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特許拒絶査定不服審判

2023-013246

フォトダイオード

審判番号
2023-013246
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-203382
請求日
2023年08月07日
審決日
2025年03月17日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】レイナジー テック インコーポレイション
  • 【請求人代理人】SK弁理士法人
  • 【請求人代理人】奥野 彰彦
  • 【請求人代理人】伊藤 寛之
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 芝沼 隆太
分類
P18 .121-WZ (H10K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-203382「フォトダイオード」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月20日出願公開、特開2022- 90832〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年12月8日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和 4年 1月 4日付け:拒絶理由通知書 同年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月20日付け:拒絶理由通知書 同年12月28日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 4月 6日付け:拒絶査定 (同月11日 :拒絶査定の謄本の送達) 同年 8月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年10月23日付け:前置報告書 令和 6年 9月20日付け:拒絶理由通知書 同年12月24日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明の認定 本願の請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年12月24日に提出された手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項11に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項11の記載は以下のとおりである。 「【請求項11】 ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まず、 式Iのフルオロポリマー、 【化5】 [図:0001425052000001.jpg] (ここで、 Xは、H、Li、NaおよびKからなる群から選択され、 xは0.01~0.99であり、 yは0.99~0.01であり、かつx+y=1、nは1より大きい整数である) ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジチアチオフェン)(PEDTT)、または「アルキル」がC1-12アルキルであるポリ(3-アルキル)チオフェン、またはポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)から選択される導電性ポリマー、 Zonyl(登録商標) FSA、Zonyl(登録商標) FS-300、Dynol(登録商標) 604、Capstone(登録商標) FS-83、CoatOSil(登録商標) 1220、CoatOSil(登録商標) 1211、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸からなる群から選択される1つ以上の添加剤、 および1つ以上の溶媒からなる、ポリマーブレンド。」 第3 当審拒絶理由の概要 本願発明は本件補正前の請求項11に係る発明を補正し、「Zonyl」、「Dynol」、「Capstone」及び「CoatOSil」について、「(登録商標)」であることを明記するとともに、「1つ以上の水性溶媒」を「1つ以上の溶媒」としたものであるところ、本件補正前の各請求項に係る発明に対して当審において令和6年9月20日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、本件補正前の請求項11に係る発明に対する次の理由2を含むものである。 理由2(進歩性欠如) 本件補正前の請求項11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3~5に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特表2018-502190号公報 2.国際公開第2019/176662号 3.特開2014-27174号公報 4.特表2015-518497号公報 5.国際公開第2020/002832号 第4 当審の判断 1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 (1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項 当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において発行された特表2018-502190号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以降の他の文献に記載された事項についても同様である。 (ア) 発明の分野、背景 「【0002】 [発明の分野] 本発明は、正孔輸送材料、典型的には、共役ポリマーと、フルオロポリマーとを含む組成物、正孔輸送材料とフルオロポリマーとを含むインク組成物、及び、例えば、有機電子デバイスにおけるその使用に関する。 【0003】 [背景] …(中略)… 【0004】 材料を種々の用途に適合させ、また種々の材料、例えば発光層、光活性層、及び電極と共に機能するよう適合させることができるように、正孔注入及び輸送層の特性、例えば、溶解性、熱/化学安定性、及び電子エネルギーレベル(例えば、HOMO及びLUMO)を制御するための、良好なプラットフォームシステムについての現在解決されていない必要性が存在する。良好な溶解性、溶媒抵抗性(intractability)、及び熱安定性が重要である。高い透明性及び低い動作電圧を保持しつつ、HIL抵抗率及びHIL層の厚みを調節できることもまた重要である。特定の用途のためにシステムを組み立て、このような特性の必要とされるバランスを提供できることも重要である。」 (イ) 正孔輸送材料 「【0022】 正孔輸送材料は、当技術分野において公知であり、市販されている。正孔輸送材料は、例えば、低分子量材料又は高分子量材料であることができる。正孔輸送材料は、非ポリマー性又はポリマー性であることができる。…(中略)… 【0023】 一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料は、ポリマー性である。ポリマー性正孔輸送材料は、主鎖又は側鎖に正孔輸送部分を含むポリマー及び共役ポリマー、例えば、直鎖の共役ポリマー又は共役ポリマーブラシ等を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「共役ポリマー」は、π電子が非局在化することができる、sp2混成原子の連続的な系を含む骨格を有する、任意のポリマーを意味する。 【0024】 一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料は、共役ポリマーである。共役ポリマーは、有機電子デバイスにおけるその使用を含めて、当技術分野において公知である。本発明に使用される共役ポリマーは、ホモポリマー、コポリマーであることができる。同コポリマーは、ブロックコポリマー、例えば、A-Bジブロックコポリマー、A-B-Aトリブロックコポリマー、及び-(AB)n-マルチブロックコポリマー等を含む。側鎖基を有する位置規則性のポリチオフェンを含めて、合成方法、ドーピング、及びポリマー特徴決定は、例えば、米国特許第6,602,974号(McCullough et al.)及び同第6,166,172号(McCullough et al.)に提供されている。これらの文献の全体が、参照により組み入れられる。 【0025】 共役ポリマーの例は、 例えば、 【化1】 [図:0001425052000002.jpg] 等の繰返し単位を含むポリチオフェン…(中略)…を含むが、これらに限定されない。上記構造において、基R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、場合により置換されているC1~C25基、典型的には、C1~C10基、より典型的には、C1~C8基であることができ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、及びポリエーテル基を含む。基R1及び/又はR2は、水素(H)であることもできる。これらの基は、電子吸引基又は電子供与性基であることができる。側鎖基は、溶解性を提供することができる。本明細書に記載され、例示された構造は、ポリマー骨格又は側鎖に包含させることができる。 …(中略)… 【0050】 少なくとも1つの正孔輸送材料、典型的には、共役ポリマーは、ドープされていてもよいし、又は、ドープされていなくてもよい。 …(後略)…」 (ウ) フルオロポリマー 「【0072】 本発明の使用に適したフルオロポリマーは、部分フッ化ポリマー又は全フッ化ポリマーであることができる。フルオロポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであることができる。2つ以上のホモポリマー及び/又はコポリマーを含むフルオロポリマーのブレンドも、本発明に従って使用することができる。 …(中略)… 【0079】 フルオロポリマーは、-OM、-SO3M、及び/又は-CO2M(式中、Mは、H+又はアルカリ金属イオン、例えば、Na+、Li+、K+、Rb+、Cs+等、又はアンモニウム(NH4+)であることができる)を含んでもよいし、又は、含まなくてもよい。フルオロポリマーは、スルホンイミド、ホスホン酸、及び/又はリン酸基を含んでもよいし、又は、含まなくてもよい。 【0080】 一実施態様において、フルオロポリマーは、-OM、-SO3M、及び/又は-CO2Mを含まない。 【0081】 一実施態様において、フルオロポリマーは、スルホンイミド、ホスホン酸、及び/又はリン酸基を含まない。 …(後略)…」 (エ) インク組成物 「【0091】 また、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのフルオロポリマーと、液状担体とを含む、インク組成物に関する。 【0092】 本発明のインク組成物に使用される液状担体は、デバイスにおける他の層、例えば、アノード又は発光層との使用及び処理に適合する、溶媒又は2つ以上の溶媒を含む溶媒ブレンドを含むことができる。液状担体は、水性又は非水性であることができる。 …(後略)…」 (オ) 単極性デバイス製造 「【0134】 実施例3.単極性デバイス製造 …(中略)… 【0139】 実施例2の本発明のHILインク組成物から形成された、幾つかの本発明のHIL層の薄膜特性を、表3にまとめる。比較例3.5及び3.6を含める。 