特許拒絶査定不服審判
2023-009965
電気コネクタ及び電気コネクタ組立体
- 審判番号
- 2023-009965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-053371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月15日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アプティブ・テクノロジーズ・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 53371「電気コネクタ及び電気コネクタ組立体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月 7日出願公開、特開2021-158118〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月26日(パリ条約による優先権主張2020年(令和2年)3月27日、欧州特許庁(EP))の外国語書面出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 5月25日 :翻訳文提出
令和4年 3月 4日付け:拒絶理由通知書
令和4年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月26日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年11月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月13日付け:令和4年11月28日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
令和5年 6月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 8月24日 :上申書の提出
令和5年11月21日 :上申書の提出
第2 令和5年6月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
ターミナルと、
前記ターミナルを有し、前記ターミナルが収容されるハウジング(11)と、
電気コネクタ(1)を嵌合電気コネクタ(2)に嵌合することを補助するための嵌合補助システムと、を備え、
前記嵌合補助システムは、
後方位置と前方位置との間で、オペレーション方向(OD)に沿ってスライドするために、前記ハウジング(11)の長手方向にスライド可能であるように取り付けられるユーザー駆動部材(20)であって、該ユーザー駆動部材(20)は、上壁と、下壁と、前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁と、を備え、前記ユーザー駆動部材は、前記オペレーション方向(OD)に平行に延びて第一の角部に配置され、且つ前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在した第一ラック部と、該第一ラック部に平行に延びて第二の角部に配置され、且つ前記下壁と二つの前記横壁のうちの他方とから延在した第二ラック部と、を形成したユーザー駆動部材(20)と、
前記嵌合電気コネクタ(2)の第一の側から延びる第一取り付けピン(10)を受けるためのカムスロット(31)を備える回転可能な第一カム部材(30)と、を備え、
前記第一カム部材(30)は第一ラック部と係合する歯(34)を有する第一ギア部(33)を有し、前記ユーザー駆動部材(20)が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯(34)の前記第一ラック部(25)との係合により、第一の回転方向(CW又はACW)に前記第一カム部材(30)を回転させる、前記嵌合補助システムであって、
前記嵌合補助システムはまた、
前記嵌合電気コネクタ(2)の第二の側から延びる第二の取り付けピン(10)を受けるカムスロット(31)を備える回転可能な第二カム部材(30)と、を備え、
嵌合電気コネクタの前記第二の側は前記第一の側と反対であり、
前記第二カム部材(30)は、前記第二ラック部(26)と係合する歯(34)を有する第二ギア部(33)を有し、
前記ユーザー駆動部材(20)が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯(34)の前記第二ラック部(26)との係合により、第二の回転方向(CW又はACW)に前記第二カム部材(30)を回転させ、前記電気コネクタ(1)の同じ方向から前記第一カム部材(30)及び前記第二カム部材(30)を見たとき、前記第一の回転方向(CW)は前記第二の回転方向と反対であり、前記カムスロット(31)に設けられた停止面(35)は、前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピン(10)に隣接することを特徴とする電気コネクタ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ターミナルと、
前記ターミナルを有し、前記ターミナルが収容されるハウジング(11)と、
電気コネクタ(1)を嵌合電気コネクタ(2)に嵌合することを補助するための嵌合補助システムと、を備え、
前記嵌合補助システムは、
後方位置と前方位置との間で、オペレーション方向(OD)に沿ってスライドするために、前記ハウジング(11)の長手方向にスライド可能であるように取り付けられるユーザー駆動部材(20)と、
オペレーション方向(OD)と平行に延びる第一ラック部(25)と、
前記嵌合電気コネクタ(2)の第一の側から延びる第一取り付けピン(10)を受けるためのカムスロット(31)を備える回転可能な第一カム部材(30)と、を備え、
前記第一カム部材(30)は第一ラック部と係合する歯(34)を有する第一ギア部(33)を有し、前記ユーザー駆動部材(20)が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯(34)の前記第一ラック部(25)との係合により、第一の回転方向(CW又はACW)に前記第一カム部材(30)を回転させる、前記嵌合補助システムであって、
前記嵌合補助システムはまた、
前記第一ラック部(25)と平行に延びる第二ラック部(26)と、
前記嵌合電気コネクタ(2)の第二の側から延びる第二の取り付けピン(10)を受けるカムスロット(31)を備える回転可能な第二カム部材(30)と、を備え、
嵌合電気コネクタの前記第二の側は前記第一の側と反対であり、
前記第二カム部材(30)は、前記第二ラック部(26)と係合する歯(34)を有する第二ギア部(33)を有し、
前記ユーザー駆動部材(20)が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯(34)の前記第二ラック部(26)との係合により、第二の回転方向(CW又はACW)に前記第二カム部材(30)を回転させ、前記電気コネクタ(1)の同じ方向から前記第一カム部材(30)及び前記第二カム部材(30)を見たとき、前記第一の回転方向(CW)は前記第二の回転方向と反対であり、前記カムスロット(31)に設けられた停止面(35)は、前記電気コネクタおよび前記嵌合コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピン(10)に隣接することを特徴とする電気コネクタ。」
(3)補正事項
本件補正は、次の補正事項を含む
[補正事項1]
本件補正前の「前記電気コネクタおよび前記嵌合コネクタの個々のハウジングの移動により」との記載を、「前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により」とする補正。
[補正事項2]
本件補正前の嵌合補助システムが備える「ユーザー駆動部材」並びに「オペレーション方向と平行に延びる第一ラック部」及び「前記第一ラック部と平行に延びる第二ラック部」に関し、「ユーザー駆動部材(20)であって、該ユーザー駆動部材(20)は、上壁と、下壁と、前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁と、を備え、前記ユーザー駆動部材は、前記オペレーション方向(OD)に平行に延びて第一の角部に配置され、且つ前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在した第一ラック部と、該第一ラック部に平行に延びて第二の角部に配置され、且つ前記下壁と二つの前記横壁のうちの他方とから延在した第二ラック部と、を形成したユーザー駆動部材(20)」とする補正。
2 補正の適否
