特許拒絶査定不服審判
2023-018348
自動細胞培養
- 審判番号
- 2023-018348
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-563557
- 請求日
- 2023年10月30日
- 審決日
- 2025年11月14日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ホアセルズ コーポレイション
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 【請求人】ジャァジアン サイシャン メディカル サイエンス アンド テクノロジー リミテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 道祖土 新吾
- 分類
- P18 .121-Z (C12M) / P18 .575-Z (C12M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-563557「自動細胞培養」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年11月21日国際公開、WO2019/219050、令和 3年 9月 2日国内公表、特表2021-522826〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月16日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年5月18日、2018年12月21日、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである(以下、2018年5日18日を「優先日」という。)。
令和2年11月20日 :翻訳文の提出
令和4年10月12日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月28日 :原査定の謄本の送達)
同年10月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月30日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年10月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年4月19日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
細胞培養反応器であって、
ハウジングと、
細胞培養培地のための流体回路であって、前記流体回路が前記ハウジングの内部に配置されており、
前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器と、
前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部と、
前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプと、を備える流体回路と、
前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、該センサーは、前記流体回路中の前記細胞培養の相を示すパラメータを検出するように構成されている、一つ以上のセンサーと、を備える細胞培養反応器と、
少なくとも前記細胞培養の相を示すパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置と、を備える、自動細胞培養システム。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
細胞培養反応器であって、
ハウジングと、
細胞培養培地のための流体回路であって、前記流体回路が前記ハウジングの内部に配置されており、
前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器と、
前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部と、
前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプと、を備える流体回路と、
前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、該センサーは、前記流体回路中の前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータを検出するように構成されている、一つ以上のセンサーと、を備える細胞培養反応器と、
少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、
前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、
前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップと
を含む動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置と、を備える、自動細胞培養システム。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「コンピューティング装置」が「制御する」「細胞培養反応器の動作」について、「前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む動作」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Bまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】及び【図4】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
A 細胞培養反応器であって、
A1 ハウジングと、
A2 細胞培養培地のための流体回路であって、
A2-1 前記流体回路が前記ハウジングの内部に配置されており、
A2-2 前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器と、
A2-3 前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部と、
A2-4 前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプと、を備える
A2 流体回路と、
A3 前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、該センサーは、前記流体回路中の前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータを検出するように構成されている、一つ以上のセンサーと、を備える
A 細胞培養反応器と、
B 少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置と、を備える、
X 自動細胞培養システム。
<参考図>
【図1】
[図:0001434490000001.jpg]
【図4】
[図:0001434490000002.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0002】
本出願は、細胞培養の技術分野、特に自動細胞培養に関する。」
「【0045】
図1を参照すると、自動細胞培養システム100は、自動化されたコンピュータ制御の下で細胞を培養するための統合装置である。自動細胞培養システム100の基部部分102は、メモリに連結された一つ以上のマイクロプロセッサなど、自動細胞培養システム100の動作を制御するコンピューティング装置101を収容する。クランプカバー103は、基部部分102を閉じて機械的にロックして留めることができ、例えば、コンピューティング装置101への偶発的または未承認のアクセスを防止するのに役立つ。
【0046】
自動細胞培養システム100の反応器部分104は、その中で細胞培養が行われる内部インキュベーション空間を画定するハウジング105を含む。ハウジングは密閉することができる。例えば、ハウジングは、シリコーンガスケットによってクランプカバー103にぴったりはめ込むことができる。密閉されたハウジングは、ガス漏れの防止に役立ち、例えば、ハウジング105の内部のガス濃度の効率的な制御および効率的なガス使用を可能にし、かつ効率的な温度制御を可能にしうる。反応器部分104は、T細胞などの細胞が、コンピューティング装置によってモニターされ制御された環境中において細胞培養培地で効率的に培養されうる細胞培養容器を収容する。反応器部分104は、自動細胞培養システム100のコンピューティング装置に連結された一つ以上のセンサーを収容することができる。センサーは、細胞培養培地の温度、pH、反応器部分104の雰囲気中の酸素または二酸化炭素などのガスの濃度、細胞培養培地中に溶解した酸素などの濃度または分圧、グルコースなどの糖の濃度、乳酸などの細胞培養副産物の濃度などの培養環境のパラメータ、または細胞培養環境のその他のパラメータを検出することができる。反応器部分104は、加熱構成要素、ガス流量コントローラ、ポンプ、または自動細胞培養システム100のその他の構成要素など、自動細胞培養システム100のコンピューティング装置による自動制御下で動作可能な一つ以上の構成要素を収容することができる。例えば、自動細胞培養システム100のコンピューティング装置は、反応器部分の一つ以上のセンサーによって検出された培養環境のパラメータに基づいて、閉ループフィードバックシステムの反応器部分104の一つ以上の構成要素の動作を自動的に制御することができる。
【0047】
培養環境のパラメータの自動モニタリングおよび制御は、効率的な細胞培養を達成するのに役立ちうる。例えば、自動細胞培養システムの構成要素は、例えば、ユーザーがシステムを手動で操作するか、または手動で制御命令を入力するのを待つことなく、細胞培養環境のパラメータの変化に応答して、リアルタイムで制御されうる。リアルタイムのモニタリングに応答したシステムのリアルタイム制御は、システムの細胞培養培地の標的量、ガスの標的濃度、成長因子などの培養試薬の標的濃度、標的温度、標的pHまたはその他のパラメータなどの標的パラメータが一貫して維持されることを可能にする。細胞培養プロセス全体を通してパラメーを一貫して標的値に維持する能力は、培養の効率の改善に役立ちうる。
【0048】
培養環境のパラメータの自動モニタリングおよび制御は、成長因子などのリソースの効率的な使用の達成に役立ち、従って細胞培養に関連する材料コストを低減することができる。例えば、培養環境のパラメータのリアルタイムモニタリングに基づいて、細胞培養プロセスの相を決定することができる。特定のパラメータの標的値は、細胞培養プロセスの相によって異なる場合がある。これらのパラメータをモニタリングし、細胞培養プロセスの相の動的決定に応答してリアルタイムで調整することができる。」
「【0054】
自動細胞培養システム100の反応器部分104に収容された一つ以上のセンサーは、培養環境のパラメータをリアルタイムで検出し、感知されたパラメータを示す信号を、ローカルコントローラ、自動細胞培養システム100のコンピューティング装置またはその両方に提供するように構成されている。センサーは、自動細胞培養システムのコンピューティング装置と有線または無線通信している場合がある。培養環境とは、自動細胞培養システム100の反応器部分104のハウジングの内部の細胞培養培地および雰囲気を意味する。センサーには、温度センサー、pHセンサー、溶存ガスセンサー、大気ガスセンサー、グルコースセンサー、乳酸センサー、流体質量もしくは体積センサー、またはその他のタイプのセンサーを含みうる。コントローラまたはコンピューティング装置100は、リアルタイムのユーザー入力なしに、感知したパラメータに応答して、ヒーター、ガス流量コントローラ、ポンプ、またはその他の構成要素など、自動細胞培養システムの一つ以上の構成要素の動作を自動的に制御することができる。例えば、閉ループフィードバックシステムにおけるパラメータのリアルタイム調整は、時間およびリソース効率の高い細胞培養を可能にすることができる。一部の実施例では、コンピューティング装置100は、感知されたパラメータまたは感知されたパラメータの履歴またはその両方に基づいて、細胞培養の相を決定することができ、それによって、細胞培養の相に基づいて、自動細胞培養システム100の一つ以上の構成要素の動作を制御することができる。コンピューティング装置100は、例えば、感知されたパラメータが閾値を超えるかまたは下回る時、細胞培養の相に変化が特定された時、またはその他の理由のために、視覚的警告および音声警告のうちの一つ以上などの警告を、ディスプレイ106などのユーザーインターフェース上に出力させることができる。」
「【0065】
一部の実施例において、検出されたパラメータのうちの一つ以上は、細胞培養の相を決定するために、例えば、初期の低増殖期、急速な(例えば、急激な)増殖期、または細胞増殖が減少または停止しているプラトーなど、細胞培養の相を決定するためにコンピューティングシステムによって使用されうる。例えば、細胞培養培地中のグルコースまたは乳酸レベル、細胞培養培地中の溶存酸素濃度、流体回路の細胞培養培地中の栄養素の量の減少率、またはその他のパラメータは細胞培養の相を示す場合がある。
