22やゴム輪受口13Aを水平状に直進する排水の流れを、下向きに円滑に方向転換させてインバート26に案内することができる。 【0061】 このように水平状に直進する排水(特に一般の雑排水を指す)を強制的に下向きに方向転換させるので、そのとき排水には反動力をもつようになる。【0062】 したがって、そのままインバート26へ流下させると、インバート部材12がストレート等のインバート26の場合、他の第2の流れ、例えばトイレ排水に落下させると、その反動力によりこの他の第2の流れに衝突し、第2の流れ中の固形物を飛散させるおそれがある。 【0063】 なお、このインバート26は、Uターン部材にとってストレート型の起点用球面インバートが最も良好に流出させるが、他の第2の流れがある場合は、ストレート型の段差付き球面インバートがUターン部材と良好にマッチして合流させることができる。ひいては、起点およびストレート型故、極狭小地が有利となる。 【0064】 したがって、この反動力を吸収するため、バッフルエルボ25Aの出口側の向きをインバート26における下流方向に向けると、つまりUターンさせると、意外にも、この滝落しが第2の流れに円滑に合流する。したがって、前記極狭小地設置の効果と相俟って、省スペースで、滝落しによる排水の乱れや飛散がなくスムーズな流れとなる。」 (ウ)「【0075】 この高さ調節部材15の下端側は、インバート部材12の上方開口側に形成した受口部40に挿入する。なお、このインバート部材12には屋外排水主管106が接続される流出口42を設けている。 【0076】 次に、バッフルエルボ25Aであるが、これは塩ビ(合成樹脂)射出成形製であって、排水の流れを矢印aのように滝落しして更にUターンさせるため、バッフルエルボ本体33と半椀状のUターン助勢案内部材34と、これらを連結し、高さ調節可能の連結部材35と、から、互に接着接合して一体モノに構成している。したがって、これらの具体的部材を含めてUターン部材または、Uターン状に流れを規制する案内部材と総称する。勿論、このUターン助勢案内部材34は各種のバリエ?ションがあって、90°エルボでもよい。」 (エ)図6 「 [図:0001411205000009.jpg] 」 (オ)上記(ウ)によれば、排水の流れが矢印aとして示されることから、上記(ア)~(ウ)の記載を踏まえると、上記(エ)の図6から、図面右下の流出口42から排水がマス10内に流入し、図面左下の流出口42から排水がマス10外へ流出するものであること、及び、インバート26は、右下の流出口42と左下の流出口42とを接続することが看取できる。 エ 甲7に記載された事項 甲7には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0013】又、底部の汚水管との接続部の形状は、汚水管と接続でき、接続部で汚水の流れが一部詰まることがなければ、適宜な形状でよく、例えば、汚水管との接続部を受口を有する短管にして、汚水管の接続部を受口に差し込んで、汚水管に内面と排水桝のインバート部の内面とがほぼ面一になるようにすると、汚水の流れに支障がないので、好ましい。」 (イ)「【0028】図1において、Gは排水桝であり、排水桝Gは、塩化ビニル樹脂製で、排水桝本体1と、上部の蓋部2と、底部に汚水流入管及び汚水流出管の接続部3、3と、上部に雨水流入管7の差込孔4とからなっている。底部の汚水流入管の接続部3は受口6を有する短管5とからなり、汚水流出管の接続部3aは差口6aを有する短管5aとからなっている。上部の雨水流入管7の差込孔4は、雨水流入管7の大きさとほぼ同じ大きさになされている。排水桝本体1と汚水流入管及び汚水流出管の接続部3、3aと差込孔4とは、射出成型法で、一体成型されている。」 (ウ)図1 「 [図:0001411205000010.jpg] 」 オ 周知技術 上記ウ及びエから、甲4~甲7のうち、少なくとも甲6及び甲7には、以下の周知技術が記載されているものと認められる。 <周知技術> 「マスの底部に流入口と流出口とを接続するインバート部を形成すること。」 (4)甲10に記載された事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 ア 1枚目下から3行~最終行 「十 ますの底には、もつぱら雨水を排除すべきますにあつては深さが十五センチメートル以上のどろためを、その他のますにあつてはその接続する管渠の内径又は内のり幅に応じ相当の幅のインバートを設けること。」 (5)乙2に記載された事項 乙2には、以下の事項が記載されている。 ア 301頁6~7行 「インバート 下水の流下を円滑にするため,ます及びマンホール等の底部に設けた凹形の導水路をいう。」 2 無効理由1(甲1発明を主引用発明とした進歩性の欠如)について (1)本件特許発明1 ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「貫通口」及び「排出口」は、それぞれ、本件特許発明1の「流入口」及び「流出口」に相当する。 (イ)甲1発明の「貫通口と排出口を接続」する「桝本体11の内側底面14」と、本件特許発明1の「前記流入口と前記流出口とを接続するインバート部」とは、「前記流入口と前記流出口とを接続する」部分である点で共通する。 (ウ)甲1発明の「点検筒接続部13」は、「桝本体11の上端」すなわち上方にあるものであって、点検のために開口していることは明らかであるから、本件特許発明1の「上方で開口した点検口」に相当する。 (エ)甲1発明の「排水桝1」及び「逆流防止弁」は、それぞれ、本件特許発明1の「排水ます」及び「逆流防止弁」に相当し、甲1発明の「排水桝1における逆流防止弁」は、本件特許発明1の「排水ます用逆流防止弁」に相当する。 (オ)甲1発明の「貫通口」に「貫通配設され」、その「内側上部から」「弁体3が吊り下げられ」るものであって、「管本体23」からなるものである「上流管接続部2」は、本件特許発明1の「排水ますの」「流入口に取り付けられる弁管」に相当する。 (カ)本件特許発明1の「前記弁管の下流側の上部端部」との構成は、日本語の意味からすると、弁管の下流側の端部であって、かつ、当該弁管の上部の端部である部分を特定するものと認定できるところ、本件特許明細書の段落【0036】には、「弁管4の開口端面41を開閉するために開口端面41の上部端部42に揺動自在に軸支された弁体5」と記載され、図1、図4、図5には、弁管4の下流側の端部の開口端面41の上部の位置に上部端部42の指示線が示されており、上記認定は、本件特許明細書及び図面のこれらの記載とも整合する。 したがって、本件特許発明1の上記認定に基づいて対比を行うと、甲1発明の「弁体3」の「本体部31」と「上流管接続部2の内側上部に取り付けられる取付部32」「との境界部分」は、上流管接続部2の下流側の端部である縁の部分ではなく、上流管接続部2の内側上部の位置にあることから、「境界部分」に構成される「ヒンジ部33」により「揺動可能なように」設けられる「弁体3」の「本体部31」と、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の上部端部において揺動自在に軸支される弁体」とは、「前記弁管の上部において揺動自在に軸支される弁体」である点で共通する。 (キ)なお、上記(カ)の認定について、請求人は、「本件特許明細書の段落0036の「弁管4の開口端面41を開閉するために開口端面41の上部端部42に揺動自在に軸支された弁体5を備えている。」なる記載を参酌すれば、管軸方向の端面である「開口端面41」において、さらに「上部端部」なる語を用いていることから、本件特許発明1の「上部端部」の「端部」なる語は管軸方向の端部ではなく、上下方向の端部であると解される。」と主張している(請求人要領書5頁)。 しかしながら、本件特許発明1では、単に「上部端部」と特定されるのではなく、「前記弁管の下流側の上部端部」と特定され、上下方向ではなく、上下流方向における位置を特定するものであって、その意味は上記(カ)で説明したとおりに解することができるから、上記主張は採用できない。 (ク)本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端」との構成において、日本語の意味からすると、弁管の開口とは、弁管の内部の空間を意味し、弁管の開口の端とは、その空間の端を意味するものと解せるから、「前記弁管の下流側の開口端」とは、弁管の内部の空間の端のうち、下流側にあるものを示すものと認定できる。そして、本件特許明細書の段落【0036】には、「弁管4の下流側の開口端面41が上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されている前記弁管4」と記載され、図1、図4、図5には、弁管4の内部ではなく、最も下流側の端部に開口端面41の指示線が示されており、上記認定は、本件特許明細書及び図面のこれらの記載とも整合する。 したがって、本件特許発明1の上記認定に基づいて対比を行うと、甲1発明の「上流管接続部2の下流側の縁の部分」は、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端」に相当し、甲1発明の「上流管接続部2の下流側の縁の部分は、鉛直面上に位置するように形成されている」ことと、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されていること」とは、「前記弁管の下流側の開口端が形成されている」点で共通する。 (ケ)なお、上記(ク)の認定について、請求人は、本件特許明細書の段落【0007】~【0008】において、甲1である特許文献3について「弁体は流出口の開口端を開口している」(当審注:前後の文脈からみて、「流出口」は「流入口」の誤記であると認める。)