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特許無効審判

2024-800067

エプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備える耕耘作業機

審判番号
2024-800067
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2016-169029
登録番号
6356189
請求日
2024年05月16日
審決日
2025年05月15日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】松山 株式会社
  • 【請求人代理人】樺澤 聡
  • 【請求人代理人】山田 哲也
  • 【被請求人】小橋工業 株式会社
  • 【被請求人代理人】高橋 雄一郎
  • 【被請求人代理人】林 佳輔
  • 【被請求人代理人】望月 尚子
  • 【被請求人代理人】荒尾 達也
  • 【被請求人代理人】福永 健司
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 土屋 真理子
  • 審判官 藤脇 沙絵
分類
P1113.113-Y (A01B) / P1113.121-Y (A01B) / P1113.161-Y (A01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条の2、特許法第44条第1項、特許法第44条第2項、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第6356189号発明「エプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備える耕耘作業機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第6356189号の請求項1ないし10に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない 審判費用は請求人の負担とする との審決を求める。 第2 手続の経緯について 1 出願分割の経緯の概略 本件無効審判の請求に係る特許6356189号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成24年11月16日に出願した特願2012-251837号の一部を、平成28年8月31日に新たな特許出願(特願2016-169029号)としたものである。 2 本件特許の出願から設定登録までの経緯の概略 本件特許の請求項1ないし10に係る発明についての、出願から設定登録までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 平成28年 8月31日 :出願(特願2016-169029号) 平成28年 9月30日 :上申書及び手続補正書の提出 平成29年 9月28日付け:拒絶理由通知 同年11月27日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 4月 5日付け:拒絶理由通知 同年 5月16日 :意見書の提出 同月24日付け:特許査定 同年 6月22日 :設定登録 3 本件無効審判の経緯の概略 本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和 6年 5月16日 :審判請求書の提出 同年 7月17日 :答弁書の提出 同年11月21日付け:審理事項通知 同年12月26日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)(以 下、「請求人陳述要領書」という。) 令和 7年 1月 8日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)( 以下、「被請求人陳述要領書」という。) 同年 2月 3日 :上申書の提出(請求人) 同月 6日 :口頭審理(以下、本口頭審理の調書を「口 頭審理調書」という。) 第3 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~10の記載は、次のとおりである。 (当審において適宜改行を整え、分説記号1A~10Dを審判請求書に従い付した。) 「【請求項1】 1A 耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構であって、 1B 弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と、 1C 前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 1D 前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される、 1E エプロン跳ね上げ補助機構。 【請求項2】 2A 前記伸縮部材及び前記リンク部材を支持する支持部材をさらに有する、 2B 請求項1に記載のエプロン跳ね上げ補助機構。 【請求項3】 3A 前記リンク部材と前記エプロンとの間に配置された接続部材をさらに有する、 3B 請求項1又は2に記載のエプロン跳ね上げ補助機構。 【請求項4】 4A 前記接続部材は、長さ調整可能である、 4B 請求項3に記載のエプロン跳ね上げ補助機構。 【請求項5】 5A 前記リンク部材は、 5B 前記伸縮部材の伸縮動作に伴い前後方向に移動するリンクアーム部材と、 5C 前記リンクアーム部材に接続され、前記リンクアーム部材の移動に伴い回転するリンクプレートと、を有する、 5D 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエプロン跳ね上げ補助機構。 【請求項6】 6A 作業ロータと、該作業ロータの上方を覆うシールドカバーと、該シールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンと、該エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構とを有する耕耘作業機であって、 6B 前記エプロン跳ね上げ補助機構は、 6C 弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と、 6D 前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 6E 前記エプロン跳ね上げ補助機構は、前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に固定される、 6F 耕耘作業機。 【請求項7】 7A 前記エプロン跳ね上げ補助機構は、前記伸縮部材及び前記リンク部材を支持する支持部材をさらに有する、 7B 請求項6に記載の耕耘作業機。 【請求項8】 8A 前記エプロン跳ね上げ補助機構は、前記リンク部材と前記エプロンとの間に配置された接続部材をさらに有する、 8B 請求項6又は7に記載の耕耘作業機。 【請求項9】 9A 前記接続部材は、長さ調整可能である、 9B 請求項8に記載の耕耘作業機。 【請求項10】 10A 前記リンク部材は、 10B 前記伸縮部材の伸縮動作に伴い前後方向に移動するリンクアーム部材と、 10C 前記リンクアーム部材に接続され、前記リンクアーム部材の移動に伴い回転するリンクプレートと、を含む、 10D 請求項6乃至9のいずれか一項に記載の耕耘作業機。」 第4 請求人の主張する無効理由、証拠方法及び主張の概要 1 請求人の主張する無効理由 請求人の主張する無効理由は、以下のとおりである(審判請求書5頁~6頁、及び口頭審理調書)。 (1)無効理由1(新規性欠如、進歩性欠如) 本件発明1ないし3、5ないし8及び10は、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 なお、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし3、5ないし8及び10は、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基いて、又は本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 また、本件発明4及び9は、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基いて、又は本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1ないし10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(新規性欠如、進歩性欠如) 本件発明1、5、6及び10は、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第8号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 なお、仮に同一でないとしても、本件発明1、5、6及び10は、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第8号証に記載された発明に基いて、又は本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第8号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1、5、6及び10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3(拡大先願違反) 本件発明1、5、6及び10は、本件特許の原出願の日前の他の特許出願であって本件特許の原出願後に出願公開された先願である特願2012-104775号(特開2013-230129号公報:甲第12号証)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。 すなわち、本件発明1、5、6及び10は、甲第12号証(先願明細書)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1、5、6及び10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4(分割要件違反に基づく新規性欠如、進歩性欠如) 本件特許の出願は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しない。このことから、本件発明1ないし10は、本件特許の現実の出願日である平成28年8月31日より前に頒布された刊行物である甲第13号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 なお、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし10は、本件特許の現実の出願日である平成28年8月31日より前に頒布された刊行物である甲第13号証に記載された発明に基いて、又は本件特許の現実の出願日である平成28年8月31日より前に頒布された刊行物である甲第13号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1ないし10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 2 証拠方法 請求人が提出した証拠は、次のとおりである。 甲第1号証 :「コバシツーウェイローター SUPER SERIES Earth 取扱説明書」 甲第2号証 :「農村ニュース」 第2722号 第10頁 甲第3号証 :「農機新聞」 第3385号 第13頁 甲第4号証 :「農経しんぽう」 2012年7月2日号 甲第5号証 :証明書 甲第6号証 :写真撮影・測定結果報告書 甲第7号証 :「部品表 コバシツーウェイローター」 甲第8号証 :特開2011-239740号公報 甲第9号証 :特開2006-325526号公報 甲第10号証:特開2010-63367号公報 甲第11号証:拒絶理由通知書 甲第12号証:特開2013-230129号公報 甲第13号証:特開2014-97042号公報 以下、各甲号証の番号に従って「甲1」などということがある。 3 請求人の主張の概要 請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 (1)本件発明において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成について 本件発明1の「・・・着脱可能に装着される、エプロン跳ね上げ補助機構」は、本件特許の請求項1の記載からみて明らかなように、少なくとも伸縮部材及びリンク部材を有するエプロン跳ね上げ補助機構(伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構を含む)が着脱可能に装着されることを特定するものである。 また、本件発明6の「エプロン跳ね上げ補助機構は、・・・着脱可能に固定される」は、本件特許の請求項6の記載からみて明らかなように、少なくとも伸縮部材及びリンク部材を有するエプロン跳ね上げ補助機構(伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構を含む)が着脱可能に固定されることを特定するものである。 そして、本件特許の特許請求の範囲の記載をみても、エプロン跳ね上げ補助機構がユニット化されたものであることについて何ら特定されていないから、本件発明では、当該補助機構が1つのキット(ユニット)として着脱可能であるものに限定されない。(請求人陳述要領書5頁2行~15行、及び17頁10行~18頁22行) (2)無効理由1について ア 甲1が本件特許の原出願前に頒布された刊行物であることについて 甲1に係る取扱説明書は、作成日が2012年8月1日であり、同取扱説明書で説明が行われる製品に関する甲2~甲5の記載内容より、甲1が本件特許の原出願前に頒布された刊行物であることは明らかである。(審判請求書10頁3行~10行) イ 甲5~甲7の記載の参酌の可否について 甲1に記載された発明を認定するうえで、甲1に記載された型式のローターに係る甲5~甲7の記載は、参酌することができる。(審判請求書18頁5行~19頁、請求人陳述要領書3頁16行~最終行) ウ 甲1に記載された発明について 甲1には、次の甲1発明A、及び甲1発明Bが記載されている。(審判請求書17頁) 【甲1発明A】 1A:耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンの跳ね上げを補助するクイックアシストであって、 1B:弾性力により伸縮動作を行うガススプリングと、 1C:前記ガススプリングの一端に接続され、前記ガススプリングの伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 1D:前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される、 1E:クイックアシスト。 【甲1発明B】 6A:作業ロータと、該作業ロータの上方を覆うシールドカバーと、該シールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンと、該エプロンの跳ね上げを補助するクイックアシストとを有する耕耘作業機であって、 6B:前記クイックアシストは、 6C:弾性力により伸縮動作を行うガススプリングと、 6D:前記ガススプリングの一端に接続され、前記ガススプリングの伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 6E:前記クイックアシストは、前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に固定される、 6F:耕耘作業機。 エ 本件発明1について 本件発明1と甲1発明Aとは、すべての構成で一致するから、本件発明1は甲1発明Aと同一である。 また、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術(少なくとも公知技術)である。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書20頁2行~17行) オ 本件発明2、本件発明3及び本件発明5について 本件発明2の構成2A、本件発明3の構成3A、及び本件発明5の構成5Aないし5Cは、甲1に記載されている。 したがって、本件発明2、本件発明3及び本件発明5は、甲1に記載された発明と同一である。 また、本件発明2、本件発明3及び本件発明5は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書第20頁18行~21頁8行、同頁17行~22頁2行) カ 本件発明4について 本件発明4の構成4Aは、当業者が必要に応じて適宜行う設計事項に過ぎない。 したがって、本件発明4は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書21頁9行~16行) キ 本件発明6について 本件発明6と甲1発明Bとは、すべての構成で一致するから、本件発明6は甲1発明Bと同一である。 また、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術(少なくとも公知技術)である。 したがって、本件発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書22頁3行~18行) ク 本件発明7、本件発明8及び本件発明10について 本件発明7の構成7A、本件発明8の構成8A、及び本件発明10の構成10Aないし10Cは、甲1に記載されている。 したがって、本件発明7、本件発明8及び本件発明10は、甲1に記載された発明と同一である。 また、本件発明7、本件発明8及び本件発明10は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書22頁19行~23頁12行、同頁21行~24頁6行) ケ 本件発明9について 本件発明9の構成9Aは、当業者が必要に応じて適宜行う設計事項に過ぎない。 したがって、本件発明9は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書23頁13行~20行) (3)無効理由2について ア 甲8に記載された発明について 甲8には、次の甲8発明A、及び甲8発明Bが記載されている。(審判請求書31頁1行~32頁3行) 【甲8発明A】 1A:耕耘整地作業をする農作業機1に設けられた耕耘体11の上方を覆うカバー部10の後端部に上下方向に回転可能に設けられた整地体(第1整地体18のみを有する構成の整地体)16を上方に付勢してこの整地体16の跳ね上げを補助する上方付勢機構であって、 1B:弾性力により伸縮動作を行う引張コイルばね61と、 1C:前記引張コイルばね61の一端に接続され、前記引張コイルばね61の伸縮動作に伴い回転動作を行う連結体31と、 1F:前記引張コイルばね61の他端に接続された回動体47と、 1G:前記回動体47が回動可能に連結された操作体46と、を有し、 1D:前記カバー部10及び前記整地体16の上方に着脱可能に装着される、 1E:上方付勢機構。 【甲8発明B】 6A:耕耘体11と、該耕耘体11の上方を覆うカバー部10と、該カバー部10の後端部に上下方向に回転可能に設けられた整地体(第1整地体18のみを有する構成の整地体)16と、該整地体16を上方に付勢してこの整地体16の跳ね上げを補助する上方付勢機構とを有する、耕耘整地作業をする農作業機1であって、 6B:前記上方付勢機構は、 6C:弾性力により伸縮動作を行う引張コイルばね61と、 6D:前記引張コイルばね61の一端に接続され、前記引張コイルばね61の伸縮動作に伴い回転動作を行う連結体31と、 6G:前記引張コイルばね61の他端に接続された回動体47と、 6H:前記回動体47が回動可能に連結された操作体46と、を有し、 6E:前記上方付勢機構は、前記カバー部10及び前記整地体16の上方に着脱可能に固定される、 6F:農作業機1。 イ 本件発明1について 本件発明1と甲8発明Aとは、すべての構成で一致するから、本件発明1は甲8発明Aと同一である。 また、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術(少なくとも公知技術)である。 したがって、本件発明1は、甲8に記載された発明に基づいて、又は、甲8に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書35頁2行~36頁6行) ウ 本件発明5について 本件発明5の構成5Aないし5Cは、甲8に記載されている。 したがって、本件発明5は、甲8に記載された発明と同一である。 また、本件発明5は、甲8に記載された発明に基づいて、又は、甲8に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書36頁7行~同頁16行) エ 本件発明6について 本件発明6と甲8発明Bとは、すべての構成で一致するから、本件発明6は甲8発明Bと同一である。 また、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術(少なくとも公知技術)である。 したがって、本件発明6は、甲8に記載された発明に基づいて、又は、甲8に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書36頁17行~37頁最終行) オ 本件発明10について 本件発明10の構成10Aないし10Cは、甲8に記載されている。 したがって、本件発明10は、甲8に記載された発明と同一である。 また、本件発明10は、甲8に記載された発明に基づいて、又は、甲8に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書38頁1行~同頁10行) (4)無効理由3について ア 甲12に記載された発明について 甲12には、次の甲12発明A、及び甲12発明Bが記載されている。(審判請求書45頁1行~同頁最終行) 【甲12発明A】 1A:耕耘整地作業をする農作業機1に設けられた耕耘体11の上方を覆う耕耘カバー部13の後端部に上下方向に回転可能に設けられた整地体(第1整地板23のみを有する構成の整地体)21を上方に付勢してこの整地体21の跳ね上げを補助する上方付勢機構であって、 1B:弾性力により伸縮動作を行う第1ガススプリング42と、 1C:前記第1ガススプリング42の一端に接続され、前記第1ガススプリング42の伸縮動作に伴い回転動作を行う連結手段32と、を有し、 1D:前記耕耘カバー部13及び前記整地体21の上方に着脱可能に装着される、 1E:上方付勢機構。 【甲12発明B】 6A:耕耘体11と、該耕耘体11の上方を覆う耕耘カバー部13と、該耕耘カバー部13の後端部に上下方向に回転可能に設けられた整地体(第1整地板23のみを有する構成の整地体)21と、該整地体21を上方に付勢してこの整地体21の跳ね上げを補助する上方付勢機構とを有する、耕耘整地作業をする農作業機1であって、 6B:前記上方付勢機構は、 6C:弾性力により伸縮動作を行う第1ガススプリング42と、 6D:前記第1ガススプリング42の一端に接続され、前記第1ガススプリング42の伸縮動作に伴い回転動作を行う連結手段32と、を有し、 6E:前記上方付勢機構は、前記耕耘カバー部13及び前記整地体21の上方に着脱可能に固定される、 6F:農作業機1。 イ 本件発明1について 本件発明1と甲12発明Aとは、すべての構成で一致するから、本件発明1は甲12発明Aと同一である。 また、仮に同一でないとしても、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないから、両者は実質的に同一である。(審判請求書47頁2行~同頁20行) ウ 本件発明5について 本件発明5の構成5Aないし5Cは、甲12に記載されている。 したがって、本件発明5は、甲12に記載された発明と同一(少なくとも実質的に同一)である。(審判請求書47頁21行~48頁2行) エ 本件発明6について 本件発明6と甲12発明Bとは、すべての構成で一致するから、本件発明6は甲12発明Bと同一である。 