特許拒絶査定不服審判
2023-012768
愛玩動物マッチングシステム及び愛玩動物マッチング方法
- 審判番号
- 2023-012768
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-009740
- 請求日
- 2023年07月31日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アニコム ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】本多 一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 梶尾 誠哉
- 審判官 木方 庸輔
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 9740「愛玩動物マッチングシステム及び愛玩動物マッチング方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月 4日出願公開、特開2023-108554〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年1月25日の出願であって、同年11月30日付けの拒絶理由の通知に対し、令和5年2月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年4月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年7月31日に審判請求がされると同時に手続補正がされた。その後、当審における令和6年2月20日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知に対し、同年4月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和6年4月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
[本願発明]
譲受人がインターネットを介して愛玩動物を閲覧する閲覧手段と、
譲受人が引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)及び日時を予約する予約手段と、
引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)までの愛玩動物の輸送を手配する輸送調整手段とを有し、
譲受人が指定した引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)及び日時に基づいて、愛玩動物の健康診断を手配する健康診断調整手段をさらに備える
ことを特徴とする愛玩動物マッチングシステム。
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明についての当審拒絶理由は、概略、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1 特開2021-9599号公報
第4 引用文献1の記載、引用発明等
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由に引用され、本願の出願日前である令和3年1月28日に公開された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の譲渡支援システム及び情報支援方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1のサイトにおいては、動物を譲渡できるのは動物病院に限られていた。里親希望者は譲渡する動物を登録した動物病院までその動物を引き取りに行かねばならず、これがマッチングの成立を阻む要因となっていた。また、特許文献1及び2に記載されたような動物の個体管理の技術が存在するものの、動物と譲受希望者とのマッチングには活用されていなかった。」
「【0029】
1.構成
図1は本実施形態に係る譲渡支援システム1の全体構成を例示するブロック図である。譲渡支援システム1は、犬及び猫等の動物(又は生体)の譲渡を支援するシステムである。この実施形態において、譲渡の対象となる動物は、一般的な種ではなく特定の個体を指す。また、この実施形態において、「譲渡」とは、譲渡及び貸与を含む。譲渡支援システム1は、譲渡者端末10、マッチングサーバ20、電子カルテサーバ30、獣医師端末40a、獣医師端末40b(第2端末の一例)、及び譲受者端末50を備える。譲渡支援システム1において、動物の譲渡又は貸与を希望する者(以下、説明を簡単にするため単に「譲渡希望者」という)は、マッチングサーバ20にその動物を登録する。動物の譲受又は借用を希望する者(以下、説明を簡単にするため単に「譲受希望者」という)は、マッチングサーバ20にアクセスし、登録されている動物の中から動物を選択する。マッチングが成立すると、マッチングサーバ20はマッチングに関与する獣医師又は動物病院を決定する。譲受希望者は、その獣医師の立ち会いの下、又はその動物病院において、動物の引き渡しを受ける。」
「【0031】
