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特許拒絶査定不服審判

2023-018362

熱伝導性シート

審判番号
2023-018362
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-549280外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月30日
審決日
2024年11月11日
公報発行日
2024年12月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-549280「熱伝導性シート」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月2日国際公開、WO2020/067141、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2019年(令和元年)9月25日(優先権主張 平成30年9月26日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。

令和4年12月 6日付け 拒絶理由通知書

令和5年 4月 7日 意見書、手続補正書の提出

令和5年 7月27日付け 拒絶査定

令和5年10月30日 審判請求書、手続補正書の提出

令和6年 7月29日付け 拒絶理由通知書

令和6年 9月27日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和5年7月27日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献A-Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

A.特開2008-251747号公報

B.特開2007-326976号公報

第3 当審拒絶理由の概要

令和6年7月29日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1又は2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2007-326976号公報(原査定の引用文献B)

2.国際公開第2017/179318号

第4 本願発明

本願の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、令和6年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりの発明である。

「 【請求項1】
高分子マトリクス中に異方性充填材を含有した熱伝導性シートであって、少なくとも一方の面は、前記異方性充填材が表出しつつ、山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下である熱伝導性シート。
【請求項2】
前記異方性充填材が、熱伝導性シートの厚み方向に配向している請求項1記載の熱伝導性シート。
続きを表示(全16行)
【請求項3】
前記少なくとも一方の面は、算術平均高さ(Sa)が20μm以下である請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記熱伝導性シートの表面は、界面の展開面積比(Sdr)が70以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記異方性熱伝導性充填材が、繊維状充填材、及び鱗片状充填材の少なくともいずれかである請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
厚さが0.1~5.0mmである請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項7】
厚さが0.1~0.3mmである請求項6に記載の熱伝導性シート。
【請求項8】
前記山頂点の算術平均曲(Spc)が1000(1/mm)以上である請求項1~7のいずれか1項記載の熱伝導性シート。」

第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1及び引用発明1

(1)引用文献1の記載

当審拒絶理由に引用された引用文献1(原査定の引用文献B)には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

