商標取消審判
2023-300375
ヒビキ、キョー
- 審判番号
- 2023-300375
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1999-038675
- 登録番号
- 4458712
- 請求日
- 2023年06月07日
- 審決日
- 2024年06月04日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 響
- 【請求人代理人】駒津 啓佑
- 【被請求人】サントリーホールディングス 株式会社
- 【被請求人代理人】中田 和博
- 【被請求人代理人】青木 博通
- 【被請求人代理人】片山 礼介
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 大山 健
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T132 .1 -Z (Z41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第30条、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4458712号の1の1商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第4458712号の1の1商標の指定商品及び指定役務中、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」についての登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4458712号の1の1商標(以下「本件商標」という。)は、「響」の文字を標準文字で書してなり、平成11年4月28日に登録出願、同13年3月9日に設定登録された登録第4458712号商標について、同16年10月18日及び同23年3月3日に商標登録の取消しの審判による一部の指定役務についての登録を取り消すべき旨の確定審決の登録、同26年5月21日に放棄による一部の指定商品についての抹消登録、並びに同日及び同29年2月27日に商標権の分割移転がされた結果、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を含む第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものであり、その後、令和2年4月3日、同年6月4日、同年7月10日及び同6年1月12日に商標登録の取消しの審判により、第24類、第28類、第31類、第35類、第36類、第37類及び第42類の一部の指定商品及び指定役務並びに第41類「楽器の貸与」についての登録を取り消すべき旨の確定審決の登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年6月23日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)6月23日ないし同5年(2023年)6月22日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のとおり主張した。また、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」(以下「取消請求役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、令和5年10月24日付けで弁駁書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
(1)商標の使用者について
被請求人(サントリーホールディングス株式会社)は、シンフォニアテクノロジー株式会社に対して、商標「響」に関する権利を行使しない旨の契約(権利不行使契約)を締結している(乙2の1)。
被請求人は、シンフォニアテクノロジー株式会社が伊勢市に対して使用権の契約はないものの、黙示の再使用許諾契約が成立していたものとみるのが自然である旨を主張している。
しかし、シンフォニアテクノロジー株式会社は、被請求人との間で黙示の使用許諾が成立していたとしても通常使用権者にすぎず、伊勢市に対して法律上の使用許諾をできる権能を有していないから(商標法第30条)、再使用許諾契約が成立していたとみるのは法律上成立しない。
また、シンフォニアテクノロジー株式会社と伊勢市との間にはネーミングライツ契約があるところ、ネーミングライツについて検討する。
ネーミングライツを端的に表すと、ネーミングライツとは、イベントなどが開催されるたびに開催場所の名前を連呼してもらうことを意図して施設の名前を命名するための権利であり(甲2)、これは看板広告を出すことと似た効果を狙っているといえる。具体的には、看板広告を出して何度も看板を見てもらうことによって認知を広げ、看板によっては内容を話題にしてもらうことによって更に認知を広げ、結果として看板に掲出した社名や商品・サービス名の宣伝となることを目的としている。そうすると、看板の例で明らかなように、看板に載った内容に商標が使用されていたとき、看板設置業者の商標的使用に該当しないのは明らかである。つまり、ネーミングライツ契約によって命名された施設の名前に登録商標が入っている場合の使用者は、ネーミングライツを買った会社であり、ネーミングライツに係る施設の名称は、いわゆる場所貸しや名義貸しの一類型であるといえる。
本件でいえば、施設名称に登録商標が入っていた場合であっても、伊勢市の施設に対するネーミングライツを買ったシンフォニアテクノロジー株式会社が使用者になるのであって、伊勢市は使用者ではない。また、伊勢市が使用権者であると解釈しなくともネーミングライツ契約を充足することは可能であるから、伊勢市に使用許諾がされたと解釈すべきでない。つまり、もし伊勢市が当該商標を使用したいのであれば別途契約が必要だと考えられ、本件のように使用許諾契約がない以上、伊勢市が使用権者たり得ないことは明らかである。
それは、被請求人がシンフォニアテクノロジー株式会社と交わした契約書に、権利不行使相手としてシンフォニアテクノロジー株式会社のみを記載し、商標の使用目的としてネーミングライツ契約による施設の愛称として、と記載されていることからも、使用者がシンフォニアテクノロジー株式会社であるとの認識があったと思われる。