譲渡者端末10、電子カルテサーバ30、獣医師端末40、及び譲受者端末50(第1端末の一例)は通信回線2を介してマッチングサーバ20と通信を行う。通信回線2は、例えばインターネットや移動体通信網、電話回線、LAN(Local Area Network)などのうちの少なくとも1つを含む。」
「【0033】
獣医師端末40は、動物病院に設置された端末又は獣医師が有する端末である。この実施形態では、獣医師端末40は、情報提供端末及び関与者端末に大別される。情報提供端末は、動物の情報を譲渡支援システム1に提供する動物病院に設置された端末又は獣医師が有する端末である。情報提供端末は、主として譲渡者に関与する獣医師又は動物病院の端末である。この例では獣医師端末40aが情報提供端末に相当する。関与者端末は、動物と譲受者とのマッチングに関与する動物病院に設置された端末又は獣医師が有する端末である。「マッチングに関与する動物病院」とは、例えば、動物を譲受者に引き渡す場所となる動物病院をいい、「マッチングに関与する獣医師」とは動物を譲受者に引き渡す現場に立ち会う獣医師をいう。関与者端末は、主として譲受者に関与する獣医師又は動物病院の端末である。この例では獣医師端末40bが関与者端末に相当する。以下の説明では、獣医師端末40a(情報提供端末)と獣医師端末40b(関与者端末)とを各々区別しない場合には、これらを「獣医師端末40」と称する。」
「【0037】
図2は、マッチングサーバ20の機能構成を例示するブロック図である。マッチングサーバ20は、出力手段21、受信手段22、決定手段23、送信手段24、提供手段25、取得手段26、予測手段27、及び記憶手段28を備える。出力手段21は、動物の譲受希望者の譲受者端末50に対し、その動物に関する関連情報(以下「動物関連情報」という)を出力する。受信手段22は、譲受者端末50、動物に関心を有する意思表示を受信する。決定手段23は、譲受希望者と動物とのマッチングに関与する獣医師及び動物病院の少なくとも一方を決定する。送信手段24は、決定手段23により決定された獣医師又は動物病院に対応する獣医師端末40に対し、動物の診療記録を送信する。
・・・
【0039】
記憶手段28は、各種のデータを記憶する。この例において、記憶手段28は、動物関連情報データベースを記憶する。・・・」
「【0048】
(1)新規動物の登録
まず、譲渡対象となる動物の登録動作を説明する。まず、譲渡希望者は、譲渡者端末10を用いて、動物を譲渡する意思がある旨をマッチングサーバ20に登録する。具体的には、譲渡者端末10は、登録対象である動物(以下「新規動物」という)の動物関連情報をマッチングサーバ20にアップロードする(ステップS101)。動物関連情報は、譲渡の対象である動物に関連する情報である。動物関連情報は例えば、その動物の写真、動画像、犬種、性別、年齢、及び飼い主の氏名のうち少なくとも一部を示す。なお、譲渡者は、動物を譲渡する意思がある旨を獣医師又は動物病院に相談することができる。この場合、獣医師又は動物病院が、獣医師端末40aを介して、動物関連情報をマッチングサーバ20にアップロードしてもよい。この場合、動物関連情報には、上記に加えてマイクロチップのID又は電子カルテが含まれてもよい。また、動物関連情報は、その動物の所有者の変遷、又は診察記録を含んでもよい。マッチングサーバ20(詳細には記憶手段28)は、譲渡者端末10から受信された新規動物の動物関連情報を、動物関連情報データベースに記録する。」
「【0054】
(2)マッチング
次いで、譲渡支援システム1が行うマッチング動作を説明する。譲受希望者は、譲受者端末50を用いて、マッチングサーバ20にアクセスする。マッチングサーバ20は、動物の検索を行うためのメニュー画面を表す画面データを譲受者端末50に送信する。譲受者端末50は、この画面データが表すメニュー画面を自装置のUI部505に表示する。
【0055】
図9は、メニュー画面を例示する図である。メニュー画面には、動物関連情報の一覧が表示される。この例においては、メニュー画面には、動物関連情報のうちその動物の写真(又はサムネイル画像)が含まれる。・・・
【0060】
図12は、詳細情報の表示画面を例示する図である。図12の例では、選択された動物の、犬種/猫種、性別、年齢、予測余命、ワクチン接種歴、病歴等がUI部505に表示される。譲受希望者は、表示された動物関連情報を参照し、自身の希望に合う動物を検索する。自身の希望に合う動物が見つかった場合、譲受希望者はUI部505を用いてその動物の引き取り希望の意思表示をするためのボタンB3を選択する操作を行う。
【0061】
図8の説明に戻る。ステップS108において、譲受者端末50は、譲受希望者の操作に従い、その動物に関心を有する意思表示を示すデータをマッチングサーバ20に送信する。ステップS109において、マッチングサーバ20(詳細には決定手段23)は、マッチングに関与する獣医師又は動物病院として、動物の引き渡し場所となる獣医師又は動物病院(以下、説明を簡単にするため「対象動物病院」という)の少なくとも一方を決定する。決定手段23は、例えば、提携動物病院データベース譲受希望者データベースを参照して対象動物病院を決定する。例えば、決定手段23は、譲受希望者データベースに予め登録されている譲受希望者の住所をデータベースから読み出し、読み出された住所に最も近い動物病院を提携動物病院データベースから抽出し、この動物病院を対象動物病院として決定してもよい。
【0062】