上記補正事項1は、「前記嵌合コネクタ」との記載を「前記嵌合電気コネクタ」と補正することで、これより前に記載された「嵌合電気コネクタ」との整合をとるものであり、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ユーザー駆動部材」、「オペレーション方向と平行に延びる第一ラック部」及び「前記第一ラック部と平行に延びる第二ラック部」に関して、それぞれ次の発明特定事項を付加することにより限定するものである。
・ユーザー駆動部材が「上壁と、下壁と、前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁と、を備え」ること。
・オペレーション方向と平行に延びる第一ラック部が、「ユーザー駆動部材」に形成され、「第一の角部に配置され、且つ前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在」すること。
・第一ラック部と平行に延びる第二ラック部が、「ユーザー駆動部材」に形成され、「第二の角部に配置され、且つ前記下壁と二つの前記横壁のうちの他方とから延在」すること。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、上記補正事項2は特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-253655号公報(平成23年12月15日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審にて付したもの。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ハウジングにレバーを回動可能に取付け、第1ハウジングを第2ハウジングに浅く嵌合してレバーの溝状のカム機能部の入口に第2ハウジングのカムフォロアを進入させ、その状態からレバーを回動操作して軌道部とカムフォロアとを係合させることによる倍力作用により、両ハウジングを嵌合させるコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-344473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコネクタでは、レバーの操作部が、レバーの回動動作に伴って第1ハウジングの周りを周方向に移動するため、第1ハウジングの周囲には、操作部の移動を許容するために円弧状の操作スペースが必要である。このコネクタにおいて倍力効果を高めて操作力の低減を図ろうとした場合、レバーの回動角度を大きくする必要があるため、操作スペースを広い範囲に亘って確保しなければならない。したがって、操作スペースに制約がある場合には、レバーの変位量を大きく確保できないので、操作力が大きくなって作業性の低下を来すことが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、操作スペースに制約があっても、操作性の向上を図ることができるようにすることを目的とする。」
「【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図20を参照して説明する。本実施形態1のコネクタは、操作部材30を前後方向にスライド操作して一対の倍力部材40を回動させることにより、第1ハウジング10と第2ハウジング20を前後方向に嵌合させるようにしたものである。
【0020】
図6及び図7に示すように、第1ハウジング10は、端子収容部11と、端子収容部11を全周に亘って包囲する筒状嵌合部12とを一体に形成したものであり、端子収容部11と筒状嵌合部12との間は、第1ハウジング10の前端面(図1,2,3,6における左側の端面)に開放された嵌合空間13となっている。端子収容部11内には、周知形態の複数の雌端子金具(図示省略)が収容され、図4に示すように、雌端子金具に接続された電線14が第1ハウジング10の後方へ導出されている。
【0021】
筒状嵌合部12(第1ハウジング10)の左右両外側面(外周面)には、前後方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な方向)に直線状に延びる左右対称な一対のガイドリブ15が形成されている。筒状嵌合部12の上面(外面)と下面(外面)には、夫々、軸線を上下方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な方向)に向けて円柱状に突出した形態の支持軸16(本発明の構成要件である倍力部材の回動中心)が、同軸状に形成されている。支持軸16は、幅方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な左右方向)において筒状嵌合部12(第1ハウジング10)の中央位置に配置されている。」
「【0025】
第2ハウジング20の上面(外面)と下面(外面)には、軸線を上下方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な方向)に向けて円柱状に突出した形態のカムフォロア23が、同軸状に設けられている。カムフォロア23は、幅方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な左右方向)において第2ハウジング20の中央位置に配置されている。カムフォロア23は、第2ハウジング20に一体に形成された円柱形の軸部24と、軸部24の外周に回転自由に外嵌された円筒形のリング部材25と、軸部24の先端面にねじ込みや圧入等によって取り付けられた鍔状の抜止部材26(鍋子ネジやピン等)とから構成されている。リング部材25は、抜止部材26の係止作用により軸部24からの離脱を規制されている。また、リング部材25の材質としては、金属(SUS)や合成樹脂が用いられる。
【0026】
第2ハウジング20の上面(外面)には、前後方向に長くリブ状に突出した形態の解除部27が形成されている。この解除部27は、カムフォロア23に対して右方(図1における下方)にずれた位置に配されている。一方、第2ハウジング20の下面(外面)にも、前後方向に長くリブ状に突出した形態の解除部27が形成されている。この下面側の解除部27は、カムフォロア23に対して左方(上面側の解除部27とは左右反対方向)にずれた位置に配されている。
【0027】
かかる第2ハウジング20は、両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な仮想投影面(図9を参照)上において点対称な形状となっている。したがって、一対のカムフォロア23と一対の解除部27は、いずれも、仮想投影面上において点対称な形状及び配置となっている。
【0028】
操作部材30は、図1,5,11に示すように、上部半割部材31Aと下部半割部材31Bとを合体させることにより、前後方向に貫通する筒状をなすように構成されている。操作部材30は、両半割部材31A,31Bを合体させる工程において、同時に、第1ハウジング10に対して上下から挟み付けるようにして組み付けられるようになっている。
【0029】
図12,13,14に示すように、上部半割部材31Aは、上壁部32Aと、上壁部32Aの左右両側縁から下方へ延出する一対の上部側壁部33Aとからなる。左右両上部側壁部33Aの下端面には、夫々、前後一対ずつの位置決め突起34Aが形成されている。また、左右両上部側壁部33Aの外側面には、夫々、ロック突起35Aが形成されている。さらに、右側の上部側壁部33Aの内面には、複数の歯を前後方向に直線状に一定ピッチで並べた形態の上部ラック部36A(本発明の構成要件である駆動側係合部)が形成されている。
【0030】
図15,16,17に示すように、下部半割部材31Bは、下壁部32Bと、下壁部32Bの左右両側縁から上方へ延出する一対の下部側壁部33Bとからなる。左右両下部側壁部33Bの上端面には、夫々、前後一対ずつの位置決め孔34Bが形成されている。また、左右両下部側壁部33Bの上端部(延出端部)は、夫々、弾性撓み可能な弾性ロック片35Bとなっている。さらに、左側の下部側壁部33Bの内面には、複数の歯を前後方向に直線状に一定ピッチで並べた形態の下部ラック部36B(本発明の構成要件である駆動側係合部)が形成されている。」
【0031】
上部半割部材31Aと下部半割部材31Bを合体するときには、位置決め突起34Aを位置決め孔34Bに嵌合し、これによって、両半割部材31A,31Bの前後方向及び左右方向への位置ずれが規制される。また、合体した状態では、弾性ロック片35Bがロック突起35Aに係止することにより、両半割部材31A,31Bが上下方向に離間することが規制される。これにより、両半割部材31A,31Bが合体して操作部材30が構成されるとともに、操作部材30が第1ハウジング10に組み付けられる。操作部材30が組み付けられた状態では、図5及び図11に示すように、上部側壁部33Aの下端部と下部側壁部33Bの上端部との間に、操作部材30の内面側を凹ませた形態の左右一対のガイド溝37が形成され、このガイド溝37がガイドリブ15に対して相対変位可能に嵌合されている。