以上より、商標の使用者はシンフォニアテクノロジー株式会社であると解釈すべきである。
(2)商標的使用について
ネーミングライツ契約における商標の使用について、ネーミングライツを取得した会社は、コンサートやサッカーなどが開催される場所の名前として名前を連呼してもらうための権利を取得したといえ、その名前の連呼の結果として宣伝になっている。これは広告看板と同様であって、広告看板であれば、ある場所に広告を表示する権利といえるように、ネーミングライツは、ある施設の名称を変更するだけの権利である。したがって、ネーミングライツによって変更された施設名は、施設で開催されるイベント等についての出所を表しているわけではなく、イベント等の開催場所を表すにすぎない。
以上の点を踏まえて考察をすると、ネーミングライツを取得したシンフォニアテクノロジー株式会社が自社の宣伝目的として、伊勢市の施設である伊勢市観光文化会館の名称を変更する権利を得て、変更した名称が「シンフォニアテクノロジー響ホール」ということになる。この名称のうち、「シンフォニアテクノロジー」の部分は、シンフォニアテクノロジー株式会社の略称であり、「響」の部分は、シンフォニアテクノロジー株式会社との関係が明確ではなく、施設名を格好良く表すための一種の装飾語であるといえることから、施設名として表されているとしても商標的使用には該当しない。
(3)使用に係る役務について
ネーミングライツによって変更された施設名称である「シンフォニアテクノロジー響ホール」は、当該施設で行われるイベント等の役務との関係において、当該役務が行われる場所を表しているにすぎない。
したがって、取消請求役務中、「演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の上演,音楽の演奏」について本件商標を使用している旨の被請求人の主張は失当である。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。また、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 令和5年9月6日付け答弁
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標の通常使用権者である、シンフォニアテクノロジー株式会社及び伊勢市が、要証期間に我が国において、取消請求役務中、「演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の上演,音楽の演奏」について、本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア 商標の使用者
契約書(乙2の1)は、本件商標「響」の、「伊勢市の募集するネーミングライツに基づき次に定める対象施設(※伊勢市観光文化会館)の愛称」としての使用に関し、被請求人であるサントリーホールディングス株式会社とシンフォニアテクノロジー株式会社の間で取り交わされたものであり、シンフォニアテクノロジー株式会社の使用に対し本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を行使しない旨の取決めを交わしたが、本件商標に関する通常使用権の許諾については、明文の契約書を両者間で取り交わしていない。
しかしながら、過去の裁判例(知的財産高等裁判所 平成21年(行ケ)第10290号(乙2の2))において、「通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能である」ことが示されており、被請求人は、シンフォニアテクノロジー株式会社の使用に対し本件商標権を行使しないことを約束しているが、これは事実上、シンフォニアテクノロジー株式会社に対し本件商標に関する黙示の使用許諾を行ったものである。上記契約書が取り交わされた状況からすれば、黙示の使用許諾契約が成立していたものとみるのが自然であり、被請求人もそのように認識している。なお、当該契約書は平成28年10月1日に取り交わされ、その有効期間は契約日より10年間、すなわち令和8年10月1日までであり、現に有効に存在している。
本件商標に関する黙示の使用許諾を受けたシンフォニアテクノロジー株式会社は、次に、三重県伊勢市が所有する多目的ホール「伊勢市観光文化会館」(三重県伊勢市・・・所在)に関し、伊勢市とネーミングライツ契約を、平成28年11月25日に締結した。伊勢市はこの契約に基づき、平成29年4月1日より、「伊勢市観光文化会館」の名称を「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」に変更し、命名権の付与期間は令和9年3月31日までである。
そして、伊勢市の公式ウェブサイトにおいて公開されている記事で、伊勢市観光文化会館に関するネーミングライツ(命名権)に関する詳細が掲載されている(乙2の3)。
ネーミングライツの場合、命名を希望する者(本件の場合、シンフォニアテクノロジー株式会社)が、施設の所有者(本件の場合、伊勢市)に対し、申入れするのが一般的であり、命名する名称が登録商標である場合に、命名を希望する者が施設の所有者に対し、その登録商標の使用を許諾しないとは考えにくいから、シンフォニアテクノロジー株式会社と伊勢市との間でネーミングライツに関する契約が取り交わされた状況からすれば、シンフォニアテクノロジー株式会社と伊勢市との間で黙示の再使用許諾契約が成立していたものとみるのが自然である。
イ 使用に係る商標及び役務
乙第3号証の1は、伊勢市観光文化会館「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」の外観の写真であり、Google社のウェブサイト「ストリートビュー」より入手したものである(令和4年11月時点のもの)。伊勢市観光文化会館の塔屋部に、「シンフォニアテクノロジー\響ホール 伊勢」と表示されており、その前の道路上には、「シンフォニアテクノロジー響ホール 伊勢」に関する案内板がある。
また、乙第3号証の2は、伊勢市が令和3年9月4日に開催した演芸公演に関するチラシであり、問合せ先として、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」と記載されている。
