特許異議申立
2023-700290
耕深表示システム
- 審判番号
- 2023-700290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-206291
- 登録番号
- 7201238
- 請求日
- 2023年03月16日
- 審決日
- 2023年09月28日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】小橋工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
- 【異議申立人】松山 株式会社
- 【異議申立人代理人】樺澤 聡
- 【異議申立人代理人】山田 哲也
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 佐藤 史彬
- 分類
- P1651.561-Y (A01B) / P1651.537-Y (A01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7201238号発明「耕深表示システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7201238号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7201238号の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年7月22日に出願された特願2015-145247号の一部を、令和1年11月14日に新たな特許出願としたものであって、令和4年12月26日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年3月16日に特許異議申立人 松山株式会社に(以下「申立人」という。)より、請求項1に係る特許について特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
特許第7201238号(以下「本件特許」という。)の請求項1の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
農作業機と当該農作業機の耕深を示す画像を表示する携帯端末とを含む耕深表示システムであって、
前記農作業機は、
耕耘作業を行うロータリ作業部と、
前記ロータリ作業部の上方を覆うカバー部と、
前記カバー部の後端部に上下方向に回動自在に配設されて前記ロータリ作業部により耕耘された耕土を整地する整地部材と、
前記耕深に応じた前記整地部材の回動角度を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記整地部材の回動角度に応じた情報を前記携帯端末に送信する送信部と、を備え、
前記農作業機の耕深を示す画像は、圃場に対する前記整地部材の回動角度が、前記情報に対応する前記農作業機の耕深の変化に伴って変化する、農作業機の側面側の構造を示す画像である、耕深表示システム。」
3 申立理由の概要
申立人は、本件発明に係る特許を取り消すべき理由として、以下の3点を主張している。
(1)取消理由1(新規事項追加)
本件特許の手続に係る令和3年1月15日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
本件補正後の本件発明は、耕深に応じた整地部材の回動角度を検出する検出部として、ポテンショメータ以外の手段を用いるものも包含しているが、該検出部として、ポテンショメータ以外の手段を用いるものは当初明細書等には記載も示唆もされていないから、本件補正(請求項1の「ポテンショメータ」を「検出部」に上位概念化した補正事項)補正した本件補正は、当初明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものである。
また、審判請求書(甲第3号証)において、角度を検出するセンサとしてポテンショメータ以外の手段(例えば、ロータリエンコーダ)を用いることは、当該農作業機の技術分野においける出願時の技術常識であると主張し、参考として特開2007-15942号公報(甲第4号証)や特開2008-43205号公報(甲第5号証)を挙げているが、両公報は、農作業機と分野が異なっており、仮に甲第5号証記載の発明が、本件発明と同様の農作業機の技術分野に属するものであったとしても、たった1つの公知文献のみでは、当該農作業機の分野における技術常識とはいえない。
(2)取消理由2(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明の「農作業機の側面側の構造」が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記」という語句が付いた「前記農作業機は」、「前記農作業機の耕深を示す画像」及び「前記農作業機の耕深の変化」という記載がある一方、「前記」という語が付いていない「農作業機の側面側の構造」という記載があることから、「農作業機の側面側の構造」中の「農作業機」は、他の「前記農作業機」とは異なるものであるので、本件発明の「農作業機の側面側の構造」が、どのような構成からなる農作業機の側面側の構造であるのか当業者であっても理解できない。
(3)取消理由3(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記農作業機の耕深を示す画像は、圃場に対する前記整地部材の回動角度が、前記情報に対応する前記農作業機の耕深の変化に伴って変化する、農作業機の側面側の構造を示す画像である」と記載されていることから、本件発明の耕深を示す画像として、ロータリ作業部、カバー部及び整地部材等を含まない農作業機の側面側の構造を示す画像を表示するものも包含しているが、そのような農作業機の側面側の構造を示す画像を表示するものは、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていない。
