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特許拒絶査定不服審判

2023-018075

オイルポンプ

審判番号
2023-018075
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-102186外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月25日
審決日
2025年01月10日
公報発行日
2025年04月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F04C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-102186「オイルポンプ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月27日出願公開、特開2021-195895〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、令和2年6月12日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 2月20日付け 拒絶理由通知書 令和5年 4月21日 意見書、手続補正書の提出 令和5年 7月24日付け 拒絶査定 令和5年10月25日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年10月25日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和5年10月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。) 「【請求項1】 内部にギヤ収容空間を有するポンプケースと、 前記ギヤ収容空間に収容されるポンプギヤと、 ポンプシャフトと、を含み、 前記ポンプケースの内面と前記ポンプギヤとの間には、クリアランスが設けられており、 前記ポンプギヤは、インナロータと前記インナロータの周囲を取り囲むアウタロータとが噛み合って回転し、前記インナロータと前記アウタロータとの間に形成されるポンプ室の容積変化を生じるものであり、 前記インナロータの中心には、貫通孔が形成されており、 前記ポンプシャフトは、前記貫通孔に挿通されて、前記インナロータとスプライン嵌合され、 前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されており、 前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されていて、 前記溝の底面は、平坦面に形成されている、オイルポンプ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年4月21日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 内部にギヤ収容空間を有するポンプケースと、 前記ギヤ収容空間に収容されるポンプギヤと、 ポンプシャフトと、を含み、 前記ポンプケースの内面と前記ポンプギヤとの間には、クリアランスが設けられており、 前記ポンプギヤは、インナロータと前記インナロータの周囲を取り囲むアウタロータとが噛み合って回転し、前記インナロータと前記アウタロータとの間に形成されるポンプ室の容積変化を生じるものであり、 前記インナロータの中心には、貫通孔が形成されており、 前記ポンプシャフトは、前記貫通孔に挿通されて、前記インナロータとスプライン嵌合され、 前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されている、オイルポンプ。 【請求項2】 前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されている、請求項1に記載のオイルポンプ。」 (3)補正事項 前記(1)及び(2)によれば、本件補正は、 (ア)補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を独立形式に改めて請求項1に記載した補正(以下、「補正事項1」という。)、 (イ)本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するための必要な事項である「溝」について、「前記溝の底面は、平坦面に形成されている」との事項を追加する補正(以下、「補正事項2」という。)、 を含むものである。 2 補正の適否 (1)補正事項1について ア 補正事項1は、請求項の削除を目的としたものであるから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 (2)補正事項2について ア 補正事項2は、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「溝」について、「前記溝の底面は、平坦面に形成されている」との事項を追加して限定するものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ また、補正事項2は、願書に最初に添付した図面の図2及び図3等の記載に基づいたもので、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について 前記2(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)各引用文献の記載及び引用発明 ア 引用文献1の記載事項、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-167075号(実開平1-71184号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付した。