【0066】
自動細胞培養システム100のコンピューティングシステムは、検出されたパラメータのうちの一つ以上に基づいて、または検出されたパラメータのうちの一つ以上の経時的変化に基づいて、細胞培養プロセスの相を決定することができる。コンピューティングシステムは、細胞培養プロセスの決定された相に応答して、一つ以上の構成要素の動作を制御することができる。例えば、細胞培養が初期にある時は、コンピューティングシステムは、ユーザー入力なしにポンプ212a、212bを自動的に制御して、流体回路中の細胞培養培地の体積を低く保ち、それによって細胞培養培地中の成長因子の高い濃度を達成することを可能にする。急速な増殖期では、コンピューティングシステムは、ユーザー入力なしに、ポンプ212a、212bを自動的に制御して、流体回路の細胞培養培地の体積を増加させることができる。コンピューティングシステムは、細胞培養の相に基づいて、例えば、成長因子などの細胞培養試薬の追加を制御することができる。コンピューティングシステムは、ヒーター218の動作を制御して、細胞培養容器200を細胞培養の相に特定の目標温度に維持することができる。コンピューティングシステムは、一つ以上のマスフローコントローラまたは弁、または両方の組み合わせの動作を制御して、反応器部分の内部に二酸化炭素または窒素を提供して、細胞培養の相に特定の標的二酸化炭素または酸素濃度を維持するか、または細胞培養の相に特定の、細胞培養培地中の標的pHまたは溶存酸素濃度を維持することができる。コンピューティングシステムは、例えば、細胞培養の決定された相を示すため、細胞培養が停滞期に達したことを示すため、措置(例えば、成長因子などの試薬の手動追加、培養細胞の採取、または別の措置)を取るようユーザーに警告するため、措置(例えば、成長因子などの試薬の追加、細胞培養培地のリフレッシュ、または別の措置)が自動的に実施されたことをユーザーに知らせるため、またはその他の理由のために、ディスプレイ106などのユーザーインターフェース上に警告を出力させることができる。」
「【0072】
自動細胞培養システム100のコンピューティング装置は、細胞培養の相に応じて、流体回路中の細胞培養培地の量を調整することができる。例えば、中空管カートリッジ300の毛細管外空間314中の成長因子などの細胞培養試薬の濃度が高く、細胞増殖を促進しうるように、細胞培養の比較的低い量を細胞培養の初めに提供することができる。細胞培養の後の相で、細胞培養培地の量を増加させることができる。」
「【0080】
一部の実施例において、細胞培養培地の交換は、pH、溶存酸素濃度、貯蔵部202中の細胞培養培地の量、または別のパラメータなどの細胞培養培地の検出されたパラメータに応答して、自動化されたコンピュータ制御下で行うことができる。例えば、細胞培養培地のpHまたは貯蔵部中の細胞培養培地の量が、それぞれ閾値pHまたは閾値量を下回った場合、ポンプ208aは、追加の細胞培養培地を新鮮な培地の供給源206から流体回路400の中に送り出するように制御されうる。一部の実施例では、細胞培養培地の交換は、細胞培養の決定された相に応答して自動化されたコンピュータ制御下で行うことができる。例えば、貯蔵部中の細胞培養培地の閾値量は、細胞培養の相に依存する場合がある。細胞培養の特定の相における貯蔵部中の細胞培養培地の量がその相の閾値量を下回った場合、ポンプ208aは、追加の細胞培養培地を流体回路の中に送り出すように制御されうる。
【0081】
流体回路400中に循環する細胞培養培地の流量は、例えば、ポンプ204の動作の制御を通して、コンピュータシステムによって制御されうる。例えば、流体回路400中の細胞培養培地の標的流量は、細胞培養の相に依存する場合があり、例えば、早期相では、細胞を妨害しないように流量を低くすることができ、急速増殖期などの後期相では、栄養素を培養細胞に効率的に提供し、培養容器200から廃棄物を除去するために、流量をより高くすることができる。ポンプ204は、例えば、コンピュータシステムによって決定された細胞培養の相に応答して、自動的にかつユーザー入力なしに、コンピュータシステムによって制御されうる。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2013/0058907号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、括弧内に当合議体が作成した日本語訳を示した。また、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(ア) [0008]、[0009]
「[0008] 1. Field of the Invention
[0009] The present invention relates to a method and system that creates a self-contained culture environment, and more particularly to a cell culture system incorporating a disposable cultureware module and a reusable compact instrumentation base device that is capable of expanding cells including primary cells and cell lines as well as patient-specific cells or cells lines in an automated, contaminant-free manner.」
([0008] 1. 発明が属する技術分野
[0009] 本発明は、自給式培養環境を作り出す方法及びシステムに関し、より詳細には、一次細胞及び細胞株並びに患者特異的細胞又は細胞株を含む細胞を自動化され、汚染物質を含まない様式で増殖させることができる、使い捨て培養容器モジュールおよび再使用可能な小型器具ベースデバイスを組み込んだ細胞培養システムに関する。)
(イ) [0032]~[0034]
「[0032] Accordingly, there is a need for a system and method whereby cells and/or cell products can be cultured in a fully automated, rapid and sterile manner.
SUMMARY OF THE INVENTION
[0033] One aspect of the present invention is to provide a modular and integrated system for the production and expansion of cells or cell lines. The system consists of a reusable control module housing with all of the mechanical and electronic components and disposable cell growth modules that attach to the control module. This system minimizes the need for skilled technicians and more importantly, prevents the possibility of cross-contamination in a multi-use facility. As an enclosed system, the safety provided by complete segregation facilitates direct applicability to therapies or diagnoses that require autologous cell culture. This self-contained, automated cell culture device allows for simultaneously culture of numerous cell cultures within a compact facility, without the need for individual, segregated cell culture suites. The system of the present invention provides a compact sealed containment system that will enable the cost effective manufacture of cells, cell lines, patient specific cells and cell products on an industrial scale.
[0034] Another aspect of the present invention is to provide a method and system that incorporates disposable cultureware, which eliminates the need for cleaning and reuse.」
([0032] したがって、細胞及び/又は細胞産物を完全に自動化された迅速かつ無菌の様式で培養することができるシステム及び方法が必要とされている。
発明の概要
[0033] 本発明の一態様は、細胞又は細胞株の産生及び増殖のためのモジュール式及び一体型システムを提供することである。このシステムは、機械的及び電子的構成要素のすべてを有する再使用可能な制御モジュールハウジングと、制御モジュールに取り付けられる使い捨て可能な細胞増殖モジュールとからなる。このシステムは、熟練技術者の必要性を最小限にし、より重要なことには、多目的施設における相互汚染の可能性を防止する。閉鎖系として、完全な分離によって提供される安全性は、自己細胞培養を必要とする治療又は診断への直接的な適用可能性を促進する。この自蔵式自動細胞培養装置は、個々の隔離された細胞培養室を必要とすることなく、コンパクトな施設内で多数の細胞培養物を同時に培養することを可能にする。本発明のシステムは、細胞、細胞株、患者特異的細胞及び細胞生成物の工業的規模での費用効果の高い製造を可能にするコンパクトな密封封じ込めシステムを提供する。
[0034] 本発明の別の態様は、洗浄及び再使用の必要性を排除する、使い捨て培養製品を組み込む方法及びシステムを提供することである。)
(ウ) [0073]~[0075]、FIG.1
「[0073] Referring to FIG.1, the present invention provides a fully integrated system 10 for producing cells and cell derived products in a closed, self-sufficient environment. More specifically, the system allows for cell expansion and harvest of cells and their products with minimal need for technician interaction. As will be described further herein, the device incorporates cell culture technology, for example, hollow fiber or similar bioreactor perfusion technology, with all tubing components other than the media feed, harvest tubing and tubes threaded through the pump cassette, encased in a single-use, disposable incubator 12. Following bioreactor inoculation with cells, the system follows pre-programmed processes to deliver media, maintain pH, maintain lactate levels, control temperature and harvest cells or cell-secreted protein. Standard or unique cell culture growth parameters can be programmed prior to bioreactor inoculation, such that, various cell types can be expanded and such that cells or cell products can be harvested in an efficient, reproducible manner with minimal chance of human error.
