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特許拒絶査定不服審判

2023-015281

初期胚を選別するための解析ソフトウエア及び装置

審判番号
2023-015281
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-114514
請求日
2023年09月11日
審決日
2025年07月30日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】JCRファーマ株式会社
  • 【請求人代理人】山本 佳希
  • 【請求人】塩谷 雅英
  • 【請求人代理人】山本 佳希
  • 【請求人】大月 純子
  • 【請求人代理人】山本 佳希
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 谷垣 圭二
  • 審判官 加々美 一恵
分類
P18 .121-WZ (C12M) / P18 .575-WZ (C12M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-114514「初期胚を選別するための解析ソフトウエア及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月12日出願公開、特開2020- 36580〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、令和元年6月20日(優先権主張 平成30年6月20日(以下「優先日」という。))の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年3月28日付け:拒絶理由通知書 同年5月10日 :意見書、手続補正書の提出 同年6月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月27日 :原査定の謄本の送達) 同年9月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 2 本願発明 (1) 本件補正後 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年9月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 顕微鏡,該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ,該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ,該メモリに保存された画像を解析するためのソフトウェアが記録された記録媒体,該解析により得られた結果を表示するための表示部,及び細胞培養器を含むものであり, 該ソフトウェアが,受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェアであり, 該顕微鏡が,該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである,装置。」 (2) 本件補正前の請求項との対応関係 本件補正後の請求項1は、次に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項6が間接的に引用する請求項4において「請求項1乃至3の何れかに記載のソフトウェアが記録された記録媒体」と記載されていたもののうち「請求項1」を選択した分の本件補正前の請求項6に対応するものである。 <本件補正前の特許請求の範囲の記載> 「【請求項1】 受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること,を含むものである, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェア。 【請求項2】 該ステップ(b)で測定された面積の差を1としたときの,雌雄前核核膜消失時を基準として,その7.5時間から8.5時間前時間前の何れかの時点で測定された当該面積差が1.4以上であること,を含むものである,請求項1に記載のソフトウェア。 【請求項3】 該予め設定された基準が, (e’)前核形成時を基準として,その直後から8時間後までの期間中,前核及び雄性前核の面積比(雄性前核/雌性前核)が常に1を超えること,を更に含むものである,請求項1又は2に記載のソフトウェア。 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載のソフトウェアが記録された記録媒体。 【請求項5】 顕微鏡,該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ,該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ,該メモリに保存された画像を解析するための請求項4に記載の記録媒体,及び該解析により得られた結果を表示するための表示部を含むものである,装置。 【請求項6】 細胞培養器を更に含み,該顕微鏡が,該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである,請求項5に記載の装置。」 (3) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のとおり構成Xと構成A(A’)から構成D(D’)までに分説する。ここで、構成D’における(a)~(d)までの構成を、以下「構成D’の解析手順の構成」という。また、参考図として、本願の【図3】に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> A 顕微鏡, B 該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ, C 該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ, D 該メモリに保存された画像を解析するためのソフトウェアが記録された記録媒体, E 該解析により得られた結果を表示するための表示部,及び F 細胞培養器を含むものであり, D’ 該ソフトウェアが,受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェアであり, A’ 該顕微鏡が,該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである, X 装置。 <参考図> 【図3】 [図:0001427250000001.jpg] (4) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,初期胚を選別するための解析ソフトウエア及び,該解析ソフトウエアが記録された記録媒体を内蔵する解析装置に関する。より詳しくは,例えば,顕微鏡下で観察された雌雄前核核膜消失(PNMBD)前の雌雄性前核面積を,雌雄前核核膜消失4~8時間前,及び雌雄前核核膜消失直前で観察することにより,体外受精で得られた受精卵の中から,子宮腔内への移植されるべきものを選択するために用いることのできるソフトウェア及び当該ソフトウェアが記録された記録媒体を含む装置に関する。」 「【0005】 近年,妊娠の確率を高めるための手段として,受精卵の雌性前核及び雄性前核の面積をパラメータとして用いる方法が報告されている(非特許文献16) 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0006】 (中略) 【非特許文献16】Otsuki J. et al., Reprod Med Biol. 16. 200-5 (2017) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は,体外受精で得られた受精卵の中から子宮腔内へ移植されるべきものを選択する手段を提供するためのソフトウェア及び当該ソフトウェアが記録された記録媒体を含む装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記目的に向けた研究において,受精卵の雌雄前核核膜消失(PNMBD)前の雌雄性前核面積差を,雌雄前核核膜消失4~8時間前と雌雄前核核膜消失直前で比較したときに,雌雄性前核面積差が雌雄前核核膜消失直前で縮小したものを選択して子宮腔内に移植することにより,体外受精における出産率を上昇させることができることを見出し,本発明を完成した。(後略)」 「【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】媒精法(IVF)により受精させた受精卵の,雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前(0時間前),4時間前,及び8時間前の雌性前核及び雄性前核の面積の変化を示す図。(A)は移植後に出産に至った群,(B)は移植後に出産に至らなかった群の,当該面積の変化をそれぞれ示す。縦軸は面積(μm2)を,横軸は雌雄前核核膜消失時を基準とした時間(h)を示す。黒ダイヤは雌性前核の面積,黒丸は雌性前核の面積をそれぞれ示す。 【図2】卵細胞質内精子注入法(ICSI)により受精させた受精卵の,雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前(0時間前),4時間前,及び8時間前の雌性前核及び雄性前核の面積の変化を示す図。(A)は移植後に出産に至った群,(B)は移植後に出産に至らなかった群の,当該面積の変化をそれぞれ示す。縦軸は面積(μm2)を,横軸は雌雄前核核膜消失時を基準とした時間(h)を示す。黒ダイヤは雌性前核の面積,黒丸は雌性前核の面積をそれぞれ示す。 (後略)」 「【0049】 〔実施例1〕臨床プロトコール 71名の患者を登録した。これらの患者は,エストロゲンとプロゲステロンによるホルモン補充療法(HRT)下に,凍結融解された胚盤胞の移植を受けた。 【0050】 前治療サイクルとして,患者はロングプロトコールによる措置を施された。すなわち,治療前周期の高温期の7日目からゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト600μgを使用開始し,月経3日目から,次席卵胞の直径が18 mmになるまで連日卵胞刺激ホルモン(FSH製剤又はHMG製剤)による卵巣刺激を受けた。次席卵胞の直径が18 mmを超えたとき,排卵を促した。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)5000単位を筋肉注射しその36時間後に,超音波検査法を頼りに経膣的に採卵した。卵胞の計測は,超音波スキャニング(Mitsubishi RDF173H)により行った。 【0051】 回収卵子は媒精法,又は卵細胞質内精子注入法により受精させた。受精卵をBlastAssist System 培地1〔合成血漿代替物 (SSR),ヒト血漿アルブミン,グルコース,ピルビン酸ナトリウム,乳酸塩,硫酸カリウム,硫酸マグネシウム,塩化ナトリウム,リン酸水素ナトリウム,非必須アミノ酸,L-グルタミン,タウリン,重炭酸ナトリウム,HEPES,ストレプトマイシン 50 mg/L,ペニシリン 50,000 IU/L,及びフェノールレッドを含有;MediCult社, Jyllinge, Denmark〕の小滴50 μL中で培養し,2日目に初期胚を得た。