特許拒絶査定不服審判
2023-009178
磁気駆動装置
- 審判番号
- 2023-009178
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-524949外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月05日
- 審決日
- 2025年03月05日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-524949「磁気駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月19日国際公開、WO2019/239447〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)6月11日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月 9日 :手続補正書、上申書の提出
令和4年 8月31日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 4日 :意見書の提出
令和5年 3月 2日付け:拒絶査定
令和5年 6月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 8月21日 :上申書の提出
令和6年 8月28日 :上申書の提出
令和6年 9月27日 :面接
令和6年10月30日付け:拒絶理由通知書
令和6年12月26日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和6年12月26日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
磁石の配置により駆動する磁気駆動装置であって、
固定盤と、
前記固定盤に対向して回転可能に設けられた回転盤と、
前記固定盤に設けられた固定盤側磁石と、
前記回転盤に設けられ、前記固定盤側磁石と相互作用する回転盤側磁石とを備え、
前記固定盤側磁石は同一面及びその周囲が同一磁極からなり、前記固定盤側磁石が球形又は楕円球形の場合は半面が同一磁極からなり、
前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、以下に示すいずれかの重畳する状態で互いに近接し、かつ、固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、
(イ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳する際の重畳部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。
(ロ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳から外れた部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。
(ハ)前記回転盤側磁石の左右双方が異極の磁極からなる非対称の構成からなる。
の、前記(イ)乃至(ハ)のいずれかの状態で左右が非対称となる構成であり、かつ前記回転盤側磁石を複数箇所配置する場合、該配置は、前記回転盤軸の周りに対して均等割にならない位置に配置し、
前記固定盤側磁石は、円柱、四角柱、多角形柱、楕円柱、球形、楕円球形、中空円筒形の何れかからなり、前記固定盤側磁石の中心軸と前記回転盤の中心軸とが一致し、
前記回転盤側磁石は、回転軸の垂直方向から見た平面視で、矩形、多角形、台形、円弧形、扇形、半円形、円形、楕円形の何れか又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする磁気駆動装置。
(1)互いの磁石の面の一部分同士が重畳する。
(2)一方の磁石の稜の一部分と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。
(3)互いの磁石の稜の一部分同士が重畳する。
(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。
(5)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の稜の一部分が重畳する。
(6)稜が交わって構成される稜の角同士が互いに重畳する。」
第3 拒絶の理由
令和6年10月30日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、引用文献1に基づく理由3、理由4は、次のとおりのものである。
理由3(新規性) この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由4(進歩性) この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特許第5508666号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
当審の拒絶理由通知で引用された特許第5508666号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
「【発明の名称】磁気駆動装置」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気駆動における磁石の配置方法と磁気駆動装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、世の中に存在するあらゆる装置または機器などは、電気やガス、ガソリン等を使用して駆動装置を駆動させており、電気においては水力、火力、風力、太陽光、原子力等を使用して発電し蓄電された電力を駆動装置に使用していた。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、電力等の資源を使用せずに駆動することができ、更にそこから電力を発電させることも、そのまま動力として使用することもできる磁気駆動装置における磁石の配置方法及び磁気駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、回転磁石を取付け中央に回転盤軸を備えた回転盤と、固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤とからなり、前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置の構成とした。」