[0074] The system is based on cell growth chamber technology. For example, bioreactors that have a plurality of semi-permeable hollow fibers or other type of semi-permeable membrane or substrate potted in a housing to create a space inside the fiber or one side of the membrane (referred to as intracapillary or IC space) separate from that outside the fibers or on the other side of the membrane (referred to as extracapillary or EC space). Fluid distribution between the IC and EC space occurs through the fiber pores which can range in size from 10 MW(Kd) to 0.2μm. Cells are placed on one side of the fiber or membrane, usually in the EC space, in a complete cell culture medium, which is usually the same medium used to expand cells prior to bioreactor inoculation (serum containing, serum-free, or protein-free medium). Cells are usually placed in the EC space when secreted protein is the desired product. In some instances, when cells are the desired product, it may be beneficial to place cells in the IC space.
[0075] Medium is perfused through a bioreactor 20 by circulating through the IC space at a fast rate. The medium can be a liquid containing a well-defined mixture of salts, amino acids, and vitamins that often contains one or more protein growth factors. This serves to deliver nutrients to the cell space and conversely, removes or prevents a toxic build-up of metabolic waste. During this circulation, medium is passed through an oxygenator or gas exchanger cartridge 24 which serves to provide pH control and oxygen for the cells and conversely, remove carbon dioxide from the culture. When the bioreactor 20 contains a smaller number of cells, just after inoculation, the oxygenator or gas exchange cartridge is used to provide CO2 and subsequently control pH of the culture environment. As cell number increases, the oxygenator is used to remove CO2 which serves to enhance acid neutralization and control the pH of the culture. Other bioreactor configurations, in addition to hollow fibers, that are designed and optimized for the growth and production of cells and production of cell-derived products are also included.」
「FIG.1
[図:0001434490000003.jpg]
」
([0073] 図1を参照すると、本発明は、閉鎖された自給自足環境において細胞及び細胞由来生成物を生成するための完全に統合されたシステム10を提供する。より具体的には、このシステムは、技術者との相互作用の必要性を最小にして、細胞の増殖並びに細胞及びそれらの産物の収集を可能にする。本明細書でさらに説明されるように、デバイスは、細胞培養技術、例えば、中空繊維又は同様のバイオリアクター灌流技術を組み込み、培地供給管、採取管、及びポンプカセットを通した管以外の全ての管構成要素は、シングルユース使い捨てインキュベータ12内に入れられる。細胞をバイオリアクターに接種した後、システムは、予めプログラムされたプロセスに従って、培地を送達し、pHを維持し、乳酸レベルを維持し、温度を制御し、細胞又は細胞分泌タンパク質を採取する。標準的又は独特の細胞培養増殖パラメータは、バイオリアクター接種の前にプログラムされ得、その結果、種々の細胞型が増殖され得、そしてその結果、細胞又は細胞産物が、効率的で再現可能な様式で、人的エラーの可能性を最小にして収集され得る。
[0074] システムは、細胞成長チャンバー技術に基づく。例えば、複数の半透過性中空繊維又は他のタイプの半透過性膜もしくは基材をハウジング内にポッティングして、繊維の外側又は膜の他方の側(毛細管外又はEC空間と呼ばれる)から分離した、繊維の内側又は膜の一方の側(毛細管内又はIC空間と呼ばれる)の空間を形成するバイオリアクター。IC空間とEC空間との間の流体分布は、10 MW(Kd)~0.2μmのサイズの範囲であり得る繊維細孔を通して生じる。細胞は、繊維又は膜の片側に、通常はEC空間において、完全細胞培養培地中に配置され、これは通常、バイオリアクター接種の前に細胞を増殖させるために使用されるものと同じ培地(血清含有培地、無血清培地、又はタンパク質フリー培地)である。分泌されたタンパク質が所望の産物である場合、細胞は通常、EC空間内に配置される。場合によっては、細胞が所望の生成物である場合、IC空間内に細胞を配置することが有益であり得る。
[0075] 培地は、速い速度でIC空間を通って循環することによって、バイオリアクター20を通って灌流される。培地は、しばしば一つ又は複数のタンパク質成長因子を含有する、塩、アミノ酸、及びビタミンの明確に定義された混合物を含有する液体であり得る。これは、栄養素を細胞空間に送達する役割を果たし、逆に、代謝廃棄物の毒性蓄積を除去又は防止する。この循環の間、培地は、細胞にpH制御及び酸素を提供し、逆に培養物から二酸化炭素を除去するように働く酸素供給器又はガス交換カートリッジ24を通過する。バイオリアクター20がより少ない数の細胞を含む場合、接種直後に、酸素供給器又はガス交換カートリッジを使用してCO2を提供し、続いて培養環境のpHを制御する。細胞数が増加するにつれて、酸素供給器は、CO2を除去するために使用され、これは、酸中和を増強し、そして培養物のpHを制御するようにはたらく。中空糸に加えて、細胞の成長及び産生並びに細胞由来生成物の産生のために設計及び最適化される他のバイオリアクター構成もまた含まれる。)
(エ) [0077]、FIG2、FIG.3
「[0077] Referring again to FIG.1, the system consists of two individual parts: an instrumentation base device 14 that is reusable and an enclosed cultureware module 12 that is used for a single production run and is disposable. Numerous modules 12 can be used on a single device 14. The instrument provides the hardware to support cell culture growth and production in a compact package. As shown in FIG.2, and as will be described in further detail herein, an easy-load multiple channel peristaltic pump drive 16 located in base device 14 and a pump cassette 70 move fresh basal media into the cultureware, removes spent media, adds growth factors or other supplements and removes product harvest. An integrated cool storage area 18 maintains the factor and harvest at a low temperature (approximately 4° C.). An integrated heating mechanism 22 (FIG.6) maintains the cell environment to promote growth and production. Gas exchange cartridge 24 (FIG.5), in conjunction with a cultureware pH sensor 26 controls the pH of the cell culture medium. Two automated tube valving drives 90 (FIG.3) are used to control the cultureware flow path configuration to accomplish the fluidic switching functions needed to initiate and do a successful run. Valves 90 and sensors 32 (FIGS.3,5,13) in the instrument control the fluid cycling in the cultureware module 12. A drive pump 34 (FIGS.3,5) for fluid circulation is provided. An attached barcode reader, not shown, facilitates operator and lot tracing. A communication port ties the instrument to a data information management system (such as a MES). A flat panel display 36 (FIG.1) with touch screen is available for user interaction.」
「FIG.2
[図:0001434490000004.jpg]
」
「FIG.3
[図:0001434490000005.jpg]
」
([0077] 再び図1を参照すると、システムは、二つの個々の部分、すなわち、再使用可能な計装ベースデバイス14と、単一の生産工程に使用され、使い捨てである封入された培養容器モジュール12とからなる。多数のモジュール12を単一のデバイス14上で使用することができる。この機器は、コンパクトなパッケージ中での細胞培養増殖及び生成を支持するためのハードウェアを提供する。図2に示されるように、そして本明細書中でさらに詳細に記載されるように、ベースデバイス14及びポンプカセット70に位置する容易に装填される複数チャネル蠕動ポンプドライブ16は、新鮮な基本培地を培養容器に移動させ、使用済み培地を除去し、増殖因子又は他の補充物を添加し、そして産物収集物を除去する。統合された低温貯蔵領域18は、因子及び収穫物を低温(約4℃)に維持する。統合された加熱機構22(図6)は、細胞環境を維持して、増殖及び生成を促進する。ガス交換カートリッジ24(図5)は、培養容器pHセンサー26と共に、細胞培養培地のpHを制御する。二つの自動化された管弁駆動部90(図3)が、培養容器流路構成を制御して、実行を開始し、成功させるのに必要な流体スイッチング機能を達成するために使用される。器具内の弁90及びセンサー32(図3、5、13)は、培養容器モジュール12内の流体循環を制御する。流体循環用の駆動ポンプ34(図3、5)が設けられている。取り付けられたバーコードリーダ(図示せず)は、オペレータ及びロット追跡を容易にする。通信ポートは、機器をデータ情報管理システム(MESなど)に結び付ける。タッチスクリーンを有するフラットパネルディスプレイ36(図1)は、ユーザとの相互作用に利用可能である。)
(オ) [0081]~[0086]、FIG.10
「[0081] Referring to FIG.1, disposable cell culture module 12 is removably attachable to device 14. The module requires multiple mechanical and electrical interfaces to the control instrumentation of device 14. Module 12 has interface features integrated into the module that mate with instrument interface features in the device to allow for a single motion installation (FIG.10). As modules 12 are to be disposed of after use, it should be appreciated that numerous modules can be used in conjunction with a single base device 14.