【0140】 【表3】 [図:0001425052000003.jpg] …(後略)…」 イ 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項 (ア) 引用文献1の【0091】に記載されたインク組成物の正孔輸送材料について、引用文献1における正孔輸送材料に関する記載である【0022】を参照できると当業者は認識できるところ、引用文献1の【0091】に記載されたインク組成物について、正孔輸送材料は、ポリマー性であることができることを、当業者は把握できる。 (イ) 引用文献1の【0091】に記載されたインク組成物のフルオロポリマーについて、引用文献1におけるフルオロポリマーに関する記載である【0079】を参照できると当業者は認識できるところ、引用文献1の【0091】に記載されたインク組成物について、フルオロポリマーは、-SO3M(式中、Mは、H+又はアルカリ金属イオン、例えば、Na+、Li+、K+、Rb+、Cs+等、又はアンモニウム(NH4+)であることができる)を含んでもよいことを、当業者は把握できる。 ウ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1に記載された事項及び前記イに記載した引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献1には、【0091】に記載のインク組成物に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 <引用発明> 「有機電子デバイスに使用されるインク組成物であって、(【0002】) インク組成物は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのフルオロポリマーと、液状担体とを含み、(【0091】) 正孔輸送材料は、ポリマー性であることができ、(前記イ(ア)) フルオロポリマーは、-SO3M(式中、Mは、H+又はアルカリ金属イオン、例えば、Na+、Li+、K+、Rb+、Cs+等、又はアンモニウム(NH4+)であることができる)を含んでもよい、(前記イ(イ)) インク組成物」 エ 引用文献1技術事項の認定 前記アに摘記した引用文献1に記載された事項を踏まえると、引用文献1には、有機電子デバイスに使用されるインク組成物の正孔輸送材料に関して、次の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献1技術事項> 「有機電子デバイスに使用されるインク組成物の正孔輸送材料について、(【0002】) 正孔輸送材料は、共役ポリマーであり、(【0024】) 共役ポリマーは、 [図:0001425052000004.jpg] 等の繰返し単位を含むポリチオフェンであり、基R1は、水素(H)であることができ、(【0025】) 共役ポリマーは、ドープされていなくてもよいこと(【0050】)」 (2) 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定 ア 引用文献2に記載された事項 当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において発行された国際公開第2019/176662号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、電荷輸送性組成物に関し、更に詳述すると、有機光電変換素子の正孔捕集層形成に適した電荷輸送性組成物に関する。」 「[0074] 本発明の電荷輸送性組成物は、必要に応じて、マトリックス高分子を更に含んでいてもよい。 上記マトリックス高分子の具体例としては、下記式(I)で表される繰り返し単位および下記式(II)で表される繰り返し単位を含むマトリックス高分子を挙げることができる。 [0075][化13] [図:0001425052000005.jpg] (式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、Qは、-[OC(RhRi)-C(RjRk)]y-O-[CRlRm]z-SO3Hであり、Rh、Ri、Rj、Rk、RlおよびRmは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、yは、0~10であり、zは、1~5である。) [0076] ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基および炭素数1~20のパーフルオロアルキル基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。 [0077] 上記R3、R4、R5およびR6が、フッ素原子または塩素原子であることが好ましく、R3、R5およびR6が、フッ素原子であり、かつR4が、塩素原子であることがより好ましく、R3、R4、R5およびR6が、全てフッ素原子であることがより一層好ましい。 [0078] 上記R7、R8およびR9が、全てフッ素原子であることが好ましい。 [0079] 上記Rh、Ri、Rj、Rk、RlおよびRmが、フッ素原子、炭素数1~8のフルオロアルキル基、または炭素数1~8のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。 [0080] 上記RlおよびRmが、フッ素原子であることがより好ましい。また、yは、0が好ましく、zは、2が好ましい。 [0081] また、上記R3、R5、およびR6が、フッ素原子であり、R4が、塩素原子であり、そして各々のRlおよびRmが、フッ素原子であり;yは、0であり;そしてzは、2であることが好ましい。 [0082] 更に、ある実施態様において、各々のR3、R4、R5、およびR6は、フッ素原子であり;そして各々のRlおよびRmは、フッ素原子であり;yは、0であり;そしてzは、2であることが好ましい。 [0083] 式(I)で表される繰り返し単位の数「s」と式(II)で表される繰り返し単位の数「t」との比(s:t比)は、特に限定されない。s:t比は、好ましくは9:1~1:9、より好ましくは8:2~2:8である。 [0084] 本発明において好適に使用できるマトリックス高分子は、公知の方法を用いて合成されたものを用いても、市販品を用いてもよい。例えば、上記式(I)で表される繰り返し単位および上記式(II)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、下記式(Ia)で表されるモノマーと下記式(IIa)で表されるモノマーとを、公知の重合方法により共重合し、続いてスルホニルフルオリド基の加水分解によりスルホン酸基に変換することによって製造することができる。 [0085][化14] [図:0001425052000006.jpg] (式中、Q1は、-[OC(RhRi)-C(RjRk)]y-O-[CRlRm]z-SO2Fであり、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、Rh、Ri、Rj、Rk、Rl、Rm、yおよびzは、上記と同じ意味を表す。) [0086] 例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)は、スルホン酸の前駆体基を含む1種以上のフッ素化モノマー(例えば、F2C=CF-O-CF2-CF2-SO2F;F2C=CF-[O-CF2-CR12F-O]y-CF2-CF2-SO2F(ここで、R12は、FまたはCF3であり、そしてyは、1~10である);F2C=CF-O-CF2-CF2-CF2-SO2F;およびF2C=CF-OCF2-CF2-CF2-CF2-SO2Fなど)と共重合することができる。 [0087] 本発明において、マトリックス高分子に存在する酸基1モル当たりのマトリックス高分子の質量(g/mol)を意味する。マトリックス高分子の当量は、好ましくは約400~約15,000g/mol、より好ましくは約500~約10,000g/mol、より一層好ましくは約500~約8,000g/mol、更に好ましくは約500~約2,000g/mol、最も好ましくは約600~約1,700g/molである。 [0088] このようなマトリックス高分子は、市販品として入手することができる。 市販品としては、例えば、デュポン製のナフィオン(NAFION,登録商標)、Solvay Specialty Polymers製のアクイヴィオン(AQUIVION,登録商標)、および旭硝子(株)製のフレミオン(FLEMION,登録商標)等が挙げられる。 [0089] 本発明において、マトリックス高分子は、少なくとも1個のスルホン酸残基(-SO3H)を含む繰り返し単位を1個以上含むポリエーテルスルホンであることが好ましい。 [0090] なお、本発明の組成物には、本発明の目的を達成し得る限り、その他の添加剤を配合してもよい。 添加剤の種類としては、所望の効果に応じて公知のものから適宜選択して用いることができる。」 イ 引用文献2技術事項の認定 前記アに摘記した引用文献2に記載された事項を踏まえると、引用文献2には、有機光電変換素子の正孔捕集層形成に適した電荷輸送性組成物に関して、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献2技術事項> 「有機光電変換素子の正孔捕集層形成に適した電荷輸送性組成物について、([0001]) 電荷輸送性組成物は、マトリックス高分子を含んでいてもよく、上記マトリックス高分子の具体例としては、下記式(I)で表される繰り返し単位および下記式(II)で表される繰り返し単位を含むマトリックス高分子を挙げることができ、([0074]) [図:0001425052000007.jpg] 式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、Qは、-[OC(RhRi)-C(RjRk)]y-O-[CRlRm]z-SO3Hであり、Rh、Ri、Rj、Rk、RlおよびRmは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、または炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、yは、0~10であり、zは、1~5であり、([0075]) R7、R8およびR9が、全てフッ素原子であることが好ましく、([0078]) R3、R4、R5およびR6は、フッ素原子であり、RlおよびRmは、フッ素原子であり、yは、0であり、zは、2であることが好ましく、([0082]) 式(I)で表される繰り返し単位の数「s」と式(II)で表される繰り返し単位の数「t」との比(s:t比)は、9:1~1:9であること([0083])」 (3) 引用文献3~5に記載された事項及び周知技術の認定 ア 引用文献3に記載された事項 本願の出願前に日本国内又は外国において発行された引用文献3(特開2014-27174号公報)には、次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 有機光電変換素子としては、基材側に正孔を捕集する電極(アノード)を有し、アノード上に正孔取り出し層、活性層及び電子を捕集する電極(カソード)が順に配置された順型構成素子が従来からよく用いられていた(例えば特許文献1)。しかし、近年基材側にカソードを有し、カソード上に活性層、正孔取り出し層及びアノードが順に配置された逆型構成素子に注目が集まっている(例えば非特許文献1)。 【0003】 例えば特許文献1には、順型構成素子の製造方法が記載されている。具体的には、PENフィルム基板上のITO膜上に、PEDOT:PSSとフッ素系界面活性剤であるフルオロアルキルカルボン酸とを含有する導電性高分子ペーストをスピンコート法により塗布することで正孔取り出し層が形成される。