ア 「【0011】
以下、本発明を熱伝導性成形体に具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の熱伝導性成形体(以下、単に成形体という。)は、高分子マトリックスと、熱伝導性充填材とを含有する熱伝導性高分子組成物(以下、単に組成物という。)から成形される。この成形体は発熱体と放熱体との間に介在するようにして用いられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する。
【0012】
成形体には、熱伝導性能及びハンドリング性が具備されている。熱伝導性能は発熱体から放熱体への熱伝導のし易さを表す指標であり、成形体の熱伝導率、熱抵抗値及び接触熱抵抗値に起因している。成形体の熱抵抗値は、成形体の熱伝導率が高いほど小さい。成形体の接触熱抵抗値は、成形体と発熱体及び放熱体との密着性が高いほど小さい。成形体と発熱体及び放熱体との密着性は、成形体の粘着性が高いほど高い。成形体は、熱伝導率が高いほど、且つ熱抵抗値及び接触熱抵抗値が小さいほど発熱体から放熱体への熱伝導を促進し、熱伝導性能に優れたものとなる。ハンドリング性は成形体の取扱い易さを表す指標であり、成形体の粘着性に起因している。即ち、成形体のハンドリング性は、成形体の粘着性が低いほど高められる。
【0013】
高分子マトリックスは、熱伝導性充填材を成形体内に保持する。高分子マトリックスは、成形体に要求される性能、例えば硬度等の機械的強度、耐熱性等の耐久性、又は電気的特性に応じて選択され、高分子マトリックスとして例えば熱可塑性又は熱硬化性の高分子材料が選択される。熱可塑性の高分子材料の具体例としては、熱可塑性樹脂材料及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。」
イ 「【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、成形体11は、高分子マトリックス12と、熱伝導性充填材13とを備えている。図1(a)及び(b)に示す成形体11はシート状に形成されており、熱伝導性充填材13は、繊維状充填材14と、粒子状充填材15とを有している。この成形体11の形状は特に限定されず、立方体状でもよいし、球状、円柱状、板状、フィルム状、又はチューブ状でもよい。繊維状充填材14は成形体11中で一定方向に配向されている。例えば、図1(a)及び(b)に示す成形体11においては、繊維状充填材14は成形体11の厚さ方向に沿って配向されている。そのため、成形体11において、厚さ方向の熱伝導率の値は、幅方向の熱伝導率の値に2~数百を乗じた値と等しい。
【0025】
成形体11において、繊維状充填材14の配向方向と交差する外面上には、繊維状充填材14が露出している。即ち、図1(a)及び(b)に示す成形体11における繊維状充填材14は、成形体11の幅方向に沿って延びるとともに対向する一対の外面16上に露出している。成形体11の外面16上に露出している繊維状充填材14において、外面16に交差した状態で露出している繊維状充填材14の割合は、50~100%が好ましい。外面16に交差した状態で露出している繊維状充填材14の割合が50%未満の場合、即ち、外面16と平行に延びた状態で露出している繊維状充填材14の割合が50%を超えると、繊維状充填材14の配向が不十分であることから、繊維状充填材14の配向方向における成形体11の熱伝導率が低下するおそれがある。そのため、外面16に交差した状態で露出している繊維状充填材14の割合が50%を超えることにより、繊維状充填材14の配向方向における成形体11の熱伝導率は、20W/m・k以上を達成することができ、外面16に交差した状態で露出している繊維状充填材14の割合が高くなるに伴って、例えば50W/m・k以上を達成することができる。
【0026】
成形体11の外面16に交差した状態で露出している繊維状充填材14は、配向方向に沿って延びる軸部14aと、外面から露出している端部とを有している。繊維状充填材14の端部には、外面16に沿って延びる突部14bが形成されている。突部14bを有する端部において、繊維状充填材14の繊維軸方向(配向方向)に直交する断面は、突部14bに起因して、繊維状充填材14の軸部14aにおける繊維軸方向に直交する断面に比べて大きく、例えば該断面の2倍以上である。」
ウ 「【図1】
[図:0001417360000001.jpg]
」
エ 「【0028】