「【実施例28】
【0106】
図28は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第28実施例を示した図である。図28に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11fは、前記磁石の配置方法11~11eとほぼ同じである。
【0107】
図28に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11fは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、平面上の両端に異極の磁極15a、15bを備えた直方体状の回転磁石15を回転磁石15の中央である磁極の境界線が回転盤13の経線上に重なり、回転磁石15の外側の異極の磁極からなる両側の角が回転盤13の外周上に位置するように取り付けられた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0108】
図28では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。」
「【実施例30】
【0112】
図30は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第30実施例を示した図である。図30に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11hは、前記磁石の配置方法11~11gとほぼ同じである。
【0113】
図30に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11hは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、両側に異極の磁極15a、15bを備えた横長の直方体状をした回転磁石15を回転磁石15の中央が回転盤13の経線上に重なり、且つ、回転磁石15が回転盤13の一方の半円形内に位置するように取り付けられた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0114】
図30では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。
【実施例31】
【0115】
図31は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第31実施例を示した図である。図31に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11iは、前記磁石の配置方法11~11hとほぼ同じである。
【0116】
図31に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11iは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、上下に異極関係を備え左辺を傾斜面15eとした回転磁石15を回転磁石15の右辺が回転盤13の直径上の近くに重なり、回転磁石15の傾斜面15eの2つの角が回転盤13の外周面上の近くに位置するように取り付けた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0117】
図31では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。
【実施例32】
【0118】
図32は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第32実施例を示した図である。図32に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11jは、前記磁石の配置方法11~11iとほぼ同じである。
【0119】
図32に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11jは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、上下に異極関係を備え左辺を傾斜面15eとした回転磁石15を回転磁石15の右辺が回転盤13の直径上の近くに重なり、回転磁石15の傾斜面15eを形成する鋭角が回転盤13の外周面上に位置するように取り付けた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0120】
図32では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。
【実施例33】
【0121】
図33は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第33実施例を示した図である。図33に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11kは、前記磁石の配置方法11~11jとほぼ同じである。
【0122】
図33に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11kは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、平面上の両側に異極の磁極15a、15bを備えた略半円形状の回転磁石15を回転磁石15の中央部が回転盤13の直径上に重なり、回転磁石15の内側が回転盤軸13aの方向を向いた状態で取り付けた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0123】
また、回転磁石15の回転磁石芯15dが、回転磁石15と回転盤軸13aの間に位置するように、回転磁石芯15dと回転盤軸13aの位置をずらしている。
【0124】
図33では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。