以下同様。)。 (ア)「第4図に示すように、内接歯車ポンプのピニオンギヤ1とリングギヤ2の両側面は、それぞれフロント側取付体3の側壁3aとエンド側取付体4の側壁4aとで密封されている。しかしこれらの側壁3a,4aとギヤ1,2の両側面が互いに密着している状態では、ギヤ1,2の回転摺動によって焼きつきが生じ、ポンプを破損する恐れがある。このため、従来より上記両側壁3a,4aの間隔をギヤ1,2の巾よりわずかに大きくし、ギヤ1,2の両側面に均一な間隔S,Sを設けることが行われてきた。すなわち、これらの間隔S,Sに歯溝からの漏れ油を導入して潤滑させるのである。」(明細書第1ページ第14行~明細書第2ページ第7行) (イ)「しかしなから、上記の間隙S、Sは非常に微細であるため、ポンプの芯出し不良やコンタミナント(ゴミ、金属粉)等によって作動中にギヤ1,2が軸移動し、その側面が側壁と密着して焼きつきやカジリを生じるという問題があった。本考案は、このような問題を解決するためになされたもので、ポンプの作動中にギヤが片側へ移動した場合でも、ギヤ側面と側壁とが密着することがなく、焼きつきやカジリを生じる虞れのない内接歯車ポンプのギヤ側面潤滑装置を提供するものである。」(明細書第2ページ第9~19行) (ウ)「通常、ピニオンギヤ1またはリングギヤ2の側面と側壁3a,4aとの密着による焼きつき等は、ギヤ1,2の歯1’,2’を除く側面部(第1図の斜線部(当審注。第1図は歯の側面部を示しておらず、斜線部もないため「第2図の斜線部」の誤記である。))で生じる。すなわち、歯の側面部は側壁に密着しても歯溝に充満している油によって常に側壁との潤滑が行われるため、焼きつきは生じないが、歯1’,2’を除く側面部は油の移動が少なく、側壁との外的要因による密着で焼きつきを生じる場合がある。本考案のようにピニオンギヤ1およびリングギヤ2の両側面の間隙S、Sを、歯1’,2’の側面部よりも、歯を除く側面部(斜線部分)で大きくした場合には、ポンプ駆動中にギヤ1,2が軸移動を生じても、歯を除く側面部(斜線部分)が側壁3a,4aに密着することはなく、焼きつきやカジリの発生を防止することができる。」(第3ページ第9行~第4ページ第4行) (エ)「第1図は本考案装置を実施した内接歯車ポンプの一例を示す正面図、第2図は第1図のA-A線矢視断面図で、1は駆動軸5にキー6連結されたピニオンギヤ、2はピニオンギヤに外嵌されたリングギヤ、3は駆動軸5のフロント側取付体、4はギヤケーシングを兼ねる駆動軸5のエンド側取付体である。 外周に歯1’を備えたピニオンギヤ1と、ピニオンギヤの外径よりも大きな内径をもち、その内周に歯2’を備えたリングギヤ2とは、互いに一部分で噛合するよう双方の中心を偏心させて配置されている。 したがって両ギヤ1,2に駆動力を与えると、噛合している歯1’,2’は互いの歯溝から次第に抜け出してゆき、180°回転位置ではほぼ完全に離れ、その後接近し始め、元の位置で再び噛合する回転を繰り返す。両ギヤ1,2の歯1’,2’が次第に抜け出てゆく部分には、油の吸入ポート7が設けてあり、歯1’、2’が接近し始める部分には、油の吐出ボート8が設けてある。」(第4ページ第6行~第5ページ第6行) (オ)「ピニオンギヤ1とリングギヤ2の両側面は、それぞれフロント側取付体3の側壁3aと、エンド側取付体4の側壁4aとで密封されている。この両側壁3a,4aの間隔Lは、ピニオンギヤ1およびリングギヤ2の歯1’,2’の稜線長さlよりも若干大きく設定されている。一方、上記両側壁3a,4aと対峙するピニオンギヤ1およびリングギヤ2の両側面は、歯1’,2’を除く部分すなわち歯底円10より下の部分(斜線部分)が歯1’,2’の部分よりも一段低い段差状に形成されている。このため、ピニオンギヤ1および2の両側面に形成される側壁3a,4aとの間隙S,Sは、歯1’,2’の側面部よりも歯を除く側面部(斜面部分(当審注。「斜線部分」の誤記である。))で、一段大きく拡大された形となっている。」(第5ページ第12行~第6ページ第6行) (カ)「なお、図示例は、いずれも仕切板9を備えた内接歯車ポンプに本考案装置を実施した例であるがこれに限るものではなく、トロコイド歯形の内接歯車ポンプ等に実施することも可能である。」(第6ページ第12~15行) (キ)「以上に説明したとおり、本考案の装置は、内接歯車ポンプのピニオンギヤおよびリングギヤ両側面の間隙を、歯を除く部分で大きくし、潤滑性に欠けるこの部分が、側壁に密着しないように構成したから、ポンプ作動中に上記ギヤが軸移動した場合等でも、焼きつきやカジリを生じる虞れが全くない。」(第6ページ第17行~第7ページ第3行) (ク)「第1図は本考案装置を実施した内接歯車ポンプの一例を示す正面図、第2図は第1図のA―A線矢視断面図、第3図は本考案の他の実施例を示す断面図、第4図は従来の潤滑装置の一例を示す断面図である。」