[0082] As shown in FIG.3, the interface features of device 14 include circulation pump drive 34, actuator valves 90 and cycling sensor 32. In addition, a temperature probe 44 and a flow sensor 46 interface with the components of module 12. Device 14 also includes an electrical connection 48 for pH probe 26 disposed within module 12.
…(中略)…
[0086] During installation, module 12 is aligned with the connections of the device 14 and the module is placed into the operating position as shown in FIG. 10. All mating interface features are functional. Referring to FIG. 19, when installed, certain features of the module 12, formed in a back panel 148 of the module, interface with device 14. Module air outlet 86 aligns with device air inlet 56 and module air inlet 88 aligns with device air outlet 58 to circulate heated air through module 12 as described herein. Gas connectors 152 and 154 engage device gas ports 52 and 54, respectively, to allow gas to enter and exit module 12. Valve bodies 156 receive actuator valves 90. Hub 158 receives pH probe 26 interface and aligns with electrical connector 48. Module 12 is connected to circulation pump drive 34 via module pump connection 164. Cycling unit 40 also communicates with cycling sensor 32 when the module is installed. The flow sensor 46 of device 12 mates with flow sensor connection 166. The temperature sensor 44 of device 14 mates with a non invasive receptacle in module 12 that is in contact with the IC media to provide control feed back to the control mechanism to regulate the thermal output of heater 22. The above mating connections facilitate the one-motion installation of the module 12 on the device.」
「FIG.10
[図:0001434490000006.jpg]
」
([0081] 図1を参照すると、使い捨て細胞培養モジュール12は、デバイス14に取り外し可能に取り付け可能である。モジュールは、デバイス14の制御機器への複数の機械的及び電気的インターフェースを必要とする。モジュール12は、単一動作設置を可能にするようにデバイス内の器具インターフェース特徴と嵌合する、モジュール内に統合されたインターフェース特徴を有する(図10)。モジュール12は使用後に廃棄されるので、多数のモジュールを単一のベースデバイス14と共に使用することができることを理解されたい。
[0082] 図3に示されるように、デバイス14のインターフェース機構は、循環ポンプ駆動部34、アクチュエータ弁90、及び循環センサー32を含む。加えて、温度プローブ44及び流量センサー46は、モジュール12の構成要素とインターフェースする。デバイス14はまた、モジュール12内に配置されたpHプローブ26のための電気接続部48を含む。
…(中略)…
[0086] 設置されている間、モジュール12は、デバイス14の接続部と位置合わせされ、モジュールは、図10に示されるような動作位置に配置される。全ての嵌合インターフェース機構は機能的である。図19を参照すると、設置されると、モジュールの背面パネル148内に形成されたモジュール12の特定の特徴は、デバイス14と相互作用する。モジュール空気出口86はデバイス空気入口56と整列し、モジュール空気入口88はデバイス空気出口58と整列して、本明細書で説明するようにモジュール12を通して加熱空気を循環させる。ガスコネクタ152及び154は、それぞれデバイスガスポート52及び54と係合して、ガスがモジュール12に出入りすることを可能にする。バルブ本体156は、アクチュエータバルブ90を受容する。ハブ158は、pHプローブ26インターフェースを受容し、電気コネクタ48と整列する。モジュール12は、モジュールポンプ接続部164を介して循環ポンプ駆動部34に接続される。循環ユニット40はまた、モジュールが設置されると、循環センサ32と通信する。デバイス12の流量センサ46は、流量センサ接続166と嵌合し、デバイス14の温度センサ44は、IC媒体と接触しているモジュール12内の非侵襲的レセプタクルと嵌合して、制御機構に制御フィードバックを提供し、加熱器22の熱出力を調節する。上記嵌合接続は、デバイス上へのモジュール12のワンモーション設置を容易にする。)
(カ) [0102]、FIG.17
「[0102] As shown in FIGS.17-19, disposable cultureware module 12 includes fluid cycling unit 40 to maintain fluid volumes and cycling in the cell growth chamber.…(後略)」
「FIG.17
[図:0001434490000007.jpg]
」
([0102] 図17~19に示されるように、使い捨て培養容器モジュール12は、流体循環ユニット40を含み、細胞成長チャンバー内の流体体積および循環を維持する。)
(キ) [0105]
「[0105] The present invention also includes an indirect lactate control method for perfusion culture using CO2 and pH sensing. The method predicts open system, perfusion culture, lactate levels in the circulatory medium by monitoring the pH and off-gas CO2 level. This is accomplished by calculating the initial bicarbonate level of the media then utilizing the liquid pH and gas level of CO2 to calculate current lactate concentration. This is used to control media dilution rate of the cell culture. The resulting calculated lactate value is used to set the perfusion rate of media dilution to maintain a pre-determined lactate level. Thus, an invasive sensing system or multiple off-line sampling is not required.」
([0105] 本発明はまた、CO2及びpHセンシングを使用する灌流培養のための間接的な乳酸制御方法を含む。この方法は、pH及びオフガスCO2レベルをモニターすることによって、循環培地中の開放系、灌流培養、乳酸レベルを予測する。これは、培地の初期重炭酸塩レベルを計算し、次いで液体pH及びCO2のガスレベルを利用して現在の乳酸塩濃度を計算することによって達成される。これは、細胞培養物の培地希釈率を制御するために使用される。得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定する。したがって、侵襲的な感知システム又は複数のオフラインサンプリングは必要とされない。)
(ク) [0125]~[0127]、FIG.22
「[0125] The application is shown in FIG.22. In a bioreactor perfusion loop, the growth media is pumped from an IC reservoir 137 via pump drive 34, 164, circulated to the gas exchange cartridge (GEX) 24, pH sensor 26, bioreactor 20, and then back to reservoir 137.137. Blended gases are passed through the membrane gas exchange cartridge that oxygenates the media and regulates CO2. Per Henry's Law, the CO2 levels in the gas phase or air side of the GEX 24 is in equilibrium with the liquid phase of the media. The discharge end of the GEX is monitored with a CO2 sensor 142 that resides in the device 14 and the lactate is calculated per Equation (6). When the media lactate level is known, the instrument uses automatic, media dilution, control to maintain the predetermined set point.
[0126] The present invention utilizes existing signals and with the addition of a non-invasive gas CO2 sensor incorporates lactate control to control media feed rate for cell growth and production. Utilizing the invention reduces materials and labor associated with recurring off-line testing. Utilizing the invention allows for continual adjustment of the dilution rate that would otherwise be inefficient and costly if step increases were used as in previous technologies.
