2023-012890
基板
- 審判番号
- 2023-012890
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-096955外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月02日
- 審決日
- 2024年03月05日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H05K) / P18 .56 -Z (H05K) / P18 .57 -Z (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 23項目
第1 手続の経緯
本願は、令和元年5月23日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年12月12日付け 拒絶理由通知書
令和 5年 2月 3日 意見書・手続補正書
5月 2日付け 拒絶査定
8月 2日 審判請求書・手続補正書
以下では、令和5年5月2日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年8月2日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年2月3日に提出された手続補正書にて補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記延焼停止用孔が、前記第1方向において、前記第1実装部と前記第2実装部との間の中心よりも前記第2実装部の近くに配置されている、基板。
【請求項2】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の前記延焼停止用孔を備える、基板。
【請求項3】
複数の前記延焼停止用孔が、
前記第1方向における前記第2実装部の近くに位置する第1の前記延焼停止用孔と、
前記第1の延焼停止用孔よりも前記第1実装部から遠くに位置する少なくとも1つの第2の前記延焼停止用孔と
を含む、請求項2の基板。
【請求項4】
複数の前記延焼停止用孔が、
前記第1方向における前記第1実装部および前記第2実装部の中心を通り前記第2方向に沿って延びる中心線に沿って、前記第2方向に間隔を空けて配置されている2つの第2の前記延焼停止用孔を含む、請求項3の基板。
【請求項5】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記延焼停止用孔が、前記第2方向に沿って延びる細長い長孔で構成されている、基板。
【請求項6】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と、
前記一対のパターンのいずれか一方における前記第1方向の前記第1実装部と前記第2実装部との間に設けられ、前記板厚方向に貫通して、前記一対のパターンのいずれか一方を前記第1方向において相互に独立した第1パターンおよび第2パターンに分断する補助延焼停止用孔と、
前記補助延焼停止用孔を前記第1方向に横切って、前記第1パターンおよび前記第2パターンを接続するジャンパー部材と
を備え、
前記補助延焼停止用孔の前記第2方向の長さが、前記ジャンパー部材の前記第1方向の長さよりも大きい、基板。
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示すために当審で付した。
【請求項1】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記延焼停止用孔が、前記第1方向において、前記第1実装部と前記第2実装部との間の中心よりも前記第2実装部の近くに配置されている、基板。
【請求項2】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の前記延焼停止用孔を備える、基板。
【請求項3】
複数の前記延焼停止用孔が、
第1の前記延焼停止用孔と、
前記第1の延焼停止用孔よりも前記第1実装部から離れて位置する少なくとも1つの第2の前記延焼停止用孔と
を含む、請求項2の基板。
【請求項4】
複数の前記延焼停止用孔が、
前記第1方向における前記第1実装部および前記第2実装部の中心を通り前記第2方向に沿って延びる中心線に沿って、前記第2方向に間隔を空けて配置されている2つの第2の前記延焼停止用孔を含む、請求項3の基板。
【請求項5】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
を備え、
前記延焼停止用孔が、前記第2方向に沿って延びる細長い長孔で構成されている、基板。
【請求項6】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と、
前記一対のパターンのいずれか一方における前記第1方向の前記第1実装部と前記第2実装部との間に設けられ、前記板厚方向に貫通して、前記一対のパターンのいずれか一方を前記第1方向において相互に独立した第1パターンおよび第2パターンに分断する補助延焼停止用孔と、
前記補助延焼停止用孔を前記第1方向に横切って、前記第1パターンおよび前記第2パターンを接続するジャンパー部材と
を備え、
前記補助延焼停止用孔の前記第2方向の長さが、前記ジャンパー部材の前記第1方向の長さよりも大きい、基板。
【請求項7】
第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端から離れて配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に、前記第1方向に沿って間隔を空けて配置され、板厚方向に貫通する複数の延焼停止用孔と
を備え、
複数の前記延焼停止用孔が、
第1の前記延焼停止用孔と、