成形体11は、組成物を調製する調製工程、繊維状充填材14を一定方向に配向させる配向工程、成形体11を成形する成形工程、繊維状充填材14を露出させる露出工程、及び突部14bを形成する形成工程を経て製造される。」
オ 「【0035】
露出工程では、成形体11が高分子マトリックス12として熱可塑性の高分子材料を有する場合、該高分子材料を溶解可能な溶媒を用いて成形体11の外面16から高分子マトリックス12を除去することにより、図3(a)及び(b)に示すように、外面16上に繊維状充填材14が露出される。また、メッシュ状の刃を成形体11の外面16に押し当てた後、それらを外面16に沿って摺動させることにより、外面16から高分子マトリックス12が除去されて外面16上に繊維状充填材14が露出される。この場合、高分子マトリックス12は均一の厚みで除去される。また、研磨紙等を用いた研磨によって、外面16から高分子マトリックス12が除去されて外面16上に繊維状充填材14が露出される。露出工程後において、外面16から露出している繊維状充填材14の端部には、突部14bが形成されていない。」
カ 「【0037】
形成工程では、露出工程において用いられる研磨紙に比べてきめが細かい研磨紙、例えば研磨粒子の粒径が5~20μmである研磨紙を用いて、成形体11の外面16が研磨される。このとき、外面16から露出している繊維状充填材14の前端は、外面16に沿って潰れたり磨り減ったりすることにより、外面16に沿って拡がる。このことにより、繊維状充填材14の端部に突部14bが形成される。また、成形体11の外面16に対して圧力が瞬間的に加えられることにより、繊維状充填材14の先端が外面16に向かって押圧される。このとき、外面16から露出している繊維状充填材14の先端が外面16に沿って潰れたり折れ曲がったりすることにより、繊維状充填材14の端部に突部14bが形成される。形成工程後の成形体11の外面16において、露出した繊維状充填材14が占める割合は、突部14bに起因して、露出工程後かつ形成工程前における繊維状充填材14が占める割合に比べて増加しており、前記面積に換算して例えば10%以上である。」
キ 「【0062】
<熱抵抗値>
各例の成形体11から試験片(縦および横:10mm、厚さ:0.2mm)を得た後、該試験片を発熱量が25Wである発熱体18及び放熱体19で挟持した。そして、試験片に、その厚さ方向に50N/cm2の荷重を加えた状態における試験片の熱抵抗値を測定した。熱抵抗値の測定は、露出工程後、及び形成工程後の各成形体11について行った。また、試験片の代わりに市販の熱伝導性グリスを用いた以外は上記と同様にして熱抵抗値を測定した結果を表2に示す。表2において、“参考例1”欄は、熱伝導性グリスとして信越化学工業株式会社製の熱伝導性グリス(放熱用オイルコンパウンド)G-750を用いた場合の測定結果を示し、“参考例2”欄は、熱伝導性グリスとして信越化学工業株式会社製の熱伝導性グリス(放熱用オイルコンパウンド)G-751を用いた場合の測定結果を示す。
【0063】
続きを表示(全12行)
【表1】
[図:0001417360000002.jpg]
【0064】
【表2】
[図:0001417360000003.jpg]
表1に示すように、実施例1~5においては、各項目について優れた評価及び結果となった。そのため、各実施例の成形体11は、熱伝導性能に優れるとともにハンドリング性を高めることができた。更に、熱抵抗値を測定した成形体11を発熱体18及び放熱体19から取外した後、成形体11の外面16を観察したところ、露出していた各繊維が成形体11内に没入していた。更に、各繊維の突部14bが、成形体11の外面16上にほぼ位置していた。
【0065】
加えて、実施例1~5においては、露出工程後の成形体11の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値が低かった。この結果は、形成工程によって得られる突部14bに起因すると考えられる。実施例5の成形体11は、熱伝導性グリスと同等の熱抵抗値を有していた。熱伝導性グリスは一般に、非常に低い熱抵抗値を有しており、優れた熱伝導性能を発揮する。しかしながら、熱伝導性グリスには、再利用性の問題、粘度の変化等による管理及び取り扱い上の問題、並びに使用時における空気混入、はみ出し、揮発などの信頼性上の問題がある。これに対して、本発明の成形体11は、熱伝導性グリスにおける上述の問題を生じることなく、熱伝導性グリスと同等の熱抵抗値を得ることができる。」