と記載されていることに基づいて、「開口端」という用語は、管の最も下流側の端部だけでなく、弁体により開閉が行われている箇所であれば管路内の奥に位置する部分であっても「開口端」といえる旨、主張するとともに、特許請求の範囲の用語の意義を解釈するうえで、明細書の記載等を考慮することなく字義のみで用語の解釈をすることは許されない旨、主張している(審判請求書22頁下から2行~23頁下から2行、請求人要領書4頁2行~下から2行、請求人上申書2の3頁13行~5頁20行)。 しかしながら、本件特許発明1の「開口端」は、流入口の下流側の「開口端」ではなく、「前記弁管の下流側の開口端」であって、上記(ク)のとおり、「前記弁管の下流側の開口端」については、日本語として意味が明らかであるところ、本件特許明細書の段落【0036】において明確に定義され、図1、図4、図5にも示されていることから、特許請求の範囲に記載された用語の字義のみでなく、本件特許明細書等の記載を総合的に考慮すれば、本件特許明細書の段落【0007】~【0008】の「流入口の開口端」との記載は、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端」との構成についての上記(ク)の認定を左右するものではない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (コ)また、被請求人は、「本件特許明細書の段落【0007】および【0008】に記載の甲第1号証の排水ます(排水桝1)の「流入口の開口端」は、受口部21から、受口部21よりも大径とされ且つ弁体3の本体部31から上流側に存在している部分であって、下部には段部22が設けられている「流入口」のうち、最も下流側の端部(上記「説明図1,2」参照)を意味していることは明らかであり、「流入口」の奥に位置する部分を意味するものではない。」と主張している(被請求人要領書6頁1~6行)。 しかしながら、本件特許発明1の「開口端」は、流入口の「開口端」ではなく、「前記弁管の下流側の開口端」であるから、被請求人が主張する流入口の開口端の解釈が、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端」との構成についての上記(ク)の認定を左右するものではない。 よって、被請求人の主張も採用できない。 (サ)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「流入口と、流出口と、前記流入口と前記流出口とを接続する部分と、上方で開口した点検口とを備えた排水ますに取り付けられる逆流防止弁であって、 排水ますの流入口に取り付けられる弁管と、 前記弁管の上部において揺動自在に軸支される弁体とを有しており、そして 前記弁管の下流側の開口端が形成されている排水ます用逆流防止弁。」 <相違点1> 本件特許発明1の揺動自在に軸支される「弁体」が「前記弁管の下流側の上部端部」に軸支されるものであるのに対して、甲1発明の「弁体3」の「本体部31」は、「上流管接続部2」の上部であるものの、管の内部であって、「下流側の」「端部」に軸支されるものではない点。 <相違点2> 本件特許発明1では、「前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されている」のに対して、甲1発明の「上流管接続部2の縁の部分は、鉛直面上に位置するように形成されている」点。 <相違点3> 本件特許発明1が、「前記流入口と前記流出口とを接続するインバート部」を有するのに対し、甲1発明の「貫通口と排出口を接続」する「内側底面14」は、「下流側が低くなるように若干傾斜して」いるものであって、インバート部を有しない点。 イ 判断 (ア)甲1に基づく進歩性の欠如について a 相違点1 甲1には、「弁体3」の「本体部31」を、「上流管接続部2」の下流側の上部「端部」に軸支することについて記載も示唆もされておらず、そのような変更を行う動機付けは見出せない。 また、甲1発明は、「排水が下流管4bから排水桝1内に逆流して、該排水桝1内の水位が弁体3の本体部31下端よりも高くなると、該本体部31が浮力によってヒンジ部33を軸として揺動し、該本体部31の下縁が上流管接続部2の段部22上縁に当接すると同時に、該本体部31が該上流管接続部2の管路を閉塞する」ものであり、甲1発明の弁体3の本体部31は、上流管接続部2の段部22上縁に当接することにより上流管接続部2の管路を閉塞するものであるところ、甲1発明では、「弁体3の本体部31の直径は、上流管接続部2の下流側の縁の部分の上端部から、上流管接続部2の段部22上縁までの距離よりも小さ」いことから、仮に、弁体3の本体部31を、上流管接続部2の下流側の上部「端部」、すなわち「上流管接続部2の下流側の縁の部分」に設けたとしても、弁体3の本体部31が、段部22と当接することはできず、弁体3の本体部31により上流管接続部2を閉塞することはできないから、このような変更には阻害要因があるといえる。