前記第1方向において前記第1の延焼停止用孔よりも前記第1実装部から離れて位置する少なくとも1つの第2の前記延焼停止用孔と
を含む、基板。
【請求項8】
複数の前記延焼停止用孔が、
前記第1方向における前記第1実装部および前記第2実装部の中心を通り前記第2方向に沿って延びる中心線に沿って、前記第2方向に間隔を空けて配置されている2つの第2の前記延焼停止用孔を含む、請求項7の基板。
2 本件補正の目的
本件補正は、新たな請求項7及び8を追加する補正事項を含むところ、このような補正は、補正前後で請求項の数が増加する、いわゆる、増項補正に該当するものである。
(1)最初に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるかについて検討する。
補正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するというためには、補正後の請求項が補正前の請求項の発明特定事項を限定した関係にあることが必要であり、その判断に当たっては、補正後の請求項が補正前のどの請求項と対応関係にあるのかを特定し、その上で、補正後の請求項が補正前の当該請求項の発明特定事項を限定するかどうかを判断すべきものと解されるところ、増項補正の適否についても同様の判断基準に基づいて判断すべきものといえる。
以上を前提に、本件補正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するかどうかについて判断する。
ア 本件補正前の請求項1、2、5及び6について
前記1(1)及び(2)によれば、本件補正後の請求項1、2、5及び6は、記載に変更がないから、それぞれ本件補正前の請求項1、2、5及び6に対応することは明らかである。
イ 本件補正前の請求項3及び4について
(ア)前記1(1)及び(2)によれば、本件補正後の請求項3が請求項2を引用する関係は、補正前の請求項2及び3と同じであり、加えて、補正後の請求項3は、「第1の前記延焼停止用孔」と「第2の延焼停止用孔」の位置について特定するものであるから、本件補正後の請求項3は、本件補正前の請求項3に対応するといえる。
(イ)本件補正後の請求項4は、記載に変更がなく、本件補正後の請求項4が請求項3を引用する関係は、補正前の請求項3及び4と同じであるから、前記(ア)を踏まえると、本件補正前の請求項4に対応するといえる。
(ウ)本件補正後の請求項7は、補正前の請求項2と同様の構成を備え、かつ、「第1の前記延焼停止用孔」と「第2の前記延焼停止用孔」の位置について特定するものであるから、本件補正前の請求項3に対応するといえる。
(エ)本件補正後の請求項8は、補正前の請求項4と同様の記載であって、補正後の請求項7を引用しているから、前記(ア)~(ウ)を踏まえれば、本件補正前の請求項4に対応するといえる。
(オ)前記(ア)及び(ウ)によれば、本件補正後の請求項3及び7は、いずれも本件補正前の請求項3に対応するといえる。
しかしながら、本件補正は、(A)本件補正前の請求項3が、多数項引用形式で記載された発明であって、本件補正後の請求項3及び7が、前記多数項引用形式で記載された発明の一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、(B)本件補正前の請求項3が、構成要件が択一的なものとして記載された発明であって、本件補正後の請求項3及び7が、前記構成要件が択一的なものとして記載された発明の一つの請求項を、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合、のいずれにも該当しない。
さらに、本件補正後の請求項3及び7は、「第1の前記延焼停止用孔」について、本件補正前の請求項3に記載された「前記第1方向における前記第2実装部の近くに位置する」との構成を削除している。
したがって、本件補正後の請求項3及び7は、いずれも補正前の請求項3の発明特定事項を限定したものとは認められない。
(カ)前記(オ)によれば、本件補正前の請求項3を、本件補正後の請求項3及び7とする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
(2)本件補正前の請求項3に対する本件補正の増項に係る部分は、同項1号に掲げる「請求項の削除」にも、同項3号に掲げる「誤記の訂正」にも、同項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」にも該当しない。
3 本件補正の適否
前記2のとおりであるから、本件補正には、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも該当しないものが含まれる。
したがって、本件補正は同項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたため、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項2に記載されたとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のため、本願発明を以下のようにA~Gに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項2】
A 第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、
B 前記一対のパターンの各々に接続された状態で樹脂製品を実装可能な第1実装部と、
C 前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、
D 前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する延焼停止用孔と
E を備え、
F 前記第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の前記延焼停止用孔を備える、