【0032】
また、操作部材30は、両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な仮想投影面(図11を参照)上において点対称な形状となっている。したがって、上部ラック部36Aと下部ラック部36Bは、仮想投影面上において、第1ハウジング10と同じ対称点に関して点対称な形状及び配置となっている。また、第1ハウジング10に組み付けられた操作部材30は、ハウジングに対して通常の嵌合・離脱操作では外れないようになっている。
【0033】
一対の倍力部材40は、同一の部品であって、第1ハウジング10の上面側と下面側に配置されている。また、一対の倍力部材40は、両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な仮想投影面(図5を参照)上において、第1ハウジング10及び操作部材30と同じ対称点に関して点対称な形状及び配置となっている。したがって、上側に配置される倍力部材40について説明し、下側に配置される倍力部材40に関しては構造及び作用の説明を一部省略する。
【0034】
図19及び図20に示すように、倍力部材40は全体として平板状をなし、そのほぼ中央には、上下方向に貫通する軸受孔41が形成されている。倍力部材40は、その軸受孔41を支持軸16に嵌合することにより、初期位置(図1及び図3を参照)と嵌合位置(図2を参照)との間で約90°の角度に亘って回動し得るように第1ハウジング10の上面に組み付けられている。同様に、第1ハウジング10の下面にも、倍力部材40が上面側と点対称となるように組み付けられている。
【0035】
倍力部材40の外周には、軸受孔41と同心の円周上に一定ピッチで複数の歯を並べた形態のピニオン部42(本発明の構成要件である従動側係合部)が形成されている。このピニオン部42を構成する歯のピッチ円におけるピッチは、ラック部36A,36Bを構成する歯のピッチと同じ寸法である。また、ピニオン部42を構成する複数の歯の数は、ラック部36A,36Bを構成する歯とほぼ同じ数である。倍力部材40を第1ハウジング10に組み付けた状態では、上面側の倍力部材40のピニオン部42が上部ラック部36Aに係合され、下面側の倍力部材40のピニオン部42が下部ラック部36Bに係合される。
【0036】
倍力部材40には、その下面側(第1ハウジング10に組み付けた状態で第1ハウジング10の上面と対向する側)を凹ませた形態のカム溝43(本発明の構成要件であるカム機能部)が形成されている。カム溝43の始端(入口)は、倍力部材40の外周に開口され、カム溝43の終端は袋小路状となっている。カム溝43の形状は、軸受孔41からカム溝43までの径方向寸法が、カム溝43の始端から終端に向かって次第に小さくなるような曲線状をなしている。倍力部材40が初期位置にある状態では、カム溝43は、その始端を前方に開口させることでカムフォロア23のカム溝43への進入を許容する待ち受け状態となる。また、カム溝43は、倍力部材40の回動軸(支持軸16)の軸線方向(倍力部材40の板厚方向)においてピニオン部42と同じ領域に重なるように配置されている。」
「【0039】
次に、本実施形態の作用を説明する。第1ハウジング10と第2ハウジング20を嵌合する前の状態では、図3に示すように、操作部材30を後方へスライドさせることにより、倍力部材40を初期位置に保持しておく。この状態では、弾性係止片47と係止縁部19との係止、及び規制突起17と初期位置用ストッパ45との当接により、倍力部材40は初期位置において回動を規制された状態保持されている。
【0040】
この状態から、両ハウジング10,20を接近させ、フード部22を嵌合空間13内に浅く進入させると、図1に示すように、カムフォロア23がカム溝43の始端(入口)に進入する。また、フード部22が嵌合空間13に進入するのに伴い、解除部27が弾性係止片47の係止突起48に当接して弾性係止片47を第1ハウジング10の外面から遠ざかる方向へ弾性変位させるので、係止突起48(弾性係止片47)と係止縁部19との係止が解除される。これにより、倍力部材40は、嵌合位置側への回動を許容される。
【0041】
この後は、操作部材30を掴んで第1ハウジング10における前方(第2ハウジング20に接近させる方向)へ押し操作する。すると、操作部材30が前方へスライドし、これに伴って、上部ラック部36A及び下部ラック部36Bとピニオン部42との係合により上下両倍力部材40が同期して嵌合位置側への回動を開始する。倍力部材40の回動に伴い、カムフォロア23とカム溝43との係合によるカム作用により、倍力効果が発揮され、両ハウジング10,20に対して互いに接近する方向の嵌合力が付与される。つまり、操作部材30に付与する操作力が小さくても(換言すると、両ハウジング10,20間の嵌合抵抗が大きくても)、両ハウジング10,20の嵌合動作を容易に進めることができる。
【0042】
そして、操作部材30のスライド操作を進めて倍力部材40が嵌合位置に達すると、図3に示すように、両ハウジング10,20が正規の嵌合状態となり、嵌合作業が完了する。嵌合状態の両ハウジング10,20を離脱する際には、上記とは逆に、操作部材30を第1ハウジング10の後方へスライドさせる。すると、倍力部材40が嵌合位置から初期位置に向かって回動するので、その回動に伴ってカムフォロア23とカム溝43との係合によるカム作用により、両ハウジング10,20に対して離間方向の力が付与される。これにより、操作部材30に付与する操作力が小さくても(換言すると、両ハウジング10,20間の嵌合抵抗が大きくても)、両ハウジング10,20の離脱動作を容易に進めることができる。
【0043】
上述のように本実施形態のコネクタは、第1ハウジング10に倍力部材40を回動可能に設け、倍力部材40にその回動中心と同心の円周上に沿ったピニオン部42を設け、そのピニオン部42に、両ハウジング10,20の嵌合時における移動経路に沿って移動する(操作部材30の)ラック部36A,36Bを係合させた。また、倍力部材40には、第2ハウジング20のカムフォロア23と係合可能なカム溝43を設け、ラック部36A,36Bをピニオン部42に係合した状態で移動させて倍力部材40を回動させると、カムフォロア23とカム溝43との係合による倍力作用により両ハウジング10,20に嵌合力が付与される構成となっている。
【0044】
そして、ラック部36A,36Bとラック部36A,36Bが形成されている操作部材30の移動経路(ラック部36A,36Bの移動を許容するために確保すべきスペース)は、第1ハウジング10の外周に対して接近した狭い空間領域(第1ハウジング10の外周に沿った空間)である。したがって、上下左右方向において、ラック部36A,36B及び操作部材30の移動のために第1ハウジング10の外部に確保すべき空間は小さくて済む。」
「【0050】
また、ピニオン部42が、両ハウジング10,20の嵌合方向と直角な仮想投影面上において点対称となるように一対設けられているので、嵌合動作の過程で、第1ハウジング10と第2ハウジング20との間で傾きが生じ難い。」
「【図1】
[図:0001412043000001.jpg]
【図2】
[図:0001412043000002.jpg]
【図3】
[図:0001412043000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001412043000004.jpg]
」
「【図8】
[図:0001412043000005.jpg]
【図9】
[図:0001412043000006.jpg]
【図10】
[図:0001412043000007.jpg]
」
「【図11】
[図:0001412043000008.jpg]
」
(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
あ.引用文献1における「コネクタ」は、雌端子金具、第1ハウジング10、操作部材30、倍力機構40などからなる部分(以下、“雌端子側コネクタ”という。)と、雄端子金具、第2ハウジング20、カムフォロア23などからなる部分(以下、“雄端子側コネクタ”という。)とで構成されている。そして、第1ハウジング10と第2ハウジングとを嵌合させることで、“雌端子側コネクタ”と雄端子側コネクタ”との嵌合が実現される。
い.“第1ハウジング10”は、“雌端子金具”と、“雌端子金具を収容する端子収容部11を全周に亘って包囲する筒状嵌合部12”を備えている(段落【0020】)。また、筒状嵌合部12は、雌端子金具を収容する端子収容部11と「一体形成」され(段落【0020】)、その端子収容部11を“全周に亘って包囲する”ものであるから、“筒状嵌合部12”は“雌端子金具を有し”ているといえる。
う.操作部材30や倍力部材40が、“雌端子側コネクタの第1ハウジング10と雄端子側コネクタの第2ハウジング20との嵌合動作を容易に進める”ための、両ハウジング10、20に対して互いに接近する方向の“嵌合力を付与する機構”(以下、単に“嵌合力付与機構”という。)を構成している(段落【0041】)。
