特許拒絶査定不服審判
2023-016393
アバタ移動のためのマルチモードの手の場所および配向
- 審判番号
- 2023-016393
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-528983
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】マジック リープ, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 【請求人代理人】飯田 貴敏
- 【請求人代理人】石川 大輔
- 【請求人代理人】山本 健策
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .55 -WY (G06T) / P18 .536-WY (G06T) / P18 .537-WY (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-528983「アバタ移動のためのマルチモードの手の場所および配向」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日国際公開、WO2020/112561、令和 4年 1月28日国内公表、特表2022-510843、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)11月22日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)11月30日)とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年11月21日 :手続補正書の提出
令和 5年 1月31日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 5月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 5月30日付け:拒絶査定
令和 5年 9月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年5月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1 理由1(新規事項)
令和4年11月21日付け手続補正書でした補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
・請求項1-18
補正後の請求項1には、「掌性予測」とあるが、国際出願日における翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。請求項1を引用する請求項2-17、及び請求項18についても同様である。
2 理由2(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
・請求項19、20
(1)「前記第1のユーザデータと関連付けられる第1の履歴データ、第1の運動データ、または第1の人間工学データのうちの1つ以上のものに基づいて、前記第1のユーザデータのための第1の加重を決定すること」について、履歴データ及び運動データに基づいて、どのように加重を決定するのかが実施可能に記載されているとはいえない。
(2)「前記第1のユーザデータおよび前記第1の加重に基づく第1の掌性推定値と、前記第2のユーザデータおよび前記第2の加重に基づく第2の掌性推定値とに基づいて、前記ユーザの前記左手または右手のどちらがアクティブであるかを決定することと」とあるが、「第1の掌性推定値」と「第2の掌性推定値」とに基づいて左右どちらの手がアクティブであるかを決定する方法について、実施可能に記載されているとはいえない。そもそも「掌性推定値」については、明細書の段落[0140]、[0165]-[0166]にのみ実質的に記載されているが、「速度(および/または他の運動データ)および/または履歴データが、アクティブな手をより正確に推定するために、掌性推定値に適用されてもよい。」、「いくつかの実施形態では、一致するデータは、それぞれ、アクティブな手として右手の掌性推定値を備える、複数の(例えば、2つの)セットのデータを備え得る。」等と記載されているのみで、機能的記載であり、日本語としての表現も不明確な記載にとどまり、当業者が「第1の掌性推定値」と「第2の掌性推定値」とに基づいて左右どちらの手がアクティブであるかを決定することができるように記載されているとはいえない。
3 理由3(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・請求項19、20
(1)「前記第1のユーザデータと関連付けられる第1の履歴データ、第1の運動データ、または第1の人間工学データのうちの1つ以上のものに基づいて、前記第1のユーザデータのための第1の加重を決定すること」とあるが、対応する記載箇所が不明である。「人間工学データ」に基づく部分については、段落[0136]等に記載されているといえるが、履歴データ及び運動データについては、「履歴データが、ブロック1104の出力に適用され得る。」、「運動データが、ブロック1106の出力に適用され得る。」と記載されており、「ブロック1104の出力」は、「どちらの手(左または右)がアクティブな手であるかの推定値、手の場所、手の位置、および/またはこれらと関連付けられる信頼度を伴う、センサデータ」と記載されていることから、加重の決定には無関係であると思われる。「第2の加重を決定すること」についても同様である。