G 基板。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1、2及び5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2011-82296号公報
引用文献2.実願昭56-143541号(実開昭58-49460号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
第5 文献の記載事項
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原査定で引用した特開2011-82296号公報(以下「引用文献1」という。)及び原査定で引用した実願昭56-143541号(実開昭58-49460号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)の記載内容は、それぞれ以下の1及び2のとおりである。
1 引用文献1の記載内容
(1)引用文献1の記載
引用文献1には以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
ア 「【0001】この発明は、ヒューズを実装したAC電源が投入される電子部品実装プリント配線基板に関するものである。」
イ 「【0004】従来の特許文献1の図1においては異極間パターンが平行に走っている箇所にのみスリットが形成されており、それ以降については特別触れられていない。しかしながら、この2本のパターンは一対で構成されるものであるから同図のように一対のパターンのそれぞれがスリットの近傍から互いに離間する方向に走るように配置されることは少ない。一方、異極間パターンが同方向に走る場合に関しては上記発明では特別触れられておらず、上記発明における手法のみでトラッキングを防止しようとした場合、異極間全てに対してスリットを形成する必要があると解釈できる。もしくは「電極間にスリットを設ける」といった記載から電極間のみにスリットを形成するものであり、パターン間におけるトラッキング防止に関しては配慮されていないとも解釈可能である。このイメージを図4(a)(b)に示す。図4(a)のように異極間全てに対してスリットを形成した場合、プリント配線基板強度を著しく低下させる恐れ、プリント配線基板の反りを助長させる恐れがある。図4(b)のように電極間のみにスリットを設けた場合、一般的には電極部以外はソルダレジストにてコートされているが、これはトラッキングに対して高い保護機能を持つものではないため、トラッキングに対する保護としては低い。また、電極・パターン間に防湿材を塗布する方法では半田付け後の電気検査完了後に防湿材塗布工程を追加する必要があり、また乾燥時間も設ける必要がある。この工程においてはコネクター部への防湿材付着・塗布ムラ等が懸念され、大幅なコストUPになると共に製造品質確保にも十分な注意を払う必要がある。」
ウ 「【0009】実施の形態1.図1は発明の実施の形態1の電子部品実装プリント配線基板の構成を示すものである。プリント配線基板11上には各パターン1~5及び図示されない多数のパターンが形成され、回路配線が形成されている。このプリント配線基板11にはヒューズ12をはじめとする各電子部品が実装され、パターンと共に電気回路を構成している。AC電源投入口をコネクター13としているが各電極を独立して投入する端子・プラグコード配線の半田付け等であっても構わない。コネクター13にて電子部品実装プリント配線基板に投入された電流はパターン1・2及びその下流の3・4・5を通って各電子部品へ供給される。通常の基板構成において下流の電子部品のショート等により発生する過電流又は短絡電流が流れた時の機器、部品の焼損、火災などを防ぐ目的で電源回路の最上流にヒューズ12が配置される。また同様に、雷等の瞬時的な過電圧に対して保護するためのバリスター14、ノイズフィルタを構成するXコンデンサ15、コモンモードチョークコイル16などが配置される。ヒューズ12の上流側すなわち電源投入口側のパターンを1、下流側のパターンを3、パターン1、3と対になる異極のパターンを2としている。また、パターン4、5はその下流のパターンである。本発明は、ヒューズの上流側のパターン1と対になる異極のパターン2の間にスリット6を設けていることを特徴としている。」
エ 図1
「[図:0001410069000001.jpg]」
オ 図4
「[図:0001410069000002.jpg]」
(2)引用発明の認定
前記(1)の記載から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~hに分説し、「分説a」のようにして参照する。
「a AC電源が投入される電子部品実装プリント配線基板であって、b プリント配線基板11上には各パターン1~5が形成され、回路配線が形成され、c プリント配線基板11には各電子部品が実装され、パターンと共に電気回路を構成し、d AC電源投入口をコネクター13とし、コネクター13にて電子部品実装プリント配線基板に投入された電流はパターン1・2及びその下流の3・4・5を通って各電子部品へ供給され、e 通常の基板構成において、ヒューズ12、バリスター14、Xコンデンサ15、コモンモードチョークコイル16などが配置され、f ヒューズ12の上流側すなわち電源投入口側のパターンを1、下流側のパターンを3、パターン1、3と対になる異極のパターンを2とし、g ヒューズの上流側のパターン1と対になる異極のパターン2の間にスリット6を設けているh 基板。」
2 引用文献2の記載内容
(1)引用文献2の記載
引用文献2には以下の記載がある。
ア 明細書2頁2行~3頁4行