次いで,得られた初期胚の1~4個をミネラルオイル(Oil Embryo Culture, Irvine Scientific Santa Ana California USA)の被膜下で,BlastAssist System培地2〔合成血漿代替物 (SSR),ヒト血漿アルブミン,グルコース,ピルビン酸ナトリウム,乳酸,硫酸カリウム,硫酸マグネシウム,塩化ナトリウム,リン酸水素ナトリウム,必須アミノ酸,非必須アミノ酸,L-グルタミン,重炭酸ナトリウム,ストレプトマイシン 50 mg/L,ペニシリン 50,000 IU/L,及びフェノールレッドを含有;MediCult社, Jyllinge, Denmark〕の小滴50 μL中で,すなわち胚1個当たりの培地量12.5~50 μLで,更に3日,合わせて5日目まで培養し胚盤胞を得た。培養プレートとして,FALCON353002 Tissue Culture Dish(Becton Dickinson,Franklin Lakes USA)を使用した。胚の培養は5% CO2, 5% O2, 90% N2, 37℃, 100%湿度に設定したインキュベーター(TE-HER PRODUCT O2・CO2 incubator CP O2-1800 シリーズ,ヒラサワ社)内で実施した。この培養過程で得られた胚盤胞を子宮腔内に移植した。移植を受けた患者のその後の出産状況を追跡した。 〔実施例2〕受精卵の観察 上記受精後の受精卵をEmbryoScopeTM time lapse sysytem(Vitrofile社)を用いて,10分毎に撮影し画像を得た。EmbryoScopeは,細胞培養器と,細胞培養器で培養されている受精卵を継時的に観察することのできる顕微鏡,顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ,デジタルカメラで撮影された像を保存するための記録媒体,及び当該像を表示するための液晶を含む装置である。この装置の動作を以下に概略する。EmbryoScopeを用いて得られた画像から,雌雄前核核膜消失時を基準として,その8時間前,4時間前,及び直前に得られたものを選択し,これらの画像に映し出された雌性前核と雄性前核の面積を求めた。雌性前核及び雄性前核(合わせて前核という)の面積は,前核面積=π×1/2×水平方向直径×1/2×垂直方向直径(μm2)の算出式で求めた。また,前核形成時を基準として,その直後から8時間後までの雌性前核及び雄性前核の面積をそれぞれ求めた。 【0053】 〔実施例3〕前核面積の解析 実施例2で得られた前核面積の値を,媒精法(IVF)及び卵細胞質内精子注入法(ICSI)により受精させた受精卵に群分けしてその平均値を求めた。また,それぞれの群を,更に移植後に出産に至った群と出産に至らなかった群(計4群)に分けた。各群について雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前,4時間前,及び8時間前の雌性前核及び雄性前核の面積の変化を図1及び図2に示す。」 「 [図:0001427250000002.jpg] [図:0001427250000003.jpg] 」 「【0054】 図1及び図2の結果は,IVF及びICSIの何れにおいても,出産に至った群では,2前核核膜消失時を基準として,その8時間前,4時間前,及び直前に測定した雌性前核及び雄性前核の面積の差が,継時的に縮小する一方で,出産に至らなかった群では,2前核核膜消失時を基準として,その8時間前,4時間前,及び直前に測定した雌性前核及び雄性前核の面積の差に,ほぼ変化が認められないことを示す。 【0055】 また,IVF群において出産に至った群では,2前核核膜消失時を基準として,その直前に測定した雌性前核及び雄性前核の面積の差を1としたときの,その8時間前,4時間前に測定した当該差は,それぞれ2.08と1.80であった。また,ICSI群において出産に至った群では,2前核核膜消失時を基準として,その直前に測定した雌性前核及び雄性前核の面積の差を1としたときの,その8時間前,4時間前に測定した当該差は,それぞれ1.78と1.44であった。 【0056】 また,IVF群において出産に至った群では,2前核核膜消失時を基準として,その直前に測定した雌性前核及び雄性前核の面積の差は30μm2であり,ICSI群において出産に至った群では,当該差は20.6μm2であった。 【0057】 また,IVF群において出産に至った群及びICSI群において出産に至った群では,何れにおいても,前核形成の直後から6時間後までの雌性前核及び雄性前核の面積比(雄性前核/雌性前核)は常に1を超えるものであった。 【0058】 〔実施例4〕受精卵の選択基準の設定」 実施例3の結果から,IVFについて,移植に用いられるべき受精卵の選択基準を設けることができる。その一例を表4に示す。選択基準1~5は,単独で又は組み合わせて用いることができ,例えば,選択基準1~4の何れかと選択基準5を組み合わせることもできる。また,選択基準1~4の何れかと選択基準5を組み合わせたものに,選択基準6を更に組み合わせることもできる。 【0059】 【表4】 [図:0001427250000004.jpg] 【0060】 実施例3の結果から,ICSIについて,移植に用いられるべき受精卵の選択基準を設けることができる。その一例を表5に示す。選択基準1~5は,単独で又は組み合わせて用いることができ,例えば,選択基準1~4の何れかと選択基準5を組み合わせることもできる。また,選択基準1~4の何れかと選択基準5を組み合わせたものに,選択基準6を更に組み合わせることもできる。 【0061】 【表5】 [図:0001427250000005.jpg] 」 3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.Junko Otsuki等,Potential of zygotes to produce live births can be identified by the size of the male and female pronuclei just before their membranes break down,Reproduct. Med. Biol. ,2017,Vol.16,No.2, p.200-205(主たる引用文献) 引用文献2.特開2015-130806号公報 4 各引用文献に記載の事項と引用発明の認定等 (1) 引用文献1の記載事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献1(「Junko Otsuki等,Potential of zygotes to produce live births can be identified by the size of the male and female pronuclei just before their membranes break down,Reproduct. Med. Biol.,2017,Vol.16,No.2,p.200-205」)には、次の記載がある(括弧内に当合議体が作成した日本語訳を示した。また、下線は当合議体が付したものであり、後記ウの引用発明の認定又は後記エの引用文献1技術事項の認定に直接用いる記載を示す。)。 (ア) 「Abstract」 「Aim: To determine whether there are differences in size between the male and female pronuclei immediately before the pronuclear membrane breakdown (PNMBD) and to evaluate whether pronuclear size differences influence normal birth rates. Methods: Time-lapse photography was used to measure the size of each pronucleus, while the outcome of 71 frozen-thawed single blastocyst transfers in patients receiving hormone therapy was analyzed retrospectively. The pronuclear measurements were made 4 hours before the PNMBD, corresponding to 16-20 hours after insemination or intracytoplasmic sperm injection, and immediately before the PNMBD. The differences in the areas between the pronuclei in the zygotes that were associated with the live births were compared with those that were associated with the failed pregnancies. Results: The average difference in the area between the pronuclei 4 hours before and immediately before the PNMBD in the patients with a live birth was significantly smaller than in the patients with a failed birth. In addition, the average area difference in the patients with a successful birth was significantly smaller when the measurements were made immediately before the PNMBD, compared with the measurements 4 hours before the PNMBD. Such differences were not detected among the patients who did not achieve a birth. Conclusion: The birth of healthy babies resulted from zygotes that contained pronuclei of similar size when the measurements were made immediately before the PNMBD. Evaluating the size of each pronucleus immediately before the PNMBD provides an effective indicator of the embryo's potential at an early stage of development.」 「目的:前核膜崩壊(PNMBD)の直前に、雄性前核と雌性前核との間のサイズの差が存在するか否かを決定すること、及び、前核サイズの差が正常な出生率に影響するか否かを評価すること。 方法:タイムラプス撮影を用いて各前核のサイズを測定し、ホルモン療法を受けている患者における71個の凍結-融解単一胚盤胞移植の結果を遡及的に分析した。前核測定を、授精又は細胞質内精子注入の16~20時間後に対応するPNMBDの4時間前、及び、PNMBDの直前に行った。生児出生に関連した受精卵における前核間の面積の差を、失敗した妊娠に関連したものと比較した。 