ク 上記キの表1の実施例1-5から、露出工程後の成形体の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値が10~32%低いことが理解できる。

(2)引用発明1

上記(1)から、特に下線を付した記載に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「熱伝導性成形体(以下、単に成形体という。)であって、
成形体は、高分子マトリックスと、熱伝導性充填材とを備え、
高分子マトリックスは、熱伝導性充填材を成形体内に保持し、
成形体はシート状に形成されており、
熱伝導性充填材は、繊維状充填材14を有し、
繊維状充填材14は成形体の厚さ方向に沿って配向され、
繊維状充填材14は、成形体の幅方向に沿って延びるとともに対向する一対の外面16上に露出し、
成形体は、露出工程及び形成工程を経て製造され、形成工程では、成形体の外面16が研磨され、外面16から露出している繊維状充填材14の前端は、外面16に沿って潰れたり磨り減ったりすることにより、外面16に沿って拡がり、繊維状充填材14の端部に突部14bが形成され、
成形体から試験片(厚さ:0.2mm)を得た後、試験片の熱抵抗値を測定すると、露出工程後の成形体の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値が10~32%低い、
成形体。」

2 引用文献2及び引用発明2

(1)引用文献2の記載

当審拒絶理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

ア 「[0014] 本発明の熱伝導性シートを実施形態に即してさらに詳しく説明する。
熱伝導性シートは、高分子マトリクス中に炭素繊維と鱗片状黒鉛粉末、そして、炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末以外のその他の熱伝導性充填材を含んで構成している。
[0015] より具体的には図1の模式図で示すように、熱伝導性シート1は、炭素繊維3や鱗片状黒鉛粉末4が高分子マトリクス2の中で所定の方向に配向している。その配向方向をより詳しく説明すると、図2の拡大模式図で示すように、炭素繊維3はその繊維軸方向がシートの厚み方向(図2のZ方向)に配向して含有されており、鱗片状黒鉛粉末4はその鱗片面の長軸方向がシートの厚み方向(図2のZ方向)に配向しつつ、その短軸方向(鱗片面の法線方向)は長軸に対して垂直なランダムな方向(図2のX-Y平面内のランダム方向)を向いて含有されている。また、上記その他の熱伝導性充填材5は、図3の拡大模式図で示すように、炭素繊維3や鱗片状黒鉛粉末4とは異なり、高分子マトリクス2の中にランダムに分散して含有されている。」
イ 「[図1]
[図:0001417360000004.jpg]
」
ウ 「[図2]
[図:0001417360000005.jpg]
」
エ 「[図3]
[図:0001417360000006.jpg]
」
オ 「[0049] また別の実施態様として、最終的に得られる熱伝導性シートとは異なる形状の型で成形することもできる。ここで用いる型は、最終的な熱伝導性シートの形状とする前の段階の塊状成形体を得るためのものである。混合組成物から略直方体の外形をした塊状成形体を形成しておき、これを後工程で切断または切削(以下これらをまとめて「スライス」ともいう)し、薄く形成することで、所望の厚みからなる熱伝導性シートを得る方法である。
[0050] 炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末が配向した高分子マトリクスを得るまでの方法は、型が異なるだけでその方法は同じである。得られた塊状成形体は、炭素繊維の配向方向に垂直な平面でスライスする工程を行う。切断手段としては、刃物、線材、レーザなど種々の手段を利用することができ、刃物としてはせん断刃、押し切り刃、カンナなどを用いることができる。得られた塊状成形体をカンナにより切削する場合には、カンナ平面からの刃角を45°、突出する刃先を0.5mmとし、塊状成形体に0.2~0.3MPa程度の圧力でカンナを押し付けて切削することができる。
[0051] こうしたスライス工程を行うことにより、得られた熱伝導性シートの表面はスライス面となっている。 このスライス面には、必要に応じて研磨工程を実行することができる。研磨工程では、研磨紙や布やヤスリなどを用いて、シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨する。これにより、露出した炭素繊維の端面が平坦に潰される。こうした端面は、発熱体や放熱体との密着性を高めて、最終的に得られる熱伝導性シートの熱抵抗を低減する効果を奏する。」
カ 「[0057] 熱伝導性シートの作製:
試料1~試料12および試料14~試料24の各混合組成物を型に流し込み、型内の成形材料に振動を与えながら、炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末が型の上下方向に配向するように10テスラの磁場を印加した。続いて、90℃で60分間加熱して付加反応型シリコーンを硬化させた後、型から成形体を取り出した。得られた成形体は、後述する熱抵抗の測定ができる試験片の大きさ、即ち、炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末の配向方向を厚み方向として、その厚みが2mmである26mm×26mm四方のシート形状となるように切断して試料1~試料12および試料14~試料24の熱伝導性シートを得た。
[0058] また試料13は、その混合組成物をコーターにより塗布して薄膜状の1次シートを形成し、これを積層して完全に硬化させた塊状体を形成した後、前記積層方向に沿ってスライスして厚みが2mmである2次シートを得た。次にこの2次シートから26mm×26mm四方を切り出して試料13の熱伝導性シートを得た。
[0059] なお、表1~表3において、シートの厚み方向と炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末の配向方向が揃鱗片状黒鉛粉末の鱗片面の法線方向がシートの面方向にランダムに向いている試料1~試料12、試料14~試料24の場合を「〇」、シートの厚み方向と炭素繊維や鱗片状黒鉛粉末の配向方向が揃うものの、鱗片状黒鉛粉末の鱗片面の法線方向がシートの面内の一方向を向いている試料13の場合を「×」と表示している。
続きを表示(全11行)
[0060] [表1]
[図:0001417360000007.jpg]
[0061] [表2]
[図:0001417360000008.jpg]
[0062] [表3]
[図:0001417360000009.jpg]
」
キ 「[0065](熱伝導率の測定:)
熱伝導率は、図5の概略図で示した熱伝導率測定機を用い、ASTM D5470-06に準拠した方法で測定した。より具体的には、試験片Sとしての各試料の熱伝導性シートを、測定面が25.4mm×25.4mmで側面が断熱材11で覆われた銅製ブロック12の上に貼付し、上方の銅製ブロック13で挟み、圧縮率が10%になるようにロードセル16によって荷重をかけた。ここで、下方の銅製ブロック12はヒーター14と接している。また、上方の銅製ブロック13はファン付きのヒートシンク15に接続している。次いで、下方の銅製ブロック12の表面が80℃になるようにヒーター14を発熱させ、温度が略定常状態となる15分後に、上方の銅製ブロック13の温度(θj0)とヒーターの発熱量(Q)を測定し、以下の式(1)から各試料の熱抵抗を、さらに以下の式(2)から熱伝導率を求めた。また、このときの各試験片Sの厚みTも測定した。
[0066] 熱抵抗=(θj1-θj0)/Q ・・・・(1)式
式(1)において、θj1は下方の銅製ブロック12の温度(80℃)、θj0は上方の銅製ブロック13の温度、Qは発熱量である。
[0067] 熱伝導率=T/熱抵抗 ・・・・(2)式
式(2)において、Tは各試験片の厚みである。」
ク 「[図5]
[図:0001417360000010.jpg]
」