[0127] Utilizing the present invention increases the predictability of cell culture metabolics. Allows a perfusion cell culture system to have an increased level of automation. The lactate and media dilution rate can be used to determine the state of cell growth and production.」
「FIG.22
[図:0001434490000008.jpg]
」
([0125] アプリケーションが図22に示されている。バイオリアクター灌流ループにおいて、培養培地は、ポンプ駆動部34、164を介してICリザーバ137から圧送され、ガス交換カートリッジ(GEX)24、pHセンサー26、バイオリアクター20に循環され、次いでリザーバ137.137に戻る。混合されたガスは、培地に酸素供給し、CO2を調節する膜ガス交換カートリッジを通過する。ヘンリーの法則によれば、GEX24の気相又は空気側におけるCO2レベルは、培地の液相と平衡状態にある。GEXの排出端は、デバイス14内にあるCO2センサー142で監視され、乳酸塩は式(6)に従って計算される。培地乳酸レベルが既知である場合、機器は、所定の設定点を維持するために、自動培地希釈制御を使用する。
[0126] 本発明は、既存の信号を利用し、非侵襲性ガスCO2センサーを追加して、乳酸制御を組み込んで、細胞増殖及び産生のための培地供給速度を制御する。本発明を利用することにより、繰り返し行われるオフライン試験に関連する材料及び労力が低減される。本発明を利用することにより、従来技術のように段階的に増加させた場合には非効率的でコストがかかる希釈率を連続的に調整することが可能となる。
[0127] 本発明を利用することにより、細胞培養代謝の予測可能性が増大する。灌流細胞培養システムの自動化レベルを高めることができる。乳酸塩及び培地希釈率を使用して、細胞成長及び産生の状態を決定することができる。)
(ケ) [0130]、FIG.23
「[0130] Referring to the flow diagram of FIG.23, pump 16 moves fresh basal media into the cultureware at media line 210. Media line 210 is connected to a user provided container of fresh media to provide the growth nutrients to the cell culture that are pumped into the disposable. Outflow line 214 is connected to a user provided container to collect the waste or spent media being pumped out of the disposable. Factor line 212 is connected to a user provided container of growth factors that are pumped into the disposable. EC inoculate can be added at 220 and IC sample at 216. Product harvest is removed at 126. The cells are harvested at 218. Harvest line 218 is a pre-attached container that is part of the disposable that is used to collect the product that is pumped out of the disposable. Pump 16 has multiple lines 210, 214, 212 and 126. Because the pump of the present invention has a common fixed axial shaft and individual servo driven rotors, the control of the flow of each can be independent, allowing one channel or flow to be increased while another decreased.」
「FIG.23
[図:0001434490000009.jpg]
」
([0130] 図23のフロー図を参照すると、ポンプ16は、新鮮な基本培地を培地ライン210において培養容器内に移動させる。培地ライン210は、使用者が提供する新鮮な培地の容器に接続されて、使い捨て容器内にポンピングされる細胞培養物に成長栄養素を提供する。流出ライン214は、使用者が提供する容器に接続されて、使い捨て容器から汲み出される廃棄又は使用済み媒体を収集する。因子ライン212は、使用者が提供する成長因子の容器に接続され、この成長因子は、使い捨て容器内にポンプ輸送される。220においてEC接種物を添加し、216においてIC試料を添加することができる。126において生成物回収物を除去する。218において細胞を回収する。回収ライン218は、使い捨て品から汲み出される生成物を収集するために使用される使い捨て品の一部である予め取り付けられた容器である。ポンプ16は、複数のライン210、214、212および126を有する。本発明のポンプは、共通の固定された軸方向シャフトおよび個々のサーボ駆動されるロータを有するので、各々の流れの制御は、独立であり得、一つのチャネルまたは流れが増加される一方で別のチャネルまたは流れが減少されることを可能にする。)
イ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
引用文献1の[0077]における「封入された培養容器モジュール12」との記載を踏まえて、FIG.1及びFIG.17を見ると、次の事項(以下「認定事項1」という。)が看取できる。
<認定事項1>
「培養容器モジュール12の筐体の内部にバイオリアクター20、ガス交換カートリッジ24、pHプローブ26等の収容物が封入されていること。」
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「機械的及び電子的構成要素のすべてを有する再使用可能な制御モジュールハウジングである再使用可能な計装ベースデバイス14と、制御モジュールに取り付けられる使い捨て可能な細胞増殖モジュールである使い捨てである封入された培養容器モジュール12とからなる細胞又は細胞株の産生及び増殖のためのモジュール式及び一体型システムであって、([0033]、[0077])
システムは、一次細胞及び細胞株並びに患者特異的細胞又は細胞株を含む細胞を、自動化され、汚染物質を含まない様式で増殖させることができるものであって、([0009])
設置されている間、モジュール12は、デバイス14の接続部と位置合わせされ、動作位置に配置され、設置されると、モジュールの背面パネル148内に形成されたモジュール12の特定の特徴は、デバイス14と相互作用し、モジュール12は、モジュールポンプ接続部164を介して循環ポンプ駆動部34に接続されるように構成され、([0086])
デバイス14のインターフェース機構は、循環ポンプ駆動部34を含んでおり、([0082])
培養容器モジュール12の筐体の内部にバイオリアクター20、ガス交換カートリッジ24、pHプローブ26等の収容物が封入されており、(認定事項1)
バイオリアクター灌流ループにおいて、培養培地は、ポンプ駆動部34を介してICリザーバ137から圧送され、ガス交換カートリッジ(GEX)24、pHセンサー26、バイオリアクター20に循環され、次いでリザーバ137に戻るように構成され、([0125])
GEXの排出端は、デバイス14内にあるCO2センサー142で監視され、([0125])
CO2及びpHセンシングを使用する灌流培養のための間接的な乳酸制御方法を含んでおり、この方法は、pH及びオフガスCO2レベルをモニターすることによって、循環培地中の乳酸レベルを予測するものであり、培地の初期重炭酸塩レベルを計算し、次いで液体pH及びCO2のガスレベルを利用して現在の乳酸塩濃度を計算し、得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定し、([0105])
乳酸制御を組み込んで、細胞増殖及び産生のための培地供給速度を制御する、([0126])
システム。」
(3) 引用文献3~8の記載事項並びに技術常識1及び2の認定
ア 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である「培養細胞の継代に関する知っておくべき基礎知識、サーモフィッシャーサイエンティフィック社ホームページ、2016年8月11日掲載、https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/guidelines-for-maintaining-cultured-cells/」(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「
[図:0001434490000010.jpg]
図 培養細胞に特徴的な増殖曲線。細胞密度と培養日数の片対数プロットで表示しています。培養細胞は、一般に標準的な増殖パターンに従って増殖します。培養開始後の最初の成長期は誘導期と呼ばれ、細胞が培養条件に順応し、活発に増殖するための準備を行う成長の遅い時期です。誘導期に続く対数増殖期(すなわち、「対数的な」時期)では、細胞は指数関数的に増殖し、増殖培地中の栄養分を消費します。増殖培地がすべて消費される(すなわち、1種類以上の栄養素が枯渇する)か、または細胞が培地表面をすべて覆ってしまうと、細胞は静止期(すなわち、定常期)に入り、増殖は大きく減退、または完全に停止します。」
「培地の栄養物の枯渇
哺乳類細胞
増殖培地のpHの低下は一般に、細胞代謝の副産物である、乳酸の蓄積を示唆します。乳酸は細胞にとって有毒である場合もあり、pHの低下は細胞の成長にとって最適ではありません。pHの変化の速度は一般に、培養液中の細胞濃度に依存しており、細胞密度が高い場合には、細胞密度が低い場合よりも培地の枯渇が速くなります。細胞密度が増加し、pHの急速な低下(0.1~0.2を超えるpHの低下)が見られる場合には、継代の必要があります。」
イ 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である「松村 正利、動物細胞培養における膜分離の利用、膜、Vol.18、No.6、347-356頁、1993」(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「培養開始後16日間は膜分離なしの通常の灌流培養を行って細胞濃度を6.2×106cells/mlとした後,16日間膜分離による灌流培養を行った.この培養期間中に比灌流速度を細胞増殖に伴って次第に増加させている.これは,細 胞濃度に見合う栄養源の供給と共に細胞が分泌するアンモニア,乳酸など細胞増殖阻害性の代謝老廃物を系外に排出するためである.」(353頁左欄1~7行)