結果:生児を出生した患者におけるPNMBDの4時間前及び直前での前核の間の面積の平均差は、出生に至らなかった患者よりも有意に小さかった。加えて、出産に成功した患者の平均面積差は、PNMBDの4時間前に測定した場合と比較して、PNMBDの直前に測定した場合の方が有意に小さかった。そのような差異は、出生に至らなかった患者の間では検出されなかった。 結論:PNMBD直前の測定では、同程度の大きさの前核を持つ受精卵から健康な新生児が生まれた。PNMBDの直前に各前核のサイズを評価することは、発生の初期段階における胚の能力を示す有効な指標となる。」 (イ) 「1 INTRODUCTION」 「(前略) Fertilization is usually confirmed with the presence of male and female pronuclei 16-18 h after insemination or intracytoplasmic sperm injection (ICSI). More recently, the application of time-lapse observations has become available and regular measurements have been made in order to obtain more accurate information as both pronuclei continue to grow until the pronuclear membrane breakdown (PNMBD) occurs. Such more accurate measurements were used in the present study. The aim was to analyze the differences in size between the male and the female pronuclei immediately before the PNMBD and to investigate the relationship between the size differences and the potential for the birth of healthy babies. 」 (受精は、通常、授精又は細胞質内精子注入(ICSI)の16-18時間後に雄性及び雌性前核の存在によって確認される。より最近では、タイムラプス観察の適用が利用可能になっており、両方の前核が前核膜崩壊(PNMBD)が起こるまで成長し続けるので、より正確な情報を得るために、定期的な測定が行われている。このようなより正確な測定を本研究で使用した。目的は、PNMBDの直前の雄性前核と雌性前核との間の大きさの差を分析し、この大きさの差と健康な乳児の誕生の可能性との関係を調査することである。) (ウ) 「2 MATERIAL AND METHODS」 「A retrospective cohort study was used involving 71 frozen-thawed single blastocyst transfers (44 in vitro fertilization [IVF] and 27 ICSI cycles from 61 patients), in which the pronuclei of the zygotes were observed by a time-lapse system (EmbryoScope(R); Vitrolife, Tokyo, Japan) from June 2013 to December 2014. The time-lapse data were reused from the authors’ previously published study.10」 ※当審注:上記「(R)」は、原文では「○」の中に「R」が記載されている。以下同様である。 (凍結-融解した単胚盤胞移植71例(61人の患者からの、体外受精[IVF]44例、顕微授精27例のサイクル)を対象に、2013年6月から2014年12月まで、タイムラプスシステム(EmbryoScope(R);Vitrolife社、東京)で受精卵の前核を観察した後ろ向きコホート研究を用いた。タイムラプスのデータは、著者らが以前に発表した研究10のものを再利用した。) (エ) 「2.3 Time-lapse recordings」 「The time-lapse recordings were performed by using the EmbryoScope(R) Time-lapse system (Vitrolife) from June 2013 to December 2014. The time-lapse images were captured automatically every 15 minutes, at seven focal planes. During the course of this study, the recordings were restricted to patients who were aged between 30 and 40 years, when each yielded more than four oocytes, in order to enable the evaluation of the possible effects of the time-lapse system. The areas of the male and female pronuclei were analyzed retrospectively by measuring the vertical and horizontal diameters of the pronuclei with the equation: circle area=π×1/2 vertical diameter×1/2 horizontal diameter, at various focal plane levels. The measurements were made at 8 hours, 4 hours, and immediately before the PNMBD. The difference in square microns between the two pronuclei in the embryos that resulted in a clinical pregnancy and live birth were compared to the pronuclei of the embryos from the failed pregnancies. The sizes of the male and female pronuclei also were compared in the zygotes in which the female pronuclei were successfully tracked from the polar body (PB) extrusion to the PNMBD by viewing the time-lapse recordings.」 (タイムラプス記録は、EmbryoScope(R)タイムラプスシステム(Vitrolife社)を用いて2013年6月から2014年12月まで行った。タイムラプス画像を、七つの焦点面で15分毎に自動的に捕捉した。この研究の過程で、タイムラプスシステムがもたらし得る影響の評価を可能にするために、それぞれが4個以上の卵母細胞が得られた30~40歳の患者に記録を制限した。 様々な焦点面レベルで、円の面積=π×1/2垂直直径×1/2水平直径の式における前核の垂直直径及び水平直径を測定することによって、雄性及び雌性前核の面積を遡及的に分析した。測定は、PNMBDの8時間前、4時間前及び直前に行った。臨床妊娠及び生児出生をもたらした胚における二つの前核間の平方マイクロメートル単位の差を、流産につながった胚の前核と比較した。雄性及び雌性前核のサイズはまた、受精卵において比較され、ここで、雌性前核は、タイムラプス撮影記録を見ることによって、極体(PB)放出からPNMBDまで成功裏に追跡された。) (オ) 「2.4 Statistical analysis」 「A chi-square test and a student's t test were used for the comparison of the proportions. P<.05 was considered to be statistically significant.」 (比率の比較にはカイ二乗検定とスチューデントのt検定を用いた。P<.05を統計的に有意とみなした。) (カ) 「3 RESULT」の第1、2段落 「The average differences in the area between the two pronuclei at 4 hours before and immediately before the PNMBD in the patients who gave birth were 39.9 μm2 (±37.8) and 11.6 μm2 (±15.5), respectively. In comparison, the average differences in those that resulted in a failed birth were 62.8 μm2 (±43.0) and 62.8 μm2 (±53.3), respectively. Statistically significant differences were obtained when comparing the pronuclear sizes between the patients with successful and unsuccessful births, both 4 hours before (P=.012) and immediately before (P<.001) the PNMBD. In addition, the average difference between the pronuclear sizes in the patients with a successful birth was significantly smaller when the measurements were made immediately before the PNMBD than 4 hours before the PNMBD (P<.001). Such differences were not detected in the group of patients with a failed birth (Figure 1). Measurements could not be obtained in two out of 71 cases due to a lack of clarity of the pictures that had been taken by the time-lapse system and these were eliminated from this study. Seventy-one frozen-thawed blastocysts were transferred after observations with a time-lapse system at regular intervals, commencing from the zygote stage. In the women who were tracked, the human chorionic gonadotropin (hCG), gestational sac (GS), and fetal heartbeat (FHB) positive (+) rates were 74.2% (52/71), 63.4% (45/71), and 57.7% (41/71), respectively. In the 41 cycles with a FHB (+), 36 women delivered without any chromosomal abnormality in the infant, four women miscarried, and the clinic lost contact with one woman.」 (出産した患者におけるPNMBDの4時間前及び直前の二つの前核間の面積の平均差は、それぞれ39.9μm2(±37.8)及び11.6μm2(±15.5)であった。これに対して、出生に失敗した患者における前記平均差は、それぞれ62.8μm2(±43.0)及び62.8μm2(±53.3)であった。出生に成功した患者と不成功であった患者との間で前核サイズを比較した場合、PNMBDの4時間前(P=.012)及び直前(P<.001)の両方で、統計的に有意な差が得られた。加えて、出生に成功した患者のPNMBDにおける前核サイズ間の平均差は、測定がPNMBDの4時間前に行われた場合よりも、直前に行われた場合の方が、有意に小さかった(P<.001)。そのような差異は、流産に至った患者の群において検出されなかった(図1)。タイムラプスシステムによって撮影された画像の明瞭性の欠如のために71症例のうち2症例において測定値を得ることができず、これらはこの研究から除外された。 71個の凍結-融解した胚盤胞を、受精卵段階から開始して一定の間隔でタイムラプスシステムで観察した後に、移植した。追跡された女性において、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、胎嚢(GS)及び胎児心拍(FHB)陽性(+)率は、それぞれ74.2%(52/71)、63.4%(45/71)及び57.7%(41/71)であった。FHB(+)を有する41サイクルのうち、36人の女性が乳児に染色体異常なしで分娩し、4人の女性が流産し、クリニックは1人の女性との連絡を失った。) (キ) 「FIGURE 1」 「FIGURE 1 [図:0001427250000006.jpg] 」 「FIGURE 1 Average differences in the area between the two pronuclei at 4 hours before and immediately before pronuclear membrane breakdown (PNMBD) in the patients giving birth successfully and in those that resulted in a failed birth」 (図1 出生に成功した患者及び流産に至った患者における前核膜崩壊(PNMBD)の4時間前及び直前の二つの前核間の面積の平均差) (ク) 「3 RESULT」の第3段落 「Among the 34 live births with successful size measurements in each pronucleus, the largest difference in the area between a pair of pronuclei was 43.9 μm2. Consequently, the pregnancy rates and live birth rates when the area difference in square microns for a pair of pronuclei was <44 μm2 and ≧44 μm2 were compared at 4 hours before and immediately before the PNMBD. When the size difference was assessed immediately prior to the PNMBD and the difference was <44 μm2, then the hCG (+), GS (+), FHB (+), and live birth rates were 91.7%, 81.3%, 79.1%, and 68.8%, respectively. When the difference between the pronuclei was ≧44 μm2, the hCG (+), GS (+), FHB (+), and live birth rates were 41.7%, 15.0%, .0%, and .0%, respectively. A significant difference was detected in all of the above-mentioned stages of pregnancy and live birth rate (P<.001). However, when the difference in the pronuclear size was assessed 4 hours prior to the PNMBD and when the difference was <44 μm2, the results were 88.9%, 75.0%, 69.4%, and 61.1%, respectively. When the difference in the area between the pronuclei was ≧44 μm2, the results were 57.6%, 53.1%, 43.8%, and 40.6%, respectively. A significant difference was detected only in the HCG (+) comparison (P=.012) (Table 1).」 ※当審注:「≧」は原文では横棒の数が一つ。 (各前核のサイズ測定に成功した34の生児出生の中で、一対の前核間の面積の最も大きな差は43.9μm2であった。それゆえ、一対の前核について平方マイクロメートル単位の面積差が44μm2未満及び44μm2以上である場合の妊娠率及び生児出生率を、PNMBDの4時間前及び直前で比較した。サイズの差をPNMBDの直前に評価し、差が44μm2未満であった場合、hCG(+)、GS(+)、FHB(+)及び生児出生率は、それぞれ91.7%、81.3%、79.1%及び68.8%であった。前核間の差が44μm2以上であった場合、hCG(+)、GS(+)、FHB(+)及び生児出生率は、それぞれ41.7%、15.0%、0%及び0%であった。有意差は、妊娠及び生児出生率の上記の段階の全てにおいて検出された(P<.001)。しかしながら、前核サイズの差をPNMBDの4時間前に評価し、差が44μm2未満であった場合、結果はそれぞれ88.9%、75.0%、69.4%及び61.1%であった。前核間の面積の差が44μm2以上であった場合、結果はそれぞれ57.6%、53.1%、43.8%及び40.6%であった。有意差はHCG(+)比較においてのみ検出された(P=.012)(表1)。) (ケ) 「TABLE 1」 「 [図:0001427250000007.jpg] 」 「Table 1 Various pregnancy parameters and live birth rates in relation to male and female pronuclear area differences」 (表1 雄性及び雌性の前核面積の相違に関連する種々の妊娠パラメータ及び生児出生率) 「a,b: P<.001; c,d and e,f: P<.05; and g,h: P<.01. FHB, fetal heartbeat; GS, gestational sac; hCG, human chorionic gonadotropin; PNMBD, pronuclear membrane breakdown.」 (a,b:P<.001、c,d及びe,f:P<.05、g,h:P<.01。FHB:胎児心拍、GS:胎嚢、hCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン、PNMBD:前核膜。) (コ) 「3 RESULT」の第4段落、「FIGURE 2」 「Among the 34 live births with successful pronuclear size measurements, 13 female pronuclei could be distinguished from the male pronuclei. The average sizes of the female and male pronuclei 8 hours prior to the PNMBD were 356.3 μm2 (±48.3) and 404.8 μm2 (±61.2), respectively. They were 439.4 μm2 (±60.8) and 463.0 μm2 (±68.2) 4 hours prior to the PNMBD, respectively, and 494.9 μm2 (±69.1) and 502.4 μm2 (±67.1), respectively, immediately prior to the PNMBD. The male pronuclei were significantly larger than the female pronuclei at 8 hours (P<.001) and 4 hours (P=.049) before the PNMBD, but the differences in their sizes were not significant immediately before the PNMBD (P=.15). The difference in size between the female and the male pronuclei diminished as the time to the PNMBD came closer. (Figure 2A). An example of the changes in the size of the female and male pronuclei is shown in Figure 2B.」 (前核サイズ測定に成功した34の生児出生のうち、13の雌性前核を雄性前核と区別することができた。PNMBD 8時間前の雌性及び雄性前核の平均サイズは、それぞれ356.3μm2(±48.3)及び404.8μm2(±61.2)であった。それらは、PNMBDの4時間前にそれぞれ439.4μm2(±60.8)及び463.0μm2(±68.2)であり、PNMBDの直前にそれぞれ494.9μm2(±69.1)及び502.4μm2(±67.1)であった。雄性前核は、PNMBDの8時間前(P<.001)及び4時間前(P=.049)で雌性前核より有意に大きかったが、それらのサイズの差は、PNMBDの直前では有意ではなかった(P=.15)。PNMBDへの時間が近づくにつれて、雌性前核と雄性前核との間のサイズの差は減少した。(図2(a))。