【実施例34】
【0125】
図34は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第34実施例を示した図である。図34に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11lは、前記磁石の配置方法11~11kとほぼ同じである。
【0126】
図34に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11lは、平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、平面上の両側に異極の磁極15a、15bを備えた略半円形状の回転磁石15を回転磁石15の中央部が回転盤13の直径上に重なり、回転磁石15の内側が回転盤軸13aの方向を向いた状態で取り付けた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0127】
また、回転盤軸13aが回転磁石15と回転磁石芯15dの間に位置するように、回転磁石芯15dと回転盤軸13aの位置をずらしている。
【0128】
図34では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。」
「【実施例38】
【0138】
図38は本発明である磁気駆動における磁石の配置方法及び磁気駆動装置の磁石の配置状態の第38実施例を示した図である。本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11pは、前記磁石の配置方法11~11oとほぼ同じである。
【0139】
図38に示すように、本発明である磁気駆動装置における磁石の配置方法11pは、平板の円盤状で同一面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、平面上の両端に異極の磁極15a、15bを備えた横長の直方体状をした回転磁石15を回転磁石15の中央が回転盤13の経線上に重なるように、また、回転磁石15の外側の異極の磁極15a、15bからなる両側の角が回転盤13の外周上に位置するように取り付けられた回転盤13とからなり、前記回転磁石15が固定磁石14の下側に位置している。
【0140】
図38では、回転磁石15は固定磁石14の下側の位置にあることを表しており、固定磁石14と回転磁石15をこのような位置関係にすることで回転盤13は時計回りに回転し続けることができる。」
「【図28】
[図:0001421797000001.jpg]
」
「【図30】
[図:0001421797000002.jpg]
」
「【図31】
[図:0001421797000003.jpg]
」
「【図32】
[図:0001421797000004.jpg]
」
「【図33】
[図:0001421797000005.jpg]
」
「【図34】
[図:0001421797000006.jpg]
」
「【図38】
[図:0001421797000007.jpg]
」
2 引用文献1に記載された発明
(1)引用発明A
ア 段落【0005】の記載事項から、引用文献1には、「回転磁石を取付け中央に回転盤軸を備えた回転盤と、固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤とからなり、前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置。」の発明が記載されているといえる。
イ 【図31】、【図32】からは、平面図上に現れる方向から見た平面視で、回転磁石15は、4の辺の長さが全て異なる台形であり、回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものであることが、見て取れる。
ウ 【図31】、【図32】からは、回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられていることが見て取れる。
エ したがって、上記ア、上記イ、上記ウ、【実施例31】の段落【0115】~【0117】の記載事項、及び、【実施例32】の段落【0118】~【0120】の記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。
「回転磁石を取付け中央に回転盤軸を備えた回転盤と、固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤とからなり、前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置であって、
平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、上下に異極関係を備え左辺を傾斜面15eとした回転磁石15を取り付けた回転盤13とを備え、回転磁石15は、固定磁石14の下側に位置しており、かつ、平面図上に現れる方向から見た平面視で、4つの辺の長さが全て異なる台形であり、回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものであり、
回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられている、磁気駆動装置。」
(2)引用発明B
ア 段落【0005】の記載事項から、引用文献1には、「回転磁石を取付け中央に回転盤軸を備えた回転盤と、固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤とからなり、前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置。」の発明が記載されているといえる。
イ 【図28】、【図30】、【図33】、【図34】、【図38】からは、平面図上に現れる方向から見た平面視で、回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものであることが、見て取れる。また、【図28】、【図30】、【図38】から、回転磁石15は、両端に異極の磁界15a、15bを備えた直方体状であることが、【図33】、【図34】から、回転磁石15は、平面上の両側に異極の磁界15a、15bを備えた略半円形状の円弧の形であることが、見て取れる。