さらに、甲1発明において、弁体3の本体部31と上流管接続部2の段部22をまとめて「上流管接続部2の下流側の縁の部分」及びその付近に設ける動機付けもない。 したがって、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 b 相違点2 甲1には、「前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されている」ことについて記載も示唆もされておらず、そのようにする動機付けは見出せない。 したがって、相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 c 相違点3 甲1には「内側底面14」にインバート部を設けることについて記載も示唆もされておらず、インバート部を設けることが設計事項であるともいえない。 そして、本件特許発明1は、「インバート部」を備え、この「インバート部」が「前記流入口と前記流出口とを接続する」ものであるから、流入口から流出口への排水を円滑にする効果を有するものである。 したがって、相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 d 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (イ)甲1及び甲2に基づく進歩性の欠如について a 相違点1 甲2発明の「蓋体13」が、「本体11の一端側」の「開口12の上端に、」「回動可能に垂設されて」いることは、本件特許発明1の「弁体」が、「前記弁管の下流側の上部端部において揺動自在に軸支される」ことに相当する。 また、甲2発明において「蓋体13」が「垂設され」た「短筒状の本体11」は、本件特許発明1の「弁管」に相当し、甲2発明の「短筒状の本体11」が「流出管の管端に接続」することは、本件特許発明の「弁管」が「排水ますの」「流入口に取り付けられる」ことに相当する。 甲1発明と甲2発明とは、いずれも排水ますに用いられる逆流防止弁である点で、技術分野が共通する。また、いずれも排水ますにおける排水の逆流を防止することを課題とする点、及び逆流防止のための弁として機能する点においても共通している。したがって、甲1発明と甲2発明とを組み合わせる動機付けがあるものと一応認められる。 しかしながら、甲2には、甲1発明において、甲2発明の「蓋体13」が、「本体11の一端側」の「開口12の上端に、」「回動可能に垂設されて」いる構成を採用するための動機付けとなり得る具体的な示唆はない。 そして、仮に甲1発明において、甲2発明の構成を採用しても、甲1発明において、弁体3の本体部31を、上流管接続部2の下流側の上部端部に設けようとする場合、上記(ア)aと同様の阻害要因があるといえる。 また、甲1発明の弁体3の本体部31に換えて、甲2発明の「蓋体13」を設けようとする場合、甲2発明の「蓋体13」は、「下端に浮体14が設けられた」ものであるから、この「浮体14」が甲1発明の上流管接続部2に干渉して「蓋体13」が上流管接続部2の段部22と当接することはできず、弁体3の本体部31により上流管接続部2を閉塞することはできないから、この場合であっても阻害要因があるといえる。 さらに、甲1発明の弁体3だけでなく上流管接続部2を含めて、甲2発明の「蓋体13」及び「短筒状の本体11」と置換しようとする場合についても、「蓋体13」の「下端」の「浮体14」が、甲1発明の桝本体11の内側底面14に干渉して「蓋体13」が開閉できなくなるから、この場合も阻害要因があるといえる。また、この場合については、後述のc及び3(1)イにおいて説明するインバート部を設けようとすると、「浮体14」がインバート部とも干渉することになるから、この点も阻害要因となる。 したがって、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲1及び甲2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 b 相違点2 甲2発明の「短筒状の本体11の一端側は、上端より下端にかけて垂直方向に対して内側に向かってほぼ30°傾斜した開口12が設けられて」いることは、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されていること」に相当する。 しかしながら、甲2発明の「短筒状の本体11の一端側は、上端より下端にかけて垂直方向に対して内側に向かってほぼ30°傾斜した開口12が設けられて」いる構成は、「開口12の上端には、下端に浮体14が設けられた蓋体13が開口12側に向かって回動可能に垂設され」た構成と一体となって「逆流防止装置10」をなすものであるから、甲1発明において、甲2発明の「逆流防止装置10」としての構成の一部に過ぎない短筒状の本体11の一端側の形状のみを採用する動機付けはない。 