雌性及び雄性前核の大きさの変化の例を図2(b)に示す。) ※当審注:「A」、「B」は、それぞれ、「(a)」、「(b)」の誤記であることが明らかであるから、日本語訳において当該誤りを正した。以下同様である。 「FIGURE 2 [図:0001427250000008.jpg] 」 「Figure 2 A, Average size of the female and male pronuclei, as observed by time-lapse microscopy at 8 hours, 4 hours, and immediately prior to pronuclear membrane breakdown (PNMBD) in the zygotes of women who had a live birth. (○), Female; (△), male. n=13. B, An example of the changes in the size of the female and male pronulei in a zygote that resulted in a live birth」 (図2(a) 生児出生した女性の受精卵における、8時間、4時間及び前核膜崩壊(PNMBD)の直前に、タイムラプス顕微鏡によって観察された、雌性及び雄性前核の平均サイズ。(○):雌性、(△):雄性。n=13。(b) 生児出生をもたらした受精卵における雌性及び雄性前核のサイズの変化の例。) (サ) 「4 DISCUSSION」 「In this study, it has been shown that the size of the male and the female pronuclei in the embryos that result in the birth of healthy babies was similar when observed immediately prior to the PNMBD. The presence of two pronuclear areas, confirming normal fertilization, usually is observed 16-18 hours after insemination or ICSI and this corresponds to 4 hours before the PNMBD. However, it was found that the average difference in the pronuclear sizes among the patients with a successful birth was significantly smaller when the measurement was made immediately before the PNMBD, rather than 4 hours before the PNMBD. Thus, measuring the pronuclear sizes by using a time-lapse system immediately prior to the PNMBD provided a more accurate prediction of which embryos would result in the birth of healthy babies. (中略) In this study, the authors focused on successful live birth rates, rather than blastocyst development and pregnancy rates, as >50% of blastocysts are known to have abnormal chromosomal configurations and most of those embryos result in a miscarriage.17, 18 As the difference in size between the female and male pronuclei immediately before the PNMBD is very small among patients with a successful birth, the large difference in size between the female and male pronuclei could be related to chromosomal abnormalities. Moreover, the size of a pronucleus might be correlative with the volume of chromosomes, regardless of the means by which the embryos are derived (ICSI or IVF). For instance, when an abnormally large amount of chromosomes are extruded into the second PB due to chromosome dissegregation, the size of the female pronucleus might become smaller as a result of the small volume of chromosomes in the fertilized oocyte. Although further research is required in order to elucidate this hypothesis, the difference in size between the female and male pronuclei immediately preceding the PNMBD might be a useful measurement in the selection or exclusion of chromosomally normal or abnormal embryos.」 (この研究において、健康な新生児の誕生をもたらす胚における雄性及び雌性前核のサイズは、PNMBDの直前に観察した場合、同様のサイズであったことが示された。正常な受精を確認する二つの前核領域の存在は、通常、授精又はICSIの16~18時間後に観察され、これは、PNMBDの4時間前に対応する。しかし、出産に成功した患者における前核の大きさの平均差は、PNMBDの4時間前よりもPNMBDの直前に測定した方が有意に小さいことが判明した。したがって、PNMBDの直前にタイムラプス撮影システムを使用することによって前核サイズを測定することは、どの胚が健康な新生児の誕生をもたらすかについて、より正確な予測を提供した。 (中略) この研究において、著者らは、胚盤胞の50%超が異常な染色体構成を有することが知られており、それらの胚のほとんどが流産をもたらす17、18から、胚盤胞発生率や妊娠率ではなく、生児出生率の成功に焦点を当てた。PNMBDの直前の雌性前核と雄性前核との間のサイズの差は、出生に成功した患者の間で非常に小さいため、雌性前核と雄性前核との間のサイズの大きな差は、染色体異常に関連している可能性がある。さらに、前核のサイズは、胚が誘導される手段(ICSI又はIVF)にかかわらず、染色体の量と相関し得る。例えば、異常に大量の染色体が染色体分離に起因して第2のPB中に押し出される場合、受精卵の染色体量が少なくなるため、雌性前核のサイズは小さくなる可能性がある。この仮説を解明するためにはさらなる研究が必要であるが、PNMBD直前の雌雄前核の大きさの差は、染色体正常胚や異常胚の選別や排除に有用な指標となるかもしれない。) イ 技術常識1に基づいた引用文献1の記載から読み取れる事項の認定 (ア) 後記(2)イ(ウ)において技術常識1として認定したとおり、「Vitrolife社のEmbryoScopeタイムラプスインキュベータが、内蔵顕微鏡、胚の発達の高画質画像を取得する解像度が1280×1024ピクセルのカメラ、胚の発達の高画質画像を表示する表示部、及び、装置と一体化したトリガスインキュベータ、を備え、所定の取得間隔で画像取得を行うものであること」は技術常識である。 (イ) 前記技術常識1を踏まえると、引用文献1の「EmbryoScope(R)タイムラプスシステム(Vitrolife社)」との記載に接した当業者であれば、当該記載から次の事項を観念することができるといえる。 「内蔵顕微鏡、胚の発達の高画質画像を取得する解像度が1280×1024ピクセルのカメラ、胚の発達の高画質画像を表示する表示部、装置と一体化したトリガスインキュベータ、を備え、所定の取得間隔で画像取得を行うVitrolife社のEmbryoScopeタイムラプスシステム」(以下「認定事項1」という。) ウ 引用発明の認定 前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。以下同様である。 <引用発明> 「PNMBDの8時間前、4時間前及び直前に、円の面積=π×1/2垂直直径×1/2水平直径の式における前核の垂直直径及び水平直径を測定することによって、雄性前核及び雌性前核の面積を分析し、臨床妊娠及び生児出生をもたらした胚における二つの前核間の平方マイクロメートル単位の差を、流産につながった胚の前核と比較し、前核膜崩壊(PNMBD)の直前の各前核のサイズは、発生の初期段階における胚の能力を示す有効な指標となるとの結論を得た際の、タイムラプス記録に用いた、Vitrolife社のEmbryoScopeタイムラプスシステムであって、(「ABSTRACT」、「2.3 Time-lapse recordings」) 内蔵顕微鏡、胚の発達の高画質画像を取得する解像度が1280×1024ピクセルのカメラ、胚の発達の高画質画像を表示する表示部、装置と一体化したトリガスインキュベータ、を備え、所定の取得間隔で画像取得を行い、胚発生の高画質画像を取得する間、安定した培養環境を提供する(認定事項1) EmbryoScopeタイムラプスシステム。」 エ 引用文献1技術事項の認定 前記アに摘記した事項から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項1」、「引用文献1技術事項2」という。)。 <引用文献1技術事項1> 「前核膜崩壊(PNMBD)の直前の雄性前核と雌性前核のサイズは、発生の初期段階における胚の能力を示す有効な指標となるものであり、(「ABSTRACT」) 生児を出生した患者におけるPNMBDの直前での雄性前核と雌性前核の間の面積の平均差は、出生に至らなかった患者よりも有意に小さく、(「ABSTRACT」) PNMBDの直前に評価し、差が44μm2未満であった場合、生児出生率は、68.8%であるのに対して、差が44μm2以上であった場合、生児出生率は、0%であること。(「3 RESULT」の第3段落)」 <引用文献1技術事項2> 「生児出生した女性の受精卵における、8時間、4時間及び前核膜崩壊(PNMBD)の直前に、タイムラプス顕微鏡によって観察された、雌性及び雄性前核の平均サイズによれば、(「FIGURE 2」の説明) 雄性前核は、PNMBDの8時間前及び4時間前で雌性前核より有意に大きかったが、PNMBDへの時間が近づくにつれて、雌性前核と雄性前核との間のサイズの差は減少し、それらのサイズの差は、PNMBDの直前では有意ではないこと。