(2)上記理由2に関連して、2つのセンサからのユーザデータと加重を元に、2つの掌性推定値を決定し、当該2つの掌性推定値からアクティブな手を決定することについて、対応する記載箇所が不明である。
(3)請求項19及び20に係る発明は、第1及び第2のセンサからそれぞれユーザデータを入手し、各ユーザデータと関連づけられる履歴・運動・人間工学データにより各加重を決定し、各ユーザデータ及び各加重からそれぞれの掌性推定値を算出し、各掌性推定値からアクティブな手を決定するとあるが、全体的に明細書との対応関係が不明である。第1のセンサと第2のセンサの関係や、2つのセンサからのそれぞれの処理の結果の統合などについて、対応する記載箇所が不明である。
4 理由4(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項19、20
(1)「第1のユーザデータ」は「第1のセンサ」から入手するものであるが、「第1のセンサ」から入手した「第1のユーザデータ」と関連づけられる「第1の人間工学データ」という技術的意味が不明である。換言すると、センサデータからどのように人間工学データが関連づけられるのかが不明である。仮に、「第1の人間工学データ」が「第1のユーザデータ」と関連づけられないものだとすると、どのような人間工学データであるのかが不明である。「第2の人間工学データ」についても同様である。
(2)「掌性推定値」とあるが、技術的意味が不明である。「掌性」とは一般的に形は似ているが重ならない性質を指すが、本願記載の「掌性推定値」が何を指すのかが不明である。何と何が重ならないのか、推定値とは重ならない可能性を指すのか、重なり具合を指すのかなど用語の意味、定義が不明である。
(3)上記(2)に関連して、「掌性推定値」からアクティブな手を決定するという意味が不明である。完全に異なる概念である為、どのように決定するのか発明の動作態様が不明である。
第3 本願発明
本願請求項1-18に係る発明は、令和5年9月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-18は以下のとおりである。
「 【請求項1】
コンピューティングシステムによって実行されるコンピュータ化された方法であって、前記コンピューティングシステムは、1つ以上のハードウェアコンピュータプロセッサと1つ以上の非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶デバイスとを有し、前記1つ以上の非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶デバイスは、前記コンピュータ化された方法を実行するために、前記コンピューティングシステムによって実行可能なソフトウェア命令を記憶しており、前記コンピュータ化された方法は、
複合現実デバイスの対応する複数のセンサからの複数のセンサデータストリームにアクセスすることであって、前記複合現実デバイスは、第1のセンサデータストリームを提供する前向きカメラを有するヘッドセットと、第2のセンサデータストリームを提供する慣性運動センサを有するハンドヘルドコントローラとを備える、ことと、
前記第1のセンサデータストリームおよび前記第2のセンサデータストリームを含む複数のセンサデータストリームのそれぞれに対して、
ユーザのアクティブな手を正確に推定するために前記センサデータストリームが使用可能である信頼度レベルに少なくとも基づいて、前記センサデータストリームのための初期加重を決定することと、
前記センサデータストリームおよび前記初期加重の分析に基づいて、掌性推定値を決定することであって、前記掌性推定値は、前記推定されるアクティブな手としての前記ユーザの右手または左手のいずれか、および、前記掌性推定値が正確である信頼度レベルを識別する、ことと、
前記複数のセンサデータストリームに関連付けられた複数の掌性推定値に基づいて、全体的な掌性推定値を決定することと、
前記決定された全体的な掌性推定値を前記複合現実デバイス上で実行されるアプリケーションに提供することと
を含む、コンピュータ化された方法。
【請求項2】
全体的な信頼度レベルは、複数のセンサデータストリームからの掌性推定値に合致することに応答して、より高い、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項3】
前記初期加重は、センサのタイプに少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項4】
前記センサのタイプは、ハンドヘルドコントローラの6DOF外部能動追跡、前記ハンドヘルドコントローラの6DOF内部運動追跡、または、前記ハンドヘルドコントローラの外部受動追跡のうちの少なくともいくつかを含む、請求項3に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項5】
前記センサのタイプは、視覚センサ、深度センサ、または、LIDARセンサのうちの1つ以上のものをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項6】
前記初期加重は、前記対応するセンサからの最近のデータ読取値の量に少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項7】
前記初期加重は、前記対応するセンサに関連付けられた履歴情報に少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項8】
センサデータストリームのための前記初期加重を決定することは、
前記対応するセンサの1つ以上の特性に基づいて、1つ以上の分析ルールを選択することであって、前記分析ルールは、前記センサに関連付けられた人間工学データ、履歴データ、または、運動データのうちの1つ以上のものに基づく、ことと、