また、甲1発明において、甲2発明の短筒状の本体11の一端側の形状だけでなく、蓋体13も含めた「逆流防止装置10」を一体として採用しようとする場合を検討すると、甲1発明は、「排水桝において排水の逆流を防止することのできる手段を提供する」という課題を解決するために上流管接続部2及び弁体3を含む「逆流防止弁」を提供するものであるところ(段落【0004】~【0005】)、甲1発明の「逆流防止弁」によって上記課題を解決し得るにもかかわらず、あえて甲1発明の「逆流防止弁」に換えて、甲2発明の「逆流防止装置10」を採用する動機付けは見出せない。 したがって、相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲1及び甲2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 c 相違点3 甲1には「内側底面14」にインバート部を設けることについて記載も示唆もされていない。 また、甲2には、甲2発明の「マス1」にインバート部を設けることは記載も示唆もされていない。(後述の3(1)イを参照。) したがって、相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲1及び甲2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 d 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1及び甲2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (2)本件特許発明2~3 本件特許発明2~3は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2~3も、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 無効理由2(甲2発明を主引用発明とした新規性、進歩性の欠如)について (1)本件特許発明1 ア 対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 (ア)甲2発明において、「雨水の水位がAの状態においては、」「流出管3の開口12は開放されており、汚水等はマス本体1a内に流入できる」ものであり、「流出管3」はマス本体1aの外から内へ汚水等を流入できるようにしたものであることが明らかであるから、甲2発明の「流出管3」は、本件特許発明1の「流入口」に相当する。 (イ)甲2発明において、「雨水が、所定の水位に到達すると、この流入管2と反対側に、ほぼ同一高さに連通して設けられた他方の流入管より、排水経路を経て排水される」ことから、甲2発明の「他方の流入管」は、本件特許発明1の「流出口」に相当する。 (ウ)甲2発明の「マス1」は「上面に蓋1cが設けられ」ていることから、上方に開口を有するものであり、蓋1cを取り外した場合に開口から点検が可能であることは明らかであるから、当該開口は、本件特許発明1の「上方で開口した点検口」に相当する。 (エ)甲2発明の「雨水の排水経路において地下に埋設され」た「マス1」は、本件特許発明1の「排水ます」に相当する。 (オ)甲2発明において「蓋体13」が「垂設され」た「短筒状の本体11」は、本件特許発明1の「弁管」に相当し、甲2発明の「短筒状の本体11」が「流出管の管端に接続」されることは、本件特許発明1の「弁管」が「排水ますの」「流入口に取り付けられる」ことに相当する。 (カ)甲2発明の「蓋体13」が、「本体11の一端側」の「開口12の上端に、」「回動可能に垂設されて」いることは、本件特許発明1の「弁体」が、「前記弁管の下流側の上部端部において揺動自在に軸支される」ことに相当する。 (キ)甲2発明の「短筒状の本体11の一端側は、上端より下端にかけて垂直方向に対して内側に向かってほぼ30°傾斜した開口12が設けられて」いることは、本件特許発明1の「前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されていること」に相当する。 (ク)甲2発明の「蓋体13」が設けられた「逆流防止装置10」は本件特許発明1の「逆流防止弁」及び「排水ます用逆流防止弁」に相当する。 (ケ)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「流入口と、流出口と、上方で開口した点検口とを備えた排水ますに取り付けられる逆流防止弁であって、 排水ますの流入口に取り付けられる弁管と、 前記弁管の下流側の上部端部において揺動自在に軸支される弁体とを有しており、そして 前記弁管の下流側の開口端は、上部から下部へ向かうにつれて下流側から上流側へ向けて傾斜するように形成されている排水ます用逆流防止弁。」 <相違点4> 本件特許発明1は、「前記流入口と前記流出口とを接続するインバート部」を備えるのに対して、甲2発明はこれを有しない点。 