また、対象動物病院の決定方法の他の例として、例えば、マッチングサーバ20は、動物の引き渡し場所となる動物病院の候補を複数提示し、これら複数の動物病院の中から譲受人に対象動物病院を選択させてもよい。一例として、マッチングサーバ20は、譲受希望者の住所との所定の位置関係にある動物病院をデータベースから複数選択し、選択結果を譲受者端末50に送信する。譲受者端末50のUI部505は、候補の動物病院の一覧を表示する。所定の位置関係とは、例えば、直線距離がしきい値以内であるという関係、又は道なりに移動した場合の所要時間がしきい値以内であるという関係である。この場合、マッチングサーバ20は、マッチングに関する対象動物病院の候補となる獣医師又は動物病院の各々について、提携動物病院データベースからその獣医師又は動物病院の属性情報を抽出し、抽出した属性情報を譲受者端末50に出力する。
・・・
【0064】
譲受希望者は、提示された複数の選択肢の中からいずれかを選択する操作を譲受者端末50のUI部505を用いて行う。マッチングサーバ20は、譲受者端末50から、複数の候補の中から選択された一の獣医師又は動物病院の識別情報を受信し、受信された識別情報により示される獣医師又は動物病院を、対象動物病院として決定する。」
「【0069】
(3)動物の引き渡し
対象動物病院が決定されると、譲渡支援システム1の運営者又は運営者から委託を受けた者等により、譲渡対象である動物が譲渡希望者の下から対象動物病院まで搬送される。搬送された動物は、対象動物病院の獣医師により診察される。・・・
【0071】
診察後、獣医師は、動物を譲渡希望者に引き渡す。マッチング成立後は、その動物はその対象動物病院の患者となり、その動物病院の獣医師が電子カルテにその後の経過を記録する。その後、時間が経ってその動物が亡くなり電子カルテにその旨が記録されると、その動物の現実の余命をマッチングサーバ20のAIに教師データとして用いることができる。マッチングサーバ20では、動物の引き渡し当時の予測余命と現実の余命とを教師データとして機械学習が行われる。これにより、余命の予測処理の精度を向上させることができる。」
(1) 上記【0029】及び【0033】によれば、譲渡支援システム1は、犬及び猫等の動物の譲渡を支援するシステムであって、譲渡者端末10、マッチングサーバ20、電子カルテサーバ30、獣医師端末40及び譲受者端末50を備えるものである。
また、上記【0031】によれば、譲渡者端末10、電子カルテサーバ30、獣医師端末40及び譲受者端末50はインターネットを介してマッチングサーバ20と通信を行うものである。
(2) 上記【0037】によれば、マッチングサーバ20は、出力手段21や記憶手段28を備えており、出力手段21は、動物の譲受希望者の譲受者端末50に対し、その動物に関する関連情報(動物関連情報)を出力するものである。
また、上記【0039】によれば、記憶手段28は、動物関連情報データベースを記憶するものである。
(3) 上記【0048】によれば、譲渡者端末10が、登録対象である動物(新規動物)の写真、動画像、犬種等の動物関連情報をマッチングサーバ20にアップロードすると、マッチングサーバ20は、動物関連情報データベースに記録するものである。
(4) 上記【0054】及び【0055】によれば、譲受希望者が、譲受者端末50を用いて、マッチングサーバ20にアクセスすると、マッチングサーバ20は、動物の検索を行うための動物関連情報の一覧が表示されるメニュー画面を表す画面データを譲受者端末50に送信するものである。
(5) 上記【0060】及び【0061】によれば、譲受希望者は、表示された動物関連情報を参照して、自身の希望に合う動物を検索し、見つかった場合、その動物の引き取り希望の意思表示をするための操作を行って、その動物に関心を有する意思表示を示すデータをマッチングサーバ20に送信するものであるから、マッチングサーバ20は、そのデータを受信している。
また、マッチングサーバ20は、上記【0061】によれば、マッチングに関与する獣医師又は動物病院として、動物の引き渡し場所となる獣医師又は動物病院の少なくとも一方を決定するものであり、あるいは、上記【0062】及び【0064】によれば、譲受者端末50から、複数の候補の中から選択された一の獣医師又は動物病院の識別情報を受信し、受信された識別情報により示される獣医師又は動物病院を決定するものである。
2 引用発明
上記1によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
犬及び猫等の動物の譲渡を支援するシステムであって、譲渡者端末10、マッチングサーバ20、電子カルテサーバ30、獣医師端末40及び譲受者端末50を備える譲渡支援システム1において、
マッチングサーバ20は、
譲渡者端末10、電子カルテサーバ30、獣医師端末40及び譲受者端末50とインターネットを介して通信を行うものであって、
出力手段21や記憶手段28を備えており、出力手段21は、動物の譲受希望者の譲受者端末50に対し、その動物に関する関連情報(動物関連情報)を出力し、記憶手段28は、動物関連情報データベースを記憶し、
譲渡者端末10から、登録対象である動物(新規動物)の写真、動画像、犬種等の動物関連情報がアップロードされると、動物関連情報データベースに記録し、