(2)引用発明2

上記(1)から、特に下線を付した記載に着目すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「炭素繊維が高分子マトリクス2の中で所定の方向に配向している熱伝導性シートであって、
炭素繊維はその繊維軸方向がシートの厚み方向に配向して含有され、
シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨し、露出した炭素繊維の端面が平坦に潰され、端面は、発熱体や放熱体との密着性を高めて、熱伝導性シートの熱抵抗を低減する効果を奏し、
炭素繊維の配向方向を厚み方向として、その厚みが2mmであるシート形状となるように切断して得られ、
式(2)から各試料の熱伝導率を求め、
熱伝導率=T/熱抵抗 ・・・・(2)式
式(2)において、Tは厚みである、
熱伝導性シート。」

3 引用文献Aの記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Aには、次の事項が記載されている。

(1)「【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明を熱伝導性シートに具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)~(c)に示すように、本実施形態に係る熱伝導性シート11は、熱伝導性高分子組成物から成形される熱伝導性高分子層12と、該熱伝導性高分子層12の外面12a上に形成される貼着層13と、該貼着層13上に形成される機能層としての熱拡散層14とを備えている。各層は、下方から熱拡散層14、貼着層13、及び熱伝導性高分子層12の順に積層されている。以下の説明において、熱伝導性シート11を単にシート11といい、熱伝導性高分子組成物を単に組成物といい、熱伝導性高分子層12を単に高分子層12という。シート11は、例えば発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、発熱体した発熱体から熱を放散して発熱体を冷却する。」
(2)「【0018】
高分子層12は四角板状を有しており、発熱体から放熱体への熱伝導を促進することにより、発熱した発熱体を冷却する。高分子層12は、高分子マトリックス15と、熱伝導性充填材16とを備えている。本実施形態の熱伝導性充填材16は、繊維状を有する熱伝導性充填材16、即ち繊維状充填材16aと、粒子状を有する熱伝導性充填材16、即ち粒子状充填材16bとを有している。繊維状充填材16aは配向されている。例えば図1(b)及び(c)に示す高分子層12においては、繊維状充填材16aは高分子層12の厚さ方向に沿って配向されている。そのため、高分子層12において、厚さ方向の熱伝導率の値は、幅方向の熱伝導率の値に2~数百を乗じた値と等しい。繊維状充填材16aの先端部は、高分子層12の幅方向に沿って延びるとともに対向する一対の外面12a上に露出している。」
(3)「【図1】
[図:0001417360000011.jpg]
」

第6 対比及び判断

1 本願発明1及び引用発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明1の「高分子マトリックス」は、本願発明1の「高分子マトリクス」に相当する。

引用発明1の「熱伝導性成形体(以下、単に成形体という。)」は、「成形体はシート状に形成されて」いることから、本願発明1の「熱伝導性シート」に相当する。

引用発明1の「繊維状充填材14」は、「成形体の厚さ方向に沿って配向され」ることから、本願発明1の「異方性充填材」に相当する。

引用発明1における「高分子マトリックスは、熱伝導性充填材を成形体内に保持」することは、「熱伝導性充填材は、繊維状充填材14を有」することから、本願発明1における「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有」することに相当する。

したがって、引用発明1の「熱伝導性充填材を成形体内に保持」する「高分子マトリックスと、熱伝導性充填材とを備え」た「成形体」は、本願発明1の「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有した熱伝導性シート」に相当する。

イ 引用発明1の「外面16」は、本願発明1の「一方の面」に相当する。

したがって、引用発明1における「繊維状充填材14の端部」が「外面16に沿って拡が」っていることは、上記アを踏まえると、本願発明1における「少なくとも一方の面は、前記異方性充填材が表出」していることに相当する。