(第7ページ第5~6行) (ケ)第1図 [図:0001421000000001.jpg] (コ)第2図 [図:0001421000000002.jpg] (サ)前記(エ)の「1は駆動軸5にキー6連結されたピニオンギヤ」との記載及び前記(ケ)及び(コ)の図示事項から、ピニオンギヤ1の中心に貫通孔が形成されている点、駆動軸5はピニオンギヤ1に挿通されている点、ピニオンギヤ1のピニオンギヤの歯1’を除く部分がピニオンギヤ1の駆動軸5を中心とする円環状である点、フロント側取付体3及びエンド側取付体4の内面と、ピニオンギヤ1及びリングギヤ2との間には、間隙Sが設けられている点、が看取できる。 (シ)第2図を拡大し、線やコメントを加えて、当審が注釈を付した。 [図:0001421000000003.jpg] (ス)前記(オ)の記載及び(シ)の斜線部分(前記(イ)によると間隙Sが大きい部分)について、フロント側取付体3の側壁3a及びエンド側取付体4の側壁4aと対峙するピニオンギヤ1の両側面は、歯1’を除く部分が歯1’の部分よりも一段低い段差状に形成されている点、一段低い段差状に形成されている部分がピニオンギヤ1の両側面で同程度であり、ピニオンギヤ1の内周側で開放されるとともに平坦な面に形成されている点、が看取できる。 (セ)引用発明 前記(ア)~(ス)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 ギヤケーシングを兼ねる駆動軸5のエンド側取付体4と、駆動軸5のフロント側取付体3と、駆動軸5にキー6連結されたピニオンギヤ1と、ピニオンギヤ1に外嵌されたリングギヤ2と、 駆動軸5と、を含み、 ピニオンギヤ1とリングギヤ2の両側面は、それぞれフロント側取付体3の側壁3aと、エンド側取付体4の側壁4aとで密封され、 両ギヤ1,2に駆動力を与えると、噛合している歯1’,2’は互いの歯溝から次第に抜け出してゆき、180°回転位置ではほぼ完全に離れ、その後接近し始め、元の位置で再び噛合する回転を繰り返し、両ギヤ1,2の歯1’,2’が次第に抜け出てゆく部分には、油の吸入ポート7が設けてあり、歯1’、2’が接近し始める部分には、油の吐出ボート8が設けてあり、 前記ピニオンギヤ1の中心には、貫通孔が形成されており 前記駆動軸5は、前記貫通孔に挿通されて、前記ピニオンギヤ1とキー6連結され、 ピニオンギヤ1のピニオンギヤの歯1’を除く部分がピニオンギヤ1の駆動軸5を中心とする円環状であり、フロント側取付体3の側壁3a及びエンド側取付体4の側壁4aと対峙するピニオンギヤ1の両側面は、歯1’を除く部分が歯1’の部分よりも一段低い段差状に形成され、一段低い段差状に形成されている部分がピニオンギヤ1の両側面で同程度であり、ピニオンギヤ1の内周側で開放されるとともに平坦な面に形成され、ピニオンギヤ1の両側面に形成される側壁3aとの間隙Sは、歯1’の側面部よりも歯を除く側面部で、一段大きく拡大された形となっている、内接歯車ポンプ (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)と、引用発明とを対比すると、 引用発明の「フロント側取付体3」及び「エンド側取付体4」は、ピニオンギヤ1とリングギヤ2を密封するものであるから、本件補正発明の「内部にギヤ収容空間を有するポンプケース」に相当し、「フロント側取付体3の側壁3a」及び「エンド側取付体4の側壁4a」は、本件補正発明の「ポンプケースの内面」に相当する。 引用発明の「ピニオンギヤ1」及び「リングギヤ2」は、本件補正発明の「ポンプギヤ」に相当し、リングギヤ2はピニオンギヤ1に外嵌されるものであるから、「ピニオンギヤ1」が本件補正発明の「インナロータ」に、「リングギヤ2」が本件補正発明の「アウタロータ」に相当する。 引用発明の「駆動軸5」は、ピニオンギヤ1の中心の貫通孔に挿通するものであるから、本件補正発明の「ポンプシャフト」に相当する。また、引用発明の「前記駆動軸5は、前記貫通孔に挿通されて、前記ピニオンギヤ1とキー6連結され」は、本件補正発明の「前記ポンプシャフトは、前記貫通孔に挿通されて、前記インナロータとスプライン嵌合され」と、「前記ポンプシャフトは、前記貫通孔に挿通されて、前記インナロータと連結され」る点で共通する。 引用発明のピニオンギヤ1の両側面に形成される側壁3aとの「間隙S」は、本件補正発明の「クリアランス」に相当する。 引用発明の「内接歯車ポンプ」は、油の吸入ポート7及び油の吐出ボート8が設けられているから、本件補正発明の「オイルポンプ」に相当する。 そして、以下に示すとおり、引用発明の「ピニオンギヤ1のピニオンギヤの歯1’を除く部分がピニオンギヤ1の駆動軸5を中心とする円環状であり、フロント側取付体3の側壁3a及びエンド側取付体4の側壁4aと対峙するピニオンギヤ1の両側面は、歯1’を除く部分が歯1’の部分よりも一段低い段差状に形成され、一段低い段差状に形成されている部分がピニオンギヤ1の両側面で同程度であり、ピニオンギヤ1の内周側で開放されるとともに平坦な面に形成されている」は、 本件補正発明の「前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されており、 前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されていて、 前記溝の底面は、平坦面に形成されている」に相当する。 