そして、正孔取り出し層上にP3HTとPCBMとを含有するバルクヘテロ型活性層を積層することによって、順型構成素子が作製される。 【0004】 また非特許文献1には、逆型構成素子の製造方法が記載されている。具体的には、PENフィルム基板上のITO膜上に、酸化チタン(TiOx)の電子取り出し層と、P3HTとPCBMとを含有するバルクヘテロ型活性層とが順次形成される。そして、活性層に対して酸素プラズマ洗浄を行った後で、イソプロピルアルコール(IPA)及び/又はフッ素系非イオン系界面活性剤であるZonylFS300とPEDOT:PSSとを含有する正孔取り出し層塗布液をスピンコート法又はグラビア印刷法にて成膜することにより、活性層上に正孔取り出し層を形成することが記載されている。」 イ 引用文献4に記載された事項 本願の出願前に日本国内又は外国において発行された引用文献4(特表2015-518497号公報)には、次の事項が記載されている。 「【0360】 得られたJ-V曲線を図1に示す。 図1:OPDデバイスでのポリマー10及びPC60BM(1.0:2.0比)のブレンドについてのJ-V曲線 ポリマー20についてのOPDデバイス ITOガラス基板を普通のガラスクリーニング手順:ダイコン(Dycon)90溶液中での30分超音波浴、引き続き3回の脱イオン水洗浄及び脱イオン水中での30分超音波浴を用いることによって清浄化する。次にITO基板をフォトリソグラフィ・パターン化し、50mm2のサイズのドットが形成され、これにクリーニング段階が続く。PEDOT-PSS層を、1%ゾニル(Zonyl)300界面活性剤入りのPEDOT-PSSAL4083溶液(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Adrich))からスピンコートすることによって堆積させる。厚さは約50nmである。 【0361】 活性層ポリマー20:PC70BM(1:1.5)を、70℃でブレード塗布装置(K101 コントロール・コータ・システム(K101 Control Coater System)によって順に堆積させる。ブレードと基板との間の距離は15~50mm、速度は0.2m・分-1に設定する。トップ50nmのAl金属電極を、シャドーマスクを通して熱堆積させ、金属ドットはボトムITOドットとマッチする。」 ウ 引用文献5に記載された事項 本願の出願前に日本国内又は外国において発行された引用文献5(国際公開第2020/002832号)には、次の事項が記載されている。 「(1ページ4~9行) [図:0001425052000008.jpg] …(中略)… (5ページ22~25行) [図:0001425052000009.jpg] …(中略)… (6ページ10~13行) [図:0001425052000010.jpg] 」 (訳(引用文献5の日本語公表特許公報である特表2022-505685号公報を参考に当合議体が作成したもの): 【0001】 本発明は、導電性ポリマー組成物、その製造方法、及びそのような組成物を含む構造体全般に関する。この組成物は、例えば、有機起電力セル(通常は、「有機光起電力セル」に対する英語の略語であるOPCと称される)の製造に用いられる。 …(中略)… 【0019】 界面活性剤は、この導電性ポリマー組成物の適用から得られるPEDOT:PSS層の濡れ性、形態的、機械的、及び電気的特性を改善する。 …(中略)… 【0024】 本発明に従う組成物に用いることができる界面活性剤の例としては、MERCKにより市販されているTriton X-100、及びやはりMERCKにより市販されているフッ素系界面活性剤のZonyl(登録商標)FS-300が挙げられる。) エ 周知技術の認定 引用文献3~5に記載された事項からみて、次の事項は本願の出願前の周知技術であると認められる。 <周知技術> 「有機光電変換素子の正孔輸送層を製造するための組成物が、導電性ポリマー及びZonyl FS-300等の界面活性剤を含むこと」 2 対比 (1) 対比分析 ア 本願発明の「ポリマーブレンド」という特定事項について (ア) 引用発明の「インク組成物」は、「ポリマー性」である「正孔輸送材料」と、「フルオロポリマー」を含むところ、異なるポリマーが混合、すなわちブレンドされたものと理解できるから、本願発明でいう「ポリマーブレンド」であるといえる。 (イ) したがって、引用発明は、上記特定事項を満たす。 イ 本願発明の「ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まず、」「フルオロポリマー、」「導電性ポリマー、」「1つ以上の添加剤、および1つ以上の溶媒からなる」という特定事項について (ア) 引用発明の「フルオロポリマー」は、本願発明の「フルオロポリマー」に相当する。 (イ) 引用発明の「ポリマー性」の「正孔輸送材料」は、正孔を輸送するという機能から考えて導電性であることは明らかであるから、本願発明の「導電性ポリマー」に相当する。 (ウ) 引用発明の「液状担体」は、本願発明の「1つ以上の溶媒」に相当する。 (エ) してみると、本願発明と引用発明は、「フルオロポリマー、」「導電性ポリマー、」「および1つ以上の溶媒」を含む点で共通する。 (オ) その一方で、本願発明は、「ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まず、」「フルオロポリマー、」「導電性ポリマー、」「1つ以上の添加剤、および1つ以上の溶媒からなる」のに対し、引用発明は、「ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)」を含むかどうか、また、「少なくとも1つの正孔輸送材料」、「少なくとも1つのフルオロポリマー」、「液状担体」以外に、「1つ以上の添加剤」を含むかどうか、さらに、別のものを含むかどうかが不明である点で、両者は相違する。 