また、仮に同一でないとしても、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例えば甲9及び甲10に記載されるように周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないから、両者は実質的に同一である。(審判請求書48頁3行~同頁最終行) オ 本件発明10について 本件発明10の構成10Aないし5Cは、甲12に記載されている。(当審注;審判請求書49頁5行に「甲第1号証」とあるのは、「甲第12号証」の誤記と認める。) したがって、本件発明10は、甲12に記載された発明と同一(少なくとも実質的に同一)である。(審判請求書47頁21行~48頁2行) (5)無効理由4について ア 分割要件違反について (ア)「エプロン跳ね上げ補助機構」について 本件発明1、及び本件発明6における、「伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構が、・・・シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着(固定)される」という構成は、原出願当初明細書に記載されていない。(審判請求書50頁3行~52頁4行) (イ)「伸縮部材」について 本件発明1の構成1B、及び本件発明6の構成6Cにおける、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」という構成は、原出願当初明細書に記載されていない。(審判請求書52頁5行~同頁13行) イ 分割要件違反に基づく新規性欠如及び進歩性欠如について 上記(ア)及び(イ)のとおり、本件特許に係る出願は、分割要件違反に該当するから、本件特許の出願日は遡及しない。 そして、本件発明1ないし10は、原出願の公開公報である甲13に記載された発明と同一である。 仮に同一でないとしても、本件発明1ないし10は、甲8に記載された発明に基づいて、又は、甲8に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲9及び甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書52頁14行~同頁最終行) 第5 被請求人の主張の概要 被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。なお、被請求人は特に証拠を提出していない。 1 本件発明において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成について 本件発明において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成は、エプロン跳ね上げ補助機構がユニット化されて(エプロン跳ね上げ補助機構をバラバラに分解することなく)取り外しが可能であるという意味であり、「着脱可能」という用語はバラバラに分解できるという意味ではない。(答弁書3頁6行~28行) 2 無効理由1について (1)甲1が本件特許の原出願前に頒布された刊行物であることについて 甲1が本件特許の原出願前に頒布された刊行物であることについて、異議はない。(審理事項通知の「3.合議体の暫定的な見解」「(1)甲第1号証について」に対する、被請求人陳述要領書3頁6行) (2)甲7の公開日について 甲7が本件特許の(原出願の)出願日である平成24年11月16日より前に頒布された文献であることは、否認する。 甲7には「2012年11月発行」と記載があるものの、発行した日は特定されていないうえ、発行日と頒布日は同一日とも限らない。 なお、被請求人が甲7の情報を自らインターネットで公開したのは平成25年1月10日である。(答弁書3頁下から3行~4頁4行) (3)甲5~甲7の記載の参酌の可否について 無効理由1は実機に基づく公然実施を理由とするものではなく、あくまで、甲1という文献に基づく文献公知を理由とするものである。 本件特許の原出願よりも後に作成された甲5及び甲6、並びに、本件特許の原出願より前に頒布されたことが明らかでない甲7を引用することは失当であり、甲5~甲7の記載を参酌して、甲1に記載された発明を理解することはできない。(答弁書4頁18行~同頁24行、審理事項通知の「3.合議体の暫定的な見解」「(1)無効理由1において甲第5号証~甲第7号証を参酌する趣旨について」に対する、被請求人陳述要領書3頁7行~10行) (4)甲1に記載された発明について 甲1は刊行物たる取扱説明書であるところ、クイックアシストがシールドカバー及びエプロンから着脱可能であることは記載されていないから、甲1に記載された発明は、クイックアシストがシールドカバー及びエプロンから着脱可能という構成を有さない。(答弁書4頁6行~5頁1行) (5)本件発明の新規性及び進歩性について 甲1に記載された発明は、クイックアシストがシールドカバー及びエプロンから着脱可能という構成を有さないから、本件発明は甲1に記載された発明とは相違する。 また、甲1に記載された発明において、クイックアシストをシールドカバー及びエプロンから着脱可能とすることは、甲9及び甲10の記載を考慮しても、想到容易でない。 したがって、無効理由1には理由がない。(答弁書5頁2行~6頁22行) 3 無効理由2について 甲8には、本件発明1、5、6及び10における「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」に相当する構成が記載されておらず、当該構成を「着脱可能」とすることも記載されていないから、本件発明1、5、6及び10は甲8に記載された発明とは相違する。 また、甲8に記載された発明において、本件発明1、5、6及び10の構成に至ることは、甲9及び甲10の記載を考慮しても、想到容易でない。 したがって、無効理由2には理由がない。(答弁書6頁23行~9頁8行)。 4 無効理由3について 甲12には、本件発明1、5、6及び10における「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」に相当する構成が記載されておらず、当該構成を「着脱可能」とすることも記載されていないから、本件発明1、5、6及び10は甲12に記載された発明と同一ではない。 したがって、無効理由3には理由がない。(答弁書9頁9行~9頁10行)。 5 無効理由4について (1)分割要件違反について ア 「エプロン跳ね上げ補助機構」について 本件発明1及び本件発明6では、「エプロン跳ね上げ補助機構」について、「・・・伸縮部材と、」「・・・リンク部材と、を有し」と特定しており、「からなる」という文言は使っていないから、エプロン跳ね上げ補助機構に伸縮部材とリンク部材以外の要素が含まれることを許容している。そして、原出願当初明細書には、エプロン跳ね上げ補助機構が伸縮部材とリンク部材を含むことが記載されているから、本件特許は分割要件違反ではない。(答弁書10頁12行~11頁5行) イ 「伸縮部材」について 原出願当初明細書には「ガススプリング50」が記載されている。 ガススプリングが、伸縮動作をすることは疑いなく、伸長動作をするときはもちろんのこと、縮短動作をするときも外力に対する反作用で弾性力が作用していることは疑いがない。 また、仮に「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」について、「弾性力により」の解釈が一義的には明確に定まらないのであれば、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して解釈することが許容され、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」は「ガススプリング」を一例として解釈すべきこととなる。 したがって、原出願当初明細書には、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」が記載されており、本件特許は分割要件違反ではない。(答弁書11頁6行~28行) (2)新規性及び進歩性について 上記(1)のとおり、本件特許に分割要件違反は存在しないから、無効理由4(分割要件違反に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)には理由がない。(答弁書11頁29行~12頁1行) 第6 当審の判断 1 本件発明について (1)明細書の記載及び図面の図示 本件特許の明細書及び図面には、次の記載及び図示がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方がシールドカバーによって覆われ、シールドカバーの後端部にエプロンが上下方向に回動自在に設けられた耕耘作業機に装着されるエプロン跳ね上げ補助機構及びこれが装着された耕耘作業機に関する。 【背景技術】 ・・・・ 【0004】 そこで、手動でエプロンを跳ね上げるときに、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げ補助機構が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のエプロン跳ね上げ補助機構は、ロータリ作業機の作業機本体の幅方向端部に設けられた側部カバーとエプロンの幅方向端部との間に設けられたガススプリングを有し、ガススプリングのロッド側端部は側部カバーに設けられた案内孔に沿って上下方向に移動可能に支持されている。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 この従来のエプロン跳ね上げ補助機構は、エプロンの腹面側から背面側に向けてガススプリングの附勢力を利かせてエプロンを押し上げるように構成されており、エプロンの幅方向端部に設けられている。このため、作業中にガススプリングが畦や側壁等の障害物に接触して損傷する虞がある。 【0008】 本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、作業中にガススプリング等が障害物に接触して損傷する虞がなく、またガススプリング等の取り付け位置の自由度が大きいエプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備えた耕耘作業機を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するために本発明のエプロン跳ね上げ補助機構は、耕耘作業機に設けられた作業ロータ(実施の形態における耕耘ロータ20)の上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回動自在に設けられたエプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構であって、シールドカバーの上方に設けられて前後方向に延びる支持部材(実施の形態における支持板41)と、前側が支持部材に前後方向に移動自在に支持され、後側がシールドカバーの上方に回動自在に接続されたガススプリングと、前側が支持部材にガススプリングの前側とともに前後方向に移動自在に支持され、後側がガススプリングに沿って後方側へ延びるリンクアーム部材と、上側がリンクアーム部材の後側に回動自在に接続され、下側が前記エプロンに回動自在に接続されるエプロン側接続部材とを有して、耕耘作業機に着脱可能に装着されることを特徴とする。」 ウ 「【発明の効果】 【0017】 本発明に係わる農作業機によれば、上記特徴を有することで、作業中にガススプリングが障害物に接触して損傷する虞がなく、またガススプリングの取り付け位置の自由度が大きいエプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備える耕耘作業機を提供することを目的とする。」 エ 「【発明を実施するための形態】 【0019】 以下、本発明のエプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備える耕耘作業機の好ましい実施の形態について、図1~図7を参照しながら説明する。本実施形態は、耕耘作業機の一例として耕起・砕土用の耕耘作業機を例として説明する。なお、説明の都合上、図1に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として、以下説明する。 ・・・・ 【0022】 耕耘ロータ20(図2(b)参照)の上側はシールドカバー22により覆われ、このシールドカバー22の後側の左右方向両端部には図示しない側部カバーが設けられている。 ・・・・ 【0023】 シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に図2(b)に示す軸23を介して枢支されている。 ・・・・ 【0025】 ・・・・。シールドカバー22及びエプロン25の上方には、作業者がエプロン25の跳ね上げ操作を行う際に、エプロン25が容易に跳ね上げられるように附勢するエプロン跳ね上げ補助機構40が設けられている。 【0026】 次に、エプロン跳ね上げ補助機構40について、図1、図2(a)、図2(b)を参照しながら説明する。エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、シールドカバー22及び主フレーム16に接続されて前後方向に延びる支持板41と、前側が支持板41に前後方向に移動自在に支持され、後側が支持板41の後側に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(b)参照)と、前側が支持板41にガススプリング50の前側とともに前後方向に移動自在に支持され、後側がガススプリング50に沿って後方側へ延びるリンクアーム部材60と、前側が支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に支持されるとともにリンクアーム部材60の後側に回動自在に接続されて、支点軸部45を中心として前後方向に回動可能なリンクプレート70と、上端部がリンクプレート70の後側に回動自在に接続され、下端部がエプロン25に回動自在に接続されたエプロン側接続部材75とを有してなる。 【0027】 支持板41は、シールドカバー22の上面に前後方向に延びるとともに、シールドカバー幅方向(左右方向)に所定間隔を有して一対並設されている。一対の支持板41は、主フレーム16とシールドカバー22との間に配置されて、シールドカバー22の前端部から後端部に亘って延びる。一対の支持板41の後端部間には、図2(a)及び図2(b)に示すように、前述した支点軸部45が設けられ、この支点軸部45の軸方向両側に、一対のリンクプレート70の前端部が回動自在に支持されている。 【0028】 一対の支持板41の後側の底部には、これらの支持板41に固着されて支持板幅方向に延びる取付板42(図2(a)参照)が設けられている。この取付板42は各支持板41の幅方向外側へ延びてフランジ部42aを形成し、このフランジ部42aに挿通されたボルト43を介して、一対の支持板41の後側がシールドカバー22に取り付けられている。 【0029】 また、一対の支持板41の前後方向の中間上部には、一対の支持板41間に架け渡された管状部材44が固着されている。この管状部材44は、主フレーム16に設けられた一対の固定用突起17間に配置され、管状部材44及び固定用突起17に挿通されたボルト18及びナット19を介して一対の固定用突起17に固定されている。即ち、管状部材44及びこれに挿通されたボルト18を介して、一対の支持板41の前側が主フレーム16に取り付けられている。 【0030】 リンクプレート70は、前後方向に延びるとともに上方へ突出した突出部70aを有して側面視において略三角形状に形成されている。一対のリンクプレート70の上部は、連結板71を介して一体的に接続されている。一対のリンクプレート70の前側は、支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に接続されて、一対のリンクプレート70はこの支点軸部45を回動支点として一対の支持板41間を上下方向に回動する。このため、一対のリンクプレート70の回動時にリンクプレート70が支持板41に接触する虞はない。 【0031】 一対のリンクプレート70の後端部とエプロン25との間には、エプロン側接続部材75が回動軸77を介して回動自在に連結されている。このエプロン側接続部材75は、詳細は後述するが、リンクプレート70の上方への回動に伴う動力をエプロン25に伝達してエプロン25の跳ね上げを補助する。 【0032】 なお、本実施形態では、ガススプリング50、リンクアーム部材60、リンクプレート70等を支持している支持板41を、前後2か所で作業機本体10(主フレーム16とシールドカバー22)に対してボルト止めしたが、前後2か所のうちの一方は作業機本体10に引っ掛けるだけにしておき、他方を作業機本体10にボルト止めする方式を採用してもよい。 【0033】 エプロン側接続部材75は、ボトム側部材76に対してロッド側部材78が突出入可能に構成されたいわゆるねじパイプであり、ロッド側部材78をボトム側部材76に対して回動させると、ロッド側部材78の突出量が調整されてエプロン側接続部材75全体の長さを調整することができる。ロッド側部材78の外周にはその略全長に亘って雄ねじが形成され、ロッド側端部78の下側にはエプロン25にロッド側部材78を連結するための連結部材80が取り付けられている。 【0034】 連結部材80は、エプロン25に接続される接続部81と、接続部81に装着されてロッド側部材78の先端部を固定可能な固定軸部83とを有してなる。接続部81は、エプロン25に接する底板部81aと、底板部81aの両側から上方へ延びる側板部81bを有してなる。底板部81aには、ボルト82を挿通可能な複数の孔部が設けられている。この孔部に挿通されたボルト82を介して連結部材80をエプロン25に着脱可能に固定することができる。 ・・・・ 【0048】 次に、作業位置Psに移動したエプロン25を跳ね上げ操作するときのエプロン跳ね上げ補助機構40の作動について、図2(a)、図2(b)、図3、図4、図5を参照しながら説明する。 ・・・・ 【0050】 ガススプリング50のロック状態が解除されると、作業者はエプロン25を把持して上方へ引き上げる。作業者によるエプロン25の引き上げ時には、図4に示すように、ガススプリング50が伸長して、そのロッド側端部50aに接続された可動軸部46が支持板41の長孔41aの前側に移動する。そして、当接板92aの前端部に、リンクアーム部材60の前端部が当接し、さらに、作業者がエプロン25を引き上げると、図5に示すように、当接板92aの前端部は、リンクアーム部材60の前端部によってさらに前方へ押され、やがてロック板92は、軸部91を支点として下方へ回動し、ロック位置側へ附勢された状態(ロック待機状態)になるとともに、エプロン25の引き上げが終了する。 【0051】 このエプロンの引き上げ操作時に、一対のリンクアーム部材60が前側に移動し、リンクプレート70が支点軸部45を回動支点として前側に回動する。その結果、ガススプリング50の弾性力が、エプロン側接続部材75を介してエプロン25に作用して、エプロン25の上方への回動を附勢する。このため、作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」 オ 「【0053】 このように、エプロン跳ね上げ補助機構40はシールドカバー22及びエプロン25の上方に配置されているため、エプロン跳ね上げ補助機構40が耕耘作業機1の幅方向(左右方向)外側に突出していない。このため、作業中にガススプリング50が畦や側壁等の障害物に接触して損傷する虞はない。また、エプロン跳ね上げ補助機構40は、ユニット化されて耕耘作業機1に着脱可能であるので、これをシールドカバー22及びエプロン25の上方間で配置可能な場所であれば、いずれの場所にも設置することができる。従って、エプロン跳ね上げ補助機構40は、耕耘作業機1に対する配置の自由度が大きく、また機種の異なる耕耘作業機に装着することもできる。」 カ 【図1】「 [図:0001425668000001.jpg] 」 キ 【図2】「 [図:0001425668000002.jpg] 」 (2)本件発明における課題、課題を解決するために採用した構成、及び技術的意義 上記(1)ア及びイの記載より、本件発明は、従来のエプロン跳ね上げ補助機構について、エプロンの幅方向端部に設けられており、障害物に接触して損傷する虞があったことを考慮したものであり、本件発明の課題は、作業中に障害物に接触して損傷する虞がなく、また取り付け位置の自由度が大きいエプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備えた耕耘作業機を提供することであると、理解される。 上記(1)イ及びウの記載より、本件発明は、上記の課題を解決するために、上記第3に示した本件発明1ないし10に係る各構成を採用したものと、理解される。 そして、本件発明は、本件発明1ないし10に係る各構成を採用したこと、とりわけ「エプロン跳ね上げ補助機構」を「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に」装着または固定する構成により、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるとともに、障害物に接触して損傷する虞をなくす技術的意義を有するものと理解される。 また、上記(1)エ~キに示す実施の形態に関する記載及び図示も、「エプロン跳ね上げ補助機構40」が「支持板41」、「ガススプリング50」、「リンクアーム部材60」、「リンクプレート70」及び「エプロン側接続部材75」を有する具体例において、「ボルト43」及び「ボルト18」によって「主フレーム16」及び「シールドカバー22」に対して取り付けられる「支持板41」より上の部分、及び、「ボルト82」によって「エプロン25」に取り付けられる「エプロン側接続部材75」の「連結部材80」より上の部分は、全てボルトによって着脱可能であるから(特には段落【0026】-【0029】、【0033】-【0034】、【図1】及び【図2】参照)、ボルト等の固定具を別として、「エプロン跳ね上げ補助機構」を「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能」とする構成により、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるとともに、障害物に接触して損傷する虞をなくす技術的意義を奏することを説明する具体例であると、理解される。 (3)「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成について 本件発明における、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成の解釈について、請求人は、当該補助機構が1つのキット(ユニット)として着脱可能であるものに限定されない旨を主張し(上記第4の3(1))、被請求人は、当該補助機構がユニット化されて(バラバラに分解することなく)取り外しが可能であるという意味である旨を主張している(上記第5の1)。 以下に、本件発明の上記構成の解釈について、検討する。 本件発明1において、上記構成を特定する請求項1の記載は、「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される、エプロン跳ね上げ補助機構」というものである。本件発明6において、上記構成を特定する請求項6の記載は、「前記エプロン跳ね上げ補助機構は、前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に固定される」という記載である。 上記の特許請求の範囲の記載より、本件発明において「前記シールドカバー及び前記エプロン」に対して「着脱可能」であるのは、「エプロン跳ね上げ補助機構」であることが特定されている。 そして、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「前記シールドカバー及び前記エプロン」に対して「着脱可能」である構成により、上記(2)に示した、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を奏することが、理解される。 