商標取消審判
2023-300592
ガセン
- 審判番号
- 2023-300592
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2022-094404
- 登録番号
- 6651258
- 請求日
- 2023年08月18日
- 審決日
- 2024年12月24日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】上海橙之迹品牌管理有限公司
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】魯 佳瑛
- 【被請求人】株式会社 Border
- 【被請求人代理人】加藤 卓士
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 大森 友子
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T131 .6 -Y (W33)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法53条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第53条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6651258号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6651258号商標(以下「本件商標」という。)は、「我泉」の文字を標準文字で表してなり、令和4年8月16日に登録出願、第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん」を指定商品として、同年12月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第2 引用商標
請求人が、「パリ条約同盟国等において商標に関する権利を有する者」であることを証するために提示した商標(以下「引用商標」という。)は、以下のとおりである。
中国登録第60638101号商標(甲2)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第33類に属する別掲2のとおりの商品
登録期間:2022年5月14日ないし2032年5月13日
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 取消事由
本件商標は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。
2 取消原因
請求人は、日本で自社商標を付した酒を調達し、中国市場で販売する事業計画を立案し、パリ条約の同盟国、WTOの加盟国又は商標法条約の締約国である中国で有効な商標に関する権利を取得すべく、引用商標を取得した。
同事業計画の実施に当たり、日本からの商品サンプルを取り寄せ、候補商品の品質評価、また、販売商品に付すラベルデザインの検討等を行ってきた。商品サンプルの購入手配は、被請求人名経由で実施している。代理店契約を締結していないが、実質、被請求人が日本における商品調達の代理店としての役割を果たしていた(甲3、甲4)。
また、商品のラベルの選別の際には、日本代理店としての役割を果たしていた被請求人宛にラベルに係る請求書が発行されている(甲5)。
商品は、複数サンプルを評価した上で決定した。例えば、2022年1月7日、2022年3月21日に被請求人の代表者より請求人の従業員宛にサンプルが送付されている。また、後述する本件商標の出願について報告することなく、2022年10月28日にもサンプルを届けている(甲6)。
被請求人は、請求人への連絡及び承諾を得ることなく無断で本件商標を2022年8月16日付で登録出願し、その後、登録出願の事実を請求人に報告していない。そして、2022年12月12日に商標登録を取得するに至っている。
最終的に、価格問題が生じ、請求人は被請求人からの商品購入を断念した。その後、新たな代理店から商品購入をしたところ、被請求人より同代理人に対し、商標権侵害の申立てがあり、被請求人が無断で商標登録していることが判明した。
以上のとおり、被請求人は、本件商標の出願前1年以内に代理人として商品のサンプル手配を行った者であるにも関わらず、正当な理由なく当該権利を有する者の承諾を得ないで商標登録出願したものであることから、本件商標は取り消されるべきものである。
第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書において要旨次のように述べた。
被請求人である本件商標の商標権者は、請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」のいずれにも該当しない。
したがって、本件商標は、取り消されるべきものではない。
第5 当審の判断
商標法第53条の2の規定に基づき、商標登録の取消しを請求することができるためには、第1に「パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするもの」であること、第2に「その商標登録出願が正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたもの」との要件を充たすことが必要であると解される。
そこで、本件について、上記の要件を充たすものであるか否かを検討する。
1 本件商標がパリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者について
請求人は、別掲1のとおりの構成よりなり、別掲2のとおりの商品を指定商品とする、パリ条約の同盟国等である中国の登録第60638101号商標(登録期間:2022年(令和4年)5月14日ないし2032年(令和14年)5月13日)の商標に関する権利を有する者であることが認められるものである(甲2)。
したがって、請求人は、本件商標の登録出願時にパリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者であると認められる。
(2)商標及び指定商品についての同一又は類似について
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「我泉」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書に採録されているような既成の語ではなく、また、我が国において特定の意味合いを認識させる語として一般に親しまれているものとも認められないから、その構成文字に相応した「ガセン」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標は、別掲1のとおり、「我泉」の文字を書してなるものであり、上記アと同様に、「ガセン」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