「プリント配線板は変形されることなどにより印刷パターン(以下単にパターンという。)にき裂が生じることがある。このき裂の幅とパターンに印加されている電圧との関係によつてはき裂を挟んで放電することがあり、この放電によつて発熱し、基板を炭化することがある。そして、この炭化部を通じて電流が流れるから、さらに炭化部が拡大され、隣り合う他のパターン近傍まで炭化部が進むと他のパターンとの間で放電を生じることがあった。特に、隣り合うパターン間の電位差が大きい場合には上記放電が起り易く、この結果異常発熱して燃焼したり、この燃焼や短絡事故により電気部品を損傷したりするものであつた。このため、従来においてはパターン間にスリツトを設けることが提案されているが、このようなスリツトを設けることは配線板の機械的強度を弱くする欠点があった。これに対して、第1図のようにパターン(1),(1)間に複数個のスリツト(2),…を連続的に設けることによつて機械的強度をある程度保つことも考えられるが、このものにおいてはスリツト(2) ,…のない部分(3) ,…の近傍のパターンにき裂を生じると、やはり隣り合うパターン間で放電する虞があるため十分ではなかった。」
(当審注:上記アには、「第1図のようにパターン(1),(1)間に複数個のスリツト(2),…を連続的に設けることによって機械的強度をある程度保つことも考えられる」と記載されているが、第1図を参照すると、該記載は「第1図のようにパターン(1),(2)間に複数個のスリツト(3),…を連続的に設けることによつて機械的強度をある程度保つことも考えられる」の誤記であると認められる。)
イ 第1図
「[図:0001410069000003.jpg]」
(2)周知技術の認定
前記(1)の記載によれば、引用文献2には以下の周知技術A及びBが記載されていると認められる。
周知技術A
「放電によって基板が炭化することがあり、この炭化部を通じて電流が流れることによって炭化部が拡大され、炭化部が進むと他のパターンとの間で放電を生じるため、その対処として、パターン間にスリットを設けること。」
周知技術B
「スリットを設けると配線板の機械的強度を弱くする欠点があること」から、スリットのない部分に放電の恐れが残る課題はあるものの、「パターン間にスリットのない部分を設けることによって、複数個のスリットを連続的に設ける構造として、配線板の機械的強度を保つこと。」
第6 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下の1~6のとおりである。
1 発明特定事項A、E及びGについて
(1)引用発明では、「電子部品実装プリント配線基板に投入された電流はパターン1・2及びその下流の3・4・5を通って各電子部品へ供給され」る(分説d)。ここで、「パターン1・2」から「下流の3・4・5」へ電流が流れる方向を「第1方向」と称することは任意である。
また、図1の記載を参照すると、引用発明の「パターン1」及び「パターン3」からなるパターン(以下「パターンA」という。)は、該「第1方向」へ沿った方向へ延びており、引用発明の「パターン2」も同様に該「第1方向」へ延びている。
(2)引用発明では、「パターン1、3と対になる異極のパターンを2」としているから(分説f)、「パターンA」(前記(1))及び「パターン2」は「一対のパターン」となる。
ここで、図1の記載を参照すると、該「一対のパターン」が「第1方向」(前記(1))に交差する方向に間隔を空けて配置されることは明らかであり、「第1方向」に交差する方向を「第2方向」と称することは任意である。
(3)引用発明において、図1の記載を参照すると、「AC電源投入口」である「コネクター13」(分説d)が接続される位置は、「第1方向」(前記(1))の一端であるといえる。
(4) 前記(1)~(3)によれば、引用発明の「AC電源」は、本願発明の「電力供給源」に相当し、本願発明と引用発明とは「第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターン」を備える点で一致する。
2 発明特定事項B、E及びGについて
引用発明において、「コネクター13にて電子部品実装プリント配線基板に投入された電流はパターン1・2及びその下流の3・4・5を通って各電子部品へ供給され」る(分説d)から、「コネクター13」は、「一対のパターン」(前記1(2))の各々に接続されると認められる。ここで、「コネクター13」が実装されている部分を「第1実装部」と称することは任意である。
また、「コネクター13」は、「部品」であるといえる。
以上によれば、本願発明と引用発明とは「前記一対のパターンの各々に接続された状態で部品を実装可能な第1実装部」を備える点で共通するが、
該「部品」について、本願発明が「樹脂製品」であるのに対して、引用発明では「樹脂製品」であるか不明である。
3 発明特定事項C、E及びGについて
(1)引用発明では、「コネクター13にて電子部品実装プリント配線基板に投入された電流はパターン1・2及びその下流の3・4・5を通って各電子部品へ供給され」る(分説d)。
そして、「通常の基板構成」において「バリスター14」が配置される(分説e)から、「バリスター14」は、電流が供給される「電子部品」であり、一対のパターン(前記1(2))の各々に接続されると認められる。
ここで、「バリスター14」が実装される部分を「第2実装部」と称することは任意である。
(2)引用発明において、図1を参照すると、前記1(3)で示した「一端」と該「第2実装部」との位置関係について、該「第2実装部」が、「第1実装部」(前記2)よりも該「一端」の遠くに配置されることは明らかである。
(3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部」を備える点で一致する。
4 発明特定事項D、E及びGについて