ここで、特許請求の範囲の記載において、「前記シールドカバー及び前記エプロン」に対して「着脱可能」であるのが、「エプロン跳ね上げ補助機構」が有する部材のうち、一部の部材であるとは特定されていない。また、特許請求の範囲の記載において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が一体のユニットとして着脱可能であるとは特定されていない。 そして、「エプロン跳ね上げ補助機構」が有する部材のうち、一部の部材のみがシールドカバー及びエプロンに対して着脱可能であっても、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという、本件発明の技術的意義を奏することができないことは、明らかである。その一方、シールドカバー及びエプロンから取り外した「エプロン跳ね上げ補助機構」が、一体のユニットのままであるか、それともいくつかの部分に分かれるかによって、本件発明の技術的意義を奏するか否かという点で顕著な相違が生じるような事情はない。 以上のことからすると、本件発明において「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能」である構成は、特許請求の範囲の記載、及び本件発明の技術的意義より、エプロン跳ね上げ補助機構が有する部材は、ボルト等の固定具を別として、シールドカバー及びエプロンに対して着脱可能であることを特定している一方、シールドカバー及びエプロンから取り外したエプロン跳ね上げ補助機構について、複数の部分に分かれることなく一体のユニットのままであることまで限定しているものではない、と解することが妥当である。 2 甲号証について 以下、「〇1」は、〇の中に1の丸数字を意味し、「●1」は、●の中に1の丸数字を意味する。 (1)甲1 ア 甲1の記載事項 以下、甲1について、1枚目を「表紙」、2枚目を「表紙裏」、3枚目を「目次」といい、最後を「裏表紙」という。甲1の4枚目以降の、下部に番号が記載されているものは、その記載された番号に従って、「1頁」などという。 甲1には、次の記載及び図示がある。(下線は、当審合議体が付した。以下、同様。) (ア)表紙 「 [図:0001425668000003.jpg] 」 (イ)表紙裏 「 [図:0001425668000004.jpg] 」 (ウ)目次 「 [図:0001425668000005.jpg] 」 (エ)7頁 「 [図:0001425668000006.jpg] 」 (オ)28頁右欄 「 [図:0001425668000007.jpg] 」 (カ)29頁 「 [図:0001425668000008.jpg] 」 (キ)30頁 「 [図:0001425668000009.jpg] 」 (ク)37頁右欄 「 [図:0001425668000010.jpg] 」 (ケ)42頁右欄の一部(枠囲いは請求人による) 「 [図:0001425668000011.jpg] 」 (コ)45頁 「 [図:0001425668000012.jpg] 」 イ 認定事項 (ア)甲1の表紙から、甲1が「コバシツーウェイローター」の「取扱説明書」であることが理解できる。 (イ)表紙裏(上記ア(イ))の「このコバシツーウェイローターは水田・畑の耕うん・整地用の作業機です。」との記載から、コバシツーウェイローターは耕うん・整地用の作業機であることが理解できる。 (ウ)上記(ア)において検討したように、甲1は「コバシツーウェイローター」の取扱説明書であるから、7頁(上記ア(エ))の「各部の名称」が、「コバシツーウェイローター」が有する各部品の名称であることは明らかである。 そして、7頁の上段の図には、引出線と共に「シールドカバー」と記載され、7頁の中段の図には、引出線と共に「耕うん軸」と記載され、7頁の下段の図には、それぞれ、引出線と共に「エプロン」、「クイックアシスト」と記載されており、各部品の名称に対応する引出線により指示された部材が、それぞれ、「シールドカバー」、「耕うん軸」、「エプロン」、「クイックアシスト」であることが理解できる。また、7頁の下段の図で「コンプレッションロッド」の名称が記載された部品が、上段の図、中段の図及び下段の図で図示される様子より、7頁の上段の図は斜め前方から見た図であり、同頁中段の図は側方から見た図であり、同頁下段の図は斜め後方から見た図であると認められる。 耕うん用の作業機が回転する耕うん爪を有することは技術常識であるところ、「コバシツーウェイローター」は耕うんを用途の一つとする作業機であるから、当該技術常識を踏まえると、7頁の中段の図の「耕うん軸」の周囲に描かれた、耕うん軸から延びる複数の部材は「耕うん爪」であると認められる。 そうすると、7頁の図からは、コバシツーウェイローターには、シールドカバー、耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪、エプロン並びにクイックアシストが設けられることが理解できる。 (エ)上記(ウ)の検討、及び下記(オ)に示す2つの図との整合性を考慮すると、7頁の上段の図、中段の図及び下段の図から、シールドカバーは、耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪の上方を覆うように設けられ、シールドカバーの後端部にエプロンが設けられることが看取される。 (オ)エプロンの回動に関し、甲1の28頁右欄(上記ア(オ))には「1.エプロンをはね上げる場合」と記載され、29頁右欄(上記ア(カ))には「2.エプロンを下ろす場合」と記載され、「1.エプロンをはね上げる場合」における29頁右欄○3の最初の図(上記ア(カ))、「2.エプロンを下ろす場合」における29頁右欄○2の最初の図(上記ア(カ))及び30頁左欄○3の最初の図(上記ア(キ))から、エプロンは、上下方向に回転可能に設けられることが看取される。 29頁右欄○3の最初の図 [図:0001425668000013.jpg] 29頁右欄○2の最初の図 [図:0001425668000014.jpg] 30頁左欄○3の最初の図 [図:0001425668000015.jpg] (カ)28頁右欄(上記ア(オ))には、クイックアシスト概要について「クイックアシストはガススプリングを使用した、エプロンはね上げ補助装置です。 クイックアシストを使用することで、エプロンはね上げ作業負荷を軽減できます。」と記載されている。 (キ)37頁右欄(上記ア(ク))の、「◯5 クイックアシストへのグリス塗布」内には、「●2 クイックアシストのリンク各部ピン、長穴回りの摺動部(下図矢印◯1~◯4)へは定期的にグリスを塗布してください。」と記載され、以下の図(以下「クイックアシストリンク図」という。)が示されている。 [図:0001425668000016.jpg] 上記ア(カ)の左欄○2中の上の図面に、引き出し線とともに「アシストハンドル」と記載されていることに鑑みると、クイックアシストリンク図の矢印◯4が付された長穴が設けられる部材には、アシストハンドルが設けられることが理解できる。 また、「クイックアシストのリンク各部ピン、長穴回りの摺動部」との記載を踏まえると、クイックアシストリンク図には、クイックアシストが有するリンクの部材として、次の部材が示されていると理解できる。 a 矢印◯4が付された、前側に長穴が設けられ、後側に矢印◯2が付されたピンが貫通する、アシストハンドルが設けられる部材(以下「部材A」という。)。 b 後側に矢印◯3が付された長穴が設けられた部材(以下「部材B」という。)。 c 前側下に矢印◯2が付された部材Aと接続するピンが設けられ、前側上に部材Bの長穴を摺動するピンが設けられ、後側に矢印◯1が付された長穴が設けられた板状部材(以下「部材C」という。)。 d 部材Cの長穴を摺動するピンが貫通する部材(部材D)。 そして、部材Aはシールドカバーに、部材Dはエプロンにそれぞれ接続され、部材B及び部材Cは、部材Aと部材Dを接続するように取り付けられ、部材A~Dは、シールドカバー及びエプロンの上方に配置されることが看取される。 (ク)42頁右欄の「10.ガススプリングの取扱い」(上記ア(ケ))の図面には、下方で2本に分岐する引き出し線が、それぞれ上下方向に延びる棒状の部材を指す様子が示されており、上方で1本となった引き出し線には「ガススプリング」と記載されている。下方で2本に分岐する引き出し線が指す、上下方向に延びる2本の棒状の部材は、引き出し線に付された名称から、ガススプリングと理解される。ガススプリングがクイックアシストで用いられる部材であることから、上記ア(ケ)の「10.ガススプリングの取扱い」の図中のガススプリング周辺には、クイックアシストのリンクの部材等が示されており、ガススプリングの左側で、上方から下方に延びた後に左側に曲がる棒状の部材は、クイックアシストリンク図中でも看取されるアシストハンドルであると理解される。上記「10.ガススプリングの取扱い」の図中の、ガススプリング周辺の拡大図(以下「ガススプリング配置図」という。)は、次のとおりである。 ガススプリング配置図 [図:0001425668000017.jpg] (ケ)ガススプリング配置図とクイックアシストリンク図、及び29頁左欄の一番下の図をあわせてみると、29頁左欄の一番下の図は、クイックアシストの先端部分の拡大図(以下「クイックアシスト先端拡大図」という。)であり、同図中の右で斜め上に延びる棒状の部材は、アシストハンドルの先端部分であると理解される。また、同図中の中央付近に示される、長穴を有する板状の部材は、クイックアシストのリンクの部材のうち、部材Aの先端部分であると理解される。同図中の中央付近の上部に示される、2本の棒状の部材の先端部がコの字状となっており、当該コの字の両側面部がピンに貫通されている部分は、上記ア(ケ)に示した「取扱上の注意」の箇所におけるガススプリングの図示を考慮すると、2本のガススプリングの前端部であると理解される。 クイックアシスト先端拡大図(29頁左欄の一番下の図) [図:0001425668000018.jpg] (コ)30頁左欄の下から2番目の図は、網掛けがされた棒状の部材がアシストハンドルの後端部と理解され、同図はクイックアシストの中部の拡大図(以下「クイックアシスト中部拡大図」という。)であると理解される。 クイックアシスト中部拡大図(30頁左欄の下から2番目の図) [図:0001425668000019.jpg] (サ)クイックアシストリンク図及びクイックアシスト中部拡大図に関し、看取されるアシストハンドルを基準に、両図に示される各部材について検討すると、クイックアシスト中部拡大図において、左端から斜め上方に向かってアシストハンドルと略平行に延在する部材は、クイックアシストのリンクの部材の部材Aであると理解される。また、クイックアシスト中部拡大図において、部材Aより急角度で傾斜した長穴を有する部材は、クイックアシストのリンクの部材の部材Bであると理解される。クイックアシスト中部拡大図において、部材Aの後端部を貫通するピンによって前端部が貫通される、略三角形の板状の部材は、クイックアシストのリンクの部材の、部材Cの前下端部であると理解される。また、ガススプリングに着目すると、ガススプリング配置図における配置、及び、クイックアシスト先端拡大図におけるガススプリングの前端コの字状部分の配置との整合性から、クイックアシスト中部拡大図において、部材Aの後端部と部材Cの前下端部を貫通するピンに接続されるコの字状の部材は、ガススプリングの後側端部であると理解される。 (シ)クイックアシストが、シールドカバーに対して上下方向に回転するエプロンのはね上げを補助する装置であることを踏まえると、クイックアシストリンク図及びクイックアシスト中部拡大図より、シールドカバーに接続される部材Aに対し、部材Cは、部材Aの後端部のピンを軸として回転することが理解される。また、ガススプリング配置図及びクイックアシスト先端拡大図より、2本のガススプリングの前側端部は、部材Aの前側の長穴を摺動可能なピンに接続されることが理解される。クイックアシストリンク図及びクイックアシスト先端拡大図より、部材Aに接続される部材Bは、前端部が部材Aの長穴を貫通するピンに接続されており、クイックアシスト先端拡大図において左側の部材Aと左側のガススプリングとの間に挟まれた板状の部材は、部材Bの前端部であると理解される。また、クイックアシストが有するガススプリングは、リンクの部材の部材A~Dとともに、シールドカバー及びエプロンの上方に配置されることが、理解される。 (ス)上記(キ)~(シ)に示した各部材の配置及び接続の関係、並びに、クイックアシストがガススプリングを使用してシールドカバーに対して上下方向に回転するエプロンのはね上げを補助する装置であることから、シールドカバーに接続された部材Aの後端部を貫通するピンに、ガススプリングの後側端部及び部材Cの前下端部が接続され、部材Aの前側の長穴を摺動可能なピンに、ガススプリングの前側端部及び部材Bの前端部が接続され、ガススプリングの伸縮動作に伴って、部材Bの前端部が部材Aの前側の長穴に沿って移動し、部材Cが、シールドカバーに接続された部材Aに対して部材Aの後端部のピンを軸として回転して、エプロンに接続された部材Dを動かすことで、エプロンのはね上げが補助されると理解できる。 ウ 甲1発明及び甲1作業機発明 上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」及び「甲1作業機発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 耕うん・整地用の作業機であるコバシツーウェイローターに設けられる、エプロンはね上げ補助装置であるクイックアシストであって、 コバシツーウェイローターには、シールドカバー、耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪、エプロン並びにクイックアシストが設けられ、 シールドカバーは、耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪の上方を覆うように設けられ、シールドカバーの後端部にエプロンが設けられ、 エプロンは、上下方向に回転可能に設けられ、 クイックアシストはガススプリングを使用した、エプロンはね上げ補助装置であり、クイックアシストを使用することで、エプロンはね上げ作業負荷を軽減でき、 クイックアシストは、リンクの部材として、前側に長穴が設けられ、後側にピンが貫通する、アシストハンドルが設けられる部材(部材A)、後側に長穴が設けられた部材(部材B)、前側下に部材Aと接続するピンが設けられ、前側上に部材Bの長穴を摺動するピンが設けられ、後側に長穴が設けられた板状部材(部材C)、部材Cの長穴を摺動するピンが貫通する部材(部材D)を有し、 部材Aはシールドカバーに、部材Dはエプロンにそれぞれ接続され、部材B及び部材Cは、部材Aと部材Dを接続するように取り付けられ、リンクの部材の部材A~D及びガススプリングは、シールドカバー及びエプロンの上方に配置され、 シールドカバーに接続された部材Aの後端部を貫通するピンに、ガススプリングの後側端部及び部材Cの前下端部が接続され、部材Aの前側の長穴を摺動可能なピンに、ガススプリングの前側端部及び部材Bの前端部が接続され、ガススプリングの伸縮動作に伴って、部材Bの前端部が部材Aの前側の長穴に沿って移動し、部材Cが、シールドカバーに接続された部材Aに対して部材Aの後端部のピンを軸として回転して、エプロンに接続された部材Dを動かす、 クイックアシスト。 <甲1作業機発明> 甲1発明のエプロンはね上げ補助装置であるクイックアシストが設けられたコバシツーウェイローター。 (2)甲2 甲2は、平成24年7月2日の新聞記事であり、「小橋工業は、大規模プロ向けの新製品“スーパーシリーズ”の◯1ローター「アース」のFTEシリーズ3タイプ・・・をこのほど発表した。・・・発売は9月から。」と記載されている。また、「小橋工業・・・・が、発表した新製品スーパーシリーズは◯1ローター「アース」FTE200T(耕幅2m)、FTE220T(耕幅2.2m)、FTE240T(耕幅2.4m)の3型式と・・・」と記載されている。 (3)甲3 甲3は、平成24年(2012年)7月3日の新聞記事であり、「小橋工業・・・は・・・トラクター用作業機『スーパーシリーズ』を発表した。◯1 2WAYローター「アースFTE200/220/240」・・・がある。9月発売。」と記載されている。 (4)甲4 甲4は、2012年(平成24年)7月2日の新聞記事であり、「小橋工業・・・はこのほど、・・・好評発売中のアース、・・・それぞれの大型クラスの新シリーズを開発、「スーパーシリーズ」と銘打って9月より新発売する。」と記載されている。また、「【アース大型クラス】」の項に、「・・・夢のローター「アース」に待望の大型クラスが誕生した。耕幅によりFTE200T、同220T、同240Tがあり」と記載されている。 (5)甲5 甲5は、令和2年7月27日の日付が付された証明書であり、平成25年2月28日に小橋工業株式会社製の「ツーウェイローター FTE220RT-4L」を購入した旨が、製品の製造番号とともに記載されている。 また、同製品を撮影したと思われる写真1~写真13を示す、1~7の頁番号が付された7枚の紙、下記ア及びイの内容の2枚の紙、及び上記製品の購入に関する売買契約書写し及び受領書が添付されている。 ア 「 [図:0001425668000020.jpg] 」 イ 「 [図:0001425668000021.jpg] 」 (6)甲6 甲6は、令和3年7月21日の日付が付された写真撮影・測定結果報告書であり、甲5と同じ製造番号の製品について、写真撮影やガススプリングの穴径などの計測を行った旨が記載されている。 また、写真及び計測の結果が示されている。 (7)甲7 甲7は、「部品表 コバシツーウェイローター」と題されており、その表紙及び8頁は、下記ア及びイのとおりである。 ア 表紙 「 [図:0001425668000022.jpg] 」 イ 8頁 「 [図:0001425668000023.jpg] 」 (8)甲8 ア 甲8の記載事項 甲8には、次の記載及び図示がある。 (ア)「【0019】 図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結して使用する牽引式の代掻き作業機(耕耘整地装置)である。農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、圃場においてトラクタの前進走行により進行方向である前方(図1では、左方向)に向かって移動しながら、耕耘整地作業および土引き作業をする。」 (イ)「【0023】 また、機体6の下部には、入力軸8側からの動力で左右方向の回転中心軸線を中心として所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体11が回転可能に設けられている。耕耘体11は、左右方向の回転軸である耕耘軸12と、この耕耘軸12に設けられこの耕耘軸12と一体となって回転する複数の耕耘爪13とを有している。そして、耕耘体11の上方部は、機体6の略板状のカバー部(耕耘部カバー)10にて覆われている。 【0024】 さらに、機体6のカバー部10の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする略板状の整地体16が弾性板であるゴム板17を介して上下回動可能に設けられている。整地体16は、カバー部10の後端部に上端部がゴム板17を介して取り付けられた略板状の第1整地体(均平板)18と、この第1整地体18の下端部に上下回動可能に取り付けられた略板状の第2整地体(レーキ)19とを有している。」 (ウ)「【0027】 また、中央作業部2は、図3および図4にも示されるように、一端側である上端部が機体6に回動可能に連結されかつ他端側である下端部が整地体16の第1整地体18に回動可能に連結された左右1対の連結体31を備えている。 【0028】 連結体31は、第1連結アーム(第1コ字枠)33と、この第1連結アーム33に左右方向の連結軸部である軸部35を介して回動可能に連結された第2連結アーム(第2コ字枠)34とを有している。なお、連結ピンである軸部35が、被取付部(ばね被取付部)36となっている。 【0029】 第1連結アーム33の上端部は、機体6のアーム被連結部38に左右方向の軸部39を中心として回動可能に連結されている。アーム被連結部38は、機体6のカバー部10に固定的に取り付けられている。第2連結アーム34の下端部は、第1整地体18のアーム被連結部40に左右方向の軸部41を中心として回動可能に連結されている。アーム被連結部40は、第1整地体18の本体板部18aに固定的に取り付けられている。そして、第1連結アーム33の下端部と第2連結アーム34の上端部とが、軸部35を介して互いに回動可能に連結されている。 【0030】 さらに、中央作業部2は、機体6のアーム被連結部38に左右方向の回動中心軸線(支点)Xを中心として回動可能に設けられ第1状態(起立状態)および第2状態(倒伏状態)に選択的に設定される操作レバー等の操作体(ハンドル)46と、この操作体46に回動可能に連結された連動体である回動体(ばね掛け部材)47とを備えている。 【0031】 操作体46は、機体6のアーム被連結部38に回動中心軸線Xを中心として回動可能に支持された左右方向の支軸部51と、この支軸部51の端部に一体に連設されこの支軸部51に対して略90度折れ曲がった把持軸部52と、支軸部51に連結板部54を介して連結され支軸部51と平行に位置する左右方向の軸部53とを有している。なお、回動中心軸線Xは、支軸部51の軸芯と一致している。 【0032】 そして、操作体46の軸部53は、機体6のアーム被連結部38に形成された円弧状長孔部55にこの円弧状長孔部55に沿ってスライド可能に挿入されている。つまり、操作体46は、機体6の円弧状長孔部55にスライド可能に挿入された軸部53を有し、この操作体46は、円弧状長孔部55の円弧中心を通る回動中心軸線(支軸部51)Xを中心として機体6に対して上下回動可能となっている。なお、操作体46が第1状態に設定された状態では軸部53が円弧状長孔部55の下端に位置し、操作体46が第2状態に設定された状態では軸部53が円弧状長孔部55の上端に位置する。 【0033】 回動体47は、例えば略くの字状をなす略板状のもので、一端部に1つの軸用孔部56を有し、他端部に1つのばね用孔部57を有している。なお、ばね用孔部57が、被取付部(ばね被取付部)58となっている。 【0034】 そして、回動体47の軸用孔部56に操作体46の軸部53が回動可能に嵌入されている。つまり、回動体47の軸用孔部56が、操作体46の軸部53の外周側に回動可能に連結されている。また、回動体47は、操作体46の支軸部51と係脱可能に係合する凹状の係合部59を有している。 【0035】 また、中央作業部2は、一端側である前端部が回動体47の被取付部58であるばね用孔部57に取り付けられかつ他端側である後端部が連結体31の被取付部36である軸部35に取り付けられ整地体16を付勢する付勢体である引張コイルばね(引きばね)61を備えている。 【0036】 引張コイルばね61は、図4に示されるように、第1連結アーム33の下方に配設され、前端部に略円弧状の一端引掛部62を有し、後端部に略円弧状の他端引掛部63を有している。そして、一端引掛部62が回動体47のばね用孔部57に引っ掛けられ、他端引掛部63が連結体31の軸部35に引っ掛けられている。」 (エ)「【0041】 次に、上記農作業機1の作用等を説明する。 【0042】 例えば、左右の延長作業部3を折り畳み、中央作業部2のみで代掻き作業である耕耘整地作業をする場合について説明する。 【0043】 圃場、すなわち例えば水を溜めた水田において、トラクタの前進走行により農作業機1を前方に移動させると、耕耘体11にて耕耘作業が行われ、整地体16にて整地作業が行われる。 【0044】 ここで、図5(a)および(b)に示すように、操作体46が第1状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)および深耕作業時のいずれの時においても、引張コイルばね61が連結体31を介して第1整地体18を下方に付勢する状態となる。つまり、第1整地体18が引張コイルばね61の付勢力によって下方へ加圧され、第1整地体18の圃場面との接地圧が増大する。その結果、第1整地体18は、圃場面の土塊等を崩しながら、圃場面の凹凸を均す。 【0045】 なお、引張コイルばね61の中心線Aと、第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bとがなす角度αが大きいほど、第1整地体18の接地圧(引張コイルばね61による加圧力)が増大する。