ウ 商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、観念において、両者は特定の観念を生じないから比較できないものの、外観においては、同じ文字からなり、称呼においても「ガセン」の同じ称呼を生じるものであるから、これらを総合して判断すると、両者は類似の商標といえる。
エ 商品の類否
本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん」であり、引用商標の指定商品は第33類に属する別掲2のとおりの商品であって、当該指定商品の翻訳文は提出されていないものの、当該指定商品中、少なくとも「清酒(日本米酒)」は、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品と推認できる。
(3)小括
前記(1)及び(2)によれば、本件商標は、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、その指定商品は、当該権利に係る商品と同一又は類似するというべきである。
2 本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるか否かについて
(1)請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
請求人は、日本で自社商標を付した酒を調達し、中国市場で販売する事業計画を立ち上げ、同事業の実施に当たり、被請求人を経由して商品サンプルを取り寄せ、販売商品に付すラベルデザインの検討等を行った。
上記の商品サンプルの見積書が2021年12月14日付けで被請求人より請求人の株主が代表である日本旭京株式会社に発行され(甲3の1)、同月28日に請求人の代表者が役員であるGOURMENT INTERNATIONAL GROUP PTE LTDより被請求人に送金された(甲4)。
また、2022年6月30日付け及び同年11月21日付けでラベルのデザイナーより被請求人宛にラベル案に係る請求書が発行されている(甲5)。
被請求人は、請求人への連絡及び承諾を得ることなく無断で本件商標を2022年8月16日付で登録出願し、同年12月12日に商標登録された(甲1)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」について
(ア)代理人・代表者について
商標法第53条の2に規定される「代表者」は、法人である商標所有者の代表者、「代理人」は、自然人であるか法人であるかを問わず商標所有者から何らかの代理権を授与された者を指す(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕)。
そして「代理人」に該当するか否かは、輸入者が「代理人」、「代理店」等の名称を有していたか否かという形式的な観点のみから判断するのではなく、商標法53条の2の適用の基礎となるべき取引上の密接な信頼関係が形成されていたかどうかという観点も含めて検討するのが相当であると解される。
(イ)被請求人が「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当するか否かについて。
a 代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代表者であった者に該当するかについて
被請求人が請求人の代表者に該当しないこと明らかである。
b 代理人又は本件商標登録日前1年以内に代理人であったものに該当するかについて
本件商標の出願前1年以内に、請求人が被請求人に清酒のサンプル製造及び商品ラベルの作成を依頼し、請求人が被請求人を経由して当該サンプルを取り寄せていたこと及び、被請求人宛にラベル案に係る請求書が発行されたことから、被請求人は請求人に代わって(代理として)商品サンプルの製造及びラベルデザインを依頼していたことはうかがえるもの、被請求人が我が国における請求人の代理店として、請求人より継続的に商品を輸入(購入)し、これを我が国において販売していた事実等は認められない。
c 以上によれば、被請求人は、商標法第53条の2に規定される「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」には該当しないというべきである。
イ 「本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないでないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと」について
商標法第53条の2に規定される「正当な理由」とは、商標に関する権利を有する者が、その代理店等に対しその国において商標を放棄した場合、またはその商標の権利を取得する関心がないことを信じさせた場合等が挙げられるものと解されるところ、被請求人は、この点及び「請求人の承諾」につき、何らの主張をしていない。
しかしながら、上記アのとおり、被請求人は請求人の代理店等とは認められない。
したがって、本件商標の登録出願は、商標法第53条の2に規定される「本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと」には該当しない。
(3)小括
以上のとおり、被請求人は、商標法第53条の2に規定される「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」には該当しないというべきであり、本件商標の登録出願は、商標法第53条の2に規定される「本件商標の登録出願が、正当な理由がないのにその商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと」にも該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、その指定商品において、請求人商標の指定商品と同一又は類似する商品であるとしても、被請求人は、商標法第53条の2に規定される「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であつた者」に該当せず、本件商標の登録出願は、商標法第53条の2に規定される「本件商標の登録出願が、正当な理由がないのにその商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたこと」にも該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第53条の2の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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