ウ 引用発明1における「成形体の外面16が研磨され、外面16から露出している繊維状充填材14の前端は、外面16に沿って潰れたり磨り減ったりすることにより、外面16に沿って拡がり、繊維状充填材14の端部に突部14bが形成され」ることは、上記イを踏まえると、本願発明1における「山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下である」ことと、面が平滑性を有する点で共通する。

(2)一致点及び相違点

上記(1)から、本願発明1と引用発明1の間には、次のアのとおりの一致点及びイのとおりの相違点があるといえる。

ア 一致点

「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有した熱伝導性シートであって、少なくとも一方の面は、前記異方性充填材が表出しつつ、平滑性を有する熱伝導性シート。」

イ 相違点

本願発明1では、面の山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下であるのに対し、引用発明1では、外面16の平滑性が山頂点の算術平均曲(Spc)で特定されていない点。

(3)相違点についての判断

本願発明1と引用発明1との相違点は「山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下である」という数値限定(以下「本件数値限定」という。)のみにあるから、審査基準第III部第2章第4節6.2に基づいて検討する。

ア 序

実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮といえる。しかしながら、本願発明1の引用発明1と比較した効果が次の(ア)-(ウ)の全てを満たす場合は、本願発明1は引用発明1に対して進歩性を有する。

(ア)効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用文献1に開示されていない有利なものであること

(イ)効果が引用発明1が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであること

(ウ)効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと

イ 効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用文献1に開示されていない有利なものであるかについて

本願明細書の段落【0004】の記載によれば、本願発明1の課題は「厚さ方向の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性シートを提供すること」であるものと認められる。また、本願明細書の段落【0082】の表1に記載の実施例1-8及び比較例1-2並びに段落【0095】の表2に記載の実施例9-16及び比較例3-4のうち、本件数値限定を有する本願発明1に対応するものは実施例1,4,5,8,9,12,13,16であるところ、実施例1,4と比較例1、実施例5,8と比較例2、実施例9,12と比較例3、実施例13,16と比較例4のそれぞれの記載によれば、本願発明1においては、本件数値限定の数値の範囲内において、シート状形成体を研磨する前と比較して熱抵抗値が74~88%低下するという点で上記課題が解決され、また、本願明細書の段落【0064】及び【0096】に記載のとおり、上記課題に対応する効果が奏されているものと認められる。

これに対して、引用発明1は「成形体の外面16が研磨され、外面16から露出している繊維状充填材14の前端は、外面16に沿って潰れたり磨り減ったりすることにより、外面16に沿って拡がり、繊維状充填材14の端部に突部14bが形成され」るものであって、「露出工程後の成形体の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値が10~32%低い」ものであるから、引用文献1には本願発明1の効果と同質の効果が開示されているといえるものの、その効果の程度は本願発明1の効果と同等のものとはいえない。

したがって、本願発明1の効果は、引用文献1に開示されていない有利なものである。

ウ 効果が引用発明1が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであるかについて

上記イのとおり、本願発明1の効果と引用発明1の効果は同質であるから、本願発明1の効果が、引用発明1の効果より際立って優れたものであるか、すなわち、有利な効果が顕著性を有しているかについて検討する。

(ア)本願発明1の効果と引用発明1の効果の比較

上記イのとおり、形成体の研磨前後における熱抵抗値の低下の程度は、本願発明1においては74~88%であるのに対し、引用発明1においては10~32%であるから、本願発明1の効果と引用発明1の効果の間には2倍超の差異があるものと認められる。

したがって、本願発明1の効果は、引用発明1の効果より相当程度大きいといえる。

(イ)本件数値限定の臨界的意義

上記イのとおり、本願発明1の課題は「厚さ方向の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性シートを提供すること」であるものと認められる。また、引用文献1の段落【0007】の記載によれば、引用発明1の課題は「熱伝導性能に優れる」「熱伝導性成形体」「を提供すること」を含むものと認められる。したがって、本願発明1と引用発明1は課題が共通するといえる。