つまり、引張コイルばね61は、第1連結アーム33の上方回動に応じて伸びる。このため、(a)に示す通常作業時に比べて、(b)に示す深耕作業時の方が、第1整地体18の接地圧が大きい。 【0046】 また、図6(a)および(b)に示すように、操作体46が第2状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)においては引張コイルばね61が第1整地体18を付勢しない状態(下方へ若干付勢する状態を含む意味)となり、深耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を下方へ付勢する状態となる。 【0047】 つまり、図7(a)にも示すように、操作体46が第2状態に設定された場合において、耕耘体11の耕耘深さFが設定深さ未満のときには、引張コイルばね61が第1整地体18をほとんど付勢しないフリー状態となる。その結果、圃場面の土が軽い場合でも、土が進行方向に移動しない。 【0048】 そして、この加圧しない状態では、引張コイルばね61の中心線Aと第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bとが側面視で略一致し、角度αが略ゼロである。このため、引張コイルばね61は、回動体47と一体となって軸部53を中心として上下回動する際に、伸縮しない。このとき、操作体46の支軸部51と回動体47の係合部59との間には、隙間80がある。 【0049】 しかし、図7(b)にも示すように、耕耘体11の耕耘深さFが設定深さ以上になったときには、操作体46の支軸部51が回動体47の係合部59と係合当接し、この係合当接により回動体47の上方回動が規制される。 【0050】 このため、引張コイルばね61は、第1連結アーム33の上方回動に応じて伸び、その結果、第1整地体18が引張コイルばね61の付勢力によって下方へ加圧され、第1整地体18の圃場面との接地圧が増大する。 【0051】 そして、このような農作業機1によれば、従来必要とされた回動駒等を用いない構成であるため、簡単な構成であるばかりでなく、土詰まり等による不具合が生じにくく、頻繁なメンテナンスが不要で、メンテナンスが容易であり、しかも、引張コイルばね61を用いることで十分な加圧力を得ることができる。 【0052】 また、操作体46が第2状態に設定された場合において、耕耘体11の耕耘深さFが予め設定された設定深さ以上になったときには、引張コイルばね61が第1整地体18を付勢しない状態から、引張コイルばね61が第1整地体18を下方に付勢する状態となるため、適切な整地作業ができる。」 (オ)「【0063】 また、図14および図15には、第6の実施の形態が示されている。 【0064】 この第6の実施の形態では、操作体46が第2状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)となり、深耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を下方へ付勢する状態となる。 【0065】 図14から明らかなように、通常作業時では、ばね用孔部57が第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bよりも上方に位置するので、第1整地体18が引張コイルばね61の付勢力によって上方へ加圧され、第1整地体18の圃場面との接地圧が減少する。つまり、第1整地体18の重量が引張コイルばね61の付勢力の分だけ軽くなる。 【0066】 また、図15から明らかなように、深耕作業時では、ばね用孔部57が第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bよりも下方に位置するので、第1整地体18が引張コイルばね61の付勢力によって下方へ加圧され、第1整地体18の圃場面との接地圧が増大する。つまり、第1整地体18の重量が引張コイルばね61の付勢力の分だけ重くなる。」 (カ)図1 「 [図:0001425668000024.jpg] 」 (キ)図14 「 [図:0001425668000025.jpg] 」 (ク)図15 「 [図:0001425668000026.jpg] 」 イ 認定事項 上記ア(ア)~(オ)及び図1より、引張コイルばね61及び連結体31を含む、第1整地体18を付勢する機構は、カバー部10及び整地体16の上方に設けられていることが認められる。 ウ 甲8発明及び甲8作業機発明 上記ア及びイより、基本構成について上記ア(ア)~(エ)の記載を踏まえつつ、「第1整地体18」への付勢、及び、上記ア(オ)に示される第6の実施の形態における「操作体46が第2状態に設定された場合」の付勢の状態に着目すると、甲8には、次の発明(以下、「甲8発明」及び「甲8作業機発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲8発明> 所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体11が設けられ(【0023】)、 耕耘体11の上方部は、機体6のカバー部10にて覆われており(【0023】)、 カバー部10の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする整地体16が上下回動可能に設けられており、整地体16は第1整地体18を有する(【0024】)、 農作業機1において、(【0019】) 第1整地体18を付勢する機構であって(【0044】、【0052】、【0064】)、 上端部が機体6に回動可能に連結されかつ下端部が整地体16に回動可能に連結された連結体31、及び付勢体である引張コイルばね61を備え(【0027】、【0035】)、 連結体31は、第1連結アーム(第1コ字枠)33と、この第1連結アーム33に左右方向の連結軸部である軸部35を介して回動可能に連結された第2連結アーム(第2コ字枠)34とを有し、連結ピンである軸部35が、ばね被取付部36となっており、(【0028】) 第1連結アーム33の上端部は、機体6のアーム被連結部38に左右方向の軸部39を中心として回動可能に連結され、アーム被連結部38は、機体6のカバー部10に固定的に取り付けられており、第2連結アーム34の下端部は、第1整地体18のアーム被連結部40に左右方向の軸部41を中心として回動可能に連結され、アーム被連結部40は、第1整地体18の本体板部18aに固定的に取り付けられており、(【0029】) さらに、第1状態および第2状態に選択的に設定される操作レバー等の操作体46と、操作体46に回動可能に連結された連動体である回動体(ばね掛け部材)47とを備え、(【0030】) 操作体46の軸部53は、機体6のアーム被連結部38に形成された円弧状長孔部55にこの円弧状長孔部55に沿ってスライド可能に挿入されており、操作体46が第1状態に設定された状態では軸部53が円弧状長孔部55の下端に位置し、操作体46が第2状態に設定された状態では軸部53が円弧状長孔部55の上端に位置し、(【0032】) 引張コイルばね61は、第1連結アーム33の下方に配設され、一端引掛部62が回動体47のばね用孔部57に引っ掛けられ、他端引掛部63が連結体31の軸部35に引っ掛けられており(【0036】)、 操作体46が第1状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)および深耕作業時のいずれの時においても、引張コイルばね61が連結体31を介して第1整地体18を下方に付勢する状態となり、(【0044】) 引張コイルばね61の中心線Aと、第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bとがなす角度αに応じて、通常作業時に比べて、深耕作業時の方が、第1整地体18の接地圧が大きくなり、(【0045】) 操作体46が第2状態に設定された場合に、浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)とし、深耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を下方へ付勢する状態としてよく(【0064】)、 引張コイルばね61及び連結体31を含む、第1整地体18を付勢する機構は、カバー部10及び整地体16の上方に設けられている(上記イ)、 第1整地体18を付勢する機構。 <甲8作業機発明> 甲8発明の第1整地体18を付勢する機構が設けられた、 農作業機1。 (9)甲9 甲9には、次の記載及び図示がある。 ア 「【0013】 以下、この発明を図面に基づき説明する。 ロータリ耕耘装置1は、農業用トラクタの機体後部に昇降自在に連結されるものであり、このトラクタからの動力を入力する伝動ボックス2、伝動ボックスから左右側方に向けて延出している耕耘伝動筒3、耕耘伝動筒3の端部から下方に延出しているサイド耕耘伝動ケース4、サイド耕耘伝動ケース4とサイド支持部材5の下端部に軸架せる耕耘軸6、耕耘軸6から突設する爪ホルダ7、爪ホルダ7に取り付けられる耕耘爪8等を有する構成となっている。そして、耕耘爪8は、基部が爪ホルダ7に差し込まれ、該爪ホルダ7と耕耘爪8に設けられた取付孔9にボルト10を挿通してナット11により締付固定する構成となっている。」 イ 「【0017】 また図8は、前記作業機1の全体側面図を示し、同作業機1は、ロータリカバー25に対し、軸芯P回りに上下揺動自在に枢着して設けたリヤカバー26を持ち上げ方向に付勢可能なガススプリング27によって支持するように構成している。このガススプリング27はリヤカバー26とサイド耕耘伝動ケース4との間に装着支持している。これによって、リヤカバーの持ち上げ力が軽減され、付着した泥土の除去作業が容易に行える。」 ウ 図8 「 [図:0001425668000027.jpg] 」 (10)甲10 甲10には、次の記載及び図示がある。 ア 「【0016】 図1は、トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータ5の後方を覆うエプロン3を有する作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続され、エプロン3をコイルスプリング18aの復元力により圃場面に接地させるコンプレッションロッド18と、コイルスプリング18aの一端部が係止し、コンプレッションロッド18に複数段設けられた位置調節スリット18b1を適宜選択することで最適の接地圧が得られるように、コンプレッションロッド18の軸方向に摺動する係止部18bと、エプロン3に連結され、コイルスプリング18aの他端部が係止し、エプロン3の回転に伴って軸方向に移動するコンプレッションロッド18を摺接可能に支持するストッパ19と、エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21と、を備えるロータリ作業機において、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されているエプロン跳ね上げ軽減装置1の構成例を示す。」 イ 「【0020】 伝動フレーム14と支持フレーム15との下方には、作業ロータ5の爪7の回転範囲を覆い、作業機本体10を土砂から保護するシールドカバー本体2(メインカバーとも言う)が配置される。シールドカバー本体2は、図1~3に示すように、伝動フレーム14と支持フレーム15との下に突設された下部ブラケット14a、15aにフランジ2aにおいて接合されることにより両フレーム14、15に支持される。図7中、符号20は、圃場面上を転動することで、作業中にある作業ロータ5の圃場面からの深度を調整するためのゲージホイールである。 【0021】 シールドカバー本体2の、作業機本体10の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆うエプロン3(リアカバーとも言う)が伝動フレーム14の軸と平行な軸部2bの回りに回転自在に連結される。エプロン3の表面側、すなわち作業ロータ5の反対側の面には、エプロン3の圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロン3を跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッド18が接続される。 【0022】 コンプレッションロッド18の一端、すなわちトラクタ側の端部(上端)は、伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された上部ブラケット14b、15bに回転自在に連結され、他端(下端)は、エプロン3の表面に固定されたブラケット3aに軸方向の位置調整が自在な状態に接続される。コンプレッションロッド18には、コイルスプリング18aが内蔵されるか、外周を巻回することにより装着される。 【0023】 コイルスプリング18aの一端(上端)は、その軸方向に摺動可能な係止部18bに係止し、他端(下端)は、コンプレッションロッド18の軸方向に移動可能なストッパ19に係止しており、係止部18bの位置調節によりコイルスプリング18aが常に復元力を有する状態または復元力を有しない状態のいずれかにある。ストッパ19には、エプロン3のブラケット3aが接続されており、ストッパ19はエプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動する。 【0024】 前記または図1~3に示されるように、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合される。 【0025】 付勢手段21には、常に伸張方向に付勢されているが、伸縮部21aの内部に設けられたプッシュロッド21bの操作(例えば、プッシュロッド21bを押すと伸縮部21aが伸縮可能、離すとロック。この逆でもよい。)により伸縮部21aの伸張を任意の位置で停止可能なプッシュロックタイプのガススプリングが使用される。付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22によりコンプレッションロッド18に並列した状態で支持される。 【0026】 支持部材22の上面には、ガススプリング21のシリンダチューブ21cをコンプレッションロッド18に並列した状態で支持する支持部22a、22bが上向きに突設される。また、支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられる。ガススプリング21の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされる。」 ウ 「【0039】 エプロン3の跳ね上げ時にあっては、図1に示すように、係止部18bを、複数段設けられた位置調節スリット18b1の上側(連結ピン23側)方向、つまり係止部18bが最上段のスリット位置よりも上側(連結ピン23側)に位置するように、まず移動させることで、コイルスプリング18a及びストッパ19の上側(連結ピン23側)への移動が許容される。また、その状態において、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが押し込まれ(図6(a)参照)、押圧部24cが受容部25aに突いた状態でピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされる。そして、跳ね上げられたエプロン3は、ストッパ19がコンプレッションロッド18の図示しない係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持される。」 エ 図1 「 [図:0001425668000028.jpg] 」 オ 図3 「 [図:0001425668000029.jpg] 」 (11)甲11 甲11は、本件特許に係る出願の平成30年 4月 5日付け拒絶理由通知書であり、次の事項が記載されている。 「相違点1:請求項1に係る発明は、エプロン跳ね上げ補助機構が、着脱可能に装着されるのに対し、引用文献1に記載された発明は、その点について明記はされていない点。 相違点1について検討する。 メンテナンスの容易性等を考慮して、各種部材を着脱可能とする技術は、例示するまでもなく周知技術であり、また、複数の部品をまとめ1つのキットとして着脱可能とする技術も、例示するまでもなく周知技術である。 してみると、引用文献1に記載された発明において、上記周知技術を適用し、相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。」 (12)甲12 ア 甲12の記載事項 甲12に係る先願(出願人及び発明者は、本件特許に係る出願の出願人及び発明者と、同一ではない。)の明細書及び図面には、次の記載及び図示がある。 (ア)「【0001】 本発明は、適切な整地作業ができる農作業機に関するものである。」 (イ)「【0014】 図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、トラクタの走行により圃場を前方である進行方向に移動しながら農作業である代掻作業をする代掻作業機である。」 (ウ)「【0019】 機体6のチェーンケース9およびブラケット10間には、所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体11が回転可能に設けられている。耕耘体11は、入力軸側からの動力により回転する左右方向の耕耘軸である回転軸(図示せず)と、この回転軸に取り付けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪12とを有している。なお、耕耘体11の上方部が機体6の耕耘カバー部13にて覆われている。 【0020】 機体6の耕耘カバー部13の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする整地体21が上下方向に回動可能に設けられている。つまり、整地体21は、機体6の耕耘カバー部13に対して上下方向に回動可能となっている。 【0021】 整地体21は、図3等にも示されるように、耕耘カバー部13の後端部に上端部がゴム製の弾性板22を介して連結された第1整地体である第1整地板(均平板)23と、この第1整地板23の下端部に前端部が左右方向の軸25を中心として回動可能に連結された第2整地体である第2整地板(レーキ)24とを有している。なお、第1整地板23の上端部内側には、複数本のスプリングレーキ26が取り付けられている。 【0022】 そして、中央作業部2は、整地体21を付勢する複数、例えば左右1対で2つの整地体付勢部31を有している。 【0023】 整地体付勢部31は、図3および図4等に示されるように、機体6の耕耘カバー部13と整地体21の第1整地板23とを連結する連結手段32を有している。連結手段32は、それぞれ回動可能な複数の連結部材、すなわち例えば第1連結アーム33および第2連結アーム34を有している。 【0024】 第1連結アーム33の一端部は、耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36に左右方向の軸37を中心として回動可能に取り付けられている。第1連結アーム33の他端部には、第2連結アーム34の一端部が左右方向の軸38を中心として回動可能に取り付けられている。この第2連結アームの他端部は、第1整地板23の上方突出状のアーム取付部39に左右方向の軸40を中心として回動可能に取り付けられている。 【0025】 また、整地体付勢部31は、耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さに関係なく、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する第1付勢手段41を有している。 【0026】 第1付勢手段41は、整地体21の接地圧が減少するように、整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する伸縮可能な弾性体である第1ガススプリング42を有している。 【0027】 第1ガススプリング42は、長手状のガススプリング本体部43と、このガススプリング本体部43内に対して出入りするロッド部44とにて構成されている。 【0028】 ガススプリング本体部43の基端部は、第1連結アーム33の長手方向中間部、すなわち例えば後端部付近に左右方向の軸45を中心として回動可能に取り付けられている。」 (エ)「【0035】 また、整地体付勢部31は、耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合(深耕作業の場合)にのみ、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を下方に付勢する第2付勢手段61を有している。」 (オ)「【0042】 そして、耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも浅い場合には、第1連結アーム33の当接部33aは、回動部材70の当接受部81には当接せず、この当接受部81の下面から下方に離れる。その結果、第2付勢手段61は作用せず、第1付勢手段41のみが作用し、第1付勢手段41にて整地体21が上方に付勢される。 【0043】 また、耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合には、機体6に対する整地体21の上方回動に応じて第1連結アーム33が上方回動し、この第1連結アーム33の当接部33aが回動部材70の当接受部81の下面に当接する。その結果、第1付勢手段41および第2付勢手段61の両方が作用し、第1付勢手段41にて整地体21が上方に付勢されかつ第2付勢手段61にて整地体21が下方に付勢される。 【0044】 なおここで、機体6のガススプリング取付部65に対する第2付勢手段61の第2ガススプリング62の取付位置の変更により、第2付勢手段61が作用(整地体21の下方付勢である押さえ)を開始する押さえ開始深さ(第2付勢手段作用開始深さ)が調整可能となっている。 ・・・ 【0047】 このため、この脱着可能な脱着ピン66を挿入するガススプリング取付部65の取付用孔部86を変えることで、押さえ開始深さの調整が可能である。 【0048】 なお、例えば図5に示すように、最も前に位置する取付用孔部86に脱着ピン66を挿入して第2ガススプリング62を取り付けた場合には、第2付勢手段61がほとんど作用せず、第2ガススプリング62がフリー状態に略維持される。」 (カ)「【0056】 次に、農作業機1の作用等を説明する。 【0057】 例えば耕耘深さを比較的深くして行う荒代作業時等において、中央作業部2および延長作業部3の各耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深くなると、第1付勢手段41および第2付勢手段61の両方が作用し、その結果、第1付勢手段41の第1ガススプリング42の付勢力で整地体21,111が上方に付勢され、かつ、第2付勢手段61の第2ガススプリング62の付勢力で整地体21,111が下方に付勢される。 【0058】 このため、整地体21,111の接地圧が耕耘深さに応じた所望値に設定され、各耕耘体にて多く耕耘される耕耘土に対して整地体21,111の接地圧が十分であり、適切な整地作業が行われる。 【0059】 また、例えば耕耘深さを比較的浅くして行う仕上げ代作業時等において、中央作業部2および延長作業部3の各耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも浅くなると、第2付勢手段61は作用せず、第1付勢手段41のみが作用し、第1付勢手段41の第1ガススプリング42の付勢力で整地体21が上方に付勢される。 【0060】 このため、整地体21,111の接地圧が耕耘深さに応じた所望値に設定され、適切な整地作業が行われる。 【0061】 なお、水田圃場の土質等に応じて、操作ハンドル50の切り換えにより第1付勢手段41の上方付勢力の大きさ(浮かせの強さ)を調整したり、第2ガススプリング62の取付位置の変更により第2付勢手段61による押さえが効きはじめる耕耘深さ(タイミング)を調整する。つまり、代掻作業において、状況により耕耘深さや、押さえを開始するタイミングが圃場条件によりさまざまであるため、押さえのタイミングを調整できるようになっている。 