ウ 【図28】、【図30】、【図33】、【図34】、【図38】からは、回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられていることが見て取れる。
エ したがって、上記ア、上記イ、上記ウ、【実施例28】の段落【0106】~【0108】の記載事項、【実施例30】の段落【0112】~【0114】の記載事項、【実施例38】の段落【0138】~【0140】の記載事項、【実施例33】の段落【0121】~【0124】の記載事項、及び、【実施例34】の段落【0125】~【0128】の記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されている。
「回転磁石を取付け中央に回転盤軸を備えた回転盤と、固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤とからなり、前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置であって、
平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14を取り付けた固定盤12と、両端に異極の磁極15a、15bを備えた直方体状の回転磁石15(【図28】、【図30】、【図38】に対応する。)、又は、平面上の両側に異極の磁極15a、15bを備えた略半円形状の円弧の形をした回転磁石15(【図33】、【図34】に対応する。)を取り付けられた回転盤13とを備え、回転磁石15は、固定磁石14の下側に位置しており、かつ、平面図上に現れる方向から見た平面視で、回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものであり、
回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられている、磁気駆動装置。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明Aとの対比・判断
(1)「前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」に係る引用発明Aは、「磁石の配置により駆動する磁気駆動装置」に係る発明といえる点で、本願発明と一致する。
(2)引用発明Aの「固定盤12」は、本願発明が備える「固定盤」に相当する。
(3)引用発明Aの「回転盤13」は、「中央に回転盤軸を備え」、固定盤は、「固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結され」るから、引用発明Aの「回転盤13」は、本願発明が備える「前記固定盤に対向して回転可能に設けられた回転盤」に相当する。
(4)引用発明Aの、固定盤12に取り付けられる「固定磁石14」は、本願発明が備える「前記固定盤に設けられた固定盤側磁石」に対応する。
(5)「前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」である引用発明Aの回転盤13に取り付けられた「回転磁石15」は、本願発明が備える「前記回転盤に設けられ、前記固定盤側磁石と相互作用する回転盤側磁石」に対応する。
(6)引用発明Aの「平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14」は、「同一面及びその周囲が同一磁極からなり」といえる点で、本願発明の「固定盤側磁石」と一致する。
(7)本願発明の「回転軸の垂直方向から見た平面視」とは、令和6年12月26日付けの意見書に、「平面図、正面図、側面図の内、平面図上に表れることを平面視であることを前提にしている。」と記載されているように、「平面図上に現れる方向から見た平面視」であると解される。
また、引用発明Aは、「回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」であるから、回転磁石及び固定磁石は磁気駆動を可能とする程度に近接して配置されているといえる。
そして、引用発明Aは、「平面図上に現れる方向から見た平面視で」、「回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものである」から、「前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。状態で互いに近接し」ているといえる点で、本願発明と一致する。
(8)引用発明Aは、「固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤」からなり、「回転磁石15」は、「平面図上に現れる方向から見た平面視で、4つの片の長さが全て異なる台形であり、回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものである」であるから、「固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、
(イ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳する際の重畳部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。
状態で左右が非対称となる構成であり」といえる点で本願発明と一致する。
(9)引用発明Aの「平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14」は、「円柱からなり」といえる点で、本願発明の「固定盤側磁石」と一致する。
(10)引用発明Aの「回転盤がその中央に備える回転盤軸」は、回転盤の中心軸といえる。
また、引用発明Aの「固定磁石14」は、「平板の円盤状」であって、「回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられている」。
そうすると、引用発明Aは、「前記固定盤側磁石の中心軸と前記回転盤の中心軸とが一致し」といえる点で本願発明と一致する。
(11)上記(7)で示したように、本願発明の「回転軸の垂直方向から見た平面視」とは、「平面図上に現れる方向から見た平面視」であると解される。