譲受希望者から譲受者端末50を用いてアクセスされると、動物の検索を行うための動物関連情報の一覧が表示されるメニュー画面を表す画面データを譲受者端末50に送信し、
譲受希望者が、表示された動物関連情報を参照して、自身の希望に合う動物を検索し、見つかった場合、その動物の引き取り希望の意思表示をするための操作を行うことによって、その動物に関心を有する意思表示を示すデータを受信し、
マッチングに関与する獣医師又は動物病院として、動物の引き渡し場所となる獣医師又は動物病院の少なくとも一方を決定し、あるいは、譲受者端末50から、複数の候補の中から選択された一の獣医師又は動物病院の識別情報を受信し、受信された識別情報により示される獣医師又は動物病院を決定する、
譲渡支援システム1。
第5 対比・判断
1 対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「譲受希望者」及び「犬及び猫等の動物」は、本願発明の「譲受人」及び「愛玩動物」に相当する。
また、引用発明の「譲受希望者」が操作する「譲渡者端末10」は、「インターネットを介して通信を行うもの」である。
そして、引用発明は、「譲渡者端末10から、登録対象である動物(新規動物)の写真、動画像、犬種等の動物関連情報がアップロードされると、動物関連情報データベースに記録し」、「譲受希望者から譲受者端末50を用いてアクセスされると、動物の検索を行うための動物関連情報の一覧が表示されるメニュー画面を表す画面データを譲受者端末50に送信」するものであるから、譲渡者から動物の写真等を取得し、譲受希望者に写真等を提供することができるものであって、譲受希望者は、写真等を閲覧することができるものである。
そうすると、引用発明は、本願発明と同様、「譲受人がインターネットを介して愛玩動物を閲覧する閲覧手段」を有しているといえる。
イ 引用発明は、「譲受希望者」が「動物の引き取り希望の意思表示をするための操作を行うことによって、その動物に関心を有する意思表示を示すデータを受信し」、「譲受者端末50から、複数の候補の中から選択された一の獣医師又は動物病院の識別情報を受信し、受信された識別情報により示される獣医師又は動物病院を決定する」ものであるところ、「譲受希望者」が「動物の引き取り希望の意思表示」をして、「譲受希望者」が選択した「一の獣医師又は動物病院」を決定することは、譲受人が引き渡し場所を予約しているということができる。
したがって、引用発明は、本願発明の「譲受人が引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)及び日時を予約する予約手段」と、「譲受人が引き渡し場所を予約する予約手段」を有する点で共通する。
ウ 引用発明の「犬及び猫等の動物の譲渡を支援するシステム」であって、「マッチングサーバ20」を備える「譲渡支援システム1」は、後記(2)の[相違点]を除き、本願発明の「愛玩動物マッチングシステム」に相当する。
(2) 上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
譲受人がインターネットを介して愛玩動物を閲覧する閲覧手段と、
譲受人が引き渡し場所を予約する予約手段と、
を有する、
愛玩動物マッチングシステム。
[相違点]
[相違点1]
本願発明は、予約手段について、「引き渡し場所」が「動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く」ものであって、さらに「日時」も予約するのに対し、引用発明は、「引き渡し場所」が「動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く」ものではなく、「日時」を予約するものでもない点。
[相違点2]
本願発明は、「引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)までの愛玩動物の輸送を手配する輸送調整手段」を有し、「譲受人が指定した引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)及び日時に基づいて、愛玩動物の健康診断を手配する健康診断調整手段」をさらに備えるのに対し、引用発明は、上記輸送調整手段を有することや上記健康診断調整手段を備えることが特定されていない点。
2 判断
(1) [相違点1]について
ア 「引き渡し場所」について
引用発明において、特段限定のない「引き渡し場所」から「動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く」引き渡し場所に変更することは、単なる引き渡し場所の選択であって、適宜決定し得る設計的な事項にすぎないから、このような変更は、当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして、このような変更を行ったとしても、その構成によって、格別顕著な効果があるともいえない。
イ 「日時」について
愛玩動物のみならず、何かを引き渡す際に、引き渡す場所を決めるだけではなく、日時も決めることは、一般的に行われていることであって、何ら格別なことではない。