【0062】 そして、このような農作業機1によれば、中央作業部2および延長作業部3の各耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも浅い場合には第1付勢手段41のみが作用し、各耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合には第1付勢手段41および第2付勢手段61の両方が作用するため、耕耘深さに拘らず、適切な整地作業ができ、よって、代掻作業の効率化を図ることができる。」 (キ)「【0068】 なお、第1付勢手段41は、操作ハンドル50を有する付勢力調整可能なものには限定されず、例えば図7に示すように、第1ガススプリング42の付勢力の調整ができないものでもよい。 【0069】 この図7の構成では、第1ガススプリング42のガススプリング本体部43の基端部は、第1連結アーム33の後端側の軸38に回動可能に取り付けられている。また、ロッド部44の先端部は、アーム取付部36に左右方向の軸20を中心として回動可能に取り付けられている。」 (ク)図3 「 [図:0001425668000030.jpg] 」 (ケ)図4 「 [図:0001425668000031.jpg] 」 (コ)図5 「 [図:0001425668000032.jpg] 」 (サ)図7 「 [図:0001425668000033.jpg] 」 イ 認定事項 上記ア(ウ)及び図3より、整地体付勢部31は、耕耘カバー部13及び整地体21の上方に配置されていることが認められる。 また、上記ア(ウ)、(キ)及び図7より、耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36において、第1連結アーム33の一端部が取り付けられる軸37の位置と、第1ガススプリング42のロッド部44の先端部が取り付けられる軸20の位置とは、上下方向に離れていることが認められる。 ウ 甲12発明及び甲12作業機発明 上記ア及びイより、甲12には、次の発明(以下、「甲12発明」及び「甲12作業機発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲12発明> 所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体11が設けられ(【0019】)、 耕耘体11の上方部が耕耘カバー部13にて覆われており(【0019】)、 耕耘カバー部13の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする整地体21が上下方向に回動可能に設けられている(【0020】)農作業機1において、 整地体21を付勢する整地体付勢部31であって(【0022】)、 耕耘カバー部13と整地体21の第1整地板23とを連結する連結手段32を有し(【0023】)、 連結手段32は、第1連結アーム33および第2連結アーム34を有し(【0023】)、 第1連結アーム33の一端部は、耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36に左右方向の軸37を中心として回動可能に取り付けられ、第2連結アームの他端部は、第1整地板23の上方突出状のアーム取付部39に回動可能に取り付けられ(【0024】)、 整地体付勢部31は、耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さに関係なく、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する第1付勢手段41を有し(【0025】)、 第1付勢手段41は、整地体21の接地圧が減少するように、整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する伸縮可能な弾性体である第1ガススプリング42を有し(【0026】)、 第1ガススプリング42は、ガススプリング本体部43と、ロッド部44とにて構成され(【0027】)、 また整地体付勢部31は、耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合(深耕作業の場合)にのみ、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を下方に付勢する第2付勢手段61を有しており(【0035】)、 耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合には、機体6に対する整地体21の上方回動に応じて第1連結アーム33が上方回動し、この第1連結アーム33の当接部33aが回動部材70の当接受部81の下面に当接する結果、第1付勢手段41および第2付勢手段61の両方が作用し、第1付勢手段41にて整地体21が上方に付勢されかつ第2付勢手段61にて整地体21が下方に付勢され、(【0043】) 機体6のガススプリング取付部65に対する第2付勢手段61の第2ガススプリング62の取付位置の変更により、第2付勢手段61が作用(整地体21の下方付勢である押さえ)を開始する押さえ開始深さ(第2付勢手段作用開始深さ)が調整可能となっており、脱着可能な脱着ピン66を挿入するガススプリング取付部65の取付用孔部86として、最も前に位置する取付用孔部86に脱着ピン66を挿入して第2ガススプリング62を取り付けた場合には、第2付勢手段61がほとんど作用せず、第2ガススプリング62がフリー状態に略維持され、(【0044】、【0047】、【0048】) 第1ガススプリング42のガススプリング本体部43の基端部は、第1連結アーム33の後端側の軸38に回動可能に取り付けられており、また、ロッド部44の先端部は、アーム取付部36に左右方向の軸20を中心として回動可能に取り付けられており、(【0069】) 整地体付勢部31は、耕耘カバー部13及び整地体21の上方に配置されており(上記イ)、 耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36において、第1連結アーム33の一端部が取り付けられる軸37の位置と、第1ガススプリング42のロッド部44の先端部が取り付けられる軸20の位置とは、上下方向に離れている(上記イ)、 整地体付勢部31。 <甲12作業機発明> 甲12発明の整地体付勢部31が設けられた、 農作業機1。 (13)甲13 甲13は、本件特許の原出願の公開公報である。 3 無効理由1について 請求人の主張する無効理由1は、上記第4の1(1)のとおり、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明を主たる引用発明とした、新規性欠如及び進歩性欠如である。 (1)甲1の刊行物公知性について 甲1の裏表紙には「2012-8-1」という記載があり、当該記載は、2012年(平成24年)8月1日を意味すると認められる。 甲2~甲4は、それぞれ、小橋工業の新製品の発表を記載した新聞記事であり、甲2~甲4に示される新製品は、メーカー名(小橋工業)、シリーズ名(スーパーシリーズ)、製品名(アース)及び型式(FTE200T、FTE220T、FTE240T)であり、発売時期は、平成24年9月とされる。これらの記載と、甲1のローターのメーカー名(小橋工業株式会社、上記1ア(ア))、シリーズ名(Super Series、上記1ア(ア))、製品名(Earth、上記1ア(ア))及び型式(FTE200T、FTE220T、FTE240T、上記1ア(コ))は整合しており、甲1の「2012-8-1」が、2012年(平成24年)8月1日を意味し、新製品の取扱説明書が発売より前に準備されたと理解される。 そして、甲1に係る取扱説明書について、該当する製品が2012年9月に発売されたにもかかわらず、当該取扱説明書の頒布が本件特許の原出願日である平成24年11月16日より後となったと考えるべき事情はない。また、甲1に係る取扱説明書の作成者である被請求人は、甲1が本件特許の原出願より前に頒布された刊行物であることを認めている(上記第5の2(1))。 以上のとおりであるから、甲1は、本件特許の原出願日である平成24年11月16日より前に頒布された刊行物であると認められる。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「耕うん・整地用の作業機であるコバシツーウェイローター」は、「耕うん」用の作業機であるから、本件発明1の「耕耘作業機」に相当する。 (イ)甲1発明の「コバシツーウェイローター」に「設けられ」た「耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪」は、本件発明1の「耕耘作業機に設けられた作業ロータ」に相当する。 (ウ)甲1発明の「耕うん軸及び耕うん軸から延びる複数の耕うん爪の上方を覆うように設けられ」た「シールドカバー」は、本件発明1の「耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバー」に相当し、その「シールドカバー」の「後端部」に「設けられ」た、「上下方向に回転可能」な「エプロン」は、「耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロン」に相当する。 (エ)甲1発明の「エプロンはね上げ補助装置であ」る「クイックアシスト」は、本件発明1の「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」に相当する。 (オ)甲1発明の「ガススプリング」は、伸縮動作を行い、弾性力を用いていることが自明であるから、本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に相当する。 (カ)甲1発明の、「リンクの部材」の「部材B」及び「部材C」は、「部材C」に着目すると「シールドカバーに接続された部材Aの後端部を貫通するピンに、ガススプリングの後側端部及び部材Cの前下端部が接続され」ているから、本件発明1の「伸縮部材の一端に接続され」た「リンク部材」に相当する。また、甲1発明の「リンクの部材」の「部材B」及び「部材C」は、「ガススプリングの伸縮動作に伴って、・・・部材Cが、シールドカバーに接続された部材Aに対して部材Aの後端部のピンを軸として回転」するとともに、「部材B」も「部材C」の回転に対応して角度を変えることが明らかであるから、本件発明1の「前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材」に相当する。 (キ)本件発明1において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される」ことと、甲1発明において、「クイックアシスト」の「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」が「シールドカバー及びエプロンの上方に配置」されることとは、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に設けられる」点で共通する。 (ク)上記(ア)~(キ)より、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点において一致する。 <一致点> 耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構であって、 弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と、 前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に設けられる、エプロン跳ね上げ補助機構。 (ケ)そして、本件発明1と甲1発明とは、次の相違点において相違する。 <相違点1-1> 「エプロン跳ね上げ補助機構」が、本件発明1は、「着脱可能に装着される」のに対し、甲1発明は、着脱可能に装着されるか不明な点。 イ 検討・判断 (ア)新規性について 上記ア(エ)において対比したとおり、甲1発明の「クイックアシスト」が本件発明1の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する。 甲1発明の「クイックアシスト」は、「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」を有するところ、これらの部材を有する「クイックアシスト」を着脱可能とすることは、甲1には記載されていない。そして、「コバシツーウェイローター」という製品の取扱説明書である甲1に、「クイックアシスト」の装着や取り外しに関する記載がないことからすれば、頒布された刊行物である甲1において、「クイックアシスト」を「着脱可能に装着」するという技術思想が記載されているということはできない。また、「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」を有する甲1発明の「クイックアシスト」について、着脱可能なものとすることが、技術常識であったということもできない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-1に係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、相違点1-1は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 (イ)進歩性について 上記(ア)において検討したとおり、頒布された刊行物である甲1において、「クイックアシスト」を「着脱可能に装着」するという技術思想は記載されていない。また甲1において、目次に示されるとおり「ローターの組立」、「ジョイントの取付準備」、「トラクタへの装着」、「標準アタッチメントの取扱方法」及び「耕うん爪の取付け」といった事項について説明がされている一方、「クイックアシスト」の取り付けや取り外しに関する説明がないことからすれば、甲1発明に係る「クイックアシスト」を「着脱可能」とすることについて、甲1中で示唆がされているともいえない。 甲2~甲4は、新聞記事であって、甲1発明に係る「クイックアシスト」を「着脱可能」とすることを記載または示唆するものではない。 甲5~甲7は、本件特許の原出願日より後に作成された証明書や報告書であるか、本件特許の原出願より前に頒布または公開されたことについて主張・立証のない刊行物であるので、無効理由1において上記相違点1-1について判断するうえで参酌することはできない。 なお、甲5中には、上記2(5)アに示した紙が含まれており、当該紙には「FTE-Oシリーズ(2012年7月2日新聞発表)」と記載されるとともに、2つの図が示されているが、同日またはその翌日の新聞記事である甲2~甲4にこれらの図は掲載されておらず、本件無効審判における全ての証拠及び弁論の全趣旨に照らしても、本件原出願より後に作成された甲5中に含まれる上記2つの図が本件原出願より前に公開されたと考えるべき事情はない。したがって、甲5中に含まれる上記2(5)アに示す図の内容も、無効理由1を検討するうえで参酌することはできない。 甲9及び甲10には、リヤカバーまたはエプロンを持ち上げる方向に付勢する装置に用いる弾性部材として、ガススプリングを用いることが記載されている。 しかしながら、甲9における「ガススプリング27」は、「作業機1」の「リヤカバー26」と「サイド耕耘伝動ケース4」との間に装着されるものであり、甲1発明においてガススプリングを含む「クイックアシスト」とは、配置や構成及び接続対象が異なるから、甲1発明において「クイックアシスト」を「着脱可能」とすることを示唆するものではない。 また、甲10において「ガススプリング」である「付勢手段21」は、「コンプレッションロッド18と並列に配置」されて「コンプレッションロッド18に間接的に接合」されるものであるから、甲1発明においてガススプリングを含む「クイックアシスト」とは、構成及び接続対象が異なるから、甲1発明において「クイックアシスト」を「着脱可能」とすることを示唆するものではない。 そして、甲9や甲10に示されるガススプリング自体が周知技術であることや、ガススプリングが消耗品であるという一般論を根拠として、甲1発明においてガススプリングを含む「クイックアシスト」を着脱可能とすることが想到容易ということもできない。 したがって、無効理由1について請求人が言及する甲2~甲7、甲9及び甲10を考慮しても、甲1発明において上記相違点1-1に係る構成に至ることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-1に係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 ウ 請求人の主張について (ア)新規性欠如に関する主張 請求人は、上記相違点1-1は相違点でないから、本件発明1は甲1に記載された発明と同一である旨を主張している。当該請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 a 甲1に記載された発明 甲1には、審判請求書において請求人が認定したとおりの甲1発明A及び甲1発明B(上記第4の3(2)ウ)が記載されており、甲1発明A及び甲1発明Bは、「クイックアシスト」が「着脱可能」である構成を有する(上記第4の3(2)ウ)から、相違点1-1は相違点ではない。 b 甲5~甲7の参酌 甲1に記載された発明を認定するうえで、甲1に記載された型式のローターに係る甲5~甲7の記載は、参酌することができる(上記第4の3(2)イ)。 c 甲1の記載において「クイックアシスト」が「着脱可能」であること 「ここで、消耗品であるガススプリングが着脱可能で、かつ、リンク部材も着脱可能であることから、これらガススプリング及びリンク部材からなるクイックアシストがシールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着(固定)されるものであることは明らかである。」(審判請求書18頁1~4行) 「より具体的に述べると、甲第1号証の第29頁及び第37頁の図(次頁参照)に図示された「支点ピン、割ピン、座金、ストップリング」は、いずれも着脱可能な部品であるから、当該部品を外すことにより、少なくともガススプリング及びリンク部材を有するクイックアシストをシールドカバー及びエプロンの上方から取り外すことができる。 また、当該部品を用いることによって、少なくともガススプリング及びリンク部材を有するクイックアシストをシールドカバー及びエプロンの上方に取り付けることができる。 したがって、甲第1号証に記載された発明が備える構成は、本件発明1の「・・・着脱可能に装着される、エプロン跳ね上げ補助機構」という構成や、本件発明6の「エプロン跳ね上げ補助機構は、・・・着脱可能に固定される」という構成に相当する。 [図:0001425668000034.jpg] [図:0001425668000035.jpg] [図:0001425668000036.jpg] [甲第1号証の第29頁及び第37頁の図]」(請求人陳述要領書6頁9行~7頁) (イ)上記(ア)の主張に対する検討 上記(ア)の請求人の主張について、検討する。 a 甲5~甲7の記載の参酌 事案に鑑み、まず、甲5~甲7の参酌の可否について、検討する。 特許法29条1項3号所定の刊行物に記載された発明の認定に当たり、特定の刊行物の記載事項と、これとは別個独立の刊行物等の記載事項を組み合わせて認定することは、原則として許されない。 無効理由1は、本件原出願より前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明を、主たる引用発明とした、新規性及び進歩性の欠如をいう無効理由であって、甲1の取扱説明書で言及される実機の製品によって公然実施がされた発明を、主たる引用発明とする無効理由ではない。 そして、特許法29条1項3号に係る刊行物である甲1に記載された発明を認定するうえで、甲1で言及される製品と型番が同じ製品に関するからといって、本件特許の原出願より後に作成された資料である甲5及び甲6に記載された事項や、本件特許の原出願より前に公開されたことを作成者である被請求人が否定している甲7に記載された事項について、甲1に記載されていない事項であっても、一体として甲1に記載されたに等しいと評価することはできない。 したがって、特許法29条1項3号に係る刊行物である甲1に記載された発明を認定するうえで、甲5~甲7の記載を参酌できる旨をいう請求人の主張は、採用することができない。 b 甲1の記載において「クイックアシスト」が「着脱可能」であるか 次に、甲1の記載において、「クイックアシスト」が「着脱可能」であるかについて、検討する。 上記イ(ア)に指摘したとおり、甲1には、「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」を有する「クイックアシスト」の装着や取り外しに関する記載はない。 請求人は上記(ア)cにおいて、ガススプリングは消耗品であるから着脱可能であることが明らかである旨を主張し、また請求人が図示した「支点ピン、割ピン、座金、ストップリング」の全てが着脱可能であるから、少なくともガススプリング及びリンク部材を有するクイックアシストが着脱可能である旨を主張する。 しかしながら、取扱説明書である甲1において、ガススプリングを取り外し、また取り付けることは記載されていない。また、仮にガススプリングを消耗品として交換することがあるとしても、請求人が言及する「支点ピン、割ピン、座金、ストップリング」の全てを取り外すことは記載されていない。さらに、たとえ請求人が言及する「支点ピン、割ピン、座金、ストップリング」の全てを取り外したとしても、当該部品を取り外すことによって取り外すことができるのは、「クイックアシスト」が有する「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」のうち、請求人が着色した一部の部材である「ガススプリング」、「部材B」及び「部材C」のみであるから、甲1の記載において「クイックアシスト」が着脱可能となるものではない。 したがって、請求人の上記(ア)cの主張を考慮しても、甲1の記載に基づいて、「クイックアシスト」が「着脱可能」である構成を認定することはできない。 c 小括 上記a及びbより、請求人の主張について検討しても、甲1に記載された発明として、「クイックアシスト」が「着脱可能」である構成を認定することはできない。 そして、甲1に記載された発明は、上記2(1)ウに認定した甲1発明のとおり認定されるべきであり、本件発明1と甲1発明とは、上記イ(ア)に認定した相違点1-1において相違する。 したがって、請求人の主張を考慮しても、本件発明1の新規性について、上記イ(ア)の判断を変更すべき事情はない。 (ウ)進歩性欠如に関する主張 請求人は、上記相違点1-1に関して、以下のように想到容易である旨を主張している。 「また、後述するように、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例示するまでもないが、例えば甲第9号証及び甲第10号証に記載されているように、周知技術(少なくとも公知技術)である。 それゆえ、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(審判請求書20頁12~17行) 「甲第9号証及び甲第10号証は、エプロン跳ね上げ補助機構(甲第9号証記載のガススプリング27からなるリヤカバー持ち上げ補助機構、甲第10号証記載のガススプリング21からなるエプロン跳ね上げ補助機構)を着脱可能にすることが周知技術(少なくとも公知技術)であることを示す証拠である。」(請求人陳述要領書8頁2~5行) 「甲第1号証に記載された発明(甲1発明A、甲1発明B)は、本件発明1及び6と同一であるが、仮に両者が同一でないとしても、メンテナンスの容易性を図るという自明な課題を解決するために、甲第1号証記載のクイックアシストに甲第9号証及び甲第10号証記載のエプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にするという周知技術を適用すれば、本件発明1及び本件発明6に到達する。」(請求人陳述要領書8頁13~17行) (エ)上記(ウ)の主張に対する検討 上記(ウ)の請求人の主張について検討する。 