本願発明1と引用発明1の課題が共通する場合、有利な効果の顕著性が認められるためには、本件数値限定の内と外のそれぞれの効果について、量的に顕著な差異がなければならない。そこで、本件数値限定の外の効果について、本願明細書の段落【0082】の表1における実施例2,3と比較例1の記載及び実施例6,7と比較例2の記載並びに段落【0095】の表2における実施例10,11と比較例3の記載及び実施例14,15と比較例4の記載を参照すると、本件数値限定の外においては、シート状形成体を研磨する前と比較した熱抵抗値の低下の程度は21~56%であるものと認められる。上記イのとおり、本件数値限定の内においては、シート状形成体を研磨する前と比較した熱抵抗値の低下の程度は74~88%であるから、本件数値限定の内と外のそれぞれの効果の間には18ポイントの差異があり、この差異は量的に顕著であるといえる。

したがって、本件数値限定は臨界的意義を有する。

(ウ)有利な効果の顕著性

上記(ア)-(イ)のとおり、本願発明1の効果は引用発明1の効果より相当程度大きく、本件数値限定は臨界的意義を有するから、本願発明1の有利な効果は顕著性を有している。

エ 効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないといえるかについて

上記第5の1(1)カ(引用文献1の段落【0065】)の記載によれば、引用発明1の「露出工程後の成形体の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値が10~32%低い」構成について「形成工程によって得られる突部14bに起因すると考えられる」との示唆があるといえる。このことに鑑みれば、当業者は、引用発明1の外面16を研磨して突部14bを外面16に沿って拡げることにより熱抵抗値を低くできることを認識できたものと認められる。そして、引用発明1の突部14bを外面16に沿って拡げることで、突部14bの主曲率は小さくなり、外面16の山頂点の算術平均曲(Spc)も小さくなるものといえる。

しかしながら、露出工程後の成形体の熱抵抗値に比べて、形成工程後の熱抵抗値を74~88%低いものとできるほどに、引用発明1の外面16を研磨して山頂点の算術平均曲(Spc)を小さくすることについては、引用文献1-2,Aのいずれにも記載されておらず、優先日における周知の事項であったとも認められない。

したがって、本願発明1の効果は、優先日における技術水準から当業者が予測できたものとはいえない。

オ 小括

上記イ-エのとおり、本願発明1の引用発明1と比較した効果は上記ア(ア)-(ウ)の全てを満たすものであるから、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2,Aに記載の発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明1及び引用発明2について

(1)対比

本願発明1と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明2の「高分子マトリクス2」は、本願発明1の「高分子マトリクス」に相当する。

引用発明2の「炭素繊維」は、「所定の方向に配向している」ことから、本願発明1の「異方性充填材」に相当する。

引用発明2における「炭素繊維が高分子マトリクス2の中」にあることは、本願発明1における「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有」することに相当する。

したがって、引用発明2の「炭素繊維が高分子マトリクス2の中で所定の方向に配向している熱伝導性シート」は、本願発明1の「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有した熱伝導性シート」に相当する。

イ 引用発明2の「シートの表面」は、本願発明1の「一方の面」に相当する。

したがって、引用発明2における「平坦に潰され」た「炭素繊維の端面」が「シートの表面から露出し」ていることは、上記アを踏まえると、本願発明1における「少なくとも一方の面は、前記異方性充填材が表出」していることに相当する。

ウ 引用発明2における「シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨し、露出した炭素繊維の端面が平坦に潰され」ることは、上記イを踏まえると、本願発明1における「山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下である」ことと、面が平滑性を有する点で共通する。

(2)一致点及び相違点

上記(1)から、本願発明1と引用発明2の間には、次のアのとおりの一致点及びイのとおりの相違点があるといえる。

ア 一致点

「高分子マトリクス中に異方性充填材を含有した熱伝導性シートであって、少なくとも一方の面は、前記異方性充填材が表出しつつ、平滑性を有する熱伝導性シート。」

イ 相違点

本願発明1では、面の山頂点の算術平均曲(Spc)が6517(1/mm)以下であるのに対し、引用発明2では、シートの表面の平滑性が山頂点の算術平均曲(Spc)で特定されていない点。

(3)相違点についての判断

本願発明1と引用発明2との相違点は本件数値限定のみにあるから、審査基準第III部第2章第4節6.2に基づいて検討する。

ア 序

上記1(3)アと同様に、本願発明1の引用発明2と比較した効果が次の(ア)-(ウ)の全てを満たす場合は、本願発明1は引用発明2に対して進歩性を有する。

(ア)効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用文献2に開示されていない有利なものであること

(イ)効果が引用発明2が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであること

(ウ)効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと

イ 効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用文献2に開示されていない有利なものであるかについて