え.嵌合力付与機構は、“操作部材30”を備えている。そして、“操作部材30”のスライド操作の方向である“前後方向”(段落【0019】、【0039】、【0041】)は、図1~3(図1~3の図面左方が前方。)から、“筒状嵌合部12の長手方向”と一致していることが見て取れるので、“操作部材30”は“筒状嵌合部12の長手方向にスライド可能”といえる。そうすると、“操作部材30”は、“後方位置と前方位置との間で、前後方向に沿ってスライド操作されるために、前記筒状嵌合部12の長手方向にスライド可能であるように取り付けられる操作部材30”といえる。
また、“操作部材30”は、“上壁部32Aと、下壁部32Bと、前記上壁部32Aと下壁部32Bとの間に延びた左右両側の側壁部33A・33Bとを有する”(段落【0029】、【0030】、図11等)。
なお、図11の図面左側の上部側壁部33Aと、同左側の下部側壁部33Bとにより“左側の側壁部33A・33B”が、図11の図面右側の上部側壁部33Aと、同右側の下部側壁部33Bとにより“右側の側壁部33A・33B”が、それぞれ形成される。
お.“操作部材30”には、“上部ラック部36A”と“下部ラック部36B”が“形成され”ている。
“上部ラック部36A”に関し、段落【0029】には、「さらに、右側の上部側壁部33Aの内面には、複数の歯を前後方向に直線状に一定ピッチで並べた形態の上部ラック部36A(本発明の構成要件である駆動側係合部)が形成されている」との記載がある。また、図11から、“上部ラック部36A”が、“上壁部32Aと左側の側壁部33A・33Bとの角部”に配置される点が見てとれる。さらに、図11から、“上部ラック部36A”は、“その歯の幅方向で上壁部32Aから下側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で左側の側壁部33A・33Bから右側に向かって延びるように設けられ”ている点が見て取れる。そうすると、“操作部材30”には、“前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態で、上壁部32Aと左側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され、且つ、その歯の幅方向で上壁部32Aから下側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で左側の側壁部33A・33Bから右側に向かって延びるように設けられた上部ラック部36A”が形成されているといえる。
“下部ラック部36B”に関しても、段落【0030】に「さらに、左側の下部側壁部33Bの内面には、複数の歯を前後方向に直線状に一定ピッチで並べた形態の下部ラック部36B(本発明の構成要件である駆動側係合部)が形成されている」との記載があり、図11から、上部ラック36Aと同様の点が見て取れる。そうすると、“操作部材30”には、“前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態で、下壁部32Bと右側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され、且つ、その歯の幅方向で下壁部32Bから上側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で右側の側壁部33A・33Bから左側に向かって延びるように設けられた下部ラック部36B”が形成されているといえる。
か.図8~10の図面上方側に見て取れるカムフォロア23は、段落【0025】の記載から、“雄端子側コネクタの第2ハウジング20の上面に軸線を上方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23”であるといえる。また、この上方側の“カムフォロア23”が“侵入する”(段落【0040】、図1、図2)“カム溝43”が形成された、図5の図面上方側の“倍力部材40”は、“回動し得るように第1ハウジング10の上面に組み付け”られている(段落【0034】)。すなわち、図5の図面上方側の“倍力部材40”は、“第2ハウジング20の上面に軸線を上方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23の侵入するカム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40”であるといえる。
また、この“第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40”には“上部ラック部36Aと係合する”“複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され”ている(段落【0035】)。そして、段落【0041】などの記載、並びに図1及び図2から、嵌合力付与機構は、“操作部材30が後方位置から前方位置へと押し操作されるとき、複数の歯を並べた形態のピニオン部42の上部ラック部36Aとの係合により、ある回転方向に第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40を回動させる”ものといえる。
き.図8~10の図面下方側に見て取れるカムフォロア23や図5の図面下方側の倍力装置40に関しても、上記か.と同様に、段落【0025】、【0034】、【0040】の記載から、図5の図面下方側の“倍力部材40”は、“雄端子側コネクタの第2ハウジング20の下面に軸線を下方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23の侵入するカム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40”であるといえ、段落【0035】、段落【0041】、図1及び2から、“第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40”には“下部ラック部36Bと係合する複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され”ており、嵌合力付与機構は、“操作部材30が後方位置から前方位置へと押し操作されるとき、複数歯を並べた形態のピニオン部42の下部ラック部36Bとの係合により、第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40を回動させる”ものであるといえる。
さらに、一対の倍力部材40が同一の部品である旨の記載(段落【0033】)や、倍力部材40、第1ハウジング10、操作部材30等が点対称な配置・形状を有する旨の記載(段落【0027】、【0032】、【0033】)や図5を踏まえれば、操作部材30が後方位置から前方位置へと押し操作されるときの、第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40の回転方向は、“第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40の回転方向とは逆の回転方向”であることは明らかである(下図参照。下図は、図5に、当審にて回転中心線及び回転方向を示す矢印を追記したもの。矢印は操作部材30が図面奥側から手前側へスライドしたときの各倍力部材40の回転方向。)。
[図:0001412043000009.jpg]
く.図1から、倍力部材40に形成されたカム溝43が、“倍力部位40の回転中心に向かって延びる開口部近傍の壁面に続いて、当該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面”(下図の壁面A部分を参照。下図は、図1に、当審にて括弧、矢印など追加したもの。)を有する点が見て取れる。また、この曲面として構成された壁面は、“第1ハウジング10と第2ハウジング20とを互いに離間した状態から互いに嵌合を開始する状態(図1)へと近づけた際に、カムフォロア23が近づいてくる位置”にあるといえる。
[図:0001412043000010.jpg]
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「雌端子金具と、
前記雌端子金具を有し、前記雌端子金具を収容する端子収容部11を全周に亘って包囲する筒状嵌合部12と、
雌端子側コネクタの第1ハウジング10と雄端子側コネクタの第2ハウジング20との嵌合動作を容易に進めるための嵌合力付与機構と、を備え、
前記嵌合力付与機構は、
