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特許異議申立

2023-700700

タルク粒子及びその使用

審判番号
2023-700700
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-133165
登録番号
7204712
請求日
2023年07月07日
審決日
2024年09月13日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】イメリス タルク ユーロープ
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【権利者代理人】藤代 昌彦
  • 【異議申立人】イミファビ ソシエタ ペル アツィオーニ
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人ドライト国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.853-YAA(C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7204712号発明「タルク粒子及びその使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7204712号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。 特許第7204712号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7204712号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)8月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年9月1日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願である特願2017-530420号の一部を、令和2年8月5日に新たな特許出願としたものであって、令和5年1月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月7日に、請求項1~15に係る特許について、特許異議申立人 イミファビ ソシエタ ペル アツィオーニ(以下、「申立人」という。)により、甲第1~5号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、令和5年10月17日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である令和6年1月18日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年3月26日に申立人より甲第6~8号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出され、同年5月15日付けで当審より取消理由が通知され、同年8月19日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、令和6年8月19日に特許権者により訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、同年1月18日にされた訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、申立人には、先の訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられており、本件訂正請求による訂正の内容は、後記第2の1のとおり、先の訂正請求による訂正の内容である訂正事項1~20に訂正事項21を加えたものであって、前記訂正事項21に係る訂正は、実質的な判断に影響を与えるものではない軽微なものといえるから、本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事情があるといえるので(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えなかった。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 訂正の内容及び一群の請求項について 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7204712号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1) 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「約0.5~5.0μmのd50」 と記載されているのを、 「0.5~5.0μmのd50」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、9~15も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「約2.8~約4.0のラメラリティーインデックス」 と記載されているのを、 「2.8~4.0のラメラリティーインデックス」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、9~15も同様に訂正する。)。 (3) 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「約100ppm以下」 と記載されているのを、 「100ppm以下」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、9~15も同様に訂正する。)。 (4) 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「約50ppm以下」 と記載されているのを、 「50ppm以下」 に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~5、9~15も同様に訂正する。)。 (5) 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「約45μm以上」 と記載されているのを、 「45μm以上」 に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~5、9~15も同様に訂正する。)。 (6) 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「約3.0~約4.0のラメラリティーインデックス」 と記載されているのを、 「3.0~4.0のラメラリティーインデックス」 に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、9~15も同様に訂正する。)。 (7) 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「約5.0~約15.0μmのd95」 と記載されているのを、 「0.5~15.0μmのd95」 に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、9~15も同様に訂正する。)。 (8) 訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に 「約10m2/g~約20m2/gの比表面積(BET)」 と記載されているのを、 「10m2/g~20m2/gの比表面積(BET)」 に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、9~15も同様に訂正する。)。 (9) 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の1行目に 「約0.5~5.0μmのd50」 と記載されているのを、 「0.5~5.0μmのd50」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (10) 訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の1行目に 「約30.0以上の峻度」 と記載されているのを、 「30.0以上の峻度」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (11) 訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の1~2行目に 「約2.8~約4.0のラメラリティーインデックス」 と記載されているのを、 「2.8~4.0のラメラリティーインデックス」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (12) 訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の2行目に 「約100ppm以下の45μm以上の粒径」 と記載されているのを、 「100ppm以下の45μm以上の粒径」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (13) 訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に 「約5.0μmより大きいd50」 と記載されているのを、 「5.0μmより大きいd50」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (14) 訂正事項14 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に 「約20.0μmのd95」 と記載されているのを、 「20.0μmのd95」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (15) 訂正事項15 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に 「約15.0μmより大きいd95」 と記載されているのを、 「15.0μmより大きいd95」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (16) 訂正事項16 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の9行目に 「約0.5~5.0μmのd50」 と記載されているのを、 「0.5~5.0μmのd50」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (17) 訂正事項17 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の9~10行目に 「約30.0以上の峻度」 と記載されているのを、 「30.0以上の峻度」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、15も同様に訂正する。)