上記1(3)イのとおり、本願発明1の課題は「厚さ方向の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性シートを提供すること」であり、本願発明1においては、本件数値限定の数値の範囲内において、シート状形成体を研磨する前と比較して熱抵抗値が74~88%低下するという点で上記課題が解決され、また、上記課題に対応する効果が奏されているものと認められる。

これに対して、引用発明2は「シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨」することで「熱伝導性シートの熱抵抗を低減する効果を奏」するものであるから、引用文献2には本願発明1の効果と同質の効果が開示されているといえるものの、研磨による熱抵抗の低減の程度は引用文献2に開示されていないから、その効果の程度は本願発明1の効果と同等のものとはいえない。

したがって、本願発明1の効果は、引用文献2に開示されていない有利なものである。

ウ 効果が引用発明2が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであるかについて

上記イのとおり、本願発明1の効果と引用発明2の効果は同質であるから、本願発明1の効果が、引用発明2の効果より際立って優れたものであるか、すなわち、有利な効果が顕著性を有しているかについて検討する。

(ア)本願発明1の効果と引用発明2の効果の比較

上記イのとおり、形成体の研磨前後における熱抵抗値の低下の程度は、本願発明1においては74~88%であるのに対し、引用発明2においては不明であるから、本願発明1の効果の程度と引用発明2の効果の程度を直ちに比較することはできない。しかしながら、上記1(3)ウ(イ)のとおり、本件数値限定の内と外のそれぞれの効果の間には量的に顕著な差異があることに鑑みれば、本件数値限定を有する本願発明1の効果は、本件数値限定を有さない引用発明2の効果と比較して、相当程度大きいといえる。

(イ)本件数値限定の臨界的意義

上記イのとおり、本願発明1の課題は「厚さ方向の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性シートを提供すること」であるものと認められる。また、引用文献2の段落[0004]の記載によれば、引用発明2の課題は「熱伝導性の高い熱伝導性シートを提供すること」を含むものと認められる。したがって、本願発明1と引用発明2は課題が共通するといえる。

本願発明1と引用発明2の課題が共通する場合、有利な効果の顕著性が認められるためには、本件数値限定の内と外のそれぞれの効果について、量的に顕著な差異がなければならないところ、上記1(3)ウ(イ)のとおり、本件数値限定の内と外のそれぞれの効果の間には量的に顕著な差異がある。

したがって、本件数値限定は臨界的意義を有する。

(ウ)有利な効果の顕著性

上記(ア)-(イ)のとおり、本願発明1の効果は引用発明2の効果より相当程度大きいといえ、本件数値限定は臨界的意義を有するから、本願発明2の有利な効果は顕著性を有している。

エ 効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないといえるかについて

引用発明2が「シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨し、露出した炭素繊維の端面が平坦に潰され、端面は、発熱体や放熱体との密着性を高めて、熱伝導性シートの熱抵抗を低減する効果を奏」する構成を有することに鑑みれば、当業者は、引用発明2のシートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨することにより熱伝導性シートの熱抵抗を低減できることを認識できたものと認められる。そして、引用発明2のシートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨することで、炭素繊維の端面の主曲率は小さくなり、シートの表面の山頂点の算術平均曲(Spc)も小さくなるものといえる。

しかしながら、シートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨する前の熱伝導性シートの熱抵抗に比べて、研磨した後の熱抵抗を74~88%低いものとできるほどに、引用発明2のシートの表面から露出した炭素繊維の端面を研磨して山頂点の算術平均曲(Spc)を小さくすることについては、引用文献1-2,Aのいずれにも記載されておらず、優先日における周知の事項であったとも認められない。

したがって、本願発明1の効果は、優先日における技術水準から当業者が予測できたものとはいえない。

オ 小括

上記イ-エのとおり、本願発明1の引用発明2と比較した効果は上記ア(ア)-(ウ)の全てを満たすものであるから、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1,Aに記載の発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明2-8について

本願発明2-8は、いずれも本願発明1を減縮したものであり、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献Aに記載の発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について

上記第6のとおり、本願発明1-8は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献A-Bに記載の発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について

上記第6のとおり、本願発明1-8は、当業者であっても、当審拒絶理由に引用された引用文献1又は2に記載の発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-018362

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