前記選択された1つ以上の分析ルールを前記センサデータストリームに適用することにより、対応する掌性情報を決定することと
を含む、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項9】
前記分析ルールのうちの1つ以上のものは、
前記第2のセンサデータストリームに比較して、前記第1のセンサデータストリームの決定されたより高い信頼性に基づいて、第2のセンサからの第2のセンサデータストリームよりも第1のセンサからの第1のセンサデータストリームを優先する、請求項8に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項10】
前記分析ルールのうちの1つ以上のものは、前記複合現実デバイスの視野内の前記ユーザの検出された手の位置に応じて、特定のセンサからのセンサデータを優先する、請求項8に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項11】
前記第1のセンサデータストリームは、前記複合現実デバイスの前記ヘッドセットを基準とする前記第2のセンサの位置に少なくとも基づいて、前記第2のデータストリームに関連付けられた第2の信頼度レベルより高い第1の信頼度レベルに関連付けられている、請求項9に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項12】
前記分析ルールのうちの1つ以上のものは、前記第1のセンサデータストリームと前記第2のセンサデータストリームとの間の競合を識別する、請求項8に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項13】
前記分析ルールのうちの1つ以上のものは、2つ以上のセンサからのセンサデータストリームに基づいて、更新された信頼度レベルを周期的に計算する、請求項8に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項14】
前記分析ルールのうちの1つ以上のものは、前記センサデータストリーム内のエラーを識別し、エラーを伴うセンサデータを破棄する、請求項8に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項15】
センサデータストリーム内のエラーは、センサデータ内の欠測フレーム、センサデータ内の矛盾するフレーム、または、センサデータ内の複製フレームを含む、請求項14に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項16】
前記コンピュータ化された方法は、
前記センサのそれぞれの視野を決定することと、
中心視野を表す少なくとも第1の領域を含む1つ以上の視野領域を決定することであって、前記センサのうちの少なくとも2つは、前記第1の領域に関連付けられたセンサデータを提供する、ことと
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項17】
前記第1の領域に関連付けられたセンサデータは、前記第1の領域の外側のセンサデータより高い信頼度レベルに関連付けられている、請求項16に記載のコンピュータ化された方法。
【請求項18】
コンピューティングシステムであって、前記コンピューティングシステムは、
ハードウェアコンピュータプロセッサと、
非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体と
を備え、
前記非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体には、ソフトウェア命令が記憶されており、前記ソフトウェア命令は、動作を実行することを前記コンピューティングシステムに行わせるように、前記ハードウェアコンピュータプロセッサによって実行可能であり、
前記動作は、
複合現実デバイスの対応する複数のセンサからの複数のセンサデータストリームにアクセスすることと、
前記複数のセンサデータストリームのそれぞれに対して、前記センサデータストリームのための対応する初期加重を決定することと、
前記センサデータストリームおよび前記センサデータストリームの対応する初期加重に基づいて、アクティブであると推定されるユーザの左手または右手のうちの1つ以上のものを示す前記ユーザの掌性推定値を決定することと、
前記掌性推定値を前記複合現実デバイス上で実行されるアプリケーションに提供することと
を含む、コンピューティングシステム。」
第4 原査定についての判断
1 理由1(新規事項)
令和5年9月28日提出の手続補正書により、請求項1-18の「掌性予測」は、「掌性推定値」に変更する補正がされている。
翻訳文等の段落【0166】には、「アクティブな手として右手の掌性推定値」と記載されており、「掌性推定値」がどのようなものであるか翻訳文等から把握できる。よって、この拒絶の理由は解消した。
2 理由2(実施可能要件)
令和5年9月28日提出の手続補正書により、請求項19、20を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
3 理由3(サポート要件)
令和5年9月28日提出の手続補正書により、請求項19、20を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
4 理由4(明確性)
令和5年9月28日提出の手続補正書により、請求項19、20を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-016393