。 (18) 訂正事項18 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の10行目に 「約2.8~約4.0のラメラリティーインデックス」 と記載されているのを、 「2.8~4.0のラメラリティーインデックス」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (19) 訂正事項19 訂正前の特許請求の範囲の請求項6の10~11行目に 「約100ppm以下の45μm以上の粒径」 と記載されているのを、 「100ppm以下の45μm以上の粒径」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8、12、15も同様に訂正する。)。 (20) 訂正事項20 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に 「約15.0μmより大きいd95」 と記載されているのを、 「15.0μmより大きいd95」 に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項12、15も同様に訂正する。)。 (21) 訂正事項21 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に 「約1質量%の前記タルク粒子」 と記載されているのを、 「1質量%の前記タルク粒子」 に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項13、14も同様に訂正する。)。 (22) 一群の請求項について 訂正前の請求項2~5及び9~15は、いずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、一群の請求項であり、訂正前の請求項7、8、12及び15は、いずれも訂正前の請求項6を引用するものであるから、一群の請求項である。 そして、訂正前の請求項12及び15は、訂正前の請求項1又は6を直接的又は間接的に引用するものであるから、これら2つの一群の請求項は組み合わされて1つの一群の請求項となるので、訂正事項1~21による本件訂正による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1~15について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について (1) 訂正事項1~21について 訂正事項1~21による訂正は、いずれも、訂正前の特許請求の範囲の「約」という記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2) 独立特許要件について 本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1~15に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、訂正後の請求項1~15に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件特許の請求項1~15に係る発明は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」~「本件発明15」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 0.5~5.0μmのd50、30.0以上の峻度及び2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有し、100ppm以下の45μm以上の粒径を有する粒子を含む、タルク粒子。 【請求項2】 50ppm以下の45μm以上の粒径を有する粒子を含む、請求項1に記載のタルク粒子。 【請求項3】 3.0~4.0のラメラリティーインデックスを有するか、又は 5.0~15.0μmのd95を有する、 請求項1~2のいずれか1項に記載のタルク粒子。 【請求項4】 10m2/g~20m2/gの比表面積(BET)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタルク粒子。 【請求項5】 表面処理剤で表面処理されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のタルク粒子。 【請求項6】 0.5~5.0μmのd50、30.0以上の峻度及び2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有し、かつ100ppm以下の45μm以上の粒径を有する粒子を含むタルク粒子の調製方法であって、下記工程、 (a)5.0μmより大きいd50を有する初期粒径を有し、少なくとも20.0μmのd95を有する相対的に粗いタルク粒子の液体懸濁液をデラミネーションして、前記初期粒径より小さい粒径を有するタルク粒子を得る工程、 (b)前記懸濁液を処理して、15.0μmより大きいd95を有する粒子を減らすか又は排除する工程、及び (c)前記懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させ、それによって0.5~5.0μmのd50、30.0以上の峻度及び2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有し、かつ100ppm以下の45μm以上の粒径を有する粒子を含むタルク粒子を得る工程、 を含む、前記方法。 【請求項7】 前記懸濁液を少なくとも部分的に乾燥させる工程の前に、前記タルク粒子を表面処理剤で更に処理する、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 15.0μmより大きいd95を有する粒子の少なくとも一部を工程(a)のデラミネーションに再利用する、請求項6又は7に記載の方法。 【請求項9】 請求項1~5のいずれか1項に記載のタルク粒子を含む、ポリマー組成物。 【請求項10】 前記ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレンコポリマー、又はそれらの組合せから選択される、請求項9に記載のポリマー組成物。 【請求項11】 前記ポリマー組成物の総質量に基づいて、少なくとも1質量%の前記タルク粒子を含む、請求項9~10のいずれか1項に記載のポリマー組成物。 【請求項12】 請求項1~5のいずれか1項に記載のタルク粒子、又は請求項6~8のいずれか1項に記載の方法により得ることができるタルク粒子をポリマーと混ぜ合わせる工程を含む、ポリマー組成物の調製方法。 【請求項13】 請求項9~11のいずれか1項に記載のポリマー組成物から形成される、ポリマー複合材又は物品。 【請求項14】 請求項13に記載のポリマー複合材又は物品であって、 (i)100ppmより多くの45μm以上の粒径を有する粒子を含む同量のタルク粒子を含む同等のポリマー複合材又は物品の第2のシャルピー衝撃強度より大きい、第1のシャルピー衝撃強度、及び/又は (ii)100ppmより多くの45μm以上の粒径を有する粒子を含む同量のタルク粒子を含む同等のポリマー複合材又は物品の第2の落錘インデックス(FWI)より大きい、0℃又は20℃における第1のFWI、及び/又は (iii)100ppmより多くの、45μm以上の粒径を有する粒子を含む同量のタルク粒子を含む同等のポリマー複合材又は物品の第2の曲げ弾性率より大きい、第1の曲げ弾性率、 を有する、前記ポリマー複合材又は物品。 【請求項15】 請求項1~5のいずれか1項に記載のタルク粒子、又は請求項6~8のいずれか1項に記載の方法により得ることができるタルク粒子の、ポリマー組成物におけるフィラーとしての使用。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について (1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、9及び15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、前記請求項1~4、9及び15に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。 (2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、9及び15に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、前記請求項1~4、9及び15に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。 