イ 判断 (ア)甲2に基づく新規性の欠如について 甲2には、「流出管3」と「他方の流入管」とを接続するインバート部を設けることは、記載も示唆もされていない。 よって、上記相違点4は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2に記載された発明ではない。 なお、これについて請求人は、「甲第2号証のマス1は合流マス、すなわち雨水を合流できる汚水マスであって、下部に流出口、底部にインバートを設けることについては、「下水道法施行令」の第8条(排水設備の設置及び構造の技術上の基準)の第10号に「ますの底には、もっぱら雨水を排除すべきますにあっては深さが15cm以上のどろためを、その他のますにあってはその接続する管渠の内径又は内のり幅に応じ相当の幅のインバートを設けること。」(甲第10号証)なる基準が定められ、甲第2号証のマスは、同号に規定された「もっぱら雨水を排除すべきます」には該当せず、同号に規定された「その他のます」に該当するものであるため、甲第2号証のマスは、その下方に「流出口」や「インバート部」があることは明らかである。」と主張している(請求人要領書7頁4行~13行)。 しかしながら、インバート部は、乙2に「インバート 下水の流下を円滑にするため,ます及びマンホール等の底部に設けた凹形の導水路をいう。」とあり、マスの底部における排水の流下の円滑化は、マスに設けられる流入口及び流出口が、マスの底部の凹形の導水路と略同程度の高さで連通し、排水を流出口から押し出すことでなされるものである。そうすると、排水の流下の円滑化のためには、少なくとも排出側にはインバートと略面一となる流出口が設けられる必要があるところ、仮に甲10の記載から、合流マスの底部にインバートが設けられていることが技術常識であって、この技術常識に基づいて甲2発明のマスの底部にインバート部が設けられていることが明らかであると解することができたとしても、甲2発明のマス1は、底部付近に流出口が設けられていないから、マスの底部のインバート部は、流出口と同程度の高さで連通するものではなく、独立して設けられる構成となり、このインバート部が流入口と流出口とを接続するものであるとはいえない。 また、仮に甲10から、マスの底にインバートに加えて流出口としての管渠を設けることが記載されているといえたとしても、甲2発明のマス1に、インバート及び流出口を設けなければならない理由はない。すなわち、甲2発明のマス1が合流マスであったとしても、合流マスは雨水が流入するものでもあるから、雨水マスと同様に泥だめを形成し、雨水マスと同様に泥だめの処理を行えば、必ずしも流出口を必要とするものではない。したがって、甲2発明のマス1にインバート及び流出口を設けることは当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)甲2及び周知技術(甲4~甲7)に基づく進歩性の欠如について 甲4~甲7のうち、少なくとも甲6及び甲7に記載された周知技術であるインバート部は、マスの底部において流入口と流出口を接続するものである。したがって、マスの底部から離れた位置に流入口と流出口が設けられた甲2発明のマスに、仮に当該周知技術を適用し、マスの底部にインバート部を設けても、上記(ア)で説明したものと同様の理由から、排水は円滑化されないから、このような周知技術の適用には動機付けがない。 また、仮に甲2発明のマスの底部にインバート部を設けても、甲2発明のマス1は、底部付近に流入口や流出口は設けられていないから、マスの底部のインバート部が流入口と流出口とを接続するものであるともいえない。 よって、相違点4に係る本件特許発明1の構成は、甲2及び甲4~甲7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (2)本件特許発明2~3 本件特許発明2~3は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2発明及び甲4~甲7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2~3も、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2発明及び甲4~甲7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、無効理由1及び2はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1~3についての特許は、無効理由1及び2によっては、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-800038

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