ウ 本願発明の「フルオロポリマー」が「式Iのフルオロポリマー、 【化5】 [図:0001425052000011.jpg] (ここで、 Xは、H、Li、NaおよびKからなる群から選択され、 xは0.01~0.99であり、 yは0.99~0.01であり、かつx+y=1、nは1より大きい整数である)」であるという特定事項について (ア) 引用発明では、「フルオロポリマー」について、特段の限定はない。 (イ) したがって、「フルオロポリマー」について、本願発明は、以下の「式I」 [図:0001425052000012.jpg] 「(ここで、Xは、H、Li、NaおよびKからなる群から選択され、xは0.01~0.99であり、yは0.99~0.01であり、かつx+y=1、nは1より大きい整数である)」で示されるのに対し、引用発明は、特段の限定がない点で、両者は相違する。 エ 本願発明の「導電性ポリマー」が「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジチアチオフェン)(PEDTT)、または「アルキル」がC1-12アルキルであるポリ(3-アルキル)チオフェン、またはポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)から選択される導電性ポリマー、」であるという特定事項について (ア) 引用発明では、「正孔輸送材料」について、特段の限定はない。 (イ) したがって、「導電性ポリマー」について、本願発明は、「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジチアチオフェン)(PEDTT)、または「アルキル」がC1-12アルキルであるポリ(3-アルキル)チオフェン、またはポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)から選択される」のに対し、引用発明は、特段の限定がない点で、両者は相違する。 オ 本願発明の「添加剤」が「Zonyl(登録商標) FSA、Zonyl(登録商標) FS-300、Dynol(登録商標) 604、Capstone(登録商標) FS-83、CoatOSil(登録商標) 1220、CoatOSil(登録商標) 1211、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸からなる群から選択される1つ以上の添加剤、」であるという特定事項について (ア) 前記イ(オ)で説示したとおり、引用発明は、添加剤を含んでいるのかが不明である。 (イ) したがって、本願発明は、「Zonyl(登録商標) FSA、Zonyl(登録商標) FS-300、Dynol(登録商標) 604、Capstone(登録商標) FS-83、CoatOSil(登録商標) 1220、CoatOSil(登録商標) 1211、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸からなる群から選択される1つ以上の添加剤」を含むのに対し、引用発明は、当該添加剤を含んでいるのかが不明である点で、両者は相違する。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「フルオロポリマー、導電性ポリマー、および1つ以上の溶媒を含む、ポリマーブレンド」である点。 <相違点1> 本願発明は、「ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まず、」「フルオロポリマー、」「導電性ポリマー、」「1つ以上の添加剤、および1つ以上の溶媒からなる」のに対し、引用発明は、「ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)」を含むかどうか、また、「少なくとも1つの正孔輸送材料」、「少なくとも1つのフルオロポリマー」、「液状担体」以外に、「1つ以上の添加剤」を含むかどうか、さらに、別のものを含むかどうかが不明である点。 <相違点2> 「フルオロポリマー」について、本願発明は、以下の「式I」 [図:0001425052000013.jpg] 「(ここで、Xは、H、Li、NaおよびKからなる群から選択され、xは0.01~0.99であり、yは0.99~0.01であり、かつx+y=1、nは1より大きい整数である)」で示されるのに対し、引用発明は、特段の限定がない点。 <相違点3> 「導電性ポリマー」について、本願発明は、「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジチアチオフェン)(PEDTT)、または「アルキル」がC1-12アルキルであるポリ(3-アルキル)チオフェン、またはポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)から選択される」のに対し、引用発明は、特段の限定がない点。 <相違点4> 本願発明は、「Zonyl(登録商標) FSA、Zonyl(登録商標) FS-300、Dynol(登録商標) 604、Capstone(登録商標) FS-83、CoatOSil(登録商標) 1220、CoatOSil(登録商標) 1211、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸からなる群から選択される1つ以上の添加剤」を含むのに対し、引用発明は、当該添加剤を含んでいるのかが不明である点。 3 判断 (1) 相違点2について 引用発明から出発した当業者は、有機電子デバイスに使用されるインク組成物が含むフルオロポリマーとして具体的に何を使用するのか決定する必要がある。そこで、引用文献1の記載を見ると、引用文献1の【0072】には、「本発明の使用に適したフルオロポリマーは、部分フッ化ポリマー又は全フッ化ポリマーであることができる」と記載されているところ、引用文献1の「高い透明性…を保持しつつ」(【0004】)という記載や、薄膜中にフルオロポリマーを含有させることにより透過率が向上することが読み取れる表3(【0140】)によれば、当業者は、引用発明では、透過率の観点から、インク組成物にフルオロポリマーを含めていると認識できる。