2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~15に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 (2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~15に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 3 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、6、8及び11に係る発明の「約」という記載は、「d50」、「ラメラリティーインデックス」、「粒径」、「d95」、「比表面積(BET)」、「峻度」及び所定粒径の「タルク粒子の含有率」の範囲を不明確にする記載であるから、前記特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさないので、前記請求項1~15に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号所定の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 証拠方法 甲第1号証:Product Data Sheet Jetfine(R)3CA,2008年4月(当審注:「(R)」は登録商標マークである。以下、同様である。) 甲第2号証:Product Data Sheet Jetfine(R)1CA,2008年4月 甲第3号証:対応欧州出願(欧州特許 3483221 B1)に対する異議申立手続において、申立人が2022年10月27日にD19として提出した宣誓供述書 甲第4号証:国際ポリオレフィン会議2008における発表資料,2008年2月24日~27日 甲第5号証:国際ポリオレフィン会議2009における発表資料,2009年2月22日~25日 甲第6号証:2012 Registration Document ANNUAL FINANCIAL REPORT,IMERYS 甲第7号証:Product Data Sheet Steaplus HAR(R) T77,2011年10月 甲第8号証:国際公開第98/45374号 なお、甲第6~8号証は、申立人意見書に添付して提出されたものである。 そして、甲第4~7号証は、甲第1号証の公知日を明らかにしようとする証拠であり、甲第8号証は、甲第3号証で記載するパトリス・モノー氏の宣誓供述内容が信頼できるものであることを裏付けようとするものである。 第5 取消理由の概要 1 令和5年10月17日付け取消理由通知の取消理由の概要 (1) 特許法第29条第1項所定の規定違反及び同法同条第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~5及び9~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4、6及び8に係る発明の「約」の記載は発明特定事項を不明確にする記載であるから、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は明確でない。 2 令和6年5月15日付け取消理由通知の取消理由の概要 先の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項11に係る発明の「約」の記載は発明特定事項を不明確にする記載であるから、先の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項11、13、14に係る発明は明確でない。 第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び第5の取消理由についてまとめて検討する。 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001417611000001.jpg] 」 (当審訳:説明と応用 Jetfine(R)3CAは、極めて純粋で非常に白いタルクである。高いアスペクト比と超微細粉砕により、結晶性ポリマーの核生成を改善する。 より高い嵩密度を得るために圧縮されるため、配合量が増加し、高充填コンパウンドの調製が可能になる。(1行~5行) 代表的な特性 白さ(Minolta CR300, illuminant D65/2°)Y………95(94.5)* L* (CIE)……………………………………………………………98.0 a* (CIE)………………………………………………………………0.0 b* (CIE)………………………………………………………………0.6 B.E.T.(ISO 9277)…………………………………14.5m2/g 比表面積、Blaine 10………………………………………………50000 比重(ISO 787/10)……………………………………………………2.78 タップかさ密度(ISO 787/11)……………………………0.9g/cm3 硬度(モース硬度)……………………………………………………………1 化学分析(蛍光X線による) SiO2…………………………………………………………………62% MgO ………………………………………………………………31.5% Al2O3 ……………………………………………………………0.4% Fe2O3 ……………………………………………………………0.2% CaO …………………………………………………………………0.3% 1050℃での強熱減量 …………………………………………………6% 625℃での強熱減量 …………………………………………………0.9 105℃での水分含有量(ISO 787/2)……………<0.3% スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μm…0.03%(16行~25行) セディグラフによる粒度分布 沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3) メジアン径-D50:1.0(1.1)*μm D95:3.5μm 縦軸:累積質量(%) 横軸:球相当直径[μm] (左下欄) レーザーマスターサイザーによる粒度分布 レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1) メジアン径-D50:3.9(5)*μm D95:7.8μm 縦軸:累積質量(%) 横軸:球相当直径(μ) (右下欄) *圧縮タルクで得られたデータ(最終行) 注:記載されているデータは代表的なものだが、製造仕様ではない。サプライヤーは誠意を持ってデータを提供するが、特定の目的への適合性の保証を含め、提供された情報または説明された製品に関して、明示的または限定的であるかを問わず、いかなる種類の保証または表明も行わない。(欄外1行~4行)) なお、当審訳は甲第1号証の記載事項を部分的に抜粋したものである。 (イ) 前記(ア)の記載によれば、甲第1号証には「Jetfine(R)3CA」が記載されており、当該「Jetfine(R)3CA」は、極めて純粋で非常に白いタルクであり、高いアスペクト比と超微細粉砕により、結晶性ポリマーの核生成を改善するものであり、より高い嵩密度を得るために圧縮されるため、配合量が増加し、高充填コンパウンドの調製が可能になるものである。 また、前記「Jetfine(R)3CA」の代表的な特性は、白さ(Minolta CR300, illuminant D65/2°)Yが95であり、L*(CIE)が98.0であり、a*(CIE)が0.0であり、b*(CIE)が0.6であり、B.E.T.(ISO 9277)が14.5m2/gであり、比表面積、Blaine 10が50000であり、比重(ISO 787/10)が2.78であり、タップかさ密度(ISO 787/11)が、0.9g/cm3であり、硬度(モース硬度)が1であり、前記「Jetfine(R)3CA」は、化学分析(蛍光X線による)によれば、SiO2:62%、MgO:31.5%、Al2O3:0.4%、Fe2O3:0.2%、CaO:0.3%を含み、1050℃での強熱減量が6%であり、625℃での強熱減量が0.9であり、105℃での水分含有量(ISO 787/2)が<0.3%であり、スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μmが0.03%であり、沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布によれば、メジアン径-D50が1.0μm、D95が3.5μmであり、レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定によれば、メジアン径-D50が3.9μm、D95が7.8μmであるものである。 更に、甲第1号証のセディグラフによる粒度分布のグラフ(左下欄)から、前記「Jetfine(R)3CA」のD30は概略0.8μmであり、D70は概略1.8μmであることが看取される。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、 「Jetfine(R)3CAであって、 当該Jetfine(R)3CAは、極めて純粋で非常に白いタルクであり、高いアスペクト比と超微細粉砕により、結晶性ポリマーの核生成を改善するものであり、より高い嵩密度を得るために圧縮されるため、配合量が増加し、高充填コンパウンドの調製が可能になるものであり、 その代表的な特性は、白さ(Minolta CR300, illuminant D65/2°)Yが95であり、L*(CIE)が98.0であり、a*(CIE)が0.0であり、b*(CIE)が0.6であり、B.E.T.