さらに、乙第3号証の3ないし乙第3号証の5は、伊勢観光文化会館が毎月発行しているチラシであり、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」において開催される演芸の上演、演劇の上演、音楽の演奏に関する情報が掲載され、裏面にはチケット予約の問合せ先として、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」と記載されている。
乙第3号証の6は、令和5年5月3日にシンフォニアテクノロジー響ホール伊勢において開催された音楽コンサート「ジャー・パンファン二胡コンサート」に関するチラシであり、伊勢市観光文化会館が主催したもので、問合せ先として「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」と中央に大書きされている。このコンサートに関しては、「かんぶんニュース\シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)2023年4月号」(乙3の5)でも紹介されている。
ウ 使用時期
乙第3号証の1に示されるように、少なくとも令和4年11月の時点で、伊勢市観光文化会館の塔屋部に「シンフォニアテクノロジー\響ホール伊勢」と表示されている。また、乙第3号証の3は令和3年11月に発行されたものであり、同様に、乙第3号証の4は同4年12月に、乙第3号証の5は同5年4月に発行されたものである。さらに、乙第3号証の6における音楽コンサートは、令和5年5月3日に開催されている。
エ その他
乙第4号証の1は、中日新聞社のウェブサイトにおけるニュース記事で、令和3年7月28日に配信されたものであり、響ホール伊勢で記念イベントが開催されることを紹介する記事であり、乙第4号証の2は、毎日新聞社のウェブサイトにおけるニュース記事で、令和3年11月20日に配信されたものであり、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢において落語が上演されたことに関する記事であるところ、いずれも、要証期間のものである。
2 令和6年2月13日付け答弁
(1)商標の使用者について
商標法は、通常使用権の許諾を受けた者が更に第三者に通常使用権を許諾することを予定していないが、予定していないだけであり、そのような使用許諾を禁止している訳ではない。契約自由の原則に鑑みれば、通常使用権者は、商標権者の承諾を得たのであれば、その商標を第三者に使用させることは可能である(乙5)。
商標法の不使用取消審判において、使用許諾を受けた者の使用を含めたのは、「商標権者の権限の下で登録商標が使用された実績がある以上、登録を取り消して商標権者とは無関係の者に類似範囲内の使用を解放することは混乱を招来しかねないと判断されたから」である(乙6)ところ、本件も、商標権者の権限の下で登録商標が使用されているのだから、シンフォニアテクノロジー株式会社から使用許諾を受けた伊勢市も商標法第50条第1項の「通常使用権者」に該当すると判断されるべきである。
商標使用許諾の場合、一般的には、商標の使用を欲する者が商標権者(通常使用権者)に対し使用の対価を支払うが、ネーミングライツの場合、商標権者(通常使用権者)が商標を使用する者に対し対価を支払う。商標権者(通常使用権者)と使用する者の力関係(立場)が異なるために金銭の流れが真逆になっているが、法律上はどちらも商標権者(通常使用権者)が第三者に対して商標の使用許諾を行っているのであり、両者を区別する理由はない。
(2)使用に係る役務について
シンフォニアテクノロジー株式会社から使用許諾を受けた伊勢市は、「伊勢市観光文化会館」の名称を「シンフォニアテクノロジー 響ホール伊勢」に変更したが、それにとどまらず、令和5年5月3日に、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」の名の下で、音楽コンサート「ジャー・パンファン二胡コンサート」を開催している(乙3の6)。開催場所が「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」であるが、主催したのは伊勢市観光文化会館(=伊勢市)であり、当該音楽コンサートのチラシ(乙3の6)に問合せ先として「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」が記載されていることからも明らかである。当該施設で行われるイベント等の役務との関係においては、当該役務が行われる場所を表しているにすぎないとの請求人の主張は失当である。
第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠方法によれば、以下のとおりである。
(1)シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)について
ア ネーミングライツ(乙2の3)
乙第2号証の3は、令和5年1月4日に更新された、三重県伊勢市のウェブサイトの出力物であり、その1葉目及び2葉目に、「実施中のネーミングライツ」の表題下、「伊勢市観光文化会館」、「命名権者/シンフォニアテクノロジー株式会社」、「施設の愛称/シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」、「命名権料/年額 500万円(税込み)」、「命名権付与期間/平成29年4月1日~令和9年3月31日(10年間)」などの記載があり、その下に、リンクと思われる態様で「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」の表示がある。
イ 外観の画像(乙3の1、乙2の1)
乙第3号証の1は、2023年8月25日に出力された、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢の外観を撮影した画像であり、「Google 伊勢市、三重県」、「Google ストリートビュー/11月2022」、「撮影日:11月2022 ○C(「C」の文字を丸囲みしたもの)2023 Google」の記載がある。そして、この画像から、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢の建物の塔屋部に「シンフォニアテクノロジー\響ホール 伊勢」の表示があり、建物前の道路の案内板に「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」の表示があることが看取できる。