つまり、引用発明の「フロント側取付体3の側壁3a及びエンド側取付体4の側壁4aと対峙するピニオンギヤ1の両側面は、歯1’を除く部分が歯1’の部分よりも一段低い段差状に形成され」ている構成は、本件補正発明の「前記インナロータの両側には、」「溝が形成されて」いる構成に相当し、引用発明の「ピニオンギヤ1のピニオンギヤの歯1’を除く部分がピニオンギヤ1の駆動軸5を中心とする円環状であ」る構成は、本件補正発明の「前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をな」す構成に相当し、 引用発明の「ピニオンギヤ1の内周側で開放されるとともに平坦な面に形成されている」は、本件補正発明の「前記インナロータの内周で開放されていて、前記溝の底面は、平坦面に形成されている」に相当する。 そして、引用発明は「一段低い段差状に形成されている部分がピニオンギヤ1の両側面で同程度であり」、上述のとおり、引用発明の「ピニオンギヤ1のピニオンギヤの歯1’を除く部分がピニオンギヤ1の駆動軸5を中心とする円環状であ」るから、引用発明の「歯1’を除く部分が歯1’の部分よりも一段低い段差状に形成され」は、本件補正発明の「前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されて」に相当する。 イ 一致点及び相違点 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 内部にギヤ収容空間を有するポンプケースと、 前記ギヤ収容空間に収容されるポンプギヤと、 ポンプシャフトと、を含み、 前記ポンプケースの内面と前記ポンプギヤとの間には、クリアランスが設けられており、 前記ポンプギヤは、インナロータと前記インナロータの周囲を取り囲むアウタロータとが噛み合って回転するものであり、 前記インナロータの中心には、貫通孔が形成されており、 前記ポンプシャフトは、前記貫通孔に挿通されて、前記インナロータと連結され、 前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されており、 前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されていて、 前記溝の底面は、平坦面に形成されている、オイルポンプ。 (相違点1) 本件補正発明は、「前記インナロータと前記アウタロータとの間に形成されるポンプ室の容積変化を生じるもの」であるのに対し、引用発明は、ピニオンギヤ1及びリングギヤ2との間に形成される空間の容積変化について明記されていない点。 (相違点2) 本件補正発明は、前記ポンプシャフトは、「前記インナロータとスプライン嵌合され」ているものであるのに対し、引用発明は、駆動軸5がピニオンギヤ1とキー6連結するものである点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 (相違点1について) 引用発明において容積変化を起こす点は明記されていないものの、引用発明のピニオンギヤ1の歯1’及びリングギヤ2の歯2’が噛合して回転する際に、ピニオンギヤ1及びリングギヤ2との間の空間の容積が変化することは、技術常識より明らかである。 してみると、上記相違点1は実質的な相違点とは言えない。 (相違点2について) スプライン嵌合の方がキー溝による嵌合よりも、構造上、大きいトルクを伝えることができることは技術常識であり、また、オイルポンプにおいて、ポンプシャフトとインナロータをスプライン嵌合する構成は、周知技術である(例えば、拒絶査定で引用された特開2012-2089号公報の段落0015、0018、図1、拒絶査定で引用された特開2007-23975号公報の段落0031、0034、図1~3等参照。)。 引用文献1に接した当業者が、駆動軸5からピニオンギヤ1へ大きいトルクを伝えられるようにするために、その接続方法を引用発明のキー6連結することに代えて周知技術であるスプライン結合とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更に過ぎない。 (5)審判請求人の主張に対して 審判請求人は、審判請求書において「引用文献1に記載された発明では、ピニオンギヤ1と駆動軸5とがキー6で連結されているため、歯底円10より下の部分には、キー6に対する回転軸線方向の両側において段差が生じており(キー6と回転軸線方向に対向する部分が凹んでおり)、歯底円10より下の部分が本願発明の「溝」に相当するとした場合、当該部分の底面は平坦面に形成されていません。」と主張している。 しかしながら、前記(2)(ス)に記載のとおり、ピニオンギヤ1の歯の部分よりも一段低い部分(前記(2)(シ)の斜線部分)は、平坦面である点が、引用文献1から看取できる。 また、審判請求人が主張している「歯底円10より下の部分」が引用文献1に記載及び図示された構造のうち、どの部分を意味しているのかが判然としないものの、仮に、審判請求人が「歯底円10より下の部分には、キー6に対する回転軸線方向の両側において段差が生じており、」と主張する「段差」が、キー6の駆動軸5方向の面とピニオンギヤ1の歯の部分よりも一段低い部分(前記(2)(シ)の斜線部分)との段差を意味していたとしても、本件補正発明の「前記インナロータの両側には、互いに同形状の溝が形成されており、前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されていて、前記溝の底面は、平坦面に形成されている」との事項は、インナロータの両側の形状を特定するものであるから、当該段差はピニオンギヤ1(上述のとおり、本件補正発明の「インナロータ」に相当。)