(ISO 9277)が14.5m2/gであり、比表面積、Blaine 10が50000であり、比重(ISO 787/10)が2.78であり、タップかさ密度(ISO 787/11)が、0.9g/cm3であり、硬度(モース硬度)が1であり、 前記Jetfine(R)3CAは、化学分析(蛍光X線による)によれば、SiO2:62%、MgO:31.5%、Al2O3:0.4%、Fe2O3:0.2%、CaO:0.3%を含み、1050℃での強熱減量が6%であり、625℃での強熱減量が0.9であり、105℃での水分含有量(ISO 787/2)が<0.3%であり、スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μmが0.03%であり、 沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布によれば、メジアン径-D50が1.0μm、D95が3.5μmであり、レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定によれば、メジアン径-D50が3.9μm、D95が7.8μmであり、セディグラフによる粒度分布のグラフから看取されるD30が概略0.8μmであり、D70が概略1.8μmである、Jetfine(R)3CA。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001417611000002.jpg] 」 (当審訳:説明と応用 Jetfine(R)1CAは、ポリマーの核形成のために特別に開発された超微粒子タルク(ナノ粒子を70%含む)である。その微細さにより樹脂の結晶化が促進され、それによって曲げ弾性率、HDT及び透明性が大幅に向上する。(1行~3行) 代表的な特性 白さ(Minolta CR300, illuminant D65/2°)Y……………………… L* (CIE)………………………………………………………………… a* (CIE)………………………………………………………………… b* (CIE)………………………………………………………………… B.E.T.(ISO 9277)………………………………………21m2/g 比表面積、Blaine 10………………………………………………48000 比重(ISO 787/10)………………………………………2.78g/cm3 タップかさ密度(ISO 787/11)………………………0.80g/cm3* 硬度(モース硬度)……………………………………………………………1 化学分析(蛍光X線による) SiO2……………………………………………………………61.0% MgO ………………………………………………………………31.5% Al2O3 ……………………………………………………………0.7% Fe2O3 ……………………………………………………………0.7% CaO …………………………………………………………………0.2% 1050℃での強熱減量 ……………………………………………5.9% 625℃での強熱減量 ………………………………………………0.9% 105℃での水分含有量(ISO 787/2)……………<0.3%* スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μm…0.02%(14行~23行) セディグラフによる粒度分布 沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3) メジアン径-D50:0.7(0.9*)μm D95:2.9(3.2*)μm 縦軸:累積質量(%) 横軸:球相当直径[μm] (左下欄) レーザーマスターサイザーによる粒度分布 レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1) メジアン径-D50:4.9μm* D95:14.6μm* 縦軸:累積質量(%) 横軸:球相当直径(μm) (右下欄) *圧縮タルクで得られたデータ (最終行) 注:記載されているデータは代表的なものだが、製造仕様ではない。サプライヤーは誠意を持ってデータを提供するが、特定の目的への適合性の保証を含め、提供された情報または説明された製品に関して、明示的または限定的であるかを問わず、いかなる種類の保証または表明も行わない。(欄外1行~4行。なお、当審訳は甲第2号証の記載事項を部分的に抜粋したものである。)) (イ) 前記(ア)の記載によれば、甲第2号証には「Jetfine(R)1CA」が記載されており、当該「Jetfine(R)1CA」は、ポリマーの核形成のために特別に開発された超微粒子タルク(ナノ粒子を70%含む)であり、その微細さにより樹脂の結晶化が促進され、それによって曲げ弾性率、HDT及び透明性が大幅に向上するものである。 また、前記「Jetfine(R)1CA」の代表的な特性は、B.E.T.(ISO 9277)が21m2/gであり、比表面積、Blaine 10が48000であり、比重(ISO 787/10)が2.78g/cm3であり、タップかさ密度(ISO 787/11)0.80g/cm3であり、硬度(モース硬度)が1であり、前記「Jetfine(R)1CA」は、化学分析(蛍光X線による)によれば、SiO2:61.0%、MgO:31.5%、Al2O3:0.7%、Fe2O3:0.7%、CaO:0.2%を含み、1050℃での強熱減量が5.9%であり、625℃での強熱減量が0.9%であり、105℃での水分含有量(ISO 787/2)が<0.3%であり、スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μmが0.02%であり、沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布によれば、メジアン径-D50が0.7μm(圧縮タルクで得られたデータが0.9μm)、D95が2.9μm(圧縮タルクで得られたデータが3.2μm)であり、レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定によれば、メジアン径-D50が4.9μm(圧縮タルクで得られたデータ)、D95が14.6μm(圧縮タルクで得られたデータ)であるものである。 更に、甲第2号証のセディグラフによる粒度分布のグラフから、前記「Jetfine(R)1CA」のD30は概略0.5μm、D70は概略1.3μmであることが看取される。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第2号証には、 「Jetfine(R)1CAであって、 当該Jetfine(R)1CAは、ポリマーの核形成のために特別に開発された超微粒子タルク(ナノ粒子を70%含む)であり、その微細さにより樹脂の結晶化が促進され、それによって曲げ弾性率、HDT及び透明性が大幅に向上するものであり、 その代表的な特性は、B.E.T.(ISO 9277)が21m2/gであり、比表面積、Blaine 10が48000であり、比重(ISO 787/10)が2.78g/cm3であり、タップかさ密度(ISO 787/11)0.80g/cm3であり、硬度(モース硬度)が1であり、 Jetfine(R)1CAは、化学分析(蛍光X線による)によれば、SiO2:61.0%、MgO:31.5%、Al2O3:0.7%、Fe2O3:0.7%、CaO:0.2%を含み、1050℃での強熱減量が5.9%であり、625℃での強熱減量が0.9%であり、105℃での水分含有量(ISO 787/2)が<0.3%であり、スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μmが0.02%であり、 沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布によれば、メジアン径-D50が0.7μm(圧縮タルクで得られたデータが0.9μm)、D95が2.9μm(圧縮タルクで得られたデータが3.2μm)であり、レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定によれば、メジアン径-D50が4.9μm(圧縮タルクで得られたデータ)、D95が14.6μm(圧縮タルクで得られたデータ)であり、セディグラフによる粒度分布のグラフから看取されるD30が概略0.5μmであり、D70が概略1.3μmである、Jetfine(R)1CA。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の(ア)、(イ)の記載がある。 (ア) 「 [図:0001417611000003.jpg] 」(1/2ページ) (当審訳:I.パトリス・モノーは、1965年3月11日にフランスのブザンソンで生まれ(フランス国民)、イタリアのミラノにあるIMIFABIで鉱業及び加工開発の鉱業及び加工技術者として15年間任命されてきました。この分野での私の経験の詳細については、私の履歴書をご覧ください。 以下の質問は、EP3483221B1に対する異議の申立てにおいてIMIFABIの代表者から私に提出されました。宣誓に代わる虚偽の宣誓は処罰の対象となることを承知しており、私は、前記異議の申立て手続で欧州特許庁への提出用の以下の回答が、私の知る限り正しいことを宣言します。 1.文書D2、D4、D7、D8及びD9にそれぞれ記載されているタルク粒子Jetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77をご存知ですか? 私は、技術データシートなどの商業用技術文書や見本市や国際ショーなどの公共イベントから、タルク粒子Jetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77について知っています。 2.これらのタルク粒子が2014年9月1日より前に市販されていたかどうかご存知ですか?もしかして、このタルク粒子が初めて市場に登場したときをご存知ですか? これらのタルク粒子はすべて、2014年9月1日より前に市販されていました。 