後方位置と前方位置との間で、前後方向に沿ってスライド操作されるために、前記筒状嵌合部12の長手方向にスライド可能であるように取り付けられる操作部材30であって、上壁部32Aと、下壁部32Bと前記上壁部32Aと下壁部32Bとの間に延びた左右両側の側壁部33A・33Bとを有し、前記前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態で、前記上壁部32Aと左側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され、且つ、その歯の幅方向で前記上壁部32Aから下側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で前記左側の側壁部33A・33Bから右側に向かって延びるように設けられた上部ラック部36Aと、前記前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態で、前記下壁部32Bと右側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され、且つ、その歯の幅方向で前記下壁部32Bから上側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で前記右側の側壁部33A・33Bから左側に向かって延びるように設けられた下部ラック部36Bと、が形成された操作部材30と、
前記雄端子側コネクタの前記第2ハウジング20の上面に軸線を上方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23の侵入するカム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40と、を備え、
前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40には上部ラック部36Aと係合する複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され、前記操作部材30が前記後方位置から前方位置へと押し操作されるとき、前記複数の歯を並べた形態のピニオン部42の前記上部ラック36Aとの係合により、ある回転方向に前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40を回動させる、前記嵌合力付与機構であって、
前記嵌合力付与機構はまた、
前記雄端子側コネクタの前記第2ハウジング20の下面に軸線を下方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23の侵入するカム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40と、を備え、
前記第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40には下部ラック部36Bと係合する複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され、
前記操作部材30が前記後方位置から前方位置へと押し操作されるとき、前記複数の歯を並べた形態のピニオン部42の前記下部ラック部36Bとの係合により、前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40の前記回転方向とは逆の回転方向に、前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40を回動させ、前記カム溝43が、前記倍力部位40の回転中心に向かって延びる開口部近傍の壁面に続いて、当該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面を有しており、当該曲面として構成された壁面が、前記第1ハウジング10と前記第2ハウジング20とを互いに離間した状態から互いに嵌合を開始する状態へと近づけた際に、前記カムフォロア23が近づいてくる位置にある、雌端子側コネクタ。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2015-501074号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0017】
図1は、図2に示された第2コネクタ12と長手嵌合軸XXに沿って嵌合する第1コネクタ10の詳細を示しており、第1コネクタは機械的且つ電気的に第2コネクタに接続されて、電気コネクタアセンブリを形成する。」
「【0034】
第2コネクタ12は、嵌合軸XXに沿って管状の形状を有するスライダ44を具備している。スライダ44は嵌合軸XXに沿って第2筐体28上にスライド可能に組み付けられており、嵌合軸XXに平行に延びた縦長のラック歯46を具備している。」
「【0037】
第2コネクタ12は、嵌合軸XXに直交した軸YYの周りに回転可能に、第2筐体28の上壁32に組み付けられたカムギア56を具備している。
【0038】
図4において最もよく見られているように、カムギア56は、第1コネクタ10(図1)のガイドピン24を受容し且つ駆動するためのガイド溝58を具備している。ガイド溝58は、軸YYに平行且つ軸YYからオフセットされた軸を中心とした略円形の形状である。
【0039】
ガイド溝58は入口開口部60と、ガイド溝58の外周を画定した側壁62と、を具備している。」
「【0042】
カムギア56は、軸YYの周りに円形に延びた歯を備えたギアセクション68を具備している。ギアセクション68の歯は、スライダ44の縦長のラック歯46と互いに噛合うように形成されている。」
「【0048】
最初に、第1コネクタ10と第2コネクタ12とは未嵌合/組み立てられていない位置にあり、それらは嵌合軸XXに沿って整列されているが、互いに離間されている。
【0049】
第2コネクタ12のスライダ44は第2筐体28に対して前方位置にあり、縦長のラック歯46がカムギア56のギアセクション68と係合し、ガイド溝58の入口開口部60が第1コネクタ10のガイドピン24の前で後ろ向きに向けられる。」
「【0051】
次いで、第1コネクタ10および第2コネクタ12は、第1コネクタ10のガイドピン24が入口開口部60を通じてカムギア56のガイド溝58に進入するまで、互いに接近させられる。
【0052】
次に、スライダ44は嵌合軸XXに沿って後ろ向きに移動され、これによってラック歯46が歯の噛合いを介してカムギア56を回転させる。カムギア56が回転すると、ガイドピン24をガイド溝58に沿って移動させ、第1コネクタ10が第2コネクタに向かって最終嵌合位置/組み立てられた位置へと移動することを補助する。」
(イ)引用文献2の図4から、カムギア56のガイド溝58が、“カムギヤ56の回転中心に向かって延びる開口部60近傍の壁面に続いて、当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面”を有する点が見てとれる(下図の「壁面B」の部分を参照。下図は、図4に当審にて括弧、矢印などを追記したもの)。
また、引用文献2の図4は、カムギヤ56が回転し、ガイドピン24がカムギア56の保持ショルダ64と接触している「中間位置」にあるが(段落【0046】)、第1コネクタ10と第2コネクタ12とが互いに離間した状態においては、カムギヤ56は「ガイド溝58の入口開口部60が第1コネクタ10のガイドピン24の前で後ろ向きに向けられる」(段落【0049】)姿勢とされる。カムギヤ56をそのような姿勢としつつ、第1コネクタ10と第2コネクタ12とを“互いに離間した状態”(段落【0048】)から、“ガイドピン24が入口開口部60を通じてカムギア56のガイド溝58に進入する状態”(段落【0051】)まで“互いに近接させる”とき、上記の“平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面”は、“ガイドピン24が近づいてくる位置”にあるといえる。
[図:0001412043000011.jpg]
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
[引用文献2記載の技術的事項]
嵌合軸XXに沿ってスライド可能に第2コネクタ12に組み付けられ、前記嵌合軸XXに平行に延びた縦長のラック歯46を具備したスライダ44と、
前記第2コネクタ12の前記嵌合軸XXに直交した軸YYの周りに回転可能に組み付けられ、第1コネクタ10のガイドピン24を受容し且つ駆動するためのガイド溝58を具備したカムギア56とを備え、
前記スライダ44を前記嵌合軸XXに沿って移動させることによって前記ラック歯46の噛合いを介して前記カムギア56を回転させ、前記ガイドピン24を前記ガイド溝58に沿って移動させることにより、第1コネクタ10が前記第2コネクタ12に向かって最終嵌合位置へと移動することを補助する機構において、