の両側の形状とは関係なく、この点で審判請求人の主張は本件補正発明で特定される事項に基づくものではなく、採用できない。 さらに、審判請求人は、「すなわち、「ポンプの作動中にギヤが片側へ移動した場合でも、」と記載されていることから、引用文献1に記載された発明には、ギヤ1,2が回転軸線方向に移動することを防止するという思想がないことは容易に理解できます。」と主張するとともに、「本願発明は、インナロータの各端面に形成された溝の底面を平坦面に形成したことにより、各溝に溜まったオイルによる静圧が各溝に均等に発生するという、引用文献1の記載からは予測性のない格別の効果を奏する」と主張している。 審判請求人が主張する効果(明細書の段落0044の記載を参酌すると「インナロータ51の姿勢を安定させることができる」との効果。)は、本件補正発明の「前記溝は、前記インナロータの両側の端面に形成され、前記インナロータの回転軸線を中心とする円環状をなし、前記インナロータの内周で開放されていて、前記溝の底面は、平坦面に形成されている」との記載によって特定される事項により効果を奏すると理解できるが、前記(3)に記載のとおり、引用発明にも同じ構造が記載されていることから、以下のとおり同じ効果を奏すると推認でき、審判請求人の「予測性のない格別の効果を奏する」との主張は採用できない。 すなわち、前記(2)ア(ア)の「しかしこれらの側壁3a,4aとギヤ1,2の両側面が互いに密着している状態では、ギヤ1,2の回転摺動によって焼きつきが生じ、ポンプを破損する恐れがある。このため、従来より上記両側壁3a,4aの間隔をギヤ1,2の巾よりわずかに大きくし、ギヤ1,2の両側面に均一な間隔S,Sを設けることが行われてきた。すなわち、これらの間隔S,Sに歯溝からの漏れ油を導入して潤滑させるのである。」との記載から、引用発明の出願時の従来技術として、側壁3a,4aとギヤ1,2の両側面が互いに密着することが好ましくなく、ギヤ1,2の両側面に均一な間隔S,Sを設けることが必要であることが認識されていた。 引用発明は、上述の従来技術に改良を加えたものであると解釈でき、図面から認識できるとおり、前記(2)ア(シ)に図示される斜線部分(ピニオンギヤ1の歯の部分よりも一段低い部分)は、平坦であり、側壁3a,4aからの間隔も一定であることが看取できるものである。 そうすると、引用発明も本件補正発明と同様の構造を有するといえ、本願の明細書の段落0044に記載された効果を奏すると推認できる。 また、審判請求人が主張する引用文献1の記載は、前記(2)ア(イ)に「上記の間隙S,Sは非常に微細であるため、ポンプの芯出し不良やコンタミナント(ゴミ、金属粉)等によって作動中にギヤ1,2が軸移動し、その側面が側壁と密着して焼きつきやカジリを生じるという問題があった。本考案は、このような問題を解決するためになされたもので、ポンプの作動中にギヤが片側へ移動した場合でも、ギヤ側面と側壁とが密着することがなく、焼きつきやカジリを生じる虞れのない内接歯車ポンプのギヤ側面潤滑装置を提供するものである。」と記載されている部分の一部であるが、ポンプの芯出し不良やコンタミナント(ゴミ、金属粉)といった外的要因によって、ギヤ1,2が軸移動し、側壁と密着する場合があることを指摘しているに過ぎず、これらの記載により推認された上記引用発明の効果が否定されるものではない。 してみると、審判請求人の主張は採用できない。 (6)作用効果について 上記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (7)まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 本件補正についてのむすび 以上によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年10月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の、令和5年4月21日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項2に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由 本願の請求項1ないし2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 一 覧 1.実願昭62-167075号(実開平1-71184号)のマイクロフィルム 2.特開2012-2089号公報 3.特開2007-23975号公報 3 対比・判断 前記第2[理由]2(2)で検討したように、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項を限定するものであり、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに限定したものである本件補正発明が、上記のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-018075

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