ウ 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開2017-143775号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0042】
細胞培養中の培養液の流速については、特に制限はないが、細胞が増殖するのに応じて適宜流速を調整することが好ましい。特に、対数増殖期に入るまでの、培養初期段階においては、栄養供給と細胞周囲の微小環境の維持のバランスを考慮し、流速を厳密に制御する必要がある。即ち、流速が遅すぎると、細胞への栄養供給が十分になされず、細胞が増殖しにくくなる。逆に、流速が速すぎると、細胞の周囲の環境変化が大きく、不適となる。
流速の調整は、培養液中のグルコースや乳酸の濃度変化をモニターし、これをもとに行うことが好ましい。また、培地の流速は、細胞培養容器のスケールに応じて調節する。
…(中略)…
【0045】
(モニタリング装置等)
本発明の細胞培養装置は、pH、グルコース、乳酸塩、酸素等といった細胞代謝物質の成分や濃度等を経時的にモニタリングする手段や分析手段を含んでも良い。例えば、検知のためのセンサーを含むことができる。センサーは、中空糸内側の出入り口または中空糸外側の出入り口の任意の位置に、取り付けることができる。あるいは、中空糸内側や中空糸外側の出口に、フラクションコレクターを取り付けることにより、定期的に培養液を採取することもできる。
【0046】
培養液中のグルコースや乳酸塩の濃度は、細胞増殖性に応じるため、培養液の流速を調節するための指標として用いることができる。例えば、グルコース濃度が減少した場合、細胞が増殖しているため、細胞へ栄養を供給するため、培養液の流速を上げ、細胞が更に増殖しやすい環境を提供することができる。」
エ 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特表2008-525025号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【0107】
10%FBS DMEM培地におけるMDCK-S細胞の成長曲線を図4に示す。この結果は、異なる継代数(P63及びP65)の細胞を用いた2つの実験の平均である。MDCK-S細胞は、約1日の誘導期(lag phase)を有している(接種時の総細胞数1.75×106細胞/T75フラスコ、及び1日目の総細胞数2.9×106細胞/T75)。誘導期とは、接種してからの細胞数が2倍に達しない時期をいう。グルコース消費/乳酸産生比は、初日ではほぼ0であった。これは、細胞が誘導期にあることを示している(図5)。その後細胞は、接種後4日目に静止期に入るまでの細胞増殖期間の間、指数関数的に増殖した。対数増殖期におけるMDCK-S細胞の倍化時間は、23.1時間であった。対数期の間、グルコース消費と乳酸産生は、乳酸濃度の増加とグルコース濃度の減少においてお互いに酷似していた(図5)。グルコース消費/乳酸産生比は、細胞成長曲線とよく対応していた(図4、5を比較されたい)。この速度は誘導期間の間は低く、1日目~4日目の対数期の間はグルコースが2.93mM/日、及び乳酸が3.43 mM/日増加した。
【0108】
MDCK-S細胞は、接種後4日目に静止期に入った。そして、到達した最大細胞密度は、接種後5日目におけるおよそ29±0.99×106細胞であった(図4)。細胞数は、本実験では最大細胞密度に達した後も7日目まで一定に維持された。グルコース消費速度と乳酸産生速度は、静止期ではグルコースが0.33mM/日、及び乳酸が0.25mM/日に落ちた。7日間の培養後の約12mMのグルコースが培地中にまだ残っていた。4日目のグルコース消費量対乳酸産生の比率は1.2であった。」
オ 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特表2011-530310号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「【0030】
好気的に増殖する細胞はグルコースおよび酸素を消費して乳酸塩を作り出す。細胞増殖室内に存在する細胞が多いほど、多くのグルコースおよび酸素が消費されて多くの乳酸塩が作り出される。細胞が高密度で、特に粘着性の細胞であれば、コロニー間の増加した細胞間相互作用により細胞増殖は減速する。細胞凝集も高い細胞密度において生じる。細胞増殖室の内側を直接見て細胞がシステムの無菌性を破壊することなく互いに増殖しているかを確かめることは現在慣例的に行われてはいない。したがって、乳酸塩等の細胞増殖の代謝産物、またはグルコースおよび酸素等の細胞増殖中に消費される産物を間接測量として使用し、細胞が合流点に達していて(当審注:引用文献7に対応する米国出願における該当箇所(米国特許出願公開第2013/0058907号明細書の[0034]参照)の記載が「cells were reaching confluence」であることから、「細胞が合流点に達していて」は「細胞がコンフルエント(静止期)に達している」ことを意味すると解するのが相当である。)採取されなければならないかを決定できれば有利である。
【0031】
細胞倍増数を決定し、次に、それは細胞増殖が鈍化する前に細胞を再播種または採取するための最善の時間を決定するようなアルゴリズムを発生することができる。倍増数は生成された乳酸塩の質量および細胞増殖システム内に最初に装填された細胞の数を使用して決定することができる。
再播種または採取は倍増数=d’の時に行われるべきであり、
N=システム内の細胞数
N0=細胞増殖室内に装填された開始細胞数
乳酸塩の質量mLの変化率はNに比例する
[図:0001434490000011.jpg]
倍増数を決定し、次に、それが再播種または採取する最善の時間を決定するようなアルゴリズムが使用される。倍増数は乳酸塩質量mLおよびシステム内の初期細胞数Nから決定することができる。
[図:0001434490000012.jpg]
【0032】
作り出される乳酸塩の割合は任意の時点におけるシステム内の細胞の数に比例する。細胞の数が増加すると細胞増殖率が減少するため、乳酸塩生成率も減少すると予期される。アルゴリズムに最初に入れられる数はcおよびラインが平坦化するポイントの両方を変える。」
カ 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開2016-52335号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「【0071】
一方、細胞代謝に関しては、乳酸分泌量(図19)、グルコース消費量(図20)、グルタミン消費量(図21)、アンモニア分泌量(図22)とそれぞれに対する細胞数の時間積分との関係を調べた。各グラフの横軸は細胞数の時間積分(IVC)であるため、グラフの傾きが単位細胞あたりの基質消費速度もしくは単位細胞あたりの代謝物分泌速度を意味する。まず、乳酸分泌量と細胞数の時間積分の関係(図19)より、低せん断応力分布から高せん断応力分布2へとせん断応力が強くなるにつれて乳酸分泌量が小さくなることがわかる。乳酸分泌速度(グラフ傾き)は、培養初期(IVC<0.6×106cells・day/mL)では各せん断応力分布間で大きな差異はないが、培養中期(0.6×106cells・day/mL<IVC<2×106cells・day/mL)で、乳酸分泌速度に大きく差異がでる。その後、培養後期(2×106cells・day /mL < IVC)で、乳酸分泌速度に差異は無くなった。詳細なメカニズムは不明であるが、せん断応力分布による乳酸分泌への影響は培養フェーズに依存することがわかる。」
「【図19】
[図:0001434490000013.jpg]
」
キ 技術常識1の認定
前記ア~ウに摘記した引用文献3~5の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「細胞培養中の培養液の供給速度について、以下の理由により、「誘導期」における流速よりも「対数増殖期」における流速を速くするのが好ましいこと。
<理由>
細胞培養の「誘導期」においては、速度が速すぎると細胞の周囲の環境変化が大きく適切でない一方で、「対数増殖期」においては、細胞密度が低い「誘導期」よりも培地の枯渇が速く、乳酸の蓄積が増加するため、細胞濃度に見合う栄養源の供給と共に細胞が分泌する乳酸などの細胞増殖阻害性の代謝物を系外に排出する速度を高めて細胞が増殖しやすい環境を提供する必要があるから。」
ク 技術常識2の認定
前記ウ~カに摘記した引用文献5~8の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。)
<技術常識2>
「培養液中の代謝産物である乳酸の濃度は細胞増殖性に対応しており、乳酸濃度の増加速度は、「誘導期」において低く、「対数増殖期」の間に増加し、「静止期」に近づくにつれて低下する傾向があるから、乳酸濃度の変化を観測することで、細胞増殖の過程が「誘導期」、「対数増殖期」、「静止期」のいずれにあるかを推測しうること。」
(4) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
「自動細胞培養システム」の発明である本件補正発明と「細胞を、自動化され[た]」「様式で増殖させることができる」「細胞又は細胞株の産生及び増殖のためのモジュール式及び一体型システム」の発明である引用発明は、「自動細胞培養システム」の発明である点において一致する。
(イ) 構成A及びA1の観点
a 構成Aは、「細胞培養反応器」を備えることであり、構成A1は、「細胞培養反応器」が「ハウジング」を備えることである。
b 引用発明における「培養容器モジュール12」は、その「筐体の内部に」「バイオリアクター20」が「封入されて」いるから、本件補正発明における「細胞培養反応器」に相当する。
c 引用発明における「培養容器モジュール12の筐体」は、本件補正発明における「細胞培養反応器」が備える「ハウジング」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A及びA1の観点について、次の点において一致する。
「細胞培養反応器」を備え、「細胞培養反応器」が「ハウジング」を備える点。
(ウ) 構成A2の観点
a 構成A2は、「細胞培養反応器」が「細胞培養培地のための流体回路」を備えることである。
b 引用発明における「バイオリアクター灌流ループ」は、「培養培地」である流体が「バイオリアクター20に循環され[る]」ための経路であるといえるから、本件補正発明における「細胞培養培地のための流体回路」に相当する。