(「3 RESULT」の第4段落)」 (2) 引用文献2~4の記載事項並びに引用文献2技術事項等の認定 ア 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献2(特開2015-130806号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、細胞培養容器内の細胞(受精卵などの個別管理が必要な細胞)の成育情報を管理するシステム及びプログラムに関する。」 「【0028】 図1は、本発明の成育情報管理システムの一実施形態の構成図を示す。成育情報管理システム1は、細胞培養容器100と、画像取得装置110と、第2識別子読取装置120と、成育情報管理装置130とから構成される。以下、成育情報管理システム1の各構成要素について説明する。」 「【図1】 [図:0001427250000009.jpg] 」 「【0052】 次に、成育情報管理システム1の他の構成要素について説明する。画像取得装置110は、細胞培養容器100のマイクロウェル105内の細胞及び第1識別子101を含む拡大検体画像を撮影するものであり、例えば、顕微鏡である。画像取得装置110として、例えば、1/2インチのCCD素子、4、10、20倍の対物レンズを備えたものがよく用いられる。」 「【0054】 成育情報管理装置130は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの情報処理装置によって構成されている。この情報処理装置は、中央演算処理部(CPU:Central Processing Unit)などのプロセッサと、メモリやハードディスクなどの記憶装置131と、キーボード、マウスなどの入力部132と、ディスプレイなどの出力部133とを備えている。なお、図1では、成育情報管理装置130を1つの情報処理装置として示しているが、これに限定されない。成育情報管理装置130の構成要素をネットワーク上の複数の情報処理装置に分散して構成してもよい。また、各種テーブル及びデータベースなどは、他の情報処理装置あるいはネットワーク上のサーバに格納されてもよい。」 「【0065】 本実施形態では、成育情報管理装置130の各処理部151~154を、コンピュータ上で実行されるプログラムの機能として実現してもよい。すなわち、各処理部151~154は、プログラムコードとしてメモリに格納して、CPUが各プログラムコードを実行することによって各処理部151~154が実現されてもよい。以下に各処理部151~154について説明する。」 「【0074】 また、特徴量算出処理部153は、拡大検体画像の画像情報から各種特徴量を算出する。以下では一例として、ヒトの受精卵の特徴量について説明する。ヒトの受精卵を培養する場合、通常、受精後に受精卵の成育状態が段階的に判定され、これにより、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判定される。」 「【0091】 以上では、受精2~3日後、及び4~5日後に行われる形態的評価について説明したが、受精初期(約1日後)などにおいて形態的評価を行ってもよい。例えば、初期の評価方法として、前核期胚の形態的評価を用いてもよい。前核期胚とは、媒精後、約十数時間程度経過した胚である。卵子の中に精子が入り込むと、卵子由来の前核と、精子由来の前核が寄り添うように並ぶ。図19は、二つの前核及び前核内の核小体の形態を示す。図19(a)~(c)に示すように、前核の大きさ、二つの前核間の距離や、前核内の核小体の配列などに違いがある。不妊治療の現場において、前核の大きさや配列、さらに、前核内の核小体の大きさや配列、対称性などでその後の胚発生に差が見られることが知られている。」 「【図19】 [図:0001427250000010.jpg] 」 「【0092】 特徴量算出処理部153は、以下に示すやり方で、拡大検体画像の画像情報から前核期胚の各種特徴量を算出してもよい。上述と同様に、エッジ検出処理、細胞検出処理(ハフ変換、楕円フィッティング)を実行し、所定の直径の範囲の細胞を前核として判定する。そして、前核と判定された部分に対して、前核の大きさ(直径や面積)、前核の明度(輝度)、二つの前核間の大きさの差(直径や面積の差)、二つの前核間の距離(重心間の距離)などを算出する。」 「【0096】 また、特徴量算出処理部153は、上述した特徴量に基づいて、受精卵の成育段階や良否を判定してもよい。特徴量算出処理部153は、判定プロファイルテーブル145の条件1103を参照し、上述した特徴量が所定の条件を満たすかを判定し、これにより、条件を満たすグレード1102を出力してもよい。ここで出力されるグレード1102の情報を成育情報データベース144に登録してもよい。」 (イ) 引用文献2技術事項の認定 前記(ア)に摘記した事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2技術事項」という。)。 <引用文献2技術事項> 「細胞培養容器100と、(【0028】) 顕微鏡であってCCD素子を備えた画像取得装置110と、(【0028】、【0052】) CPUとメモリやハードディスクなどの記憶装置131とディスプレイなどの出力部133を備えた成育情報管理装置130等、(【0028】、【0054】) から構成される成育情報管理システム1の成育情報管理装置130において、(【0028】) プログラムコードとしてメモリに格納して、CPUが各プログラムコードを実行することによって実現される特徴量算出処理部153であって、(【0065】、【0074】) 拡大検体画像の画像情報からその後の胚発生に差が見られることが知られている前核期胚の前核の面積などのヒトの受精卵の特徴量を算出し、(【0074】、【0091】、【0092】) 上述した特徴量に基づいて、受精卵の成育段階や良否の判定として、当該特徴量が所定の条件を満たすかを判定し、これにより、条件を満たすグレードを出力する、(【0092】、【0096】) 特徴量算出処理部153を設けること。」 イ 引用文献3に記載された事項及び技術常識1の認定 (ア) 引用文献3に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前にウェイバックマシンに保存されたウェブサイトのサブページである「EMBRYOSCOPE(R) TIME-LAPSEINCUBATOR,Vitrolife社ホームページ,http://web.archive.org/web/20151024054213/http://www.vitrolife.com/en/Products/EmbryoScope-Time-Lapse-System/EmbryoScope-Time-Lapse-System/参照,2015年10月24日にウェイバックマシンに保存」(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 (※当審注:上記「(R)」は、原文では「○」の中に「R」が記載されている。以下同様である。) a 右欄、「Application」の項 「The EmbryoScope time-lapse incubator provides an environment with controlled temperature and CO2 for the development of embryos at or near body temperature while high quality images of embryo development are acquired. Capacity: Six disposable EmbryoSlide(R) culture dishes holding 12 embryos each Dimensions: 60.3×56.0×43.5) cm / 23.7×22×17.2 in Weight: 60 kg / 121 lbs Input voltage: 110-240 V AC Power consumption: 120 W Operating range: 20 ℃ - 30 ℃ Image acquisition: Select up to 17 focal points at each time point in user defined vertical increments Built-in microscope: Leica 20×, 0.40 LWD Hoffman modulation contrast objective specialised for 635 nm illumination Camera resolution: 1280×1024 pixels, 3 pixels per μm, monochrome, 8-bit Embryo illumination: ≦ 0.032s per image using single red LED (635nm) gives 34μW cm-2 for image acquisition Time between acquisitions: 10 min. cycle time for 7 focal planes, 2 min cycle time with single focal plane Tri-gas incubator integrated in instrument Temperature: 30 ℃ to 45 ℃ ± 0.2 ℃ Oxygen: 5 % to 20 % ± 0.3 % CO2: 2 % to 10 % ± 0.2 % Active air circulation: Full purification of gas volume every 20 minutes Volatile organic compounds: Removed by active carbon filter Particles: Removed by HEPA filter which retains 99.97 % particles >0.3 μm」 ※当審注:「≦」は原文では横棒の数が一つ。 (EmbryoScopeタイムラプスインキュベータは、体温又は体温に近い温度で胚を発達させ、胚の発達の高画質画像を取得するために、温度とCO2を制御した環境を提供する。 容量:EmbryoSlide(R)培養ディッシュ6個(各12個の胚を収納可能) 寸法:60.3 × 56.0 × 43.5) cm / 23.7 × 22 ×17.2 in 重量:60 kg / 121 lbs 入力電圧:110-240 V AC 消費電力:120 W 動作範囲:20 ℃ - 30 ℃ 画像取得:ユーザーが定義した垂直幅で各時点で最大17点までの焦点位置を選択 内蔵顕微鏡:Leica 20×, 0.40 LWD ホフマン変調コントラスト対物レンズ(635 nm照明専用) カメラ解像度:1280×1024ピクセル、3ピクセル/μm、モノクロ、8ビット 胚照明:赤色LED(635nm)1個を使用し、1画像あたり0.032秒以下、画像取得に34μW cm-2を使用 取得間隔:7焦点面でのサイクルタイム10分、単一焦点面でのサイクルタイム2分 装置と一体化したトリガスインキュベータ 温度:30 ℃ ~45 ℃ ± 0.2 ℃ 酸素:5 % ~20 % ± 0.3 % CO2:2 %~10 % ± 0.2 % アクティブな空気循環:20分ごとにガスの体積を完全に浄化 揮発性有機化合物:活性炭フィルターにより除去 粒子:0.3μm以上の粒子を99.97 %保持するHEPAフィルターにより除去) b 左欄、動画の下の3行 「The heart of the system is the EmbryoScope time-lapse incubator which provides a stable incubation environment while high quality images of embryo development are acquired.」 (このシステムの心臓部はEmbryoScopeタイムラプスインキュベーターで、胚発生の高画質画像を取得する間、安定した培養環境を提供する。) c 装置の写真 「 [図:0001427250000011.jpg] 」 (イ) 引用文献3の記載から読み取れる事項の認定 前記(ア)aに摘記した記載を踏まえて、bに摘記した装置の写真を見ると、Vitrolife社のEmbryoScopeタイムラプスインキュベータが、胚の発達の高画質画像を表示する表示部を備えることが看取できる。 (ウ) 技術常識1の認定 前記(ア)に摘記した引用文献3の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「Vitrolife社のEmbryoScopeタイムラプスインキュベータが、 内蔵顕微鏡、 胚の発達の高画質画像を取得する解像度が1280×1024ピクセルのカメラ、 胚の発達の高画質画像を表示する表示部、及び、 装置と一体化したトリガスインキュベータ、 を備え、 所定の取得間隔で画像取得を行い、胚発生の高画質画像を取得する間、安定した培養環境を提供するものであること。」 ウ 引用文献4に記載された事項及び技術常識2の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に掲載されたウェブサイトのページである「◎Unisense FertiliTechが体外受精評価ツールの新製品KIDScoreを発表、発売へ,KYODO NEWS PRWIRE,https://kyodonewsprwire.jp/release/201406271812参照,2014年6月27日に掲載」(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【オーフス(デンマーク)2014年6月27日PRN=共同JBN】体外受精(IVF)に対する低速撮影技術の世界的リーダーであるUnisense FertiliTech社は、IVFにおける(胎児に成長前の)ヒト胚を医学的に評価する方法を改善する新しいツールを提供する。新製品はKIDScore(商標)低速撮影システムであり、同社製品EmbryoScope(商標)低速撮影システムだけが持つ機能であり、世界最大規模のデータベースKID(Known Implantation Data、既知の着床データ)の分析に基づいている。KIDデータベースは妊娠に関係するヒト胚の発育プロファイルに関する包括的な情報を含めており、胚の着床能力を評価するためのツール開発に極めて有用な情報源となる。この領域での初の製品で、体外受精から3日目の胚評価をサポートするKIDScore(商標)D3 Basicモデルは、6月29日から7月2日までドイツのミュンヘンで開かれる欧州生殖医学学会(ESHRE)で発表される。」 「Unisense FertiliTechが行ったKIDデータの最近の分析は、ヒト胚に明白なモルフォキネティック機能があり、非常に低い着床の可能性と相関関係にあることが明らかになった。これらすべてに共通した機能に基づく各種モデルは、広範囲の病院で適用されうる。KIDの1万7500例のヒト胚から始まって、3300例のKID胚のサブセットが、IVF専門家が胎児になるチャンスが低い胚の移植を回避することができる体外受精3日目の胚移植に対する基本的な動態モデルを作成するため使われた。形態学(モルフォロジー)との関連で使われたこのモデルは、IVF医師が胚の選択肢をよりよく決定することを可能にする。」 (イ) 技術常識2の認定 前記(ア)に摘記した引用文献4の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。) <技術常識2> 「EmbryoScopeタイムラプス撮影システムにおいて、体外受精において医師が胚の選択肢をよりよく決定することを可能にする、ヒト胚を医学的に評価する方法を改善するツールを組み込むことができること。」 5 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点 構成Xは、「装置」の発明であることを特定するものである。 「装置」の発明である本願発明と「EmbryoScope タイムラプスシステム」の発明である引用発明は、「装置」の発明である点において一致する。 イ 構成A及びA’の観点 (ア) 構成Aは、「顕微鏡」を含むことである。 また、構成A’は、「該顕微鏡が,該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである」ことである。 (イ) 引用発明における「内蔵顕微鏡」は、本願発明における「顕微鏡」に相当する。 (ウ) 引用発明は「所定の取得間隔で画像取得を行い、胚発生の高画質画像を取得する間、安定した培養環境を提供する」ものであるから、引用発明における「内蔵顕微鏡」が、本願発明における「該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置された」ことに相当する構成を備えることは明らかである。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「顕微鏡」を含み、「該顕微鏡が,該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を,所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである」点。 ウ 構成Bの観点 (ア) 構成Bは、「該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ」を含むことである。 (イ) 引用発明における「胚の発達の高画質画像」は、「内蔵顕微鏡」により観察される画像であることが明らかであるから、本願発明における「該顕微鏡で観察された受精卵の像」に相当する。 (ウ) また、引用発明における「解像度が1280×1024ピクセルのカメラ」は、本願発明における「デジタルカメラ」に相当する。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ」を含む点。 エ 構成Cの観点 (ア) 構成Cは、「該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ」を含むことである。 (イ) 引用発明における「表示部」において、「胚の発達の高画質画像を表示する」から、引用発明が、「胚の発達の高画質画像」を一時的に保存するメモリを備えることは明らかである。 (ウ) そのため、前記ウ(イ)及び(ウ)も踏まえると、引用発明は、本願発明の「該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ」に相当する構成を備えるといえる。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ」を含む点。 オ 構成Dの観点 (ア) 構成Dは、「該メモリに保存された画像を解析するためのソフトウェアが記録された記録媒体」を含むことである。 また、構成D’は、次の構成である 「該ソフトウェアが,受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェア」であること。 (イ) 引用発明において、少なくとも、内蔵顕微鏡、カメラ、表示部、トリガスインキュベータのいずれかの動作に関するソフトウェアを記憶する記憶手段を備えることは明らかであり、このことは、本願発明において「該メモリに保存された画像を解析するためのソフトウェアが記録された記録媒体」を備えることと、「ソフトウェアが記録された記録媒体」を備える点で共通する。 (ウ) 引用発明は、本願発明の構成D’に相当する構成を備えていない。 (エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成D及びD’の観点における一致点及び相違点は、次のa及びbに示すとおりである。 a 構成D及びD’の観点における一致点 「ソフトウェアが記録された記録媒体」を含む点。 b 構成D及びD’の観点における相違点 記録媒体に記録されたソフトウェアが、 本願発明においては、「該メモリに保存された画像を解析するための」もので、「受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェア」であるのに対して、 引用発明においては、内蔵顕微鏡、カメラ、表示部、トリガスインキュベータのいずれかの動作に関するものである点。 カ 構成Eの観点 (ア) 構成Eは、「該解析により得られた結果を表示するための表示部」を含むことである。 (イ) 引用発明における「胚の発達の高画質画像を表示する表示部」は、本願発明における「該解析により得られた結果を表示するための表示部」と、「受精卵に関する情報を表示するための表示部」である点で共通する。 (ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Eの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbに示すとおりである。 a 構成Eの観点における一致点 「受精卵に関する情報を表示するための表示部」を含む点。 b 構成Eの観点における相違点 表示部に表示する受精卵に関する情報が、 本願発明においては、「該解析により得られた結果」であるのに対して、 引用発明においては、胚の発達の高画質画像である点。 キ 構成Fの観点 (ア) 構成Fは、「細胞培養器」を含むことである。 (イ) 引用発明における「トリガスインキュベータ」は、本願発明における「細胞培養器」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「細胞培養器」を含む点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。 ア 一致点 「顕微鏡,該顕微鏡で観察された受精卵の像を撮影するためのデジタルカメラ、該デジタルカメラで撮影された受精卵の画像を保存するためのメモリ、ソフトウェアが記録された記録媒体,受精卵に関する情報を表示するための表示部、及び細胞培養器を含むものであり、 該顕微鏡が、該細胞培養器で培養されている状態の受精卵の像を、所定の時間間隔で撮影することのできるように配置されたものである、装置」の発明である点。 イ 相違点 記録媒体に記録されたソフトウェアが、 本願発明においては、「該メモリに保存された画像を解析するための」もので、「受精卵の画像を解析するためのソフトウェアであって, (a)雌雄前核核膜消失時を基準として,その7時間から10時間前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (b)雌雄前核核膜消失時を基準として,その直前から20分前の何れかの時点で得られた受精卵の画像から雌性前核と雄性前核の面積差が測定されるステップ, (c)該ステップ(a)で得られた面積差と該ステップ(b)で得られた面積差の測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ,及び (d)該ステップ(a)及び該ステップ(b)で得られた測定値の中から,予め設定された基準を満たすものが選択されるステップであって,当該基準が, (a’)該ステップ(b)で測定された面積の差が40μm2未満であること,及び (b’)該ステップ(b)で測定された面積の差が,該ステップ(a)で測定された面積の差と比較して,縮小していること, を含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェア」であるのに対して、 引用発明においては、内蔵顕微鏡、カメラ、表示部、トリガスインキュベータいずれかの動作に関するものであって、(以下「部分相違点1」という。) 