3.特許EP3483221B1の請求項2には、次のような特徴が記載されています。 「45μm以上の粒径を有する粒子を250ppm未満含む、または45μm以上の粒径を有する粒子を100ppm以下含む、または45μm以上の粒径を有する粒子を50ppm以下含む、請求項1に記載のタルク粒子」 a) 粗タルク及び最終タルク製品、例えばJetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77における、サイズが45μmを超える粒子の標準含有量はそれぞれどの程度ですか?) (イ) 「 [図:0001417611000004.jpg] 」(2/2ページ) (当審訳:45μmを超える粒子の通常の含有量は一般に無視できるものと考えられており、約3~5ppm未満の量は標準的な品質管理方法を使用しても検出できません。したがって、これらの製品はすべて、45μm付近の寸法限界で1~3ppmを超える残留物を含む可能性が高くなります。1~3ppmの限界は非常に低く、通常の方法の検出レベルを超えているため、45μmの上下の部分を測定する方法を指定することが重要です。 b)当業者であれば、サイズが45μmを超える粒子をどのように除去しようとするでしょうか? 当業者は、例えば動的分級を使用して、45μmを超える粒子を除去しようとするでしょう。これは統計的なプロセスであり、たとえ非常に少量、すなわち250ppm未満、または100ppm未満、または50ppm未満の範囲であっても、制限を超える残留物が存在する可能性が常にあることを意味することを強調することが重要です。なぜなら、上で述べたように、標準的な品質管理方法の検出限界は約3~5ppmであるためです。 ミラノ、2022年10月18日) なお、当審訳は甲第3号証の記載事項を部分的に抜粋したものである。 (2) 甲第1号証を主引用例とした場合について ア 対比・判断 (ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「Jetfine(R)3CA」は、「極めて純粋で非常に白いタルクであり、高いアスペクト比と超微細粉砕により、結晶性ポリマーの核生成を改善するもの」であるから、本件発明1における「タルク粒子」に相当する。 また、甲1発明は、「沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布が、メジアン径-D50:1.0μm」であるものである。 一方、本件発明1は、「0.5~5.0μmの範囲のd50」「を有」するものであるが、前記「d50」の測定方法について、本件特許明細書の段落【0007】には、 「【0007】 特に指定のない限り、本明細書でタルク粒状物質に関して言及する粒径特性は、本明細書では「マイクロメリティックスセディグラフ(Micromeritics Sedigraph) 5100ユニット」と呼ぶMicromeritics Instruments Corporation, Norcross, Georgia, USA (www.micromeritics.com)によって供給されるセディグラフ5100装置を用いて、水性媒体に完全に分散した状態の粒状物質の沈降により周知の方法で測定される通りである。該装置は、当技術分野で「球相当径(equivalent spherical diameter)」(e.s.d)と呼ばれる所与のe.s.d値未満のサイズを有する粒子の累積質量百分率の測定値及びプロットを提供する。平均粒径d50は、当該d50値未満の球相当径を有する粒子が50質量%あるときの粒子e.s.dのこのようにして決定される値である。d95値は、粒子の95質量%が当該d95値未満のesdを有するときの値である。粒径特性は、ISO 13317-3、又はそれに等価のいずれかの方法に準拠して決定可能である。」 と記載されている。 そして、前記記載によれば、本件発明1の「d50」は、「マイクロメリティックスセディグラフ(Micromeritics Sedigraph) 5100ユニット」と呼ぶMicromeritics Instruments Corporation, Norcross, Georgia, USA (www.micromeritics.com)によって供給されるセディグラフ5100装置を用いて、水性媒体に完全に分散した状態の粒状物質の沈降により周知の方法で測定されるものである。 してみれば、甲1発明における「メジアン径-D50」の測定方法と、本件発明1における「d50」の測定方法は、セディグラフにより測定される点で概略合致するといえるから、甲1発明が「メジアン径-D50:1.0μm」であることは、本件発明1において「0.5~5.0μmの範囲のd50」「を有」することを満たすといえる。 (イ) ここで、甲第1号証には「峻度」及び「ラメラリティーインデックス」が記載されていないが、前記「峻度」及び「ラメラリティーインデックス」を求める方法について、本件特許明細書の段落【0005】及び【0008】には、以下の記載がある。 「【0005】 発明の詳細な説明 本明細書で使用する場合、用語「タルク」は、ケイ酸マグネシウム鉱物、又は鉱物緑泥石(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)、又は両者の混合物のどれかを意味し、場合により他の鉱物、例えば、ドロマイト及び/又はマグネサイトを伴うことがあり、或いはさらに、タルコース(talcose)としても知られる合成タルクを意味する。 本明細書で使用する場合、用語「表面処理済み」は、タルク粒子が、タルクの表面に付着(例えば、物理吸着又は結合)するか又は別なふうにタルクの表面と関連する化合物と接触していることを意味する。 本明細書で使用する場合、用語「ラメラリティーインデックス(lamellarity index)」は、下記比によって定義される。 [図:0001417611000005.jpg] ここで、「d平均」は、湿式マルバーン(Malvern)レーザー散乱法(規格AFNOR NFX11-666又はISO 13329-1)による粒径測定によって得られる平均粒径(d50)の値であり、「d50」は、後述するように、セディグラフ(sedigraph)(規格AFNOR X11-683又はISO 13317-3)を用いて沈降作用によって得られる中位径の値である。G. Baudet and J. P. Rona, Ind. Min. Mines et Carr. Les techn. June, July 1990, pp 55-61による論文を参照することができる。この論文は、このインデックスが、粒子の最大寸法の粒子の最小寸法に対する平均割当と相関があることを示している。」 「【0008】 上述したマルバーンレーザー光散乱技術においては、粉体、懸濁液及びエマルション中の粒子のサイズは、ミー理論の適用に基づいてレーザー光の回折を利用して測定可能である。このような装置、例えばマルバーンマスターサイザーS(Malvern Instrumentsによって供給される)は、当技術分野で「球相当径」(e.s.d)と呼ばれる所与のe.s.d値未満のサイズを有する粒子の累積体積百分率の測定値及びプロットを提供する。平均粒径d50は、当該d50値未満の球相当径を有する粒子が50体積%あるときの粒子e.s.dのこのようにして決定される値である。誤解を避けるために、レーザー光散乱を用いる粒径の測定は、上述した沈降法に等価な方法ではない。 本明細書で使用する場合、用語「峻度」は、下記式により決まる。 峻度=100×(d30/d70) 式中、d30値は、上記沈降法に従って測定した場合、粒子の30%質量が当該d30値未満のesdを有するときの値であり、d70値は、粒子の70質量%が当該d70値未満のesdを有するときの値である。」 前記記載によれば、本件発明1における「峻度」は、 峻度=100×(d30/d70) の式により決まるものであるが、式中、「d30値」は、セディグラフによる沈降法に従って測定した場合、粒子の30%質量が当該「d30値」未満のesdを有するときの値であり、「d70値」は、粒子の70質量%が当該「d70値」未満のesdを有するときの値であるといえる。 これに対して、甲1発明における「D30」及び「D70」は、セディグラフによる粒度分布のグラフから看取されるものであり、これらも、前記「d30値」及び「d70値」と同様に、セディグラフによる沈降法に従って測定したものといえるから、甲1発明における「D30」及び「D70」は、それぞれ、前記「d30値」及び「d70値」に相当するものといえるので、甲1発明における「d30値」は概略0.8μmといえ、「d70値」は概略1.8μmといえる。 そうすると、甲1発明における「峻度」は、100×(d30/d70)=100×(概略0.8μm/概略1.8μm)=概略44.4と求められるから、本件発明1において「30.0以上の峻度」「を有」することを満たすといえる。 更に、本件特許明細書の前記記載によれば、本件発明1における「ラメラリティーインデックス」は、湿式マルバーン(Malvern)レーザー散乱法(規格AFNOR NFX11-666又はISO 13329-1)による粒径測定によって得られる平均粒径(d50)、すなわち「d平均」の値と、セディグラフ(sedigraph)(規格AFNOR X11-683又はISO 13317-3)を用いて沈降作用によって得られる中位径の値「d50」から、 [図:0001417611000006.jpg] の式により求められるものであるが、「d平均」は、ミー理論の適用に基づいてレーザー光の回折を利用して測定可能であり、例えばマルバーンマスターサイザーS(Malvern Instrumentsによって供給される)により測定されるものである。 ここで、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲1発明における「メジアン径-D50」は、本件発明1における「d50」に相当するといえるから、甲1発明における「d50」は1.0μmといえる。 