上記イ(イ)に指摘したとおり、甲9及び甲10には、リヤカバーまたはエプロンを持ち上げる方向に付勢する装置に用いる弾性部材として、ガススプリングを用いることが記載されているが、ガススプリングを含む装置の配置や構成及び接続対象が甲1発明における「クイックアシスト」とは異なっているから、甲1発明に組み合わせられるものではなく、甲1発明における「クイックアシスト」を「着脱可能」とすることを示唆するものでもない。 また、仮にガススプリングが消耗品であるという理由で、ガススプリング自体を着脱可能とすることが設計事項あるいは想到容易であったとしても、「リンクの部材」の「部材A~D」及び「ガススプリング」を有する甲1発明の「クイックアシスト」について、着脱可能なものとすることが想到容易とはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-1に係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、請求人の主張を考慮しても、本件発明1の進歩性について、上記イ(イ)の判断を変更すべき事情はない。 エ 本件発明1の小括 以上のとおりであるから、本件発明1について、無効理由1は理由がない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明2~5が有する本件発明1の構成について、前記(2)に示したとおりであるから、本件発明2~5において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明2~5について、無効理由1は理由がない。 (4)本件発明6について 本件発明6は、実質的に、本件発明1に係るエプロン跳ね上げ補助機構を、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に固定した、耕耘作業機の発明である。 ア 対比 本件発明1に係る発明において特定される、耕耘作業機に関する構成、耕耘作業機に対するエプロン跳ね上げ補助機構の配置、及び上記(2)アにおける本件発明1と甲1発明との対比を踏まえて、本件発明6と甲1作業機発明とを対比すると、両者は、次の相違点1-6で相違し、その余の点で一致する。 <相違点1-6> 「エプロン跳ね上げ補助機構」が、本件発明6は、「着脱可能に固定される」のに対し、甲1作業機発明は、着脱可能に固定されるか不明な点。 イ 検討・判断 相違点1-6は、本件発明1と甲1発明との相違点1-1と、「装着」及び「固定」という表記が異なるのみで、実質的に同じ相違点である。 そして、相違点1-6についての検討・判断は、上記(2)イにおいて示したのと同様である。 したがって、本件発明6について、無効理由1は理由がない。 (5)本件発明7~10について 本件発明7~10は、本件発明6の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明7~10が有する本件発明6の構成について前記(4)に示したとおりであるから、本件発明7~10において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明7~10について、無効理由1は理由がない。 (6)無効理由1の小括 上記(1)~(5)に示したとおりであるので、本件発明1~10について、無効理由1は理由がない。 4 無効理由2について 請求人の主張する無効理由2は、上記第4の1(2)のとおり、本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第8号証に記載された発明を主たる引用発明とした、新規性欠如及び進歩性欠如である。 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲8発明とを対比する。 (ア)甲8発明の「耕耘作業をする耕耘体11が設けられ」る「農作業機1」は、本件発明1の「耕耘作業機」に相当する。 (イ)甲8発明の「農作業機1」に「設けられ」て「所定方向に回転しながら耕耘作業をする」ものである「耕耘体11」は、本件発明1の「耕耘作業機に設けられた作業ロータ」に相当する。 (ウ)甲8発明において、「耕耘体11の上方部は、機体6のカバー部10にて覆われて」いるから、甲8発明の「カバー部10」は、本件発明1の「作業ロータの上方を覆うシールドカバー」に相当する。 (エ)甲8発明において、「カバー部10の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする整地体16が上下回動可能に設けられ」るから、甲8発明の「整地体16」、及び「整地体16」が有する「第1整地体18」は、本件発明1の「シールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロン」に相当する。 (オ)甲8発明の「付勢体である引張コイルばね61」は、伸縮動作を行い、弾性力を用いていることが自明であるから、本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に相当する。 (カ)甲8発明の「連結体31」が有する「第1連結アーム33」及び「第2連結アーム34」は、互いに「軸部35を介して回動可能に連結され」たうえで、「第1連結アーム33の上端部は、機体6のアーム被連結部38に左右方向の軸部39を中心として回動可能に連結され」ており、「第2連結アーム34の下端部は、第1整地体18のアーム被連結部40に左右方向の軸部41を中心として回動可能に連結され」ており、「引張コイルばね61」の「他端引掛部63が連結体31の軸部35に引っ掛けられて」いるから、「引張コイルばね61」が一端に接続されており、「引張コイルばね61」の伸縮により回転動作を行うことは明らかである。 したがって、甲8発明の「連結体31」が有する「第1連結アーム33」及び「第2連結アーム34」は、本件発明1の「伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材」に相当する。 (キ)甲8発明における、「第1整地体18を付勢する機構」と、本件発明1における、「該エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」とは、エプロンに力を作用する機構である点で、共通する。 そして、甲8発明において、「引張コイルばね61及び連結体31を含む、第1整地体18を付勢する機構」が「カバー部10及び整地体16の上方に設けられている」構成と、本件発明1において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される」構成とは、上記(ウ)、(エ)を踏まえると、エプロンに力を作用する機構が「シールドカバー及びエプロンの上方に設けられる」点で、共通する。 (ク)上記(ア)~(キ)より、本件発明1と甲8発明とは、次の一致点2-1において一致する。 <一致点2-1> 耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンに力を作用する機構であって、 弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と、 前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 シールドカバー及びエプロンの上方に設けられる、 エプロンに力を作用する機構。 (ケ)そして、本件発明1と甲8発明とは、次の相違点において相違する。 <相違点2-1A> エプロンに力を作用する機構が、本件発明1においては、「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」であるのに対し、甲8発明においては、「操作体46が第1状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)および深耕作業時のいずれの時においても、引張コイルばね61が連結体31を介して第1整地体18を下方に付勢する状態」となるものについて、「操作体46が第2状態に設定された場合」の「浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)」としてよいものである点。 <相違点2-1B> 本件発明1は、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能に装着される」のに対し、甲8発明は、そのように特定されていない点。 イ 検討・判断 (ア)新規性について a 相違点2-1Aについて 甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」は、「引張コイルばね61の中心線Aと、第1連結アーム33の両端側の回動支点(軸部35,39)を結ぶ線Bとがなす角度α」に応じて、「通常作業時」(浅耕作業時)及び「深耕作業時」の「第1整地体18の接地圧」を調整するものであって、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いるものである。そして、「操作体46が第2状態に設定された場合」について、「浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)」としてよいとしても、「深耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を下方へ付勢する状態」となるから、作業時において付勢の方向が上方となる場合があることをもって、第1整地体18を跳ね上げる操作を補助するものということはできない。また、整地体の作業時における接地圧を調整する付勢機構について、一時的に付勢の方向が上方となる場合があれば、非作業時に整地体を跳ね上げる際に、跳ね上げの操作が補助されることが、技術常識であったということもできない。 したがって、相違点2-1Aは実質的な相違点である。 b 相違点2-1Bについて 上記aにおいて、上記相違点2-1Aについて判断したとおり、甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」は、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いて、整地体の作業時における接地圧を調整する機構であるから、作業時に一時的に付勢の方向が上方となる場合があるからといって、非作業時に整地体を跳ね上げる操作を補助するものとして、着脱可能なものとはいえない。したがって、相違点2-1Bは実質的な相違点である。 c 小括 上記a及びbより、本件発明1は甲8に記載された発明ではない。 (イ)進歩性について a 相違点2-1Aについて 甲8において、「第1整地体18を付勢する機構」は、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いて、整地体の作業時における接地圧を調整する機構であるところ、「操作体46が第2状態に設定された場合」について、「浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)」としてよいことをもって、非作業時に整地体を跳ね上げる操作を補助するものとすることが、甲8中で示唆されているとはいえない。 甲9及び甲10も、甲8発明において上記相違点2-1Aに係る構成とすることを示唆するものではない。 したがって、無効理由2について請求人が言及する甲9及び甲10を考慮しても、甲8発明において上記相違点2-1Aに係る構成に至ることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。 b 相違点2-1Bについて 甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」を、非作業時に整地体を跳ね上げる操作を補助するものとして、着脱可能とすることは、甲8中で示唆されているとはいえない。 甲9及び甲10には、リヤカバーまたはエプロンを持ち上げる方向に付勢する装置に用いる弾性部材として、ガススプリングを用いることが記載されているが、甲8発明において上記相違点2-1Bに係る構成とすることを示唆するものではない。 したがって、無効理由2について請求人が言及する甲9及び甲10を考慮しても、甲8発明において上記相違点2-1Bに係る構成に至ることが、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点2-1Bに係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構について、取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 ウ 請求人の主張 (ア)新規性欠如に関する主張 請求人は、上記相違点2-1A、2-1Bは相違点でないから、本件発明1は甲8に記載された発明と同一である旨を主張している。当該請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 a 甲8に記載された発明 甲8には、審判請求書において請求人が認定したとおりの甲8発明A及び甲8発明B(上記第4の3(3)ア)が記載されており、甲8発明A及び甲8発明Bは、「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「整地体16の跳ね上げを補助する」構成を有する(上記第4の3(3)ア)から、相違点2-1Aは相違点ではない。また、甲8発明A及び甲8発明Bは、「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」である構成を有する(上記第4の3(3)ア)から、相違点2-1Bは相違点ではない。 b 甲8の記載において「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「整地体16の跳ね上げを補助する」こと 「ここで、甲第8号証の請求項1には、圃場で耕耘整地作業をする作業時であるか、作業者がメンテナンスを行う非作業時であるかを何ら特定することなく、「・・・前記操作体が前記第2状態に設定された場合には、前記付勢体が・・・前記整地体を上方に付勢する状態となる」との記載があることから、甲第8号証記載の付勢体(引張コイルばね61)は、作業時か非作業時かに拘わらず、操作体が第2状態に設定された場合には、整地体(整地体16)を上方に付勢するものである。 しかも、甲第8号証の【0065】には、「第1整地体18の重量が引張コイルばね61の付勢力の分だけ軽くなる。」と明記されている。 それゆえ、耕耘整地作業後のメンテナンスとして、例えば整地体の内側部分や耕耘体に付着した土を掻き落としたり、耕耘体の耕耘爪を取り替えたりする場合等の非作業時において、操作体が第2状態に設定された場合、付勢体(引張コイルばね61)が整地体(整地体16)を上方に付勢するため、整地体の重量がその付勢力の分だけ軽くなり、その結果、作業者による整地体の跳ね上げ(持ち上げ)が補助される。 よって、甲第8号証記載の上方付勢機構は、上記の如く「整地体(第1整地体18のみを有する構成の整地体)16を上方に付勢してこの整地体16の跳ね上げを補助する」ものである。」(審判請求書32頁4~21行) 「甲第8号証の引張コイルばね61を含む構造が、本件特許の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する理由は、次のとおりである。 [図:0001425668000037.jpg] すなわち、甲第8号証の上記図14に示されるように、操作体46が第2状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)に引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢し、この第1整地体18の重量が引張コイルバネ61の付勢力の分だけ軽くなる(甲第8号証の【0065】)。 それゆえ、例えば整地体16の内側部分や耕耘体11に付着した土を掻き落とす等のメンテナンスを行う非作業時において、作業者が人力で整地体16を跳ね上げる場合も同様に、第1整地体18の重量が引張コイルばね61の付勢力の分だけ軽くなり、よって、作業者による整地体16の跳ね上げが補助される。 したがって、甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造は、本件特許の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する。」(請求人陳述要領書9頁3行~13行) c 甲8の記載において「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」であること 「イ 合議体の関心事項イについて (ア)カバー部との接続 甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造のうち、連結体31の第1連結アーム33の端部(軸39)及び操作体46の支軸部51が、アーム被連結部38を介してカバー部10の上方に着脱可能に接続されている。 なお付言すると、アーム被連結部38が「シールドカバー」の一部に相当するとした場合には、連結体31の第1連結アーム33の端部(軸39)及び操作体46の支軸部51が、カバー部10の上面に取り付けられたアーム被連結部38に着脱可能に接続されている。 また、アーム被連結部38が「エプロン跳ね上げ補助機構」の一部に相当するとした場合には、このアーム被連結部38が、カバー部10の上面に着脱可能に取り付けられている(甲第8号証の図3、図4、【0029】)。 (イ)整地体との接続 甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造のうち、連結体31の第2連結アーム34の端部(軸41)が、アーム被連結部40を介して整地体16の第1整地体18の上方に着脱可能に接続されている。 なお付言すると、アーム被連結部40が「エプロン」の一部に相当するとした場合には、連結体31の第2連結アーム34の端部(軸41)が、第1整地体18の上面に取り付けられたアーム被連結部40に着脱可能に接続されている。 また、アーム被連結部40が「エプロン跳ね上げ補助機構」の一部に相当するとした場合には、このアーム被連結部40が、第1整地体18の上面に着脱可能に取り付けられている(甲第8号証の図3、図4、【0029】)。 ウ 合議体の関心事項ウについて ・・・ すなわち、甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造と、カバー部10及び整地体16との接続は、上記「イ」のとおりであるから、甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造は、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着(固定)されている。」(請求人陳述要領書10頁1行~11頁13行) 「なお、甲第8号証に記載された「軸部39」、「軸部41」及び「支軸部51」が着脱可能であることは、当業者にとって自明である。」(審判請求書32頁22~23行) (イ)上記(ア)の主張に対する検討 上記(ア)の請求人の主張について、検討する。 a 甲8の記載において「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「整地体16の跳ね上げを補助する」か 上記イ(ア)aに指摘したとおり、甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」は、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いて、「通常作業時」(浅耕作業時)及び「深耕作業時」の「第1整地体18の接地圧」を調整するものであるから、「操作体46が第2状態に設定された場合」について、「浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)」としてよいとしても、非作業時に整地体を跳ね上げる際に、跳ね上げの操作を補助する、上方付勢機構であるということはできない。 甲8の【0064】には、「この第6の実施の形態では、操作体46が第2状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)となり、深耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を下方へ付勢する状態となる。」と記載されているところ、深耕作業時には、浅耕作業時よりも耕耘体11に対する第1整地体18の位置が上方となることは明らかであるから、引張コイルばね61は、浅耕作業時に対応する位置では第1整地体18を上方に付勢するものの、第1整地体18が上方へ移動して深耕作業時に対応する位置となると、第1整地体18を下方に付勢することとなる。また甲8には、第1整地体18が非作業時に最も下方となった位置における付勢の方向についても、記載されていない。したがって、引張コイルばね61を含む構造は、第1整地体18を非作業時に跳ね上げる過程における付勢の詳細が不明であるとともに、操作体46を第2状態に設定していれば一時的に第1整地体18を上方に付勢する場合があるとしても、その後には跳ね上げる向きとは逆向きに第1整地体18を付勢することとなると理解されるから、跳ね上げを補助する機構であると認めることはできない。 よって、請求人の上記(ア)bの主張を考慮しても、甲8に記載の引張コイルばね61を含む構造が、本件発明1の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する、とはいえない。 b 甲8の記載において「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」であるか 上記イ(ア)bに指摘したとおり、甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」は、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いて、整地体の作業時における接地圧を調整する機構であるから、作業時に一時的に付勢の方向が上方となる場合があるからといって、非作業時に整地体を跳ね上げる操作を補助する上方付勢機構として、着脱可能なものとはいえない。 また、甲8発明の「第1整地体18を付勢する機構」自体の着脱について検討しても、当該機構は「操作体46の軸部53」が「円弧状長孔部55に沿ってスライド可能に挿入され」た「アーム被連結部38」、及び「第2連結アーム34」が「回動可能に連結」された「アーム被連結部40」を含めて構成されると理解されるところ、「第1連結アーム33の上端部は、機体6のアーム被連結部38に左右方向の軸部39を中心として回動可能に連結され、アーム被連結部38は、機体6のカバー部10に固定的に取り付けられて」いる箇所、及び「第2連結アーム34の下端部は、第1整地体18のアーム被連結部40に左右方向の軸部41を中心として回動可能に連結され、アーム被連結部40は、第1整地体18の本体板部18aに固定的に取り付けられて」いる箇所の両方が着脱可能であることは、甲8には記載されていない。 よって、請求人の上記(ア)cの主張を考慮しても、甲8の記載において、「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」である、とはいえない。 c 小括 上記a及びbより、請求人の主張について検討しても、甲8に記載された発明として、「引張コイルばね61」及び「連結体31」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」である構成を認定することはできない。 そして、甲8に記載された発明は、上記2(8)ウに認定した甲8発明のとおり認定されるべきであり、本件発明1と甲8発明とは、上記イ(ア)に認定した相違点2-1A、2-1Bにおいて相違する。 したがって、請求人の主張を考慮しても、本件発明1の新規性について、上記イ(ア)の判断を変更すべき事情はない。 (ウ)進歩性欠如に関する主張 請求人は、上記相違点2-1Bに関して、以下のように想到容易である旨を主張している。 「イ 甲第9号証について 本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の記載がある。 ・・・ そして、消耗品であるガススプリング27は着脱可能であることから、その消耗品であるガススプリング27からなるリヤカバー持ち上げ補助機構(エプロン跳ね上げ補助機構)も着脱可能である。 