そうすると、引用発明において、予約手段が、日時も予約するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人は、引用発明では、動物病院又は獣医師が立ち会う場所で引き渡すことが課題解決のための必須の構成であるから、これを変更することはできず、引用発明において、引き渡し場所を動物病院又は獣医師が立ち会う場所以外とすることは、課題を解決するための根幹となる技術事項を変更するものであるから阻害要因がある旨主張する(令和6年4月25日に提出された意見書の2~3頁)。
そこで検討するに、引用文献1には、【発明が解決しようとする課題】について、【0006】には「非特許文献1のサイトにおいては、動物を譲渡できるのは動物病院に限られていた。里親希望者は譲渡する動物を登録した動物病院までその動物を引き取りに行かねばならず、これがマッチングの成立を阻む要因となっていた。」と記載されており、それに引き続き、「また、特許文献1及び2に記載されたような動物の個体管理の技術が存在するものの、動物と譲受希望者とのマッチングには活用されていなかった。」と記載されている。
そうすると、引用文献1に記載された発明(引用発明)の課題は、「マッチングの成立を阻む要因として、譲渡される動物の引き取り場所(引き渡し場所)が動物病院に限られていた」ことと、「動物の個体管理の技術が動物と譲受希望者とのマッチングに活用されていなかった」ことの二つである。
そして、引用発明では、「マッチングに関与する獣医師又は動物病院として、動物の引き渡し場所となる獣医師又は動物病院の少なくとも一方を決定し、あるいは、譲受者端末50から、複数の候補の中から選択された一の獣医師又は動物病院の識別情報を受信し、受信された識別情報により示される獣医師又は動物病院を決定」する構成を有しており、当該構成は、上記二つの課題のうち、前者の「マッチングの成立を阻む要因として、譲渡される動物の引き取り場所(引き渡し場所)が動物病院に限られていた」という課題を解決するための手段であるところ、当該課題を解決するためには、引き渡し場所が「動物病院」に限られていなければよく、必ずしも「獣医師(が立ち会う場所)又は動物病院」のいずれかでなければならない理由はない。
したがって、引用発明において、動物病院又は獣医師が立ち会う場所で動物を引き渡すことが課題解決のための必須の構成であるとはいえないから、それら以外の場所を引き渡し場所とするように変更することに阻害要因があるとはいえない。
(イ) なお、請求人は、引用文献1の【0025】を引用し、引用発明は、引き渡し場所を動物病院又は獣医師が立ち会う場所とすることで課題を解決するものであり、このことは、引用文献1の特許請求の範囲の記載からも明らかである旨主張する。
しかしながら、そもそも【0025】は【発明が解決しようとする課題】の欄ではないところ、「以上の状況において、本願の発明者らは、既存の生体流通経路を経由せず、ブリーダーからの直販スタイルでありながら、生体を引き渡す場を動物病院(獣医師)とすることで現状の課題を解決する一つの方策を提示したい、という思いから本願発明の着想に至った。」と記載されているように、引用発明において、生体を引き渡す場を動物病院(獣医師)とすることは、課題を解決するための方策(手段)の一つにすぎず、必須の構成であるとはいえない。
また、引用文献1の特許請求の範囲に「獣医師及び動物病院の少なくとも一方を決定する」という構成が記載されていることは、引用発明の発明者がそのことを重要視していたとはいえるものの、生体を引き渡す場を動物病院(獣医師)とすることが、発明が解決しようとする課題との関係において、必須の構成であるといえないことは上述のとおりであるから、上記構成が特許請求の範囲に記載されていたとしても、そのことは、進歩性の有無を検討する際の阻害要因があるか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(2) [相違点2]について
引き渡し場所を、動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除くように構成することが当業者であれば容易に想到し得るものであることは、上記(1)アのとおりである。
そして、引用文献1の【0069】には、「動物の引き渡し」について、「対象動物病院が決定されると、譲渡支援システム1の運営者又は運営者から委託を受けた者等により、譲渡対象である動物が譲渡希望者の下から対象動物病院まで搬送される」ことが記載されているところ(上記第4の1)、「対象動物病院」は「引き渡し場所」である。
そうすると、当該記載に基づき、譲渡支援システム1の運営者が、決定された引き渡し場所までの動物の搬送(輸送)を手配するように構成すること、すなわち、「引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)までの愛玩動物の輸送を手配する輸送調整手段」を有するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
また、上記【0069】には、「搬送された動物は、対象動物病院の獣医師により診察される」ことも記載されているから、譲渡支援システム1の運営者が、「譲受人が指定した引き渡し場所(動物病院及び獣医師が立ち会う場所を除く)及び日時に基づいて、愛玩動物の健康診断を手配する健康診断調整手段」をさらに備えるように構成することも、当業者であれば容易に想到し得るものである。
3 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-012768