また、乙第2号証の1の5葉目にも、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢の建物の塔屋部に「シンフォニアテクノロジー\響ホール 伊勢」と表示されていることを示す画像がある。
ウ 開催に関する、チラシ、新聞記事(乙3の2~乙4の2)
乙第3号証の2は、2021年9月4日にシンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で開催された公演に関するチラシであり、「公演内容/第一部/お笑いオンステージ/第二部/ほのぼのコメディ劇場」、「お問い合わせ シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」「主催:伊勢市・・・協力:伊勢市観光文化会館指定管理者(株)ケイミックスパブリックビジネス」の記載がある。
乙第3号証の3ないし乙第3号証の5は、2021年11月、2022年12月及び2023年4月に、伊勢市観光文化会館の指定管理者である株式会社ケイミックスパブリックビジネスが発行した、イベント案内のためのチラシであり、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で開催される各種のイベントの案内が掲載され、問合せ先について、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」と記載されている。
乙第3号証の6は、2023年5月3日にシンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で開催されたコンサートに関するチラシであり、「ジャー・パンファン二胡コンサート」、「お問合わせ シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)」「主催:伊勢市観光文化会館 指定管理者 株式会社ケイミックスパブリックビジネス・・・後援:伊勢市/・・・」の記載がある。
乙第4号証の1及び乙第4号証の2は、2023年8月25日に出力された、中日新聞及び毎日新聞のウェブサイトの出力物であり、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で、2021年9月4日にお笑いステージのイベントが開催される旨、及び同年11月17日に落語のイベントが開催された旨の記事が掲載されている。
(2)契約書(乙2の1)
乙第2号証の1は、平成28年10月1日付けで被請求人とシンフォニアテクノロジー株式会社(以下「シンフォニアテクノロジー社」という。)との間で締結された契約書であり、この契約書により、商標登録第4458712号に係る商標(分割前の本件商標)について、商標権者である被請求人は、シンフォニアテクノロジー社が、「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」の名称を、伊勢市の募集するネーミングライツに基づき「伊勢市観光文化会館」の愛称として使用する目的にて使用することに対しては、本件商標権を行使しない旨の契約が締結されている。また、契約期間が平成28年10月1日から10年間であることも定められている。
(3)上記(1)及び(2)から以下の事項が理解できる。
シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で、要証期間である2021年ないし2023年に、伊勢市が主催した、演芸、演劇又は音楽のイベントが複数回開催されたこと、及びその開催に際して、主催者又は伊勢市の指定管理者である株式会社ケイミックスパブリックビジネスが「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されたチラシを頒布したことは推認できる。
2 判断
上記1(1)ないし(3)によれば、以下のとおり判断できる。
上述のとおり、シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)で、要証期間に、伊勢市が、演芸、演劇又は音楽のイベントを複数回主催するとともに、主催者又は伊勢市の指定管理者である株式会社ケイミックスパブリックビジネスが使用商標(「シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢」の文字)を付したチラシを頒布したことは推認できるところ、使用商標において、「伊勢」の文字部分と「ホール」の文字部分は、主催者が伊勢市であることや伊勢市観光文化会館が伊勢市にあるホールであることに鑑みれば、自他役務を識別する文字部分ではなく、「シンフォニアテクノロジー響」の文字部分とは分離観察できるものといえる。
そして、使用商標において自他役務を識別する要部である「シンフォニアテクノロジー響」の文字部分は、本件商標と、称呼、外観及び観念が異なるものである。
さらに、被請求人の提出した証拠方法からは、使用商標において「響」の文字部分のみを、自他役務を識別する要部として分離観察すべき特段の事情は見いだせない。
したがって、使用商標が本件商標と同一又は社会通念上同一ということはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務について、本件商標と同一(社会通念上同一を含む。)の商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判の取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品及び指定役務中、取消請求役務(第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」)について、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-300375