ウ 甲第10号証について 本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の記載がある。 ・・・ そして、消耗品であるガススプリング21は着脱可能であることから、その消耗品であるガススプリング21からなるエプロン跳ね上げ補助機構も着脱可能である。」(審判請求書33頁11行~34頁15行) 「つまり、仮に本件発明1の構成1D(着脱可能な点)が甲第8号証に記載されていなかったとしても、甲第8号証に記載された発明において、構成1Dの如く着脱可能にすることは、単なる設計変更に過ぎない。 しかも、エプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にすることは、例示するまでもないが、例えば甲第9号証及び甲第10号証に記載されているように、周知技術(少なくとも公知技術)である。 それゆえ、本件発明1は、甲第8号証に記載された発明及び周知・公知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(審判請求書35頁19行~36頁1行) 「甲第8号証に記載された発明(甲8発明A、甲8発明B)は、本件発明1及び6と同一であるが、仮に両者が同一でないとしても、メンテナンスの容易性を図るという自明な課題を解決するために、甲第8号証記載の引張コイルばね61を含む構造に甲第9号証及び甲第10号証記載のエプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にするという周知技術を適用すれば、本件発明1及び本件発明6に到達する。」(請求人陳述要領書11頁15~20行) (エ)上記(ウ)の主張に対する検討 上記(ウ)の請求人の主張について検討する。 上記イ(イ)bに指摘したとおり、甲9及び甲10には、リヤカバーまたはエプロンを持ち上げる方向に付勢する装置に用いる弾性部材として、ガススプリングを用いることが記載されているが、甲8発明において、基本的には「第1整地体18を下方へ付勢する」「引張コイルばね61」を用いて、整地体の作業時における接地圧を調整する機構である「第1整地体18を付勢する機構」を、非作業時に整地体を跳ね上げる操作を補助するものとして、着脱可能とすることが、記載または示唆されているわけではない。 また、甲8発明に甲9または甲10に記載される事項を適用しても、相違点2-1A及び相違点2-1Bに係る本件発明1の構成に至るものではない。 そして、本件発明1は、上記相違点2-1A及び相違点2-1Bに係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、請求人の主張を考慮しても、本件発明1の進歩性について、上記イ(イ)の判断を変更すべき事情はない。 エ 本件発明1の小括 以上のとおりであるから、本件発明1について、無効理由2は理由がない。 (2)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明5が有する本件発明1の構成について、前記(1)に示したとおりであるから、本件発明5において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明5について、無効理由2は理由がない。 (3)本件発明6について 本件発明6は、実質的に、本件発明1に係るエプロン跳ね上げ補助機構を、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に固定した、耕耘作業機の発明である。 ア 対比 本件発明1に係る発明において特定される、耕耘作業機に関する構成、耕耘作業機に対するエプロン跳ね上げ補助機構の配置、及び上記(1)アにおける本件発明1と甲8発明との対比を踏まえて、本件発明6と甲8作業機発明とを対比すると、両者は、次の相違点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点2-6A> エプロンに力を作用する機構が、本件発明6においては、「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」であるのに対し、甲8作業機発明においては、「操作体46が第1状態に設定された場合には、通常作業時(浅耕作業時)および深耕作業時のいずれの時においても、引張コイルばね61が連結体31を介して第1整地体18を下方に付勢する状態」となるものについて、「操作体46が第2状態に設定された場合」の「浅耕作業時においては引張コイルばね61が第1整地体18を上方へ付勢する状態(第1整地体18の接地圧を減少させる状態)」としてよいものである点。 <相違点2-6B> 本件発明6は、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「着脱可能に固定される」のに対し、甲8作業機発明は、そのように特定されていない点。 イ 検討・判断 相違点2-6Aは、本件発明1と甲8発明との相違点2-1Aと、同じ相違点である。 また、相違点2-6Bは、本件発明1と甲8発明との相違点2-6Bと、「装着」及び「固定」という表記が異なるのみで、実質的に同じ相違点である。 そして、相違点2-1A、2-1Bについての検討・判断は、上記(1)イにおいて示したのと同様である。 したがって、本件発明6について、無効理由2は理由がない。 (4)本件発明10について 本件発明10は、本件発明6の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明10が有する本件発明6の構成について前記(3)に示したとおりであるから、本件発明10において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明10について、無効理由2は理由がない。 (5)無効理由2の小括 上記(1)~(4)に示したとおりであるので、本件発明1、5、6、10について、無効理由2は理由がない。 5 無効理由3について 請求人の主張する無効理由3は、上記第4の1(3)のとおり、本件特許の原出願の日前の他の特許出願であって本件特許の原出願後に出願公開された先願である特願2012-104775号(特開2013-230129号公報:甲第12号証)を証拠とした、拡大先願違反である。 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲12発明とを、対比する。 (ア)甲12発明において、「耕耘作業をする耕耘体11が設けられ」る「農作業機1」は、本件発明1の「耕耘作業機」に相当する。 (イ)甲12発明において、「所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体11」は、本件発明1の「作業ロータ」に相当する。 (ウ)甲12発明において、「耕耘体11の上方部が耕耘カバー部13にて覆われて」いるから、甲12発明の「耕耘カバー部13」は、本件発明1の「作業ロータの上方を覆うシールドカバー」に相当する。 (エ)甲12発明において、「耕耘カバー部13の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする整地体21が上下方向に回動可能に設けられ」るから、甲12発明の「整地体21」は、本件発明1の「シールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロン」に相当する。 (オ)甲12発明において、「整地体付勢部31」の「第1付勢手段41」が有する、「伸縮可能な弾性体である第1ガススプリング42」は、本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に相当する。 (カ)甲12発明において、「整地体付勢部31」の「連結手段32」が有する「第1連結アーム33」は、「第1連結アーム33の一端部は、耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36に左右方向の軸37を中心として回動可能に取り付けられ」ており、「第1ガススプリング42のガススプリング本体部43の基端部は、第1連結アーム33の後端側の軸38に回動可能に取り付けられて」いるから、「第1ガススプリング42」の一端に接続されており、「第1ガススプリング42」の伸縮に伴って回転動作を行うことは明らかである。したがって、甲12発明の「連結手段32」が有する「第1連結アーム33」は、本件発明1の「伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材」に相当する。 (キ)甲12発明における、「整地体21を付勢する整地体付勢部31」と、本件発明1における、「該エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」とは、エプロン(整地体21)に作用する機構である点で、共通する。 そして、甲12発明において、「整地体付勢部31」が「耕耘カバー部13及び整地体21の上方に配置されている」構成と、本件発明1において、「エプロン跳ね上げ補助機構」が「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方」に「着脱可能に装着される」構成とは、上記(ウ)、(エ)を踏まえると、エプロンに作用する機構が、シールドカバー及びエプロンの上方に配置される点で、共通する。 (ク)上記(ア)~(キ)より、本件発明1と甲12発明とは、次の一致点3-1において一致する。 <一致点3-1> 耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンに作用する機構であって、 弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と、 前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し、 前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に配置される、 エプロンに作用する機構。 (ケ)そして、本件発明1と甲12発明とは、次の相違点において相違する。 <相違点3-1A> エプロンに作用する機構が、本件発明1においては、「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」と特定されているのに対し、甲12発明においては、そのように特定されていない点。 <相違点3-1B> エプロンに作用する機構が、本件発明1は、「着脱可能に装着される」のに対し、甲12発明は、着脱可能に装着されるか不明である点。 イ 検討・判断 上記ア(キ)において対比したとおり、甲12発明における、「整地体付勢部31」と、本件発明1における、「該エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」とは、エプロン(整地体21)に作用する機構である点で、共通する。 (ア)相違点3-1Aについて 甲12発明の「整地体付勢部31」は、「耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さに関係なく、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する第1付勢手段41」と、「耕耘整地作業時(代掻作業時)において、耕耘体11の耕耘深さが押さえ開始深さよりも深い場合(深耕作業の場合)にのみ、連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を下方に付勢する第2付勢手段61」とを組み合わせたものであり、「第1付勢手段41」のみからなるものではない。 また、甲12発明の「整地体付勢部31」は、「下方に付勢する第2付勢手段61」について、「第2ガススプリング62の取付位置の変更により、第2付勢手段61が作用(整地体21の下方付勢である押さえ)を開始する押さえ開始深さ(第2付勢手段作用開始深さ)が調整可能」であり、「脱着可能な脱着ピン66を挿入するガススプリング取付部65の取付用孔部86として、最も前に位置する取付用孔部86に脱着ピン66を挿入して第2ガススプリング62を取り付けた場合には、第2付勢手段61がほとんど作用せず、第2ガススプリング62がフリー状態に略維持され」るものであるが、非作業時に「整地体21」を跳ね上げる操作を行う際に、「最も前に位置する取付用孔部86」に「第2ガススプリング62」が取り付けられていて「第1付勢手段41」の付勢力のみが働くというわけではないから、整地体21の跳ね上げを補助する、跳ね上げ補助機構であるとはいえない。 そして、甲12発明の「整地体付勢部31」について、非作業時に整地体21を跳ね上げる操作を行う際に跳ね上げを補助する機構とするには、「整地体付勢部31」の構成を具体的に変更することを要する。 したがって、相違点3-1Aは実質的な相違点である。 (イ)相違点3-1Bについて 甲12発明の「整地体付勢部31」について、「第1付勢手段41」が「連結手段32を介して整地体21の第1整地板23を常時上方に付勢する」機能を果たすには、「第1ガススプリング42のガススプリング本体部43の基端部は、第1連結アーム33の後端側の軸38に回動可能に取り付けられている」前提の下で、「耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36において、第1連結アーム33の一端部が取り付けられる軸37の位置と、第1ガススプリング42のロッド部44の先端部が取り付けられる軸20の位置とは、上下方向に離れている」ことを要することが明らかであるから、「耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36」は、単なる固定具ではなく、「整地体付勢部31」の「第1付勢手段41」が機能するうえで必要な部材であると理解される。 そうであるところ、当該「アーム取付部36」について、「耕耘カバー部13」に対して着脱可能であることは、甲12には記載されていない。 そして、甲12発明の「整地体付勢部31」について、単なる固定具ではなく「第1付勢手段41」が機能するうえで必要な部材である「アーム取付部36」を含めて、「耕耘カバー部13及び整地体21」から着脱可能とするには、「整地体付勢部31」の構成を具体的に変更することを要する。 そして、本件発明1は、上記相違点3-1Bに係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、相違点3-1Bは実質的な相違点である。 (ウ)小括 上記(ア)及び(イ)より、本件発明1と甲12発明とは相違点3-1A、3-1Bにおいて相違する。 そして、本件発明1は、上記相違点3-1A及び上記相違点3-1Bに係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、本件発明1は、先願明細書に記載された発明ではない。 ウ 請求人の主張について (ア)同一性に関する主張 請求人は、上記相違点3-1A、3-1Bは相違点でないから、本件発明1は甲12に記載された発明と同一である旨を主張している。当該請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 a 甲12に記載された発明 甲12には、審判請求書において請求人が認定したとおりの甲12発明A及び甲12発明B(上記第4の3(4)ア)が記載されており、甲12発明A及び甲12発明Bは、「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「上方付勢機構」が「整地体21の跳ね上げを補助する」構成を有する(上記第4の3(4)ア)から、相違点3-1Aは相違点ではない。また、甲12発明A及び甲12発明Bは、「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」である構成を有する(上記第4の3(4)ア)から、相違点3-1Bは相違点ではない。 b 甲12の記載において「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「上方付勢機構」が「整地体21の跳ね上げを補助する」こと 「ここで、甲第12号証の【0048】には、「・・・図5に示すように、最も前に位置する取付用孔部86に脱着ピン66を挿入して第2ガススプリング62を取り付けた場合には、第2付勢手段21がほとんど作用せず、第2ガススプリング62がフリー状態に略維持される。」と記載されている。 そして、当該図5(下参照)には、上方位置まで跳ね上げられた状態の整地体が、第1ガススプリング42にて上方に付勢されている状態(上向きの矢印)が図示されている。 それゆえ、耕耘整地作業後のメンテナンスとして、・・・等の非作業時において、第1ガススプリング42が整地体(整地体21)を上方に付勢するため、整地体の重量がその付勢力の分だけ軽くなり、その結果、作業者による整地体の跳ね上げ(持ち上げ)が補助される。 よって、甲第12号記載の上方付勢機構は、上記の如く「整地体(第1整地板23のみを有する構成の整地体)21を上方に付勢してこの整地体21の跳ね上げを補助する」ものである。」(審判請求書46頁1~12行) 「甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造(第1ガススプリング42を含む構造)が、本件特許の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する理由は、次のとおりである。 すなわち、甲第12号証の上記図5に示されるように、前後方向に並ぶ3つの取付用孔部86に脱着ピン66が挿入されることにより、第2付勢手段61の第2ガススプリング62がガススプリング取付部65に取り付けられた場合には、当接部33aが当接受部81に当接せず、第2ガススプリング62がフリー状態であるため、第1付勢手段41のみが作用する(甲第12号証の【0048】)。 つまり、このような場合には、下方付勢用の第2付勢手段61は作用せず、上方付勢用の第1付勢手段41のみが作用し、その結果、第1ガススプリング42が第1整地体23を上方へ付勢し、この第1整地板23の重量が第1ガススプリング42の付勢力の分だけ軽くなる。 それゆえ、例えば整地体21の内側部分や耕耘体に付着した土を掻き落とす等のメンテナンスを行う非作業時において、作業者が人力で整地体21を跳ね上げる場合も同様に、第1整地体23の重量が第1ガススプリング42の付勢力の分だけ軽くなり、よって、作業者による整地体16の跳ね上げが補助される。 したがって、甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造は、本件特許の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する。」(請求人陳述要領書12頁3行~13頁7行) c 甲12の記載において「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「上方付勢機構」が「着脱可能」であること 「イ 合議体の関心事項イについて (ア)耕耘カバー部との接続 甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造のうち、連結手段32の第1連結アーム33の端部(軸37)及び第1ガススプリング42のロッド部44の端部(軸20)が、アーム取付部36を介して耕耘カバー部13の上方に着脱可能に接続されている。 なお付言すると、アーム取付部36が「シールドカバー」の一部に相当するとした場合には、連結手段32の第1連結アーム33の端部(軸37)及び第1ガススプリング42のロッド部44の端部(軸20)が、耕耘カバー部13の上面に取り付けられたアーム取付部36に着脱可能に接続されている。 (イ)整地体との接続 甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造のうち、連結手段32の第2連結アーム34の端部(軸40)が、アーム取付部39を介して整地体21の第1整地板23の上方に着脱可能に接続されている。 なお付言すると、アーム取付部39が「エプロン」の一部に相当するとした場合には、連結手段32の第2連結アーム34の端部(軸40)が、第1整地板23の上面に取り付けられたアーム取付部39の上方に着脱可能に接続されている。 ・・・・ ウ 合議体の関心事項ウについて ・・・・ すなわち、甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造と、耕耘カバー部13及び整地体21との接続は、上記「イ」のとおりであるから、甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造は、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着(固定)されている。」(請求人陳述要領書13頁7行~14頁9行) 「なお、甲第12号証に記載された「軸20」、「軸37」及び「軸40」が着脱可能であることは、当業者にとって自明である。」(審判請求書46頁16~17行) (イ)上記(ア)の主張に対する検討 a 甲12の記載において「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「整地体付勢部31」が「整地体21」の跳ね上げを補助するか 上記イ(ア)に指摘したとおり、甲12発明における「整地体付勢部31」は、「上方に付勢する第1付勢手段41」と、「下方に付勢する第2付勢手段61」とを組み合わせたものであり、「上方に付勢する第1付勢手段41」のみからなるものではない。 また、上記イ(ア)に指摘したとおり、甲12発明の「整地体付勢部31」が有する、「下方に付勢する第2付勢手段61」について、「第2ガススプリング62の取付位置の変更」によって、「最も前に位置する取付用孔部86に脱着ピン66を挿入して第2ガススプリング62を取り付けた場合には、第2付勢手段61がほとんど作用せず、第2ガススプリング62がフリー状態に略維持され」るからといって、非作業時に「整地体21」を跳ね上げる操作を行う際に、「最も前に位置する取付用孔部86」に「第2ガススプリング62」が取り付けられていて「第1付勢手段41」の付勢力のみが働くというわけではないから、整地体21の跳ね上げを補助する、跳ね上げ補助機構であるとはいえない。 よって、請求人の上記(ア)bの主張を考慮しても、甲12に記載の「第1付勢手段41」を含む「整地体付勢部31」が、本件発明1の「エプロン跳ね上げ補助機構」に相当する、とはいえない。 b 甲12の記載において「第1ガススプリング42」及び「連結手段32」を有する「整地体付勢部31」が「着脱可能」であるか 上記イ(イ)に指摘したとおり、甲12発明において、「整地体付勢部31」が含む「第1付勢手段41」が機能するうえで、「耕耘カバー部13の上方突出状のアーム取付部36」は、単なる固定具ではなく必要な部材であるところ、当該「アーム取付部36」を含めて「整地体付勢部31」を「耕耘カバー部13及び整地体21」から着脱可能とすることは、甲12中には記載されていない。 よって、請求人の上記(ア)cの主張を考慮しても、甲12に記載の「第1付勢手段41」を含む「整地体付勢部31」が、「耕耘カバー部13及び整地体21」から着脱可能であるとはいえない。 (ウ)実質同一に関する主張 請求人は、相違点3-1Bについて、次のとおり主張している。 「また、仮に本件発明1の構成1D(着脱可能な点)が両者における一応の相違点であったとしても、当該相違点は、周知技術(例えば甲第9号証及び甲第10号証)の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないから、両者は実質的に同一である。」(審判請求書47頁15~18行) 「甲第12号証に記載された発明(甲12発明A、甲12発明B)は、本件発明1及び6と同一であるが、仮に両者に一応の相違があるとしても、メンテナンスの容易性を図るという自明な課題を解決するために、甲第12号証記載の第1付勢手段41を含む構造に甲第9号証及び甲第10号証記載のエプロン跳ね上げ補助機構を着脱可能にするという周知技術を適用することは、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、両者は実質的に同一である。」(請求人陳述要領書14頁15~20行) (エ)上記(ウ)の主張に対する検討 上記(ウ)の請求人の主張について、検討する。 