そして、フルオロポリマーは一般に透明性が高いことが技術常識である(例えば、特表2011-513976号公報の【0018】の「フルオロポリマーは、靱性があり、耐薬品性で、防汚性の物質であり、広範囲の光スペクトルにわたって高い光透過性を有し、優れた保護性外側層を形成することが知られている」という記載や、国際公開第2011/030858号の[0044]の「フッ素樹脂は、耐候性、耐熱性、耐水蒸気透過性、透明性等に優れるため、太陽光線等による素材の劣化を防ぎ、長期耐久性を有する集光フィルムとすることができる。また、光透過性にも優れている。」という記載を参照。)ことも勘案すると、当業者は、引用発明のフルオロポリマーとして、透過率に優れた一般的なフルオロポリマーを使用することができることを認識できる。 そして、引用発明から出発した当業者は、引用発明と同様の素子の同様の層に用いられるフルオロポリマーを含む組成物に関する引用文献2技術事項に接することができる。 そうすると、引用発明において、フルオロポリマーとして、引用文献2技術事項に示されたフッ素原子を含むマトリックス高分子を使用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、引用発明において使用された引用文献2技術事項のマトリックス高分子は、R7、R8およびR9が全てフッ素原子であり、R3、R4、R5およびR6は、フッ素原子であり、RlおよびRmは、フッ素原子であり、yは、0であり、zは、2であり、s:t比が9:1~1:9であるから、本願発明の式Iのフルオロポリマーに相当し、当業者は、相違点2に係る本願発明の構成に至ることとなる。 (2) 相違点1、3、4について 相違点1、3、4についてまとめて検討する。 ア 引用発明から出発した当業者は、有機電子デバイスに使用されるインク組成物が含む正孔輸送材料として具体的に何を使用するのか決定する必要があるところ、有機電子デバイスに使用される組成物の正孔輸送材料に関する引用文献1技術事項に接することができる。 そうすると、引用発明において、正孔輸送材料として、引用文献1技術事項に示された共役ポリマーを使用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、そのようにして使用された引用文献1技術事項の [図:0001425052000014.jpg] の繰返し単位を含むポリチオフェンであり、基R1が水素(H)である共役ポリマーは、本願発明の「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)」に相当する。 以上のようにして、引用発明から出発した当業者は、相違点3に係る本願発明の構成に至る。 イ 引用発明は、有機電子デバイスに使用される、正孔輸送材料を含むインク組成物であるところ、引用発明から出発した当業者は、同じ有機光電変換素子の技術分野における正孔輸送層に関する「有機光電変換素子の正孔輸送層を製造するための組成物が、導電性ポリマー及びZonyl FS-300等の界面活性剤を含むこと」という周知技術(前記1(3)エ参照。)に接することができる。 そうすると、引用発明において、上記周知技術を採用して、正孔輸送層を形成するために用いられるインク組成物を、ポリマー性である正孔輸送材料(前記2(1)イ(イ)で検討したとおり、導電性ポリマーである。)に加えて、Zonyl FS-300等の界面活性剤を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 以上のようにして、引用発明から出発した当業者は、相違点4に係る本願発明の構成に至る。 ウ そして、引用文献1技術事項では、「共役ポリマーは、ドープされていなくてもよい」のであるから、前記アのとおり、引用発明において、正孔輸送材料として、引用文献1技術事項に示された共役ポリマーを使用するに際して、一般的にドーパントとして用いられるポリ(スチレンスルホン酸)を含むように構成する必要はない。 そうすると、前記アで説示したように、引用発明において、正孔輸送材料として、引用文献1技術事項に示された共役ポリマーを使用する際に、ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まないように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、「正孔輸送材料」、「フルオロポリマー」及び「液状担体」を含む引用発明を、前記イで説示したように周知技術を適用して界面活性剤を含むものとする際に、材料コストの低減の観点を踏まえ、「正孔輸送材料」、「フルオロポリマー」及び「液状担体」と界面活性剤以外のものを含まないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 このようにして構成された「インク組成物」は、ポリ(スチレンスルホン酸)またはポリ(スチレンスルホン酸塩)を含まず、「正孔輸送材料」、「フルオロポリマー」、「液状担体」及び界面活性剤からなるものであるから、当業者は、引用発明、引用文献1技術事項及び周知技術に基づいて、本願の相違点1に係る構成に至ることとなる。 4 本願発明の効果について 前記相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明の効果は、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が引用発明、引用文献1技術事項、引用文献2技術事項及び周知技術から見て、予測困難な効果であるとはいえないし、格別顕著な効果であるともいえない。 5 請求人の主張について (1) 請求人は、令和6年12月24日提出の意見書において、以下の点を主張している。 (主張1)引用文献1には、フルオロポリマーがPVDF、PVDF-HPFから選択されることが開示されており、フルオロポリマーの構造には、-OM、-SO3M、-CO2M、スルホンイミド、ホスホン酸及び/又はリン酸基を含まないことが開示されているところ、本願発明の式Iのフルオロポリマーは、-SO3Mを含むのであるから、本願発明の式Iのフルオロポリマーと引用文献1に開示された材料とは化学構造が実質的に異なるものであるとともに、引用文献1の材料では-SO3Mの存在を排除しているため、引用発明に引用文献2の-SO3Mを含む構造は組み合わせられない。 (主張2)引用文献1には、正孔輸送材料がドーパントを有してもよいことが開示されており、更に実施例ではドーパントとしてポリ(スチレンスルホン)酸(PSS)、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等が開示されているから、引用文献1の技術とドーパントを使用していない本願発明とは異なる。 (主張3)引用文献1には、液状担体は、水性又は非水性であることができること及び有機溶媒、例えば、非プロトン性溶媒を使用することができることが開示されており、好ましい溶媒が非プロトン性非極性溶媒であることが教示されているといえるから、実施例における好ましい溶媒が水又はアルコール(プロトン性溶媒)である本願発明とは異なる。 (主張4)引用文献2の請求項1には、フッ素系界面活性剤と金属酸化物ナノ粒子を含むことが記載されており、引用文献2においては、これらが必須成分であるといえるから、金属酸化物ナノ粒子が含まれておらず、フッ素系界面活性剤を含む必要がない本願発明とは異なる。 (主張5)引用文献2には、電荷輸送性薄膜のイオン化ポテンシャルを調節することを目的として、電子受容性ドーパント物質を含んでも良いことが記載されているところ、電子受容性ドーパントが含まれていない本願発明とは異なる。 (主張6)引用文献2には、アルコキシシランを添加することが開示されているところ、アルコキシシランを含む必要がない本願発明とは異なる。 (主張7)引用文献3の正孔取り出し層塗布液や引用文献5の導電性ポリマー組成物は、本願発明とは異なる。 (2) しかしながら、以下のとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。 (主張1について) 引用文献1の【0079】には、「フルオロポリマーは、-OM、-SO3M、及び/又は-CO2M(式中、Mは、H+又はアルカリ金属イオン、例えば、Na+、Li+、K+、Rb+、Cs+等、又はアンモニウム(NH4+)であることができる)を含んでもよいし、又は、含まなくてもよい。」と記載されているところ、引用発明の技術思想では、フルオロポリマーが-SO3Mを含むことは排除していない。したがって、前記3(1)で説示したように、引用発明において、フルオロポリマーとして、引用文献2技術事項に示されたフッ素原子を含む高分子マトリックスを使用するに際して、請求人の主張するような阻害要因はない。 (主張2について) 前記3(2)ウで説示したとおり、引用文献1技術事項では、「共役ポリマーは、ドープされていなくてもよい」のであるから、引用発明において、正孔輸送材料として、引用文献1技術事項に示された共役ポリマーを使用するに際して、ポリ(スチレンスルホン酸)や銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等のドーパントを含むように構成する必要はない。 (主張3について) 本願発明では、「溶媒」について、「1つ以上の溶媒」としか特定されておらず、水又はアルコール(プロトン性溶媒)であることは特定されていないから、主張3は本願発明の構成に基づくものではない。 (主張4について) 前記3(1)で説示したとおり、引用発明から出発した当業者は、正孔輸送層に用いることのできるフルオロポリマーの材料に着目して、引用文献2技術事項に接することとなるところ、金属酸化物ナノ粒子の有無によらず、マトリックス高分子のみに着目して引用文献2技術事項を把握することができる。 また、本願発明における「添加物」には、「Zonyl(登録商標) FS 300」等のフッ化系界面活性剤も選択肢として含まれているところ、本願発明では、フッ素系界面活性剤を含む必要がないという主張は、本願発明の構成に基づくものではない。 (主張5について) 引用文献2の[0047]の「本発明の電荷輸送性組成物には、これを用いて得られる電荷輸送性薄膜のイオン化ポテンシャルを調節することを目的として、電子受容性ドーパント物質を含んでいてもよい」との記載によれば、電子受容性ドーパント物質を添加する構成は、任意の構成であり、必須の構成ではないところ、当該記載は、引用文献2技術事項の認定や、前記3(1)及び(2)ウの判断を左右するものではない。 (主張6について) 引用文献2の[0073]の「本発明の組成物は、アルコキシシランを含んでいてもよい」との記載によれば、アルコキシシランを添加する構成は、任意の構成であり、必須の構成ではないところ、当該記載は、引用文献2技術事項の認定や、前記3(1)及び(2)ウの判断を左右するものではない。 (主張7について) 請求人の主張は、本願発明と界面活性剤に関する周知技術を認定するために引用した引用文献3及び5に記載された発明との相違を主張するにとどまり、引用発明に周知技術を適用することは当業者が容易になし得たことであるとの前記3(2)イの判断を左右するものではない。 6 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1技術事項、引用文献2技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-013246

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