また、甲1発明において、レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定により測定された「メジアン径-D50」は、その測定方法が、ミー理論の適用に基づいてレーザー光の回折を利用するマルバーンマスターサイザーによる測定である点で、本件発明1における「d平均」と概略合致するといえるから、甲1発明におけるレーザーマスターサイザーによる測定により測定された「メジアン径-D50」は、前記「d平均」に相当するといえるので、甲1発明における「d平均」は、3.9μmといえる。 すると、甲1発明における「ラメラリティーインデックス」は、(d平均-d50)/d50=(3.9μm-1.0μm)/1.0μm=2.9と求められるから、本件発明1において「2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有」することを満たす。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「0.5~5.0μmのd50、30.0以上の峻度及び2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有する、タルク粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」のに対して、甲1発明が「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」か否かが明らかでない点。 (エ) 始めに、前記(ウ)の相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲1発明は、「スクリーン残留物(アルパインエアジェット)≧15μm:0.03%」であるから、15μm以上の粒子の含有量が0.03%であることがわかる。そして、0.03%は300ppmと言い換えることができるから、甲1発明は、15μm以上の粒子の含有量が300ppmであることが理解できる。 ところが、甲1発明の15μm以上の粒子の含有量が300ppmであるとしても、甲1発明が「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」とはいえない。 また、前記甲第3号証は、パトリス・モノー氏の宣誓供述書であり、その供述内容は、前記(1)ウで摘記したとおり、「私は、技術データシートなどの商業用技術文書や見本市や国際ショーなどの公共イベントから、タルク粒子Jetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77について知っています。」、「これらのタルク粒子はすべて、2014年9月1日より前に市販されていました。」、「45μmを超える粒子の通常の含有量は一般に無視できるものと考えられており、約3~5ppm未満の量は標準的な品質管理方法を使用しても検出できません。したがって、これらの製品はすべて、45μm付近の寸法限界で1~3ppmを超える残留物を含む可能性が高くなります。1~3ppmの限界は非常に低く、通常の方法の検出レベルを超えているため、45μmの上下の部分を測定する方法を指定することが重要です。」、「当業者は、例えば動的分級を使用して、45μmを超える粒子を除去しようとするでしょう。これは統計的なプロセスであり、たとえ非常に少量、すなわち250ppm未満、または100ppm未満、または50ppm未満の範囲であっても、制限を超える残留物が存在する可能性が常にあることを意味することを強調することが重要です。なぜなら、上で述べたように、標準的な品質管理方法の検出限界は約3~5ppmであるためです。」というものであって、市販されているタルク粒子(Jetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77等)を含むタルク粒子一般に該当するであろう事項を供述したにとどまり、パトリス・モノー氏が、「Jetfine3CA」等の「タルク粒子」について実際に分析を行って「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ことを確認したことを供述するものではないから、甲第3号証の供述内容から、「Jetfine3CA」等の「タルク粒子」が、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ことを確かな技術事項として認定することはできないので、甲第3号証の供述内容を踏まえても、前記相違点1が実質的な相違点でないとはいえない。 したがって、前記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 更に、本件発明2~4、9及び15について検討しても事情は同じである。 (オ) 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲1発明は、「Jetfine(R)3CA」として市販されている「タルク粒子」にすぎず、これを更に「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとする動機付けは存在しない。 また、前記(エ)に記載したのと同様の理由により、甲第3号証の供述内容を踏まえても、前記相違点1が容易想到であるとはいえないし、更に、甲第2号証については、下記(3)ア(エ)で述べるように、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ことは記載されておらず、その他の甲第4~8号証は、前記第4の3で述べたように、前記相違点1に係る「タルク粒子」の技術事項を開示するものではないから、これらの甲号証の記載によっても、前記相違点1が容易想到であるとはいえない。 そうすると、「タルク粒子」を「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとすることを開示した証拠はないから、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないので、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1と同様に、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」「タルク粒子」、との発明特定事項を有する本件発明2~15について検討しても事情は同じである。 イ 申立人の主張について (ア) 特許異議申立書における甲第1号証に基づく新規性欠如、進歩性欠如についての申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 a 甲第1号証における、粒径がメジアン径から外れるほど質量割合が小さくなる粒度分布曲線を考慮すると、粒径15μm以上の粒子が300ppmであるということは、粒径45μm以上の粒子は300ppmより少ないはずであり、300ppmは約100ppmに相当するといえるから、甲1発明は「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものといえるので、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(25ページ下から2行~26ページ9行)。 b 甲第1号証のセディグラフによる粒度分布のグラフから、粒径1μm、2μm、3μm、4μm、5μmの累積質量の数値を読み取り、正規確率紙に●でプロットし、粒径15μmで累積質量99.97%(100%-0.03%)の点も●でプロットし、本件特許明細書の段落【0040】の【表1】の実施例1のD95、D70、D50及びD30の粒径の累積質量と、粒径45μmの粒子が26ppm(0.0026%)であることから、このときの累積質量99.9974%(100%-0.0026%)を○でプロットし、比較例AのD95、D70、D50、D30の粒径の累積質量と、粒径45μmの粒子が1000ppm超(0.1%超)であることから、このときの累積質量99.9%(100%-0.1%)を△でプロットすると、下記参考図1のように、どのプロットも、粒径が大きくなるとともに累積質量が増加し、正規分布に近い分布であることが理解できる。 <参考図1> [図:0001417611000007.jpg] そして、前記参考図1の●プロットで示される粒度分布から、粒径45μmで累積質量が99.99%以上であること、すなわち粒径45μm以上の粒子が100ppm以下であることを理解できるから、甲1発明は、「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」蓋然性が極めて高く、また、甲1発明を、通常の粒度分布を考慮して「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとすることは当業者が容易になし得ることである(26ページ10行~27ページ5行)。 c 本件発明1は、甲第3号証に記載された事項を考慮すれば、甲1発明との間で実質的な相違点を有しないか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲第3号証の記載から、「Jetfine(R)3CA」において、45μmを超える粒子の含有量が検出限界の数ppmであるといえる(27ページ下から3行~28ページ3行)。 (イ) 以下、前記(ア)の主張について検討する。 a 始めに、前記(ア)aの主張について検討すると、甲第1号証に記載された粒度分布曲線から、甲1発明が「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものであることを読み取れるものではないし、粒径15μm以上の粒子が300ppmであることから、粒径45μm以上の粒子は300ppmより少ないといえるとしても、そこから進んで、300ppmは約100ppmに相当するといえるものでもないので、前記(ア)aの主張は採用できない。 