前記ガイド溝58が、前記カムギヤ56の回転中心に向かって延びる開口部60近傍の壁面に続いて、当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して不連続に繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面を有し、当該平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面が、前記第1コネクタ10と前記第2コネクタ12とを互いに離間した状態から、前記ガイドピン24が前記入口開口部60を通じて前記カムギア56の前記ガイド溝58に進入する状態まで互いに近接させた際に、前記ガイドピン24が近づいてくる位置にある点。
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「雌端子金具」は、本件補正発明の「ターミナル」に相当する。
引用発明の「筒状嵌合部12」が本件補正発明の「ハウジング」に相当する。そして、引用発明の「筒状嵌合部12」は「前記雌端子金具を収容する端子収容部11」を「全周に亘って包囲する」のであるから、「筒状嵌合部12」が“雌端子金具”を収容しているといえる。そうすると、引用発明の「前記雌端子金具を有し、前記雌端子金具を収容する端子収容部11を全周に亘って包囲する筒状嵌合部12」ないし「筒状嵌合部12」は、本件補正発明の「前記ターミナルを有し、前記ターミナルが収容されるハウジング」ないし「ハウジング」に相当する。
引用発明の「雌端子側コネクタ」及び「雄端子側コネクタ」は、本件補正発明の「電気コネクタ」及び「嵌合電気コネクタ」にそれぞれ相当し、引用発明において「雌端子側コネクタの第1ハウジング10」と「雄端子側コネクタの第2ハウジング20」とを嵌合させることは、本件補正発明において「電気コネクタ」と「嵌合電気コネクタ」とを嵌合さることに相当する。そうすると、引用発明の「雌端子側コネクタの第1ハウジング10と雄端子側コネクタの第2ハウジング20との嵌合動作を容易に進めるための嵌合力付与機構」ないし「嵌合力付与機構」は、本件補正発明の「電気コネクタを嵌合電気コネクタに嵌合することを補助するための嵌合補助システム」ないし「嵌合補助システム」に相当する。
(イ)引用発明の「操作部材30」は、本件補正発明の「ユーザー駆動部材」に相当する。そして、引用発明における「前後方向」は、第1ハウジング10と第2ハウジング20とを嵌合させる方向であるから、本件補正発明の「オペレーション方向」に相当する。そうすると、引用発明において、「操作部材30」が、「後方位置と前方位置との間で、前後方向に沿ってスライド操作されるために、前記筒状嵌合部12の長手方向にスライド可能であるように取り付けられる」ことは、本件補正発明において、「ユーザー駆動部材」が「後方位置と前方位置との間で、オペレーション方向に沿ってスライドするために、前記ハウジングの長手方向にスライド可能であるように取り付けられる」ことに相当する。
引用発明における「ユーザー駆動部材」が有する「上壁部32A」、「下壁部32B」、「前記上壁部32Aと下壁部32Bとの間に延びた左右両側の側壁部33A・33B」(ないし「側壁部33A・33B」)は、それぞれ、本件補正発明における「ユーザー駆動部材」が備える「上壁」、「下壁」、「前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁」(ないし「横壁」)に相当する。
(ウ)引用発明の「操作部材30」に形成された「上部ラック36A」は、本件補正発明の「ユーザー駆動部材」に形成した「第一ラック部」に相当する。引用発明の「前後方向」は、本件補正発明の「オペレーション方向」に相当するので、引用発明において「上部ラック36A」が「前記前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態」であることは、本件補正発明において「第一ラック部」が「前記オペレーション方向に平行に延びて」いることに相当する。また、引用発明において「上部ラック36A」が「前記上壁部32Aと左側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され」ることは、本件補正発明において、「第一ラック部」が「第一の角部に配置され」ることに相当する。さらに、引用発明の「上壁部32A」及び「左側の側壁部33A・33B」が、それぞれ本件補正発明の「上壁」及び「二つの前記横壁のうちの一方」に相当するから、引用発明において「第一ラック部」が「その歯の幅方向で前記上壁部32Aから下側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で前記左側の側壁部33A・33Bから右側に向かって延びるように設けられ」ることは、本件補正発明において「第一ラック部」が「前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在」することに相当する。
また、同様に、引用発明の「操作部材30」に形成された「下部ラック36B」は、本件補正発明の「ユーザー駆動部材」に相当し、引用発明において、「下部ラック36B」が「前記前後方向に複数の歯を直線状に一定ピッチで並べた形態」であること、「前記下壁部32Bと右側の側壁部33A・33Bとの角部に配置され」ること、及び「その歯の幅方向で前記下壁部32Bから上側に向かって延びるように設けられつつ、その歯の高さ方向で前記右側の側壁部33A・33Bから左側に向かって延びるように設けられ」ることは、本件補正発明において、「第二ラック部」が「該第一ラック部に平行に延びて」いること、「第二の角部に配置され」ること、及び「前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在」することに、それぞれ相当する。
(エ)引用発明の「前記雄端子コネクタの前記第2ハウジング20の上面に軸線を上方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23」ないし「カムフォロア23」は、本件補正発明の「前記嵌合電気コネクタの第一の側から延びる第一取り付けピン」ないし「第一取り付けピン」に相当し、引用発明の「カムフォロア23の侵入するカム溝43」ないし「カム溝43」は、本件補正発明の「第一取り付けピンを受けるためのカムスロット」ないし「カムスロット」に相当する。そして、引用発明の「カム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40」ないし「第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40」は、本件補正発明の「カムスロットを備える回転可能な第一カム部材」ないし「第一カム部材」に相当する。
(オ)引用発明において「第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40」に「上部ラック部36Aと係合する複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され」ることは、本件補正発明において「第一カム部材」が「第一ラック部と係合する歯を有する第一ギア部を有」することに相当する。そして、引用発明おける「前記操作部材30が前記後方位置から前方位置へと押し操作されるとき」は、本件補正発明における「前記ユーザー駆動部材が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき」に相当し、引用発明において「前記複数の歯を並べた形態のピニオン部42の前記上部ラック36Aとの係合により」、「ある回転方向に」「前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40を回動させる」ことは、本件補正発明において、「前記歯の前記第一ラック部との係合により」、「第一の回転方向に」「前記第一カム部材を回転させる」ことに相当する。
(カ)上記(エ)と同様に、引用発明の「前記雄端子コネクタの前記第2ハウジング20の下面に軸線を下方に向けて円柱状に突出するよう設けられたカムフォロア23」ないし「カムフォロア23」は、本件補正発明の「前記嵌合電気コネクタの第二の側から延びる第二取り付けピン」ないし「第二取り付けピン」に相当し、引用発明の「カムフォロア23の侵入するカム溝43」ないし「カム溝43」は、本件補正発明の「第二取り付けピンを受けるためのカムスロット」ないし「カムスロット」に相当する。そして、引用発明の「カム溝43が形成され、回動し得るように第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40」ないし「第1ハウジング10の下に組み付けられている倍力部材40」は、本件補正発明の「カムスロットを備える回転可能な第二カム部材」ないし「第二カム部材」に相当する。
また、引用発明における「第2ハウジング20の下面」は当然に「第2ハウジング20の下上面」とは反対の側である。よって、引用発明も、本件補正発明の「嵌合電気コネクタの前記第二の側は前記第一の側と反対」であるという構成を有している。