c そして、引用発明における「バイオリアクター灌流ループ」は、「培養容器モジュール12」において備えられたものであるといえるから、前記(イ)を踏まえると、本件補正発明における「細胞培養反応器」が備える「細胞培養培地のための流体回路」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A2の観点について、次の点において一致する。
「細胞培養反応器」が「細胞培養培地のための流体回路」を備える点。
(エ) 構成A2-2の観点
a 構成A2-2は、「流体回路」が「前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器」を備えることである。
b 引用発明における「バイオリアクター20」は、「バイオリアクター灌流ループにおいて」「循環され[る]」「培養培地」により細胞を培養するものであることが明らかであるところ、「バイオリアクター20」は、「バイオリアクター灌流ループ」において備えられたものであるといえるから、前記(ウ)を踏まえると、本件補正発明における「流体回路」が備える「前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A2-2の観点について、次の点において一致する。
「流体回路」が「前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器」を備える点。
(オ) 構成A2-3の観点
a 構成A2-3は、「流体回路」が「前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部」を備えることである。
b 引用発明における「ICリザーバ137」は、「ICリザーバ137から圧送され[た]」「培養培地」という流体が「バイオリアクター20に循環され、次いでリザーバ137に戻るように構成され[ている]」ため、「バイオリアクター20」に流体連結されており、「培養培地」を貯留する機能があることが明らかであるところ、「ICリザーバ137」は、「バイオリアクター灌流ループ」において備えられたものであるといえるから、本件補正発明における「流体回路」が備える「前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A2-3の観点について、次の点において一致する。
「流体回路」が「前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部」を備える点。
(カ) 構成A2-4の観点
a 構成A2-4は、「流体回路」が「前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプ」を備えることである。
b 引用発明における「バイオリアクター灌流ループにおいて、培養培地は、ポンプ駆動部34を介してICリザーバ137から圧送され」るから、引用発明の「ポンプ駆動部34」は、「バイオリアクター灌流ループ」において備えられたものであるといえる。
c そうすると、引用発明における「ポンプ駆動部34」は、本件補正発明における「流体回路」が備える「流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプ」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A2-4の観点について、次の点において一致する。
「流体回路」が「前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプ」を備える点。
(キ) 構成A2-1の観点
a 構成A2-1は、「流体回路」が「前記ハウジングの内部に配置されて」いることである。
b 本件補正発明における「前記流体回路が前記ハウジングの内部に配置されて[いる]」とは、前記(イ)~(カ)において検討した「前記流体回路」が備える「培養容器」、「貯蔵部」及び「ポンプ」が「前記ハウジングの内部に配置されて[いる]」ことを意味すると解するのが相当であり(このことは、本願明細書の【0052】、図2等に記載された実施例とも整合する。)、以下、当該解釈に基づいて検討する。
c 前記(ウ)~(カ)の検討を踏まえると、引用発明における「バイオリアクター灌流ループ」には、「ポンプ駆動部34」、「ICリザーバ137」及び「バイオリアクター20」が含まれる。
(a) ここで、引用発明における「バイオリアクター20」は、「培養容器モジュール12の筐体の内部に」「封入されて[いる]」から、このことは、本件補正発明における「前記ハウジングの内部に配置されて[いる]」ことに相当する。
(b) また、引用発明における「ICリザーバ137」について、「培養容器モジュール12の筐体の内部に」「封入されて[いる]」ことが明確に特定されていないから、引用発明は、本件補正発明における「前記ハウジングの内部に配置されて[いる]」ことに相当する構成を備えるかどうかが明らかでない。
(c) さらに、引用発明における「ポンプ駆動部34」は、「デバイス14のインターフェース機構」が「含んで[いる]」から、引用発明は、本件補正発明における「前記ハウジングの内部に配置されて[いる]」ことに相当する構成を備えない。
d 前記cを踏まえると、引用発明における「培養容器モジュール12」は、「バイオリアクター灌流ループ」に含まれる「バイオリアクター20」を備える一方で、「ICリザーバ137」を備えるか否かが明らかでなく、「ポンプ駆動部34」を備えないといえる。
e 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明において、構成A2-1の観点についての一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 一致点
「前記流体回路が備える培養容器が前記ハウジングの内部に配置されている」点。
(b) 相違点
流体回路を構成する部材と細胞培養反応器(のハウジング)との関係について、
本件補正発明においては、「貯蔵部」及び「ポンプ」「が前記ハウジングの内部に配置されており、」「細胞培養反応器」が、「流体回路」が「備える」「貯蔵部」及び「ポンプ」を「備える」のに対して、
引用発明においては、ICリザーバ137が、培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されているかどうかが明らかでなく、ポンプ駆動部34が、デバイス14のインターフェース機構が含む構成であって、培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されておらず、そのため、ICリザーバ137が細胞培養反応器において備えられたものかどうかが明らかでなく、ポンプ駆動部34が細胞培養反応器において備えられたものでない点。
(ケ) 構成A3の観点
a 構成A3は、「細胞培養反応器」が「前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、該センサーは、前記流体回路中の前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータを検出するように構成されている、一つ以上のセンサーと、を備える」ことである。
b 引用発明における「pHセンサー26」及び「CO2センサー142」からなる構成は、「pH及びオフガスCO2レベルをモニター」して「液体pH及びCO2のガスレベルを利用して現在の乳酸塩濃度を計算」するために用いられるものであるから、乳酸塩濃度を得るためのセンサー対(以下「乳酸塩濃度を得るためのセンサー対」という。)であるといえる。
c 引用発明における「乳酸塩濃度を得るためのセンサー対」(前記b参照)は、本件補正発明における「一つ以上のセンサー」に相当する。
d 引用発明における「乳酸塩濃度を得るためのセンサー対」によって乳酸塩濃度を得ることは、乳酸塩濃度が細胞培養の状態を示すパラメータであることが明らかであるから、本件補正発明において「前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータを検出する」ことと、「前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータを検出する」点で共通する。
e 引用発明における「乳酸塩濃度を得るためのセンサー対」のうちの「pHセンサー26」は、「培養容器モジュール12の筐体の内部に」「封入されて[いる]」一方で、「CO2センサー142」は、「デバイス14内にある」ため、引用発明における「乳酸塩濃度を得るためのセンサー対」は、センサー対の一部が「培養容器モジュール12の筐体の内部に」「封入されて[いる]」といえるから、本件補正発明における「細胞培養反応器」が「備え」、「ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサー」と、「細胞培養反応器が備え、少なくともその一部がハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサー」である点で共通する。
f 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明において、構成A3の観点についての一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 一致点
「細胞培養反応器」が「少なくともその一部が前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、前記流体回路中の前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータを検出するように構成されている一つ以上のセンサー」を備える点。
(b) 相違点
一つ以上のセンサーについて、
本件補正発明においては、「少なくともその一部」だけではなく全部が「前記ハウジングの前記内部に配置され[て]」いるのに対して、
引用発明においては、CO2センサー142がデバイス14内にあり培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されたものではなく、
検出する細胞培養の状態が、
本件補正発明においては、「細胞培養の相」であるのに対して、
引用発明においては、細胞培養の相とまではいえない点。
(コ) 構成Bの観点
a 構成Bは、「少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置」を備えることである。
b 前記(ケ)dを踏まえると、引用発明における「乳酸塩濃度」は、本件補正発明における「少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータ」と、「少なくとも前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータ」である点で共通する。
c 引用発明において、「現在の乳酸塩濃度を計算し、得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定する」ことは、培養容器モジュール12の動作の制御に関することであって、前記bも踏まえると、本件補正発明において「少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む動作を」「制御する」ことと、「少なくとも前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータに応じて前記細胞培養培地の流量を設定する動作を制御する」点で共通する。