b 次に、前記(ア)bの主張について検討すると、そもそも、甲第1号証のセディグラフによる粒度分布のグラフから、粒径1μm、2μm、3μm、4μm、5μmの累積質量の数値を正確に読み取れるものではない。 また、仮に、これらの数値が前記参考図1のように読み取れたとしても、前記参考図1においては、粒径45μmでの累積質量は●プロットされないし、本件特許明細書の実施例1や比較例Aの粒度分布に基づいて、甲1発明が「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものであるということもできない。 更に、前記(1)ア(ア)の欄外の記載からみれば、甲第1号証に記載された「Jetfine(R)3CA」のデータは、代表的なものではあるが、そもそも製造仕様ではないのであり、これらのことからみれば、甲1発明が「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものと理解することはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲1発明が、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」蓋然性が極めて高いとはいえない。 また、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ことが通常の粒度分布であることを裏付ける証拠もないから、甲1発明を「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとすることが、当業者が容易になし得ることであるともいえないので、前記(ア)bの主張も採用できない。 c 最後に、前記(ア)cの主張について検討すると、前記(1)ウの甲第3号証の記載によれば、前記ア(エ)及び(オ)でも述べたが、甲第3号証には、粗タルク及び最終タルク製品、例えばJetfine3CA、Jetfine1CA、SteamicT1CA、HAR-T84及びHAR-T77における45μmを超える粒子の通常の含有量は一般に無視できるものと考えられており、約3~5ppm未満の量では標準的な品質管理方法を使用しても検出できないこと、したがって、これらの製品はすべて、45μm付近の寸法限界で1~3ppmを超える残留物を含む可能性が高くなること、1~3ppmの限界は非常に低く、通常の方法の検出レベルを超えているため、45μmの上下の部分を測定する方法を指定することが重要であること、当業者は、サイズが45μmを超える粒子を除去しようとするとき、例えば動的分級を使用して、45μmを超える粒子を除去しようとするが、これは統計的なプロセスであり、たとえ非常に少量、すなわち250ppm未満、または100ppm未満、または50ppm未満の範囲であっても、制限を超える残留物が存在する可能性が常にあること、標準的な品質管理方法の検出限界は約3~5ppmであることが記載されているにすぎず、甲第3号証は、甲1発明に係る「Jetfine(R)3CA」が、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ことを開示するものとはいえない。 そうすると、甲第3号証に記載された事項を考慮したとしても、本件発明1が、甲1発明との間で実質的な相違点を有しないとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないので、前記(ア)cの主張も採用できない。 (ウ) 申立人意見書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 a 特許権者は、特許権者意見書において、甲第1号証は公開日が不明であり、先行技術文献として受け入れられるべきものではない旨を主張しているが、甲第1号証には、「POL/RTM-AO/GB/04/2008」という記載があるし、甲第4~7号証の記載から、甲第1号証は、Rio Tinto Mineralsのタルク部門であるLuzenacがIMERYSに買収された2011年8月1日より前の資料であることが裏付けられるから、甲第1号証は2008年4月に公知になったものと認められる(3ページ24行~4ページ下から2行)。 b 特許権者は、特許権者意見書において、甲第3号証は先行技術文献ではなく、甲第1号証の公開日を証明する証拠を提供するものでもなければ、「Jetfine(R)3CA」の粒度分布についての客観的な証拠を提供するものでもない旨を主張しているが、甲第3号証は、パトリス・モノー氏の宣誓供述書であり、甲第8号証の表紙には、出願人としてTALC DE LUZENACの記載があり、発明者の一人としてパトリス・モノー氏も記載されている。 すると、パトリス・モノー氏は、甲第1号証に記載されたLuzenacに所属していた経歴があり、タルク分野における長年の経験を有する熟練の専門家といえるから、甲第3号証におけるパトリス・モノー氏の宣誓供述内容は信頼できるものであり、甲第1号証に記載された事項を裏付ける証拠として採用できるものである(4ページ最終行~5ページ20行)。 c 甲第1号証には、「Jetfine(R)3CA」のセディグラフによる粒度分布におけるメジアン径D50として1.0μmが記載されており、セディグラフによる粒度分布のグラフから、約1.8μmの「d70値」、約0.8μmの「d30値」が開示されていると読め、これより「峻度」は約44と計算され、また、レーザーマスターサイザーによる粒度分布におけるメジアン径D50として、3.9μmが記載されており、ディグラフによる粒度分布におけるメジアン径D50とレーザーマスターサイザーによる粒度分布におけるメジアン径D50とから、ラメラリティーインデックスは2.9と計算される。 これに対して、特許権者は、特許権者意見書において、セディグラフによる粒度分布におけるメジアン径D50とグラフに示されている粒子分布(PSD)カーブが合致しておらず、グラフから前記「Jetfine(R)3CA」のラメラリティーインデックスを計算すると2.25となり、本件発明1を満たさない旨を主張しているが、甲第1号証には、セディグラフによる粒度分布として「Median Diameter-D50:1.0(1.1)*μm」と明記されているから、「Jetfine(R)3CA」のラメラリティーインデックスは2.9であり、本件発明1を満たす。 また、特許権者は、特許権者意見書において、甲第1号証に記載された粒度分布の数値と粒子分布(PSD)カーブから読み取られる数値が合致しないから、「Jetfine(R)3CA」の「峻度」が30.0以上であるか否かも明らかでない旨を主張するが、「Jetfine(R)3CA」の「峻度」は、セディグラフによる粒度分布のグラフから「d70値」及び「d30値」を読んで計算したものであり、グラフから読んだ数値のみを用いて求めたものであるから、「Jetfine(R)3CA」の「峻度」が明らかでないとはいえない。 更に、特許権者は、特許権者意見書において、いわゆる圧縮タルクについての甲第1号証のデータは物理的な意味を理解することができず、本件発明は圧縮や塊でなく、タルク粒子に関するものであるから、圧縮タルクについてのデータは本件発明の主題に関連しない旨を主張するが、甲第1号証の「* Data obtained on compacted talc」の記載は、セディグラフによる粒度分布の「Median Diameter-D50:1.0(1.1)*μm」及びレーザーマスターサイザーによる粒度分布の「Median Diameter-D50:3.9(5)*μm」という記載における「(1.1)*」、「(5)*」の数値の注釈であり、注釈がつかない甲第1号証のデータはタルク粒子に関するものであると認められ、これらのデータは本件発明の主題に関連する。 そして、本件発明1と甲1発明とは前記相違点1において一応相違するが、甲第3号証の記載も考慮して、前記相違点1は実質的な相違点とはいえないし、甲第3号証の記載によらなくても、甲第1号証のセディグラフによる粒度分布のグラフを正規確率紙で示したグラフから、甲1発明が前記相違点1に係る発明特定事項を有する蓋然性が極めて高いし、甲1発明を、通常の粒度分布を考慮して前記相違点1に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることである(5ページ21行~7ページ下から2行)。 (エ) 以下、前記(ウ)の主張について検討する。 a 始めに、前記(ウ)a及びbの主張について検討すると、甲第1号証の公知日が2008年4月であり、甲第3号証におけるパトリス・モノー氏の宣誓供述内容が信頼できるとしても、前記ア(エ)、(オ)に記載した理由により、本件発明1が甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことに変わりはないから、前記(ウ)a及びbの主張は採用できない。 b 次に、前記(ウ)cの主張について検討すると、前記(ウ)cの主張は、総じて、特許権者による特許権者意見書の主張は不当であるから、本件発明1は甲1発明であるか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることをいうものと解される。 ところが、前記特許権者の主張の当否に関わらず、前記ア(エ)、(オ)に記載した理由により、本件発明1が甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことに変わりはないから、前記(ウ)cの主張も採用できない。 (オ) したがって、特許異議申立書及び申立人意見書における申立人の主張はいずれも採用できない。 ウ 小括 よって、本件発明1~4、9及び15は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1~15は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、前記第4の1(1)、同2(1)の特許異議の申立て理由及び前記第5の1(1)の取消理由はいずれも理由がない。 (3) 甲第2号証を主引用例とした場合について ア 対比・判断 (ア) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「Jetfine(R)1CA」は、「ポリマーの核形成のために特別に開発された超微粒子タルク(ナノ粒子を70%含む)」であるから、本件発明1における「タルク粒子」に相当する。 ここで、甲第2号証には、「レーザー回折、ミー理論(ISO 13320-1)に基づくレーザーマスターサイザーによる測定」による「メジアン径-D50」が圧縮タルクのデータしか記載されていないので、「沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布」についても、前記圧縮タルクのデータに注目して検討すると、甲2発明は、「沈降解析、ストークスの法則(ISO 13317-3)に基づくセディグラフによる粒度分布によれば、メジアン径-D50」の「(圧縮タルクで得られたデータが0.9μm)」であり、前記(2)ア(ア)と同様の理由により、本件発明1において「約0.5~5.0μmの範囲のd50」「を有」することを満たすといえる。 (イ) また、甲第2号証には「峻度」及び「ラメラリティーインデックス」が記載されていないが、前記(2)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明における「d30値」は概略0.5μm、「d70値」は概略1.3μmといえるから、「峻度」は、100×(d30/d70)=100×(概略0.5μm/概略1.3μm)=概略38.5と求められるので、本件発明1において「30.0以上の峻度」「を有」することを満たすといえる。 更に、前記(2)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明における「d50」は0.9μmといえ、「d平均」は4.9μmといえるから、「ラメラリティーインデックス」は、(d平均-d50)/d50=(4.9μm-0.9μm)/0.9μm=4.4と求められるので、甲2発明における「ラメラリティーインデックス」は、本件発明1において「2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有」することを満たさない。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲2発明とは、 「0.5~5.0μmのd50、30.0以上の峻度を有する、タルク粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2:本件発明1は、「2.8~4.0のラメラリティーインデックスを有」するのに対して、甲2発明は「ラメラリティーインデックス」が「4.4」である点。 ・相違点3:本件発明1は、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」のに対して、甲2発明が「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」か否かが明らかでない点。 (エ) 事案に鑑み、始めに、前記(ウ)の相違点3が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記相違点3は前記(2)ア(ウ)の相違点1と同じものであるから、前記(2)ア(エ)に記載したのと同様の理由により、実質的な相違点である。 したがって、前記(ウ)の相違点2について検討するまでもなく、本件発明1が甲2発明であるとはいえない。 更に、本件発明2~4、9及び15について検討しても事情は同じである。 (オ) 次に、前記相違点3の容易想到性について検討すると、前記(2)ア(オ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明を「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとする動機付けは存在しないし、甲2発明において、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないから、前記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1と同様に、「100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」「タルク粒子」、との発明特定事項を有する本件発明2~15について検討しても事情は同じである。 イ 申立人の主張について (ア) 特許異議申立書における甲第2号証に基づく新規性欠如、進歩性欠如についての申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 a 甲第2号証における、粒径がメジアン径から外れるほど質量割合が小さくなる粒度分布曲線を考慮すると、粒径15μm以上の粒子が200ppmであるということは、粒径45μm以上の粒子は200ppmより少ないはずであり、200ppmは約100ppmに相当するといえるから、甲2発明は「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものといえるので、本件発明1は甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(34ページ1行~11行)。 b 甲第2号証のセディグラフによる粒度分布のグラフから、粒径1μm、2μm、3μm、4μmの累積質量の数値を読み取り、正規確率紙に●でプロットし、粒径15μmで累積質量99.98%(100%-0.02%)の点も●でプロットし、本件特許明細書の段落【0040】の【表1】の実施例1のD95、D70、D50及びD30の粒径の累積質量と、粒径45μmの粒子が26ppm(0.0026%)であることから、このときの累積質量99.9974%(100%-0.0026%)を○でプロットし、比較例AのD95、D70、D50、D30の粒径の累積質量と、粒径45μmの粒子が1000ppm超(0.1%超)であることから、このときの累積質量99.9%(100%-0.1%)を△でプロットすると、下記参考図2のように、どのプロットも、粒径が大きくなるとともに累積質量が増加し、正規分布に近い分布であることが理解できる。 <参考図2> [図:0001417611000008.jpg] そして、前記参考図2の●プロットで示される粒度分布から、粒径45μmで累積質量が99.99%以上であること、すなわち粒径45μm以上の粒子が100ppm以下であることを理解できるから、甲2発明は、「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」蓋然性が極めて高く、また、甲2発明を、通常の粒度分布を考慮して「約100ppm以下の45μm以上の粒径の粒子を含む」ものとすることは当業者が容易になし得ることである(34ページ12行~35ページ7行)。 c 本件発明1は、甲第3号証に記載された事項を考慮すれば、甲2発明との間で実質的な相違点を有しないか、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲第3号証の記載から、「Jetfine(R)1CA」において、45μmを超える粒子の含有量が検出限界の数ppmであるといえる(36ページ1行~6行)。 (イ) 以下、前記(ア)の主張について検討すると、前記(ア)の主張は、総じて、前記(2)イ(ア)の主張と実質的に同じものであるから、前記(2)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、いずれも採用できない。 ウ 小括 したがって、本件発明1~4、9及び15は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1~15は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、前記第4の1(2)及び同2(2)の特許異議の申立て理由は理由がない。 (4) まとめ よって、前記第4の1、同2及び前記第5の1(1)の特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての特許異議の申立て理由及び取消理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件訂正により請求項1~4、6、8及び11の「約」は削除され、本件発明1~4、6、8及び11における各数値範囲は明確になったから、本件発明1~15は明確である。 したがって、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するといえるから、前記第4の3、第5の1(2)及び同2の特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)についての特許異議の申立て理由及び取消理由はいずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700700

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    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、537・C01B、853・C01B
  • 2021-700412異議申立 / 2022-01-26 / 訂正認容酸素8員環ゼオライト及びAEI型ゼオライトの製造方法
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、537・C01B、853・C01B

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