(キ)上記(オ)と同様に、引用発明において「第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40」に「下部ラック部36Bと係合する複数の歯を並べた形態のピニオン部42が形成され」ることは、本件補正発明において「第二カム部材」が「第二ラック部と係合する歯を有する第二ギア部を有」することに相当する。そして、引用発明おける「前記操作部材30が前記後方位置から前方位置へと押し操作されるとき」は、本件補正発明における「前記ユーザー駆動部材が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき」に相当し、引用発明において「前記複数の歯を並べた形態のピニオン部42の前記下部ラック36Bとの係合により」、「前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40の前記回転方向とは逆の回転方向に」「前記第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40を回動させる」ことは、本件補正発明において「前記歯の前記第二ラック部との係合により」、「第二の回転方向に」「前記第二カム部材を回転させる」ことに相当する。
また、引用発明における、第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40の回転方向である「ある回転方向」と、第1ハウジング10の下面に組み付けられている倍力部材40の回転方向である「前記第1ハウジング10の上面に組み付けられている倍力部材40の前記回転方向とは逆の回転方向」とは、コネクタの第1ハウジング10の同じ方向から両倍力部材40を見たとき、互いに反対の回転方向である。よって、引用発明も、本件補正発明の「前記電気コネクタの同じ方向から前記第一カム部材及び前記第二カム部材を見たとき、前記第一の回転方向は前記第二の回転方向と反対」であるという構成を有している。
(ク)引用発明の「前記カム溝43」が有する「前記倍力部位40の回転中心に向かって延びる開口部近傍の壁面に続」く、「当該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」と、本件補正発明の「前記カムスロットに設けられた停止面」とは、「前記カムスロットの一部を画定する壁面」である限りにおいて一致する。
そして、引用発明において「前記第1ハウジング10と前記第2ハウジング20とを互いに離間した状態から互いに嵌合を開始する状態へと近づけ」ることは、本件補正発明の「前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動」に相当するから、引用発明において、「前記第1ハウジング10と前記第2ハウジング20とを互いに離間した状態から互いに嵌合を開始する状態へと近づけた際に、前記カムフォロア23が近づいてくる位置にある」ことは、本件補正発明において「前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピンに隣接する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「前記カム溝43」が有する「前記倍力部位40の回転中心に向かって延びる開口部近傍の壁面に続」く、「当該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」が、「前記第1ハウジング10と前記第2ハウジング20とが完全に離間した状態から前記第1ハウジング10と前記第2ハウジング20とが嵌合を開始する状態へと近づけた際に、前記カムフォロア23が近づいてくる位置にある」という構成は、本件補正発明の「前記カムスロットに設けられた停止面は、前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピンに隣接する」という構成との対比において、「カムスロットの一部を画定する壁面」が、「前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピンに隣接する」という限りにおいて一致する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
ターミナルと、
前記ターミナルを有し、前記ターミナルが収容されるハウジングと、
電気コネクタを嵌合電気コネクタに嵌合することを補助するための嵌合補助システムと、を備え、
前記嵌合補助システムは、
後方位置と前方位置との間で、オペレーション方向に沿ってスライドするために、前記ハウジングの長手方向にスライド可能であるように取り付けられるユーザー駆動部材であって、該ユーザー駆動部材は、上壁と、下壁と、前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁と、を備え、前記ユーザー駆動部材は、前記オペレーション方向に平行に延びて第一の角部に配置され、且つ前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在した第一ラック部と、該第一ラック部に平行に延びて第二の角部に配置され、且つ前記下壁と二つの前記横壁のうちの他方とから延在した第二ラック部と、を形成したユーザー駆動部材と、
前記嵌合電気コネクタの第一の側から延びる第一取り付けピンを受けるためのカムスロットを備える回転可能な第一カム部材と、を備え、
前記第一カム部材は第一ラック部と係合する歯を有する第一ギア部を有し、前記ユーザー駆動部材が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯の前記第一ラック部との係合により、第一の回転方向に前記第一カム部材を回転させる、前記嵌合補助システムであって、
前記嵌合補助システムはまた、
前記嵌合電気コネクタの第二の側から延びる第二の取り付けピンを受けるカムスロットを備える回転可能な第二カム部材と、を備え、
嵌合電気コネクタの前記第二の側は前記第一の側と反対であり、
前記第二カム部材は、前記第二ラック部と係合する歯を有する第二ギア部を有し、
前記ユーザー駆動部材が前記後方位置から前記前方位置へ駆動されるとき、前記歯の前記第二ラック部との係合により、第二の回転方向に前記第二カム部材を回転させ、前記電気コネクタの同じ方向から前記第一カム部材及び前記第二カム部材を見たとき、前記第一の回転方向は前記第二の回転方向と反対であり、前記カムスロットの一部を画定する壁面は、前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピンに隣接する電気コネクタ。
[相違点]
「カムスロットの一部を画定する壁面」に関し、本件補正発明では、「停止面」と称される壁面であるのに対して、引用発明では、「前記倍力部位40の回転中心に向かって延びる開口部近傍の壁面に続」く、「当該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」である点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
まず、引用文献2記載の技術的事項の「第2コネクタ12」及び「スライダ44」は、本件補正発明の「ハウジング」及び「ユーザー駆動部材」に相当し、引用文献2記載の技術的事項の「第1コネクタ10」は、本件補正発明の「嵌合電気コネクタ」に相当し、引用文献2記載の技術的事項における「第1コネクタ10が前記第2コネクタ12に向かって最終嵌合位置へと移動することを補助する機構」並びに当該機構に係る「ガイドピン24」及び「カムギア56」が果たす、スライダ44を操作する力を第1コネクタ及び第2コネクタを嵌合させる力に変換する作用・機能は、本件補正発明の「嵌合補助システム」並びに当該システムに係る「第一取り付けピン」ないし「第二取り付けピン」及び「第一カム部材」ないし「第二カム部材」が果たす作用・機能と共通している。
そして、引用文献2記載の技術的事項において、「前記第1コネクタ10と前記第2コネクタ12とを互いに離間した状態から、前記ガイドピン24が前記入口開口部60を通じて前記カムギア56の前記ガイド溝58に進入する状態まで互いに近接させた際に、前記ガイドピン24が近づいてくる位置にある」ことは、本件補正発明において、「前記電気コネクタおよび前記嵌合電気コネクタの個々のハウジングの移動により、各々の前記取り付けピンに隣接する」ことに相当するから、引用文献2記載の技術的事項の「前記カムギヤ56の回転中心に向かって延びる開口部60近傍の壁面に続」く、「当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して不連続に繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面」の位置は、本件補正発明の「停止面」と同じ位置にあるといえる。そして、この「当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して不連続に繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面」は、スライダ44を操作せずに第1コネクタと第2コネクタとの嵌合を深めて行くと、ガイドピン24と当接し、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合を更に進める上での抵抗となり得るから、本件補正発明の「停止面」に相当するといえる。