4 当審の判断
(1)取消理由1について
ア 本件特許の手続に係る令和3年1月15日付け手続補正書(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1において、「前記耕深に応じた前記整地部材の回動角度を検出する」ものとして、本件補正前に「ポテンショメータ」であったものを、「検出部」と補正した(以下「補正事項」という。)。
そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。また、願書に最初に添付した特許請求の範囲及び図面を合わせて「当初明細書等」という。)において、エプロン(整地部材)の回動角度を検出するものとして、ポテンショメータが記載されているものの、その他の回動角度を検出する装置は記載されていない。
イ しかしながら、本件特許の原出願の出願前に、農作業機を含め多くの分野においては、回動角度を検出する装置として、当初明細書に記載されたポテンショメータに加え、ロータリエンコーダ等が周知技術として用いられている。
そして、当初明細書の記載によれば、本件発明は、解決しようとする課題として、「この泥水や泥が、・・・従来の代掻き作業機の耕深表示部750にある耕深を示す指標である記号・・・に付着した場合には、作業者が記号を読み取れないとう問題が生じる」(段落【0007】)ことから、「泥水や泥が耕深表示部に付着せず、作業者が耕深を示す指標を確認することができるようにする」(段落【0008】)との目的としていることからみて、整地装置の回動角度を検出するものとして、ポテンショメータに限定して解釈する理由はない。
また、当初明細書に記載された各実施形態において、ポテンショメータ以外の周知の回動角度を検出する装置に代えたとしても、各実施形態の構成が実施不可能になるとか、特別な改良が必要になる等の事情は見当たらない。
以上のことから、上記補正事項は、当初明細書等の記載及び技術常識に基づいて自明な事項に補正するものであるから、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、よって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 申立人は、上記3(1)のとおり主張するが、上記補正事項が、当初明細書に記載がされていないとしても、また、特許権者が審判請求書で挙げた技術常識を示す参考文献の番号に誤記があったり、そのため、参考文献と看做される文献が1件しかないとしても、上記補正事項は、上記イで検討したとおり、当初明細書等の記載及び技術常識に基づいて自明な事項に補正するものであるから、申立人の主張は採用できない。
エ 以上のとおりであるから、本件補正は、新規事項の追加にあたらず、申立人が主張する取消理由1は理由がない。
(2)取消理由2について
申立人は、請求項1における「農作業機の側面側の構造」中の「農作業機」は、他の「前記農作業機」とは異なるものであるので、本件発明の「農作業機の側面側の構造」が、どのような構成からなる農作業機の側面側の構造であるのか当業者であっても理解できない旨、主張する。
しかしながら、上記の指摘された「農作業機の側面側の構造」との記載の前後の記載を含む、「前記農作業機の耕深を示す画像は、圃場に対する前記整地部材の回動角度が、前記情報に対応する前記農作業機の耕深の変化に伴って変化する、農作業機の側面側の構造を示す画像である、」との記載をみれば、「前記農作業機の耕深を示す画像」は、「農作業機の側面側の構造を示す画像である」を示していることは明らかであるから、「前記」との語句が付されていない「農作業機」とは、「前記」した「農作業機」であって、「農作業機の側面側の構造」とは、「前記」した「農作業機の側面側の構造」であるといえる。
よって、上記で指摘する「農作業機の側面側の構造」との記載は明確であり、申立人の主張は採用できないから、申立人が主張する明確性要件に関する取消理由2は理由がない。
(3)取消理由3について
申立人は、請求項1に記載された「農作業機の側面側の構造を示す画像」は、ロータリ作業部、カバー部及び整地部材等を含まない農作業機の側面側の構造を示す画像を表示するものも包含しているが、そのような農作業機の側面側の構造を示す画像を表示するものは、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていない旨、主張する。
しかしながら、請求項1には、「前記農作業機の耕深を示す画像は、圃場に対する前記整地部材の回動角度が、前記情報に対応する前記農作業機の耕深の変化に伴って変化する、農作業機の側面側の構造を示す画像である」と記載されていることからみて、「前記農作業機の耕深を示す画像」は、「農作業機の側面側の構造を示す画像である」を示していることは明らかであるから、「農作業機の側面側の構造を示す画像」とは、請求項1において「前記農作業機」が備えるとされる「ロータリ作業機」、「カバー部」、「整地部材」等を含む画像を意味することは明らかである。
上記のとおりであるから、「農作業機の側面側の構造を示す画像」は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の主張は採用できないから、申立人が主張するサポート要件に関する取消理由3は理由がない。
5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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