引用発明では、「パターン1と対になる異極のパターン2の間にスリット6を設けて」(分説g)おり、図1を参照すると、「スリット6」は「第1実装部」(前記2)と「第2実装部」(前記3(1))の間に配置されている。また、スリットは、通常、基板の板厚方向に貫通する孔であると認められる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する孔」を備える点で共通するが、該「孔」について、本願発明は「延焼停止用孔」であるのに対して、引用発明では「延焼停止用孔」であるか不明である。
5 発明特定事項F及びGについて
引用発明において、「前記第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の前記延焼停止用孔を備える」ことは特定されていない。
6 前記1~5によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「第1方向に沿って延びかつ前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けてそれぞれ配置され、前記第1方向の一端が電力供給源に電気的に接続された一対のパターンと、前記一対のパターンの各々に接続された状態で部品を実装可能な第1実装部と、前記第1方向において前記第1実装部よりも前記一端の遠くに配置され、前記一対のパターンの各々に接続された状態で電子部品を実装可能な第2実装部と、前記第1方向における前記第1実装部と前記第2実装部との間でかつ前記第2方向における前記一対のパターン間に配置され、板厚方向に貫通する孔とを備える、基板。」
〈相違点1〉
「第1実装部」に実装可能な「部品」について、本願発明が「樹脂製品」であるのに対して、引用発明では「樹脂製品」であるか不明である点。
〈相違点2〉
「孔」について、本願発明は「延焼停止用孔」であるのに対して、引用発明では「延焼停止用孔」であるか不明である点。
〈相違点3〉
本願発明は、「前記第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の前記延焼停止用孔を備える」のに対し、引用発明ではこの点について特定されていない点。
第7 判断
1 相違点1についての判断
引用発明の「第1実装部」(前記第6、2)には、コネクタが実装されるところ、樹脂製品のコネクタは技術常識であるから、引用発明の「第1実装部」は樹脂製品を実装可能であるといえる。そうすると、当該相違点1は実質的な相違点ではない。
2 相違点2についての判断
「基板が炭化することがあり、この炭化部を通じて電流が流れることによって炭化部が拡大され、炭化部が進むと他のパターンとの間で放電を生じるため、その対処として、パターン間にスリットを設けること」は、周知技術(前記第5、2(2))であり、「炭化部が拡大され、炭化部が進む」ことへの対処は、「延焼停止用」であるといえるから、パターン間に設けられたスリットは「延焼停止用」として用いることができるものである。
そうすると、引用発明において、パターン間に設けられた「スリット6」は「延焼停止用孔」として用いることができるといえるから、当該相違点2は実質的な相違点ではない。
3 相違点3についての判断
「パターン間にスリットのない部分を設けることによって、複数個のスリットを連続的に設ける構造として、配線板の機械的強度を保つこと」は周知技術(前記第5、2(2))であり、引用発明は、【0004】に示されるように、基板の機械的強度を考慮するものであるから、引用発明の「スリット6」の位置において、該周知技術を採用し、スリットのない部分を設けて、複数個のスリットを連続的に設ける構造となるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうした場合、引用発明において、スリットが第1方向(前記第6、1(1))に沿って間隔を空けて配置された構成となることは明らかである。
4 効果についての判断
引用発明において、パターン間に複数個のスリットを連続的に設けたものは、本願発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本願発明の効果は格別のものではない。
5 請求人の主張についての判断
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(1)請求人は、本願発明について、次のア及びイのように主張している。
ア 審判請求書5頁17行~18行
「請求項2の発明は、次の構成を備える。・第1方向に沿って間隔を空けて配置された複数の延焼停止用孔を備える。」
イ 審判請求書5頁24行~6頁7行
「引用文献1の発明は、要約の解決手段の欄に示されているように、トラッキングの発生を防止することを目的としているのに対し、本願発明は、トラッキングの発生を防止することではなく、トラッキング等の発生により基板が延焼した場合における延焼の停止を目的としており、発明が解決する課題が全く異なっている。このような引用文献1に基づいて本願発明を得ることは、不可能または少なくとも困難である。パターン間に複数のスリットを設けることが周知技術であったとしても、「基板の延焼停止」を目的として、複数のスリットを所定方向に沿って間隔を開けて配置することは、引用文献1~5のいずれにも記載されておらず、当業者にとって容易ではない。」
(2)前記(1)アについては、前記3で示したとおり、引用発明において「スリット6」を複数個の連続したスリットとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、前記(1)イについては、前記2で示したとおり、引用発明の「スリット6」は「延焼停止用」として用いることができるといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
6 以上より、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
前記第7のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-012890