ここで、引用文献2記載の技術的事項と引用発明とは、嵌合を補助する機構を備えた電気コネクタに関する技術であるという点で技術分野が共通しており、引用文献2記載の技術的事項における「第1コネクタ10が前記第2コネクタ12に向かって最終嵌合位置へと移動することを補助する機構」並びに当該機構に係る「ガイドピン24」及び「カムギア56」が果たす、スライダ44を操作する力を第1コネクタ及び第2コネクタを嵌合させる力に変換する作用・機能は、引用発明の「嵌合力付与機構」並びに当該機構に係る2つの「カムフォロア23」及び2つの「倍力部材40」が果たす作用・機能と共通している。そして、引用文献2記載の技術的事項のカムギヤ56のガイド溝58に設けた「当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して不連続に繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面」の位置は、カイド溝58の開口部60に続く位置にあるという点、第1コネクタ10と第2コネクタ12と互いに近接させた際にガイドピン24が近づいてくる位置にあるという点からも明らかなとおり、引用発明の倍力部材40のカム溝に設けた「該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」と同様の位置にある。さらには、引用文献2記載の技術的事項において、スライダ44を操作せずに第1コネクタと第2コネクタとの嵌合を深めて行くと、やがて「当該開口部60近傍の壁面に対して屈曲して不連続に繋がる平面とこの平面に繋がる曲面とから構成される壁面」がガイドピン24と当接することとなるが、引用発明においても同様に、操作部材30をスライド操作することなしに第1ハウジング10と第2ハウジング20との互いの嵌合を進めていくと、やがて「該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」のうちのどこかがカムフォロア23と当接し得るといえる。このような共通性に鑑みれば、引用発明における「該開口部近傍の壁面に対して連続的に湾曲して繋がる一連の曲面として構成された壁面」について、その一部を、引用文献2記載の技術的事項に倣って、連続的に湾曲して繋がる一連の曲面から区別できる「不連続に繋がる平面」とし、本件補正発明の「停止面」のようにすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。
そして、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)令和5年11月21日付けで提出された上申書における請求人の主張について
ア 本件請求人は、令和5年11月21日付けで提出された上申書において、本件補正発明の進歩性に関し、「引用文献1に開示された電気コネクタは、対角線上に配置された2つのラック36A、36Bを備えた操作部材30を備えています。これらのラック36A、36Bの歯は、操作部材30を形成した壁のうち上壁および下壁に平行に延出しています。この点において、本願請求項1に係る発明とは異なっています。」と主張している。(下線は、当審で付したもの。)
しかし、上記(3)ア(ウ)でも述べたとおり、令和5年6月15日の手続補正により補正された請求項1の記載に基づくと、本件補正発明の「第一ラック部」及び「第二ラック部」と、引用発明の「上部ラック36A」及び「下部ラック36B」との間に構成上の差異はない。そして、令和5年6月15日の手続補正により補正された請求項1には、「第一ラック部」又は「第2ラック部」の「歯」が「延出」する方向を特定する記載は認められない。したがって、上記主張は請求項1の記載に基づく主張とはいえない。
イ また、本件請求人は、同上申書において、上記主張に続けて「本願請求項1に係る発明の構成を採用することにより、カム部材をコネクタの幅方向に配置することが可能となり、これによりコネクタの上下方向の高さを抑制した偏平したコネクタを形成することが可能です。」と主張する。
しかし、電気コネクタが偏平した形状になるか否かは、接続しようとするターミナルを左右方向に何本配置するか、上下方向に何段配置するかなどにも応じて変わってくるところ、仮に、本件補正発明において「第一ラック部」又は「第2ラック部」の「歯」が「延出」する方向を特定したとしても、それが電気コネクタが偏平した形状になるか否かを決定付けることになはならない。
仮に、本件補正発明が偏平した形状の電気コネクタであると特定したとしても、令和5年2月13日付けの補正の却下の決定であげた引用文献3(米国特許出願公開2009/0291583号明細書)には、コネクタハウジング6の短辺側に回転嵌合補助部材8を配置するという技術的事項が記載されており、この技術的事項を引用発明の倍力部材40の配置に適用することで、扁平した形状のコネクタの第1ハウジング10に想到することは、当業者にとって容易である。
ウ さらに本件請求人は、同上申書において、「第一ラック部」及び「第2ラック部」を、それぞれ「前記横壁に平行に延出した歯(27)を備えた第一ラック部」及び「横壁に平行に延出した歯(27)を備えた第二ラック部」とする補正案を提示している。
しかし、「歯」が「前記横壁に平行に延出した」との表現では、歯の頂部が横壁に平行になっているとも、歯の側面が横壁に対して平行になっているとも、いずれにも解釈でき、結局のところ、「第一ラック部」及び「第二ラック部」の「歯」をどのように設けるのか、十分に特定されていない。
仮に、前者のように解釈するとすれば、引用発明の「上部ラック部36A」及び「ラック部36B」の歯の頂部は左側及び右側の側壁部33A・33Bと平行であるところ、この点において、引用発明と当該補正案により補正された本件補正発明との間に差異はない。
仮に、後者のように解釈するとしても、上記イで言及したように引用文献3記載の技術的事項を引用発明に適用することで、倍力部材40を第1ハウジングの短辺側(すなわち、左側及び右側の側壁部33A・33Bの側)に配置することは当業者にとって容易であり、そのように倍力部材40の配置を変更すれば自ずと、倍力部材40に係合するラック部の配置も、ラック部の歯の側面が側壁部33A・33Bに対して平行となるように変更することとなる。
エ 以上のとおり、令和5年11月21日付けで提出された上申書の主張を考慮しても、本件補正発明に進歩性は認められない。なお、仮に、同上申書中の補正案のとおり本件補正発明を補正したとしても、進歩性は認められない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年6月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和4年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由1は、この出願の請求項1~10に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2011-253655号公報
引用文献2:特表2015-501074号公報
3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項並びに引用発明及び引用文献2記載の技術的事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、次の限定を削除したものである。
・ユーザー駆動部材が「上壁と、下壁と、前記上壁と下壁との間に延びた二つの横壁と、を備え」るという限定。
・オペレーション方向と平行に延びる第一ラック部が、「ユーザー駆動部材」に形成され、「第一の角部に配置され、且つ前記上壁と二つの前記横壁のうちの一方とから延在」するという限定。
・第一ラック部と平行に延びる第二ラック部が、「ユーザー駆動部材」に形成され、「第二の角部に配置され、且つ前記下壁と二つの前記横壁のうちの他方とから延在」するという限定。
なお、本願発明において「前記嵌合コネクタ」とあるのは、それより前に記載されている「嵌合電気コネクタ」のことであり、本願発明において「前記嵌合コネクタ」とあることによって、本件補正発明との間に発明特定事項についての差異が生じるものではない。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-009965