上記3(2)イ(イ)に指摘したとおり、甲9及び甲10には、リヤカバーまたはエプロンを持ち上げる方向に付勢する装置に用いる弾性部材として、ガススプリングを用いることが記載されている。 しかしながら、甲9や甲10の記載を考慮しても、甲12発明の「整地体付勢部31」について、非作業時に整地体21を跳ね上げる操作を行う際に跳ね上げを補助するように構成を変更すること、及び、「耕耘カバー部13及び整地体21」から着脱可能とするように構成を変更することが、メンテナンスの容易性を図るという自明な課題を解決するための具体化手段における微差ということはできない。 そして、本件発明1は、上記相違点3-1A及び上記相違点3-1Bに係る構成により、上記1(2)に示したとおり、エプロン跳ね上げ補助機構の取り付け位置の自由度を高めるという技術的意義を有するものである。 したがって、上記(ウ)の主張を考慮しても、本件発明1の拡大先願違反の有無について、上記イ(イ)の判断を変更すべき事情はない。 エ 本件発明1の小括 以上のとおりであるから、本件発明1について、無効理由3は理由がない。 (2)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明5が有する本件発明1の構成について、前記(1)に示したとおりであるから、本件発明5において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明5について、無効理由3は理由がない。 (3)本件発明6について 本件発明6は、実質的に、本件発明1に係るエプロン跳ね上げ補助機構を、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に固定した、耕耘作業機の発明である。 ア 対比 本件発明1に係る発明において特定される、耕耘作業機に関する構成、耕耘作業機に対するエプロン跳ね上げ補助機構の配置、及び上記(1)アにおける本件発明1と甲12発明との対比を踏まえて、本件発明6と甲12作業機発明とを対比すると、両者は、次の相違点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点3-6A> エプロンに作用する機構が、本件発明6においては、「エプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」と特定されているのに対し、甲12作業機発明においては、そのように特定されていない点。 <相違点3-6B> エプロンに作用する機構が、本件発明6は、「着脱可能に固定される」のに対し、甲12作業機発明は、着脱可能に装着されるか不明な点。 イ 検討・判断 相違点3-6Aは、本件発明1と甲12発明との相違点3-1Aと、同じ相違点である。 また、相違点3-6Bは、本件発明1と甲12発明との相違点3-1Bと、「装着」及び「固定」という表記が異なるのみで、実質的に同じ相違点である。 そして、相違点3-1A、3-1Bについての検討・判断は、上記(1)イにおいて示したのと同様である。 したがって、本件発明6について、無効理由3は理由がない。 (4)本件発明10について 本件発明10は、本件発明6の構成を全て有し、さらに限定を付加したものである。 本件発明10が有する本件発明6の構成について前記(3)に示したとおりであるから、本件発明10において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明10について、無効理由3は理由がない。 (5)無効理由3の小括 上記(1)~(4)に示したとおりであるので、本件発明1、5、6、10について、無効理由3は理由がない。 6 無効理由4について 請求人の主張する無効理由4は、上記第4の1(4)のとおり、本件特許の出願が分割要件を満たしておらず、本件特許の出願日は現実の出願日であることを前提とし、本件特許の現実の出願日より前に頒布された刊行物である甲第13号証(原出願の公開公報)に記載された発明を主たる引用発明とした、新規性欠如及び進歩性欠如である。 (1)特許出願の分割の要件 特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものである(特許法第44条第1項柱書き)から、適法に分割されたものというためには、以下の(要件1)及び(要件3)が満たされる必要がある。また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされる(特許法第44条第2項本文)という特許出願の分割の効果を考慮すると、更に以下の(要件2)も満たされる必要がある。 (要件1)原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。 (要件2)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 (要件3)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 (2)原出願から本件特許に係る出願への分割の適否 ア 原出願の分割直前の明細書等に二以上の発明が包含されており、本件発明が、原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部ではないことは明らかであるから、(要件1)は満たされる。また、原出願の分割直前の明細書等は、原出願の出願当初の明細書等から補正されていない(当審において顕著な事実)から、(要件2)が満たされていれば、(要件3)も満たされる。 そこで、(要件2)が満たされているか否かを検討する。 (要件2)の検討にあたっては、分割出願の明細書等が「原出願の出願当初の明細書等」に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正が「原出願の出願当初の明細書等」との関係において、新たな技術的事項を追加する補正であるか否かの観点から検討する。 そして、当業者によって、原出願の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、補正が新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内においてするものということができる。 イ 原出願の出願当初の明細書等に記載された事項 原出願の出願当初の明細書及び図面の記載は、【0009】~【0016】において請求項1~8の番号が括弧書きで付記されていることを別として、1(1)に示した本件特許の明細書及び図面の記載と同一である。 ウ (要件2)についての検討・判断 (ア)本件発明1の構成1A「耕耘作業機に設けられた作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回転可能に設けられたエプロンの跳ね上げを補助するエプロン跳ね上げ補助機構」について 原出願の出願当初の明細書には、「以下、本発明のエプロン跳ね上げ補助機構及びこれを備える耕耘作業機の好ましい実施の形態について、図1~図7を参照しながら説明する。」(【0019】)、「耕耘ロータ20(図2(b)参照)の上側はシールドカバー22により覆われ」(【0022】)、「シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に図2(b)に示す軸23を介して枢支されている。」(【0023】)、「シールドカバー22及びエプロン25の上方には、作業者がエプロン25の跳ね上げ操作を行う際に、エプロン25が容易に跳ね上げられるように附勢するエプロン跳ね上げ補助機構40が設けられている。」(【0025】)との記載があり、「耕耘ロータ20」、「シールドカバー22」、「エプロン25」、「エプロン跳ね上げ補助機構40」が、それぞれ本件発明1の「作業ロータ」、「シールドカバー」、「エプロン」、「エプロン跳ね上げ補助機構」に対応する。したがって、本件発明1の構成1Aは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (イ)本件発明1の構成1B「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材と」、1C「1C前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材と、を有し」について 原出願の出願当初の明細書には、「エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、シールドカバー22及び主フレーム16に接続されて前後方向に延びる支持板41と、前側が支持板41に前後方向に移動自在に支持され、後側が支持板41の後側に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(b)参照)と、前側が支持板41にガススプリング50の前側とともに前後方向に移動自在に支持され、後側がガススプリング50に沿って後方側へ延びるリンクアーム部材60と、前側が支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に支持されるとともにリンクアーム部材60の後側に回動自在に接続されて、支点軸部45を中心として前後方向に回動可能なリンクプレート70と、上端部がリンクプレート70の後側に回動自在に接続され、下端部がエプロン25に回動自在に接続されたエプロン側接続部材75とを有してなる。」(【0026】)、「リンクアーム部材60の前側端部は、一対の支持板41の前側間に設けられた可動軸部46の軸方向端部に回動自在に接続されている。なお、可動軸部46の軸方向中間部には可動軸部46の軸芯方向に並んで配置された2本のガススプリング50のロッド側端部50aが回動自在に接続されている。」(【0040】)、「ガススプリング50は、一対の支持板41の後側に配置された支点軸部45に連結されるとともに、一対のリンクアーム部材60間に配置されている。」(【0041】)、「作業者によるエプロン25の引き上げ時には、図4に示すように、ガススプリング50が伸長して、そのロッド側端部50aに接続された可動軸部46が支持板41の長孔41aの前側に移動する。」(【0050】)、「このエプロンの引き上げ操作時に、一対のリンクアーム部材60が前側に移動し、リンクプレート70が支点軸部45を回動支点として前側に回動する。その結果、ガススプリング50の弾性力が、エプロン側接続部材75を介してエプロン25に作用して、エプロン25の上方への回動を附勢する。このため、作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」(【0051】)との記載がある(下線は、強調のために当審にて付した。以下同様。)。 エプロン補助機構40が有する「ガススプリング50」は、伸縮動作を行い、弾性力を用いているから、本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に対応する。 また、エプロン補助機構40が有する「リンクアーム部材60」は、前側端部が支持板41に設けられた可動軸部46に回動自在に接続され、同可動軸部46にはガススプリング50のロッド側端部50aも回動自在に接続されている。エプロン補助機構40が有する「リンクプレート70」は、支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に支持され、支点軸部45にはガススプリング50が連結されている。そして、エプロン25の引き上げ時にガススプリング50が伸長して、「リンクアーム部材60」及び「リンクプレート70」が可動軸部46及び支点軸部45を回動支点として回動することは明らかであるから、「リンクアーム部材60」及び「リンクプレート70」は、本件発明1の「前記伸縮部材の一端に接続され、前記伸縮部材の伸縮動作に伴い回転動作を行うリンク部材」に対応する。 したがって、本件発明1の構成1B、1Cは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (ウ)本件発明1の構成1D「前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される、エプロン跳ね上げ補助機構」について 原出願の出願当初の明細書には、「このように、エプロン跳ね上げ補助機構40はシールドカバー22及びエプロン25の上方に配置されているため、エプロン跳ね上げ補助機構40が耕耘作業機1の幅方向(左右方向)外側に突出していない。・・・また、エプロン跳ね上げ補助機構40は、ユニット化されて耕耘作業機1に着脱可能であるので、これをシールドカバー22及びエプロン25の上方間で配置可能な場所であれば、いずれの場所にも設置することができる。」(【0053】)との記載があるから、本件発明1の構成1Dは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (エ)本件発明2の構成2A「前記伸縮部材及び前記リンク部材を支持する支持部材をさらに有する」について 原出願の出願当初の明細書には、「エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、シールドカバー22及び主フレーム16に接続されて前後方向に延びる支持板41と、前側が支持板41に前後方向に移動自在に支持され、後側が支持板41の後側に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(b)参照)と、前側が支持板41にガススプリング50の前側とともに前後方向に移動自在に支持され、後側がガススプリング50に沿って後方側へ延びるリンクアーム部材60と、前側が支持板41の後側に設けられた支点軸部45に回動自在に支持されるとともにリンクアーム部材60の後側に回動自在に接続されて、支点軸部45を中心として前後方向に回動可能なリンクプレート70と、上端部がリンクプレート70の後側に回動自在に接続され、下端部がエプロン25に回動自在に接続されたエプロン側接続部材75とを有してなる。」(【0026】)との記載がある。 エプロン跳ね上げ補助機構40が有する「支持板41」は、「ガススプリング50」及び「リンクアーム部材60」、「リンクプレート70」を支持するから、上記ウ(イ)を踏まえると、「前記伸縮部材及び前記リンク部材を支持する支持部材」に対応する。したがって、本件発明2の構成2Aは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (オ)本件発明3の構成3A「前記リンク部材と前記エプロンとの間に配置された接続部材をさらに有する」について 原出願の出願当初の明細書には、「一対のリンクプレート70の後端部とエプロン25との間には、エプロン側接続部材75が回動軸77を介して回動自在に連結されている。」(【0031】)との記載がある。 「エプロン側接続部材75」は、「リンクプレート70」と「エプロン25」の間に連結されるから、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、「前記リンク部材と前記エプロンとの間に配置された接続部材」に対応する。したがって、本件発明3の構成3Aは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (カ)本件発明4の構成4A「前記接続部材は、長さ調整可能である」について 原出願の出願当初の明細書には、「エプロン側接続部材75は、・・・、ロッド側部材78の突出量が調整されてエプロン側接続部材75全体の長さを調整することができる。」(【0033】)との記載がある。したがって、本件発明4の構成4Aは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (キ)本件発明5の構成5A「リンク部材は」、5B「前記伸縮部材の伸縮動作に伴い前後方向に移動するリンクアーム部材と」、5C「前記リンクアーム部材に接続され、前記リンクアーム部材の移動に伴い回転するリンクプレートと、を有する」について 上記(イ)を踏まえると、原出願の出願当初の明細書に記載の「リンクアーム部材60」は、「前記伸縮部材の伸縮動作に伴い前後方向に移動するリンクアーム部材」に対応し、「リンクプレート70」は、「前記リンクアーム部材に接続され、前記リンクアーム部材の移動に伴い回転するリンクプレート」に相当する。したがって、本件発明5の構成5A~5Cは、原出願の出願当初の明細書に記載されている。 (ク)上記(ア)~(キ)より、本件発明1~5は、原出願の出願当初の明細書等に記載されたものである。 (ケ)本件発明6~10は、実質的に、本件発明1~5に係るエプロン跳ね上げ補助機構を、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に固定した、耕耘作業機の発明である。したがって、上記(ク)を踏まえると、本件発明6~10は、原出願の出願当初の明細書等に記載されたものである。 エ 小括 上記ア~ウより、上記(1)にて説示した(要件1)~(要件3)は全て満たされているから、原出願から本件特許に係る出願への分割は、適法なものである。したがって、本件特許の出願日は、原出願の出願日である平成24年11月16日となる。 (3)新規性及び進歩性について 上記(2)のとおり、本件特許の出願日は、原出願の出願日であるから、甲13は、本件特許に係る出願より前に頒布された刊行物ではない。 よって、甲13に記載された発明を主たる引用発明として、本件発明1~10に新規性または進歩性がないということはできない。 (4)請求人の主張について ア 分割要件違反に関する請求人の主張 請求人は、本件発明に係る出願が、分割要件違反である旨を主張している。当該請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 (ア)「エプロン跳ね上げ補助機構」について a 本件発明1、及び本件発明6における、「伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構が、・・・シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着(固定)される」という構成は、原出願当初明細書に記載されていない。(上記第4の3(5)ア(ア)) b 本件発明1及び6の「(少なくとも伸縮部材及びリンク部材を有する)エプロン跳ね上げ補助機構」には、「伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構」が含まれ、本件発明1及び6に含まれる「伸縮部材及びリンク部材からなるエプロン跳ね上げ補助機構が着脱可能に装着(固定)される」という構成は、原出願当初明細書に記載されていない。(請求人陳述要領書15頁18行~最終行) (イ)「伸縮部材」について a 本件発明1の構成1B、及び本件発明6の構成6Cにおける、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」という構成は、原出願当初明細書に記載されていない。(上記第4の3(5)ア(イ)) b 原出願当初明細書には、「・・・ガススプリング50は、常に伸長方向に弾性力が発生するように構成されている。・・・」(【0041】)との記載があり、「弾性力により伸長動作を行う伸縮部材」のみが記載されているに過ぎず、「弾性力により伸縮動作(伸長及び縮短の両動作)」を行う伸縮部材」についての記載は皆無である。(審判請求書52頁9行~13頁) イ 上記アの主張に対する検討 上記アの請求人の主張について、検討する。 (ア)「エプロン跳ね上げ補助機構」について 「エプロン跳ね上げ補助機構」について、本件発明1では「・・・伸縮部材と、・・・リンク部材と、を有し」と特定されており、「伸縮部材及びリンク部材からなる」とは特定されていないことから、本件発明1の「エプロン跳ね上げ補助機構」が、「伸縮部材」及び「リンク部材」を有するとともに、その他の部材を含みうることは明らかである。 そして、上記(2)ウのとおり、原出願の出願当初の明細書には、エプロン跳ね上げ補助機構が伸縮部材及びリンク部材を有すること、及び、エプロン跳ね上げ補助機構が、シールドカバー及びエプロンの上方に着脱可能に装着されることが記載されている。 また、エプロン跳ね上げ補助機構について、原出願の出願当初の明細書の段落【0053】には、ユニット化されたものが耕耘作業機1に着脱可能であることが記載されているから、伸縮部材及びリンク部材を有したうえで、さらに含み得るとともに耕耘作業機から着脱し得るその他の部材について、特に個別に特許請求の範囲において特定することなく、伸縮部材及びリンク部材を有するエプロン跳ね上げ補助機構について着脱可能であることを発明の構成とすることが、原出願の出願当初の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するとはいえない。 したがって、請求人の上記ア(ア)の主張を考慮しても、本件発明1の「エプロン跳ね上げ補助機構」が「・・・伸縮部材と、・・・リンク部材と、を有し、前記シールドカバー及び前記エプロンの上方に着脱可能に装着される」構成は、原出願の出願当初の明細書等に記載されたものである。 また、本件発明6についても同様である。 (イ)「伸縮部材」について 本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」は、弾性力が関係し、伸縮動作を行う部材であると理解される。本件発明の明細書及び原出願の出願当初の明細書には、ガススプリング50が伸縮すること、弾性力が働くことが記載されており(【0040】、【0041】、【0051】)、「ガススプリング50」が、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に対応すると理解できる。 本件発明1の「伸縮部材」は、「弾性力により伸縮動作を行う」と特定されるものであって、「弾性力が発生」することと伸長動作ないし縮短動作との関係までをも特定するものではないところ、「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」に対応する記載が本件発明の明細書及び原出願の出願当初の明細書に存在することは、前記したとおりであるから、請求人の上記ア(イ)の主張を考慮しても、本件発明1の「弾性力により伸縮動作を行う伸縮部材」という構成が、原出願の出願当初の明細書等に記載されていないとはいえない。 また、本件発明6についても同様である。 (ウ)小括 上記(ア)及び(イ)より、請求人の主張について検討しても、本件特許に係る出願が分割要件違反に該当すると認めることはできない。 したがって、請求人の主張を考慮しても、本件特許に係る出願の分割の適否について、上記(2)エの判断を変更すべき事情はない。 ウ 分割要件違反に基づく新規性欠如及び進歩性欠如に関する請求人の主張 請求人は、上記アのとおり、本件特許に係る出願は分割要件違反に該当するから、本件特許の出願日は現実の出願日であり、本件発明1ないし10は、本件特許の現実の出願日より前に頒布された甲13に記載された発明と同一であるか、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を、主張している。 エ 上記ウの主張に対する検討 上記ウの請求人の主張について、検討する。 上記(2)エ、及び上記イのとおり、原出願から本件特許に係る出願への分割は適法なものであるから、本件特許の出願日は、原出願の出願日となる。 したがって、甲13は、本件特許に係る出願より前に頒布された刊行物ではないから、甲13に記載された発明を主たる引用発明として、本件発明1~10に新規性または進歩性がないということはできない。 よって、請求人の主張を考慮しても、本件発明1~10の新規性・進歩性について、上記(3)の判断を変更すべき事情はない。 (5)無効理由4の小括 上記(1)~(4)に示したとおりであるので、本件発明1~10について、無効理由4は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、無効理由1~4はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1~10についての特許は、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800067

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