d また、引用発明において、「現在の乳酸塩濃度を計算し、得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定する」ことが、「自動化され[た]」「システム」における「制御モジュールハウジングである」「計装ベースデバイス14」によって行われることは明らかであるから、引用発明における「計装ベースデバイス14」は、本件補正発明における「細胞培養反応器の動作」「を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置」に相当する。
e 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明において、構成Bの観点についての一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 一致点
「少なくとも前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータに応じて前記細胞培養培地の流量を設定する動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置」を備える点。
(b) 相違点
コンピューティング装置が制御する動作について、
本件補正発明においては、「少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む」動作であるのに対して、
引用発明においては、現在の乳酸塩濃度を計算し、得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定する動作である点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「細胞培養反応器であって、
ハウジングと、
細胞培養培地のための流体回路であって、前記流体回路が備える培養容器が前記ハウジングの内部に配置されており、
前記細胞培養培地中で細胞を培養するための培養容器と、
前記培養容器に流体連結された前記細胞培養培地用の貯蔵部と、
前記流体回路中の前記細胞培養培地を送り出すように構成されたポンプと、を備える流体回路と、
少なくともその一部が前記ハウジングの前記内部に配置された一つ以上のセンサーであって、前記流体回路中の前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータを検出するように構成されている一つ以上のセンサーと、を備える細胞培養反応器と、
少なくとも前記細胞培養の状態を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータに応じて前記細胞培養培地の流量を設定する動作を自動的に制御するように構成されたコンピューティング装置と、を備える、自動細胞培養システム」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
部材と細胞培養反応器(のハウジング)との関係について、
本件補正発明においては、「貯蔵部」及び「ポンプ」「が前記ハウジングの内部に配置されており、「細胞培養反応器」が、「流体回路」が「備える」「貯蔵部」及び「ポンプ」を「備える」のに対して、
引用発明においては、ICリザーバ137が、培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されているかどうかが明らかでなく、ポンプ駆動部34が、デバイス14のインターフェース機構が含む構成であって、培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されておらず、そのため、ICリザーバ137が細胞培養反応器において備えられたものかどうかが明らかでなく、ポンプ駆動部34が細胞培養反応器において備えられたものでない点。
b 相違点2
一つ以上のセンサーについて、
本件補正発明においては、「少なくともその一部」だけではなく全部が「前記ハウジングの前記内部に配置され[て]」いるのに対して、
引用発明においては、CO2センサー142がデバイス14内にあり培養容器モジュール12の筐体の内部に封入されたものではない点。
c 相違点3
一つ以上のセンサーについて、
本件補正発明においては、検出する細胞培養の状態が「細胞培養の相」であるのに対して、
引用発明においては、検出する細胞培養の状態が細胞培養の相とまではいえず、
コンピューティング装置が制御する動作について、
本件補正発明においては、「少なくとも前記細胞培養の相を示す一つ以上のパラメータに基づいて、前記細胞培養反応器の動作であって、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む」動作であるのに対して、
引用発明においては、現在の乳酸塩濃度を計算し、得られた計算乳酸値を使用して、所定の乳酸レベルを維持するように培地希釈の灌流速度を設定する動作である点。
(5) 判断
ア 相違点1及び2について
相違点1及び2は、部材の配置に係る論点として関連するため、併せて検討する。
引用発明において、細胞培養に関する様々な部材を培養容器モジュール12における筐体の内部に設けるか、計装ベースデバイス14に設けるかについては、部材の形状や寸法、筐体の内部における空きスペースの程度、部材間の機能的なつながりの度合いに応じて、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないから、ICリザーバ137、ポンプ駆動部34、CO2センサー142等の部材を培養容器モジュール12における筐体の内部に設けて、前記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が設定し得た実施の態様のバリエーションのうちの一つを採用することにすぎず、当業者にとって格別な創作性や困難性を要することであるとは認められない。
イ 相違点3について
(ア) 細胞培養の相に応じた培地流量の設定の動機について
a 前記3(3)キにおいて技術常識1として認定したとおり、次の事項は技術常識であったと認められる。
「細胞培養中の培養液の供給速度について、以下の理由により、「誘導期」における流速よりも「対数増殖期」における流速を速くするのが好ましいこと。
<理由>
細胞培養の「誘導期」においては、速度が速すぎると細胞の周囲の環境変化が大きく適切でない一方で、「対数増殖期」においては、細胞密度が低い「誘導期」よりも培地の枯渇が速く、乳酸の蓄積が増加するため、細胞濃度に見合う栄養源の供給と共に細胞が分泌する乳酸などの細胞増殖阻害性の代謝物を系外に排出する速度を高めて細胞が増殖しやすい環境を提供する必要があるから。」
b ここで、「細胞増殖及び産生のための培地供給速度を制御する」システムに関する引用発明において、「細胞増殖及び産生」を効率的に行うようにすべく、様々な培養状況に応じて培地供給速度の制御を行おうとすることは、当業者であれば当然なし得たことである。
c そのため、前記技術常識1を踏まえると、当業者にとって、引用発明において、採用培養の状態が「誘導期」であるか「対数増殖期」であるかに着目して、「誘導期」である場合の培地供給速度よりも、「対数増殖期」である場合の培地供給速度が高くなるような制御を行おうとする契機は存在するというべきである。
(イ) 相違点3に係る構成の採用について
a 前記3(3)クにおいて技術常識2として認定したとおり、次の事項は技術常識であったと認められる。
「培養液中の代謝産物である乳酸の濃度は細胞増殖性に対応しており、乳酸濃度の増加速度は、「誘導期」において低く、「対数増殖期」の間に増加し、「静止期」に近づくにつれて低下する傾向があるから、乳酸濃度の変化を観測することで、細胞増殖の過程が「誘導期」、「対数増殖期」、「静止期」のいずれにあるかを推測しうること。」
b ここで、前記技術常識1及び2における「誘導期」、「対数増殖期」、「静止期」の各期間は、本件補正発明における「細胞培養の相」に相当し、「誘導期」、「対数増殖期」のそれぞれは、本件補正発明における「早期相」、「急速増殖期」に相当する。
c そして、引用発明において、前記(ア)cにおいて説示した契機に基づいて培地供給速度の制御を行おうとする場合に、前記技術常識2を踏まえて、「得られた計算乳酸値」に基づき、細胞培養の状態が「誘導期」、「対数増殖期」、「静止期」のいずれの期間であるかを検出して、「誘導期」である場合の培地供給速度よりも、「対数増殖期」である場合の培地供給速度が高くなるような制御を行うことで、前記相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、引用文献1及び引用文献3は、本件補正発明における「細胞培養反応器の動作」が「前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が早期相であることを示すときは、前記細胞培養培地を第1の流量で流れるように制御するステップと、前記一つ以上のパラメータが、前記細胞培養が急速増殖相であることを示すときは、前記細胞培養培地の流量を、前記第1の流量よりも高い第2の流量まで増大させるステップとを含む」という構成を開示も示唆もしていないから、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて本件補正発明を容易に想到することはできない旨を主張している。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、前記相違点3に係る構成についてのものであるところ、前記(5)イにおいて説示したとおり、引用発明において技術常識1及び2を踏まえて前記相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の主張を採用することはできない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2013/0058907号明細書(主たる引用文献)
引用文献3.培養細胞の継代に関する知っておくべき基礎知識、サーモフィッシャーサイエンティフィック社ホームページ、2016年8月11日掲載、https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/guidelines-for-maintaining-cultured-cells/(技術常識又は周知技術を示す文献)
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項及び引用発明並びに技術常識1及び2は、前記第2の3(2)ア及びウ並びに(3)キ及びクにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2に示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-018348