そして、引用発明Aの「回転磁石15」は、「平面図上に現れる方向から見た平面視で、4つの片の長さが全て異なる台形」であるから、「回転軸の垂直方向から見た平面視で、台形からなる」といえる点で本願発明の「回転盤側磁石」と一致する。
(12)したがって、本願発明と引用発明Aとは、下記の一致点を有するものであり、相違点はない。
「磁石の配置により駆動する磁気駆動装置であって、
固定盤と、
前記固定盤に対向して回転可能に設けられた回転盤と、
前記固定盤に設けられた固定盤側磁石と、
前記回転盤に設けられ、前記固定盤側磁石と相互作用する回転盤側磁石とを備え、
前記固定盤側磁石は同一面及びその周囲が同一磁極からなり、
前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、以下に示す(4)の重畳する状態で互いに近接し、かつ、固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、
(イ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳する際の重畳部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。
状態で左右が非対称となる構成であり、
前記固定盤側磁石は、円柱からなり、前記固定盤側磁石の中心軸と前記回転盤の中心軸とが一致し、
前記回転盤側磁石は、回転軸の垂直方向から見た平面視で、台形からなることを特徴とする磁気駆動装置。
(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。」
(13)以上のとおり、本願発明と引用発明Aの間には相違点がないから、本願発明は引用発明Aである。また、仮に相違点があるとしても、本願発明は、引用発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 本願発明と引用発明Bとの対比・判断
(1)「前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」に係る引用発明Bは、「磁石の配置により駆動する磁気駆動装置」に係る発明といえる点で、本願発明と一致する。
(2)引用発明Bの「固定盤12」は、本願発明が備える「固定盤」に相当する。
(3)引用発明Bの「回転盤13」は、「中央に回転盤軸を備え」、固定盤は、「固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結され」るから、引用発明Bの「回転盤13」は、本願発明が備える「前記固定盤に対向して回転可能に設けられた回転盤」に相当する。
(4)引用発明Bの、固定盤12に取り付けられる「固定磁石14」は、本願発明が備える「前記固定盤に設けられた固定盤側磁石」に対応する。
(5)「前記回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」である引用発明Bの回転盤13に取り付けられた「回転磁石15」は、本願発明が備える「前記回転盤に設けられ、前記固定盤側磁石と相互作用する回転盤側磁石」に対応する。
(6)引用発明Bの「平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14」は、「同一面及びその周囲が同一磁極からなり」といえる点で、本願発明の「固定盤側磁石」と一致する。
(7)上記1(7)で示したように、本願発明の「回転軸の垂直方向から見た平面視」とは、「平面図上に現れる方向から見た平面視」であると解される。
また、引用発明Bは、「回転磁石及び固定磁石の配置関係により磁気駆動を可能とした磁気駆動装置」であるから、回転磁石及び固定磁石は磁気駆動を可能とする程度に近接して配置されているといえる。
そして、引用発明Bは、「平面図上に現れる方向から見た平面視で」、「回転磁石15が有する全ての稜の角は、固定磁石14の面の一部分に重なるものである」から、「前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。状態で互いに近接し」ているといえる点で、本願発明と一致する。
(8)引用発明Bは、「固定磁石を取付け中央に前記回転盤軸を回転可能に取り付けることで回転盤と連結される固定盤」からなり、「回転磁石15」は、「両端に異極の磁極15a、15bを備えた直方体状の回転磁石15」又は「平面上の両側に異極の磁極15a、15bを備えた略半円形状の円弧の形をした回転磁石15」であるから、「固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、
(ハ)前記回転盤側磁石の左右双方が異極の磁極からなる非対称の構成からなる。状態で左右が非対称となる構成であり」といえる点で本願発明と一致する。
(9)引用発明Bの「平板の円盤状で一方の面が同一磁極からなる固定磁石14」は、「円柱からなり」といえる点で、本願発明の「固定盤側磁石」と一致する。
(10)引用発明Bの回転盤がその中央に備える「回転盤軸」は、回転盤の「中心軸」といえる。
また、引用発明Bの「固定磁石14」は、「回転盤13の回転盤軸13aは、平板の円盤状である固定磁石14の中心軸と一致するように取り付けられている」。
そうすると、引用発明Bは、「前記固定盤側磁石の中心軸と前記回転盤の中心軸とが一致し」といえる点で本願発明と一致する。
(11)上記(7)で示したように、本願発明の「回転軸の垂直方向から見た平面視」とは、「平面図上に現れる方向から見た平面視」であると解される。
そして、引用発明Bの「回転磁石15」は、「両端に異極の磁極15a、15bを備えた直方体状の回転磁石15」又は「平面上の両側に異極の磁極15a、15bを備えた略半円形状の円弧の形をした回転磁石15」であるから、「回転軸の垂直方向から見た平面視で、矩形、円弧形の何れかからなる」といえる点で本願発明の「回転盤側磁石」と一致する。
(12)したがって、本願発明と引用発明Bとは、下記の一致点を有するものであり、相違点はない。
「磁石の配置により駆動する磁気駆動装置であって、
固定盤と、
前記固定盤に対向して回転可能に設けられた回転盤と、
前記固定盤に設けられた固定盤側磁石と、
前記回転盤に設けられ、前記固定盤側磁石と相互作用する回転盤側磁石とを備え、
前記固定盤側磁石は同一面及びその周囲が同一磁極からなり、