表示部に表示する受精卵に関する情報が、 本願発明においては、「該解析により得られた結果」であるのに対して、 引用発明においては、胚の発達の高画質画像である点。(以下「部分相違点2」という。) 6 判断 (1) 相違点の評価 前記5(2)イに記載した相違点について、検討の便宜のため、以下、部分相違点1と部分相違点2に分けて検討する。 ア 部分相違点1について (ア) 引用文献2技術事項について a 引用文献2技術事項は、前記4(2)ア(イ)において認定したとおり、「細胞培養容器と、顕微鏡であってCCD素子を備えた画像取得装置と、CPUとメモリやハードディスクなどの記憶装置とディスプレイなどの出力部を備えた成育情報管理装置等、から構成される成育情報管理システムの成育情報管理装置において、 プログラムコードとしてメモリに格納して、CPUが各プログラムコードを実行することによって実現される特徴量算出処理部であって、拡大検体画像の画像情報からその後の胚発生に差が見られることが知られている前核期胚の前核の面積などのヒトの受精卵の特徴量を算出し、上述した特徴量に基づいて、受精卵の成育段階や良否の判定として、当該特徴量が所定の条件を満たすかを判定し、これにより、条件を満たすグレードを出力する、特徴量算出処理部を設けること。」である(なお、部材番号及び認定の根拠となる記載箇所は削除している。)。 b(a) 引用文献2技術事項における、「特徴量算出処理部」に「前核期胚の前核の面積などのヒトの受精卵の特徴量を算出[させ]」、「受精卵の成育段階や良否の判定として、当該特徴量が所定の条件を満たすかを判定[させる]」「プログラムコード」は、本願発明における、(相違点1に係る)「該メモリに保存された画像を解析するための」もので、「受精卵の画像を解析するためのソフトウェア」に相当する。 (b) また、引用文献2技術事項における「プログラムコード」が、算出した特徴量を随時読み出し可能に保存させるものであることは明らかであるから、引用文献2技術事項において、「前核期胚の前核の面積などのヒトの受精卵の特徴量を算出[させ]」、「受精卵の成育段階や良否の判定として、当該特徴量が所定の条件を満たすかを判定[させる]」ことは、本願発明において「構成D’の解析手順の構成」「を含むプロセスを実行する」ことと、「前核の面積に関する測定値が測定されるステップ、測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ、測定値の中から、予め設定された基準を満たすかが判定されるステップを含むプロセスを実行する」点において共通する。 (イ) 引用発明に対する引用文献2技術事項の適用について a EmbryoScopeタイムラプスシステムである引用発明と、引用文献2技術事項に係る成育情報管理システム1とは、いずれも、体外受精を行う際に受精卵の評価を行うために用いる装置に関する点で技術分野が関連する上、両者は、取得した画像における受精卵の面積に関する評価を行う用途で用いられている点においても、異なるものでない。 b その上、前記4(2)ウ(イ)において技術常識2として認定したとおり、「EmbryoScopeタイムラプス撮影システムにおいて、体外受精において医師が胚の選択肢をよりよく決定することを可能にする、ヒト胚を医学的に評価する方法を改善するツールを組み込むことができること」は技術常識であるから、EmbryoScopeタイムラプスシステムの発明である引用発明において、受精卵を評価することに関する様々なツールを組み込もうとすることは、当業者が備える通常の創作能力の発揮にすぎないといえる。 c したがって、引用発明において、受精卵を評価するツールに関する引用文献2技術事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 d この場合、前記(ア)bを踏まえると、引用発明は、「該メモリに保存された画像を解析するための」もので、「受精卵の画像を解析するためのソフトウェア」であって、「前核の面積に関する測定値が測定されるステップ、測定値がそれぞれ随時読み出し可能に保存されるステップ、測定値の中から、予め設定された基準を満たすかが判定されるステップを含むプロセスを実行する手段を提供するためのソフトウェア」に相当する構成を備えることになるところ、測定値を、引用文献2技術事項における「前核の面積」とすることに代えて、相違点1に係る本願発明における測定値とすること、及び、判定基準として、相違点1に係る本願発明における判定基準を用いるようにすることは、後記(ウ)において説示するとおり、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、さらに、基準を満たす測定値が「選択される」ように構成することも、格別困難なことではない。 (ウ) 引用発明に引用文献2技術事項を適用する際に採用する、前核の面積に関する測定値及び判定基準について a 引用文献1技術事項1及び2について 前記4(1)エにおいて「引用文献1技術事項1」及び「引用文献1技術事項2」として認定したとおり、引用文献1には次の技術事項が記載されている(なお、認定の根拠となる記載箇所は削除している。)。 (a) 引用文献1技術事項1 「前核膜崩壊(PNMBD)の直前の雄性前核と雌性前核のサイズは、発生の初期段階における胚の可能性を示す有効な指標となるものであり、生児を出生した患者におけるPNMBDの直前の雄性前核と雌性前核の間の面積の平均差は、出生に至らなかった患者よりも有意に小さく、PNMBDの直前に評価し、差が44μm2未満であった場合、生児出生率は、68.8%であるのに対して、差が44μm2以上であった場合、生児出生率は、0%であること。」 (b) 引用文献1技術事項2 「生児出生した女性の受精卵における、8時間、4時間、及び前核膜崩壊(PNMBD)の直前に、タイムラプス顕微鏡によって観察された、雌性及び雄性前核の平均サイズによれば、雄性前核は、PNMBDの8時間前及び4時間前で雌性前核より有意に大きかったが、PNMBDへの時間が近づくにつれて、雌性前核と雄性前核との間のサイズの差は減少し、それらのサイズの差は、PNMBDの直前で有意ではないこと。」 b 前核の面積に関する測定値について (a) 引用文献1技術事項1及び2から、当業者であれば、前核の面積に関する測定値として、雌雄前核核膜消失時を基準とした下記i~iiiの測定値が、生児出生率に関連する測定値であることを認識できるといえる。 i 8時間前の時点で得られた受精卵の雌性前核と雄性前核の面積差 ii 4時間前の時点で得られた受精卵の雌性前核と雄性前核の面積差 iii 直前の時点で得られた受精卵の雌性前核と雄性前核の面積差 (b) したがって、引用発明において引用文献2技術事項を適用する際に、前記(a)i~iiiを測定値として設定することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。 ここで、引用文献1の「タイムラプス画像を、七つの焦点面で15分毎に自動的に捕捉した」(前記(2)ア(エ)参照)との記載を踏まえると、前記(a)iiiの測定値における「直前」は、「0~20分前」に含まれるといえる。 c 判定基準について (a) 引用文献1技術事項1に接した当業者であれば、前記b(a)iiiの測定値が44μm2未満の場合に、生児出生が68.8%程度であることを期待でき、引用文献1の下記記載も踏まえると、当該測定値が低いほど、高い生児出生率を期待できることが認識できるといえる。 したがって、引用発明において引用文献2技術事項を適用する際に、前記b(a)iiiの測定値が40μm2未満であることを判定基準として用いることは、生児出生率の目標値をどの程度にするかに応じて、当業者が適宜なし得たことである。 <引用文献1の記載> 「PNMBDの直前の雌性前核と雄性前核との間のサイズの差は、出生に成功した患者の間で非常に小さいため、雌性前核と雄性前核との間のサイズの大きな差は、染色体異常に関連している可能性がある。さらに、前核のサイズは、胚が誘導される手段(ICSI又はIVF)にかかわらず、染色体の量と相関し得る。例えば、異常に大量の染色体が染色体分離に起因して第2のPB中に押し出される場合、受精卵の染色体量が少なくなるため、雌性前核のサイズは小さくなる可能性がある。」(前記4(1)ア(サ)参照) (b) 引用文献1技術事項2に接した当業者であれば、前記b(a)iiiの測定値が、前記b(a)i又はiiの測定値と比較して、縮小している場合に、生児出生を期待できることが認識できるといえる。 したがって、引用発明において引用文献2技術事項を適用する際に、前記b(a)iiiの測定値が、前記b(a)i又はiiの測定値と比較して、縮小していることを判定基準として用いることは、当業者にとって自明な設計事項である。 そして、当該判定基準を用いる際に、b(a)i又はiiのいずれの測定値を用いるようにするかは、当業者が適宜決定すべき設計上の微差にすぎない。 さらに、判定の観点が多いほど判定の精度が高まることが期待できるから、前記(a)で検討した判定基準に加えて当該基準を採用することも、格別なことではない。 (エ) 部分相違点1についてのまとめ 前記(ア)及び(イ)の検討結果を踏まえると、引用発明において、引用文献1技術事項1及び2並びに技術常識2を踏まえて、引用文献2技術事項を採用することで、部分相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 部分相違点2について 引用発明において、表示部にどのような情報を表示するかは当業者が適宜決定すべき事項であるから、部分相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにする場合に(前記ア参照)、解析により得られた結果を表示させるようにして、部分相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。 ウ 総合評価 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、部分相違点1及び2からなる前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献1技術事項1及び2、引用文献2技術事項並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1技術事項1及び2、引用文献2技術事項並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、本願発明は、その構成要件として細胞培養器を含むものであるが、引用文献1には細胞培養器を含む装置は開示されていない旨を主張している。 しかしながら、技術常識1を踏まえると、引用発明の「EmbryoScopeタイムラプスシステム」が細胞培養器を備えることは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。 7 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-015281

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