前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、以下に示す(4)の重畳する状態で互いに近接し、かつ、固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、
(ハ)前記回転盤側磁石の左右双方が異極の磁極からなる非対称の構成からなる。状態で左右が非対称となる構成であり、
前記固定盤側磁石は、円柱からなり、前記固定盤側磁石の中心軸と前記回転盤の中心軸とが一致し、
前記回転盤側磁石は、回転軸の垂直方向から見た平面視で、矩形、円弧形の何れかからなることを特徴とする磁気駆動装置。
(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。」
(13)以上のとおり、本願発明と引用発明Bの間には相違点がないから、本願発明は引用発明Bである。また、仮に相違点あるとしても、本願発明は、引用発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 審判請求人の主張について
(1) 審判請求人は、令和6年12月26日提出の意見書において、「本願発明の基本的骨子は前記で解説した通り、「回転盤側磁石」と「固定盤側磁石」の一部分が重畳していることと、互いに重畳していない部分が構成上存在していることであり、この新たな構成によって、力の作用の現象としてスベリとヒネリの現象が同時に現れることを改めて発見したものである。引用文献1の構成では、回転磁石15は全て固定磁石14の内側に位置している為、スベリとヒネリの現象は同時に発生しない。特にスベリの現象は発生しない。」、「引用発明Aの図31の前記回転磁石の配置方法11iは配置方法11と同じであることが[0115]に記載されており、[0082]、[0083]の配置方法11の説明では回転磁石15の外周面の半径は固定磁石14の半径よりも小さいとなっている為、回転磁石15の全ては固定磁石14の内側にあり、本願発明の重畳する要件とは異なっており、本願発明と引用発明Aとの間に「回転磁石15」と「固定磁石14」の重畳する状態に相違点がないから“本願発明と引用発明Aとは同一である”との文面は誤っている。本願発明の構成から新たに発生するスベリとヒネリの現象から、左右が非対称からなる回転盤側磁石に作用させることによって回転駆動の作用に活用することは新規性、進歩性が評価される。」、「引用発明Bの「回転磁石15」が左右双方が異極の磁極からなり非対称であっても、回転軸の垂直方向から見てその全ての形状が「固定磁石14」の内側で重畳していて、互いに重畳していない部分、すなわちはみ出した部分が存在していないのが引用発明Bの構成である。「回転磁石15」の全てが「固定磁石14」の内側に存在していることは図面(28)、(30)、(38)、(33)、(34)からも明らかである。また、図面(28)の説明[0106]も磁石の配置方法11fは前記磁石の配置方法11-11eとほぼ同じであるとして、[0082]、[0083]の配置方法11の説明では回転磁石15の外周面の半径は固定磁石14の半径よりも小さいとなっている為、回転磁石15の全ては固定磁石14の内側にあり、本願発明の重畳する要件とは異なっており、“本願発明と引用発明Bとの間に相違点はない”との文面は基本的に誤っている。」と主張する。
(2)審判請求人の上記主張について検討する。
請求項1には、「前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とは回転軸の垂直方向から見た平面視で、以下に示すいずれかの重畳する状態で互いに近接し」と記載され、重畳する状態として、次の(1)~(6)の状態が列記されている。「(1)互いの磁石の面の一部分同士が重畳する。(2)一方の磁石の稜の一部分と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。(3)互いの磁石の稜の一部分同士が重畳する。(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。(5)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の稜の一部分が重畳する。(6)稜が交わって構成される稜の角同士が互いに重畳する。」
そうすると、本願発明は、「(4)一方の磁石の稜が交わって構成される稜の角と、他方の磁石の面の一部分が重畳する。」という状態でのみ、「固定盤側磁石」と「回転盤側磁石」が互いに近接する構成を含むものである。そして、当該(4)に、「稜の角」の一部が、他方の磁石の面とは「重畳しない」ことに関する記載はなく、一方の磁石の全ての稜の角が、他方の磁石の面の一部分に重畳するものを除外していない。
また、請求項1には、「固定盤側磁石内に位置する回転盤軸に対して前記回転盤側磁石は、(イ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳する際の重畳部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。(ロ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳から外れた部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。(ハ)前記回転盤側磁石の左右双方が異極の磁極からなる非対称の構成からなる。の、前記(イ)乃至(ハ)のいずれかの状態で左右が非対称となる構成であり」と記載されており、本願発明は、「(イ)前記固定盤側磁石と前記回転盤側磁石とが重畳する際の重畳部分を構成する前記回転盤側磁石の各辺の長さがそれぞれ異なる。」という状態でのみ、又は、「(ハ)前記回転盤側磁石の左右双方が異極の磁極からなる非対称の構成からなる」という状態でのみ、「固定盤側磁石」が、「左右が非対称となる構成」を含むものである。そして、当該(イ)及び(ハ)には、「重畳から外れた部分」に関する記載はなく、「固定盤側磁石」と「回転盤側磁石」の「重畳から外れた部分」が存在しないものを除外していない。
してみれば、引用発明A又は引用発明Bと本願発明の重畳する要件が異なる旨の審判請求人の上記主張は、請求項の記載に基づかないものであり、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-009178